(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159585
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】通信システム、親局、子局、通信方法、及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20231025BHJP
【FI】
H04W48/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069356
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】中川 克哉
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】子局に対応する親局を切り替えるローミングにおいて、消費電力を抑制するとともにレスポンスの悪化を防ぐことが可能な通信システム、親局、子局、通信方法、及び通信プログラムを提供する。
【解決手段】通信システムにおいて、第1子局は、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれは、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、前記管理サーバーは、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバーと複数の親局と複数の子局とを含む通信システムであって、
第1子局は、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、
前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれは、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、
前記管理サーバーは、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える、
通信システム。
【請求項2】
前記管理サーバーは、前記第1親局から受信する前記探索信号の安定度よりも高い安定度の前記探索信号を受信する親局を前記第2親局に決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1子局が前記探索信号を送信するチャネルと、前記第1子局が前記第2親局に関連付けられた後に前記第2親局と通信するチャネルとが異なる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記管理サーバーは、少なくとも前記第2親局の識別子又はチャネルの情報を前記第1子局に送信し、
前記第1子局は、少なくとも前記第2親局の識別子又は前記チャネルの情報に基づいて前記第2親局と通信を行う、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記親局は前記子局と時分割通信を行い、
前記第1子局は、前記時分割通信におけるスロット時間よりも長い時間間隔で前記探索信号を複数回送信する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記探索信号の安定度は、前記探索信号の信号強度の値及び信号強度の平均値のいずれかに基づいて算出される、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項7】
前記探索信号を受信した複数の親局のうち、前記探索信号の安定度が、前記第1親局が前記第1子局から受信した前記探索信号の安定度よりも高い親局のみが、前記レポートを前記管理サーバーに送信する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記第1子局は、通常の通信時の信号強度よりも弱い信号強度で前記探索信号を送信し、
前記管理サーバーは、前記信号強度を弱めた分量を補正して前記探索信号の安定度を算出する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記複数の親局のうちいずれかの親局は、前記管理サーバーの機能を備える、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項10】
管理サーバー及び複数の子局と通信を行う親局であって、
第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った際に前記第1子局から送信される他の親局を探索するための探索信号を受信した場合に、前記親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、
前記管理サーバーから、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から第2親局に切り替える指示を受信した場合に、前記第1子局に前記第2親局に関する情報を送信する、親局。
【請求項11】
管理サーバー及び複数の親局と通信を行う子局であって、
前記子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、
前記管理サーバーが前記子局に関連付ける親局として第2親局を決定した場合に、前記子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える、子局。
【請求項12】
管理サーバーと複数の親局と複数の子局とが無線通信を行う通信方法であって、
一又は複数のプロセッサーが、
第1子局において、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信するステップと、
前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれにおいて、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信するステップと、
前記管理サーバーにおいて、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替えるステップと、
を実行する通信方法。
【請求項13】
管理サーバーと複数の親局と複数の子局とが無線通信を行う通信プログラムであって、
第1子局において、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信するステップと、
前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれにおいて、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信するステップと、
前記管理サーバーにおいて、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替えるステップと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、親局、子局、通信方法、及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの親局(コントローラー、ホストなどともいう。)が一つのチャネルを占有して、当該親局に割り当てられた複数の子局(スレーブともいう。)に対して時分割で順に通信を行う通信方式(TDMA;Time Division Multiple Access)が知られている。各子局には、親局からの通信(送信データ)を受信した直後の一定時間が、ホストとの通信可能な時間として割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場、倉庫などでは、作業者が保管棚に保管されている物品をピッキングするピッキング作業を行っている。従来、前記ピッキング作業を効率化するピッキングシステムが導入されている。前記ピッキングシステムでは、作業エリアに、複数の保管棚と、各保管棚に設置される子局(通信機能を有するタグ)と、複数のタグを制御する親局(コントローラー)とが配置される。コントローラーは、ピッキング対象の物品が保管されている保管棚のタグにコマンド(点灯命令を含むことがある)を送信して、当該タグに搭載されるランプ(LED)を点灯させる。作業者は、点灯したランプボタンの保管棚から目的の物品をピッキングする。
【0005】
前記ピッキングシステムにおいて、親局及び複数の子局からなるスター型トポロジーのネットワークを多数構築する場合、複数の子局のそれぞれを通信が安定する特定の親局に関連付ける必要がある。また、子局が親局に関連付けられた後に、子局と親局との通信環境が悪化した場合には、通信環境が良い親局に切り替える処理(ローミング)が必要となる。
【0006】
従来の一般的なローミングでは、子局が他の親局からのビーコンを受信して受信状況が良好な親局に直接問い合わせて切り替える手法が取られている。しかし、この手法では、子局の負荷が大きくなり消費電力が増大するとともに、一時的にレスポンスが悪化する問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、子局に対応する親局を切り替えるローミングにおいて、消費電力を抑制するとともにレスポンスの悪化を防ぐことが可能な通信システム、親局、子局、通信方法、及び通信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る通信システムは、管理サーバーと複数の親局と複数の子局とを含む通信システムであって、第1子局は、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれは、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、前記管理サーバーは、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える。
【0009】
本発明の実施形態に係る親局は、管理サーバー及び複数の子局と通信を行う親局であって、第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った際に前記第1子局から送信される他の親局を探索するための探索信号を受信した場合に、前記親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、前記管理サーバーから、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から第2親局に切り替える指示を受信した場合に、前記第1子局に前記第2親局に関する情報を送信する。
【0010】
本発明の実施形態に係る子局は、管理サーバー及び複数の親局と通信を行う子局であって、前記子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、前記管理サーバーが前記子局に関連付ける親局として第2親局を決定した場合に、前記子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える。
【0011】
本発明の実施形態に係る通信方法は、管理サーバーと複数の親局と複数の子局とが無線通信を行う通信方法であって、一又は複数のプロセッサーが、第1子局において、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信するステップと、前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれにおいて、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信するステップと、前記管理サーバーにおいて、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替えるステップと、を実行する通信方法である。
【0012】
本発明の実施形態に係る通信プログラムは、管理サーバーと複数の親局と複数の子局とが無線通信を行う通信プログラムであって、第1子局において、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信するステップと、前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれにおいて、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信するステップと、前記管理サーバーにおいて、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替えるステップと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための通信プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、子局に対応する親局を切り替えるローミングにおいて、消費電力を抑制するとともにレスポンスの悪化を防ぐことが可能な通信システム、親局、子局、通信方法、及び通信プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る通信システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る保管棚の外観図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態に係る保管棚に設置されるタグの構成を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施形態に係るタグの底面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る通信システムの記憶部に記憶されるタグ情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る通信システムの記憶部に記憶される関連情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るコントローラーとタグとの対応関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るコントローラーが割り当てられる時間区分の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る通信方法の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る通信方法の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態1に係る通信システムにおいて実行される通信処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係るコントローラーと通信エリアとの対応関係を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る複数のコントローラーのそれぞれをチャネル及び時間区分に割り当てた様子を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態2に係る通信システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態2に係る通信システムにおける関連付け処理の具体例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態2に係る通信システムにおける管理サーバーと複数のコントローラーと対象タグとの関連付け処理の手順の一例を示している。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態2に係る対象タグにおいて実行される関連付け処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態2に係るコントローラーにおいて実行される関連付け処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態2に係る管理サーバーにおいて実行される関連付け処理の手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態3に係る通信システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態3に係る台車の外観図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態3に係る通信システムにおける関連付け処理の具体例を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態3に係る通信システムにおける管理サーバーと複数のコントローラーと対象タグとのローミングの手順の一例を示している。
【
図23A】
図23Aは、本発明の実施形態3に係る対象タグにおいて実行されるローミングの手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図23B】
図23Bは、本発明の実施形態3に係る対象タグにおいて実行されるローミングの手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図24】
図24は、本発明の実施形態3に係るコントローラーにおいて実行されるローミングの手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図25】
図25は、本発明の実施形態3に係る管理サーバーにおいて実行されるローミングの手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0016】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る通信システム10の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0017】
通信システム10は、管理サーバー1と、コントローラー2と、タグTgとを含んでいる。通信システム10は、例えば、物品を保管する保管棚3(
図2参照)から作業者が目的の物品をピッキングする作業現場(工場、倉庫など)に導入される。前記物品は、特に限定されず、部品、小売商品、薬剤、書籍、書類、雑貨類など種々の分野の物品が含まれる。本実施形態では、前記物品の一例として所定の製品(車両、電化製品など)の組み立て作業に使用される部品を例に挙げる。すなわち、本実施形態における通信システム10は、部品を保管する保管棚3から作業者が目的の部品をピッキングする施設F1(工場など)に導入される。
【0018】
管理サーバー1及びコントローラー2は、ネットワークN1を介して互いに接続されている。ネットワークN1は、インターネット、LAN、WAN、又は公衆電話回線などの通信網である。コントローラー2及びタグTgは、電波を用いた本通信方法により接続されている。タグTgは、保管棚3の各収納棚31(
図2参照)に設置される。
図3Aに示すように、タグTgは、部品名などを表示する表示部(LCD)と、複数の色で、点灯、点滅、及び消灯するランプボタンB1と、コントローラー2と通信する通信部(不図示)とを備えている。また、ランプボタンB1は、ユーザインターフェースとしてボタン機能を有している。タグTgは、コントローラー2からの命令(送信データ)に従って、所定の情報を表示部に表示させたり、ランプボタンB1を点灯、消灯させたりすることが可能である。作業者は、例えばランプボタンB1が点灯しているタグTgが設置された収納棚31の部品をピッキングする。タグTgはランプボタンB1が押されたことを本通信方式によりコントローラー2に通知し、コントローラー2はそれを管理サーバー1に通知する。管理サーバー1はタグTgが正しい部品に対応していれば、次に取り出すべき部品に対応するタグTgに、ランプボタンB1を所定の周期で点滅動作させる信号を本通信方式により、コントローラー2を介して通知する。
図3Aでは、タグ1が点灯した状態を表している。管理サーバー1は、各コントローラー2を一括制御しており、ピッキング対象の情報に基づいて、所定のコントローラー2に送信データ(タグTgの点灯命令など)の送信指示を出力する。
【0019】
施設F1内には、複数の保管棚3が配列されている。コントローラー2は施設F1内に分散して複数設置されており、複数のコントローラー2が、施設F1内に配置された複数の保管棚3のタグTgと通信を行う。このように、通信システム10は、施設F1内に配置された複数のタグTgを複数のコントローラー2により制御することにより、施設F1のピッキングシステムを構築する。具体的には、通信システム10は、複数のコントローラー2と複数のタグTgとの電波通信が所定の周期で行われるように管理するシステムである。
【0020】
管理サーバー1はコントローラー2を管理、制御する調停局として機能し、コントローラー2はホスト機器として機能し、タグTgはスレーブ機器として機能する。コントローラー2は、本発明の親局の一例であり、タグTgは、本発明の子局の一例である。
【0021】
[管理サーバー1]
図1に示すように、管理サーバー1は、制御部11、記憶部12、操作表示部13、及び通信部14などを備える。管理サーバー1は、例えばパーソナルコンピュータのような情報処理装置であってもよい。また、管理サーバー1は、クラウドサーバーで構成されてもよい。
【0022】
通信部14は、管理サーバー1を有線又は無線でネットワークN1に接続し、ネットワークN1を介してコントローラー2との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行する。
【0023】
操作表示部13は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードなどの操作部とを備えるユーザインターフェースである。
【0024】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、タグ情報D1、関連情報D2などのデータが記憶される。
【0025】
図4は、タグ情報D1の一例を示す図である。タグ情報D1には、施設F1に配置される全てのタグTgに関する情報が登録される。具体的には、タグ情報D1には、タグID、位置情報、部品名などの情報が含まれる。前記タグIDは、タグTgの識別情報である。前記位置情報は、タグTgが設置されている位置の位置情報であり、例えば保管棚3の位置、保管棚3(収納棚31)の棚番号、施設F1の地図上の座標などの情報である。前記部品名は、タグTgが設置されている収納棚31に保管されている部品の名称である。
【0026】
タグ情報D1は、例えば施設F1の管理者により登録される。また、タグ情報D1は、管理サーバー1とは異なるサーバーに記憶されてもよい。
【0027】
図5は、関連情報D2の一例を示す図である。関連情報D2は、複数のコントローラー2のそれぞれに関連付けられたタグTgを識別する情報である。具体的には、関連情報D2には、コントローラーID、タグIDなどの情報が含まれる。前記コントローラーIDは、コントローラー2の識別情報であり、前記タグIDは、タグTgの識別情報である。なお、実際には、各コントローラー2には最も通信が安定するタグTgが関連付けられるため、タグTgのIDは規則性がなくランダムになる。
【0028】
図6に示すように、一つのコントローラー2には、複数のタグTgが関連付けられる。各コントローラー2は複数のタグTgと通信可能であり、各タグTgは一つのコントローラー2と通信可能である。例えばコントローラーAは、通信エリアAR1内のタグTgと通信可能であり、コントローラーBは、通信エリアAR2内のタグTgと通信可能である。なお、実際には十分な通信安定度を見込むため、
図11に示すように一つのタグTgが複数のコントローラー2の通信エリアAR内に入っていることが多い。それぞれのタグTgは、それら複数のコントローラー2の中で最も通信が安定するコントローラー2と関連付けられるが、
図11のように複数のコントローラー2の電波的に干渉するエリアとなる。本実施形態では、5台のコントローラー2(コントローラーA~E)により、施設F1の全作業エリアを網羅して、施設F1内の全てのタグTgと通信可能に構成されている。関連情報D2は、制御部11の処理(後述)により登録される。
【0029】
また、記憶部12には、部品を取り出す順番などを含むピッキング情報が記憶されてもよい。前記ピッキング情報は、ピッキング対象の部品ごとに、タグID、位置情報、ピッキング状況などの情報が関連付けられて登録される。管理サーバー1は、ピッキング指示に基づいて、ピッキング対象の情報を前記ピッキング情報に登録する。なお、管理サーバー1は、製品の製造工程を管理するサーバーから前記ピッキング指示を取得してもよいし、記憶部12に記憶された当該製造工程に基づいて前記ピッキング情報を生成してもよい。
【0030】
また、記憶部12には、制御部11に後述の通信処理(
図10参照)を実行させるための通信プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記通信プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、管理サーバー1に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。
【0031】
制御部11は、CPUなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。そして、制御部11は、記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより管理サーバー1を制御する。
【0032】
具体的に、制御部11は、関連処理部111、割当処理部112、通信処理部113などの各種の処理部を含む。なお、制御部11は、前記CPUで前記通信プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、制御部11に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記通信プログラムは、複数のプロセッサーを前記各種の処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0033】
関連処理部111は、複数のタグTgのそれぞれを、複数のコントローラー2のうちいずれか一つのコントローラー2に関連付ける。
【0034】
例えば
図5に示すように、関連処理部111は、通信エリアAR1に配置されるタグID「tg0001~tg0100」までの複数のタグTgを、通信エリアAR1に配置されるコントローラーID「c0001」のコントローラーAに関連付ける。また、関連処理部111は、通信エリアAR2に配置されるタグID「tg0101~tg0200」までの複数のタグTgを、通信エリアAR2に配置されるコントローラーID「c0002」のコントローラーBに関連付ける。また、関連処理部111は、通信エリアAR3に配置されるタグID「tg0201~tg0300」までの複数のタグTgを、通信エリアAR3に配置されるコントローラーID「c0003」のコントローラーCに関連付ける。また、関連処理部111は、通信エリアAR4に配置されるタグID「tg0301~tg0400」までの複数のタグTgを、通信エリアAR4に配置されるコントローラーID「c0004」のコントローラーDに関連付ける。また、関連処理部111は、通信エリアAR5に配置されるタグID「tg0401~tg0500」までの複数のタグTgを、通信エリアAR5に配置されるコントローラーID「c0005」のコントローラーEに関連付ける。
【0035】
なお、上記関連付けは、それぞれのタグTgにとって最も通信が安定するコントローラー2と関連付けた後、適宜番号を割り振った結果である。本発明では、複数の子局のそれぞれが、複数の親局のうちいずれか一つの親局に予め関連付けられていてもよい。なお、複数の子局のそれぞれを、複数の親局のうちいずれか一つの親局に関連付ける他の方法(関連付け処理)については、実施形態2において説明する。また、子局に関連付けられた親局を変更する(切り替える)方法(ローミング)については、実施形態3において説明する。
【0036】
関連処理部111は、互いに関連付けたコントローラー2とタグTgとの情報を関連情報D2(
図5参照)に登録する。
【0037】
割当処理部112は、複数のコントローラー2のそれぞれを、所定のチャネルにおいて、所定の周期を時間分割した複数の時間区分(タイムスロット)のそれぞれに割り当てる。例えば
図7に示すように、周期を「C1」とした場合に、周期C1を複数の時間区分に分割する。ここでは、周期C1を5つの時間区分t1~t5に分割する。また、ここでは、所定の一つのチャネルCH1が利用されるものとする。チャネルCH1に対して、所定の周期で複数のタグTgと通信可能な数のコントローラー2が割り当てられる。例えば、割当処理部112は、コントローラーAを第1時間区分t1に割り当て、コントローラーBを第2時間区分t2に割り当て、コントローラーCを第3時間区分t3に割り当て、コントローラーDを第4時間区分t4に割り当て、コントローラーEを第5時間区分t5に割り当てる。
【0038】
割当処理部112は、周期C1ごとに、コントローラーA~Eを時間区分t1~t5に順に割り当てる。
【0039】
通信処理部113は、複数の時間区分のそれぞれにおいて、コントローラー2と、関連処理部111により当該コントローラー2に関連付けられた複数のタグTgとを、前記時間区分内に通信させる。
図8を参照しつつ、通信方法の具体例を説明する。
【0040】
図8に示す例では、チャネルCH1において、周期C1を「200ms」、時間区分t1~t5のそれぞれの時間幅を「40ms」としている。通信処理部113は、周期C1の最初の第1時間区分t1において、コントローラーAに送信データの送信指示を出力する。前記送信データは、例えばビーコンである。
【0041】
ここで、前記送信データは、
図9に示すように、タグTgに所定の処理を実行させるコマンドの情報(コマンド情報)と、当該コマンドを実行させるタグTgを識別する識別情報(宛先情報)とを含む。具体的には、前記送信データは、所定数のタグTgのそれぞれの宛先情報と、所定数のタグTgのそれぞれに所定のコマンドを実行させるコマンド情報とを含む。例えば、
図9には、コントローラーAが送信する送信データの一例を示している。通信処理部113は、コントローラーAに関連付けられた複数のタグTg(
図5参照)のうち、ピッキング対象の5個の部品に関連付けられた5個のタグTg(
図4参照)を特定し、特定した5個のタグ1~5を宛先に含めた送信データの送信指示を、コントローラーAに出力する。
【0042】
すなわち、通信処理部113は、コントローラーAから、当該コントローラーAに関連付けられた複数のタグTgのうち所定数のタグTgに対して送信データを送信させる。また、コントローラーAは、時間区分内にコントローラーAと通信可能な所定数のタグTgに対して前記送信データを送信する。
【0043】
コントローラーAは、管理サーバー1から前記送信指示を取得すると、第1時間区分t1(
図8参照)において、前記送信データ(
図9参照)を、コントローラーAに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0044】
コントローラーAに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ1は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ1は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーAに送信する。同様に、タグ2~5のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーAに送信する。コントローラーAは、タグ1~5のそれぞれからレスポンスを受信する(
図9参照)。このとき、タグ1~5は、送信データ内の何番目に自身宛のコマンドが入っていたかに応じて、お互いが衝突しないタイミングで適宜送信を行う。本実施の形態では、コマンドが入っていた順にそれぞれのタグTgが同じサイズの確認応答を送信し、それぞれの確認応答送信に係る時間と所定のマージン量を加味した時間を空けることで、それぞれの確認応答信号が衝突しないようにする。
【0045】
また、本実施の形態では、時間区分内においてすべての5台の確認応答を送信後にタグデータ受信期間R1(
図9)が余るよう設計しており、ランプが有するボタン機能が押下されたタグTgは、その後のタグデータ受信期間R1において、CSMA/CA方式により送信を行う。
図9に示すタグデータ受信期間R1は、CSMA/CA方式によるタグTgからコントローラー2へのアップリンク期間である。
【0046】
なお、前記確認応答は、ボタン押下情報に限らず、他のユーザインターフェースを備えていれば、その操作内容であってもよい。また、タグTgがセンサ機能を有していれば、測定値が所定の条件を満たす場合にタグTgが自発的に送信するようにしてもよい。
【0047】
コントローラーAが、周期C1(200ms)の第1時間区分t1(40ms)において、前記送信データをタグ1~5に送信し、タグ1~5のコマンドの実行が完了すると、通信処理部113は、周期C1(200ms)の次の第2時間区分t2において、コントローラーBに送信データの送信指示を出力する(
図8参照)。前記送信データには、タグ6~10の宛先とコマンドとが含まれる。
【0048】
コントローラーBに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ6は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ6は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーBに送信する。同様に、タグ7~10のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーBに送信する。コントローラーBは、タグ6~10のそれぞれからレスポンスを受信する。
【0049】
コントローラーBが、周期C1(200ms)の第2時間区分t2(40ms)において、前記送信データをタグ6~10に送信し、タグ6~10のコマンドの実行が完了すると、通信処理部113は、周期C1(200ms)の次の第3時間区分t3において、コントローラーCに送信データの送信指示を出力する。前記送信データには、タグ11~15の宛先とコマンドとが含まれる(
図8参照)。
【0050】
コントローラーCに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ11は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ11は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーCに送信する。同様に、タグ12~15のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーCに送信する。コントローラーCは、タグ11~15のそれぞれからレスポンスを受信する(
図8参照)。
【0051】
コントローラーCが、周期C1(200ms)の第3時間区分t3(40ms)において、前記送信データをタグ11~15に送信し、タグ11~15のコマンドの実行が完了すると、通信処理部113は、周期C1(200ms)の次の第4時間区分t4において、コントローラーDに送信データの送信指示を出力する。前記送信データには、タグ16~20の宛先とコマンドとが含まれる。
【0052】
コントローラーDに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ16は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ16は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーDに送信する。同様に、タグ17~20のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーDに送信する。コントローラーDは、タグ16~20のそれぞれからレスポンスを受信する(
図8参照)。
【0053】
コントローラーDが、周期C1(200ms)の第4時間区分t4(40ms)において、前記送信データをタグ16~20に送信し、タグ16~20のコマンドの実行が完了すると、通信処理部113は、周期C1(200ms)の次の第5時間区分t5において、コントローラーEに送信データの送信指示を出力する。前記送信データには、タグ21~25の宛先とコマンドとが含まれる。
【0054】
コントローラーEに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ21は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ21は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーEに送信する。同様に、タグ22~25のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーEに送信する。コントローラーEは、タグ21~25のそれぞれからレスポンスを受信する(
図8参照)。
【0055】
コントローラーEが、周期C1(200ms)の第5時間区分t5(40ms)において、前記送信データをタグ21~25に送信し、タグ21~25のコマンドの実行が完了すると、通信処理部113は、次の周期C1(200ms)の最初の第1時間区分t1において、再度、コントローラーAに送信データの送信指示を出力する。前記送信データには、タグ1~5の宛先とコマンドとが含まれる。
【0056】
コントローラーAに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、タグ1は、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。また、タグ1は、コマンドを実行した場合にレスポンス(確認応答)をコントローラーAに送信する。同様に、タグ2~5のそれぞれは、前記送信データを受信すると、自身宛のコマンドが含まれるため、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させ、レスポンス(確認応答)をコントローラーAに送信する。コントローラーAは、タグ1~5のそれぞれからレスポンスを受信する(
図8参照)。
【0057】
以上のように、通信処理部113は、複数の時間区分のそれぞれにおいて、コントローラー2と、当該コントローラー2に関連付けられた複数のタグTgとを、時間区分内に通信させる。また、通信処理部113は、複数のコントローラー2のそれぞれに、前記送信データの送信指示を時間区分の順に出力する。これにより、例えばコントローラーA~Eのそれぞれは、時間区分t1~t5の順に、各コントローラーが制御するタグTgと通信を行う。
【0058】
例えばコントローラーAが第1時間区分t1において前記送信データをコントローラーAに関連付けられた複数のタグTgのうち5個のタグ1~5に対して送信した後に、コントローラーBが第1時間区分t1に続く第2時間区分t2において前記送信データをコントローラーBに関連付けられた複数のタグTgのうち5個のタグ6~10に対して送信する。
【0059】
また、コントローラーAが第1時間区分t1において前記送信データをタグ1~5に対して送信し、コントローラーAがタグ1~5からレスポンスを受信した後に、コントローラーBが第2時間区分t2において前記送信データをタグ6~10に対して送信する。
【0060】
ここで、制御部11は、管理サーバー1と各コントローラーとを同期(時刻同期)させる処理を実行する。また、各コントローラー2は、対応する各タグTgと同期(時刻同期)させる処理を実行する。これにより、各コントローラー2は、所定の周期(例えば200ms)でタグTgに送信データを送信し、各タグTgは、所定の周期(例えば200ms)で前記送信データを受信する。例えば各タグTgは、前記送信データの受信時刻に合わせて起動を開始し、当該受信時刻に前記送信データの受信を開始する。また、各タグTgは、コントローラー2における前記送信データの送信完了時刻に受信処理を完了し、受信処理の完了後に時刻同期を行う。各タグTgは、次の前記送信データの受信時刻までタイマーをセットして待機(パワーセーブ)する。
【0061】
なお、各コントローラー2間の時刻同期は例えばIEEE 1588 Precision Time Protocolによりコントローラー2間で自律的に行われてもよい。また、通信処理部113はそれぞれのコントローラー2に周期C1と時間区分t1~t5を通知し、それぞれのコントローラー2が
図7に示したタイミングで通信を行うように制御してもよい。
【0062】
[通信処理]
以下、
図10を参照しつつ、実施形態1に係る通信システム10において実行される通信処理の手順の一例について説明する。
【0063】
なお、本発明は、前記通信処理に含まれる一又は複数のステップを実行する通信方法の発明として捉えることができ、ここで説明する当該通信処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよい。なお、前記通信処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは管理サーバー1及びコントローラー2によって前記通信処理における各ステップが実行される場合を例に挙げて説明するが、複数のプロセッサーが前記通信処理における各ステップを分散して実行する通信方法も他の実施形態として考えられる。
【0064】
ここでは、上述した
図8及び
図9に示す通信方法を例に挙げて説明する。管理サーバー1の制御部11は、所定のチャネルCH1を利用して、所定の周期(200ms)を時分割した5つの時間区分t1~t5(各40ms)のそれぞれに割り当てたコントローラーA~Eのそれぞれに対して送信データ(
図8参照)の送信指示を出力する。
【0065】
先ず、第1周期(N=1)が開始すると(S1)、ステップS2において、制御部11は、第1時間区分t1が開始したか否かを判定する。第1時間区分t1が開始すると(S2:Yes)、ステップS3において、制御部11は、コントローラーAに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーAは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ1~5)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーAに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0066】
次に、ステップS4において、制御部11は、タグTgのレスポンス(確認応答)を受信したか否かを判定する。例えばタグ1~5が前記送信データを受信してコマンド(点灯コマンド)を実行し、レスポンスをコントローラーAに送信すると、コントローラーAは受信したレスポンスを管理サーバー1に送信する。これにより、管理サーバー1の制御部11は、前記レスポンスを受信する。制御部11が前記レスポンスを受信すると(S4:Yes)、処理はステップS5に移行する。
【0067】
ステップS5において、制御部11は、第2時間区分t2が開始したか否かを判定する。第2時間区分t2が開始すると(S5:Yes)、ステップS6において、制御部11は、コントローラーBに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーBは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ6~10)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーBに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0068】
次に、ステップS7において、制御部11は、タグTgのレスポンスを受信したか否かを判定する。例えばタグ6~10が前記送信データを受信してコマンド(点灯コマンド)を実行し、レスポンスをコントローラーBに送信すると、コントローラーBは受信したレスポンスを管理サーバー1に送信する。これにより、管理サーバー1の制御部11は、前記レスポンスを受信する。制御部11が前記レスポンスを受信すると(S7:Yes)、処理はステップS8に移行する。
【0069】
ステップS8において、制御部11は、第3時間区分t3が開始したか否かを判定する。第3時間区分t3が開始すると(S8:Yes)、ステップS9において、制御部11は、コントローラーCに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーCは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ11~15)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーCに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0070】
次に、ステップS10において、制御部11は、タグTgのレスポンスを受信したか否かを判定する。例えばタグ11~15が前記送信データを受信してコマンド(点灯コマンド)を実行し、レスポンスをコントローラーCに送信すると、コントローラーCは受信したレスポンスを管理サーバー1に送信する。これにより、管理サーバー1の制御部11は、前記レスポンスを受信する。制御部11が前記レスポンスを受信すると(S10:Yes)、処理はステップS11に移行する。
【0071】
ステップS11において、制御部11は、第4時間区分t4が開始したか否かを判定する。第4時間区分t4が開始すると(S11:Yes)、ステップS12において、制御部11は、コントローラーDに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーDは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ16~20)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーDに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0072】
次に、ステップS13において、制御部11は、タグTgのレスポンスを受信したか否かを判定する。例えばタグ16~20が前記送信データを受信してコマンド(点灯コマンド)を実行し、レスポンスをコントローラーDに送信すると、コントローラーDは受信したレスポンスを管理サーバー1に送信する。これにより、管理サーバー1の制御部11は、前記レスポンスを受信する。制御部11が前記レスポンスを受信すると(S13:Yes)、処理はステップS14に移行する。
【0073】
ステップS14において、制御部11は、第5時間区分t5が開始したか否かを判定する。第5時間区分t5が開始すると(S14:Yes)、ステップS15において、制御部11は、コントローラーEに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーEは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ21~25)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーEに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0074】
次に、ステップS16において、制御部11は、タグTgのレスポンスを受信したか否かを判定する。例えばタグ21~25が前記送信データを受信してコマンド(点灯コマンド)を実行し、レスポンスをコントローラーEに送信すると、コントローラーEは受信したレスポンスを管理サーバー1に送信する。これにより、管理サーバー1の制御部11は、前記レスポンスを受信する。制御部11が前記レスポンスを受信すると(S16:Yes)、処理はステップS1に戻る。
【0075】
ステップS1に戻ると、第2周期(N=2)が開始し、ステップS2において、制御部11は、第1時間区分t1が開始したか否かを判定し、第1時間区分t1が開始すると(S2:Yes)、ステップS3において、制御部11は、コントローラーAに対して前記送信データの送信指示を出力する。コントローラーAは、前記送信指示を取得すると、コマンドを実行させるタグTg(例えばタグ1~5)を宛先に含む前記送信データを、コントローラーAに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。以降は上述の処理と同様である。以上のようにして、通信システム10は、前記通信処理を実行する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態1に係る通信システム10は、複数のコントローラー2(親局)と複数のタグTg(子局)とが所定の周期で無線通信を行う通信システムである。また、通信システム10は、複数のタグTgのそれぞれを、複数のコントローラー2のうちいずれか一つのコントローラー2に関連付ける。また、通信システム10は、複数のコントローラー2のそれぞれを、所定のチャネルにおいて、前記所定の周期を時間分割した複数の時間区分(タイムスロット)のそれぞれに割り当てる。また、通信システム10は、複数の時間区分のそれぞれにおいて、コントローラー2と、当該コントローラー2に関連付けられた複数のタグTgとを、前記時間区分内に通信させる。
【0077】
上記構成において、各コントローラー2は、前記周期(例えば200ms)のうち前記時間区分(40ms)の間だけ電波を使用する。また、コントローラー2間で互いの電波使用時間が重複しないように割り当てる(調整する)ことで、一つのチャネル(CH1)を最大5台までの複数のコントローラー2で共有することができる。これにより、
図11のように互いの通信エリアARが重複する状態であっても多数のコントローラー2を設置することが可能となる。例えば周波数チャネル数が20あれば、互いに電波的に干渉するエリア内であってもチャネル数の5倍の100台のコントローラー2を設置することが可能となる。
【0078】
なお、工場レイアウトや各ラインの種別に応じて、各コントローラー2が使用するチャネルを共有可能な最大数を意識しながら割り振りたい場合も考えられる。こうした場合は、
図12のように各コントローラーの番号(ここでは一例として「1」~「64」)を、縦横に時間スロット(スロット番号)とチャネル(周波数チャネル)の軸を設定した表にマップして設定できるような表示画面(UI)を提供してもよい。すなわち、制御部11は、複数のコントローラー2(親局)のそれぞれを割り当てた所定チャネル及び所定時間区分のそれぞれを視覚的に識別可能に表示させてもよい。
【0079】
また、前記送信データは、複数のタグTgの宛先情報を含んでいる。上記構成によれば、一つのチャネルを使用して、各周期において、複数のコントローラー2に割り当てられた各時間区分に、各コントローラー2は複数のタグTgと通信することが可能になる。このため、広範囲に多数のタグTgを設置することができる。また、通信システム10において、通信量を増大させることができる。よって、コントローラー2及びタグTgの通信の高速応答性を確保しつつ多数のタグTgを設置することが可能となる。
【0080】
本実施形態に係る通信システム10では、複数のコントローラー2(親局)は互いに時刻の同期を行い、割当処理部112により割り当てられた時間区分内に通信を行う。また、複数のコントローラー2は、有線通信により互いに接続されてもよい。
【0081】
また、通信処理部113は、タグTg(子局)において送信すべきデータが発生すると、当該タグTgが関連付けられたコントローラー2に割り当てられた時間区分内において、当該コントローラー2に対して当該データを送信させる。
【0082】
また、タグTgにおいて送信すべきデータは、当該タグTgで観測されたデータである。また、タグTgで観測されたデータは、当該タグTgのユーザインターフェースの操作内容に応じたデータである。
【0083】
本発明は上述の実施形態に限定されず、以下の実施形態としてもよい。例えば、通信システム10は、複数のチャネルを含んでもよい。この場合、割当処理部112は、チャネルごとに、複数のコントローラー2のそれぞれを、複数の時間区分のそれぞれに割り当てる。これにより、例えば、5台のコントローラーA~EがチャネルCH1を共有し、5台のコントローラーF~JがチャネルCH2を共有し、5台のコントローラーK~OがチャネルCH3を共有し、5台のコントローラーP~TがチャネルCH4を共有し、5台のコントローラーU~YがチャネルCH5を共有する。各コントローラー2は、上述の実施形態の通り、所定の周期を時間分割した複数の時間区分のそれぞれにおいて複数のタグTgと通信する。この構成によれば、使用可能なチャネル数に応じてコントローラー2の設置数を増大させることができるため、より多くのタグTgを設置することが可能となる。
【0084】
また、上述の実施の形態では、200msの周期を5つの40msのスロットに分割した例を示したがこれは一例である。周期、分割数、スロット時間は、それぞれの用途で要求される時間応答性、電力消費、子局の数、利用できる周波数チャネル数、通信速度等を考慮して適切に設定すればよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、管理サーバー1(調停局)が、複数のコントローラー2を制御する構成であるが、他の実施形態として、複数のコントローラー2のうち特定のコントローラー2が、管理サーバー1の機能を兼ね備えてもよい。この場合、前記特定のコントローラー2は、マスターコントローラーとして機能し、他のコントローラー2は、スレーブコントローラーとして機能する。前記マスターコントローラーは、複数のスレーブコントローラーのそれぞれを、所定のチャネルにおいて、複数の時間区分のそれぞれに割り当てる割当処理と、複数の時間区分のそれぞれにおいて、前記スレーブコントローラーと複数のタグTgとを通信させる通信処理とを実行する。前記マスターコントローラーは、各スレーブコントローラーに前記時間区分の順に前記送信データを送信する。なお、前記マスターコントローラーとして機能するコントローラー2は、通信システム10全体における通信状況などに応じて適宜変更されてもよい。
【0086】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る通信システム10について説明する。以下では、実施形態1に係る通信システム10と同一の構成及び処理については同一の符号を付しその説明を適宜省略する。
【0087】
実施形態2に係る通信システム10は、コントローラー2及び複数のタグTgからなるスター型トポロジーのネットワークを多数構築する場合において、複数のタグTgのそれぞれを通信が安定する特定のコントローラー2に簡易な構成により互いに関連付けることを可能にするシステムである。各タグTgは、いずれか一つのコントローラー2と関連付けられる。なお、タグTgとコントローラー2とを関連付ける「関連付け」は、「紐付け」、「バインディング(Binding)」ともいう。
【0088】
図13は、本発明の実施形態2に係る通信システム10の概略構成を示す機能ブロック図である。
図13に示す構成では、複数のタグTgのそれぞれが、いずれかのコントローラー2に関連付けられる前の状態を示している。なお、
図1に示す構成は、複数のタグTgのそれぞれが、いずれかのコントローラー2に関連付けられた後の状態を示している。
【0089】
通信システム10は、管理サーバー1と、複数のコントローラー2と、複数のタグTgとを含んでいる。なお、複数のコントローラー2の一つ又は複数が管理サーバー1の機能を備えてもよい。すなわち、管理サーバー1はコントローラー2であってもよい。
【0090】
例えば、複数のタグTgのうちタグTg1(本発明の第1子局の一例)は、タグTg1に対応するコントローラー2(本発明の第1親局の一例)を特定するために、タグTg1の識別情報(タグID)を含む探索信号を送信する。複数のコントローラー2のそれぞれは、タグTg1から送信される探索信号を受信すると、自身の識別情報(コントローラーID)と、タグTg1の識別情報(タグID)と、探索信号に関する信号情報(例えば探索信号の受信強度)と、を含む解析レポートを管理サーバー1に送信する。管理サーバー1は、複数のコントローラー2から受信する複数の解析レポートに基づいて、複数のコントローラー2の中からタグTg1に対応するコントローラー2(例えばコントローラーA)を決定し、タグTg1とコントローラーAとを互いに関連付ける。通信システム10は、タグTgごとに上記の処理を実行して、各タグTgをいずれか一つのコントローラー2に関連付ける。
【0091】
以下、実施形態2に係る通信システム10の具体的構成を説明する。実施形態2では、200msの周期を12.5msの16個のスロットに分割する。すなわち、一つの周波数チャネルを最大16台のコントローラーで共有することができる。
【0092】
図14には、いずれのコントローラー2に関連付ける対象のタグTg(対象タグTg)の関連付け処理の具体例を示している。また
図15には、管理サーバー1と複数のコントローラー2と対象タグTgとの関連付け処理の手順の一例を示している。なお、
図14には、
図15の処理ステップに対応するステップ番号(s1、s5、s6、s9、s10)を付記している。
【0093】
図14において、例えばコントローラーAは、「12.5ms」のスロットが設定される動作チャネル(Operationチャネル)において、コントローラーAに既に関連付けられている複数のタグTgのうち所定数(最大5個)のタグTgに対して送信データ(コマンド)を送信する。コントローラーAは、「200ms」のうち「12.5ms」を除く「187.5ms」を探索チャネルに切り替える。コントローラーAは、探索チャネルにおいて対象タグTgから送信される探索信号を受信可能(受信待機状態)となる。コントローラーB及び他のコントローラーについても、コントローラーAと同様の構成を有する。
【0094】
前記関連付け処理において、先ず、対象タグTgは、探索信号を送信する(
図15のステップs1)。具体的には、対象タグTgは、所定のユーザー操作を受け付けた場合に探索信号を送信する。例えばユーザーが対象タグTgの底ボタンE1(
図3B参照)を押下した場合に、対象タグTgは、ユーザーの押下操作を受け付けて探索信号を送信する。対象タグTgは、探索チャネルで探索信号を送信する。また、対象タグTgは、各コントローラー2に割り当てられている時分割通信におけるスロット時間(ここでは「12.5ms」)よりも長い時間間隔(例えば「15ms」間隔)で探索信号を複数回送信する。ここでは、対象タグTgは、探索チャネルにおいて、「15ms」間隔で4回探索信号を送信する。このように、コントローラー2はタグTgと時分割通信を行い、タグTgは、前記時分割通信におけるスロット時間よりも長い時間間隔で前記探索信号を複数回送信する。前記探索信号の送信間隔を前記スロット時間よりも長くすることにより、全てのコントローラー2が少なくとも複数回、前記探索信号を受信することが可能となる。
【0095】
複数のコントローラー2のそれぞれは、探索チャネルの受信待機状態において、対象タグTgから送信される探索信号を受信する。例えば施設F1に設置された全てのコントローラー2のうち、対象タグTgからの信号の届く場所に設置された複数のコントローラー2が前記探索信号を受信する。
【0096】
複数のコントローラー2のそれぞれは、前記探索信号を受信した場合に、コントローラー2の識別情報(コントローラーID)と、対象タグTgの識別情報(タグID)と、前記探索信号に関する信号情報(例えば受信強度)とを含む解析レポートを管理サーバー1に送信する(
図15のステップs2)。また、前記解析レポートには、前記探索信号を受信した時刻、前記探索信号の番号(送信回数が4回の場合、4回のうち何番目であるかを示す情報)が含まれる。これに基づき、管理サーバー1はタグTgがアナウンスチャネル(Announceチャネル)で受信を開始する受信開始時刻を得ることができる。なお、対象タグTgは通信が十分に安定するコントローラー2に関連付けられることが望ましいため、コントローラー2は、前記受信強度が所定値以下の前記探索信号に対応する解析レポートを送信しない構成としてもよい。
【0097】
管理サーバー1は、各コントローラー2から前記解析レポートを受信すると、対象タグTgに関連付けるコントローラー2を決定する(
図15のステップs3)。具体的には、管理サーバー1の関連処理部111は、前記探索信号の安定度に基づいて、対象タグTgに関連付けるコントローラー2を決定する。例えば、関連処理部111は、対象タグTgに対応する前記解析レポートについて集計し、1番目から最終番目(ここでは4番目)までの全ての前記探索信号のうち例えば3つ以上受信している場合に、前記探索信号が最も安定しているコントローラー2を決定する。関連処理部111は、前記探索信号の信号強度の平均値に基づいて、前記探索信号の安定度を算出する。また、関連処理部111は、前記探索信号の信号強度の平均値や、最低強度、信号強度の分散などに基づいて、前記探索信号の安定度を算出してもよい。
【0098】
関連処理部111は、コントローラー2を決定すると、対象タグTgを関連付けるための関連付け予定(Bind予定)を、当該コントローラー2に送信する(
図15のステップs4)。ここでは、関連処理部111は、対象タグTgを関連付けるコントローラー2としてコントローラーBを決定し、前記関連付け予定をコントローラーBに送信する。前記関連付け予定には、少なくとも、コントローラーBのアドレスと、対象タグTgがアナウンスチャネル(Announceチャネル)で受信を開始する受信開始時刻(最後の探索信号を送信した時刻から1秒後の時刻)とが含まれる。なお、前記関連付け予定の送信処理は、前記スロット時間の直後所定時間以内に行うようにすると、15ms間隔で送出される探索信号と複数回衝突する可能性が低減されるので好ましい。
【0099】
管理サーバー1から前記関連付け予定を受信したコントローラーBは、前記関連付け予定に含まれる前記受信開始時刻になると、アナウンスチャネルで当該対象タグTg宛てに関連付け指示(Bind指示)を送信する(
図15のステップs5)。前記関連付け指示には、少なくとも、対象タグのアドレスと、関連付けるコントローラーBのアドレスとが含まれ、動作チャネルが複数ある場合などは、コントローラーBに割り当てられている動作チャネルの情報が含まれる。
【0100】
対象タグTgは、前記受信開始時刻になると、アナウンスチャネルで前記関連付け指示を受信する。対象タグTgは、自身のアドレス宛ての前記関連付け指示を受信すると、指定された動作チャネルに切り替えて、コントローラーBが出力しているビーコン(点灯命令のコマンドを含むことがある)を定期的に受信する。対象タグTgは、動作チャネルに切り替えた後、自身宛てのコマンドを受信すると当該コマンドを実行し、コントローラーBに確認信号(Acknowledge)を返信する(
図15のステップs6)。
【0101】
コントローラーBは、対象タグTgから前記確認信号を受信すると、管理サーバー1に確認通知を送信する(
図15のステップs7)。管理サーバー1は、コントローラーBから前記確認通知を受信すると、完了指示をコントローラーBに返信する(
図15のステップs8)。コントローラーBは、管理サーバー1から前記完了指示を受信すると、対象タグTgに完了表示指示を送信する(
図15のステップs9)。
【0102】
対象タグTgは、コントローラーBから前記完了表示指示を受信すると、コントローラーBに確認信号(Acknowledge)を返信し(
図15のステップs10)、完了表示を行う(
図15のステップs11)。例えば、対象タグTgは、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる。
【0103】
最後に、管理サーバー1は、対象タグTgとコントローラーBとの関連付け情報を関連情報D2(
図5参照)に登録する(
図15のステップs12)。なお、管理サーバー1への登録は前述の管理サーバー1が確認通知を受信した(
図15のステップs7)の時点で行ってもよい。
【0104】
通信システム10は、タグTgごとに上述の処理を実行して、各タグTgに一つのコントローラー2を関連付ける。このように、管理サーバー1は、少なくともコントローラーBの識別子又は通信チャネルを対象タグTgに通知し、対象タグTgは、少なくともコントローラーBの識別子又は通信チャネルに基づいてコントローラーBと通信を行う。また、通信システム10では、対象タグTgが前記探索信号を送信するチャネルと、対象タグTgがコントローラーBに関連付けられた後にコントローラーBと通信するチャネルとが異なる。
【0105】
[関連付け処理]
以下、
図16~
図18を参照しつつ、実施形態2に係る通信システム10において実行される関連付け処理の手順の一例について説明する。
図16は、対象タグTgにおいて実行される関連付け処理の手順の一例を示し、
図17は、コントローラー2において実行される関連付け処理の手順の一例を示し、
図18は、管理サーバー1において実行される関連付け処理の手順の一例を示している。
【0106】
[対象タグTgにおける関連付け処理]
対象タグTgは、最初はほぼ休止状態であり、
図16に示すステップS21において、底ボタンE1が押下されたか否かを判定する。対象タグTgは、底ボタンE1が押下された場合(S21:Yes)、動作状態になり処理をステップS22に移行させる。対象タグTgは、底ボタンE1が押下されるまで休止状態で待機する(S21:No)。
【0107】
ステップS22において、対象タグTgは、探索チャネルに切り替える。続くステップS23において、対象タグTgは、所定間隔で前記探索信号を複数回送信する(
図15のステップs1)。例えば、対象タグTgは、探索チャネルにおいて、「15ms」間隔で探索信号を4回送信する。対象タグTgは、前記探索信号を最後(4回目)の前記探索信号を送信すると所定時間(1秒間)経過するまで待機する(S24)。
【0108】
次にステップS25において、対象タグTgは、探索チャネルからアナウンスチャネルに切り替える。次にステップS26において、対象タグTgは、コントローラー2(管理サーバー1で決定されるコントローラーB)から前記関連付け指示を500msの間受信を試みる。対象タグTgは、前記関連付け指示を受信すると(S26:Yes)(
図15のステップs5)、処理をステップS27に移行させる。一方、対象タグTgは、上記500msの間に前記関連付け指示を受信しない場合(S26:No)、処理をステップS21に移行させる。
【0109】
ステップS27において、対象タグTgは、アナウンスチャネルから、前記関連付け指示で指定された動作チャネルに切り替え、前記関連付け指示で得られたコントローラーBのアドレスに基づきコントローラーBからのビーコンを同期しながら受信する。
【0110】
次にステップS28において、対象タグTgは、コントローラーBから自身宛てのコマンドを受信したか否かを判定する。対象タグTgは、コントローラーBから自身宛てのコマンドを受信すると(S29:Yes)、処理をステップS30に移行させる。一方、対象タグTgは、コントローラーBから自身宛てのコマンドを受信しない場合(S29:No)、処理をステップS21に移行させる。
【0111】
次にステップS30において、対象タグTgは、コントローラーBに前記確認信号を送信する(
図15のステップs6)。その後、対象タグTgは、コントローラーBから前記完了表示指示を受信すると、コントローラーBに前記確認信号を返信し、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる(S30)(
図15のステップs9、s10)。
【0112】
[コントローラー2における関連付け処理]
図17に示すステップS31において、コントローラー2(ここではコントローラーBを例に挙げる)は、自身に割り当てられている動作チャネルに設定する。次にステップS32において、コントローラーBは、管理サーバー1から指示された動作処理を実行する。例えば、コントローラーBは、既に関連付けられている複数のタグTgのうち所定数のタグTgに対して送信データ(コマンド)を送信する。
【0113】
次に、コントローラーBは、所定の動作時間(スロット時間「12.5ms」)が終了すると(S33:Yes)、処理をステップS34に移行させる。
【0114】
ステップS34において、コントローラーBは、対象タグTgがアナウンスチャネルで受信を開始する受信開始時刻(対象タグTgが最後の探索信号を送信した時刻から1秒後の時刻)になったか否かを判定する。コントローラーBは、前記受信開始時刻になると(S34:Yes)、動作チャネルからアナウンスチャネルに切り替えて(S35)、前記関連付け指示を対象タグTgに送信する(S36)(
図15のステップs5)。コントローラーBは、前記受信開始時刻にならない場合(S34:No)、処理をステップS37に移行させる。
【0115】
ステップS37において、コントローラーBは、アナウンスチャネルから探索チャネルに切り替える。次にステップS38において、コントローラーBは、対象タグTgから前記探索信号を受信したか否かを判定する。コントローラーBは、前記探索信号を受信すると(S38:Yes)、処理をステップS39に移行させる。コントローラーBは、前記探索信号を受信しない場合(S38:No)、処理をステップS40に移行させる。
【0116】
ステップS39において、コントローラーBは、前記解析レポートを管理サーバー1に送信する(
図15のステップs2)。例えば、コントローラーBは、4回分の前記解析レポートを管理サーバー1に送信する。
【0117】
次にステップS40において、コントローラーBは、動作開始時刻になったか否かを判定する。コントローラーBは、動作開始時刻になると(S40:Yes)、ステップS31に戻り動作チャネルに切り替える。コントローラーBは、動作開始時刻になるまでステップS38、S39の処理を繰り返す(S40:No)。各コントローラー2は、上述の処理を繰り返し実行する。
【0118】
[管理サーバー1における関連付け処理]
図18に示すステップS41において、管理サーバー1は、複数のコントローラー2から前記解析レポートを受信したか否かを判定する。例えば、管理サーバー1は、コントローラーBから複数(探索信号3回~4回分)の前記解析レポートを受信する。
【0119】
管理サーバー1は、複数のコントローラー2から複数の前記解析レポートを受信すると(S41:Yes)、複数の前記解析レポートを集計して(S42)、対象タグTgに関連付けるコントローラー2を決定する(S43)(
図15のステップs3)。例えば、管理サーバー1は、コントローラー2ごとに複数の前記探索信号の最低受信強度を特定し、最低受信強度が最も高いコントローラー2を判定する。そして、管理サーバー1は、最低受信強度が最も高いコントローラー2を、対象タグTgに関連付けるコントローラー2に決定する。
【0120】
管理サーバー1は、一つのコントローラー2(ここではコントローラーB)を決定すると(S43)、ステップS44において、対象タグTgを関連付けるための関連付け予定(Bind予定)を、コントローラーBに送信する(
図15のステップs4)。
【0121】
コントローラーBは、前記関連付け予定を受信すると、対象タグTgに関連付け指示(Bind指示)を送信して対象タグTgとの関連付けを行う。なお、この処理は
図17のステップS36の通信処理に該当する。
【0122】
管理サーバー1は、対象タグTgとコントローラーBとの関連付けの確認が完了すると、対象タグTgとコントローラーBとの関連付け情報を関連情報D2(
図5参照)に登録(S45)(
図15のステップs12)。管理サーバー1は、コントローラー2から前記解析レポートを受信するごとに上述の処理を繰り返し実行する。
【0123】
以上説明したように、本実施形態2に係る通信システム10は、管理サーバー1と複数のコントローラー2(親局)と複数のタグTg(子局)とを含む通信システムである。また、第1タグTgは、当該第1タグTgに対応する第1コントローラー2を特定するための探索信号を送信する。複数のコントローラー2のそれぞれは、前記探索信号を受信した場合に、当該コントローラー2の識別情報と第1タグTgの識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含む解析レポートを管理サーバー1に送信する。管理サーバー1は、複数のコントローラー2のそれぞれから受信する複数の解析レポートに基づいて、複数のコントローラー2の中から第1タグTgに対応する第1コントローラー2を決定し、第1タグTgと第1コントローラー2とを互いに関連付ける。
【0124】
上記構成によれば、所定イベント(例えばユーザー操作)によりタグTgから送信される探索信号を受信できたコントローラー2からの解析レポートを集計することにより、タグTgのボタン押下等の簡単な操作で多数のタグTgの関連付けを行うことが可能となる。すなわち、コントローラー2及び複数のタグTgを簡易な構成により互いに関連付けることが可能となる。また、タグTgは探索信号を複数回送信した後、所定時間の間に関連付け指示を受信するだけで良いため、タグTgの通信負荷、電池の消耗を抑えることができる。さらに、通信時以外は適宜スリープ(休止モード)に入るようにすることで、さらに電池の消耗を低減することができる。
【0125】
本発明の他の実施形態として、タグTgは、所定の信号を受信した場合に前記探索信号を送信してもよい。例えば、タグTgは、管理サーバー1から探索信号の送信指示を受信した場合に前記探索信号を送信する。
【0126】
また、タグTgは、所定の時間が経過した場合に前記探索信号を送信してもよい。例えば、タグTgは、予め設定された時間が経過した場合に前記探索信号を送信する。これにより、タグTgは、定期的に前記関連付け処理を実行して、最適なコントローラー2に関連付けることができる。
【0127】
また、タグTgは、通信が不安定になった場合に前記探索信号を送信してもよい。例えば、タグTgは、上記ビーコンの受信状況が悪化した場合、すなわち受信信号レベルが所定の状態より低下したときや、ビーコン受信の失敗が所定条件となった場合に前記探索信号を送信する。これにより、タグTgは、場所の移動等により状況が変化した場合でも、最適なコントローラー2に関連付けることができ、動作できなくなるという事態を回避することができる。
【0128】
また、タグTgは、前記探索信号を送信する際に、キャリアセンスを行って空いている場合に送信するようにして、空いていない場合はリトライするようにしてもよい。これにより、複数のタグTgを同時期に効率よく関連付けることが可能となる。
【0129】
さらに、上記リトライ時に乱数を振ってランダムバックオフを行うようにするとなお好適である。
【0130】
このように、タグTgは、ユーザー操作を受け付けた場合、所定の信号を受信した場合、タグTgに対応付けられたコントローラー2からの信号の安定度が所定の状態となった場合、又は、所定の時間が経過した場合に、前記探索信号を送信する。
【0131】
以上のように、本発明の通信システムは、管理サーバー1、コントローラー2、及びタグTgを含む通信システム10(
図1参照)全体で構成されてもよいし、管理サーバー1とコントローラー2とにより構成されてもよいし、管理サーバー1単体又はコントローラー2単体で構成されてもよい。
【0132】
また、本発明のチャネル(周波数チャネル)は、周波数ホッピング方式、直接拡散方式などの通信方式にも適用可能である。
【0133】
また、本発明では、ビーコンによりタグTg(子局)にコマンドを送信して制御するのに使うチャネル(動作チャネル)と、探索信号を送信するチャネル(探索チャネル)とが異なっている。このように、使用シャネルを分けることにより、通常動作への影響を避けることができる。
【0134】
また、本発明では、さらに、タグTgとコントローラー2とを互いに関連付ける関連付けを指示する信号を送信するチャネル(アナウンスチャネル)を有し、前記アナウンスチャネルは、前記動作チャネル及び前記探索チャネルとは異なる。このように、使用シャネルを分けることにより、通常動作への影響を避けることができる。
【0135】
また、本発明では、前記第1子局に関連付けられた前記第1親局との通信が不安定になった場合、タグTgは前記探索信号を送信して再度関連付けを行う。これにより、設置場所の移動などの環境の変化に対応して、より良いコントローラー2に紐づけ直すことが可能となる。
【0136】
[実施形態3]
本発明の実施形態3に係る通信システム10について説明する。以下では、実施形態1及び実施形態2に係る通信システム10と同一の構成及び処理についてはその説明を適宜省略する。
【0137】
実施形態3に係る通信システム10は、タグTgが特定のコントローラー2に関連付けられた後に、タグTgとコントローラー2との通信環境が悪化した場合に、通信環境が良いコントローラー2に切り替える処理(ローミング)を実行するシステムである。ここでは、各タグTgは、いずれか一つのコントローラー2と関連付けられているものとする。
【0138】
図19は、本発明の実施形態3に係る通信システム10の概略構成を示す機能ブロック図である。
図19に示す構成では、施設F1に複数の保管棚3(
図2参照)が配列されており、さらに施設F1内を走行可能な複数の台車4が配置されている。
図2に示すように、保管棚3には複数の収納棚31が含まれ、各収納棚31にはタグTg(
図3A及び
図3B参照)が設置されている。
【0139】
図20には、台車4の一例を示している。台車4は、例えば、自律走行可能な自律走行ロボット(AGVなど)であり、管理サーバー1から送信される指示に応じて自律走行する。また、台車4には、一又は複数の収納棚41が含まれ、各収納棚41にはタグTgが設置されている。収納棚41に設置されるタグTgは、収納棚31に設置されるタグTg(
図3A及び
図3B参照)と同一である。
【0140】
保管棚3のタグTgは、保管棚3の設置場所を含む通信エリアに対応するコントローラー2に関連付けられると、常に当該コントローラー2と通信を行う。一方、台車4のタグTgは、例えばコントローラーXと安定した通信が可能な場合にはコントローラーXと通信を行い、台車4が移動して場合にコントローラーXよりもコントローラーYと安定した通信が可能な場合にはコントローラーYと通信を行う。
【0141】
このように、台車4のタグTgは、台車4の移動に伴って、通信の安定度が高いコントローラー2と通信を行う。実施形態3に係る通信システム10は、タグTg(子局)とコントローラー2(親局)との通信環境が悪化した場合(通信の安定度が低下した場合)に、通信環境が良い(通信の安定度が高い)コントローラー2に切り替える処理(ローミング)を実行する。
【0142】
以下、実施形態3に係る通信システム10の具体的構成を説明する。実施形態3では、実施形態2と同様に、200msの周期を12.5msの16個のスロットに分割する。すなわち、一つの周波数チャネルを最大16台のコントローラーで共有することができる。
【0143】
図21には、通信対象のコントローラー2を切り替える対象のタグTg(対象タグTg)の切り替え処理(ローミング)の具体例を示している。また
図22には、管理サーバー1と複数のコントローラー2と対象タグTgとのローミングの手順の一例を示している。なお、
図21には、
図22の処理ステップに対応するステップ番号(s1、s5、s6、s9、s10)を付記している。
【0144】
図21において、例えばコントローラーXは、「12.5ms」のスロットが設定される動作チャネル(Operationチャネル)において、コントローラーXに既に関連付けられている複数のタグTgのうち所定数(最大5個)のタグTgに対して送信データ(コマンド)を送信する。コントローラーXは、「200ms」のうち「12.5ms」を除く「187.5ms」を探索チャネルに切り替える。コントローラーXは、探索チャネルにおいて対象タグTgから送信される探索信号を受信可能(受信待機状態)となる。コントローラーY及び他のコントローラーについても、コントローラーXと同様の構成を有する。
【0145】
ここでは、対象タグTgは、コントローラーXに関連付けられており、コントローラーXと通信を行っているものとする。例えば、コントローラーXは、管理サーバー1から送信指示を取得すると、動作チャネルにおいて、送信データ(
図9参照)を、コントローラーXに関連付けられた全てのタグTg(
図5参照)に送信する。
【0146】
コントローラーXに関連付けられた各タグTgは、前記送信データを受信すると、前記送信データに含まれる宛先を確認し、自身宛のコマンドが含まれる場合に所定の処理を実行する。例えば、対象タグTgは、ランプボタンB1(
図3A参照)を点灯させる自身宛のコマンドが含まれる前記送信データを受信すると、ランプボタンB1を点灯させる。
【0147】
ここで、対象タグTgを搭載する台車4が移動して、コントローラーXとの通信の安定度が低下すると、通信システム10は以下に示すローミングを実行する。
【0148】
先ず、対象タグTgは、探索信号を送信する(
図21及び
図22のステップs201)。具体的には、対象タグTgは、対象タグTgに関連付けられたコントローラーXとの通信の安定度が閾値を下回った場合に、他のコントローラー2を探索するための探索信号を送信する。例えば、対象タグTgは、動作チャネルにおいてコントローラーXから受信した過去10回分の信号(ビーコン)の受信強度の平均値がマイナス70dB(前記閾値の一例)を下回った場合に探索信号を送信する。対象タグTgは本発明の第1子局の一例であり、コントローラーXは本発明の第1親局の一例である。
【0149】
また、対象タグTgは、チャネルを動作チャネルから探索チャネルに切り替えて探索信号を送信する。また、対象タグTgは、各コントローラー2に割り当てられている時分割通信におけるスロット時間(ここでは「12.5ms」)よりも長い時間間隔(例えば「15ms」間隔)で探索信号を複数回送信する。ここでは、対象タグTgは、探索チャネルにおいて、「15ms」間隔で4回探索信号を送信する。このように、コントローラー2はタグTgと時分割通信を行い、タグTgは、前記時分割通信におけるスロット時間よりも長い時間間隔で前記探索信号を複数回送信する。前記探索信号の送信間隔を前記スロット時間よりも長くすることにより、全てのコントローラー2が少なくとも複数回、前記探索信号を受信することが可能となる。
【0150】
複数のコントローラー2のそれぞれは、探索チャネルの受信待機状態において、対象タグTgから送信される探索信号を受信する。例えば施設F1に設置された全てのコントローラー2のうち、対象タグTgからの信号の届く場所に設置された複数のコントローラー2が前記探索信号を受信する。
【0151】
複数のコントローラー2のそれぞれは、前記探索信号を受信した場合に、自身の識別情報(コントローラーID)と、対象タグTgの識別情報(タグID)と、前記探索信号に関する信号情報(例えば受信強度)とを含む解析レポート(本発明のレポートの一例)を管理サーバー1に送信する(
図22のステップs202)。また、前記解析レポートには、前記探索信号を受信した時刻、前記探索信号の番号(送信回数が4回の場合、4回のうち何番目であるかを示す情報)が含まれる。なお、対象タグTgは通信が十分に安定するコントローラー2に関連付けられることが望ましいため、コントローラー2は、前記受信強度が所定値以下の前記探索信号に対応する解析レポートを送信しない構成としてもよい。
【0152】
管理サーバー1は、各コントローラー2から前記解析レポートを受信すると、対象タグTgに関連付けるコントローラー2、ここではコントローラーXから切り替える切り替え先(ローミング先)のコントローラーを決定する(
図22のステップs203)。具体的には、管理サーバー1の切替処理部114(
図19参照)は、前記探索信号の安定度に基づいて、対象タグTgに対応する切り替え先のコントローラー2を決定する。例えば、切替処理部114は、対象タグTgに対応する前記解析レポートについて集計し、1番目から最終番目(ここでは4番目)までの全ての前記探索信号のうち例えば3つ以上受信している場合に、前記探索信号が最も安定しているコントローラー2を決定する。また、切替処理部114は、前記探索信号の信号強度の平均値に基づいて、前記探索信号の安定度を算出する。また、切替処理部114は、前記探索信号の信号強度の平均値や、最低強度、信号強度の分散などに基づいて、前記探索信号の安定度を算出してもよい。
【0153】
切替処理部114は、コントローラー2(コントローラーY)を決定すると、対象タグTgに対応するコントローラーを切り替えるための親局変更指示(ローミング指示)を、切り替え元のコントローラー2(コントローラーX)に送信する(
図22のステップs204)。ここでは、切替処理部114は、対象タグTgに対応する切り替え先のコントローラー2としてコントローラーYを決定し、前記親局変更指示をコントローラーYに送信する。前記変更指示には、対象タグTgのアドレスと、コントローラーXのアドレスと、対象タグTgが動作チャネル(Operationチャネル)で受信を開始する動作開始時刻とが含まれる。
【0154】
管理サーバー1(切替処理部114)は、新しい紐づけ先であるコントローラー2(例えばコントローラーY)を決定すると、元の紐づけ先であるコントローラーXに対して、対象タグTgに対する親局変更指示を送信する(
図22のステップs204)。
【0155】
管理サーバー1から前記親局変更指示を受信したコントローラーYは、200ms周期で出力しているビーコンに該親局変更指示を格納して対象タグTgに送信する(
図22のステップs205)。
【0156】
対象タグTgは、元のコントローラーXからのビーコンを節電のために200ms周期で間欠起動しながら受信しており、受信したビーコンに格納された自局宛の親局変更指示を見つけると、前述の所定のタイミングで親局変更指示に対するAcknowledge(以降、「親局変更Ack」という。)をコントローラーX宛に送信する(
図22のステップs206)。
【0157】
コントローラーXは、対象タグTgより親局変更Ackを受信すると、管理サーバー1宛にEthernet通信により該親局変更Ackの受信を報告する(
図22のステップs207)。
【0158】
コントローラーXより親局変更Ackを受信した管理サーバー1は、その時点で、該対象タグTgは新しいコントローラーYへのローミングが確定したものとする。なお、該親局変更指示には、コントローラーYのオペレーションチャネル(周波数)、コントローラーYの通信アドレス、コントローラーYが200ms周期で出力しているビーコンのタイミング等の情報が含まれる。
【0159】
次いで、管理サーバー1(切替処理部114)は、コントローラーYに対して該対象タグTg宛の変更確定指示を送信する(
図22のステップs208)。
【0160】
前記変更確定指示を受信したコントローラーYは、200ms周期で出力しているビーコンに該変更確定指示を格納して対象タグTgに送信する(
図22のステップs209)。
【0161】
一方、対象タグTgは、前記親局変更指示を受信した後、該親局変更指示に格納されていた情報に基づき、コントローラーYのオペレーションチャネル(周波数)に切り替えて、コントローラーYが200ms周期で出力しているビーコンのタイミングで、コントローラーYの通信アドレスが含まれるビーコンの受信を試みるため、上述の該変更確定指示を受信する。
【0162】
対象タグTgは、前記変更確定指示を受信した時点で、新しいコントローラーYへのローミングが確定したものとする。
【0163】
対象タグTgは、前変更確定指示に対するAcknowledge(以降、「変更確定Ack」という。)をコントローラーY宛に送信する(
図22のステップs210)。
【0164】
コントローラーYは、対象タグTgより変更確定Ackを受信すると、管理サーバー1宛にEthernet通信により該変更確定Ackの受信を報告する(
図22のステップs211)。
【0165】
最後に、管理サーバー1は、対象タグTgとコントローラーYとの関連付け情報を関連情報D2(
図5参照)に登録して、ローミングを完了する。
【0166】
なお、上述の処理においては、適宜リトライやタイムアウトが設定されているものとする。管理サーバー1において、前記リトライの上限やタイムアウト時間を経ても「ローミングの確定」に至らなかった場合、管理サーバー1は本ローミング処理を破棄し、対象タグTgは元のコントローラーXに紐づいているものとして動作を継続する。
【0167】
また、対象タグTgにおいて、前記リトライの上限やタイムアウト時間を経ても「ローミングの確定」に至らなかった場合、対象タグTgは上述のバインディング処理を行う。上述のバインディング処理では、アナウンスチャネル(Announceチャネル)で新しく紐づけるコントローラーに関する情報を送信しており、また、大量のタグTgに対して一斉に紐づけが行われることがあるため、タグは一定時間アナウンスチャネルを受信する必要がある。一方、このローミング処理では通常の制御を行う動作チャネルのビーコンにその情報を乗せ、それを受信した対象タグTgは即座に次のコントローラーのビーコン受信タイミングに切り替えることができる。これにより、ビーコン周期である最大200msのレスポンス時間をほぼ維持したままコントローラーを切り替えるローミングが可能となる。
【0168】
なお、本実施例では前記親局変更指示にコントローラーYが200ms周期で出力しているビーコンのタイミングを含めたが、これは省略してもよい。その場合、対象タグTgはビーコン周期より長い時間、例えば220msの期間、指定チャネルでビーコンの受信を試みるようにすればよい。
【0169】
通信システム10は、タグTgの通信の安定度が閾値を下回るごとに上述の処理を実行して、タグTgに関連付けるコントローラー2を通信が安定するコントローラー2に切り替える。
【0170】
[コントローラーの切り替え処理(ローミング)]
以下、
図23~
図25を参照しつつ、実施形態3に係る通信システム10において実行されるローミングの手順の一例について説明する。
図23A及び
図23Bは、対象タグTgにおいて実行されるローミングの手順の一例を示し、
図24は、コントローラー2において実行されるローミングの手順の一例を示し、
図25は、管理サーバー1において実行されるローミングの手順の一例を示している。
【0171】
[対象タグTgにおけるローミング]
上述の例と同様に、ここでは、対象タグTg(子局)は、コントローラーX(親局)に関連付けられており、コントローラーXと通信を行っているものとする。
【0172】
図23Aに示すステップS51において、子局である対象タグTgは、チャネルを動作チャネルに設定する。次にステップS52において、対象タグTgは、コントローラー2(現在通信中のコントローラーX)からビーコンの受信を試みる。対象タグTgは、前記ビーコンを受信すると(S52:Yes)、処理をステップS53に移行させる。対象タグTgは、前記ビーコンを受信するまで前記ビーコンの受信を試みる(S52:No)。
【0173】
ステップS53において、対象タグTgは、コントローラーXから自身宛てのコマンドを受信したか否かを判定する。対象タグTgは、コントローラーXから自身宛てのコマンドを受信すると(S53:Yes)、処理をステップS54に移行させる。一方、対象タグTgは、コントローラーXから自身宛てのコマンドを受信しない場合(S53:No)、処理をステップS56に移行させる。
【0174】
ステップS54において、対象タグTgは、自身宛てのコマンドに前記親局変更指示が格納されているか否かを判定する。対象タグTgは、自身宛てのコマンドに前記親局変更指示が格納されていない場合(S54:No)、処理をステップS55に移行させる。一方、対象タグTgは、自身宛てのコマンドに前記親局変更指示が格納されている場合(S54:Yes)、処理をステップS541(
図23B参照)に移行させる。
【0175】
ステップS55において、対象タグTgは、前記コマンドを実行するとともに、所定のタイミングで前記親局変更指示に対する親局変更Ack(確認信号)をコントローラーX宛に送信する。
【0176】
次に、対象タグTgは通信状況を確認し(S56)、通信状況が悪化したか否かを判定する(S57)。例えば、対象タグTgは、コントローラーXとの通信の安定度が閾値を下回った場合に(S57:Yes)、処理をステップS571に移行させる。対象タグTgは、コントローラーXとの通信の安定度が閾値以上である場合(S57:No)、コントローラーXと通信を行い次のビーコンまで待機する(S58)。
【0177】
ステップS571では、対象タグTgは、前回探索信号が出力されてから10秒以上が経過したか否かを判定する。対象タグTgは、前回探索信号が出力されてから10秒以上が経過したと判定すると(S571:Yes)、処理をステップS572に移行させる。対象タグTgは、前回探索信号が出力されてから10秒以上が経過しない場合(S571:No)、処理をステップS58に移行させる。
【0178】
ステップS572において、対象タグTgは、チャネルを探索チャネルに設定する。次にステップS573において、対象タグTgは、他のコントローラー2を探索するための探索信号を送信する。対象タグTgは、探索信号を送信すると、次のビーコン時刻まで待機する(S574)。
【0179】
ステップS54において、自身宛てのコマンドに前記親局変更指示が格納されている場合(S54:Yes)、ステップS541(
図23B参照)に移行し、対象タグTgは、前記親局変更指示に対する親局変更Ack(確認信号)をコントローラーX宛に送信する。
【0180】
次にステップS542において、対象タグTgは、チャネルを新たな動作チャネル(新動作チャネル(
図21参照))に設定する。次にステップS543において、対象タグTgは、指定時刻に動作チャネルでビーコンを受信する。
【0181】
次にステップS544において、対象タグTgは、前記ビーコンに前記変更確定指示が格納されているか否かを判定する。対象タグTgは、前記ビーコンに前記変更確定指示が格納されている場合(S544:Yes)、処理をステップS58に移行させる。一方、対象タグTgは、前記ビーコンに前記変更確定指示が格納されていない場合(S544:No)、処理をステップS545に移行させる。
【0182】
ステップS545において、対象タグTgは、タイムアウト時刻が経過したと判定すると(S545:Yes)、ステップS546において、上述のバインディング処理を実行する。
【0183】
[コントローラー2におけるローミング]
図24に示すステップS61、S62において、親局であるコントローラー2は、動作開始時間になると(S61:Yes)、自身に割り当てられている動作チャネルに設定する(S62)。
【0184】
次にステップS63において、コントローラー2は、管理サーバー1から、対象タグTgに対応するコントローラーを切り替えるための親局変更指示(ローミング指示)を受信したか否かを判定する。コントローラー2は、前記親局変更指示を受信すると(S63:Yes)、処理をステップS64に移行させる。一方、コントローラー2は、前記親局変更指示を受信しない場合(S63:No)、処理をステップS67に移行させる。
【0185】
ステップS64において、コントローラー2は、管理サーバー1から受信した前記親局変更指示を対象タグTgに送信する。
【0186】
ステップS65において、コントローラー2は、管理サーバー1から、対象タグTgに対応するコントローラーを確定するための変更確定指示を受信したか否かを判定する。コントローラー2は、前記変更確定指示を受信すると(S65:Yes)、処理をステップS66に移行させる。一方、コントローラー2は、前記変更確定指示を受信しない場合(S65:No)、処理をステップS67に移行させる。
【0187】
ステップS66において、コントローラー2は、管理サーバー1から受信した前記変更確定指示を対象タグTgに送信する。
【0188】
ステップS67において、コントローラー2は、通常の動作処理を実行する。コントローラー2は、動作時間が終了すると(S68:Yes)、処理をステップS69に移行させる。
【0189】
ステップS69において、コントローラー2は、チャネルを探索チャネルに設定し、タグTgから送信された前記探索信号を受信したか否かを判定する(S70)。コントローラー2は、前記探索信号を受信すると(S70:Yes)、処理をステップS71に移行させる。一方、コントローラー2は、前記探索信号を受信しない場合(S70:No)、処理をステップS72に移行させる。
【0190】
ステップS71において、コントローラー2は、前記探索信号について、タグTg(子局)のIDの取得、信号強度の測定などの解析を行い、解析結果(解析レポート)を管理サーバー1に送信する。
【0191】
ステップS72において、コントローラー2は、動作開始時間になったか否かを判定する。コントローラー2は、動作開始時間になると(S72:Yes)、処理をステップS62に移行させ、動作開始時間になるまでステップS70、S71の処理を繰り返す(S72:No)。
【0192】
[管理サーバー1におけるローミング]
図25に示すステップS81において、管理サーバー1は、複数のコントローラー2から前記解析レポートを受信したか否かを判定する。例えば、管理サーバー1は、コントローラーYから複数(探索信号3回~4回分)の前記解析レポートを受信する。
【0193】
管理サーバー1は、複数のコントローラー2から複数の前記解析レポートを受信すると(S81:Yes)、複数の前記解析レポートを集計して(S82)、対象タグTgに対応する切り替え先のコントローラー2を決定する。例えば、管理サーバー1は、コントローラー2ごとに複数の前記探索信号の最低受信強度を特定し、最低受信強度が最も高いコントローラー2を判定する。そして、管理サーバー1は、最低受信強度が最も高いコントローラー2を、対象タグTgの切り替え先のコントローラー2に決定する。
【0194】
管理サーバー1は、切り替え先のコントローラー2がある場合(S83:Yes)、処理をステップS84に移行させる。一方、管理サーバー1は、切り替え先のコントローラー2がない場合(S83:No)、処理をステップS81に移行させる。
【0195】
ステップS84において、管理サーバー1は、新たな動作チャネル及び切り替え先のコントローラー2(ここではコントローラーY)を示す情報を含む前記親局変更指示を、切り替え元のコントローラー2(ここではコントローラーX)に送信する。
【0196】
次にステップS85において、管理サーバー1は、コントローラーXから前記親局変更Ackを受信したか否かを判定する。管理サーバー1は、コントローラーXから前記親局変更Ackを受信すると(S85:Yes)、処理をステップS86に移行させる。一方、管理サーバー1は、コントローラーXから前記親局変更Ackを受信しない場合(S85:No)、処理をステップS88に移行させる。
【0197】
ステップS86において、管理サーバー1は、コントローラーXからコントローラーYへの切り替え(親局変更)を確定させ、ステップS87において、前記変更確定指示をコントローラーYに送信する。
【0198】
管理サーバー1は、ステップS85においてコントローラーXから前記親局変更Ackを受信しない場合(S85:No)、ステップS88において、親局の変更処理を取り消す。
【0199】
また、管理サーバー1は、対象タグTgに対応するコントローラーがコントローラーYに切り替えられたことを確認すると、対象タグTgとコントローラーYとの関連付け情報を関連情報D2(
図5参照)に登録する。管理サーバー1は、コントローラー2から前記解析レポートを受信するごとに上述の処理を繰り返し実行する。
【0200】
以上説明したように、本実施形態3に係る通信システム10は、管理サーバー1と複数のコントローラー(親局)と複数のタグTg(子局)とを含む通信システムである。また、第1タグTgは、当該第1タグTgに関連付けられた第1コントローラー2との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他のコントローラー2を探索するための探索信号を送信する。また、前記探索信号を受信した複数のコントローラー2のそれぞれは、当該コントローラー2の識別情報と前記第1タグTgの識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含む解析レポートを管理サーバー1に送信する。管理サーバー1は、複数のコントローラー2のそれぞれから受信する複数の前記解析レポートに基づいて、複数のコントローラー2の中から第1タグTgに関連付ける第2コントローラー2を決定し、第1タグTgと第2コントローラー2とを互いに関連付ける。
【0201】
また、管理サーバー1は、第1コントローラー2から受信する前記探索信号の安定度よりも高い安定度の前記探索信号を受信するコントローラー2を第2コントローラー2に決定する。また、上記構成において、第1タグTgが前記探索信号を送信するチャネル(探索チャネル)と、第1タグTgが第2コントローラー2に関連付けられた後に第2コントローラー2と通信するチャネル(動作チャネル)とが異なっている。
【0202】
また、管理サーバー1は、少なくとも第2コントローラー2の識別子又はチャネルの情報を第1タグTgに送信し、第1タグTgは、少なくとも第2コントローラー2の識別子又はチャネルの情報に基づいて第2コントローラー2と通信を行う。
【0203】
また、本発明のコントローラー2は、第1タグTgに関連付けられた第1コントローラー2との通信の安定度が閾値を下回った際に第1タグTgから送信される他のコントローラー2を探索するための探索信号を受信した場合に、コントローラー2の識別情報と第1タグTgの識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含む解析レポートを管理サーバー1に送信し、管理サーバー1から、第1タグTgに関連付けるコントローラー2を第1コントローラー2から第2コントローラー2に切り替える指示を受信した場合に、第1タグTgに第2コントローラー2に関する情報(前記親局変更指示)を送信する。
【0204】
また、本発明のタグTgは、タグTgに関連付けられた第1コントローラー2との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、管理サーバー1がタグTgに関連付けるコントローラー2として第2コントローラー2を決定した場合に、タグTgに関連付けるコントローラー2を第1コントローラー2から第2コントローラー2に切り替える。
【0205】
上記構成によれば、タグTgとコントローラー2との通信環境が悪化した場合に、通信環境が良いコントローラー2に切り替えることができる。このように、上記構成では、通信状況が悪化した際に、タグTgは所定チャネルで探索信号を送信しておくと、よりよいコントローラー2があった場合にのみ、現在通信中のコントローラー2との通信において新しいコントローラー2への切り替えを指示されるため、タグTgでは指示に従って新しいチャネルに切り替えるだけでよい。このため、消費電力を抑制するとともにレスポンスの悪化を回避することが可能となる。
【0206】
本発明の他の実施形態として、対象タグTgから前記探索信号を受信した複数のコントローラー2のうち、前記探索信号の安定度が、コントローラーXが対象タグTgから受信した前記探索信号の安定度よりも高いコントローラー2のみが、前記解析レポートを管理サーバー1に送信してもよい。これにより、切り替え先になる可能性の低いコントローラー2からの受信処理を回避することができるため、通信トラフィック及び負荷を軽減することができる。
【0207】
また、他の実施形態として、対象タグTgは、通常の通信時(例えば、コントローラーXからビーコンを受信するとき)の信号強度よりも弱い信号強度で前記探索信号を送信しい、管理サーバー1は、前記信号強度を弱めた分量を補正して前記探索信号の安定度を算出してもよい。これにより、通信トラフィック及び負荷を軽減することができる。また、信号の衝突確率を低減することができる。
【0208】
また、他の実施形態として、複数のコントローラー2のうちいずれかのコントローラー2が、管理サーバー1の機能を備えてもよい。
【0209】
また、本発明の通信システムは、実施形態2に係るバインディング(Binding)の処理と、実施形態3に係るローミングの処理とを実行可能な構成であってもよい。例えば、通信システム1は、タグTgとコントローラー2との通信環境が悪化して通信の安定度が低下した場合に、通信の安定度がより高いコントローラー2に切り替える処理(ローミング)を実行し、さらに通信環境が悪化して通信の安定度が低下した場合又は通信が遮断した場合に、通信可能なコントローラー2に関連付ける処理(バインディング)を実行する。
【0210】
例えば、対象タグTgは、動作チャネルにおいてコントローラーXから受信した過去10回分の信号(ビーコン)の受信強度の平均値がマイナス70dB(第1閾値の一例)を下回った場合に探索信号を送信して、前記ローミング(実施形態3の処理(
図21及び
図22参照))を実行する。また例えば、対象タグTgは、前記受信強度の平均値がマイナス90dB(第2閾値の一例)を下回った場合に探索信号を送信して、前記バインディング(実施形態2の処理(
図14及び
図15参照))を実行する。
【0211】
[発明の付記]
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0212】
<付記1>
管理サーバーと複数の親局と複数の子局とを含む通信システムであって、
第1子局は、当該第1子局に関連付けられた第1親局との通信の安定度が閾値を下回った場合に、他の親局を探索するための探索信号を送信し、
前記探索信号を受信した複数の親局のそれぞれは、当該親局の識別情報と前記第1子局の識別情報と前記探索信号に関する信号情報とを含むレポートを前記管理サーバーに送信し、
前記管理サーバーは、前記複数の親局のそれぞれから受信する複数の前記レポートに基づいて、前記複数の親局の中から前記第1子局に関連付ける第2親局を決定し、前記第1子局に関連付ける親局を前記第1親局から前記第2親局に切り替える、
通信システム。
【0213】
<付記2>
前記管理サーバーは、前記第1親局から受信する前記探索信号の安定度よりも高い安定度の前記探索信号を受信する親局を前記第2親局に決定する、
付記1に記載の通信システム。
【0214】
<付記3>
前記第1子局が前記探索信号を送信するチャネルと、前記第1子局が前記第2親局に関連付けられた後に前記第2親局と通信するチャネルとが異なる、
付記1又は2に記載の通信システム。
【0215】
<付記4>
前記管理サーバーは、少なくとも前記第2親局の識別子又はチャネルの情報を前記第1子局に送信し、
前記第1子局は、少なくとも前記第2親局の識別子又は前記チャネルの情報に基づいて前記第2親局と通信を行う、
付記1~3のいずれかに記載の通信システム。
【0216】
<付記5>
前記親局は前記子局と時分割通信を行い、
前記第1子局は、前記時分割通信におけるスロット時間よりも長い時間間隔で前記探索信号を複数回送信する、
付記1~4のいずれかに記載の通信システム。
【0217】
<付記6>
前記探索信号の安定度は、前記探索信号の信号強度の値及び信号強度の平均値のいずれかに基づいて算出される、
付記2に記載の通信システム。
【0218】
<付記7>
前記探索信号を受信した複数の親局のうち、前記探索信号の安定度が、前記第1親局が前記第1子局から受信した前記探索信号の安定度よりも高い親局のみが、前記レポートを前記管理サーバーに送信する、
付記1~6のいずれかに記載の通信システム。
【0219】
<付記8>
前記第1子局は、通常の通信時の信号強度よりも弱い信号強度で前記探索信号を送信し、
前記管理サーバーは、前記信号強度を弱めた分量を補正して前記探索信号の安定度を算出する、
付記1~7のいずれかに記載の通信システム。
【0220】
<付記9>
前記複数の親局のうちいずれかの親局は、前記管理サーバーの機能を備える、
付記1~8のいずれかに記載の通信システム。
【0221】
尚、本発明に係る通信システムは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0222】
1 :管理サーバー
2 :コントローラー
3 :保管棚
4 :台車
10 :通信システム
111 :関連処理部
112 :割当処理部
113 :通信処理部
114 :切替処理部
Tg :タグ