(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159533
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
H10N 30/067 20230101AFI20231025BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20231025BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20231025BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20231025BHJP
【FI】
H01L41/297
H01L41/047
H01L41/09
H01L41/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069258
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美帆
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英也
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】三井 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 明丈
(57)【要約】
【課題】変位を均一化することができる圧電素子を提供する。
【解決手段】圧電素子2は、方向D1で互いに対向している主面10a,10bと、方向D2で互いに対向している側面10c,10dと、を有する素体10と、素体10内に設けられ、方向D1において積層されている内部電極15,16,17と、それぞれ、側面10c上に設けられている電極部分11c,12c,13cと、主面10a上に設けられている電極部分11a,12a,13aと、を有する外部電極11,12,13と、を備える。素体10は、複数の内部電極15,16,17間に配置された圧電的に活性な活性領域R11,R12を含む。電極部分11a,12a,13aは、方向D1から見て活性領域R11,R12と重なっている重複領域11d,12d,13dを含む。重複領域11d,12d,13dの面積は、電極部分11a,12a,13aの面積の50%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向で互いに対向している第一主面及び第二主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向し、前記第一主面と前記第二主面とを接続している第一側面及び第二側面と、を有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記第一方向において積層されている複数の内部電極と、
それぞれ、前記第一側面上に設けられ、対応する前記内部電極と接続されている第一電極部分と、前記第一主面上に設けられ、前記第一電極部分と接続されている第二電極部分と、を有する複数の外部電極と、を備え、
前記素体は、前記複数の内部電極間に配置された圧電的に活性な活性領域を含み、
前記第二電極部分は、前記第一方向から見て前記活性領域と重なっている重複領域を含み、
前記重複領域の面積は、前記第二電極部分の面積の50%以上である、
圧電素子。
【請求項2】
前記第二電極部分の前記第二方向の長さは、前記第一主面の前記第二方向の長さの50%以上である、
請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記第一方向から見て、前記活性領域は、前記素体の外縁から離間している、
請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記重複領域は、配線部材と接合される接合領域を含む、
請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記重複領域は、前記配線部材から露出している露出領域を含む、
請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記重複領域の全体が前記配線部材に覆われている、
請求項4に記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、素体、複数の内部電極、及び、複数の外部電極を備える圧電素子が記載されている。この圧電素子では、素体が活性領域、及び、不活性領域複数を有し、不活性領域が活性領域の周囲を囲んでいる。これにより、圧電素子の共振点が低音側に移されるので、高い音圧を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧電素子では、素体の中央部で変位が最も大きくなる。スピーカ用途では、素体の中央部の共振に起因して、均一な音質が得られ難い。
【0005】
本開示の一態様は、変位を均一化することができる圧電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る圧電素子は、第一方向で互いに対向している第一主面及び第二主面と、第一方向に直交する第二方向で互いに対向し、第一主面と第二主面とを接続している第一側面及び第二側面と、を有する素体と、素体内に設けられ、第一方向において積層されている複数の内部電極と、それぞれ、第一側面上に設けられ、対応する内部電極と接続されている第一電極部分と、第一主面上に設けられ、第一電極部分と接続されている第二電極部分と、を有する複数の外部電極と、を備え、素体は、複数の内部電極間に配置された圧電的に活性な活性領域を含み、第二電極部分は、第一方向から見て活性領域と重なっている重複領域を含み、重複領域の面積は、第二電極部分の面積の50%以上である。
【0007】
上記圧電素子では、複数の外部電極のそれぞれが素体の第一主面上に設けられた第二電極部分を有している。第二電極部分は、素体の活性領域と重なっている重複領域を含む。重複領域の面積は、第二電極部分の面積の半分以上であるため、活性領域が第二電極部分の重複領域により押さえられ、素体の中央部の変位が抑制される。これにより、変位を均一化することができる。
【0008】
第二電極部分の第二方向の長さは、第一主面の第二方向の長さの50%以上であってもよい。この場合、素体の中央部の変位が更に抑制される。これにより、変位を更に均一化することができる。
【0009】
第一方向から見て、活性領域は、素体の外縁から離間していてもよい。この場合、活性領域が不活性領域で囲まれた構成となり、圧電素子の共振点が低音側に移動する。これにより、上記圧電素子を音響デバイスに適用した場合には実用上十分に高い音圧を得ることができる。
【0010】
重複領域は、配線部材と接合される接合領域を含んでもよい。この場合、接合領域は活性領域上に位置している。配線部材は活性領域の変位に追従して変位するので、配線部材が活性領域上に位置していない場合に比べて、配線部材の接合が取れ難い。
【0011】
重複領域は、配線部材から露出している露出領域を含んでもよい。この場合、第一主面の最も近くに配置された内部電極と、露出領域との間に形成された活性領域の変位が抑制され難い。
【0012】
重複領域の全体が配線部材に覆われていてもよい。この場合、重複領域の腐食を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、変位を均一化することができる圧電素子を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る振動デバイスを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る圧電素子を含む振動デバイスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[第一実施形態]
図1~
図6に示される第一実施形態に係る振動デバイス1は、例えば、スピーカに用いられる音響デバイスである。振動デバイス1は、圧電素子2と、配線部材3と、接合部材4,5と、を備える。圧電素子2は、素体10と、素体10の表面に設けられた外部電極11,12,13と、を備える。
図2では、外部電極11,12,13の図示が省略されている。圧電素子2は、積層圧電素子であり、素体10は、積層された複数の素体層14を含んでいる。素体層14は、圧電セラミック材料等の圧電材料で構成されている。圧電素子2は、例えば、バイモルフ型である。
【0017】
素体10は、矩形平板状の外形を有している。素体10は、主面10a,10bと、4つの側面10c~10fと、を有している。4つの側面10c~10fは、主面10aと主面10bとを接続している。主面10a,10bは、複数の素体層14の積層方向において互いに対向している。側面10c,10dは、主面10a,10bの短辺方向において互いに対向している。側面10e,10fは、主面10a,10bの長辺方向において互いに対向している。以下では、複数の素体層14の積層方向を方向D1とし、主面10a,10bの短辺方向を方向D2とし、主面10a,10bの長辺方向を方向D3とする。
【0018】
外部電極11,12,13は、例えば、Ag又はAg合金で構成されている。外部電極11,12,13は、互いに離間して素体10上に配置されている。外部電極11,12,13は、この順で方向D3において並んでいる。外部電極11は、最も側面10e寄りに配置されている。外部電極13は、最も側面10f寄りに配置されている。外部電極12は、外部電極11と外部電極13との間に配置されている。
【0019】
外部電極11の方向D3の幅L1は、外部電極12の方向D3の幅L2、及び、外部電極13の方向D3の幅L3よりも広い。幅L2は、例えば、幅L3と同等である。外部電極11と外部電極12との方向D3の離間距離L4は、幅L2よりも長い。外部電極12と外部電極13との方向D3の離間距離L5は、幅L2よりも短く、幅L3よりも短い。
【0020】
外部電極11は、電極部分11a,11b,11cを有している。電極部分11aは、主面10a上に設けられ、方向D2に延在している。電極部分11bは、主面10b上に設けられている。電極部分11cは、側面10c上に設けられている。電極部分11cは、電極部分11aと電極部分11bとに接続されている。
【0021】
外部電極12は、電極部分12a,12b,12cを有している。電極部分12aは、主面10a上に設けられ、方向D2に延在している。電極部分12bは、主面10b上に設けられている。電極部分12cは、側面10c上に設けられている。電極部分12cは、電極部分12aと電極部分12bとに接続されている。
【0022】
外部電極13は、電極部分13a,13b,13cを有している。電極部分13aは、主面10a上に設けられ、方向D2に延在している。電極部分13bは、主面10b上に設けられている。電極部分13cは、側面10c上に設けられている。電極部分13cは、電極部分13aと電極部分13bとに接続されている。
【0023】
電極部分11aの方向D2の長さL6、電極部分12aの方向D2の長さL7、及び、電極部分13aの方向D2の長さL8は、それぞれ、主面10aの方向D2の長さL9の50%以上であり、60%以上であることがより好ましい。本実施形態では、60%である。長さL6,L7,L8は、例えば、互いに同等である。
【0024】
圧電素子2は、素体10内に設けられている複数の内部電極15,16,17を備える。内部電極15,16,17は、例えば、Ag又はAg合金で構成されている。内部電極15,16,17は、複数の素体層14と共に方向D1において積層されている。
【0025】
内部電極15は、主電極部15a及び接続部15bを含む。主電極部15aは、4つの側面10c,10d,10e,10fから離間している。接続部15bは、主電極部15aから方向D2に延在し、側面2cに露出している。接続部15bは、電極部分11cと接続されている。接続部15bの方向D3の幅は、幅L1と同等である。
【0026】
内部電極16は、主電極部16a及び接続部16bを含む。主電極部16aは、4つの側面10c,10d,10e,10fから離間している。接続部16bは、主電極部16aから方向D2に延在し、側面2cに露出している。接続部16bは、電極部分12cと接続されている。接続部16bの方向D3の幅は、幅L2と同等である。
【0027】
内部電極17は、主電極部17a及び接続部17bを含む。主電極部17aは、4つの側面10c,10d,10e,10fから離間している。接続部17bは、主電極部17aから方向D2に延在し、側面2cに露出している。接続部17bは、電極部分13cと接続されている。接続部17bの方向D3の幅は、幅L3と同等である。
【0028】
主電極部15a,16a,17aは、互いに同形状を有し、方向D1から見て重なっている。接続部15bは、方向D1から見て電極部分11aと重なっている。接続部16bは、方向D1から見て電極部分12aと重なっている。接続部17bは、方向D1から見て電極部分13aと重なっている。接続部15b,16b,17bは、方向D3において互いに離間している。
【0029】
図3を参照して、複数の内部電極15,16,17の積層順について説明する。主面10aを含む素体層14を一層目の素体層14とすると、二層目の素体層14上には、内部電極15が配置されている。三層目の素体層14上には、内部電極17が配置されている。四層目の素体層14上には、内部電極15が配置されている。五層目の素体層14上には、内部電極17が配置されている。六層目の素体層14上には、内部電極15が配置されている。七層目の素体層14上には、内部電極16が配置されている。八層目の素体層14上には、内部電極15が配置されている。九層目の素体層14上には、内部電極16が配置されている。十層目の素体層14上には、内部電極15が配置されている。
【0030】
つまり、素体10の上側(主面10a側)では、内部電極15,17が交互に積層され、素体10の下側(主面10b側)では、内部電極15,16が交互に積層されている。二層目の素体層14上に配置されている内部電極15は、複数の内部電極15,16,17のうち、最も主面10aの近くに配置されている。十層目の素体層14上に配置されている内部電極15は、複数の内部電極15,16,17のうち、最も主面10bの近くに配置されている。
【0031】
図4~
図6に示されるように、素体10は、圧電的に活性な活性領域R1と、圧電的に不活性な不活性領域R2と、を有している。活性領域R1は、活性領域R11,R12,R13,R14を含んでいる。活性領域R11,R12は、内部電極15,16,17間に配置された領域である。より詳しくは、活性領域R11は、内部電極15,16により挟まれた領域である。活性領域R12は、内部電極15,17により挟まれた領域である。
【0032】
図2には、活性領域R11,R12が透視して示されている。
図2に示されるように、方向D1から見て、活性領域R11,R12は、素体10の外縁から離間している。方向D1から見て、活性領域R11,R12は、不活性領域R2(
図4~
図6)に全周を囲まれている。
【0033】
活性領域R13は、
図5に示されるように、外部電極12と、二層目の素体層14(
図3参照)上に配置された内部電極15とにより挟まれた領域である。活性領域R14は、
図6に示されるように、外部電極13と、二層目の素体層14(
図3参照)上に配置された内部電極15とにより挟まれた領域である。不活性領域R2は、素体10のうち、活性領域R1以外の領域である。
【0034】
外部電極11,12間に電圧が印加されると、内部電極15,16間に生じた電界により活性領域R11が伸縮すると共に、外部電極12及び内部電極15間に生じた電界により活性領域R13が伸縮する。外部電極11,13間に電圧が印加されると、内部電極15,17間に生じた電界により活性領域R12が伸縮すると共に、外部電極13及び内部電極15間に生じた電界により活性領域R14が伸縮する。
【0035】
活性領域R11,R13は、互い同じ向きに分極されている。活性領域R12,R14は、互いに同じ向きに分極されている。活性領域R11,R13の分極の向きは、活性領域R12,R14の分極の向きとは逆である。このため、第一電圧を外部電極11に印加し、第一電圧と異なる第二電圧を外部電極12,13の両方に印加することにより、活性領域R11,R13と、活性領域R12,R14とを互いに逆の方向に伸縮させることができる。
【0036】
図2及び
図4に示されるように、電極部分11aは、方向D1から見て活性領域R11,R12と重なっている重複領域11dを含んでいる。方向D1から見て、重複領域11dの面積は、電極部分11aの面積の50%以上である。
【0037】
図2及び
図5に示されるように、電極部分12aは、方向D1から見て活性領域R11,R12と重なっている重複領域12dを含んでいる。方向D1から見て、重複領域12dの面積は、電極部分12aの面積の50%以上である。
【0038】
図2及び
図6に示されるように、電極部分13aは、方向D1から見て活性領域R11,R12と重なっている重複領域13dを含んでいる。方向D1から見て、重複領域13dの面積は、電極部分13aの面積の50%以上である。
【0039】
図1,4~6に示されるように、配線部材3は、圧電素子2と外部の制御回路(不図示)とを電気的に接続し、圧電素子2に電圧を印加する。配線部材3は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。配線部材3は、主面10a上に配置され、接合部材4,5により主面10aに接合されている。配線部材3は、主面10aの側面10d側から方向D2に沿って引き出されている。配線部材3は、板状、シート状、又は帯状である。
【0040】
接合部材4は、導電性粒子を含んでおらず、電気絶縁性を有する樹脂層である。接合部材4は、例えば、反応型フェノール樹脂とニトリルゴムを主成分にしたホットメルト樹脂である。接合部材4は、主面10aの側面10d側の長辺に沿って配置されている。接合部材4は、配線部材3の幅方向(方向D3)の全体を主面10aに接合している。接合部材4は、接合部材5から方向D2において離間している。
【0041】
接合部材5は、複数の導電性粒子(不図示)を含む樹脂層である。導電性粒子は、例えば、金属粒子、金めっき粒子である。接合部材5は、例えば熱硬化性エラストマーを含んでいる。接合部材5は、例えば、異方性導電ペースト又は異方性導電性膜が硬化することにより形成される。接合部材5は、配線部材3と電極部分11a,12a,13aと電気的に接続している。
【0042】
電極部分11aは、接合部材5により配線部材3と接合される接合領域11eを含んでいる。電極部分12aは、接合部材5により配線部材3と接合される接合領域12eを含んでいる。電極部分13aは、接合部材5により配線部材3と接合される接合領域13eを含んでいる。
【0043】
本実施形態では、重複領域11dが接合領域11eの全体を含んでいる。重複領域12dが接合領域12eの全体を含んでいる。重複領域13dが接合領域13eの全体を含んでいる。重複領域11dは、配線部材3から露出している露出領域11fを更に含んでいる。重複領域12dは、配線部材3から露出している露出領域12fを更に含んでいる。重複領域13dは、配線部材3から露出している露出領域13fを更に含んでいる。
【0044】
配線部材3は、導体層31,32と、ベース33と、カバー34とを有している。導体層31,32は、例えば、Cuからなる。ベース33及びカバー34は、例えば、ポリイミド樹脂からなる樹脂層である。導体層31,32は、ベース33とカバー34との間に配置されている。導体層31,32は、例えば、接着層(不図示)によってベース33及びカバー34に接着されている。
【0045】
導体層31,32は、主面10a上において、方向D2に延在すると共に、方向D3で互いに離間している。導体層31,32の方向D2の一端部は、カバー34から露出している。カバー34から露出した導体層31の一端部は、方向D1で接合領域11eと対向し、接合部材5により接合領域11eと電気的に接続されている。カバー34から露出した導体層32の一端部は、方向D1で接合領域12e,13eと対向し、接合部材5により接合領域12e,13eと電気的に接続されている。
【0046】
圧電素子2において、最も変位が大きくなるのは、素体10の中心部、より詳しくは、方向D1から見て、主面10aの重心近傍と重なる部分である。このように変位が大きくなる部分で共振が起こると、特定の周波数で音が大きくなり、均一な音質が得られない場合がある。圧電素子2では、重複領域11d,12d,13dの面積は、電極部分11a,12a,13aの面積の半分以上である。つまり、方向D1から見て、電極部分11a,12a,13aは、活性領域R11,R12が配置されていない領域よりも、活性領域R11,R12上に多く配置されている。このため、活性領域R11,R12が重複領域11d,12d,13dにより押さえられ、素体10の中央部の変位が抑制される。これにより、圧電素子2の変位を均一化し、均一な音質を得ることができる。
【0047】
電極部分11a,12a,13aの方向D2の長さL6,L7,L8は、主面10aの方向D2の長さL9の50%以上である。このため、素体10の中央部の変位が更に抑制される。これにより、圧電素子2の変位を更に均一化し、更に均一な音質を得ることができる。
【0048】
方向D1から見て、活性領域R11,R12は、素体10の外縁から離間している。このため、活性領域R11,R12が不活性領域R2で囲まれた構成となり、圧電素子2の共振点が低音側に移動する。これにより、圧電素子2を音響デバイスに適用した場合には実用上十分に高い音圧を得ることができる。
【0049】
重複領域11d,12d,13dは、配線部材3と接合される接合領域11e,12e,13eを含んでいる。接合領域11e,12e,13eは活性領域R11,R12上に位置している。配線部材3は活性領域R11,R12の変位に追従して変位するので、配線部材3が活性領域R11,R12上に位置していない場合に比べて、配線部材3の接続が取れ難い。
【0050】
重複領域11d,12d,13dは、配線部材3から露出している露出領域11f,12f,13fを含んでもいる。このため、複数の内部電極15,16,17のうち、主面10aの最も近くに配置された内部電極15と、露出領域12f,13fとの間に形成された活性領域R13,R14の変位が抑制され難い。したがって、圧電素子2の変位を向上させることができる。
【0051】
主面10aの最も近くに配置された内部電極15と、外部電極12,13とにより挟まれた領域は、活性領域R13,R14となるのに対し、主面10aの最も近くに配置された内部電極15と、外部電極11とにより挟まれた領域は、不活性領域R2となる。これにより、内部電極15、及び内部電極16が外部からの電気的影響を受けず信頼性が向上する。
【0052】
[第二実施形態]
図7に示される第二実施形態に係る振動デバイス1Aは、主に、配線部材3が主面10aの側面10c側から方向D2に沿って引き出されている点で振動デバイス1と相違している。本実施形態では、電極部分11a,11b,11cの全体が配線部材3に覆われている。すなわち、重複領域11d,12d,13dは、それぞれ露出領域11f,12f,13fを含まない。このように、重複領域11d,12d,13dが露出していないので、重複領域11d,12d,13dの腐食を抑制することができる。また、配線部材3により活性領域R13,R14の変位が抑制されるので、圧電素子2を側面10c側と側面10d側とでバランスよく変位させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0054】
圧電素子2は、モノモルフ型であってもよい。配線部材3は、主面10aの側面10e側又は側面10f側から引き出されてもよい。圧電素子2は、例えば、触覚デバイスに用いられてもよい。
【0055】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0056】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
第一方向で互いに対向している第一主面及び第二主面と、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向し、前記第一主面と前記第二主面とを接続している第一側面及び第二側面と、を有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記第一方向において積層されている複数の内部電極と、
それぞれ、前記第一側面上に設けられ、対応する前記内部電極と接続されている第一電極部分と、前記第一主面上に設けられ、前記第一電極部分と接続されている第二電極部分と、を有する複数の外部電極と、を備え、
前記素体は、前記複数の内部電極間に配置された圧電的に活性な活性領域を含み、
前記第二電極部分は、前記第一方向から見て前記活性領域と重なっている重複領域を含み、
前記重複領域の面積は、前記第二電極部分の面積の50%以上である、
圧電素子。
(付記2)
前記第二電極部分の前記第二方向の長さは、前記第一主面の前記第二方向の長さの50%以上である、
付記1に記載の圧電素子。
(付記3)
前記第一方向から見て、前記活性領域は、前記素体の外縁から離間している、
付記1又は2に記載の圧電素子。
(付記4)
前記重複領域は、配線部材と接合される接合領域を含む、
付記1~3のいずれか1つに記載の圧電素子。
(付記5)
前記重複領域は、前記配線部材から露出している露出領域を含む、
付記4に記載の圧電素子。
(付記6)
前記重複領域の全体が前記配線部材に覆われている、
付記4に記載の圧電素子。
【符号の説明】
【0057】
2…圧電素子,10…素体,3…配線部材,11,12,13…外部電極,15,16,17…内部電極,11d,12d,13d…重複領域,11e,12e,13e…接合領域,11f,12f,13f…露出領域,R1,R11,R12,R13,R14…活性領域。