(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159495
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】フェンス
(51)【国際特許分類】
E04H 17/04 20060101AFI20231025BHJP
A01M 29/30 20110101ALI20231025BHJP
【FI】
E04H17/04 Z
A01M29/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069170
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】304053946
【氏名又は名称】株式会社キャムズ
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅章
【テーマコード(参考)】
2B121
2E142
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BB27
2B121EA24
2B121FA12
2E142AA01
2E142BB00
2E142BB01
2E142HH03
2E142HH11
2E142HH22
2E142HH26
2E142MM02
(57)【要約】
【課題】 複数の柱と複数のワイヤーだけで構成できるため、どのような場所にも容易に設置できるフェンスを提供する。
【解決手段】 本発明のフェンスは、横ワイヤー、縦ワイヤー、端柱、および、中間柱を主な構成材とする獣害防止のためのフェンスであって、上記横ワイヤーの端部は、上記端柱に設けられた可動支持具によって、当該支持具を支点として回転可能な状態に支持され、上記横ワイヤーの中間部は、上記中間柱に設けられた当接具に当接し、上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーとの交点が、上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーが圧接するように設けられた締め具によって固定されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横ワイヤー、縦ワイヤー、端柱、および、中間柱を主な構成材とする獣害防止のためのフェンスであって、
上記横ワイヤーの端部は、上記端柱に設けられた可動支持具によって、当該支持具を支点として回転可能な状態に支持され、
上記横ワイヤーの中間部は、上記中間柱に設けられた当接具に当接し、
上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーとの交点が、上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーが圧接するように設けられた締め具によって固定された
ことを特徴とするフェンス。
【請求項2】
上記可動支持具は、
上記横ワイヤー端部を支持する横ワイヤー支持部と、
上記横ワイヤー支持部と連結し、略楕円体の一部からなる略楕円対面部と、
を有し、
上記略楕円体部の外面は、上記端柱に設けられた穴に当接し、
上記横ワイヤー支持部は、上記略楕円体部とネジ機構により連結することで、並進方向に長さを調整可能に固定できることにより、上記ワイヤーに任意の張力を付与することを可能とした
ことを特徴とする請求項1に記載のフェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣害予防のためのフェンスに関するものであり、特に植林地区の保全に適したフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木材不足に加えて、脱炭素社会の実現といった観点から、植林が盛んに行われている。地盤の安定化、水資源の確保、生態系の保全、防風、防砂といったさまざまな目的でも、植林が行われている。
しかし、草食動物によって苗木の若芽が食されることもしばしばである。特に、鹿による苗木の食害は深刻である。温暖化や天敵であるオオカミの減少が、鹿の増加を促していることも、問題を深刻化している。
【0003】
そのため、鹿が入れないように、植林した周囲にネットをフェンス状に張り巡らすことが従来から行われている。また、このような目的に特化したフェンスも提案されている。例えば、動物による破網を困難にし、かつ取り扱いを簡便になるという効果を有するものであり、金属線材のみで撚紐無結節網に編網したネット本体の組節部はきつめに、また網脚部は弛めに形成したことを特徴とするフェンス状獣害防止ネットが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植林を保護するためには、植林された広範な地域を囲えるだけの長大なフェンスが必要である。特に、大規模に植林される場所は山間部である場合がほとんどであり、部材の運搬が難しい場所もある。また、複雑な傾斜を有する場所にフェンスを構築する必要がある。
したがって、組み立て・設置の容易性、フェンス構成部材の運搬の容易性、傾斜地に適した構成、噛み切られない強度といった様々な要求を満足するフェンスが求められる。
特許文献1に示されたフェンス状獣害防止ネットは、強度に関しては考慮されているものの、その他の要求に対しては、十分とは言えない。例えば、撚紐無結節網に編網したネットを多数枚準備し、設置場所に運搬する必要がある。設置場所が山間部である場合、植林場所を囲む総延長を予め計測しておくことは難しく、通常は、余分にフェンス構成部材を準備し、運搬することになる。また、傾斜に立てた支柱間にネットを張る場合、ネットの側面は支柱とは平行にならず、支柱の下部に隙間ができてしまう、といった問題も生じる。このような隙間等に対応するといった際には、部材の加工も必要になることが多く、加工による材料ロス等も考慮に入れる必要がある。しかし、事前にどの程度のロスが生じるかを推測することは困難であり、やはり余分な構成部材を準備し、運搬することになり、無駄なコストが生じていた。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたものであり、事前の準備が最小限で済み、現地での組み立て・設置が容易で、且つ、傾斜地にも適したフェンスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフェンスは、横ワイヤー、縦ワイヤー、端柱、および、中間柱を主な構成材とする獣害防止のためのフェンスであって、
上記横ワイヤーの端部は、上記端柱に設けられた可動支持具によって、当該支持具を支点として回転可能な状態に支持され、
上記横ワイヤーの中間部は、上記中間柱に設けられた当接具に当接し、
上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーとの交点が、上記横ワイヤーと上記縦ワイヤーが圧接するように設けられた締め具によって固定されたことを特徴とする。
【0008】
また、上記可動支持具は、
上記横ワイヤー端部を支持する横ワイヤー支持部と、
上記横ワイヤー支持部と連結し、略楕円体の一部からなる略楕円対面部と、
を有し、
上記略楕円体部の外面は、上記端柱に設けられた穴に当接し、
上記横ワイヤー支持部は、上記略楕円体部とネジ機構により連結することで、並進方向に長さを調整可能に固定できることにより、上記ワイヤーに任意の張力を付与することを可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフェンスは、複数の柱と複数のワイヤーだけで構成できるため、任意の大きさ・形状の土地を囲むフェンスとしての優れた適性を有している。勾配地においても、勾配が大きく変化するポイントで特別な加工が不要であり 最低限の工具で施工が出来る。
したがって、山間部といった複雑な形状、多様な勾配を有する場所に適したフェンスであり、植林地域を保護するためのフェンスとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のフェンス全体の一端側のみを示す部分図である。
【
図3】端柱における横ワイヤー端部の支持方法の説明図(傾斜がない場合)である。
【
図4】端柱における横ワイヤー端部の支持方法の説明図(傾斜がある場合)である。
【
図5】中間柱における横ワイヤーとの当接部の(a)側面図と、(b)、(c)横ワイヤーを当接させた状態の正面図である。
【
図6】横ワイヤーと縦ワイヤーをクロスジョイントを用いて圧接させる方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態.
以下に、本発明の実施の形態に係るフェンスについて、図を用いて説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の良好な一例であって、特に本発明をこの一例に限定するものではない。本発明の良好な一例を示すにすぎないため、以下の実施の形態と同様の発明概念を持つ発明品を本発明は含有するものである。
【0012】
<本発明の構成>
まず、フェンスの構成について説明する。
図1はフェンス全体の一端側を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態のフェンスは、横ワイヤー5、縦ワイヤー6、端柱1、および、中間柱2~4を主な構成材とする獣害防止のためのフェンスである。フェンスの高さは、例えば180cm程度である。
なお、
図1においては、端柱1は1本のみ示しているが、横ワイヤー5の他端側にも設けられている。端柱1は、地中に打ち込まれ、且つ、控え柱1aによっても支えられ、横ワイヤー5の張力に負けて、ワイヤー5側に耐えれないようにしっかりと固定されている。
端柱1の上面図と正面図をそれぞれ
図2(a)、(b)に示す。正面に横ワイヤー5の本数分だけ貫通した穴1cが開いている。
【0013】
図3は、この端柱1によって横ワイヤー5の端部がどのように支持されているかを説明するための図であり、
図1における囲み点線A部分の拡大図である。横ワイヤー5の端部は、端柱1に設けられた可動支持具である索端金物によって、当該支持具を支点として回転可能な状態に支持されている。可動支持具は、横ワイヤー支持部1cと略楕円体面1dとからなり、両者はネジ部1e等により並進可能に任意位置で固定できるようになっている。これにより、横ワイヤー5に任意の張力を付与することを可能としている。そして、端柱の穴1cに略楕円体面1dがはまり込むように当接しているため、略楕円体面1dは回転可能になっている。すなわち、傾斜地においては、横ワイヤー5に引っ張られる力によって回転し、横ワイヤー5の端部位置が傾斜によらず、ほぼ一定の位置にすることができる。
図3は、傾斜がない場合を、
図4は約10°の傾斜がある場合の状態を示している。
【0014】
以上のように、横ワイヤー5の端部を
図3に示すような構成で端柱1に支持することにより、様々な傾斜角度や傾斜方向に対応可能であり、横ワイヤー5の端部を端柱1に対してほぼ一定の位置で支持し、また、ネジ部1e等により、横ワイヤ―5を引っ張り緊張させた際にも、ネジ部1e等を構成するボルト等にストレスが掛からない。
【0015】
横ワイヤー5の中間部は、中間柱2~4それぞれに設けられた当接具に当接している。いずれの中間柱でも構成は同様であるので、点線Bで囲んだ中間柱2の上部の様子を
図5に示す。固定具2aは、横ワイヤー5の本数分だけ設けられている。
図5においては、そのうち、上部の2個について示している。
図5(a)は側面図である。固定具2aはコの字形状をしており、固定具2aを中間柱に固定するボルトの上に、あるいは下に横ワイヤー5を通すことができる。例えば、中間柱2から傾斜が変わって、上り傾斜になっている場合には、
図5(b)に示すように、固定具2aのボルトの下に横ワイヤー5を引っかけるようにすれば、横ワイヤー5はしっかりと固定具2aにより固定される。傾斜が変わらずに平坦である場合や下り傾斜になる場合には、固定具2aのボルトの上に横ワイヤー5を通すようにすれば良い(
図5(c))。
【0016】
次に
図6を用いて、横ワイヤー5と縦ワイヤー6からなるネットの構成について説明する。横ワイヤー5と縦ワイヤー6との各交点は、締め具7によって、2本のワイヤーが圧接されて、固定される。締め具7は、一例として
図6に示すように、締め具下面部7aと締め具上面部7cとからなり、それら2枚の間に横ワイヤー5と縦ワイヤー6を挟み込み、雌ネジ7bと雄ネジ(ボルト)7dとによって、強固に圧接固定する。
以上のように、ワイヤーと締め具のみによって、設置現場にてネットを形成することができるため、事前にネットの準備が不要である。
【0017】
<イノシシ等への対応>
以上に示したように、本フェンスは比較的柔軟な構成である。本フェンスは、苗木の食害を防止することを主眼としたものであり、特に鹿の侵入を防止することを目的としている。鹿はフェンスの下を潜ったり、フェンスに攻撃を行ったりするようなことはなく、したがって、鹿が飛び越えることがない高さを有していれば、鹿の侵入を防止できる。
他方、イノシシのように、フェンス下の地面を掘ったりして侵入を図る動物もいる。こういった動物の侵入も防ぎたい場合には、フェンスの下部に亀甲網等の強固な網を設ければよい。例えば、横ワイヤー5や縦ワイヤー6に亀甲網を括り付ければ良い。
【0018】
<本発明のまとめ>
本発明のフェンスは、事前の準備が最小限で済み、且つ、現地での組み立て・設置が迅速に行えるという、これまでにはない全く新たな特長を有するものである。ネットがワイヤーと締め具のみによって構成されるため、現地でネットを容易に構成することができる。したがって、フェンスの総延長が明確でない場合であっても、ワイヤーと締め具を適量用意すれば対応できる。また、ネットを運ぶ必要がないため、車が通行できない場所への運搬も楽になる。
さらに、どのような傾斜地にも対応可能であり、複雑な地形の山間部において、特に威力を発揮するものである。
さらに、亀甲網等の強固な網を組み合わせることで、様々な動物の侵入を防ぐこともできる。
また、フェンスの下部には侵入不可能な隙間を設けることができるため、除草作業で草刈り機等によりフェンスに損傷を負わせるといった心配もない。
さらに、可動支持具である索端金物に絶縁硝子を用いることにより、電気柵にはない、より強固な獣害防止策を構成することができる。
また、中間柱をグラファイトで構成すれば、降雪、積雪にも対応でき、動物の侵入等に対しても優れた対応が可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1 端柱
1b 穴
1c 横ワイヤー支持部
1d 略楕円体面
1e ネジ部
2~4 中間柱
2a 固定具
5 横ワイヤー
6 縦ワイヤー
7 締め具(クロスジョイント)
7a 締め具下面部
7b 雌ネジ
7c 締め具上面部
7d 雄ネジ