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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159587
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
H01H37/76 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069360
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 豊
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊介
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA09
5G502AA11
5G502BA04
5G502BB07
5G502BB19
5G502BC03
5G502BD06
5G502BE09
5G502CC14
5G502EE06
5G502FF08
5G502KK02
(57)【要約】
【課題】アーク放電の発生を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制でき、かつ種々の温度環境でもヒューズエレメントの切断部が切断されにくい保護素子を提供する。
【解決手段】第1端部と第2端部との間に切断部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、前記切断部を挟み込むように対向配置された凸部を有する可動部材および前記凸部を挿入可能な凹部を有する凹状部材と、前記可動部材と前記凹状部材とで前記切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段とを備え、前記ヒューズエレメントの軟化温度以上の温度において、前記押圧手段の前記力により前記切断部が切断される保護素子であって、前記ヒューズエレメントの前記切断部は、少なくとも一部に貫通孔および薄肉部の一方または両方を有する保護素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と第2端部との間に切断部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、前記切断部を挟み込むように対向配置された凸部を有する可動部材および前記凸部を挿入可能な凹部を有する凹状部材と、前記可動部材と前記凹状部材とで前記切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段とを備え、前記ヒューズエレメントの軟化温度以上の温度において、前記押圧手段の前記力により前記切断部が切断される保護素子であって、
前記ヒューズエレメントの前記切断部は、少なくとも一部に貫通孔および薄肉部の一方または両方を有する保護素子。
【請求項2】
前記貫通孔および前記薄肉部の最大径が、前記切断部の前記第1方向に直交する第2方向の長さの15%以上、25%以下の範囲内にある請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記ヒューズエレメントは、前記切断部以外の少なくとも一部に、前記切断部の前記貫通孔および前記薄肉部を除く平面部分よりも厚みが厚い厚肉部を有する請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
前記厚肉部の厚さは、前記切断部の前記平面部分の厚さに対して150%以上、250%以下の範囲内にある請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
前記厚肉部の前記第1方向に直交する前記第2方向の長さが、前記切断部の前記第2方向の長さよりも長い請求項3に記載の保護素子。
【請求項6】
前記厚肉部の前記第2方向の長さが、前記切断部の前記第2方向の長さに対して120%以上、160%以下の範囲内にある請求項5に記載の保護素子。
【請求項7】
前記切断部が、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側に配置され、かつ平面視で前記凹状部材の前記凹部の内面に近接する位置に配置される請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項8】
前記ヒューズエレメントが、内層を低融点金属、外層を高融点金属とする積層体である請求項1に記載の保護素子。
【請求項9】
前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる請求項8に記載の保護素子。
【請求項10】
前記厚肉部の前記切断部の前記平面部分よりも厚みが厚い部分は、SnもしくはSnを主成分とする金属、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる請求項3に記載の保護素子。
【請求項11】
前記押圧手段がバネである請求項1に記載の保護素子。
【請求項12】
前記バネが、円錐バネであり、外径の小さい側を前記切断部側に向けて配置されている請求項11に記載の保護素子。
【請求項13】
前記可動部材の前記凸部は、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置に配置され、
前記切断部が切断されることにより、前記凹部内に前記凸部が挿入される請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項14】
前記第1端部に第1端子が電気的に接続され、前記第2端部に第2端子が電気的に接続されている請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項15】
前記ヒューズエレメントの前記押圧手段側もしくは前記凹状部材側に、前記切断部に接して配置もしくは近接する位置に配置された発熱部材を備える請求項1に記載の保護素子。
【請求項16】
前記発熱部材が、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側に配置されている請求項15に記載の保護素子。
【請求項17】
前記発熱部材の前記第1方向の長さが、前記第1方向および前記第1方向と交差する前記第2方向と交差する、第3方向における前記凹部の長さよりも短い請求項15または請求項16に記載の保護素子。
【請求項18】
前記発熱部材が抵抗体を有し、前記抵抗体が前記発熱部材の前記切断部側に近接して配置されている請求項15に記載の保護素子。
【請求項19】
前記抵抗体が、前記第1方向と交差する前記第2方向に沿って前記ヒューズエレメントと接している、または前記発熱部材を通して前記第1方向と交差する前記第2方向に沿って前記ヒューズエレメントと接している請求項18に記載の保護素子。
【請求項20】
前記発熱部材が、給電部材により第3端子、もしくは前記第3端子および第4端子と、電気的に接続され、前記給電部材を介した通電により前記抵抗体が発熱する請求項15に記載の保護素子。
【請求項21】
少なくとも前記ヒューズエレメントと前記可動部材と前記凹状部材の前記凹部と前記押圧手段とが収容される複数の部材から成るケースを有し、
前記押圧手段が前記可動部材と前記凹状部材とで前記切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加えた状態で、前記ケース内に収容されている請求項1に記載の保護素子。
【請求項22】
前記ケースの一部材が、前記押圧手段の伸縮方向に対向する第1内壁面と第2内壁面と、前記第1内壁面と前記第2内壁面とを繋ぐ側壁面とが同一部材で一体形成された収容部を有し、
前記ヒューズエレメントが切断されていない状態で、前記押圧手段より発生するケース内部の応力を前記第1内壁面と前記側壁面と前記第2内壁面とで鎹状に支え保持する請求項21に記載の保護素子。
【請求項23】
前記凹状部材および前記ケースが、ナイロンまたはセラミックスからなる請求項21に記載の保護素子。
【請求項24】
前記切断部が、平面視で前記凹状部材の前記凹部内に配置され、かつ平面視で前記凹部の内面に近接する位置に配置され、
前記可動部材は、平面視で前記凹部の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置であって、前記凸部は、前記切断部の一部と重なる位置に配置され、
前記ヒューズエレメントの前記切断部が切断されることにより、前記凹部内に前記凸部が挿入されるとともに、前記ヒューズエレメントの一部が折れ曲がるように前記凹部内に収容される請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、例えば、リチウムイオン二次電池を使用した電池パックに用いられている。
近年、リチウムイオン二次電池は、モバイル機器だけでなく、電気自動車、蓄電池など幅広い分野で使用されている。そのため、リチウムイオン二次電池の大容量化が進められている。それに伴って、大容量のリチウムイオン電池を有し、高電圧かつ大電流の電流経路を有する電池パックに設置される保護素子が求められている。
【0003】
高電圧かつ大電流の電流経路を有する電池パックに設置される保護素子では、ヒューズエレメントの切断時にアーク放電が発生しやすい傾向がある。このため、アーク放電の発生を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制できる保護素子が求められている。このような保護素子として、例えば、切断部を有するヒューズエレメントと、その切断部を挟み込むように対向配置された凸部を有する可動部材およびその凸部を挿入可能な凹部を有する凹状部材と、その可動部材と凹状部材とで切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段とを備える保護素子が知られている(特許文献1)。この保護素子は、ヒューズエレメントの切断部が軟化温度以上の温度になると、押圧手段の力によって切断部が切断されるようにされている。特許文献1には、定格を超える電流が流れること以外の異常時においてもヒューズエレメントの切断部を軟化させやすくするために、切断部の近傍に発熱部材を配置して、その発熱部材を発熱させることが記載されている。また、特許文献1には、定格を超える電流が流れたときのヒューズエレメントの切断部を軟化させやすくする方法として、ヒューズエレメントの切断部の幅を狭くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-190294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、ヒューズエレメントの切断部の幅を狭くすることは、切断部の軟化を起こしやすくする方法としては有効である。しかしながら、切断部の幅を狭くすることにより、冷熱サイクル(例えば、-40℃~+100℃)、高温高湿、高温、低温等の温度環境によりヒューズエレメントの切断部が切断されることがあった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アーク放電の発生を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制でき、かつ温度環境によるヒューズエレメントの切断部の切断が起こりにくい保護素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0008】
[1]第1端部と第2端部との間に切断部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、前記切断部を挟み込むように対向配置された凸部を有する可動部材および前記凸部を挿入可能な凹部を有する凹状部材と、前記可動部材と前記凹状部材とで前記切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段とを備え、前記ヒューズエレメントの軟化温度以上の温度において、前記押圧手段の前記力により前記切断部が切断される保護素子であって、
前記ヒューズエレメントの前記切断部は、少なくとも一部に貫通孔および薄肉部の一方または両方を有する保護素子。
【0009】
[2]前記貫通孔および前記薄肉部の最大径が、前記切断部の前記第1方向に直交する第2方向の長さの15%以上、25%以下の範囲内にある[1]に記載の保護素子。
[3]前記ヒューズエレメントは、前記切断部以外の少なくとも一部に、前記切断部の前記貫通孔および前記薄肉部を除く平面部分よりも厚みが厚い厚肉部を有する[1]または[2]に記載の保護素子。
[4]前記厚肉部の厚さは、前記切断部の前記平面部分の厚さに対して150%以上、250%以下の範囲内にある[3]に記載の保護素子。
[5]前記厚肉部の前記第1方向に直交する前記第2方向の長さが、前記切断部の前記第2方向の長さよりも長い[3]または[4]に記載の保護素子。
[6]前記厚肉部の前記第2方向の長さが、前記切断部の前記第2方向の長さに対して120%以上、160%以下の範囲内にある[5]に記載の保護素子。
[7]前記切断部が、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側に配置され、かつ平面視で前記凹状部材の前記凹部の内面に近接する位置に配置される[1]~[6]のいずれかに記載の保護素子。
【0010】
[8]前記ヒューズエレメントが、内層を低融点金属、外層を高融点金属とする積層体である[1]または[2]に記載の保護素子。
[9]前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる[8]に記載の保護素子。
[10]前記厚肉部の前記切断部の前記平面部分よりも厚みが厚い部分は、SnもしくはSnを主成分とする金属、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる[3]~[6]のいずれかに記載の保護素子。
[11]前記押圧手段がバネである[1]~[10]のいずれかに記載の保護素子。
[12]前記バネが、円錐バネであり、外径の小さい側を前記切断部側に向けて配置されている[11]に記載の保護素子。
【0011】
[13]前記可動部材の前記凸部は、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置に配置され、前記切断部が切断されることにより、前記凹部内に前記凸部が挿入される[1]~[12]のいずれかに記載の保護素子。
[14]前記第1端部に第1端子が電気的に接続され、前記第2端部に第2端子が電気的に接続されている[1]~[13]のいずれかに記載の保護素子。
【0012】
[15]前記ヒューズエレメントの前記押圧手段側もしくは前記凹状部材側に、前記切断部に接して配置もしくは近接する位置に配置された発熱部材を備える[1]~[14]のいずれかに記載の保護素子。
[16]前記発熱部材が、平面視で前記凹状部材の前記凹部の内側に配置されている[15]に記載の保護素子。
[17]前記発熱部材の前記第1方向の長さが、前記第1方向および前記第1方向と交差する前記第2方向と交差する、第3方向における前記凹部の長さよりも短い[15]または[16]に記載の保護素子。
[18]前記発熱部材が抵抗体を有し、前記抵抗体が前記発熱部材の前記切断部側に近接して配置されている[15]~[17]のいずれかに記載の保護素子。
[19]前記抵抗体が、前記第1方向と交差する前記第2方向に沿って前記ヒューズエレメントと接している、または前記発熱部材を通して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記ヒューズエレメントと接している[18]に記載の保護素子。
[20]前記発熱部材が、給電部材により第3端子、もしくは第3端子および第4端子と、電気的に接続され、前記給電部材を介した通電により前記抵抗体が発熱する[15]~[19]のいずれかに記載の保護素子。
【0013】
[21]少なくとも前記ヒューズエレメントと前記可動部材と前記凹状部材の前記凹部と前記押圧手段とが収容される複数の部材から成るケースを有し、前記押圧手段が前記可動部材と前記凹状部材とで前記切断部を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加えた状態で、前記ケース内に収容されている[1]~[20]のいずれかに記載の保護素子。
[22]前記ケースの一部材が、前記押圧手段の伸縮方向に対向する第1内壁面と第2内壁面と、前記第1内壁面と前記第2内壁面とを繋ぐ側壁面とが同一部材で一体形成された収容部を有し、前記ヒューズエレメントが切断されていない状態で、前記押圧手段より発生するケース内部の応力を前記第1内壁面と前記側壁面と前記第2内壁面とで鎹状に支え保持する[21]に記載の保護素子。
[23]前記凹状部材および前記ケースが、ナイロンまたはセラミックスからなる[21]または[22]に記載の保護素子。
【0014】
[24]前記切断部が、平面視で前記凹状部材の前記凹部内に配置され、かつ平面視で前記凹部の内面に近接する位置に配置され、前記可動部材は、平面視で前記凹部の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置であって、前記凸部は、前記切断部の一部と重なる位置に配置され、前記ヒューズエレメントの前記切断部が切断されることにより、前記凹部内に前記凸部が挿入されるとともに、前記ヒューズエレメントの一部が折れ曲がるように前記凹部内に収容される[1]~[23]のいずれかに記載の保護素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アーク放電の発生を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制でき、かつ温度環境によるヒューズエレメントの切断部の切断が起こりにくい保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る保護素子の外観を示す図面であり、(a)は平面図であって、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は斜視図である。
図2図2は、図1(a)のA-A’線断面図である。
図3図3は、図1(a)のB-B’線断面図である。
図4図4は、図1に示す保護素子のケースを外した状態の斜視図である。
図5図5は、図1に示す保護素子の分解斜視図である。
図6図6は、図1に示す保護素子で用いられるヒューズエレメントを示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のVI(b)-VI(b)’線断面図である。
図7図7は、図1に示す保護素子で用いられる発熱部材を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のVII(b)-VII(b)’線断面図である。
図8図8は、図1に示す保護素子で用いられる可動部材を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は下面図であり、(e)は平面側から見た斜視図であり、(f)は下面側から見た斜視図である。
図9図9は、図1に示す保護素子で用いられる凹状部材を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は下面図であり、(e)は斜視図である。
図10図10は、図1に示す保護素子で用いられる第1ケースおよび第2ケースを示す図面であり、(a)は平面図であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は下面図であり、図11(e)は斜視図である。
図11図11は、図1に示す保護素子において、ヒューズエレメントの切断部が切断された後の状態を示す図面であり、図2に対応する断面図である。
図12図12は、図1に示す保護素子において、ヒューズエレメントの切断部が切断された後の状態を示す図面であり、図3に対応する断面図である。
図13図13は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントの変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXIII(b)-XIII(b)’線断面図である。
図14図14は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントの別の変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXIV(b)-XIV(b)’線断面図である。
図15図15は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントのさらに別の変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXV(b)-XV(b)’線断面図である。
図16図16は、本発明に係る保護素子で用いられる発熱部材の変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXVI(b)-XVI(b)’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
図1図5は、本発明の一実施形態に係る保護素子100を示した模式図である。本実施形態の保護素子100は、平面視で略長方形である。以下の説明で用いる図面において、Xで示す方向は保護素子100の長手方向である。また、以下の説明で用いる図面において、Yで示す方向はX方向(第2方向)と直交する方向(第1方向)であり、Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向(第3方向)である。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護素子100の外観を示した図面である。図1の(a)は平面図であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は斜視図である。図2は、図1(a)のA-A’線断面図であり、図3は、図1(a)のB-B’線断面図である。図4は、保護素子100のケースを外した状態の斜視図である。図5は、保護素子100の分解斜視図である。
【0020】
本実施形態の保護素子100は、図1図5に示すように、切断部23を有するヒューズエレメント2と、発熱部材3と、可動部材4と、凹状部材5と、押圧手段6と、ケース7とを備えている。
【0021】
(ヒューズエレメント)
図6は、本実施形態の保護素子100で用いられるヒューズエレメント2を示す図面である。図6の(a)はヒューズエレメント2の平面図であり、(b)は(a)のVI(b)-VI(b)’線断面図である。図6に示すように、ヒューズエレメント2は、第1端部21と、第2端部22と、第1端部21と第2端部22との間に設けられた切断部23とを有している。第1端部21は、第1端子71と電気的に接続されている。第2端部22は、第2端子72と電気的に接続されている。ヒューズエレメント2は、第1端部21から第2端部22に向かう方向であるY方向(第1方向)に通電される。なお、保護素子100を使用する際は、ヒューズエレメント2の第1端部21から第2端部22に向けて通電してもよいし、第2端部22から第1端部21に向けて通電してもよい。
【0022】
ヒューズエレメント2は平面視で矩形であり、切断部23、第1端部21および第2端部22の幅が同じとされている。切断部23、第1端部21および第2端部22の幅が同じであることによって、ヒューズエレメント2の強度が向上し、冷熱サイクル、高温高湿、高温、低温等の温度環境による切断部23の切断が起こりにくくなる。
【0023】
ヒューズエレメント2は、軟化温度以上の温度において、切断部23が切断されるようにされている。ヒューズエレメント2の切断部23は軟化温度以上の温度において切断されることが予定されている切断予定部である。正常な状態では、切断部23は切断されず、ヒューズエレメント2は通電可能である。なお、本明細書において「軟化温度」とは、固相と液相とが混在あるいは共存する温度、あるいは温度範囲を意味する。軟化温度は、ヒューズエレメント2が外力により変形するくらい柔らかくなる温度あるいは温度帯(温度範囲)である。
【0024】
ヒューズエレメント2の切断部23は、平面部23aと貫通孔23bとを有する。平面部23aは、貫通孔や薄肉部が形成されていない部分である。貫通孔23bは電流が流れないため、切断部23は、切断部23以外の部分と比較して、単位面積当たりの通電量が大きくなる。このため、定格を超える電流が流れた場合、切断部23の発熱量は切断部23以外の部分と比較して高くなる。よって、切断部23は軟化しやすくなる。貫通孔23bの形状に特に制限はなく、例えば、円、楕円、多角形とすることができる。貫通孔23bの位置は、ヒューズエレメント2の端部と接触しない位置にあることが好ましい。貫通孔23bはX方向(第2方向)の中央に配置されていることが好ましい。貫通孔23bの最大径は、切断部23のX方向(第2方向)の長さの15%以上、25%以下の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
ヒューズエレメント2は、切断部23の貫通孔23b以外の少なくとも一部に、平面部23aよりも厚みが厚い厚肉部24を有する。平面部23aは、切断部23の貫通孔23bを除く部分である。厚肉部24の単位面積当たりの通電量は、切断部23と比較して小さくなる。このため、定格を超える電流が流れた場合、厚肉部24の発熱量は厚肉部24以外の部分と比較して低くなる。厚肉部24は、ヒューズエレメント2の切断部23以外の部分の熱を吸収して、切断部23以外の部分が軟化することを防止する機能を有する。厚肉部24の厚さは、切断部23の平面部23aの厚さに対して150%以上、250%以下の範囲内にあることが好ましい。厚肉部24のX方向(第2方向)の長さは、切断部23の第2方向の長さよりも長くしてもよい。この場合、厚肉部24のX方向(第2方向)の長さは、切断部23のX方向(第2方向)の長さに対して120%以上、160%以下の範囲内にあることが好ましい。切断部23と厚肉部24の最短距離は、1mm以上、3mm以下であることがより好ましい。本実施形態において、厚肉部24は、厚みが均一なヒューズエレメント2と金属箔24aとを張り付けることによって形成されている。
【0026】
ヒューズエレメント2は、単層体であってもよいし、複数の層を積層した積層体であってもよい。
ヒューズエレメント2が単層体の場合、その材料としては、合金を含む金属材料など、公知のヒューズエレメントに用いられる材料を用いることができる。具体的には、ヒューズエレメント2の材料として、Pb85%/Sn、Sn/Ag3%/Cu0.5%などの合金を例示できる。
【0027】
ヒューズエレメント2が積層体の場合、内層を低融点金属、外層を高融点金属とする積層体であることが好ましい。低融点金属としては、SnもしくはSnを主成分とする金属を用いることが好ましい。Snの融点は232℃であるため、Snを主成分とする金属は低融点であり、低温で柔らかくなる。例えば、Sn/Ag3%/Cu0.5%合金の固相線は217℃である。高融点金属としては、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属を用いることが好ましい。例えば、Agの融点は962℃であるため、Agを主成分とする金属からなる層は、低融点金属からなる層が柔らかくなる温度では剛性が維持される。なお、本明細書において、「主成分」とは、全成分のうちで最も質量含有率が高い成分のことをいう。
【0028】
厚肉部24の金属箔24aの材料としては、SnもしくはSnを主成分とする金属、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属を用いることができる。
【0029】
ヒューズエレメント2に接続している第1端子71および第2端子72はそれぞれ、外部端子孔71a、72aを備えている。外部端子孔71aおよび外部端子孔72aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。外部端子孔71aおよび外部端子孔72aは、平面視で略円形の貫通孔とされている。また、第1端子71および第2端子72はそれぞれ、ヒューズエレメント2と接続される側の端部に、ヒューズエレメント2に向かって両側に拡幅された鍔部71b、72bを有している。第1端子71および第2端子72が鍔部71b、72bを有する場合、ケース7の開口部71d、72dから第1端子71および第2端子72が抜けにくく、信頼性および耐久性の良好な保護素子100となる。第1端子71および第2端子72の厚みは特に制限はなく、例えば、0.3mm以上、4.0mm以下の範囲内とすることができる。なお、第1端子71および第2端子72の形状は、これに限定されるものではない。第1端子71および第2端子72は、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよい。また、第1端子71と第2端子72とは、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。
【0030】
第1端子71および第2端子72としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなるものを用いることができる。第1端子71および第2端子72の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子71と第2端子72とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0031】
(発熱部材)
発熱部材3は、通電によって発熱することにより、ヒューズエレメント2の切断部23を加熱して軟化させる機能を有する。定格を超える電流が流れること以外の異常が発生した場合は、発熱部材3を通電することにより、ヒューズエレメント2の切断部23を軟化させることができる。
【0032】
図7は、本実施形態の保護素子100で用いられている発熱部材3を示す図面である。図7の(a)は発熱部材3の平面図であり、(b)は(a)のVII(b)-VII(b)’線断面図である。
図7に示すように、発熱部材3は、絶縁基板31と、絶縁基板31のヒューズエレメント2側の表面に配置された伝熱部材32と、絶縁基板31のヒューズエレメント2とは反対側の表面に配置された抵抗体33と、抵抗体33を保護する保護層34と、第1給電部35aと、第2給電部35bとを有する。伝熱部材32および抵抗体33は、第1端部21から第2端部22に向かう方向であるY方向に直交する方向に延びた一対の帯状体とされている。第1端子71側の抵抗体33の長手方向の両端はそれぞれ、第1給電部35aと第2給電部35bとに電気的に接続している。第1給電部35aは、給電部材73cを介して、第3端子73と電気的に接続されている。第2給電部35bは、給電部材74cを介して、第4端子74と電気的に接続されている。保護層34は、抵抗体33と第1給電部35aおよび第2給電部35bとが接続している部分を除く抵抗体33の上に配置されていて、抵抗体33を保護する機能を有する。発熱部材3は、第1給電部35aから第2給電部35bに向かう方向であるX方向(第2方向)に通電される。なお、保護素子100を使用する際は、発熱部材3の第1給電部35aから第2給電部35bに向けて通電してもよいし、第2給電部35bから第1給電部35aに向けて通電してもよい。第2端子72側の抵抗体33の長手方向の両端にもそれぞれ第1給電部35aと第2給電部35bとに電気的に接続していてもよい。また、第2端子72側の抵抗体33は省略してもよい。
【0033】
絶縁基板31としては、絶縁材料からなる基板を用いることができる。絶縁材料の例としては、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアが挙げられる。保護層34の材料としては、例えば、ガラスを用いることができる。
【0034】
発熱部材3とヒューズエレメント2との接合方法としては特に制限はない。例えば、第1端子71側の伝熱部材32および第2端子72側の伝熱部材32の少なくとも一方とヒューズエレメント2とを接合材(不図示)によって接合してもよく、特に、少なくとも第2端子72側の伝熱部材32とヒューズエレメント2とを接合材(不図示)によって接合してもよい。接合材としては、はんだを用いることができる。
【0035】
伝熱部材32は、抵抗体33で発生した熱をヒューズエレメント2の切断部23に伝える機能を有する。伝熱部材32の材料としては、Ni、Au、AgもしくはCu、またはNi、Au、AgもしくはCuを主成分とする金属材料を用いることができる。
【0036】
抵抗体33は、通電によって発熱する。抵抗体33の材料としては、高抵抗の導電性材料を用いることができる。高抵抗の導電性材料の例としては、ニクロム、W、Mo、Ruなどの金属を含む材料が挙げられる。
【0037】
第1給電部35a、第2給電部35b、給電部材73c、74cの材料としては、低抵抗の導電性材料を用いることができる。低抵抗の導電性材料の例としては、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属が挙げられる。
【0038】
第3端子73および第4端子74は、それぞれ外部端子孔73a、外部端子孔74aおよび鍔部73b、74bを有していて、第1端子71および第2端子72と略同形とされている。ただし、第3端子73および第4端子74の形状は、これに限定されるものではなく、図示しない外部端子に係合可能な形状であればよい。第3端子73および第4端子74の形状は、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよい。また、第3端子73および第4端子74に用いられる材料としては、第1端子71および第2端子72と同様のものが挙げられる。
【0039】
本実施形態において、発熱部材3は、ヒューズエレメント2の切断部23に接して配置されている。ただし、発熱部材3の位置はこれに限定されるものではない。発熱部材3は、ヒューズエレメント2の切断部23に近接する位置に配置されていてもよい。切断部23に近接する位置とは、例えば、発熱部材3と切断部23との間の最短距離が1mm以下となる位置である。
【0040】
(可動部材)
可動部材4は、押圧手段6の押圧力を、ヒューズエレメント2の切断部23に負荷する機能を有する可動部材である。
【0041】
図8は、本実施形態の保護素子100で用いられている可動部材4を示す図面である。図8の(a)は平面図(押圧手段6側から見た図)であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は下面図(ヒューズエレメント2側から見た図)であり、(e)は平面側(押圧手段6側)から見た斜視図であり、(f)は下面側(ヒューズエレメント2側)から見た斜視図である。
【0042】
可動部材4は、平面視で略矩形の基部41を有している。基部41の上面(押圧手段6側の表面)には、押圧手段収納領域41aが設けられている。基部41の4つの側面のうち互いに対向する一対の側面にはそれぞれ、外方(X方向)に向かって延びる延長領域42が設けられている。一対の各延長領域42の外方にはそれぞれ、Z方向(第3方向)に向かって延びたスライド部材43が立設されている。スライド部材43は、可動部材4の縁部に沿う方向(Y方向)を長辺方向とする平面視で略長方形の柱状形状を有している。スライド部材43は、可動部材4を凹状部材5の所定の位置に移動させるためのガイドとして機能する。スライド部材43の高さ(Z方向の長さ)は、押圧手段6の形状に応じて適宜決定できる。
【0043】
基部41の下面(ヒューズエレメント2側の表面)側には、下面から突出した凸部44が設けられている。凸部44は、平面視で可動部材4の一対の延長領域42の間を繋ぐように帯状に設けられている。したがって、凸部44の長さL3は、可動部材4の基部41のX方向の幅と同じとされている(図8(d))。
【0044】
凸部44は、中央部44aと、中央部44aの両端に接続した端部44b、44bとを有している。中央部44aは、端部44b、44bと比較して高さが高くなっている。中央部44aは、発熱部材3の伝熱部材32の下側部分(ヒューズエレメント2の切断部23と接触する部分)と平面視で重なる位置に設けられていることが好ましい。端部44bはそれぞれ、発熱部材3の第1給電部35aおよび第2給電部35bの一方と平面視で重なる位置に設けられていることが好ましい。
【0045】
凸部44の幅D3(図8(d))は、スライド部材43の幅D2(図8(d))よりも幅が狭くなっている。凸部44の幅D3(図8(d))は、発熱部材3のY方向の幅D1(図7(b))よりも狭い。このことにより、押圧手段6による押圧が、可動部材4の凸部44と発熱部材3とを介して、ヒューズエレメント2の切断部23に、効率よく負荷される。
【0046】
凸部44の幅D3と、発熱部材3のY方向の幅D1との比(D3:D1)は、1:1.2~1:5であることが好ましく、1:1.5~1:4であることがより好ましい。D3とD1との比が上記範囲内である場合、D3がD1よりも十分に狭いため、押圧手段6による押圧力を切断部23に効率よく伝えることができる。また、D3とD1との比が上記範囲内である場合、D3が狭すぎて、凸部44のヒューズエレメント2側の面と、ヒューズエレメント2の凸部44側の面とが平行に配置されにくくなることがなく、好ましい。凸部44のヒューズエレメント2側の面と、ヒューズエレメント2の凸部44側の面とが平行に配置されている場合、押圧手段6による押圧力を切断部23に効率よく伝えることができる。
【0047】
凸部44の中央部44aの端部の位置は、スライド部材43の下端の位置とは略同じである。凸部44の高さは、凹状部材5における凹部57の深さよりも短い。
凹部57の深さに対する凸部44の高さの割合(凸部高さ/凹部深さ)は、0.1~0.8であることが好ましく、0.2~0.6であることがより好ましい。凸部高さ/凹部深さの割合が上記範囲内であると、凹部57内に入り込んだ凸部44によって、ヒューズエレメント2の切断された両端部間が、より確実に遮蔽される。その結果、ヒューズエレメント2の切断された両端部間の距離が長くなり、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続をより短時間で抑制できる。
【0048】
凸部44の中央部44aの長さL2(図8(d))は、発熱部材3の長さ(X方向の幅)L1(図7(a))よりも狭くなっている。このことにより、押圧手段6による押圧が、可動部材4の凸部44と発熱部材3とを介して、ヒューズエレメント2の切断部23に、効率よく負荷される。凸部44の中央部44aの長さL2は、押圧手段6による押圧を切断部23に均一に負荷できるため、切断部23におけるX方向(第2方向)の幅以上の寸法であることが好ましい。
【0049】
可動部材4は、ヒューズエレメント2の軟化温度においても硬い状態を維持できる絶縁材料、あるいは実質的に変形しない絶縁材料からなる。具体的には、可動部材4の材料としては、セラミックス材料、ガラス転移温度の高い樹脂材料などを用いることができる。
【0050】
セラミックス材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニアなどを例示でき、アルミナなどの熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。可動部材4がセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
【0051】
ガラス転移温度の高い樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などのエンジニアリングプラスチック、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などを例示できる。樹脂材料の中でも、ナイロン系樹脂は、耐トラッキング性(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が高く、好ましい。ナイロン系樹脂の中でも、特に、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tを用いることが好ましい。ナイロン系樹脂としては、耐トラッキング性が、250V以上であるものを用いることが好ましく、600V以上のものを用いることがより好ましい。耐トラッキング性は、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0052】
可動部材4は、例えば、セラミックス材料などの樹脂以外の材料で作製し、凸部44の一部をナイロン系樹脂で被覆してもよい。
【0053】
(凹状部材)
図9は、本実施形態の保護素子100で用いられている凹状部材5を示す図面である。図9の(a)は平面図(ヒューズエレメント2側からみた図)であり、(b)はX方向から見た側面図であり、(c)はY方向から見た側面図であり、(d)は下面図であり、(e)は斜視図である。
【0054】
凹状部材5は、X方向を長辺方向とする平面視で略長方形の形状を有している。
凹状部材5の上面(ヒューズエレメント2側の表面)側には、端子設置領域51、52、53、54と、凹部57と、第1ガイド部材55a、55bと、第2ガイド部材56a、56bとが設けられている。
端子設置領域51、52、53、54は、略同型であり、平面視で略長方形の凹状部材5の各辺に沿って帯状に設けられた周囲の高さよりも低い平面からなる。
【0055】
端子設置領域51には、ヒューズエレメント2の第1端部21と第1端子71との結合部が載置される。端子設置領域51と周囲の高さとの差は、第1端子71の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域52には、ヒューズエレメント2の第2端部22と第2端子72との結合部が載置される。端子設置領域52と周囲の高さとの差は、第2端子72の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域53には、第3端子73の給電部材73cとの結合部が載置される。端子設置領域53と周囲の高さとの差は、第3端子73の厚みに対応する寸法とされている。端子設置領域54には、第4端子74の給電部材74cとの結合部が載置される。端子設置領域54と周囲の高さとの差は、第4端子74の厚みに対応する寸法とされている。
【0056】
第1ガイド部材55a、55bおよび第2ガイド部材56a、56bは、平面視で端子設置領域51、52、53、54に囲まれた領域の内側に、端子設置領域53または端子設置領域54に接して配置されている。第1ガイド部材55a、55bは、平面視で略L字型柱状である。第2ガイド部材56a、56bは、平面視で略矩形柱状である。第1ガイド部材55a、55bはそれぞれ、凹状部材5の長辺に沿った方向(X方向)に間隔をあけて配置されている。第2ガイド部材56a、56bはそれぞれ、第1ガイド部材55a、55bと間隔をあけて、凹状部材5の長辺に沿った方向(X方向)に間隔をあけて配置されている。
【0057】
第1ガイド部材55a、55bおよび第2ガイド部材56a、56bの高さ(上面からZ方向の長さ)は、略同じとされている。第1ガイド部材55a、55bおよび第2ガイド部材56a、56bの高さは、ケース7の形状に応じて適宜決定できる。
【0058】
凹部57は、平面視で凹状部材5の中央部に設けられている。凹部57は、平面視で第1ガイド部材55a、55bおよび第2ガイド部材56a、56bをそれぞれ角部とする四角形のエリア内にある。第1ガイド部材55aのL字となるように削られた部分と第2ガイド部材56aとの間の空間は、可動部材4のスライド部材43のレール58aを形成する。同様に、第1ガイド部材55bのL字となるように削られた部分と第2ガイド部材56bとの間の空間は、可動部材4のスライド部材43のレール58bを形成する。レール58a、58bのY方向の幅は、凹部57の幅広部57aのY方向の幅D4と同じである。
【0059】
凹部57は、幅の広い幅広部57aと、幅広部57aを挟むように配置され、幅広部57aよりも第1ガイド部材55a、55b側のみ幅が狭い幅狭部57b、57cとを有する。幅狭部57bは、端子設置領域53と第1ガイド部材55aと第2ガイド部材56aと接している(図9(a))。幅狭部57cは、端子設置領域54と第1ガイド部材55bと第2ガイド部材56bと接している。
【0060】
凹部57の幅広部57aにおけるY方向の幅D4(図9(a))は、可動部材4のスライド部材43の幅D2(図8(d))よりも広い。また、凹部57の幅広部57aにおけるX方向の長さL5(図9(a))は、可動部材4のX方向の長さL4(図8(d))より長く、かつ発熱部材3のX方向の長さL1(図7(a))よりも長い。また、平面視で凹部57の幅広部57a内の位置に、ヒューズエレメント2の切断部23、発熱部材3、可動部材4の凸部44が配置されている。すなわち、平面視で凹部57の内側のエリアの少なくとも一部と外周が重なる位置であって、切断部23の一部と重なる位置に凸部44が配置されている。したがって、本実施形態の保護素子100では、切断部23が切断されることにより、凹部57の幅広部57a内に、可動部材4の凸部44が挿入されるとともに、発熱部材3が収容される。
【0061】
凹部57の内壁面57dに近接する位置には、ヒューズエレメント2の切断部23における第1端部21側の縁部が配置される。凹部57の幅広部57aにおけるX方向の長さL5が、切断部23におけるX方向(第2方向)の幅よりも長い。このため、切断部23が切断されると、切断部23で分断されたヒューズエレメント2の一部が折れ曲がるように凹部57内に収容される。
【0062】
凹部57の内壁面57dと、切断部23における第1端部21側の縁部とが、近接する位置に配置されている場合の両者間の距離の目安は、例えば、0.1mm以上、0.5mm以下の範囲内であり、好ましくは0.2m以上、0.4mm以下の範囲内である。両者が近接する位置に配置されている場合、凹部57の幅広部57a内に、可動部材4の凸部44が挿入される際に、切断部23における第1端部21側の縁部が、凹部57の内壁面57dに接触しつつ差し込まれる。その結果、切断部23における第1端部21側の縁部が、切断されやすく、好ましい。平面視で凹部57の内壁面57dと、切断部23における第1端部21側の縁部との間の距離が0.2mm以上であると、切断部23の熱が凹部57に伝わってヒューズエレメント2の軟化を妨げることを防止でき、より好ましい。
【0063】
また、凹部57の幅狭部57b、57cにおけるY方向の幅D5(図9(a))は、給電部材73c、74c(図7(a)参照)のY方向の幅よりも広い。しかも、凹部57全体のX方向の長さL6(図9(a))は、発熱部材3の長さ(X方向の幅)L1(図7(a))よりも長い。このため、切断部23が切断されることにより、切断部23の切断に伴って切断される給電部材73c、74cにおける切断部23と切り離された部分が、凹部57の縁部に沿って折れ曲がるように凹部57内に収容される。
【0064】
また、発熱部材3のY方向の幅(Y方向の長さ)D1(図7(b))は、凹部57の深さ(Z方向の長さ)の寸法よりも短い。このため、切断部23が切断されても発熱部材3は折れ曲がらず、全体形状を維持したまま凹部57内に収容される。
【0065】
凹状部材5の下面59b側の中央部には、凹状部材5の長さ方向に帯状に突起部59が配置されている。突起部59の頂部59aは、ケース7から露出される。
【0066】
凹状部材5の材料としては、可動部材4と同様のものを用いることができる。凹状部材5の材料としては、低コストおよび耐トラッキング性の観点から、ナイロン系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることが好ましい。凹状部材5の材料と可動部材4の材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
凹状部材5が、セラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
凹状部材5は、セラミックス材料などの樹脂以外の材料で作製し、凹部57の一部をナイロン系樹脂で被覆してもよい。
【0067】
(押圧手段)
押圧手段6は、可動部材4と凹状部材5とが切断部23を挟み込む方向(Z方向)に、相対的な距離を縮めるように力を加えるものである。本実施形態の保護素子100における押圧手段6は、可動部材4の可動部材4と凹状部材5との切断部23を挟み込む方向(Z方向)の相対的な距離を縮めるように力を加えるものである。
【0068】
押圧手段6としては、例えば、バネ、ゴムなど、弾性力を付与できる公知の手段を用いることができる。
本実施形態の保護素子100においては、押圧手段6としてバネが用いられている。バネ(押圧手段6)は、可動部材4の押圧手段収納領域41a上に載置され、縮められた状態で保持されている。
【0069】
押圧手段6として用いるバネの材料としては、公知のものを用いることができる。
押圧手段6として用いられるバネとしては、円筒状のものを用いてもよいし、円錐状のものを用いてもよい。押圧手段6として円錐状のバネを用いる場合、外径の小さい側を切断部23側に向けて配置してもよいし、外径の大きい側を切断部23側に向けて配置してもよい。
【0070】
押圧手段6として用いられるバネとしては、収縮長を短くできるためコイルバネを用いることが好ましく、円錐バネを用いることがより好ましい。また、押圧手段6として円錐バネを用いる場合、外径の小さい側を切断部23側に向けて配置することが好ましい。このことにより、例えば、バネが金属などの導電性材料で形成されている場合に、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続をより効果的に抑制できる。これは、アーク放電の発生場所と、バネを形成している導電性材料との距離が確保されやすくなるためである。また、押圧手段6として円錐状のバネを用い、外径の大きい側を切断部23側に向けて配置した場合、押圧手段6から可動部材4により均等に弾性力を付与できるので好ましい。
【0071】
(ケース)
本実施形態の保護素子100におけるケース7は、押圧手段6と可動部材4とヒューズエレメント2と凹状部材5の凹部57とを収容する。ケース7は、第1ケース7aと、第1ケース7aと対向配置されて接合された第2ケース7bの2つの部材からなる。第1ケース7aと第2ケース7bとは同じものである。
【0072】
図10は、本実施形態の保護素子100で用いられる第1ケース7aおよび第2ケース7bを示す図面である。図10(a)は平面図であり、図10(b)はX方向から見た側面図であり、図10(c)はY方向から見た側面図であり、図10(d)は下面図であり、図10(e)は斜視図である。
【0073】
第1ケース7aおよび第2ケース7bはそれぞれ、X方向の面の長さよりもY方向の面の長さが短い略直方体形状を有している。第1ケース7a内および第2ケース7b内にはそれぞれ、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合することにより一体化される収容部75が形成されている。収容部75は、押圧手段6を縮められた状態に保持する保持枠として機能する。すなわち、押圧手段6は、可動部材4と凹状部材5とでヒューズエレメント2の切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加えた状態で、ケース7内に収容されている。第1ケース7aおよび第2ケース7bにおいては、X方向に延びる2つの面のうち一方の面が、対向配置される面であり、収容部75の開口部とされている。
【0074】
第1ケース7aおよび第2ケース7bの有する収容部75は、それぞれ第1内壁面7cと第2内壁面7dと側壁面76とを有する。各収容部75における第1内壁面7cと第2内壁面7dと側壁面76とは、同一部材で一体形成されており、第1内壁面7cと第2内壁面7dと側壁面76は、一体化されている。第1ケース7aおよび第2ケース7bはそれぞれ、ヒューズエレメント2が切断されていない状態で、押圧手段6より発生するケース7内部の応力を、第1内壁面7cと側壁面76と第2内壁面7dとで、可動部材4とヒューズエレメント2を介して鎹状に支え保持する。本実施形態の保護素子100は発熱部材3を備えているので、第1ケース7aおよび第2ケース7bはそれぞれ、ヒューズエレメント2が切断されていない状態で、押圧手段6より発生するケース7内部の応力を、第1内壁面7cと側壁面76と第2内壁面7dとで、可動部材4と発熱部材3とヒューズエレメント2を介して鎹状に支え保持する。
【0075】
第1内壁面7cと、第2内壁面7dとは、押圧手段6の伸縮方向(Z方向)に対向して配置されている。第1内壁面7cは、収容部75の天面を形成している。第1内壁面7cは、押圧手段6に接して配置される。第2内壁面7dは、収容部75の底面を形成している。第2内壁面7dは、凹状部材5の下面59bに接して配置される。
【0076】
第1内壁面7cおよび第2内壁面7dは、一体化された側壁面76とともに枠状構造を形成し、押圧手段6を縮められた状態に保持する。そして、第1ケース7aと第2ケース7bとは、段差77、78に、接着剤を塗布して対向配置されることによって接合される。このため、本実施形態の保護素子100では、例えば、押圧手段6の伸縮方向(Z方向)に開口する開口部を有し、接着剤を用いて開口部に蓋を接合するケースを用いる場合のように、縮められた状態の押圧手段6からの応力が接合面にかかることがなく、押圧手段6を縮められた状態で安定して保持できるとともに、押圧手段6の押圧力を長期間保持できる。
【0077】
側壁面76は、第1内壁面7cと第2内壁面7dとを押圧手段6の伸縮方向(Z方向)に繋ぐものであり、収容部75の側面を形成している。側壁面76は、X方向に延在する第1側壁面7hと、Y方向に延在して対向配置された第2側壁面7fおよび第3側壁面7gとを有する。
【0078】
第1側壁面7hのX方向中央における高さ方向(Z方向)中心部には、X方向に細長い略長円形状の貫通孔からなる開口部71d(または72d)が設けられている。開口部71d(または72d)には、第1端子71(または第2端子72)が貫通される。したがって、開口部71d(または72d)の幅および長さは、第1端子71(または第2端子72)のケース7から露出される部分の形状に応じて決定される。
【0079】
第2側壁面7fの縁部における高さ方向(Z方向)の中央には、Y方向に細長いスリット73dが設けられている。第3側壁面7gの縁部における高さ方向(Z方向)の中央には、Y方向に細長いスリット74dが設けられている。
【0080】
第1ケース7aの第2側壁面7fの縁部は、第2ケース7bの第3側壁面7gの縁部と接合されることにより一体化され、ケース7のY方向に延びる一方の側面を形成する。また、第1ケース7aの第3側壁面7gの縁部は、第2ケース7bの第2側壁面7fの縁部と接合されることにより一体化され、ケース7のY方向に延びる他方の側面を形成する。
第1ケース7aと第2ケース7bとが接合されることにより、スリット74dとスリット73dとが連結される。このことにより、ケース7のY方向に延びる2つの側面には、それぞれY方向に細長い略長円形状の貫通孔からなる開口部が形成される。形成された開口部には、第3端子73(または第4端子74)が貫通される。したがって、スリット74dおよびスリット73dの幅および長さは、第3端子73(または第4端子74)のケース7から露出される部分の形状に応じて決定される。
【0081】
第1内壁面7cの縁部におけるX方向中心位置から、第3側壁面7gにおけるスリット74dよりも第1内壁面7c側の縁部は、厚みが厚くなっており、外面の延在面との段差78が形成されている。第1内壁面7cの縁部におけるX方向中心位置から、第2側壁面7fにおけるスリット73dよりも第1内壁面7c側の縁部は、厚みが薄くなっており、内面の延在面に段差77が形成されている。第1内壁面7cおよび側壁面76の縁部に連続して形成されている段差77、78は、第1ケース7aと第2ケース7bとの接合面である。段差77、78は、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する際の位置ずれを防止するとともに、接合面を増加させて接合強度を向上させる。
【0082】
第1内壁面7cと第2内壁面7dと側壁面76の形状は、縮められた状態の押圧手段6と可動部材4とヒューズエレメント2と凹状部材5とが積層された形状に対応する形状とされている。
本実施形態におけるケース7は、第1ケース7aと第2ケース7bとを対向配置して接合して用いられる。ケース7内には、押圧手段6が縮められた状態で収容される。
【0083】
ケース7の材料としては、可動部材4と同様のものを用いることができる。ケース7の材料と可動部材4の材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ケース7がセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
【0084】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子100の製造方法について説明する。
先ず、ヒューズエレメント2、発熱部材3、第1端子71、第2端子72、第3端子73、第4端子74を用意する。ヒューズエレメント2の厚肉部24と発熱部材3の伝熱部材32とを、ハンダ付けすることにより接続する。次いで、第1端子71上に、ヒューズエレメント2の第1端部21をハンダ付けすることにより接続する。また、第2端子72上に、第2端部22をハンダ付けすることにより接続する。本実施形態においてハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点の観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。
第1端部21、第2端部22と、第1端子71、第2端子72とは、溶接による接合によって接続されていてもよいし、リベット接合、ネジ接合などの機械的接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0085】
次に、給電部材73c、74cを用意する。そして、第3端子73上に、給電部材73cをハンダ付けすることにより接続する。また、第4端子74上に、給電部材74cをハンダ付けすることにより接続する。次に、発熱部材3の上面に配置された第1給電部35aおよび第2給電部35bと給電部材73c、74cとを、例えば、ハンダ付けする方法により接続する。給電部材73c、74cと第3端子73および第4端子74とは、溶接による接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0086】
次に、凹状部材5を用意する。そして、凹状部材5の凹部57上に発熱部材3を載置するとともに、端子設置領域51に第1端子71を、端子設置領域52に第2端子72を、端子設置領域53に第3端子73を、端子設置領域54に第4端子74をそれぞれ設置する。
【0087】
次に、可動部材4を用意する。そして、凸部44を発熱部材3側に向けて、発熱部材3上に可動部材4を設置する。このとき、凹状部材5の第1ガイド部材55a、55bと第2ガイド部材56a、56bの間に、可動部材4のスライド部材43を設置する。
【0088】
次に、押圧手段6を用意する。そして、可動部材4の押圧手段収納領域41a内に、押圧手段6を設置する。円錐状のバネは、外径の小さい側を切断部23側に向けて、押圧手段収納領域41a内に設置する。
【0089】
次に、第1ケース7aと第2ケース7bとを用意する。そして、第1ケース7aの開口部71dに、第1端子71を貫通させる。また、第1ケース7aと第2ケース7bとを対向配置させて、第2ケース7bの開口部72dに、第2端子72を貫通させる。
【0090】
その後、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する。第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する際には、第1ケース7aの第1内壁面7cおよび側壁面76の縁部に連続して形成された段差77と、第2ケース7bの第1内壁面7cおよび側壁面76の縁部に連続して形成され段差78とを接合するとともに、第2ケース7bに形成された段差77と、第1ケース7aに形成された段差78とを接合する。
【0091】
第1ケース7aと第2ケース7bとの接合には、必要に応じて接着剤を用いることができる。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。
また、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する際には、必要に応じて、第1ケース7aと凹状部材5、および/または第2ケース7bと凹状部材5を、接着剤を用いて接合してもよい。
【0092】
第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する際には、図2に示すように、第1ケース7aおよび第2ケース7bの第2内壁面7dに接するように、凹状部材5の下面59bを配置する。また、図2に示すように、第1ケース7aおよび第2ケース7bの第1内壁面7cに接するように、縮められた状態で押圧手段6を配置する。このことにより、ケース7の収容部75内に、縮められた状態の押圧手段6が収容される。
【0093】
また、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合する際には、対向配置された第1ケース7aのスリット73dと、第2ケース7bのスリット74dとに、第3端子73(または第4端子74)を挿入する。その結果、第1ケース7aと第2ケース7bとを接合することにより、スリット74dとスリット73dとが連結して形成された開口部から、第3端子73(または第4端子74)の一部が、ケース7の外部に露出された状態となる。
以上の工程により、本実施形態の保護素子100が得られる。
【0094】
(保護素子の動作)
次に、本実施形態の保護素子100の動作について説明する。保護素子100の第1端子71および第2端子72は、電子機器(例えば、電池パック)の通電経路に接続され、第3端子73および第4端子74は、電子機器の電流制御回路に接続されている場合を例にとって説明する。
【0095】
電気機器の通電経路に定格電流を越えた電流が流れた場合は、保護素子100のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れる。この場合、ヒューズエレメント2の切断部23は、切断部23以外の部分よりも発熱量が多い。このため、切断部23は切断部以外の部分よりも早く軟化温度以上に到達し、軟化する。そして、切断部23が軟化することによって、可動部材4の凸部44と発熱部材3とを介して負荷される押圧手段6からの押圧力によって切断部23は切断され、電気機器の通電経路への通電が遮断される。したがって、保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断時に発生する熱量が少なくて済み、切断部23の切断時に発生するアーク放電自体を低減できる。
【0096】
電気機器の通電経路に定格電流を越えた電流が流れること以外の異常が生じた場合は、電流制御回路によって、第3端子73および第4端子74の間に電流が供給される。この電流により、抵抗体33が発熱し、その熱が伝熱部材32を介してヒューズエレメント2の切断部23に伝わることによって、切断部23が軟化する。そして、切断部23が軟化することによって、電気機器の通電経路に定格電流を越えた電流が流れた場合と同様に、可動部材4の凸部44と発熱部材3とを介して負荷される押圧手段6からの押圧力によって切断部23は切断され、電気機器の通電経路への通電が遮断される。
【0097】
図11および図12は、ヒューズエレメント2の切断部23が切断された後の状態を示す図面である。図11は、図2に対応する断面図であり、ヒューズエレメント2の切断部23が切断された保護素子100を、図1(a)に示すA-A’線に沿って切断した断面図である。図12は、図3に対応する断面図であり、ヒューズエレメント2の切断部23が切断された保護素子100を、図1(a)に示すB-B’線に沿って切断した断面図である。
【0098】
本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断部23が切断されると、図11および図12に示すように、ヒューズエレメント2が凹状部材5の凹部57の縁部に沿って折れ曲がり、発熱部材3とともに凹状部材5の凹部57内に収容される。したがって、ヒューズエレメント2を介した通電経路は、物理的に確実に遮断される。また、ヒューズエレメント2が凹部57の縁部に沿って折れ曲がることによって、ヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。その結果、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。したがって、本実施形態の保護素子100は、例えば、高電圧かつ大電流の電流経路に設置された場合であっても、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続を抑制できる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の切断部23を挟み込むように、可動部材4および凹状部材5が対向配置され、可動部材4と凹状部材5との切断部23を挟み込む方向の相対的な距離を縮めるように力を加える押圧手段6が備えられている。このため、ヒューズエレメント2の軟化温度以上の温度において切断部23が切断される。その結果、本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の切断時に発生する熱量が少なくて済み、切断時に発生するアーク放電を低減できる。また、本実施形態の保護素子100では、押圧手段6の押圧力によって、切断されたヒューズエレメント2が可動部材4とともに凹状部材5に収容される。このことにより、切断されたヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。その結果、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。
【0100】
以上のような構成とされた本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の切断部23が貫通孔23bを有するので、ヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れたときは、切断部23が切断部以外の部分と比較して、軟化温度以上に到達しやすく、軟化しやすい。このため、定格電流を越えた電流が流れてから、押圧手段6からの押圧力によって切断部23が切断されるまでの時間を短くできる。よって、本実施形態の保護素子100によれば、ヒューズエレメント2の切断部23が切断されたときのアーク放電の発生を低減できるとともに、発生したアーク放電の継続を抑制することができる。また、ヒューズエレメント2の切断部23は、切断部23以外の部分と比較して幅を狭くする必要がないので、温度環境によるヒューズエレメント2の切断部23の切断が起こりにくい。
【0101】
本実施形態の保護素子100において、貫通孔23bの最大径が、切断部23のY方向(第1方向)に直交するX方向(第2方向)の長さの15%以上、25%以下の範囲内にある場合は、定格電流を越えた電流が流れてから切断部23が切断されるまでの時間を確実に短くすることができ、かつヒューズエレメント2の切断部23の強度を実用上問題がない範囲に維持することができる。
【0102】
本実施形態の保護素子100において、ヒューズエレメント2は、切断部23以外の少なくとも一部に、切断部23の平面部23aよりも厚みが厚い厚肉部24を有する場合は、切断部23以外の温度が上昇しにくくなるので、ヒューズエレメント2の切断部23が切断したときに、アーク放電がより発生しにくくなる。
【0103】
本実施形態の保護素子100において、厚肉部24の厚さは、切断部23の平面部23aの厚さに対して150%以上、250%以下の範囲内にある場合は、切断部23以外の温度がより確実に上昇しにくくなるので、ヒューズエレメント2の切断部23が切断したときに、アーク放電がより確実に発生しにくくなる。
【0104】
本実施形態の保護素子100において、厚肉部24のY方向(第1方向)に直交するX方向(第2方向の長さ)が、切断部23のX方向の長さよりも長い場合は、厚肉部24で吸収できる熱量が多くなり、切断部23以外の温度がさらに上昇しにくくなるので、ヒューズエレメント2をその切断部23でより確実に切断することができる。
【0105】
本実施形態の保護素子100において、厚肉部24のY方向(第2方向)の長さが、切断部23のY方向の長さに対して120%以上、160%以下の範囲内にある場合は、厚肉部24で吸収できる熱量が確実に多くなり、切断部23以外の温度がさらに確実に上昇しにくくなるので、ヒューズエレメント2をその切断部23でさらに切断することができる。
【0106】
本実施形態の保護素子100において、ヒューズエレメント2の切断部23が、平面視で凹状部材5の凹部57の内側に配置され、かつ平面視で凹状部材5の凹部57の内面に近接する位置に配置される場合は、ヒューズエレメント2は凹状部材5の凹部57の縁部に沿って折れ曲がるため、ヒューズエレメント2の切断面同士の距離が、急速に広げられる。このため、ヒューズエレメント2の切断時にアーク放電が発生しても、アーク放電は速やかに低減される。
【0107】
本実施形態の保護素子100において、発熱部材3を有する場合は、通電経路に定格電流を越えた電流が流れること以外の異常が生じた場合でも、発熱部材3を通電することにより、ヒューズエレメント2を切断部23で切断することができる。
【0108】
(変形例)
本実施形態の保護素子100において、ヒューズエレメント2の切断部23には1個の貫通孔23bが設けられているが、切断部23の貫通孔23bの個数は、これに限定されるものではない。また、貫通孔23bの代わりにあるいは貫通孔23bと共に、薄肉部を設けてもよい。さらに、厚肉部24をヒューズエレメント2と金属箔24aとを張り付けることによって形成する代わりに、ヒューズエレメント2の厚さを部分的に厚くしてもよい。
【0109】
図13は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントの変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXIII(b)-XIII(b)’線断面図である。
図13に示すヒューズエレメント2aは、切断部23に2個の貫通孔23bが設けられていること以外は、保護素子100で用いられているヒューズエレメント2と同じである。このため、保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0110】
2個の貫通孔23bは、X方向(第2方向)に方向にそって、配置されている。貫通孔23bは3個以上であってもよい。貫通孔23bが3個以上の場合は、貫通孔23bは等間隔に配置されていることが好ましい。貫通孔23bが2個以上の場合は、貫通孔の最大径は、各貫通孔23bの最大径の合計値である。本実施形態の保護素子100において、貫通孔23bの数は、特に制限はないが、1個以上、3個以下の範囲内にあることが好ましい。
【0111】
図14は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントの変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXIV(b)-XIV(b)’線断面図である。
図14に示すヒューズエレメント2bは、切断部23に薄肉部23cが設けられていること以外は、保護素子100で用いられているヒューズエレメント2と同じである。このため、保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0112】
薄肉部23cは、厚さが平面部23aよりも薄い部分である。薄肉部23cの厚さは、平面部23aの厚さに対して、10%以上40%以下の範囲内にあることが好ましい。ヒューズエレメント2bにおいて、薄肉部23cは上面(金属箔24aが張り付けられている側と反対側の表面)を削ることによって形成されている。薄肉部23cの形成方法は、これに限定されるものではない。薄肉部23cは下側面(金属箔24aが張り付けられている側の表面)を削ることによって形成してもよい。
【0113】
図15は、本発明に係る保護素子で用いられるヒューズエレメントの変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXV(b)-XV(b)’線断面図である。
図15に示すヒューズエレメント2cは、ヒューズエレメントの一部の厚さを厚くした拡張部24bを設けることによって厚肉部24が設けられていること以外は、保護素子100で用いられているヒューズエレメント2と同じである。このため、保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0114】
拡張部24bは、ヒューズエレメント2cのX方向(幅方向)における長さも大きくなっている。ヒューズエレメント2cは、例えば、金型を用いたプレス成形によって製造することができる。
【0115】
本実施形態の保護素子100において、発熱部材3は絶縁基板31の上面(可動部材4側の表面)に、抵抗体33と、第1給電部35aと、第2給電部35bとが配置されているが、抵抗体33と、第1給電部35aと、第2給電部35bの配置位置は、これに限定されるものではない。例えば、絶縁基板31の下面(ヒューズエレメント2側の表面)に抵抗体33を配置して、絶縁基板31の上面に、第1給電部35aと第2給電部35bとを配置してもよい。また、本実施形態の保護素子100では、発熱部材3はヒューズエレメント2の上面(可動部材4側の表面)に配置されているが、発熱部材3をヒューズエレメント2の下面(凹状部材5側の表面)に配置してもよい。
【0116】
図16は、本発明に係る保護素子で用いられる発熱部材の変形例を示す図面であって、(a)は平面図であり、(b)は、(a)のXVI(b)-XVI(b)’線断面図である。
図16に示す発熱部材3aは、絶縁基板31の下面に抵抗体33が配置され、絶縁基板31の上面に、第1給電部35aと第2給電部35bとが配置されていること以外は、保護素子100で用いられている発熱部材3と同じである。このため、保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0117】
発熱部材3aでは、抵抗体33と第1給電部35aおよび抵抗体33と第2給電部35bはそれぞれ、絶縁基板31に形成されたスルーホール(不図示)を介して、電気的に接続している。
【符号の説明】
【0118】
2、2a、2b、2c ヒューズエレメント
21 第1端部
22 第2端部
23 切断部
23a 平面部
23b 貫通孔
23c 薄肉部
24 厚肉部
24a 金属箔
24b 拡張部
3、3a 発熱部材
31 絶縁基板
32 伝熱部材
33 抵抗体
34 保護層
35a 第1給電部
35b 第2給電部
4 可動部材
41 基部
41a 押圧手段収納領域
42 延長領域
43 スライド部材
44 凸部
44a 中央部
44b 端部
5 凹状部材
51、52、53、54 端子設置領域
55a、55b 第1ガイド部材
56a、56b 第2ガイド部材
56b 第2ガイド部材
57 凹部
57a 幅広部
57b、57c 幅狭部
57d 内壁面
58a、58b レール
59 突起部
59a 頂部
59b 下面
6 押圧手段
7 ケース
7a 第1ケース
7b 第2ケース
7c 第1内壁面
7d 第2内壁面
7f 第2側壁面
7g 第3側壁面
7h 第1側壁面
71 第1端子
72 第2端子
73 第3端子
74 第4端子
71a、72a、73a、74a 外部端子孔
71b、72b、73b、74b 鍔部
71d、72d 開口部
73c、74c 給電部材
73d、74d スリット
75 収容部
76 側壁面
77 段差
78 段差
100 保護素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16