IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本アルファの特許一覧

<>
  • 特開-電動操作装置 図1
  • 特開-電動操作装置 図2
  • 特開-電動操作装置 図3
  • 特開-電動操作装置 図4
  • 特開-電動操作装置 図5
  • 特開-電動操作装置 図6
  • 特開-電動操作装置 図7
  • 特開-電動操作装置 図8
  • 特開-電動操作装置 図9
  • 特開-電動操作装置 図10
  • 特開-電動操作装置 図11
  • 特開-電動操作装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159492
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】電動操作装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20231025BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20231025BHJP
   A47K 1/14 20060101ALI20231025BHJP
   F16K 31/46 20060101ALI20231025BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20231025BHJP
   F16D 41/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E03C1/22 C
E03C1/23 Z
A47K1/14 B
F16K31/46 B
F16K31/44 B
F16D41/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069163
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【テーマコード(参考)】
2D061
3H063
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DB03
2D061DB07
3H063AA01
3H063BB07
3H063BB32
3H063BB44
3H063BB47
3H063DA01
3H063DA14
3H063DA17
3H063DB31
3H063DB48
3H063GG06
(57)【要約】
【課題】蓋に対する特別な対策が不要になるとともに、装置の小型化や製造等に係るコストの抑制を効果的に図ることができる電動操作装置を提供する。
【解決手段】電動操作装置1は、通電により動作可能なモータ3と、栓蓋側に対するモータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路を構成する伝達部5とを備える。伝達部5は、モータ3の動作により生じた駆動力によって回転可能な入力軸531と、入力軸531の回転による駆動力が伝達可能に構成された出力軸532とを具備するクラッチ機構53を有する。クラッチ機構53は、入力軸531から出力軸532に対する駆動力伝達では、出力軸532に対する入力軸531の回転による駆動力の伝達が行われる一方、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達では、出力軸532が空転することで、入力軸531に対する出力軸532の回転による駆動力の伝達が行われないように構成される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により動作可能な通電動作部と、
槽体の排水口を開閉するための栓蓋側に対する、前記通電動作部の動作により生じた駆動力の伝達経路を構成する伝達部とを備え、
前記通電動作部の動作により前記栓蓋を遠隔操作して前記排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置であって、
前記伝達部は、
前記通電動作部の動作により生じた駆動力によって回転可能な入力軸と、前記入力軸の回転による駆動力が伝達可能に構成された出力軸とを具備するクラッチ機構と、
前記伝達経路における前記出力軸よりも下流側の伝達経路を構成し、前記出力軸の回転に伴い移動することで前記栓蓋側へと駆動力を伝達する下流側伝達部とを有し、
前記クラッチ機構は、前記入力軸から前記出力軸に対する駆動力伝達では、前記出力軸に対する前記入力軸の回転による駆動力の伝達が行われる一方、前記出力軸から前記入力軸への駆動力の伝達では、前記出力軸が空転することで、前記入力軸に対する前記出力軸の回転による駆動力の伝達が行われないように構成された双方向フリークラッチ機構であることを特徴とする電動操作装置。
【請求項2】
手動操作の対象となる、往復移動可能な手動操作部を備え、
前記下流側伝達部は、前記通電動作部の動作及び前記手動操作部に対する操作の双方によって移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動により、槽体に設けられた排水口の開閉用の栓蓋を遠隔操作して、排水口の開閉状態を切換えるための電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
槽体(例えば浴槽や洗面ボウルなど)やその近傍に、槽体の底部に形成された排水口の開閉状態を遠隔操作によって切換えるための操作装置を設けることがある。操作装置としては、電動によって排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置が知られている。
【0003】
電動操作装置は、例えば、通電により動作可能な通電動作部(モータ)と、排水口に対応して設けられた栓蓋側に対し通電動作部の動作による駆動力を伝達するための伝達経路を構成する伝達部とを備えている(例えば、特許文献1等参照)。伝達部は、例えば、往復移動可能な棒状の操作軸や伝達ワイヤなどによって構成されている。そして、通電動作部の動作によって、伝達部を介して栓蓋側に駆動力が伝達されることで栓蓋が移動し、その結果、排水口の開閉状態が切換えられるようになっている。
【0004】
ところで、出力トルクを増大させるために、伝達部に高減速比の減速機構(減速歯車)を設けた構成とすることがある。このような構成では、通電動作部(モータ)が停止状態であるときに、減速機構の影響により伝達部がロックされる(回転不能とされる)ため、栓蓋が上動して排水口が開いている状態で装置の故障や停電などが生じると、伝達部を移動させることができず、ひいては栓蓋を閉状態とすることができないといった事態が生じ得る。
【0005】
そこで、このような事態が発生した場合であっても、栓蓋を下動させて排水口を閉状態とすることが可能となるように、伝達部として、周方向に並ぶ複数の突条部(被係止部)が内周面に形成されてなる円筒状の大径部と、外周に歯車部を有するとともに、当該歯車部が前記突条部に係止可能な状態で大径部の内周に配置された介在部とを備え、大径部及び介在部間で生じる負荷が所定量を超える場合に、歯車部が突条部を乗り越えて介在部に対し大径部が相対回転するように構成したものが提案されている(例えば、特許文献2等参照)。このように伝達部を構成することで、仮に排水口が開状態であるときに栓蓋の電動操作が不能になったとしても、栓蓋を下方に押し込むことにより、排水口を開状態から閉状態へと手動で切換えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-82729号公報
【特許文献2】特開2020-111877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に係る電動操作装置では、槽体の満水時(つまり栓蓋に大きな負荷が加わるとき)に、栓蓋を上げた状態で維持可能とすべく、大径部の相対回転が容易に生じないように介在部等の剛性を高める必要があり、介在部等の剛性を高めると、結果的に、装置の大型化や、製造・メンテンナンス等に係るコストの増大を招くおそれがある。
【0008】
また、介在部等の剛性を高めると、栓蓋を下方に押し込んで手を離した際に、介在部等の戻り変形に伴う栓蓋の上方への僅かな戻り移動が生じることがあるから、排水口をより確実に水密に閉鎖可能とするために、栓蓋に対し、例えばパッキン部の変形代をより大きくする等の対策を施さなければならないことがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、栓蓋に対する特別な対策が不要になるとともに、装置の小型化や製造等に係るコストの抑制を効果的に図ることができる電動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.通電により動作可能な通電動作部と、
槽体の排水口を開閉するための栓蓋側に対する、前記通電動作部の動作により生じた駆動力の伝達経路を構成する伝達部とを備え、
前記通電動作部の動作により前記栓蓋を遠隔操作して前記排水口の開閉状態を切換可能な電動操作装置であって、
前記伝達部は、
前記通電動作部の動作により生じた駆動力によって回転可能な入力軸と、前記入力軸の回転による駆動力が伝達可能に構成された出力軸とを具備するクラッチ機構と、
前記伝達経路における前記出力軸よりも下流側の伝達経路を構成し、前記出力軸の回転に伴い移動することで前記栓蓋側へと駆動力を伝達する下流側伝達部とを有し、
前記クラッチ機構は、前記入力軸から前記出力軸に対する駆動力伝達では、前記出力軸に対する前記入力軸の回転による駆動力の伝達が行われる一方、前記出力軸から前記入力軸への駆動力の伝達では、前記出力軸が空転することで、前記入力軸に対する前記出力軸の回転による駆動力の伝達が行われないように構成された双方向フリークラッチ機構であることを特徴とする電動操作装置。
【0012】
上記手段1によれば、クラッチ機構は、双方向フリークラッチ機構によって構成されており、出力軸から入力軸への駆動力の伝達では、出力軸が空転するように構成されている。従って、入力軸が回転していない状態では、通電動作部の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち下流側伝達部よりも上流側の伝達経路を構成する部分(例えば出力軸等であり、以下「上流側伝達部」)という)によって阻害されることなく、下流側伝達部が移動可能な状態となる。これにより、排水口が開状態であるときに停電や装置の故障が生じたとしても、手動(例えば栓蓋を手で押すこと等)により栓蓋を下動させて排水口を開状態から閉状態へと切換えることが容易に可能となる。
【0013】
また、上記手段1によれば、双方向フリークラッチ機構を利用しているため、上記従来技術と比べて、装置の小型化や、製造等に係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0014】
さらに、手動により栓蓋を下動させたときに、クラッチ機構に起因する栓蓋の上方への戻り移動が生じないようにすることができる。従って、上方への戻り移動に対応するために栓蓋に対し特別な対策を施す必要がなくなる。
【0015】
尚、上記手段1に係る「クラッチ機構」(双方向フリークラッチ機構)としては、入力軸が回転したときと出力軸が回転したときとで機構内部の状態を一定に相違させる構成を有しており、この状態の相違によって、入力軸から出力軸に対する駆動力伝達では、出力軸に対する入力軸の回転による駆動力の伝達が行われる一方、出力軸から入力軸への駆動力の伝達では、出力軸が空転して、入力軸に対する出力軸の回転による駆動力の伝達が行われないように構成されたフリータイプ双方向クラッチ(例えば、特許第6966515号公報や特許第4949196号公報などに係る双方向クラッチ)を挙げることができる。
【0016】
手段2.手動操作の対象となる、往復移動可能な手動操作部を備え、
前記下流側伝達部は、前記通電動作部の動作及び前記手動操作部に対する操作の双方によって移動可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の電動操作装置。
【0017】
電動操作装置として、栓蓋の電動操作のみならず、栓蓋の手動操作をも可能とした装置が知られている。このような装置においては、装置の故障や停電などが生じると、伝達部を移動させることができず、ひいては栓蓋の電動操作及び手動操作の双方が不能になるといった事態が生じ得る。
【0018】
そこで、伝達部として、所定の手動操作部(例えば操作ボタン等)に対する操作に伴い移動可能な棒状の軸部と、当該軸部に対し係止又は係止解除可能に構成され、常には当該軸部に係止されて通電動作部の動作に伴う駆動力を当該軸部に伝達する係止連絡部とを具備するものが提案されている(例えば、特開2020-111997号公報等参照)。この伝達部を有する電動操作装置においては、常には、軸部に対し係止連絡部を係止させることで栓蓋の電動操作及び手動操作の双方が可能とされる一方、停電時等には、軸部に対する係止連絡部の係止を解除することで、通電動作部の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち軸部よりも上流側(通電動作部側)の伝達経路を構成する部分(係止連絡部など)の影響を受けることなく軸部が往復移動可能となり、ひいては栓蓋の手動操作が可能となる。
【0019】
しかしながら、当該電動操作装置では、停電時等における栓蓋の手動操作を可能とするために、軸部に対する係止連絡部の係止を解除するという作業が必要となるから、使用者にとっての使い勝手が非常に良好であるとは言い難い。
【0020】
この点、上記手段2によれば、クラッチ機構により、上流側伝達部(例えば出力軸等)によって阻害されることなく下流側伝達部が移動可能な状態となっているから、停電時等における栓蓋の手動操作を可能とするための作業(例えば、上述した、軸部に対する係止連絡部の係止を解除する等の作業)をわざわざ行う必要がない。従って、使用者にとっての使い勝手を飛躍的に高めることができる。
【0021】
また、停電時等における栓蓋の手動操作を実現するにあたって、特段の複雑な構造を用いる必要はないから、装置の製造等に係るコストの増大を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態における電動操作装置の斜視図である。
図2】第1実施形態における電動操作装置の平面図である。
図3図2のJ-J線断面図である。
図4図2のK-K線断面図である。
図5】クラッチ機構の断面模式図である。
図6】入力軸が回転するときにおけるクラッチ機構の内部状態を示すための断面模式図である。
図7】出力軸が回転するときにおけるクラッチ機構の内部状態を示すための断面模式図である。
図8】第2実施形態における電動操作装置の断面図である。
図9】第2実施形態における操作軸などの側面模式図である。
図10】別の実施形態におけるクラッチ機構の断面模式図である。
図11】別の実施形態において、入力軸が回転するときにおけるクラッチ機構の内部状態を示すための図10のL-L線断面模式図である。
図12】別の実施形態において、出力軸が回転するときにおけるクラッチ機構の内部状態を示すための図10のL-L線断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
電動操作装置は、浴槽の排水口(図示せず)に対応して設けられた図示しない栓蓋を遠隔操作し、当該栓蓋を上下動させることで前記排水口を開閉するためのものである。
【0024】
図1~4に示すように、電動操作装置1は、ケース2、モータ3、アウターチューブ4及び伝達部5を備えている。本実施形態では、モータ3が「通電動作部」を構成する。
【0025】
ケース2は、モータ3や伝達部5の一部などを収容するとともに、所定の取付対象へと取付けられるものである。ケース2は、例えば、浴槽の側方を覆うエプロンの裏側などに設けられた取付対象に取付けられており、使用者からは通常視認することができないようになっている。ケース2は、モータ収容部21、クラッチ収容部22及びラック収容部23を備えており、これらが直列的に並ぶ構成となっている。
【0026】
モータ収容部21は、モータ3及び伝達部5の後述する減速歯車機構51などを内部に収容する。クラッチ収容部22は、伝達部5の後述するクラッチ機構53などを内部に収容する。
【0027】
ラック収容部23は、伝達部5のそれぞれ後述するラック部55やアウターチューブ4の端部などを内部に収容する。また、ラック収容部23には、筒状のガイドチューブ61(図4参照。図1等では不図示)が接続されている。ガイドチューブ61は、アウターチューブ4を電動操作装置1側から前記栓蓋側へと案内する等の役割を有する。
【0028】
モータ3は、前記排水口を電動開閉するための駆動源であり、図示しない開閉制御装置からの通電(電力供給)により回転する棒状のモータ軸31を有している。モータ軸31の外周には、所定の歯車が取付けられている。モータ軸31の回転による駆動力は、伝達部5を介して前記栓蓋側へと伝達される。
【0029】
尚、前記開閉制御装置には、前記排水口の開閉状態を切換える際に手動操作される操作パネル(不図示)が設けられており、この操作パネルに対する操作に伴い、モータ3に対する電力供給が行われてモータ3が動作する。また、前記開閉制御装置には、前記栓蓋や伝達部5(例えば後述するラック部55など)の位置を検知するための位置検知センサ(図示せず)からの検知信号が入力されるようになっている。そして、前記開閉制御装置は、前記位置検知センサから入力された検知信号に基づき、前記排水口が開状態(前記栓蓋が上動した状態)又は閉状態(前記栓蓋が下動した状態)のいずれかであるのかを把握可能とされている。
【0030】
アウターチューブ4は、長尺筒状をなしており、後述するインナーワイヤ56を栓蓋側へと案内する機能などを有している。アウターチューブ4の一端部には、鍔状のフレア部41(図4参照)が設けられており、アウターチューブ4は、フレア部41が所定のチューブ接続部品62とラック収容部23とで挟み込まれることによって、ケース2(ラック収容部23)と接続されている。
【0031】
伝達部5は、前記栓蓋側に対する、モータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路を構成するものである。伝達部5は、上流側(モータ3側)から下流側(栓蓋側)に向けて、減速歯車機構51、入力軸連結部52、クラッチ機構53、出力軸連結部54、ラック部55及びインナーワイヤ56をこの順序で備えている。
【0032】
減速歯車機構51は、2段歯車(歯数の異なる2つの歯車が、歯車の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたもの)や遊星歯車によって構成されており、比較的大きな減速比でモータ軸31の回転を入力軸連結部52へと伝達するように構成されている。尚、減速歯車機構51の構成については適宜変更可能であり、例えば減速歯車機構51を複数の2段歯車のみによって構成してもよい。
【0033】
入力軸連結部52は、クラッチ機構53の後述する入力軸531に連結される部位であって、当該入力軸531に対しモータ3からの駆動力を伝達する。入力軸連結部52は、入力軸531と同軸に配置されており、減速歯車機構51の動作に伴い、入力軸531の回転軸と同一の回転軸にて当該入力軸531と一体的に回転する。
【0034】
また、入力軸連結部52の外周には、所定の弾性材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のシール部材63,64が嵌め込まれている。このシール部材63,64は、入力軸連結部52の外周に配置された筒状のシール用筒部65の内周面全周に接触しており、また、当該シール用筒部65の外周面全周は、所定の固定用シール部材66によってケース2の内面に対し水密に接触している。これにより、モータ収容部21及びクラッチ収容部22の各内部空間は、シール部材63,64,66及びシール用筒部65によって水密に隔離された状態となっている。尚、シール部材63,64としては、入力軸連結部52の円滑な回転を図るべく、断面X字状をなすもの(いわゆるXリング)を用いることが好ましい。
【0035】
クラッチ機構53は、モータ3の動作により生じた駆動力によって回転可能な入力軸531と、入力軸531の回転による駆動力が伝達可能に構成された出力軸532とを具備している。クラッチ機構53においては、入力軸531が回転すると、出力軸532が入力軸531の回転方向と同一の回転方向に回転するようになっている。クラッチ機構53のより詳細な構成については、後に説明する。
【0036】
出力軸連結部54は、クラッチ機構53の出力軸532に連結される部位であり、回転することで、出力軸532からラック部55に対し駆動力を伝達する。出力軸連結部54の外周には、所定の歯車541が形成されており、出力軸532の回転に伴い歯車541が回転するようになっている。
【0037】
また、出力軸連結部54の外周には、所定の弾性材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のシール部材67が嵌め込まれており、このシール部材67は、ケース2の内面に接触した状態となっている。これにより、クラッチ収容部22及びラック収容部23の各内部空間が、シール部材67によって水密に隔離された状態となっている。その結果、水の浸入抑制を特に図るべきモータ収容部21の内部空間と、アウターチューブ4内を通った水の浸入が生じ得るラック収容部23の内部空間とが、クラッチ収容部22の内部空間を介して水密に遮断された状態となっており、ひいてはモータ収容部21の内部空間をより確実に水密状態で維持可能となっている。尚、シール部材67としては、出力軸連結部54の円滑な回転を図るべく、断面X字状をなすものを用いることが好ましい。
【0038】
ラック部55は、自身の長手方向に沿って設けられた複数の突条部からなる歯部551(図4参照)を有しており、当該歯部551が出力軸連結部54の前記歯車541に噛合されている。ラック部55は、前記歯車541の回転に伴い、自身の長手方向に沿って往復移動する。また、ラック部55には、例えば加締め固定などにより、インナーワイヤ56の一端部が固定されている。
【0039】
インナーワイヤ56は、例えばコアコイルや撚り線などにより構成されたワイヤ状の部品であり、アウターチューブ4の内周に往復移動可能な状態で配置されている。そして、出力軸532の回転に伴いインナーワイヤ56が往動(電動操作装置1側から前記栓蓋側への移動)することで、前記栓蓋を支持するとともにインナーワイヤ56の他端部に連結された棒状の支持軸(不図示)が上動して、前記栓蓋が上動するようになっている。一方、出力軸532の回転に伴いインナーワイヤ56の復動(前記栓蓋側から電動操作装置1側へと移動)することで、前記支持軸が下動して、前記栓蓋が下動するようになっている。
【0040】
本実施形態では、出力軸連結部54、ラック部55及びインナーワイヤ56によって、下流側伝達部5Aが構成されている。下流側伝達部5Aは、モータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち出力軸532よりも下流側の伝達経路を構成するものである。下流側伝達部5Aは、出力軸532の回転に伴い移動(回転又は往復移動)することで前記栓蓋側へと駆動力を伝達する。
【0041】
次いで、クラッチ機構53について説明する。クラッチ機構53は、入力軸531が回転したときと出力軸532が回転したときとで機構内部の状態を一定に相違させる構成を有しており、この状態の相違によって、入力軸531から出力軸532に対する駆動力伝達(正方向の伝達)では、出力軸532に対する入力軸531の回転による駆動力の伝達が行われる一方、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達(逆方向の伝達)では、出力軸532が空転して、入力軸531に対する出力軸532の回転による駆動力の伝達が行われないように構成されたものである。本実施形態におけるクラッチ機構53は、特許第4949196号公報に記載された双方向フリークラッチ機構(フリータイプ双方向クラッチ)によって構成されている。クラッチ機構53の詳細については、特許第4949196号公報に記載されているため、ここではクラッチ機構53の構成を簡単に説明する。
【0042】
クラッチ機構53は、上述した入力軸531及び出力軸532に加えて、図5に示すように、クラッチ機構53の構成部品を収容して、当該構成部品をひとまとめとするハウジング533を備えている。ハウジング533は、円筒形状をなしており、クラッチ収容部22の内面に固定されている。
【0043】
また、ハウジング533の内部には、所定の間隙をあけて円筒形の出力部材534が回転可能に配置されており、当該出力部材534が出力軸532に固定されている。一方、入力軸531には、断面オーバル形状をなす入力部材535が固定されており、出力部材534と入力部材535との間には、2分割された中間部材536が配置されている。2つの中間部材536の間には引張りばね537(図6,7参照)が設けられており、この引張りばね537によって、2つの中間部材536には、両者を互いに接近させる方向の付勢力が付与されている。また、中間部材536の外周部には、楔形凹部に挿入されたローラ538が設けられており、これらローラ538は出力部材534の内周面と対向した状態となっている。
【0044】
そして、図6に示すように、入力軸531の回転により、入力部材535が回転すると、入力部材535は、2つの中間部材536を離間させる方向に移動するようになっている。これにより、入力軸531が回転するときには、ローラ538が前記楔形凹部と出力部材534の内周面との間にて噛み込まれた状態となり、入力部材535の回転が、中間部材536及びローラ538を介して出力部材534ひいては出力軸532に伝達される。従って、入力軸531から出力軸532に対する駆動力伝達では、入力軸531が正逆どちらの方向に回転する場合であっても、出力軸532に対する入力軸531の回転による駆動力の伝達が行われる。
【0045】
一方、出力軸532の回転に伴い出力部材534が回転したとしても、図7に示すように、2つの中間部材536は引張りばねTSにより接近した状態となっているので、ローラ538は出力部材534の内周面から離間した状態で維持される。そのため、出力軸532が回転しても、出力部材534の回転は入力部材535へと伝達されないこととなり、出力軸532は単に空転する。従って、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達では、出力軸532が正逆どちらの方向に回転する場合であっても、出力軸532が空転して、入力軸531に対する出力軸532の回転による駆動力の伝達は行われない。
【0046】
次いで、上述した電動操作装置1の動作について説明する。まず、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えるように前記操作パネルが操作されると、前記開閉制御装置によって、前記位置検知センサからの検知信号に基づき、前記排水口が閉状態であるか否かが判定される。ここで、前記排水口が開状態であると判定された場合には、前記排水口を開状態へと切換える必要はないため、モータ3に対する通電は行われず、モータ軸31は停止した状態で維持される。
【0047】
これに対し、前記排水口が開状態ではない(閉状態である)と判定された場合には、前記開閉制御装置によって、モータ軸31が一方向に回転するようにモータ3の動作が制御される。その結果、入力軸連結部52及び入力軸531が一方向に回転する。また、入力軸531から出力軸532に対する駆動力伝達では、出力軸532に対する入力軸531の回転による駆動力の伝達が行われるため、入力軸531から出力軸532に対し駆動力が伝達されて、出力軸532及び出力軸連結部54が一方向に回転する。そして、出力軸連結部54の回転に伴い、ラック部55及びインナーワイヤ56が往動(電動操作装置1側から前記栓蓋側に移動)する。これにより、前記栓蓋が上動して、前記排水口が閉状態から開状態へと切換えられる。また、モータ3に対する通電停止は、前記開閉制御装置によって、前記位置検知センサからの検知信号に基づき、前記排水口が開状態になったと判定されたときに行われる。尚、本実施形態において、前記栓蓋は、前記シール部材67で生じる抵抗(摩擦力)や前記支持軸側に設けられた図示しない保持機構(例えば摩擦力等を生じさせるもの)によって上動した状態で維持される。
【0048】
一方、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えるように前記操作パネルが操作されると、前記開閉制御装置によって、前記位置検知センサからの検知結果に基づき、前記排水口が閉状態であるか否かが判定される。ここで、前記排水口が閉状態であると判定された場合には、前記排水口を閉状態へと切換える必要はないため、モータ3に対する通電は行われず、モータ軸31は停止した状態で維持される。
【0049】
これに対し、前記排水口が閉状態ではない(開状態である)と判定された場合には、前記開閉制御装置によって、モータ軸31が他方向に回転するようにモータ3の動作が制御される。その結果、入力軸連結部52及び入力軸531が他方向に回転する。また、入力軸531から出力軸532に対する駆動力伝達では、出力軸532に対する入力軸531の回転による駆動力の伝達が行われるため、入力軸531から出力軸532に対し駆動力が伝達されて、出力軸532及び出力軸連結部54が他方向に回転する。そして、出力軸連結部54の回転に伴い、ラック部55及びインナーワイヤ56が復動(栓蓋側から電動操作装置1側に移動)する。これにより、前記栓蓋が下動して、前記排水口が開状態から閉状態へと切換えられる。また、前記開閉制御装置によって、前記位置検知センサからの検知結果に基づき、前記排水口が閉状態となったか否かが判定されており、前記排水口が閉状態になったと判定されたときに、モータ3に対する通電が停止される。尚、モータ3に対する通電停止については、伝達部5の停止時間(伝達部5がそれ以上移動することができない状態となってからの経過時間)が所定時間を超えたときにモータ3への通電を停止する構成としてもよい。また、単にモータ軸31が一定量だけ回転したときにモータ3への通電を停止する構成としてもよい。
【0050】
また、上述した電動操作装置1では、例えば停電や装置の故障などによって、前記排水口が開状態であるとき(前記栓蓋が上動した状態であるとき)に、モータ3等を用いた栓蓋の電動操作が不能になったとしても、手動(例えば前記栓蓋を手で押すこと等)により前記栓蓋を下動させて、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えることが可能である。すなわち、上記の通り、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達では、出力軸532が空転して、入力軸531に対する出力軸532の回転による駆動力の伝達が行われないため、手で押すこと等により栓蓋に対し下向きの力を加えると、モータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち下流側伝達部5Aよりも上流側の伝達経路を構成する部分(例えば出力軸532等)によって阻害されることなく、出力軸532が空転するとともに、下流側伝達部5A(ラック部55やインナーワイヤ56等)が復動する。その結果、前記栓蓋を下動させて、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えることができる。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態によれば、クラッチ機構53は、双方向フリークラッチ機構によって構成されており、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達では、出力軸532が空転するように構成されている。従って、入力軸531が回転していない状態では、モータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち下流側伝達部5Aよりも上流側の伝達経路を構成する部分(例えば出力軸532等)によって阻害されることなく、下流側伝達部5Aが移動可能な状態となる。これにより、前記排水口が開状態であるときに停電や装置の故障が生じたとしても、手動により前記栓蓋を下動させて、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えることが容易に可能となる。
【0052】
また、双方向フリークラッチ機構を利用しているため、電動操作装置1の小型化や、製造等に係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0053】
さらに、手動により前記栓蓋を下動させたときに、上記従来技術のような、クラッチ機構に起因する前記栓蓋の上方への戻り移動が生じないようにすることができる。従って、上方への戻り移動に対応するために栓蓋に対し特別な対策を施す必要がなくなる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。図8に示すように、本第2実施形態における電動操作装置10は、前記栓蓋を手動操作するための手動操作部7と、インナーワイヤ56等を往動した状態でロックするためのロック機構8とを有する点で上記第1実施形態における電動操作装置1と相違する。尚、図8では、伝達部5のうち後述する操作軸57よりも上流に位置する部分(例えば出力軸連結部54など)や当該部分に対応するケース2などに係る断面(主に図の左側部分の断面)と、操作軸57や後述するガイド部材91等に係る断面(主に図の右側の断面)とで異なる断面をとっている。
【0054】
また、本第2実施形態において、ケース2における上記第1実施形態のラック収容部23に相当する部分は、手動操作部7やロック機構8を設けることに対応すべく、両端が開口した筒状の中間筒部24となっている。そして、中間筒部24に対しガイド部材91及び機構保持部92が直列的に連結された構成となっている。まず、ガイド部材91及び機構保持部92について説明する。
【0055】
ガイド部材91は、所定の取付対象(本第2実施形態では浴槽のフランジ部101)に取付けられており、当該取付対象に対する電動操作装置10の取付部を担う。ガイド部材91は、自身の外周に形成された雄ねじに所定のナット(不図示)を螺合し、自身の一端部に設けられた鍔状部分と前記ナットとで前記取付対象を挟み込むことによって、当該取付対象に取付けられている。
【0056】
また、ガイド部材91は、筒状をなしており、その内周に配置された手動操作部7の往復移動をガイドする役割を有している。尚、ガイド部材91が取付けられる取付対象については、フランジ部101に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、浴槽近傍に設けられたカウンタや、浴槽側面を覆うエプロンなどを取付対象としてもよい。
【0057】
さらに、ガイド部材91は、所定の連結用部品93及び環状のシール部材94を用いて、中間筒部24の一端部に対し直列的かつ水密に連結されている。尚、中間筒部24に対するガイド部材91の連結手法を適宜変更してもよい。
【0058】
機構保持部92は、筒状をなし、その内周部にてロック機構8を保持するものである。本第2実施形態において、機構保持部92は、ガイドチューブ61の接続対象としても機能する。機構保持部92は、所定の連結用部品95及び環状のシール部材96を用いて、中間筒部24の他端部に対し直列的かつ水密に連結されている。尚、中間筒部24に対する機構保持部92の連結手法を適宜変更してもよい。
【0059】
次に、手動操作部7及びロック機構8について説明する。手動操作部7は、手動操作の対象となるものであって、本第2実施形態では操作ボタンにより構成されている。手動操作部7は、ガイド部材91の内周面に沿って往復移動可能とされており、棒状の操作軸57の先端部に取付けられている。手動操作部7及び操作軸57は一体となって往復移動する。
【0060】
尚、操作軸57は、上記第1実施形態におけるラック部55に対応するものであって、その側面には、自身の長手方向に沿って設けられた複数の突条部からなる歯部57aが形成されている(図9参照)。そして、当該歯部57aが出力軸連結部54の歯車541に噛合された状態となっている。そのため、操作軸57は、手動操作部7に対する操作(押圧操作)及びモータ3の動作による歯車541の回転の双方により移動可能である。
【0061】
ロック機構8は、ベース部81、連結軸部82、付勢部83及び回転リング84を備えている(尚、図8における付勢部83は、その断面のみを示す)。
【0062】
ベース部81は、連結軸部82が挿通される貫通孔を備えた円筒状をなしており、付勢部83及び回転リング84を内部に収容している。また、本第2実施形態では、ベース部81に対し、アウターチューブ4の端部が取付けられている。ベース部81の内部には、上下方向(連結軸部82の移動方向)に沿って相対向する案内歯81a及び係合歯81bが設けられている。
【0063】
案内歯81aは、ベース部81の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。案内歯81aは、所定の傾斜面を具備しており、当該傾斜面へと接触した回転リング84を所定方向に一定角度だけ回転させるという役割を有する。
【0064】
係合歯81bは、上下方向(連結軸部82の移動方向)に沿って延びる突起状をなしており、ベース部81の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。係合歯81bの先端部(下端部)には、回転リング84(より詳しくは、回転リング84の後述する被係合歯)が係合される係合部分が設けられている。また、隣接する係合歯81b間には、上下方向に沿って延びる溝が形成されている。
【0065】
連結軸部82は、電動操作又は手動操作に伴う操作軸57の変位による駆動力を前記栓蓋側へと伝達するためのものである。連結軸部82は、棒状をなし、ベース部81の内周において往復移動(上下動)可能な状態で配置されている。また、連結軸部82は、その一端部(上端部)が操作軸57に接続され、その他端部(下端部)がインナーワイヤ56に接続された状態となっている。従って、電動操作や手動操作に伴い操作軸57や連結軸部82が往復移動すると、その移動に合わせてインナーワイヤ56が往復移動する。
【0066】
付勢部83は、連結軸部82や操作軸57等に対し復動(上動)方向の付勢力を付与するためのものである。付勢部83は、伸縮変形可能なばねによって構成されており、ベース部81内において圧縮変形した状態で設置されている。
【0067】
回転リング84は、円環状をなしており、連結軸部82の外周において回転可能な状態で支持されている。回転リング84は、連結軸部82の往復移動時に、連結軸部82とともに往復移動する。
【0068】
さらに、回転リング84は、自身の外周面に、外側に突出する複数の被係合歯(不図示)を備えている。当該被係合歯は、回転リング84の周方向に沿って等間隔に設けられており、それぞれ同一形状とされている。
【0069】
このロック機構8においては、手動操作部7に対する操作(押圧操作)やモータ3の動作に伴い、連結軸部82が所定位置を越える位置まで往動(下動)すると、回転リング84の前記被係合歯が案内歯81aへと接触しつつ当該案内歯81aを摺動することで、回転リング84が若干回転する。そして、手動操作部7に対する操作が解除されたり、モータ3の動作が停止されたりすることで、付勢部83からの付勢力により回転リング84や連結軸部82が復動する。これにより、回転リング84の前記被係合歯が係合歯81bの先端部に設けられた前記係合部分に係合された状態となり、回転リング84や連結軸部82は最大限往動した位置から若干復動した位置でロックされる。
【0070】
尚、このロック状態では、インナーワイヤ56が往動するとともに前記栓蓋が上動した状態で維持される。従って、前記排水口は開状態で維持される。
【0071】
一方、このロック状態で、手動操作部7に対する操作やモータ3の動作に伴い、連結軸部82が前記所定位置を越える位置まで再び往動すると、回転リング84の前記被係合歯が案内歯81aと接触しつつ当該案内歯81aを摺動することで、回転リング84が若干回転する。そして、手動操作部7に対する操作が解除されたり、モータ3の動作が停止されたりすることで、付勢部83からの付勢力により回転リング84や連結軸部82が復動(上動)する。このとき、回転リング84の前記被係合歯が各係合歯81b間の前記溝に入り込むこととなり、回転リング84や連結軸部82は、ロックが解除されるとともに最大限復動した位置に戻る。このようにロック機構8によれば、連結軸部82が前記所定位置を越える位置まで往動する度に、連結軸部82等のロック及びロック解除を交互に行うことが可能である。
【0072】
尚、ロックが解除されると、付勢部83からの付勢力によりインナーワイヤ56が復動するとともに、前記栓蓋が下動する。そのため、前記排水口は閉状態となる。
【0073】
また、本第2実施形態では、出力軸連結部54、操作軸57及びインナーワイヤ56によって、下流側伝達部5Bが構成されている。下流側伝達部5Bは、モータ3の動作及び手動操作部7に対する操作の双方によって移動可能である。
【0074】
加えて、本第2実施形態では、ロック機構8が設けられることに対応して、前記開閉制御装置は、次のようにしてモータ3の動作を制御する。すなわち、前記開閉制御装置は、前記排水口を開状態から閉状態へと切換える際、及び、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える際の双方において、連結軸部82が前記所定位置を越える位置に至るようにモータ3の動作を制御する。そして、前記開閉制御装置は、連結軸部82が前記所定位置を越えた位置に至ると、モータ3への通電を停止する。従って、本第2実施形態において、前記開閉制御装置は、前記排水口を開状態から閉状態へと切換える際、及び、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える際の双方で共通の動作が行われるようにモータ3の動作を制御する。尚、連結軸部82が前記所定位置を越えたか否かは、例えば連結軸部82の位置を直接又は間接的に検出可能なセンサからの信号に基づき把握することができる。
【0075】
次いで、上記のように構成された本第2実施形態における電動操作装置10の動作について説明する。
【0076】
まず、手動操作部7を用いた手動操作については、連結軸部82が前記所定位置を越える位置に至るまで手動操作部7を操作(押圧操作)することで、前記排水口の開閉状態を切換えることができる。ここで、クラッチ機構53は、出力軸532から入力軸531への駆動力の伝達では、出力軸532が空転するように構成されているため、手動操作部7の操作に伴う操作軸57等の移動が出力軸532によって阻害されることはなく、手動操作による前記排水口の開閉状態の切換えをスムーズに行うことができる。尚、前記排水口が開状態であるときには、ロック機構8による連結軸部82等のロックによって、手動操作部7や操作軸57は往動(下動)した状態で維持される。
【0077】
一方、モータ3を用いた電動操作については、前記排水口の開閉状態を切換えるように前記操作パネルが操作されることで、前記開閉制御装置によって連結軸部82が前記所定位置を越える位置まで移動するようにモータ3の動作が制御され、その結果、前記排水口の開閉状態を切換えることができる。ここで、連結軸部82が前記所定位置を越える位置まで移動し、モータ3への通電が停止された状態になると、操作軸57や連結軸部82などは、出力軸532によって阻害されることなく、往復移動可能な状態となる。そのため、前記排水口を閉状態から開状態へと切換える際には、モータ3への通電停止後に、付勢部83からの付勢力によって連結軸部82等が最大限往動した状態から若干だけ復動するとともに、ロック機構8によって連結軸部82等がロックされる。また、前記排水口を開状態から閉状態へと切換える際には、モータ3への通電停止後に、ロック状態が解除されるとともに、付勢部83からの付勢力によって連結軸部82や操作軸57などが最大限復動した位置に戻ることとなる。
【0078】
また、本第2実施形態における電動操作装置10では、上記第1実施形態における電動操作装置1と同様、例えば停電や装置の故障などによって、前記排水口が開状態であるとき(前記栓蓋が上動した状態であるとき)に、モータ3等を用いた前記栓蓋の電動操作が不能になったとしても、手動により前記栓蓋を下動させて、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えることが可能である。本第2実施形態では、手動操作部7を操作することで、モータ3の動作により生じた駆動力の伝達経路のうち下流側伝達部5Bよりも上流側の伝達経路を構成する部分(例えば出力軸532等)によって阻害されることなく、前記栓蓋を上下動させて、前記排水口の開閉状態を切換えることができる。
【0079】
以上、本第2実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0080】
加えて、本第2実施形態によれば、クラッチ機構53により、出力軸532等によって阻害されることなく下流側伝達部5Bが移動可能な状態となっているから、停電時等における前記栓蓋の手動操作を可能とするための作業をわざわざ行う必要がない。従って、使用者にとっての使い勝手を飛躍的に高めることができる。
【0081】
また、停電時等における前記栓蓋の手動操作を実現するにあたって、特段の複雑な構造を用いる必要はないから、電動操作装置10の製造等に係るコストの増大を効果的に抑制することができる。
【0082】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0083】
(a)上記実施形態で挙げたクラッチ機構53以外の双方向フリークラッチ機構(フリータイプ双方向クラッチ)を採用してもよい。例えば、図10~12に示すように、入力軸581と連結又は一体化された円筒状の内歯歯車583と、出力軸582と連結又は一体化された太陽歯車584と、太陽歯車584及び内歯歯車583と噛合可能であるとともに、突起状の支持軸586により支持された複数の遊星歯車585とを有するクラッチ機構58を用いてもよい。
【0084】
このクラッチ機構58の詳細については、許6985313号公報に記載されているため、ここでは簡単な動作だけ説明すると、遊星歯車585は、入力軸581の回転に伴い内歯歯車583によって自転すると、太陽歯車584に噛合されるとともに、その内周面が支持軸586の外周面に係合される(図11参照)。そのため、入力軸581から出力軸582に対する駆動力伝達では、出力軸582に対する入力軸581の回転による駆動力の伝達が行われる。一方、遊星歯車585は、出力軸582が回転したときには、太陽歯車584から離間して、太陽歯車584に対する噛合が解除される(図12参照)。そのため、出力軸582から入力軸581への駆動力の伝達では、出力軸582が空転することで、入力軸581に対する出力軸582の回転による駆動力の伝達が行われないことになる。
【0085】
(b)上記第2実施形態においては、電動操作(モータ3の動作)により、前記排水口を開状態から閉状態へと切換えること、及び、前記排水口を閉状態から開状態へと切換えることの双方が可能とされているが、どちらか一方のみが可能となるように構成してもよい。
【0086】
(c)上記実施形態では、槽体として浴槽を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は浴槽に限定されるものではない。従って、例えば、洗面ボウルやキッチンの流し台などの浴槽以外の槽体に対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…電動操作装置、3…モータ(通電動作部)、5…伝達部、5A,5B…下流側伝達部、7…手動操作部、53,58…クラッチ機構、531,581…入力軸、532,582…出力軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12