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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159568
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20231025BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069329
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 啓介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH02A
4F100AK04A
4F100AK48B
4F100AK51C
4F100AK63A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA18A
4F100CA22A
4F100CB00C
4F100EH46C
4F100EJ38B
4F100EJ55B
4F100GB15
4F100GB18
4F100JC00A
4F100JG03
4F100JL11
4F100JL12A
(57)【要約】
【課題】植物由来ポリエチレン系樹脂を用いた積層フィルムであって、高い接着強度と帯電防止性が付与された積層フィルムを提供する。
【解決手段】2以上のフィルムが積層されてなる積層フィルムであって、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂及び(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するシーラントフィルムを有する、積層フィルム。前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体含有量が50質量%以上である、前記(1)に記載の積層フィルム。前記シーラントフィルムが、更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤を含有する、前記(1)又は(2)に記載の積層フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のフィルムが積層されてなる積層フィルムであって、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂及び(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するシーラントフィルムを有する、積層フィルム。
【請求項2】
前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体含有量が50質量%以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記シーラントフィルムが、更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を低減するために、樹脂フィルムの原料の一部を、石油由来の樹脂から、植物由来成分を主成分とする植物由来樹脂に置き換えることが検討されている。そして、植物由来樹脂は、従来の石油由来の樹脂と、化学構造的には変わりがなく、同等の物性を有することが期待されている。
【0003】
しかしながら、実際には、例えば植物由来ポリエチレン系樹脂は、石油由来のポリエチレン系樹脂と異なる性質を示すことが報告されている。例えば、石油由来のポリエチレン系樹脂を含んでなるシーラントフィルムにおいて、原料のポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来ポリエチレン系樹脂に変えると、その配合率が高くなるにつれて、その上に積層する基材層とのラミネート強度が低下し、層間剥離が起き易くなる問題が報告されている(特許文献1)。また、石油由来のポリエチレン系樹脂を含んでなるマスターバッチにおいて、原料のポリエチレン系樹脂の一部を、植物由来ポリエチレン系樹脂に変えると、粘度や加工性が変わることが報告されている(特許文献2)。
【0004】
一方、植物由来樹脂を用いてフィルムやラップを提供する場合に、帯電防止性や防曇性が求められることがある。帯電防止性や防曇性を付与するための公知の技術としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を配合する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、植物由来ポリエチレン系樹脂を用いた積層フィルムに帯電防止性等を付与するためグリセリン脂肪酸エステル等を配合すると層間はく離の問題が更に起き易くなる。これは、植物由来ポリエチレン中の低分子量物やグリセリン脂肪酸エステル等がオレフィン系フィルムとその他の基材フィルムとの接着を阻害するためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6743932号公報
【特許文献2】特開2021-008557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物由来ポリエチレン系樹脂を用いた積層フィルムであって、高い接着強度と帯電防止性が付与された積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の界面活性剤を添加したシーラントフィルムを用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)~(3)からなっている。
(1)2以上のフィルムが積層されてなる積層フィルムであって、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂及び(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するシーラントフィルムを有する、積層フィルム。
(2)前記(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体含有量が50質量%以上である、前記(1)に記載の積層フィルム。
(3)前記シーラントフィルムが、更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤を含有する、前記(1)又は(2)に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層フィルムは、高い接着強度と帯電防止性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「植物由来」とは、植物を原料として得られるアルコールから製造した物について、その物に含まれる炭素が植物に由来していることを意味する。
【0012】
本発明で(A)成分として用いられる植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンの単独重合体又は該植物由来エチレンと他の少量のコモノマーとの共重合体である。
【0013】
植物由来ポリエチレン系樹脂としては、具体的には、バイオエタノールから誘導されたエチレンを重合して得られる、高密度ポリエチレン(HDPE;密度0.940g/cm以上)、中密度ポリエチレン(MDPE;密度0.925以上0.940g/cm未満)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE;密度0.925g/cm未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE;密度0.910~0.925g/cm;エチレンとα-オレフィンとの共重合体)等が挙げられる。これら植物由来ポリエチレン系樹脂は、いずれか1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明で(B)成分として用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンとしては、例えば、平均重合度が2~10のポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、デカグリセリン等)が挙げられ、中でも、平均重合度が2~3のポリグリセリン(ジグリセリン、トリグリセリン)が好ましい。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、例えば、炭素数が8~22の脂肪酸(例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等)が挙げられ、中でも、ラウリン酸、ステアリン酸が好ましい。
【0017】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、フィルム間の接着強度を高める観点から、モノエステル体含有量が50質量%以上のものが好ましく、70質量%以上のものがより好ましい。
【0018】
ここで、ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル体含有量は、下記分析条件にてHPLCを用いて分析することにより求められる。具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを下記HPLC分析条件で分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノエステル体含有量を求めることができる。
【0019】
<HPLC分析条件>
装置 島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC-20AD;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-20A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:LCsolution;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF-801;昭和電工社製) 2本連結
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検出器 RI検出器(型式:RID-10A;島津製作所社製)
カラム温度 40℃
検液注入量 15μL(in THF)
【0020】
本発明で(C)成分として用いられるスルホン酸型アニオン界面活性剤は、スルホ基又はその塩を有するアニオン界面活性剤をいう。
【0021】
スルホン酸型アニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸カリウム等のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸アルカリ金属塩、ジオクチルスルホコハク酸エステルナトリウム、ジブチルスルホコハク酸エステルリチウム、ドデシルスルホ酢酸エステルナトリウム、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステルカリウム等のエステルスルホン酸アルカリ金属塩が挙げられる。これらスルホン酸型アニオン界面活性剤の中でも、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩が好ましく、炭素数12~18のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩がより好ましい。
【0022】
本発明の積層フィルムは、2以上のフィルムが積層されてなり、少なくとも(A)植物由来ポリエチレン系樹脂及び(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するシーラントフィルムを有する。
【0023】
本発明に用いられるシーラントフィルム100質量%中の(A)植物由来ポリエチレン系樹脂の含有量は、50~99.95質量%、好ましくは80~99質量%である。尚、該シーラントフィルムは、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂と共に、石油由来ポリエチレン系樹脂(即ち、植物原料に由来する炭素を含まず、石油から得られるナフサを熱分解して得られるエチレンに由来する構造を主成分とするポリエチレン系樹脂)を含有するものでも良いが、この場合であっても、環境負荷を低減する観点から、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂の含有量は、上記の範囲内であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるシーラントフィルム100質量%中の(B)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量〔但し、該シーラントフィルムが更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤を含有する場合は、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤の含有量の合計量〕は、本発明の効果を十分に得る観点から、0.05~2.0質量%であり、好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0025】
本発明に用いられるシーラントフィルムが更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤を含有する場合、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤の含有量の比率は、99/5~50/50(質量比)であり、好ましくは90/10~60/40(質量比)である。
【0026】
本発明においては、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂、(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤をシーラントフィルムに添加することができる。かかる添加剤としては、例えば、防曇剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、安定剤、スリップ剤、粘着性付与剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるシーラントフィルムは、公知の方法により、各原材料を均一に練り込み得られる樹脂組成物をフィルムに成型することにより得られる。
【0028】
樹脂組成物の調製方法としては、例えば、各原材料をバンバリーミキサー、一軸押出機及び多軸押出機等の公知の混合機又は押出機を用いて練り込んで配合する方法が挙げられ、より具体的には、例えば、各原材料をドライブレンドして、インフレダイ又はTダイを取り付けた単軸押出し機又は二軸押出機で160℃~230℃で溶融混練することができる。
【0029】
また、樹脂組成物の調製では、フィルムへの成型を容易にするため、(A)植物由来ポリエチレン系樹脂及び(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル〔所望により、更に(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤〕を二軸押出し機で溶融混練りして、マスターバッチに加工したものを原材料として用いることが好ましい。
【0030】
樹脂組成物をフィルムに成型する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等の公知の方法が挙げられる。フィルムへの成型では、シーラントフィルムの厚さは、その用途や所望の性能等に応じて適宜設定することができるが、例えば、5~200μm、好ましくは20~150μmである。
【0031】
本発明に用いられるシーラントフィルム(以下、「S」ともいう)を他のフィルム(以下、「T」ともいう)と積層し、2以上のフィルムが積層されてなる本発明の積層フィルムとするため、接着剤を介して、押出ラミネート法又はドライラミネート法で各フィルムを貼合せることができる。本発明の積層フィルムの具体的な構成は、最外層のいずれか一方がシーラントフィルムであること(例えば、T/S、T/T/S等)が好ましい。該接着剤としては、例えば、ポリウレタン系、イミノ基含有ポリマー、ポリエステル系接着剤、オレフィン系接着剤、ゴム系接着剤、カップリング剤等が挙げられ、好ましくはポリウレタン系接着剤である。
【0032】
上記ポリウレタン系接着剤としては、ポリイソシアネートとポリオールとのウレタン形成反応によって得られる公知のものが用いられる。該ポリウレタン系接着剤の厚み(即ち、フィルム単位面積当たりの塗布量)に特に制限はないが、例えば、押出ラミネート法では、0.1~0.5g/m(固形分)、ドライラミネート法では、1.0~5.0g/m(固形分)である。
【0033】
上記他のフィルムに特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、メタキシレンジアミン等のフィルムが挙げられる。
【0034】
このようして得られる積層フィルムは、蓋材や包装袋等の包装材として、好適に使用することできる。
【0035】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0036】
[トリグリセリンステアリン酸エステル(試作品)の合成]
グリセリン20kgにCaOを40g加え、窒素ガス気流下、260℃で5時間グリセリンの縮合反応を行った後、HPOを72g添加して中和した。次に得られた組成物を、遠心式分子蒸留機を用いて、2Paの真空下、200℃で、ジグリセリンを除去し、続いて、2Paの真空下、230℃で、トリグリセリン含有量90質量%のトリグリセリン組成物を得た。このトリグリセリン組成物を活性炭処理にて精製した後、トリグリセリン組成物6.5kgとステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;新日本理化社製)4.5kgを反応釜に仕込み、窒素雰囲気下、240℃で3時間エステル化反応を行った。得られた反応物を、遠心式分子蒸留機を用いて、1Paの真空下、230℃にて、未反応のトリグリセリンを除去し、続いて、1Paの真空下、250℃にて、トリグリセリンジエステルを除去し、モノエステル体含有量80質量%のトリグリセリンステアリン酸エステル(試作品)を得た。
【0037】
[マスターバッチの作製]
(1)原材料
<(A)植物由来ポリエチレン系樹脂>
・A-1:植物由来LLDPE(商品名:C4-SLL118;ブラスケム社製)
【0038】
<(A’)石油由来ポリエチレン系樹脂>
・A’-1:石油由来LLDPE(商品名:エボリュ―SP2020;プライムポリマー社製)
【0039】
<(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル>
・B-1:ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムDS-100A;モノエステル体含有量80質量%;理研ビタミン社製)
・B-2:ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:リケマールS-71-D;モノエステル体含有量35質量%;理研ビタミン社製)
・B-3:ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:リケマールS-72;モノエステル体含有量23質量%;理研ビタミン社製)
・B-4:ジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;モノエステル体含有量77質量%;理研ビタミン社製)
・B-5:トリグリセリンステアリン酸エステル(試作品;モノエステル体含有量80質量%)
【0040】
<(B’)モノグリセリン脂肪酸エステル>
・B’-1:モノグリセリンステアリン酸エステル(商品名:リケマールS-100A;モノエステル体含有量80質量%;理研ビタミン社製)
【0041】
<(C)スルホン酸型アニオン界面活性剤>
・C-1:アルキルスルホン酸ナトリウム(商品名:TB-160;松本油脂製薬社製)
・C-2:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)
【0042】
(2)マスターバッチの配合
上記原材料を用いて作製したマスターバッチ(MB1~15)の配合を表1及び2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(3)マスターバッチの作製方法
表1及び2に記載の原材料の100倍量を、同方向二軸押出機(型式:KZW15TW;テクノベル社製)を用いて、シリンダー温度180℃、ダイス温度180℃、スクリュー回転数300rpm、押出量3kg/時間の条件にて溶融混合した。尚、B-1~B-5は、80℃に加温し、同方向二軸押出機のシリンダーへ、ギアポンプを用いて定量的に注入した。また、A-1及びA’-1は、同方向二軸押出機のシリンダーへ、定量フィーダーを用いて供給した。また、C-1及びC-2は、同方向二軸押出機のシリンダーへ、前記定量フィーダーとは別の定量フィーダーを用いて供給した。ストランド状に押し出されたものをペレタイザーでカットして円柱状(直径約3mm、長さ約3mm)のマスターバッチ(MB1~12)を作製した。
【0046】
[シーラントフィルムの作製]
(1)原材料
・A-1:植物由来LLDPE(商品名:C4-SLL118;ブラスケム社製)
・A’-1:石油由来LLDPE(商品名:エボリュ―SP2020;プライムポリマー社製)
・マスターバッチ(MB1~15)
【0047】
(2)シーラントフィルムの配合
上記原材料を用いて作製したシーラントフィルム1~15の配合を表3及び4に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
(3)シーラントフィルムの作製方法
表3に記載の原材料の100倍量を、ヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機(型式:ラボプラストミル50MR;東洋精機社製)を用いて、シリンダー温度180℃、ダイス温度180℃、スクリュー回転数60rpmの押出条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をTダイ法により製膜し、厚さ20μmのシーラントフィルムを1~15を作製した。
【0051】
[積層フィルムの作製及び評価]
(1)積層フィルムの作製方法
下記条件により、二軸延伸ナイロン6フィルム(厚さ15μm;ユニチカ社製)及びシーラントフィルム1~12をコロナ放電処理した。次に、グラビアコート法により、二軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ放電処理面に下記接着剤を塗布量3.0g/mで均一に塗布した。塗布後、二軸延伸ナイロン6フィルムを80℃の熱風で30秒間乾燥し、同フィルムの接着剤塗布面とシーラントフィルム(1~12のうちいずれか)のコロナ放電処理面とを圧着ロールにて圧力0.2MPaでドライラミネートし、40℃の恒温器中に48時間放置し、積層フィルム1~15を得た。
【0052】
<コロナ放電処理条件>
処理面:フィルム外面(急冷面)
試験機:コロナ表面処理装置(春日電機社製)
高周波電源:AGF-012S型
処理強度:ぬれ指数40になるように調整
【0053】
<接着剤>
ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製)
主剤:A-620(NV=60%)
硬化剤:A-65(NV=100%)
配合:A-620/A-65/酢酸エチル=16/1/13.5(NV=34.7%)
【0054】
(2)帯電防止性の評価
作製した積層フィルム1~15を40℃の恒温機で30日間エージングした後、フィルム表面の表面固有電気抵抗値(Ω)を測定することによりシーラントフィルム側の帯電防止性を評価した。測定は下記測定条件に従って実施し、結果は測定値を下記基準に従って記号化した。結果を表4及び5に示す。
【0055】
<表面固有電気抵抗値測定条件>
試験機械:超絶縁計 SM-8220(東亜DKK社製)
印加電圧:500V
印加時間:1分
温度 :20℃
湿度 :65%
【0056】
<評価基準>
表面固有電気抵抗値(Ω)が10以上1011未満 :◎
表面固有電気抵抗値(Ω)が1011以上1013未満 :○
表面固有電気抵抗値(Ω)が1013以上 :×
【0057】
(3)接着強度の評価
作製した積層フィルム1~15を40℃の恒温機で3日間エージングした後、JISK6854-2に準拠して、層間剥離が生じる時の荷重(N/15mm)を測定することによりフィルムの接着強度を評価した。測定は下記測定条件に従って実施し、結果は測定値を下記基準に従って記号化した。結果を表5~7に示す。
【0058】
<接着強度測定条件>
試験機械:テンシロン万能試験機RTC-1310(エー・アンド・デイ社製)
試験片:幅15mm、長さ150mm
速度:100mm/min
【0059】
<評価基準>
荷重(N/15mm)が6以上 :◎
荷重(N/15mm)が3以上6未満 :○
荷重(N/15mm)が2以上3未満 :○-
荷重(N/15mm)が1以上2未満 :△
荷重(N/15mm)が1未満 :×
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
表5~7の結果から明らかなように、本発明の実施例である積層フィルム1~10は、帯電防止性及び接着強度が「○-」以上の結果であった。これに対し、比較例の積層フィルム10~15は、帯電防止性又は接着強度のいずれか評価項目で「△」以下の結果であり、本発明のものに比べて劣っていた。