(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159565
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231025BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20231025BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
E04B1/94 J
E04B1/94 D
E04B1/684 B
E04B1/82 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069322
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】592171131
【氏名又は名称】株式会社ロンビックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】畑中 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大室 真吾
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE03
2E001DF02
2E001FA04
2E001FA13
2E001FA54
2E001GA13
2E001GA15
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA34
2E001MA02
(57)【要約】
【課題】 床200と外壁300との間に形成される隙間の防火性能を担保でき、かつ上下階相互における騒音の抑制を可能とする層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材である中心材111からなる芯材110が、隙間を閉塞するように充填され、隙間における床200の上面と床200の下面との間で、遮音部150が隙間を閉塞するように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置され、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音装置において、
耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなり前記隙間を閉塞するように圧入して充填される耐火吸音部と、
前記隙間を閉塞するように設けられる遮音部と、
を備えることを特徴とする層間耐火防音装置。
【請求項2】
前記遮音部は、
遮音材がシート状に形成された遮音シートであること、
を特徴とする請求項1記載の層間耐火防音装置。
【請求項3】
前記遮音シートは、
前記耐火吸音部の上面側、下面側、または上下両面に設けられた耐火吸音部付帯遮音シートであること、
を特徴とする請求項2記載の層間耐火防音装置。
【請求項4】
前記耐火吸音部付帯遮音シートは、
前記耐火吸音部が前記隙間に圧入されて充填されることに伴って、前記耐火吸音部との接触面に沿って波状に収縮されること、
を特徴とする請求項3記載の層間耐火防音装置。
【請求項5】
前記耐火吸音部と前記耐火吸音部付帯遮音シートとの外周面を被覆する外被材、
をそなえることを特徴とする請求項3記載の層間耐火防音装置。
【請求項6】
前記遮音部は、
前記隙間における前記床の上面と下面との間に設けられること、
を特徴とする請求項1記載の層間耐火防音装置。
【請求項7】
前記耐火吸音部を支持する支持金具と、
前記支持金具の一部によって支持され、前記隙間を閉塞するように設置される金属製板材と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の層間耐火防音装置。
【請求項8】
前記遮音シートは、
前記金属製板材の下側面に設けられた金属製板材付帯遮音シートであること、
を特徴とする請求項7記載の層間耐火防音装置。
【請求項9】
前記金属製板材付帯遮音シートは、
前記金属製板材よりも前記床と前記外壁との間方向に延長された延長部、
を備え、
前記延長部が前記金属製板材の端部から上方に折り返されて設置されること、
を特徴とする請求項8記載の層間耐火防音装置。
【請求項10】
前記遮音シートは、
複数重ねられて設けられること、
を特徴とする請求項2記載の層間耐火防音装置。
【請求項11】
前記金属製板材は、
帯状に形成された帯状金属製板材であること、
を特徴とする請求項7記載の層間耐火防音装置。
【請求項12】
前記帯状金属製板材は、
屈曲加工されて前記隙間よりも幅広に形成されていること、
を特徴とする請求項11記載の層間耐火防音装置。
【請求項13】
前記耐火吸音部は、
前記隙間に充填された際の充填密度が150kg/立方メートル以上の密度で形成されること、
を特徴とする請求項1記載の層間耐火防音装置。
【請求項14】
前記耐火吸音部は、
無機質繊維が一方向に積層されて固着化された耐火吸音積層材であって、
前記無機質繊維が積層される方向が、前記床と前記外壁との間方向に向けられて設けられること、
を特徴とする請求項1記載の層間耐火防音装置。
【請求項15】
建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置され、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音方法において、
耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、前記隙間を閉塞するように圧入して充填される工程と、
前記隙間における前記床の上面と下面との間で、遮音部が前記隙間を閉塞するように設けられる工程と、
を備えることを特徴とする層間耐火防音方法。
【請求項16】
上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音構造において、
耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなり前記隙間を閉塞するように圧入して充填される耐火吸音部と、前記隙間における前記床の上面と下面との間で前記隙間を閉塞するように設けられる遮音部とを備え、建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置される層間耐火防音装置、
を備えることを特徴とする層間耐火防音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造に関し、特に建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置され、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高層建築物において、建築物へ荷重の負担をかけないように、カーテンウォールと呼ばれる非耐力壁を土台や柱などの骨組みにはめ込むことで、建築物の荷重を壁が直接負担しない構造を形成する外壁構法が採用されている。
【0003】
この外壁構法には、例えば床と外壁との間に、部材と部材とのつなぎ目や構造上所定の層間と呼ばれる隙間が形成されるため、この層間が耐火上の弱点となっている。実際に火災が生じた際に、この層間から上下階に延焼してしまうため、この層間を閉塞する必要がある。
【0004】
また鉄骨造の建物を含む耐火建築物などでは、火災発生時に、火災や煙の拡大を一定範囲内にとどめることを目的とした防火区画が設置されている。この防火区画は、例えば外壁や間仕切り壁によって区分された複数の空間の一部に火災が発生した場合でも、火災が発生した空間から近隣の空間へ火災や煙が一定時間拡大することがない。
【0005】
そこで、床と外壁との間に形成される層間に落下防止金物を挿入し、この落下防止金物の上に防水耐火膜を上面に備えた層間耐火材を床と外壁とに密着させることで、床と外壁との間に形成される層間を閉塞し、防火区画を設定する方法が採用されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
層間耐火材は、一般に80kg/立方メートルの密度で形成されたロックウール、セラミックス繊維、グラスウールなどの不燃材料からなる芯材が、床と外壁との間に形成される層間を閉塞するように充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、床と外壁との間に形成される層間を閉塞するための層間耐火材だけでは、上下階に延焼を防止することはできるが、上下階相互における騒音を防止することはできない問題があった。
【0009】
騒音問題は、生活に密着した問題であり、郊外の中でも特に苦情が多い。近年では、苦情件数が高水準で推移している。日常の生活行動や家庭機器から発せられる生活騒音の苦情件数も年々増加しており、今後も深刻化するおそれもある。
【0010】
音とは媒質を振動が伝わっていく現象である。前述の生活騒音も音であり、空気という媒質を介して伝わっていく。音が発せられる音源から距離が離れるほど音のレベルは弱くなり、床や壁などの遮蔽物によりある程度遮断される。
【0011】
ところが、高層建築物におけるカーテンウォールと呼ばれる外壁工法では、層間と呼ばれる隙間が形成されるため、この層間を通じて音が上下階相互に伝わってしまう問題がある。層間には延焼を防止するための層間耐火材が層間に挿入されてはいるものの、80kg/立方メートル程度の密度で形成されたロックウールだけで層間を伝わる音を遮ることは難しい。
【0012】
そこで、層間耐火材の密度を増加させることで、層間を伝わる音を遮断することが考えられる。具体的に、80kg/立方メートル程度の密度で形成された層間耐火材を、150kg/立方メートルの密度で形成された層間耐火材にすることで、層間を閉塞する層間耐火材の密度が増加し、上下階相互の音の伝わりを抑制することができる。
【0013】
しかし、高密度のロックウールは、ロックウールの密度が増加するに伴って層間耐火材の弾性力が低下して硬度が増加する。高密度の層間耐火材を層間に圧入する際にも、高密度の層間耐火材は弾性力が低下して硬度が増加しているため、ほとんど収縮しない。
このため、あらかじめ層間よりも大きい幅で、かつ高密度の層間耐火材を形成してしまうと、高密度の層間耐火材を圧入する作業に多くの時間がかかってしまう問題がある。
【0014】
そこで高密度の層間耐火材を層間と同じ幅で形成することも考えられる。ところが、カーテンウォールと呼ばれる外壁工法は、建築物の荷重を壁が直接負担しない構造になるため、床と外壁との間に形成される層間は、風などで建築物が揺れた際に変位する場合がある。
【0015】
このとき層間の幅が大きくなると高密度の層間耐火材が層間から落下してしまう問題が生じる。層間耐火材が層間から落下してしまうと、層間には何も充填されていない状態となる。このため、防火区画を設けることができず、さらに騒音が上下階相互に筒抜け状態になる。
【0016】
層間の層間耐火材による充填密度を向上させる他の方法としては、あらかじめ形成する層間耐火材の体積をさらに大きくし、これを施工現場で圧縮して層間に挿入することで、充填密度を向上させることが考えられる。
【0017】
具体的な例として、層間耐火材の密度を従来と同じ80kg/立方メートルとして、あらかじめ形成する層間耐火材の体積を、従来の層間耐火材の2倍とすることが考えられる。
【0018】
この場合、層間に挿入する前の層間耐火材の密度は80kg/立方メートルにもかかわらず、この層間耐火材を1/2に圧縮して層間に充填することで、150kg/立方メートル以上の充填密度を得ることができる。しかし、層間耐火材を現場で1/2に圧縮しながら層間に挿入する作業は、非常に作業性が悪く現実的ではない。
【0019】
また、層間に挿入することが困難になった層間耐火材を無理やり挿入してしまうことで、層間耐火材が変形してしまうことがある。このように層間耐火材が変形してしまうと、耐火性能に必要な層間耐火材の厚さを得ることができず、防火性能を著しく低下させてしまう原因ともなる。
【0020】
この他、層間を閉塞するために挿入された層間耐火材とは別に、層間を通じて上下階相互に伝わってしまう音を防ぐための防音装置を層間に設置することが考えられる。ところが、層間はすでに層間耐火材によって閉塞されているため、防音装置を取り付ける事ができない問題がある。
【0021】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、床と外壁との間に形成される隙間の防火性能を担保でき、かつ上下階相互における騒音の抑制を可能とする層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では上記問題を解決するために、建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置され、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音装置において、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなり前記隙間を閉塞するように充填される耐火吸音部と、前記隙間における前記床の上面と下面との間で前記隙間を閉塞するように設けられる遮音部とを備えることを特徴とする層間耐火防音装置が提供される。
【0023】
これにより、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、隙間を閉塞するように充填され、隙間における床の上面と下面との間で、遮音部が隙間を閉塞するように設けられる。
【0024】
また、本発明では、建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置され、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音方法において、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、前記隙間を閉塞するように充填される工程と、前記隙間における前記床の上面と下面との間で、遮音部が前記隙間を閉塞するように設けられる工程とを備えることを特徴とする層間耐火防音方法が提供される。
【0025】
これにより、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、隙間を閉塞するように充填され、隙間における床の上面と下面との間で、遮音部が隙間を閉塞するように設けられる。
【0026】
また、本発明では、上下階相互における延焼と騒音を抑制する層間耐火防音構造において、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなり前記隙間を閉塞するように充填される耐火吸音部と、前記隙間における前記床の上面と下面との間で前記隙間を閉塞するように設けられる遮音部とを備え、建築物の床と外壁との間に形成された隙間に設置される層間耐火防音装置を備えることを特徴とする層間耐火防音構造が提供される。
【0027】
これにより、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、隙間を閉塞するように充填され、隙間における床の上面と下面との間で、遮音部が隙間を閉塞するように設けられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の層間耐火防音装置、層間耐火防音方法、および層間耐火防音構造によれば、耐火性と吸音性とを備えた耐火吸音材からなる耐火吸音部が、隙間を閉塞するように充填され、隙間における床の上面と下面との間で、遮音部が隙間を閉塞するように設けられるので、防火性能を担保しながら上下階相互における騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1の実施の形態における層間耐火防音装置の詳細を示す断面図である。
【
図2】床と外壁との間に形成される隙間に第1の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。
【
図3】床と外壁との間に形成される隙間に第1の実施の形態における層間耐火防音装置をさらに圧縮率を上げた状態で設置した状態を示す断面図である。
【
図4】床と外壁との間に形成される層間Gに第2の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【
図5】床と外壁との間に形成される隙間に第2の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。
【
図6】床と外壁との間に形成される隙間に第3の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。
【
図7】床と外壁との間に形成される層間Gに第4の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【
図8】床と外壁との間に形成される層間Gに第5の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【
図9】床と外壁との間に形成される層間Gに第6の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【
図10】床と外壁との間に形成される層間Gに第7の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態における層間耐火防音装置の詳細を示す断面図である。
図1に示すように、層間耐火防音装置100は、芯材110、上面被覆材120、粘着面130、剥離紙140、および遮音部150を備えている。
【0031】
芯材110は、ここでは図示しない床200と外壁300との間に形成される層間Gである層間を充填するためのものであって、中芯材111と、中芯材111の外周面を完全に被覆するように設けられた外被材112とを備えている。なお、本実施の形態では、ここでは図示しない床200と外壁300との間に形成される約60mmの層間Gに層間耐火防音装置100を充填する場合として説明する。
【0032】
中芯材111は、ここでは図示しない床200と外壁300との間に形成される層間Gに充填されることで、十分な耐火性能と吸音性能とを有する素材で形成された耐火吸音材からなる耐火吸音部である。
【0033】
具体的な素材は、たとえば150kg/立方メートル程度または150kg/立方メートル以上の密度を有する高密度のロックウールが例として挙げられる。ロックウールの他にもセラミックス繊維、グラスウールなどの無機質繊維を使用して形成することもできる。
【0034】
これにより、ここでは図示しない床200と外壁300との間に形成される層間Gに芯材110を圧入することで、層間Gに充填された際の充填密度が150kg/立方メートル以上とすることができる。
【0035】
ロックウールを例とする無機質繊維からなる中芯材111は、ロックウールなどの細かい繊維が絡み合うことで形成された細かい空間により、中芯材111に入射する空気の振動である音波が、繊維の振動に変換され、その振動が熱エネルギーに変換されることで、音が吸収される吸音性能を備えている。
【0036】
中芯材111は、ロックウールなどの無機質繊維が一方向に積層された耐火吸音積層材であって、熱硬化性樹脂などの固着剤を加えて角棒状に固着された断熱材である。このように中芯材111は無機質繊維が一方向に積層されるため、無機質繊維の一方向に繊維の方向が形成される。
【0037】
ここでは、ロックウールなどの無機質繊維が積層された方向、すなわち無機質繊維が重なる方向を積層方向と称し、無機質繊維が積層されたことにより形成された繊維の方向、すなわち積層方向に対して垂直方向を繊維方向と称して以下を説明する。この中芯材111は積層方向に無機質繊維が積層されているため弾力性能が優れている。これに対して繊維方向は強度特性が優れている。
【0038】
一般的に、ロックウール製品は、溶解工程、線維化工程、集綿工程、および成形工程の工程によって形成される。
溶解工程では、製鉄の副産物である高炉スラグや玄武岩などの天然岩石が溶銑炉や電気炉で溶解される。次に線維化工程では、溶解工程で溶解した溶解物を高速回転装置による遠心力で吹き飛ばすことで繊維状にする。
【0039】
次に集綿工程では、線維化工程で吹き飛ばされた線維を捕集ネットなどで集積する。次に成形工程では、集綿工程で集積された繊維にバインダと呼ばれる熱硬化性樹脂などの固着剤を添加し、板状に加工したものが中芯材111の原材料である。
このように、ロックウールは、線維化工程で吹き飛ばされた線維を集綿工程で所定の厚さになるまで集積することで、繊維が厚さ方向に積層されていく。
【0040】
しかしロックウールの集綿工程において、ロックウールの厚さは、繊維の積層を繰り返すことで、どこまでも厚く積層できるわけではない。繊維が重なれば重なる分だけ重くなり、下層部分の繊維は押し潰されてしまうことになる。このため密度が均一な板状のロックウールを成形するためには、板状のロックウールの厚さを薄く形成することが望ましい。
【0041】
このようにロックウールなどのように無機質繊維を積層する場合、積層方向は弾力性能が優れているため、ある程度の高さを超えたものを形成しようとすると、その優れた弾力性能と自らの荷重により潰れてしまい、積層方向の高さ精度が悪くなる問題や、床200と外壁300との層間Gを充填するために必要な積層方向の高さを形成することが難しい問題があった。
【0042】
このため、従来の層間耐火防音装置では、床200と外壁300との層間Gを十分に充填可能に形成できる繊維方向が床200と外壁300との層間G方向に向けられて挿入されている。
【0043】
ところが、繊維方向は強度特性が優れており圧縮することが難しく、床200と外壁300との層間Gに圧入することは難しい。さらにたとえば150kg/立方メートル程度または150kg/立方メートル以上の高い密度を有するロックウールでは、なおさら圧縮して挿入することは困難である。
【0044】
そこで本実施の形態の層間耐火防音装置100における芯材110は2つの中芯材111によって構成され、これらの中芯材111は挿入される床200と外壁300との層間G方向に積層方向が向けられて挿入される。すなわち繊維方向は高さ寸法H方向に向けられ、積層方向が幅寸法W方向に向けられて2つの中芯材111は形成される。
【0045】
また中芯材111の幅寸法Wは、建築物の床200と外壁300との層間Gよりも大きい寸法に形成されている。具体的に、ここでは図示しない床200と外壁300との間に形成される約60mmの層間Gに対して、2つの中芯材111によって75mm程度で形成すると良い。
【0046】
具体的には、一方の中芯材111の幅寸法Waが25mm、他方の中芯材111の幅寸法Wbが50mmで形成し、2つの中芯材111を合わせた幅寸法W方が75mmになるように形成される。なおここでは図示しない中芯材111の長手方向である奥行寸法は、建築物の床200と外壁300との層間Gの幅にあわせて任意に形成することができる。
【0047】
このとき2つの中芯材111は、弾力性能が優れた積層方向が床200と外壁300と間方向に向けられて挿入されるので、中芯材111における高い弾力性を備えた幅寸法W方向に中芯材111を圧縮させた状態で、床200と外壁300と間に中芯材111を圧入することができる。
【0048】
また、中芯材111の繊維方向である高さ寸法H方向は、強度特性が優れているため建築物の床200と外壁300との層間Gに上から押し込んでも収縮幅が小さい。これにより、形成した中芯材111の高さのままで床200と外壁300との層間Gに中芯材111が挿入される。すなわち、床200と外壁300と間を所望の高さで収縮することなく耐火性能と吸音性能とを有する層間耐火防音装置100を充填することができる。
【0049】
なお2つの中芯材111の幅寸法Wa、および幅寸法Wbが均一な密度で成形可能であれば、それぞれが異なる幅寸法で成形された複数の中芯材111を組み合わせて床200と外壁300との層間Gを閉塞することもできる。また1または3以上の中芯材111を組み合わせて床200と外壁300との層間Gを閉塞することもできる。
【0050】
また、ここでは2つの中芯材111の積層方向が建築物の床200と外壁300との層間G方向に向けて形成される例で説明したが、閉塞する層間Gの幅に合わせて複数の中芯材111のうち少なくとも1の中芯材111の積層方向が建築物の床200と外壁300との層間G方向に向けられていればよく、任意の中芯材111の積層方向を建築物の床200と外壁300との層間G方向に向け、他の中芯材111の繊維方向を建築物の床200と外壁300との層間G方向に向けることもできる。
【0051】
なお、中芯材111の高さ寸法Hは、床の厚さや形状などによって任意の高さ寸法Hで設けることができるが、耐火性能および吸音性能を考慮すると高さ寸法Hは50mm~100mm程度で形成するとよい。
【0052】
2つの中芯材111のうち、建築物の床200と外壁300との層間Gに挿入する側である下側面には、中芯材111である耐火吸音部の下側面遮音シートが付帯された耐火吸音部付帯遮音シートとして、2つの中芯材111の下側面を覆うような幅寸法Wおよび形状の遮音部150が設けられている。
【0053】
遮音部150を構成する遮音材は、たとえば音を遮る遮音性能を有する塩化ビニルシートとして遮音シートが挙げられる。遮音シートを形成する配合例としては、炭酸カルシウム50~60%、塩化ビニル樹脂20~30%、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)16%、ポリ(エチレンテレフタレート)1~10%、ステアリン酸1%未満、およびンブラック1%未満からなる混合物が挙げられる。これらの混合物が厚さ1.2mmのシート状に加工されたものが遮音シートすなわち遮音部150である。遮音部150の素材は、床200と外壁300と層間Gにおける上下階相互における騒音を抑制する遮音性能を備えていれば他の配合の素材を用いることもできる。
【0054】
遮音部150が床200と外壁300と層間Gに圧入される中芯材111の下側面を覆うように設けられているため、中芯材111によって床200と外壁300と間を閉塞するとともに、遮音部150が床200と外壁300と間を閉塞することになる。
【0055】
このように吸音性能を有する高密度の中芯材111と、音を遮る遮音性能を有する遮音部150によって、床200と外壁300と間が閉塞されるので、床200と外壁300との層間Gに形成される層間Gの防火性能を担保でき、かつ上下階相互における騒音を抑制する防音効果を得ることができる。
【0056】
また、層間耐火防音装置100を床200と外壁300との層間Gに圧入する際に、2つの中芯材111は床200と外壁300との層間G方向に圧縮されるが、遮音部150は圧縮されない。
【0057】
すなわち幅寸法Wと同じ75mmで形成されたまま、遮音部150は圧縮された中芯材111とともに、遮音部150は床200と外壁300との層間Gに圧入される。このため、遮音部150の床200側および外壁300側の端部は、中芯材111の両側面に沿って上方に折れ曲がるようにして床200と外壁300との層間Gに圧入されるので、遮音部150は完全に床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。
【0058】
中芯材111および遮音部150の周面には、例えば水分を通さないポリエチレンフィルム製の外被材112が中芯材111および遮音部150の外表面を完全に覆うように設けられる。これにより、中芯材111および遮音部150は、外被材112によって雨水などの水分から守られる。
【0059】
芯材110の中芯材111における繊維方向の上面には、上面被覆材120が芯材110の上面を完全に被覆するように接着固定されている。上面被覆材120の素材は、防水性と溶接火花に対する耐性とを兼ね備えた例えば耐火素材のアルミガラスクロスシートである。
【0060】
上面被覆材120は、芯材110の幅寸法Wよりも両外側方向に突出するように上面被覆材延長部121が、芯材110の長手方向に通して形成されている。
上面被覆材延長部121のうち、芯材110が固定された側には粘着面130が設けられており、粘着面130を完全に被覆するように剥離紙140が貼付され、貼付された剥離紙140が粘着面130を保護している。上面被覆材延長部121を所定の場所に接着して固定する際には、剥離紙140が粘着面130から剥離されて粘着される。
【0061】
この上面被覆材延長部121は、建築物の床200と外壁300との層間Gに芯材110および遮音部150を配設した際に、一方の上面被覆材延長部121が床200の側面または上面に粘着面130を介して貼付され、他方の上面被覆材延長部121が外壁300側面に粘着面130を介して貼付されることで、雨水などの水分が芯材110内に侵入することを防ぐことができる。
【0062】
また上面被覆材120によって芯材110の上面全域が完全に被覆されるので、たとえば上階で溶接工事が行われ、溶接工事の際に上階から落下した溶接火花が芯材110に直接当たって芯材110を損傷させてしまうことを防止することができる。
【0063】
これにより、溶接火花が芯材110に当たることで外被材112が損傷してしまい、損傷した外被材112の層間Gから芯材110の内部に雨水などの水分が侵入してしまうことで生じる層間耐火防音装置100の腐食などを防止することができる。
【0064】
また、芯材110および遮音部150に接着固定された上面被覆材120が、建築物の床200と外壁300とに粘着面130を介して接着固定されるため、上面被覆材120に接着固定された芯材110が建築物の床200と外壁300との層間Gに設置された状態から、下階方向に落下してしまうことを防止することができる。
【0065】
以上により、本実施の形態の層間耐火防音装置100では、150kg/立方メートル程度または150kg/立方メートル以上の吸音性能を有する高密度の芯材110で、中芯材111の弾力性能に優れた積層方向が建築物の床200と外壁300との間方向に向けて形成されているため、床200と外壁300との層間Gに芯材110を挿入する際に、従来の層間耐火防音装置よりも容易に床200と外壁300との層間G方向に圧縮できる。
【0066】
また、中芯材111の強度特性に優れた繊維方向が建築物の床200と外壁300との間への挿入方向に向けて形成されているため、床200と外壁300との層間Gに芯材110を挿入する際に、層間耐火防音装置100が挿入方向に変形してしまうことを防止することができる。
【0067】
さらに芯材110の下側面に設けられた遮音性能を有する遮音部150によって床200と外壁300との層間Gが完全に閉塞されるので、遮音性能を有する遮音部150と吸音性能を有する芯材110とによって床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。これにより、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0068】
図2は、床と外壁との間に形成される隙間に第1の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。なお、図面の都合上、層間耐火防音装置100が備える外被材112、粘着面130、剥離紙140などは省略している。
【0069】
図2に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、層間耐火防音装置100が挿入固定されている。
層間耐火防音装置100は、上面被覆材120に設けられた2つの上面被覆材延長部121を上方に折り曲げた状態で、芯材110を層間Gの上方から挿入する。このとき芯材110の幅寸法Wは層間Gと同じ、または層間Gよりも大きく設定されているので、芯材110を幅寸法W方向である水平方向に圧縮しながら層間Gの上部から下部方向に圧入する。
【0070】
このとき中芯材111は、床200と外壁300との間方向に積層方向が向けられているため、床200と外壁300との間方向に弾力性が優れている。これにより、層間Gと同じ、または層間Gよりも大きく設定された芯材110の幅寸法Wを、床200と外壁300との間方向に圧縮することで幅寸法Wを収縮させることができる。この状態で芯材110を層間Gの上部から圧入する。
【0071】
このとき、遮音部150は中芯材111の幅寸法Wと同じ75mmで形成されたまま、遮音部150は圧縮された中芯材111とともに、遮音部150は床200と外壁300との層間Gに圧入される。
【0072】
このため、遮音部150の床200側および外壁300側の端部は、中芯材111の両側面に沿って上方に折れ曲がるようにして床200と外壁300との層間Gに圧入されるので、遮音部150は完全に床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。
【0073】
芯材110を層間G内の所望の固定位置まで挿入したら、芯材110に加えていた中芯材111における積層方向への圧力を緩めて解放する。これにより積層方向に圧縮されていた中芯材111は元の幅寸法Wまで復元する。この復元力により芯材110は層間G内の所望の位置でしっかりと固定される。
【0074】
その後、上面被覆材120が有する一方の上面被覆材延長部121を床200の側面、他方の121を外壁300の側面に沿わせ、剥離紙140を剥離することで露出した粘着面130を介して上面被覆材延長部121を床200および外壁300に接着させる。
【0075】
これにより、層間耐火防音装置100は、床200と外壁300との間に形成される層間Gに充填され、層間Gを閉塞することができる。また、芯材110が接着固定された上面被覆材120が粘着面130を介して床200と外壁300とに接着固定されるため、層間Gから芯材110が落下することがない。
【0076】
図3は、床と外壁との間に形成される隙間に第1の実施の形態における層間耐火防音装置をさらに圧縮率を上げた状態で設置した状態を示す断面図である。
図3に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、層間耐火防音装置100が挿入固定されている。なお、ここでは
図2と比較して層間耐火防音装置の圧縮率を上げるため、
図2の場合よりも芯材110および遮音部150の幅寸法Wを大きく形成した例、具体的には芯材110および遮音部150の幅寸法Wを85mm程度で形成した例で
図3を説明する。
【0077】
層間耐火防音装置100は、上面被覆材120に設けられた2つの上面被覆材延長部121を上方に折り曲げた状態で、芯材110を層間Gの上方から挿入する。このとき芯材110の幅寸法Wは層間Gと同じ、または層間Gよりも大きく設定されているので、芯材110を幅寸法W方向である水平方向に圧縮しながら層間Gの上部から下部方向に圧入する。
【0078】
このとき中芯材111は、床200と外壁300との間方向に積層方向が向けられているため、床200と外壁300との間方向に弾力性が優れている。これにより、層間Gと同じ、または層間Gよりも大きく設定された芯材110の幅寸法Wを、床200と外壁300との間方向に圧縮することで幅寸法Wを収縮させることができる。この状態で芯材110を層間Gの上部から圧入する。
【0079】
また、遮音部150は中芯材111の幅寸法Wと同じ85mmで形成されたまま、遮音部150は圧縮された中芯材111とともに、遮音部150は床200と外壁300との層間Gに圧入される。
【0080】
このため、遮音部150の床200側および外壁300側の端部は、中芯材111の両側面に沿って上方に折れ曲がるようにして床200と外壁300との層間Gに圧入される。
【0081】
さらに
図2の場合よりも遮音部150の幅寸法Wが大きく形成されているため、芯材110が圧入されることに伴って、芯材110との接触面に沿って波上に遮音部150が収縮され、遮音部150は完全に床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。
【0082】
上記のように、
図2では直線状の遮音部150が層間Gを閉塞しており、
図3では波状の直線状の遮音部150が層間Gを閉塞しているため、
図2に場合よりも
図3の場合のほうが、層間Gを閉塞する遮音部150が波状になっているため遮音部150による遮音面積が大きい。すなわち、
図2の場合よりも波状の遮音部150のほうが遮音効果を向上させることができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、層間耐火防音装置を層間Gに圧入することで、遮音部150が芯材110との接触面である下側面に沿って波状に収縮される例で説明したが、後述するように遮音部150が芯材110の上側面に設けられる場合には、遮音部150が芯材110との接触面である上側面に沿って波状に収縮されてもよい。
【0084】
図4は、床と外壁との間に形成される層間Gに第2の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【0085】
図4に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、芯材110が挿入固定され、支持金具160により芯材110と金属製板材170とが支持されている。
【0086】
図2では、床200と外壁300との間に形成される層間Gに層間耐火防音装置100のみを挿入したが、層間Gに挿入される層間耐火防音装置100および金属製板材170を、さらに支持金具160で支持することもできる。これにより、たとえば風などで建築物が揺れた際に層間Gの幅寸法が変位した場合でも、支持金具160により層間耐火防音装置100の落下を防止することができる。
【0087】
また金属製板材170は床200と外壁300との間に形成される層間Gを閉塞するように配設することで、金属製板材170によって層間Gが遮断される。これにより、
図2の場合よりも防音性能を向上させることができる。
【0088】
支持金具160は、例えば金板である平板材を屈折加工したものであり、床200の上面かつ端部を覆うように直角に曲げられ、床200の上面に面することで支持金具160を支持する上部支持部161と、上部支持部161から床200の側面に沿って垂直下に延長し、床200の下部まで床200の側面に面する添部162と、添部162の端部から外壁300上部方向に向かって屈曲し延長された支持部163とを備え、断面図が「レ」の形状をした金物である。
【0089】
支持金具160の添部162から支持部163の先端までの寸法は、層間Gよりも大きく設定されている。これにより、支持金具160を層間Gの上部から圧入することで、添部162が床200の側面に圧力がかかり、層間G内での支持金具160の安定性が向上する。
【0090】
また支持金具160の層間Gへの圧入は、上部支持部161が床200の上面に面するまで行われ、上部支持部161が床200の上面に、また添部162が床200の側面に面することで、支持金具160は、層間G内にしっかりと固定される。また支持金具160は、層間Gの長手方向に所定の間隔をあけて複数設置される。
【0091】
層間耐火防音装置100は、層間Gの長手方向に所定の間隔をあけて固定された支持金具160の上に挿入されるので、複数の支持金具160によって層間耐火防音装置100の落下を防止することができる。
【0092】
また支持金具160は、添部162に金属製板材170を支持するための板材支持部164が設けられている。板材支持部164は、例えば添部162の一部を切り起こした形状の突起であり、この板材支持部164によって金属製板材170の床200側部分が支持され、金属製板材170の外壁300側は外壁300によって支持される。この他、板材支持部164は、添部162の外壁300側の表面に溶接などで取り付けられた突起体でもよい。
【0093】
この他、板材支持部164は支持部163に設けることもできる。たとえば板材支持部164は、支持部163の先端部の一部を切り起こした形状の突起であり、この支持部163の先端部に形成された板材支持部164によって金属製板材170の外壁300側が支持され、金属製板材170の床200側部分が支持部163の先端部よりも上方の添部162の一部によって支持される。
【0094】
また、板材支持部164は添部162の下端部に設けることもできる。たとえば板材支持部164は、添部162の下端部を外壁300上部方向に向かって鋭角に屈曲させた角部であり、この添部162の下端部に形成された角部である板材支持部164によって金属製板材170の床200側部分が支持され、金属製板材170の外壁300側は外壁300によって支持される。
【0095】
金属製板材170は、金属製の板材を帯状に形成された帯状金属製板材として層間Gの長手方向に所定の間隔をあけて複数設置される支持金具160によって支持される。金属製板材170は層間Gを長手方向に沿って層間Gを閉塞する幅寸で形成された厚さ1.6mm以上の板材である。
【0096】
この金属製板材170を層間Gに設置することで層間Gが閉塞され、支持金具160によって支持されるので、上下階相互における延焼の防止と防音性能を向上することができる。また金属製板材170によって閉塞された層間Gの上部に層間耐火防音装置100が設置されるので、より強固に芯材110の落下を防止することができる。
【0097】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、遮音部が設けられる部位が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0098】
図5は、床と外壁との間に形成される隙間に第2の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。なお、図面の都合上、層間耐火防音装置100が備える外被材112、粘着面130、剥離紙140などは省略している。
【0099】
図5に示すように、第2の実施の形態における層間耐火防音装置100は、第1の実施の形態における層間耐火防音装置100に加えて、2つの中芯材111のうち、建築物の床200と外壁300との層間Gに挿入する側と反対側である上側面にも、中芯材111である耐火吸音部の下側面遮音シートが付帯された耐火吸音部付帯遮音シートとして、2つの中芯材111の上側面を覆うような幅寸法Wおよび形状で遮音部150が設けられたものである。
【0100】
このように、芯材110の上下両面に設けられた遮音性能を有する遮音部150によって床200と外壁300との層間Gが完全に閉塞されるので、遮音性能を有する2つの遮音部150と吸音性能を有する芯材110とによって床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。これにより、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0101】
なお、本実施の形態の層間耐火防音装置100に加えて、
図4のように層間耐火防音装置100を支持するための支持金具160、および支持金具160によって床200と外壁300との層間Gを閉塞するように支持される金属製板材170を配設することもできる。これにより、さらに防火性能および防音性能を向上させることができる。
【0102】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、遮音部が設けられる部位が異なる以外は、第1~2の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~2の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0103】
図6は、床と外壁との間に形成される隙間に第3の実施の形態における層間耐火防音装置を設置した状態を示す断面図である。なお、図面の都合上、層間耐火防音装置100が備える外被材112、粘着面130、剥離紙140などは省略している。
【0104】
図6に示すように、第1の実施の形態における層間耐火防音装置100では、2つの中芯材111の下側面を覆うような幅寸法Wおよび形状で設けられていた遮音部150に代えて、第3の実施の形態における層間耐火防音装置100では、2つの中芯材111の上側面を覆うように2層の遮音部150が設けられたものである。
【0105】
このように、芯材110の上側面に設けられた複数層の遮音性能を有する遮音部150によって床200と外壁300との層間Gが完全に閉塞されるので、遮音性能を有する遮音部150と吸音性能を有する芯材110とによって床200と外壁300との層間Gを閉塞することができる。これにより、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0106】
なお、本実施の形態の層間耐火防音装置100では、芯材110の上側面を複数層の遮音性能を有する遮音部150が設けられる例で説明したが、芯材110の下側面に複数層の遮音性能を有する遮音部150を設けることもできる。
【0107】
さらに、芯材110の上下両面に設けられた遮音性能を有する複数層の遮音部150によって床200と外壁300との層間Gを閉塞することもできる。これにより、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0108】
なお、本実施の形態の層間耐火防音装置100に加えて、
図4のように層間耐火防音装置100を支持するための支持金具160、および支持金具160によって床200と外壁300との層間Gを閉塞するように支持される金属製板材170を配設することもできる。これにより、さらに防火性能および防音性能を向上させることができる。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、遮音部が設けられる部位、支持金具、および金属製板材の形状が異なる以外は、第1~3の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~3の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0110】
図7は、床と外壁との間に形成される層間Gに第4の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【0111】
図7に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、芯材110が挿入固定され、支持金具160により芯材110と金属製板材170とが支持されている。
【0112】
支持金具160は、例えば金板である平板材を屈折加工したものであり、床200の上面かつ端部を覆うように直角に曲げられ、床200の上面に面することで支持金具160を支持する上部支持部161と、上部支持部161から床200の側面に沿って垂直下に延長し、床200の下部まで床200の側面に面する添部162と、添部162の端部から外壁300方向に向かって折曲げられた床側角部165と、床側角部165から水平に延長されて外壁300の上部方向に向かって屈曲し延長された支持部163とを備え、断面図が「L」の形状をした金物である。
【0113】
支持金具160の添部162から支持部163の先端までの寸法は、層間Gよりも大きく設定されている。これにより、支持金具160を層間Gの上部から圧入することで、添部162が床200の側面に圧力がかかり、層間G内での支持金具160の安定性が向上する。
【0114】
また支持金具160の層間Gへの圧入は、上部支持部161が床200の上面に面するまで行われ、上部支持部161が床200の上面に、また添部162が床200の側面に面することで、支持金具160は、層間G内にしっかりと固定される。また支持金具160は、層間Gの長手方向に所定の間隔をあけて複数設置される。
【0115】
第1の実施の形態の層間耐火防音装置100における
図2では、添部162に金属製板材170を支持するための板材支持部164が設けられていたが、本実施の形態の層間耐火防音装置100では、床側角部165を板材支持部164として利用することができる。
【0116】
層間Gに支持金具160を設置した後に、金属製板材170を層間Gに挿入する。層間Gに挿入された金属製板材170は、金属製板材170の床200側部分が床側角部165によって支持され、金属製板材170の外壁300側が外壁300によって支持される。金属製板材170が床側角部165と外壁300とによって支持されることで、層間Gを金属製板材170で閉塞することができる。
【0117】
層間Gに挿入される金属製板材170の下側面には、金属製板材170の下側面に遮音シートが付帯された金属製板材付帯遮音シートとして遮音部150が設けられている。遮音部150は、金属製板材170の下側面を完全に被覆するような大きさで形成されており、金属製板材170よりも外側に延長された遮音部延長部151が形成されている。
【0118】
金属製板材170を層間Gに挿入するとき、遮音部延長部151を層間Gの上方に折り返し、金属製板材170を遮音部150で包み込むようにして挿入する。
これにより遮音部150は、金属製板材170の床200側と床200との間、および金属製板材170の外壁300側と外壁300側との間に挟まれ、金属製板材170の重さによってしっかりと固定される。
【0119】
遮音部150は金属製板材170の下側面を覆うように設けられているため、金属製板材170が床200と外壁300と間を閉塞するとともに、遮音部150も床200と外壁300と間を閉塞することができる。
【0120】
支持金具160によって金属製板材170および遮音部150支持された後に、床200と外壁300との層間Gに、高密度のロックウールなどからなる芯材110を充填することで、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0121】
なお、本実施の形態では、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150が、金属製板材170の下側面に沿って直線状に設けられる例で説明したが、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150を金属製板材170の下側面に沿って波状に設けることもできる。
【0122】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、遮音部が設けられる部位が異なる以外は、第1~4の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~4の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0123】
図8は、床と外壁との間に形成される層間Gに第5の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【0124】
図8に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、芯材110が挿入固定され、支持金具160により芯材110と金属製板材170とが支持されている。
【0125】
図8に示すように、第5の実施の形態における層間耐火防音装置100は、第4の実施の形態における層間耐火防音装置100に加えて、2つの中芯材111の下側面を覆うような幅寸法Wおよび形状で遮音部150が設けられたものである。
【0126】
このように、金属製板材170の下側面を覆うように設けられた遮音部150と、芯材110の下側面を覆うように設けられた遮音部150とで層間Gを閉塞するように、複数の遮音部150で層間Gを閉塞することで、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能をさらに向上させることができる。
【0127】
なお、本実施の形態の層間耐火防音装置100における芯材110の上層に遮音部150を設けることもでき、さらにこれらの遮音部150を重ねるように複数の遮音部150を設けることもできる。
【0128】
〔第6の実施の形態〕
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、金属製板材の形状が異なる以外は、第1~6の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~6の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0129】
図9は、床と外壁との間に形成される層間Gに第6の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【0130】
図9に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、芯材110が挿入固定され、支持金具160により芯材110と金属製板材170とが支持されている。
【0131】
本実施の形態の金属製板材170は、例えば金板である平板材をV字状に屈折加工したものであり、V字状に屈折加工された金属製板材170の開口部の幅は、層間Gよりも大きく設定されている。
【0132】
このためV字状に屈折加工された金属製板材170を層間Gの上部から圧入することができる。これによりV字状に屈折加工された金属製板材170の開口部の端部が、床200と外壁300との外側方向に圧力がかかるため、層間G内でのV字状に屈折加工された金属製板材170の安定性が向上する。
【0133】
層間Gに支持金具160を設置した後に、V字状に屈折加工された金属製板材170を層間Gに挿入する。層間Gに挿入されたV字状に屈折加工された金属製板材170は、V字状に屈折加工された金属製板材170の下側の角部が支持金具160によって支持される位置まで挿入される。これによりV字状に屈折加工された金属製板材170で層間Gを閉塞することができる。
【0134】
層間Gに挿入されるV字状に屈折加工された金属製板材170の下側面には、金属製板材170の下側面に遮音シートが付帯された金属製板材付帯遮音シートとして遮音部150が設けられている。
【0135】
遮音部150は、金属製板材170の下側面を完全に被覆するような大きさで形成されており、金属製板材170よりも外側に延長された遮音部延長部151が形成されている。
【0136】
V字状に屈折加工された金属製板材170を層間Gに挿入するとき、遮音部延長部151を層間Gの上方に折り返し、金属製板材170を遮音部150で包み込むようにして挿入する。
【0137】
これにより遮音部150は、V字状に屈折加工された金属製板材170の床200側と床200との間、および金属製板材170の外壁300側と外壁300側との間に挟まれ、金属製板材170の重さによってしっかりと固定される。
【0138】
遮音部150はV字状に屈折加工された金属製板材170の下側面を覆うように設けられているため、V字状に屈折加工された金属製板材170が床200と外壁300と間を閉塞するとともに、遮音部150も床200と外壁300と間を閉塞することができる。
【0139】
支持金具160によってV字状に屈折加工された金属製板材170および遮音部150が支持された後に、床200と外壁300との層間Gに、高密度のロックウールなどからなる芯材110を充填することで、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能を向上させることができる。
【0140】
なお、本実施の形態では、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150が、V字状に屈折加工された金属製板材170の下側面に沿って直線状に設けられる例で説明したが、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150をV字状に屈折加工された金属製板材170の下側面に沿って波状に設けることもできる。
【0141】
〔第7の実施の形態〕
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐火防音装置は、遮音部が設けられる部位が異なる以外は、第1~6の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~4の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0142】
図10は、床と外壁との間に形成される層間Gに第7の実施の形態における層間耐火防音装置、支持金具、および金属製板材を設置した状態の耐火防音構造の一例を示す断面図である。
【0143】
図10に示すように、床200と外壁300との間に形成される層間Gに、芯材110が挿入固定され、支持金具160により芯材110と金属製板材170とが支持されている。
【0144】
図10に示すように、第7の実施の形態における層間耐火防音装置100は、第6の実施の形態における層間耐火防音装置100に加えて、2つの中芯材111の下側面を覆うような幅寸法Wおよび形状で遮音部150が設けられたものである。
【0145】
このように、V字状に屈折加工された金属製板材170の下側面を覆うように設けられた遮音部150と、芯材110の下側面を覆うように設けられた遮音部150とで層間Gを閉塞するように、複数の遮音部150で層間Gを閉塞することで、床200と外壁300との層間Gにおいて防火性能を担保したまま防音性能をさらに向上させることができる。
【0146】
なお、本実施の形態の層間耐火防音装置100における芯材110の上層に遮音部150を設けることもでき、さらにこれらの遮音部150を重ねるように複数の遮音部150を設けることもできる。
【0147】
また、本実施の形態では、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150が、金属製板材170の下側面に沿って直線状に設けられる例で説明したが、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150を金属製板材170の下側面に沿って波状に設けることもできる。
【0148】
さらに、本実施の形態では、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150が、V字状に屈折加工された金属製板材170の下側面に沿って直線状に設けられる例で説明したが、金属製板材付帯遮音シートである遮音部150をV字状に屈折加工された金属製板材170の下側面に沿って波状に設けることもできる。
【符号の説明】
【0149】
100 層間耐火防音装置
110 芯材
111 中芯材
112 外被材
120 上面被覆材
121 上面被覆材延長部
130 粘着面
140 剥離紙
150 遮音部
151 遮音部延長部
160 支持金具
161 上部支持部
162 添部
163 支持部
164 板材支持部
165 床側角部
170 金属製板材
200 床
300 外壁
G 層間
H 高さ寸法
W 幅寸法
Wa 幅寸法
Wb 幅寸法