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特開2023-159524スパンドレルに太陽電池モジュールを設置した建物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159524
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】スパンドレルに太陽電池モジュールを設置した建物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231025BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20231025BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
H02S40/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069237
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
【テーマコード(参考)】
2E110
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2E110AA55
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110GA33W
2E110GB32W
5F151JA13
5F151JA23
5F251JA13
5F251JA23
(57)【要約】
【課題】ガラスカーテンウォールを採用する建物において、建物の壁面の窓などの採光用の開口部以外部分に太陽電池を設置する技術を開発する。
【解決手段】外壁にガラスカーテンウォールが設置された建物において、スパンドレル内部空間に太陽電池モジュールを設置したことを特徴とする建物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁にガラスカーテンウォールが設置された建物において、スパンドレル内部空間に太陽電池モジュールを設置したことを特徴とする建物。
【請求項2】
スパンドレル部のガラス面側に赤外線透過膜を設置し、近赤外線域での発電効率の高い太陽電池モジュールを設置することを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
太陽電池モジュールを傾斜させて設置したことを特徴とする請求項2に記載の建物。
【請求項4】
スパンドレル内に、太陽電池モジュールに向けて日光を反射する反射板を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の建物。
【請求項5】
太陽電池モジュールが上下に複数段に配置され、各段の上側に日射を当該段に向けて反射する反射板を設けたことを特徴とする請求項4に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物壁面を利用した太陽光発電技術である。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として、再生エネルギーの利用促進が求められている。また、建物の省エネルギー化も求められてる。
建物の屋上や壁面に太陽電池を設置する提案もいくつかされている。本出願人も、下記特許文献に示すように、いくつか提案している。
【0003】
特許文献1(特許第6905936号公報)に示すように、隣接する太陽電池モジュールの間で重なり部分をもって実質的に鉛直方向に並設する太陽電池モジュールの設置方法など、建物に太陽光発電を応用する提案がなされている。
本発明者は特許文献2(WO2018/056286公報)に示すように建物のガラスを太陽電池に利用する提案もしている。
特許文献3(特開2000-64555号公報)には、建物の外壁に、着脱自在な大きさの異なる太陽電池取付板支持手段をそれぞれ取り付け、太陽電池取付板を、外壁と所定の間隔をおいて、傾斜した状態で支持することによって、破損等した太陽電池を容易に交換できるようにして、一定の発電能力を維持するとともに、太陽電池を壁面に対して傾斜させた状態で取り付けることにより、効率よく太陽光線を受けることができるようにした太陽電池を壁面に取り付ける構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6905936号公報
【特許文献2】WO2018/056286公報
【特許文献3】特開2000-64555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガラスカーテンウォールを採用する建物において、建物の壁面の窓などの採光用の開口部以外部分に太陽電池を設置する技術を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.外壁にガラスカーテンウォールが設置された建物において、スパンドレル内部空間に太陽電池モジュールを設置したことを特徴とする建物。
2.スパンドレル部のガラス面側に赤外線透過膜を設置し、近赤外線域での発電効率の高い太陽電池モジュールを設置することを特徴とする1.に記載の建物。
3.太陽電池モジュールを傾斜させて設置したことを特徴とする2.に記載の建物。
4.スパンドレル内に、太陽電池モジュールに向けて日光を反射する反射板を設けたことを特徴とする2.又は3.に記載の建物。
5.太陽電池モジュールが上下に複数段に配置され、各段の上側に日射を当該段に向けて反射する反射板を設けたことを特徴とする4.に記載の建物。
アルミ板などの金属板を積層して保全性を挙げることができる。
【発明の効果】
【0007】
1.ガラスカーテンウォールを採用する建物において、建物の壁面の窓などの採光用の開口部以外部分であるスパンドレル部分の内部空間を利用して太陽電池を設置することによって、壁面の内側に太陽電池モジュールを設置できた。
スパンドレル内に太陽電池モジュールを設けたので、太陽電池モジュールが露出せず、外観に影響を与えずに、太陽電池を装備した建物を提供することができる。
本発明は、既存ビルのスパンドレル部を利用して、太陽電池モジュールを後付けすることができ、建物の発電量を向上させることができる。
2.さらに、太陽電池モジュールの周囲に太陽光反射板を太陽電池モジュールに向けて設置することにより、スパンドレル内部に入射する太陽光の利用効率を増大させ、発電効率を増加させることができる。
3.さらに、スパンドレル部の開口部に、可視光域の透過率が低く近赤外域の透過率が高いガラス又は、ガラスに併設する膜を使用し、近赤外域の日射で発電効率の高い太陽電池モジュールを採用することにより、屋外からは太陽電池モジュールが見えず、外観に影響させずに発電ができる。
スパンドレルの奥行を利用して、太陽電池モジュールを傾斜させて設置することができ、壁面の垂直設置よりも発電量が増加させることができる。
4.スパンドレル内部の空間を利用して、太陽電池モジュールを分割して、数段に分けて設置することにより、さらに傾斜させて設置することができ、発電効率を更に向上させることができる。
5.本発明は、太陽電池モジュールの設置角度、反射板の設置により、日射を有効活用して、年間の発電量の最大化を図るとともに、近赤外線透過のガラス又は、膜を使用して、建物の外観設計の自由度を確保している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スパンドレル内部空間に太陽電池モジュールを設置した建物を示す図。
図2】太陽電池モジュールを設置したスパンドレルを示す図。
図3】太陽電池モジュールと反射板の例1、2を示す図。
図4】太陽電池モジュールと反射板の例3、4を示す図。
図5】太陽電池モジュールと反射板の例5を示す図。
図6】スパンドレルに近赤外線透過膜を設置した例を示す図。
図7】スパンドレルに側部反射板を設置した例と反射光を示す図。
図8】スパンドレルに上部反射板を設置した例と反射光を示す図。
図9】スパンドレルに中部反射板を設置した例と反射光を示す図。
図10】スパンドレルに太陽電池モジュールを設置した下部の例を示す図。
図11】スパンドレルに太陽電池モジュールを設置する工程例を示す図。
図12】太陽光発電に関する波長の関係(a)、近赤外線(NIR)透過膜の透過する波長特性(b)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、スパンドレルの内部空間に太陽電池モジュールを設置した建物を示す図である。(a)に太陽電池モジュールを設置したスパンドレルの横断面を示している。(b)にガラスカーテンウォール建物において、太陽電池モジュールを設置するスパンドレル部分を示している。この図は一般的な説明のために用いたものであって、本発明が適用できるガラスカーテンウォール建物は、これに限定されるものではない。
ガラスカーテンウォール6が設置された建物10は、一般的に、方立34が縦方向に平行にあり、ガラス5が一面に設けられている。建物は、基本的には上スラブで区切られた上階層91、下スラブで区切られた下階層92があり、当該階層の外面は、居住部の採光用の開口部93と天井懐部分の外壁部になるスパンドレル1となっている。
スパンドレル1は、建物10の躯体42から方立34が突き出して設けられており、その先端にガラス5が設けられている。一般的には、両側の方立とガラスと躯体の壁面との間には空間が存在する。スパンドレルの大きさは、もちろん建物の設計仕様によるが、例えば、幅1~3m、高さ1~2m、奥行き10~30cm程度である。
本発明は、このスパンドレル1の内部空間2に太陽電池モジュール3を設置して、有効活用するものである。
図示(a)では、左右の方立34、34で形成される方立間53の方立間隔Lよりも短いPV幅Dである太陽電池モジュール3を設置している。この建物を南向きと仮定しており、方立の陰になって日射の少ない部分に余白を設けた配置例を示している。また、図示の例では、スパンドレルの奥側に断熱材43を設けて、建物内への熱負荷を軽減する措置を設けているが、太陽光発電には、直接関係しない。図1(a)に示す太陽電池モジュールの設置を基本として、複数の実施形態を次に提案する。
【0010】
図2に太陽電池モジュールを設置したスパンドレルを示している。図2では、太陽電池モジュール3に日射が当たりにくい上部余白と左右の余白に反射板44、46を設けている。また、太陽電池モジュール3の上辺を奥、下辺を手前にして、上向きに傾斜させて配置している。これによって、スパンドレルに入る太陽光を効果的に太陽電池モジュールに照射させるように工夫している。
太陽電池モジュール3と左右の方立34との間にある余白部分には、側部反射板45を傾斜させて設けている。太陽電池モジュール3の上側には上部反射板46を傾斜させて設けている。太陽電池モジュール3も(b)に示しように、上部を奥側に下部を手前にして上向きに傾斜させて配置している。図示の例では、両側の側部反射板45、45は同一であるが、建物の向きなどの日射の条件によって、反射効率が良くなるように調整できる。
【0011】
さらに、この態様では、ガラス5の内側に近赤外線透過膜52を設けている。近赤外線透過膜は、近赤外線を透過して太陽電池の利用エネルギーとし、可視光を反射するので、建物の外観的には、太陽電池モジュールの設置による変化が生じない。したがって、近赤外線透過膜を使用することにより、太陽電池モジュールの設置による、外観に与える影響を少なくすることができ、外観設計の自由度が確保される。
【0012】
図3~5に、太陽電池モジュールの主な設置例5タイプを示す。
図3に(a)反射板なしタイプ(Aタイプ)、(b)反射板設置タイプ(Bタイプ)、図4に(a)反射板+傾斜PVタイプ(Cタイプ)、(b)複数設置タイプ(Dタイプ)、図5にPV全面設置タイプ(Eタイプ)を示している。各図では上に横断面図、下に縦断面図を示している。なお、「PV」は「太陽電池モジュール」の省略表現とする場合がある。いずれも、図2と同様に近赤外線透過膜をガラス面に設けている。
【0013】
図3(a)に示す反射板なしのタイプ(Aタイプ)は、太陽電池モジュール3の左右と上部に余白を設けてスパンドレル1に設置している。また、太陽電池モジュール3は、垂直に設けてある。
図3(b)に示す反射板設置タイプ(Bタイプ)は、太陽電池モジュール3の左右に側部反射板45、45を、上部に上部反射板46をスパンドレル1に設置している。また、太陽電池モジュール3は、垂直に設けてある。
【0014】
図4(a)に示す反射板+傾斜PVタイプ(Cタイプ)は、太陽電池モジュール3の左右に側部反射板45、45を、上部に上部反射板46をスパンドレル1に設置している。太陽電池モジュール3は、上部を奥、下部を手前にして、傾斜角θを傾斜させて設けてある。
図4(b)に示す複数設置タイプ(Dタイプ)は、太陽電池モジュール3の左右に側部反射板45、45を設けてある。太陽電池モジュール3は3分割して3段に傾斜配置し、分割されている太陽電池モジュールの間に反射板を設けてある。反射板は、上から上部反射板46、中間の反射板を中部反射板47とする。分割した太陽電池モジュール3の傾斜角θは小さくなって、太陽光の利用効率を大きくすることができる。
【0015】
図5に示すPV全面設置タイプは、太陽電池モジュールをガラス面に近接させて、スパンドレルいっぱいに設置している。
【0016】
A~Dタイプを南面設置した場合の発電量を試算して比較すると表1のようになる。
タイプによって発電量に差はあるが、建物の制約や太陽電池モジュールの規格などを考慮して、適切に選択することができる。
【表1】
【0017】
図6に、スパンドレルに近赤外線透過膜を設置した例を示す。
近赤外線透過膜52をガラス5の内面側に設置する、近赤外線透過膜は、フィルム状あるいはシート状にして設置する。独立あるいはガラス面に添着することもできる。あるいは、新築時には近赤外線透過性を付与したガラスを使用することもできる。
近赤外線透過膜は、可視光線(VL:Visible Light)の透過を抑制し、近赤外線(NIR:Near infrared rays)を多く透過する。可視光を反射し、内部に設置した太陽電池モジュールが見えないので、外観上の影響が表れない(スパンドレル内部は見えにくい)。外壁等に太陽光発電機能を付加しても、建築外観(建築ファサード)設計の制約が少なくなり、意匠性の優れた建物を実現することができる。
【0018】
近赤外線は波長がおよそ0.8~2.5μmの電磁波とされ、中赤外線は、波長がおよそ2.5~4μmとされ、可視光線に相当する電磁波の波長は、およそ0.4~0.8μmである。
本発明の近赤外線透過膜は、この0.8~2.5μm(800~2500nm)程度の波長を多く透過し、0.8μm未満の波長の透過を抑制する(反射することも含む)光透過特性を備えている。なお、いくぶんかは可視光を透過してもよく、可視光域の透過率を波長選択的あるいは可視光全域の透過率を調整してもよく、厳密に電磁波の波長で区分する必要はない。
【0019】
近赤外線透過膜の構造は、近赤外線(NIR)透過膜をガラスに蒸着させる方法、合わせガラスで封止する方法、フィルム状にする方法等を採用することができる。新築時に計画する場合は、ガラスに近赤外線透過の機能を付与することもできる。
近赤外線透過膜を構成する材料には次のようなものがある。
近赤外線(NIR)透過膜は、NIRを透過する材料であるシリコン(Si)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、合成石英(FS)、ゲルマニウム(Ge)、N-BK7、臭化カリウム(KBr)、サファイア、塩化ナトリウム(NaCl)、ジンクセレン(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)等があって、これらの化合物をガラスやフィルムに蒸着させる方法で製膜することができる。
【0020】
図7~10に、図3、4に示す太陽電池モジュールや反射板を取り付ける構造(a)、日射の光の状況(b)を示している。
図7は、側部反射板を設置する構造の例で、図4(a)のCタイプをモデルにしたスパンドレルの右側に設けた側部反射板45である。
太陽電池モジュール3側端の背面側にC型軽鉄製などの下地71を立設し、この下地71にボルト・ナットなどの接合手段79aを用いて後治具72aを固定する。一方、方立34の前端側にはサッシ54を利用して前治具72bを設ける。後治具72aと前治具72bの形状は、斜めに配置される側部反射板45の配置に合わせて、屈曲成形されている。そして、後治具72aと前治具72bは、細長い素材で、側部反射板45の側部に沿って複数設け、ボルト・ナットなどの接合手段79b、79cで側部反射板45を固定できる。
ガラス5の内面側には、近赤外線透過膜52を設置する。近赤外線透過膜は、可視光の透過を抑制して、近赤外線を多く透過する。近赤外線透過膜52は、ガラス5に貼り付けることもできるし、近赤外線透過膜52をシート状にして膜枠55を設けた独立タイプにすることができる。なお、近赤外線透過膜の設置については、図8~10も同様である。
例えば、新築時には近赤外線透過膜52をあらかじめ貼り付けたガラス5を用いることができる。太陽電池モジュール3を改修時に設置する場合は、高所作業、貼り付け技術などを考慮すると膜枠に取り付けた独立タイプが適している。
【0021】
矢印は日射の状況を示しており、太陽光SLは近赤外線透過膜52で可視光VL部分が外面側へ反射し、近赤外線NIRが透過して側部反射板45で斜めに反射して太陽光モジュール3へ入射して、発電に寄与する。
なお、近赤外線透過膜と近赤外光に適した太陽電池については、本出願人が特願2021-047389号に開示している。
【0022】
図8は、上部反射板を設置する構造の例で、図4(a)のCタイプをモデルにしたスパンドレルの上側に設けた上部反射板46である。
太陽電池モジュール3の背面側にC型軽鉄製などの下地71を立設し、上部のサッシ51に治具を介して固定する。下地71に取り付けた上部PV治具72cに太陽電池モジュール3の上部をとめる。上部のサッシ51に取り付けたV字形の上部治具72dに上部反射板46を取り付けている。
矢印は日射の状況を示しており、太陽光SLは近赤外線透過膜52で可視光VLが外面へ反射し、近赤外線NIRが透過して上部反射板46で斜めに反射した太陽光モジュール3へ入射して、発電に寄与する。
【0023】
図9は、スパンドレルの中間に中部反射板と中部太陽電池を設置する構造の例で、図4(b)のDタイプをモデルにしたスパンドレルに分割した反射板と太陽電池を折り返して設けた例の設置構造である。
太陽電池モジュール3の背面側にC型軽鉄製などの下地71を立設し、中間から前端に受け板72fを設けた中間治具72eを前方に延ばして、受け板72fの上部で太陽電池の下端部を支え、下方に中部反射板47を取り付けている。
矢印は日射の状況を示している。上側の太陽光SL1は近赤外線透過膜52で可視光VL1が外面へ反射し、近赤外線NIR1が透過して太陽電池3-1へ入射して、発電に寄与する。下側の太陽光SL2は近赤外線透過膜52で可視光VL2が外面へ反射し、近赤外線NIR2が透過して、中部反射板47で斜めに反射されて、下側の太陽電池3-2へ入射して、発電に寄与する。太陽電池は、直接入射するNIR1と反射して入射するNIR2を発電に利用することができる。
また、分割して数段設けることによって、設置角度を調整できる。
【0024】
図10は、太陽電池モジュールの下端を設置する構造の例で、図4(a)のCタイプをモデルにしたスパンドレルの下部を示している。
太陽電池モジュール3の背面側にC型軽鉄製などの下地71の下端部がボルトなどで下部のサッシ54に固定されている。下部のサッシ54の前方部に取り付けた下部PV治具72gで太陽電池モジュール3の下端を支持する。
矢印は日射の状況を示しており、太陽光SLは近赤外線透過膜52で可視光VLが外面へ反射し、近赤外線NIRが透過して太陽光モジュール3へ入射して、発電に寄与する。
【0025】
図7~10に例示したように、奥側に設けた下地71とこの下地とサッシ54に各種の治具72を用いて、太陽電池モジュールと反射板をスパンドレル内に設置できる。
【0026】
図11に、既存のガラスカーテンウォール建物のスパンドレルに太陽電池モジュールを設置する施工工程を示す。
スパンドレルの開口は、縦2m、横3m、奥行き20cmとする。図4(a)に示すCタイプで上側と両側部に反射板を設置する。太陽電池モジュールは、縦1m、横2mのサイズである。近赤外線透過膜はほぼガラスと同じ大きさとするが、取り付けるサッシの構造などにしたがって調整する。なお、太陽電池は、既存のものからスパンドレルに収容できるサイズを選択することによって、機材の調達や設置作業が容易にできる。
第1工程として、建物のスパンドレルからガラスを取り外す。
第2工程として、スパンドレル内に下地と各種の治具を取り付ける。
第3工程として、太陽電池モジュールと反射板を設置する。
第4工程として、近赤外線透過膜を設置する。
第5工程として、外したガラスを装着する。
【0027】
太陽電池モジュールについて
太陽光発電に関する波長の関係を図12に示す。(a)にアモルファスシリコン型太陽電池は可視光を発電に利用しており、結晶シリコン型太陽電池は近赤外光の利用率が高いことを示している。太陽光発電変換率は、結晶シリコン型太陽電池が高いので、本発明では結晶シリコン型の太陽電池を用いることが有利である。
近赤外線(NIR)透過膜の透過する波長特性の例を図12(b)に示す。このように近赤外線の波長域である800nm(0.8μm)以上を透過し、およそ800nm(0.8μm)未満の可視光域は透過しない近赤外線透過膜を採用することができる。
本発明では、近赤外線が発電特性に適した太陽電池モジュールを組み合わせて用いると効果的である。
【符号の説明】
【0028】
1 スパンドレル(SD)
2 内部空間
3 太陽電池モジュール(PV)
32 傾斜太陽電池モジュール
33 分割太陽電池モジュール
34 方立
35 PV枠
42 躯体
43 断熱材
44 反射板
45 側部反射板
46 上部反射板
47 中部反射板
48 余白
5 ガラス
51 上部のサッシ
52 近赤外線透過膜
53 方立間
54 サッシ
55 膜枠
6 ガラスカーテンウォール
71 下地
72 治具
79 接合手段
9 外壁
91 上層階
92 下層階
93 開口部
10 建物
L 方立間隔
D PV(太陽電池)幅
d SD奥行
SDH スパンドレル高
PVD 太陽電池モジュール幅
PVH 太陽電池モジュール高
SL 太陽光(日射、日光)
VL 可視光
NIR 近赤外線
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12