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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159526
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】機能部品付き収容体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069240
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬大
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA02
3D131BB01
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC51
3D131BC55
3D131LA02
3D131LA03
3D131LA05
3D131LA06
(57)【要約】
【課題】機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、機能部品の保持力を高めて、機能部品の脱落を防止すると共に、収容体への機能部品の収容作業を容易にしつつ、収容体の耐久性の悪化を回避することを可能にした機能部品付き収容体及びタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ情報を取得するための機能部品20と、この機能部品20を収容する収容体10とを備えた機能部品付き収容体1であって、収容体10は、タイヤ内表面に固定される底部11と、この底部11から突出した側壁部12と、底部11と側壁部12により形成される収容部13と、この収容部13に連通する開口部14とを有し、側壁部12の内壁面12xの少なくとも一部に複数の凸部15a及び/又は凹部15bからなる凹凸領域15を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、
前記収容体が、タイヤ内表面に固定される底部と、この底部から突出した側壁部と、前記底部と前記側壁部により形成される収容部と、この収容部に連通する開口部とを有し、
前記側壁部の内壁面の少なくとも一部に複数の凸部及び/又は凹部からなる凹凸領域を有することを特徴とする機能部品付き収容体。
【請求項2】
前記凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzが10μm~2000μmであることを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項3】
前記凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzの1/2の高さを有する前記側壁部の内壁面に平行な平面を基準平面Sとするとき、前記基準平面Sにおける前記凸部の断面積の総和である総断面積Aと前記基準平面Sの面積Asとが0.2≦A/As≦0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項4】
前記凹凸領域の少なくとも一部が前記側壁部の内壁面における前記収容部の高さhbの1/2の高さ以下の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項5】
前記凹凸領域の面積A1と前記側壁部の内壁面の下半分の面積A0とが0.5≦A1/A0≦1.0の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項6】
前記凹凸領域の少なくとも一部が前記側壁部の内壁面の下半分から前記収容部の上端まで連続的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項7】
前記凹凸領域を構成する前記凸部及び/又は凹部は100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項8】
前記収容部に前記機能部品が収容された状態で前記側壁部の外壁側で測定される前記側壁部の前記底部に対する傾斜角度が前記収容部に前記機能部品が収容されていない状態で前記側壁部の外壁側で測定される前記側壁部の前記底部に対する傾斜角度よりも小さく、その角度差が5°~15°の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項9】
前記開口部の幅が前記収容部の最小幅よりも狭く、前記収容部の上側部分の周長D2uと前記機能部品の上側部分の周長D1uとが0.60≦D2u/D1u≦0.95の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能部品付き収容体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の機能部品付き収容体が前記タイヤ内表面に固定され、前記収容部に前記機能部品が収容されていることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部品付き収容体及びタイヤに関し、更に詳しくは、機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、機能部品の保持力を高めて、機能部品の脱落を防止すると共に、収容体への機能部品の収容作業を容易にしつつ、収容体の耐久性の悪化を回避することを可能にした機能部品付き収容体及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内圧や温度等のタイヤ内部情報を取得する機能部品(例えば、センサを含むセンサユニット)をタイヤ内表面に設置することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。機能部品を設置する際、ゴム等からなる収容体(コンテナ)をタイヤ内表面に貼り付け、その貼り付けられた収容体の内部に機能部品を収容する。その際、収容体が弾性変形し、機能部品の筐体の壁面を圧迫することで摩擦力が生じ、収容体内に保持される。しかしながら、この摩擦力が過度に小さい場合には、収容体の機能部品に対する保持力が弱く、タイヤが強い衝撃を受けた際などに機能部品が収容体から脱落することや、収容体内で機能部品が過度に動いて発熱が増大すること等の問題がある。その一方で、摩擦力が過度に大きい場合には、収容体への機能部品の収容作業を容易に行うことができないことや、機能部品を収容した際に機能部品が意図しない位置に固定されてしまい、それにより収容体に強い負荷が掛かって収容体の耐久性が悪化すること等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6272225号公報
【特許文献2】特表2016-505438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、機能部品を収容する収容体の内部形状を工夫することにより、機能部品の保持力を高めて、機能部品の脱落を防止すると共に、収容体への機能部品の収容作業を容易にしつつ、収容体の耐久性の悪化を回避することを可能にした機能部品付き収容体及びタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の機能部品付き収容体は、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、前記収容体が、タイヤ内表面に固定される底部と、この底部から突出した側壁部と、前記底部と前記側壁部により形成される収容部と、この収容部に連通する開口部とを有し、前記側壁部の内壁面の少なくとも一部に複数の凸部及び/又は凹部からなる凹凸領域を有することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明のタイヤは、上記の機能部品付き収容体が前記タイヤ内表面に固定され、前記収容部に前記機能部品が収容されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、収容体は、タイヤ内表面に固定される底部と、この底部から突出した側壁部と、底部と側壁部により形成される収容部と、この収容部に連通する開口部とを有し、側壁部の内壁面の少なくとも一部に複数の凸部及び/又は凹部からなる凹凸領域を有しているので、収容体に機能部品が収容された際に、機能部品の表面と収容体の側壁部の内壁面との接触面積は凹凸領域がない場合に比べて減少するため、機能部品の表面と収容体の側壁部の接触面の摩擦力が低減され、摩擦力を適度に調整することができる。これにより、機能部品の保持力を十分に確保しつつ、機能部品の脱落や過度な動きを防止することができると共に、収容体への機能部品の収容作業を容易にしつつ、機能部品を収容した際に収容体に過度な負荷が掛かることを防止し、収容体の耐久性の悪化を回避することができる。
【0008】
本発明の機能部品付き収容体において、凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzは10μm~2000μmであることが好ましい。これにより、機能部品の保持力を高めて、機能部品の脱落や過度な動きを効果的に防止することができると共に、収容体への機能部品の収容作業を容易にしつつ、機能部品を収容した際に収容体に過度な負荷が掛かることを防止し、収容体の耐久性の悪化を回避することができる。
【0009】
凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzの1/2の高さを有する側壁部の内壁面に平行な平面を基準平面Sとするとき、基準平面Sにおける凸部の断面積の総和である総断面積Aと基準平面Sの面積Asとは0.2≦A/As≦0.8の関係を満たすことが好ましい。これにより、機能部品の表面と収容体の側壁部の接触面の摩擦力を適度に確保することができる。
【0010】
凹凸領域の少なくとも一部は側壁部の内壁面における収容部の高さhbの1/2の高さ以下の範囲に形成されていることが好ましい。これにより、収容体に機能部品を収容し易くなり、機能部品の収容作業を効果的に改善することができる。特に、側壁部の上半分に凹凸領域を設けない場合には、凹凸領域を設けた側壁部の下半分で機能部品の保持力を確保することができると共に、収容体内での機能部品の動きを抑制して発熱を低減させることができる。
【0011】
凹凸領域の面積A1と側壁部の内壁面の下半分の面積A0とは0.5≦A1/A0≦1.0の関係を満たすことが好ましい。これにより、機能部品の表面と収容体の側壁部の接触面の摩擦力を適度に確保することができる。
【0012】
凹凸領域の少なくとも一部は側壁部の内壁面の下半分から収容部の上端まで連続的に形成されていることが好ましい。収容体に機能部品を収容する際、機能部品と収容体の側壁部とが密着することにより収容体と機能部品との間(例えば機能部品と底部との間)に空気が残存し、機能部品を適切な位置に挿入できないことがある。これに対して、上記のように凹凸領域を設けることにより、収容部の上端まで連続的に形成された凹凸領域が空気の通り道として機能し、連続的な凹凸領域を介して残存した空気を放出できるので、機能部品を適切な位置に挿入することができる。これにより、機能部品の収容作業を改善することができる。
【0013】
凹凸領域を構成する凸部及び/又は凹部は100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることが好ましい。これにより、収容体の耐久性と収容体への機能部品の収容し易さとを両立することができる。
【0014】
収容部に機能部品が収容された状態で側壁部の外壁側で測定される側壁部の底部に対する傾斜角度が収容部に機能部品が収容されていない状態で側壁部の外壁側で測定される側壁部の底部に対する傾斜角度よりも小さく、その角度差が5°~15°の範囲にあることが好ましい。これにより、機能部品を収容した状態の収容体において、機能部品を十分に拘束できる拘束力を確保しながら、過度な変形を防止することができる。特に、機能部品の収容前後における傾斜角度の角度差が5°~15°の範囲にあると、機能部品に対する収容体の拘束力と、収容体に損傷が生じない変形度合とのバランスが極めて良い。その結果、走行中の機能部品の脱落を防止しながら、収容体の損傷を防止することができる。
【0015】
開口部の幅は収容空間の最小幅よりも狭く、収容空間の上側部分の周長D2uと機能部品の上側部分の周長D1uとは0.60≦D2u/D1u≦0.95の関係を満たすことが好ましい。これにより、機能部品に対する収容体の拘束力を高め、機能部品の動きを抑制できるため、高速走行時に機能部品の筐体が破損することを防止することができる。更に、機能部品に対する収容体の拘束力と、収容体に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好であるため、収容体の損傷も防止することができる。
【0016】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであっても良い。空気入りタイヤの場合、その内部には空気、窒素等の不活性ガス又はその他の気体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)~(D)は本発明に係る機能部品付き収容体の実施形態を例示し、(A)は機能部品が収容されていない状態の収容体の側壁部の一部を切り欠いて収容体の内部を示す斜視図、(B)は(A)の収容体全体の断面図、(C)は(A)の収容体の側壁部の内壁面を拡大して示す斜視図、(D)は機能部品が収容された状態の収容体全体の断面図である。
図2】(A)~(E)はそれぞれ収容体の側壁部の内壁面に形成された凹凸領域の他の実施形態を例示する斜視図である。
図3】(A)は凹凸領域の寸法を説明するための斜視図であり、(B)は凹凸領域の寸法を説明するための断面図である。
図4】本発明に係る機能部品付き収容体の他の実施形態を例示した断面図である。
図5】本発明に係る機能部品付き収容体の他の実施形態を例示した断面図である。
図6】(A)~(D)は機能部品の収容前後における機能部品付き収容体の実施形態を例示し、(A)は機能部品が収容されていない状態の斜視図、(B)は機能部品が収容されていない状態の断面図、(C)は機能部品が収容された状態の斜視図、(D)は機能部品が収容された状態の断面図である。
図7】(A),(B)はそれぞれ収容体の寸法を説明するための機能部品付き収容体の半断面図である。
図8】機能部品付き収容体がタイヤ内表面に固定された空気入りタイヤの実施形態を例示する子午線断面図である。
図9図8の機能部品付き収容体を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の機能部品付き収容体の実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1(A)~(D)に例示する機能部品付き収容体1は、タイヤ情報を取得するための機能部品20と、この機能部品20を収容する収容体10とを備えている。図1(A)~(C)の機能部品付き収容体1は、収容体10に機能部品20が収容されていない状態であり、図1(D)の機能部品付き収容体1は、収容体10に機能部品20が収容された状態である。
【0019】
収容体10は、タイヤ内表面に固定される平板状の底部11と、この底部11から突出した筒状の側壁部12と、これら底部11と側壁部12により形成される収容部13と、この収容部13に連通する開口部14とを有している。
【0020】
底部11は、収容体10を構成する部位の中で最長である(最大径を有している)。側壁部12は、底部11に対して直交する方向から内側に傾斜するように形成されている。そのため、底部11と側壁部12により形成される収容部13は略台形の断面形状を有している。即ち、収容部13は、上側部分に向かって断面幅が漸減し、最大高さ位置において最も断面幅が狭くなる。また、側壁部12は、一方側の端部12aに開口部14に向かって屈曲するように形成された係止部12eを有し、他方側の端部12bが底部11に固定されている。機能部品20の収容後において、係止部12eは、機能部品20の上面に当接し、機能部品20の収容時に固定する役割を果たす。機能部品20が挿入される開口部14の幅は、収容部13の断面視での最小幅(開口部14に隣接する位置での幅)よりも狭くなっている。
【0021】
なお、図1において、底部11と側壁部12と開口部14はいずれも円形の平面形状を有しており、収容部13は円錐台の形状を有している。底部11と側壁部12と開口部14の平面形状は、特に限定されるものではなく、他の任意の平面形状で構成しても良く、互いに異なる平面形状で構成しても良い。また、収容部13の形状も、特に限定されるものではない。
【0022】
このような収容体10において、側壁部12の内壁面12xの少なくとも一部には、微細な凹凸面をなす凹凸領域15が形成されている。この凹凸領域15は、複数の凸部15a及び/又は凹部15bからなり、これらを規則的に配置することにより形成することができる。例えば、図1(C)では、隣接する複数の凸部15aが互いに辺を共有しないように、凸部15aと凹部15bが交互に配置され、凹凸領域15が形成されている。凹凸領域15は、側壁部12の内壁面12xに対して、全域に同じ形状や密度で一様に設けても良く、或いは部分的に凹凸の形状や密度を変えて設けても良い。
【0023】
また、凹凸領域15の形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができる。例えば、凹凸領域15として、図2(A)に示すような円柱状の凹部15bや、図2(B)に示すような四角柱の凹部15b、図2(C)に示すような一部が屈曲した線状の凸部15a、図2(D)に示すような四角錐の凸部15a、図2(E)に示すような先端部に向かって徐々に径が小さくなり、先端部が曲面で形成された凸部15a等から構成されたものを例示することができる。
【0024】
機能部品20は、図1(D)に例示するように、筐体21と電子部品22とを含むものである。筐体21は中空構造を有し、その内部に電子部品22が収容される。電子部品22は、タイヤ情報を取得するためのセンサ23、送信機、受信機、制御回路及びバッテリー等を適宜含むように構成することができる。センサ23により取得されるタイヤ情報として、空気入りタイヤの内部温度や内圧、トレッド部の摩耗量等を挙げることができる。例えば、内部温度や内圧の測定には温度センサや圧力センサが使用される。トレッド部の摩耗量を検出する場合、センサ23として、圧電素子を有する圧電センサを用いることができ、その圧電素子が走行時のタイヤ変形に応じた出力電圧を検出し、その出力電圧に基づいてトレッド部の摩耗量を検出する。それ以外に、加速度センサや磁気センサを使用することも可能である。また、機能部品20は、センサ23により取得されたタイヤ情報をタイヤ外部に送信するよう構成されている。更に、機能部品20を把持し易くするため、筐体21の上面から突出したつまみ部を設けても良く、このつまみ部にアンテナの機能を担持させることもできる。
【0025】
なお、図1(D)に示す機能部品20の内部構造は一例であり、これに限定されるものではない。センサ23は、収容体10に対して粘着テープや接着剤等により固定されていても良く、収容体10に対して固定されていなくとも良い。
【0026】
なお、本発明では、凸部15a及び/又は凹部15bからなる凹凸領域15と機能部品20の筐体21は互いに嵌合するものではなく、筐体21の底面には溝や凸部、凹部がなく、また、筐体21の側面にも凹凸領域15と嵌合するような溝や凸部、凹部は設けられていない。
【0027】
上述した機能部品付き収容体では、タイヤ情報を取得するための機能部品20と、この機能部品20を収容する収容体10とを備え、収容体10は、タイヤ内表面に固定される底部11と、この底部11から突出した側壁部12と、底部11と側壁部12により形成される収容部13と、この収容部13に連通する開口部14とを有し、側壁部12の内壁面12xの少なくとも一部に複数の凸部15a及び/又は凹部15bからなる凹凸領域15を有しているので、収容体10に機能部品20が収容された際に、機能部品20の表面と収容体10の側壁部12の内壁面12xとの接触面積は凹凸領域15がない場合に比べて減少するため、機能部品20の表面と収容体10の側壁部12の接触面の摩擦力が低減され、摩擦力を適度に調整することができる。これにより、機能部品20の保持力を十分に確保しつつ、機能部品20の脱落や過度な動きを防止することができると共に、収容体10への機能部品20の収容作業を容易にしつつ、機能部品20を収容した際に収容体10に過度な負荷が掛かることを防止し、収容体10の耐久性の悪化を回避することができる。
【0028】
上記機能部品付き収容体において、凹凸領域15を構成する凸部15a及び/又は凹部15bは、100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることが好ましい。凸部15aや凹部15bがこのような物性を有することで、収容体10の耐久性と収容体10への機能部品20の収容し易さとを両立することができる。また、凹凸領域15は、収容体10と同一材料で構成することができる。例えば、収容体10の成形用金型を用いて、収容体10と硬度が異なるゴムにより一体的に凹凸領域15を成形しても良く、或いは、収容体10とは別に成形した凹凸領域15を収容体10の側壁部12の内壁面12xに接着して成形しても良い。
【0029】
また、上記機能部品付き収容体において、下記のように、凹凸領域15の寸法や面積を設定すると良い。図3(A),(B)に示すように、凹凸領域15において、深さが最大となる凹部15bmから高さが最大となる凸部15amまでの高さを最大高さRzとする。この最大高さRzは、JISの粗さ指標の一つであり、JIS-B0601に準拠して測定されるものである。凹凸領域15の最大高さRzは、10μm~2000μmであることが好ましく、100μm~2000μmであることがより好ましい。ここで、側壁部12の内壁面12xに複数の凹部15bが形成された場合(例えば図2(A)参照)には、内壁面12xを高さが最大となる凸部15amと見做し、上記と同様に最大高さRzを測定するものとする。
【0030】
このように凹凸領域15における凹凸の最大高さRzを適度に設定することで、機能部品20の保持力を高めて、機能部品20の脱落や過度な動きを効果的に防止することができると共に、収容体10への機能部品20の収容作業を容易にしつつ、機能部品20を収容した際に収容体10に過度な負荷が掛かることを防止し、収容体10の耐久性の悪化を回避することができる。ここで、凹凸領域15の最大高さRzが10μmよりも小さいと、凸部15aの高さが十分でないため、摩擦力を適度に調整することができない。逆に、凹凸領域15の最大高さRzが2000μmよりも大きいと、機能部品20の収容時に凸部15aが損傷し易くなって耐久性が悪化すると共に、摩擦力が高くなり過ぎて機能部品20の収容作業を容易に行うことができない。
【0031】
また、凹凸領域15において、図3(A)に示すように、最大高さRzの1/2(0.5×Rz)の高さを有し、かつ側壁部12の内壁面12xに平行な平面を基準平面Sとする。即ち、基準平面Sは、凹凸領域15において深さが最大となる凹部15bmから最大高さRzの1/2の高さを有する平面である。このとき、基準平面Sにおける凸部15aの断面積の総和である総断面積Aと基準平面Sの面積Asとは、0.2≦A/As≦0.8の関係を満たすことが好ましい。ここで、基準平面Sにおける一つの凸部15aの断面積は、図3(A)に示す斜線部の面積であり、基準平面Sは任意に設定することができる。また、側壁部12の内壁面12xに複数の凹部15bが形成された場合(例えば図2(A)参照)には、内壁面12xを高さが最大となる凸部15amと見做し、総断面積Aは、上記と同様に最大高さRzの1/2の高さを有する基準平面Sに基づいて算出される面積とする。なお、図3(A),(B)に示すように、凹凸領域15において、凸部15a及び凹部15bの高さや深さが全て同一である必要はなく、また、凸部15a及び凹部15bの全体形状や基準平面Sにおける断面形状が互いに異なっていても良い。
【0032】
このように総断面積Aと面積Asの比を適度に設定することで、機能部品20の表面と収容体10の側壁部12の接触面の摩擦力を適度に確保することができる。ここで、面積Asに対する総断面積Aの比が0.2よりも小さい場合、凹凸領域15において凸部15aが過度に少ないため、摩擦力を十分に確保することができない。逆に、面積Asに対する総断面積Aの比が0.8よりも大きい場合、凹凸領域15において凸部15aが過度に多くなるため、摩擦力が高くなり過ぎる。
【0033】
図4は、本発明の機能部品付き収容体の他の実施形態を示すものである。図4において、凹凸領域15の少なくとも一部は、側壁部12の内壁面12xの下半分に形成されている。この内壁面12xの下半分とは、収容部13の高さhbの1/2(0.5×hb)の高さ以下の範囲である。図4では、凹凸領域15が側壁部12の下端から連続的に形成され、凹凸領域15の上端の高さhが収容部13の高さhbの1/2の高さよりも大きいが、これに限定されるものではない。その他、凹凸領域15が側壁部12の下端から連続的に形成され、凹凸領域15の上端の高さhが収容部13の高さhbの1/2の高さ以下であっても良く、凹凸領域15の上端と下端が収容部13の高さhbの1/2の高さを含むように、凹凸領域15が内壁面12xの中央部のみに局所的に形成されても良く、或いは、凹凸領域15の上端及び下端が内壁面12xの下半分に含まれるように、凹凸領域15が内壁面12xの一部分に形成されていても良い。ここで、収容体10に機能部品20を収容する際、開口部14を広げて機能部品20を挿入するが、その際、収容体10の部位で機能部品20と接触するのは、主に側壁部12の内壁面12xの下半分である。そのため、側壁部12の内壁面12xの下半分に凹凸領域15を形成することは、本発明による効果を得る上で有益である。なお、収容部13の高さhbは、収容体10に機能部品20が収容されていない状態で測定される高さである。
【0034】
このように凹凸領域15を形成することで、収容体10に機能部品20を収容し易くなり、機能部品20の収容作業を効果的に改善することができる。特に、側壁部12の内壁面12xの上半分に凹凸領域を設けない場合には、凹凸領域15を設けた側壁部12の内壁面12xの下半分で機能部品20の保持力を確保することができると共に、収容体10内での機能部品20の動きを抑制して発熱を低減させることができる。
【0035】
更に、凹凸領域15の面積A1と側壁部12の内壁面12xの下半分の面積A0とは、0.5≦A1/A0≦1.0の関係を満たすことが好ましい。ここで、凹凸領域15の面積A1は、側壁部12の内壁面12xの下半分における凹凸領域15が配置された部分の占有面積を意味し、凸部15aと凹部15bの形状を加味した表面積ではない。また、凹凸領域15を内壁面12xの複数箇所に分割して配置した場合は、凹凸領域15の面積A1は各配置箇所の面積を合計したものとする。なお、凹凸領域15を側壁部12の内壁面12xの下半分を超えて形成した場合、凹凸領域15における内壁面12xの下半分を超えた部位については、凹凸領域15の面積A1として考慮しない。
【0036】
このように面積A1と面積A0の比を適度に設定することで、機能部品20の表面と収容体10の側壁部12の接触面の摩擦力を適度に確保することができる。ここで、面積A0に対する面積A1の比が0.5よりも小さい場合には、側壁部12の内壁面12xの下半分で機能部品20の保持力を十分に確保することができない。
【0037】
図5は、本発明の機能部品付き収容体の他の実施形態を示すものである。図5において、凹凸領域15の少なくとも一部には、側壁部12の内壁面12xの下半分から収容部13の上端まで連続する連結部15xが形成されている。この連結部15xは、機能部品20の収容時に残存した空気の通り道として機能する。
【0038】
ここで、収容体10に機能部品20を収容する際、機能部品20と収容体10の側壁部12とが密着することにより収容体10と機能部品20との間(例えば機能部品20と底部11との間)に空気が残存し、機能部品20を適切な位置に挿入できないことがある。これに対して、上述したように凹凸領域15の一部に連結部15xを形成することで、連結部15xが空気の通り道として機能し、残存した空気を放出することができるので、機能部品20を適切な位置に挿入することができる。これにより、機能部品20の収容作業を改善することができる。
【0039】
図6(A)~(D)は機能部品の収容前後における機能部品付き収容体の実施形態を示すものである。図6(A),(B)の機能部品付き収容体1は、収容体10に機能部品20が収容されていない状態であり、図6(C),(D)の機能部品付き収容体1は、収容体10に機能部品20が収容された状態である。
【0040】
図6(A)~(D)に例示するように、機能部品付き収容体1において、収容部13に機能部品20が収容された状態で側壁部12の底部11に対する傾斜角度θ2は、収容部13に機能部品20が収容されていない状態で側壁部12の底部11に対する傾斜角度θ1よりも小さくなるように構成されている。これら傾斜角度θ1,θ2は、いずれも側壁部12の外壁側で測定される角度である。機能部品20が開口部14から収容部13に挿入されると、側壁部12が外側に向かって倒れ、開口部14の幅が拡張するように変形することにより、側壁部12の底部11に対する傾斜角度θが小さくなる。機能部品20の収容前の傾斜角度θ1と機能部品20の収容後の傾斜角度θ2との角度差(θ1-θ2)は、5°~15°の範囲になるように構成されると良い。
【0041】
ここで、側壁部12の傾斜角度θ(θ1,θ2)を測定する際、CTスキャン等を用いて角度を算出することができる。また、側壁部12の傾斜角度θを測定する際に限って、図7(A)に示すように、側壁部12の外表面における収容体10の総高さHの1/2(0.5×H)の位置と1/4(0.25×H)の位置の2点を通る直線L1を側壁部12と見做して、機能部品20の収容前の傾斜角度θ1と機能部品20の収容後の傾斜角度θ2をそれぞれ測定する。収容体10の総高さH(最大高さH)は、機能部品20の収容前後で変わり、それぞれの高さに基づいて側壁部12の傾斜角度θ(θ1,θ2)を測定する。また、収容体10の総高さHの1/2の位置及び/又は1/4の位置において側壁部12の外表面に突起が形成されている場合、この突起を含めずに突起の下端部を新たな基準点として規定される直線に基づいて、側壁部12の傾斜角度θを測定するものとする。なお、収容体10の総高さHは、底部11の下面から係止部12eの上面までの高さである。
【0042】
このような機能部品付き収容体1では、収容部13に機能部品20が収容された状態で側壁部12の外壁側で測定される側壁部12の底部11に対する傾斜角度θ2が収容部13に機能部品20が収容されていない状態で側壁部12の外壁側で測定される側壁部12の底部11に対する傾斜角度θ1よりも小さいので、機能部品20を収容した状態の収容体10において、機能部品20を十分に拘束できる拘束力を確保しながら、過度な変形を防止することができる。特に、機能部品20の収容前後における傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が5°~15°の範囲にあると、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが極めて良い。これにより、走行中の機能部品20の脱落を防止しながら、収容体10の損傷を防止することができる。
【0043】
ここで、傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が5°より小さくなると、機能部品20に対する収容体10の拘束力が低下するため、走行中に機能部品20が脱落するリスクが増大すると共に、機能部品20の動きが大きくなり、収容体10の耐久性が低下する。逆に、傾斜角度の角度差(θ1-θ2)が15°より大きくなると、収容体10の変形が過度に大きくなり、長距離走行時に収容体10にクラックが発生し易くなる。
【0044】
特に、収容部13に機能部品20が収容された状態で側壁部12の底部11に対する傾斜角度θ2は、90°以上であることが好ましく、90°~115°の範囲にあることがより好ましい。このように機能部品20の収容後の傾斜角度θ2を適度に設定することで、収容体10の側壁部12の根本における応力集中を緩和することができ、収容体10の耐久性を向上させることができる。更に、収容体10の開口部14が過度に狭くならず、機能部品20を取り外す際にも好適である。
【0045】
ここで、機能部品20の収容後の傾斜角度θ2が90°より小さくなると、収容体10の側壁部12の根本における応力集中が増大すると共に、走行中の歪エネルギーが増大するため、側壁部12の根本でクラックが発生し易くなる。一方、機能部品20の収容後の傾斜角度θ2が115°より大きくなると、機能部品20の収容後も側壁部12の倒れ込みが過度に大きい状態であるので、開口部14の幅が過度に狭くなり、機能部品20が取り外し難くなる。
【0046】
また、開口部14の幅は収容部13の最小幅よりも狭く、収容部13の上側部分の周長D2uと機能部品20の上側部分の周長D1uとは、0.60≦D2u/D1u≦0.95の関係を満たすことが好ましい。即ち、収容部13の周長D2uを機能部品20の周長D1uに対して特定の範囲で小さく設定することにより、収容体10による拘束力を高めることを意図している。ここで、収容部13の周長D2uは、図7(B)に示すように、機能部品20の収容前の状態において、収容体10の内側総高さH1の3/4(0.75×H1)の高さをh1とし、この高さh1の位置と、高さh1の位置を基準として高さh1の±25%(0.25×h1)に相当する位置の計3つの位置で収容部13の周長を測定し、これら3つの位置で測定された周長を平均したものである。また、機能部品20の上側部分の周長D1uは、機能部品20における上記3つの位置に対応する位置で機能部品20の周長を測定し、これら3つの位置で測定された周長を平均したものである。
【0047】
このように収容部13の周長D2uと機能部品20の周長D1uを適度に設定することで、機能部品20に対する収容体10の拘束力を高め、機能部品20の動きを抑制できるため、高速走行時に機能部品20の筐体21が破損することを防止することができる。更に、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好であるため、収容体10の損傷も防止することができる。
【0048】
ここで、比D2u/D1uが0.60未満であると、収容体10による拘束力が大きくなるものの、側壁部12の変形度合も増大するので、長距離走行時に収容体10にクラックが発生し、収容体10が破損する可能性が高まる。逆に、比D2u/D1uが0.95より大きいと、収容体10による拘束力が小さくなり、収容体10内での機能部品20の動きが大きくなるため、収容体10と機能部品20との摩擦によって発熱が増大し、機能部品20の筐体21が破損に至る。
【0049】
更に、収容体10の開口部14の周長D2Oと機能部品20の上側部分の周長D1uとは、0.4≦D2O/D1u≦0.8の関係を満たすことが好ましい。ここで、開口部14の周長D2Oは、機能部品20が収容体10に収容されていない状態で測定される開口部14の周長である。このように開口部14の周長D2Oと機能部品20の周長D1uを適度に設定することで、機能部品20に対する収容体10の拘束力と、収容体10に損傷が生じない変形度合とのバランスが良好になり、高速走行時における機能部品20の耐久性を向上させることができる。更に、収容体10の開口部14が過度に狭くならず、機能部品20を取り外す際にも好適である。
【0050】
ここで、比D2O/D1uが0.4未満であると、開口部14が過度に狭くなるので、機能部品20が取り外し難くなる。逆に、比D2O/D1uが0.8より大きいと、収容体10による拘束力が小さくなり、収容体10内での機能部品20の動きが大きくなるので、収容体10と機能部品20との摩擦によって発熱が増大し、機能部品20の筐体21が破損に至る。
【0051】
図8は機能部品付き収容体がタイヤ内表面に固定された空気入りタイヤを示すものである。図8に例示するように、空気入りタイヤTは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部tと、該トレッド部tの両側に配置された一対のサイドウォール部sと、これらサイドウォール部sのタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部bとを備えている。
【0052】
一対のビード部b間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部bに配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。そして、タイヤ内表面Tsにおける一対のビード部b間の領域にはインナーライナー層9が配置されている。このインナーライナー層9はタイヤ内表面Tsをなす。
【0053】
一方、トレッド部tにおけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0054】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0055】
上記空気入りタイヤにおいて、機能部品付き収容体1は、タイヤ内表面Tsのいずれの部位にも取付可能であるが、走行中の変形が少なく、遠心力が掛かるので外れ難いことから、トレッド部t、サイドウォール部s、ビード部bのうち、特にトレッド部tに対応するタイヤ内表面Tsに取り付けることが望ましい。
【0056】
ここで、図9に例示するように、機能部品付き収容体1がタイヤ内表面に固定された状態で、傾斜角度θ1,θ2を測定する場合、断面視における両側の側壁部12の他方側の端部12bを通る直線L2と側壁部12とがなす角度を測定する。また、例えば、底部に相当する部材がなく、側壁部がタイヤ内表面に直接的に固定された機能部品付き収容体であっても上記と同様の方法で測定することができる。
【0057】
上述した実施形態では、機能部品付き収容体を空気入りタイヤに取り付けた例について説明したが、これに限定されるものではなく、非空気式タイヤに適用することもできる。
【実施例0058】
タイヤサイズ225/45R18で、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備え、収容体は、タイヤ内表面に固定される底部と、この底部から突出した側壁部と、底部と側壁部により形成される収容部と、この収容部に連通する開口部とを有し、収容体に機能部品が収容された機能部品付き収容体がタイヤ内表面に固定され、凹凸領域の有無、凹凸領域の特徴(凹凸の最大高さRz、凹凸の存在密度(A/As)、上端高さ位置(h/hb)、占有面積、連結部の有無、凹凸のM100)を表1のように設定した従来例及び実施例1~7のタイヤを製作した。
【0059】
なお、表1において、「上端高さ位置」は、収容部の高さhbに対する凹凸領域の上端の高さhの比(h/hb)であり、その値が「1.0」の場合は凹凸領域が側壁部の下端から上端まで配置されていることを意味し、それ以外の値の場合は凹凸領域が側壁部の下端から設定値の高さまで連続的に配置されていることを意味する。また、「凹凸のM100」は、100%伸張時のモジュラス[MPa]を意味し、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張試験により測定され、100%伸張時の引張り応力を示す。
【0060】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、収容作業性、耐クラック性及び高速耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0061】
収容作業性:
各試験タイヤについて、収容体に機能部品を収容する作業に要した時間を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、従来例の測定値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど、作業時間が短く、収容作業性が優れていることを意味する。
【0062】
耐クラック性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7 1/2JJのホイールに組み付け、80℃で5日間、酸素雰囲気で劣化処理をした後に、最大負荷能力の80%の荷重を負荷し、空気圧250kPaの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した。具体的には、初期速度120km/hから24時間毎に10km/hずつ速度を増加させ、収容体の表面にクラックが認められるまで走行させ、クラック発生時の走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐クラック性が優れていることを意味する。
【0063】
高速耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7 1/2JJのホイールに組み付け、最大負荷能力の88%の荷重を負荷し、空気圧360kPaの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した。具体的には、初期速度120km/hから10分毎に10km/hずつ速度を増加させ、機能部品から送信されたデータに異常が発生した際の速度を測定した。評価結果は、従来例の測定値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど高速耐久性が優れていることを意味する。
【0064】
【表1】
【0065】
この表1から判るように、実施例1~7の空気入りタイヤは、従来例に比して、収容作業性、耐クラック性及び高速耐久性が改善されていた。実施例1~7の空気入りタイヤでは、機能部品の収容時に機能部品を適切な位置に挿入することができたことにより、耐クラック性及び高速耐久性の改善に繋がり、それ故、収容体の耐久性の悪化を回避することができたと言える。
【0066】
本開示は、以下の発明[1]~[10]を包含する。
発明[1]は、タイヤ情報を取得するための機能部品と、この機能部品を収容する収容体とを備えた機能部品付き収容体であって、前記収容体が、タイヤ内表面に固定される底部と、この底部から突出した側壁部と、前記底部と前記側壁部により形成される収容部と、この収容部に連通する開口部とを有し、前記側壁部の内壁面の少なくとも一部に複数の凸部及び/又は凹部からなる凹凸領域を有することを特徴とする機能部品付き収容体である。
発明[2]は、前記凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzが10μm~2000μmであることを特徴とする発明[1]に記載の機能部品付き収容体である。
発明[3]は、前記凹凸領域において深さが最大となる凹部から高さが最大となる凸部までの最大高さRzの1/2の高さを有する前記側壁部の内壁面に平行な平面を基準平面Sとするとき、前記基準平面Sにおける前記凸部の断面積の総和である総断面積Aと前記基準平面Sの面積Asとが0.2≦A/As≦0.8の関係を満たすことを特徴とする発明[1]又は[2]に記載の機能部品付き収容体である。
発明[4]は、前記凹凸領域の少なくとも一部が前記側壁部の内壁面における前記収容部の高さhbの1/2の高さ以下の範囲に形成されていることを特徴とする、発明[1]~[3]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[5]は、前記凹凸領域の面積A1と前記側壁部の内壁面の下半分の面積A0とが0.5≦A1/A0≦1.0の関係を満たすことを特徴とする発明[1]~[4]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[6]は、前記凹凸領域の少なくとも一部が前記側壁部の内壁面の下半分から前記収容部の上端まで連続的に形成されていることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[7]は、前記凹凸領域を構成する前記凸部及び/又は凹部は100%伸張時のモジュラスが1.0MPa以上12.0MPa未満の加硫ゴムからなることを特徴とする発明[1]~[6]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[8]は、前記収容部に前記機能部品が収容された状態で前記側壁部の外壁側で測定される前記側壁部の前記底部に対する傾斜角度が前記収容部に前記機能部品が収容されていない状態で前記側壁部の外壁側で測定される前記側壁部の前記底部に対する傾斜角度よりも小さく、その角度差が5°~15°の範囲にあることを特徴とする発明[1]~[7]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[9]は、前記開口部の幅が前記収容部の最小幅よりも狭く、前記収容部の上側部分の周長D2uと前記機能部品の上側部分の周長D1uとが0.60≦D2u/D1u≦0.95の関係を満たすことを特徴とする発明[1]~[8]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体である。
発明[10]は、発明[1]~[9]のいずれか一つに記載の機能部品付き収容体が前記タイヤ内表面に固定され、前記収容部に前記機能部品が収容されているタイヤである。
【符号の説明】
【0067】
1 機能部品付き収容体
10 収容体
11 底部
12 側壁部
13 収容部
14 開口部
15 凹凸領域
15a 凸部
15b 凹部
20 機能部品
T 空気入りタイヤ
Ts タイヤ内表面
t トレッド部
s サイドウォール部
b ビード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9