(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159594
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】対象表面の除菌方法
(51)【国際特許分類】
C11D 3/48 20060101AFI20231025BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20231025BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20231025BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20231025BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20231025BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231025BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20231025BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231025BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20231025BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D17/06
C11D1/75
C11D1/90
C11D1/62
C11D3/20
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
A01N33/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069373
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】土屋 聖人
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC15
4H003AD04
4H003AE05
4H003BA19
4H003DA05
4H003EB04
4H003EB06
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA28
4H003FA34
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB04
4H011BC03
4H011BC04
4H011BC08
4H011BC19
4H011DA07
4H011DA13
4H011DA14
4H011DH04
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】低基材損傷性の成分を含有する除菌剤組成物を対象表面に接触後、短時間(例えば1秒~3分)で乾燥させることで、除菌効果、仕上がり性に優れる、対象表面の除菌方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分を0.1質量%以上3質量%以下、下記(b)成分を0.0001質量%以上1質量%以下、下記(c)成分を0.1質量%以上5質量%以下、水を80質量%以上、含有する除菌剤組成物を、対象表面に対して、(a)成分と(b)成分の合計残留量が0.01mg/cm2以上0.5mg/cm2以下となるように接触させる、対象表面の除菌方法。
(a)成分:界面活性剤(但し、(b)成分は除く)
(b)成分:除菌剤(但し、(c)成分は除く)
(c)成分:揮発性溶剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.1質量%以上3質量%以下、下記(b)成分を0.0001質量%以上1質量%以下、下記(c)成分を0.1質量%以上5質量%以下、水を80質量%以上、含有する除菌剤組成物を、対象表面に対して、(a)成分と(b)成分の合計残留量が0.01mg/cm2以上0.5mg/cm2以下となるように接触させる、対象表面の除菌方法。
(a)成分:界面活性剤(但し、(b)成分は除く)
(b)成分:除菌剤(但し、(c)成分は除く)
(c)成分:揮発性溶剤
【請求項2】
前記除菌剤組成物を対象表面に接触後、30秒以内で乾燥させる、請求項1に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項3】
前記除菌剤組成物と対象表面の接触を、前記除菌剤組成物を基体に含侵させたもので対象表面をふき取ることで行う、請求項1又は2に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項4】
前記基体が、セルロース系繊維、変性セルロース繊維、合成繊維、及びこれらの二種以上の混合物から選ばれる繊維状材料から構成される繊維構造体である、請求項3に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項5】
前記基体が、排水処理可能な水溶性繊維である、請求項3又は4に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項6】
(a)成分が、(a1)両性界面活性剤(以下、(a1)成分という)、及び(a2)非イオン界面活性剤(以下、(a1)成分という)から選ばれる1種以上の界面活性剤である、請求項1~5の何れか1項に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項7】
(a1)成分が、アミンオキシド型界面活性剤、及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項6に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項8】
(a2)成分が、アルキルグリコシド型界面活性剤、アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項6又は7に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項9】
(b)成分が、脂肪族第四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、塩酸アルキルジ(アミノエチル)グリシン、ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシン、ポリヘキサメチレンビグアナイド、及び、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、及び水溶性銀から選ばれる1種以上の除菌剤である、請求項1~8の何れか1項に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項10】
(c)成分が、エタノール、イソプロピルアルコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1~9の何れか1項に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項11】
前記除菌剤組成物のpHが6以上11以下である、請求項1~10の何れか1項に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項12】
前記対象表面が硬質表面である、請求項1~11の何れか1項に記載の対象表面の除菌方法。
【請求項13】
下記(a)成分を0.1質量%以上3質量%以下、下記(b)成分を0.0001質量%以上1質量%以下、下記(c)成分を0.1質量%以上5質量%以下、水を80質量%以上、含有する除菌剤組成物を、基体に含侵させた除菌用物品。
(a)成分:界面活性剤(但し、(b)成分は除く)
(b)成分:除菌剤(但し、(c)成分は除く)
(c)成分:揮発性溶剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象表面の除菌方法、好ましくは硬質表面の除菌方法、特に好ましくは住環境空間全般に渡る硬質表面の除菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生意識の高まりを受け、調理台、食卓、シンク、冷蔵庫、レンジなどの調理機器に代表される台所周りや、子供用品、ペット用品、家具、ドアノブ、スマートフォンなどのリビング回り、トイレ、バスルーム、洗面台など、生活空間全般に渡る硬質表面の衛生管理が重要となっており、種々の除菌洗浄技術が提案されている。
硬質表面に存在する細菌は、人体や食品を由来とする脂質やタンパク質などの汚れと共存しており、衛生管理には、細菌の除去と汚れの洗浄を同時に出来るものが望まれる。この課題に対し、殺菌剤等を含有する水溶液を不織布に含浸させた所謂ウエットシートという形態が簡便で使い易く、また使い捨てできることから、家庭のみならず医療現場でも重宝されている。しかしながら、保管時に乾燥により湿潤性が低下し拭き取り性が悪化する課題や、サスティナブル社会の実現を見据え、環境負荷低減の観点から、拭き取り媒体は、綿布や化繊布、再生紙など繰り返し利用できるものが好ましい。殺菌剤としては次亜塩素酸ナトリウムが有効であるが、拭き取りに際しては対象物や皮膚へのダメージ、臭いに課題がある。ダメージが少ない殺菌剤として4級アンモニウム型のカチオン界面活性剤やエタノールなどが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、4級アンモニウム塩を含有し、泡質が良く、拭き取り性に優れた硬質表面用洗浄剤組成物と、トリガースプレーヤーを用いて泡状に硬質表面に噴霧し、付着した泡を拭き取る洗浄方法が開示されている。
また、特許文献2には、短時間で優れた除菌効果を示す、エタノール濃度が低い除菌用組成物と、拭き取り工程を組み合わせた硬質表面の除菌方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012―121959号公報
【特許文献2】特開2011―236204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、殺菌洗浄剤組成物を泡状で硬質表面に付着させた後、15~30秒以内に拭き取ることが拭き取り性の観点から好ましいと記載されているが、殺菌性は5分放置する記載しかなく、短時間での有効性を示唆するものではない。特許文献2は、除菌用組成物を、硬質表面に付着させた後、3~30分放置する過程に基づいて除菌効果を発現するものであり、多忙な生活者が増加する中で、除菌時間の短縮が課題と考えられる。
除菌時間の短縮に際しては、除菌剤や溶剤、あるいは界面活性剤を、除菌剤組成物に多量に配合することが有利と考えられるが、これらの成分は、対象表面の基材への低損傷性や拭き取り後の仕上がり性(外観・感触)の観点から低配合量にする必要があり、「短時間での除菌効果」と「仕上がり性」の関係は、従来技術においてはトレード・オフの関係にある。
【0006】
本発明は、低基材損傷性の成分を含有する除菌剤組成物を対象表面に接触後、短時間(例えば1秒~3分)で乾燥させることで、除菌効果、仕上がり性に優れる、対象表面の除菌方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分を0.1質量%以上3質量%以下、下記(b)成分を0.0001質量%以上1質量%以下、下記(c)成分を0.1質量%以上5質量%以下、水を80質量%以上、含有する除菌剤組成物(以下、本発明の除菌剤組成物という)を、対象表面に対して、(a)成分と(b)成分の合計残留量が0.01mg/cm2以上0.5mg/cm2以下となるように接触させる、対象表面の除菌方法に関する。
(a)成分:界面活性剤(但し、(b)成分は除く)
(b)成分:除菌剤(但し、(c)成分は除く)
(c)成分:揮発性溶剤
【0008】
また本発明は、本発明の除菌剤組成物を、基体に含侵させた除菌用物品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低基材損傷性の成分を含有する除菌剤組成物を対象表面に接触後、短時間(例えば1秒~3分)で乾燥させることで、除菌効果、仕上がり性に優れる、対象表面の除菌方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔対象表面の除菌方法〕
本発明の対象表面の除菌方法が、対象表面に接触後、短時間(例えば1秒~3分)で乾燥させることで、除菌効果、仕上がり性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
除菌効果は、水溶液中に含有される除菌剤がある時間内で菌体表面へ一定濃度以上作用することで発揮される。短時間のうちに除菌効果を発揮するためには、除菌剤を高濃度に設定することが有効であるが、仕上がり性の観点から好ましい形態とは言えない。
本発明の除菌剤組成物は、対象表面に対して濡れ広がりやすく、且つ揮発性溶剤を含有することで乾燥を促進することができる。さらに、本発明の除菌方法では、除菌剤組成物を、例えば基体に含浸させ、拭き取ることなどによって対象表面に(a)成分と(b)成分の合計残留量が特定の範囲になるように接触させることにより短時間の内に乾燥させることができる。この方法により、除菌剤組成物中に含有される(b)成分の除菌剤が乾燥により短時間の内に濃縮され、除菌剤が菌体表面へ効率よく作用できることから、短時間で除菌効果、仕上がり性に優れるものと推定される。
【0011】
本発明の除菌剤組成物は、(a)成分として、界面活性剤を含有する。(a)成分の界面活性剤は、(b)成分に該当する成分は除かれる。
(a)成分は、低基材損傷性の観点から、(a1)両性界面活性剤(以下、(a1)成分という)、及び(a2)非イオン界面活性剤(以下、(a1)成分という)から選ばれる1種以上の界面活性剤が好ましい。
【0012】
(a1)成分としては、低基材損傷性の観点から、アミンオキシド型界面活性剤、及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0013】
アミンオキシド型界面活性剤としては、下記一般式(a11)で表される化合物が好ましい。
【0014】
【0015】
〔式中、R11aは炭素数7以上18以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R12a及びR13aは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。q及びpは、q=0かつp=0又はq=1かつp=1を示す。〕
【0016】
上記一般式(a11)において、q=1かつp=1の場合には、R11aは、低基材損傷性の観点から、炭素数7以上、好ましくは8以上、そして、17以下、好ましくは15以下、より好ましくは13以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。
またq=0かつp=0の場合には、R11aは、低基材損傷性の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。本発明ではq=0かつp=0が好ましい。R12a、R13aは、好ましくは炭素数1のメチル基である。
【0017】
ベタイン型界面活性剤としては、下記一般式(a12)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【0019】
〔式中、R14aは炭素数7以上18以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R15aは炭素数1以上6以下のアルキレン基である。Aは-COO-、-CONH-、-OCO-、-NHCO-、-O-から選ばれる基であり、rは0又は1の数である。R16a、R17aは、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R18aはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1以上5以下のアルキレン基である。Bは、-SO3
-、-OSO3
-、-COO-から選ばれる基である。〕
【0020】
一般式(a12)において、R14aは、低基材損傷性の観点から、炭素数7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基である。
Aは、仕上がり性と低基材損傷性の観点から、好ましくは-COO-又は-CONH-であり、より好ましくは-CONH-である。
R15aの炭素数は好ましくは2又は3である。
R16a、R17aは好ましくはメチル基である。
Bは、仕上がり性と低基材損傷性の観点から、好ましくは-SO3
-又は-COO-であり、より好ましくは-COO-である。
rは、Bが-SO3
-の時は、好ましくは0であり、Bが-COO-の時は、好ましくは1である。
R18aの炭素数は、Bが-SO3
-の時は、好ましくは3であり、Bが-COO-の時は、好ましくは1である。
【0021】
ベタイン型界面活性剤としては、具体的には、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、低基材損傷性の観点から、好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、アルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、及びアルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタインから選ばれる1種以上であり、より好ましくはアルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、及びアルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタインから選ばれる1種以上である。これらのアルキル基は炭素数炭素数7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0022】
(a2)成分としては、仕上がり性と低基材損傷性の観点から、アルキルグリコシド型界面活性剤、アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0023】
アルキルグリコシド型界面活性剤としては、以下の一般式(a21)で表される化合物が好ましい。
R21a-(OR22a)xGy (a21)
〔式中、R21aは炭素数8以上16以下のアルキル基、R22aは炭素数2以上4以下のアルキレン基、Gは還元糖に由来する残基、xはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0以上5以下の数であり、x個のR22aは同一でも異なっていても良い。yはGの平均縮合度を示す1以上2以下の数である。〕
【0024】
式(a21)中、R21aの炭素数は、仕上がり性と低基材損傷性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
R22aは、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。
xは、好ましくは4以下、より好ましくは2以下であり、0であってよい。
yは、好ましくは2以下、より好ましくは1である。
Gとしては、単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。これらのうち好ましい原料は、入手容易性と低コストの観点から、単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。
【0025】
アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤は、具体的には、除菌性と低基材損傷性の観点から、炭素数6以上、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、そして、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテルが好ましい。アルキル基としては、分岐鎖アルキル基が挙げられ、2-エチルヘキシル基、イソノニル基又はイソデシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤としては、下記一般式(a22)で表される化合物が好ましい。
R23a-O-(AO)n-H (a22)
〔式中、R23aは、炭素数8以上16以下のアルキル基、AOは炭素数2又は3のアルキレンオキシ基、nは平均付加モル数であり、1以上20以下の数である。〕
【0027】
一般式(a22)中、R23aの炭素数は8以上、好ましくは10以上、そして、16以下、好ましくは14以下である。また、R23aのアルキル基は、1級アルキル基、2級アルキル基が挙げられる。ここで、1級アルキル基は、一般式(a22)中の「O」と結合するR23aの炭素が1級炭素であるアルキル基をいう。また、2級アルキル基は、一般式(a22)中の「O」と結合するR23aの炭素が2級炭素であるアルキル基をいう。
AOはエチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。
nは1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
【0028】
本発明の除菌剤組成物は、(b)成分として、除菌剤を含有する。(b)成分の除菌剤は、(c)成分に該当する成分は除かれる。
【0029】
(b)成分としては、脂肪族第四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、塩酸アルキルジ(アミノエチル)グリシン、ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシン、ポリヘキサメチレンビグアナイド、及び、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、及び水溶性銀から選ばれる1種以上の除菌剤が挙げられる。
【0030】
(b)成分は、除菌効果の観点から、下記一般式(b1)で表される化合物、及び下記一般式(b2)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0031】
【0032】
〔式中、R1bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0033】
【0034】
〔式中、R5bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、X-は陰イオンである。〕
【0035】
一般式(b1)において、R1bの炭素数は、除菌性能の観点から、8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。R1bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
一般式(b1)において、R2bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。
R2bが、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である場合、R2bは、除菌性能の観点から、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくはアルキル基である。
【0036】
一般式(b1)において、R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R3b及びR4bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0037】
一般式(b1)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0038】
一般式(b1)の化合物の好ましい化合物としては、アルキル基の炭素数が8以上16以下であるN-アルキル-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上12以下であるN,N-ジアルキル-N,N-ジメチル-アンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上12以下であるN,N-ジアルキル-N-エチル-N-メチルアンモニウム塩及びアルキル基の炭素数が8以上16以下であるN-アルキル-N,N-ジメチル-N-エチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
一般式(b2)において、R5bは、炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基である。R5bの炭素数は、除菌性能の観点から、8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。R5bは、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。
【0040】
一般式(b2)において、R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基及び炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。R6b及びR7bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0041】
一般式(b2)において、X-は陰イオンである。陰イオンとしては、ハロゲンイオン、例えばクロルイオン、ブロモイオン及びヨウ素イオンが挙げられる。また炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン及びプロピル硫酸イオンが挙げられる。
【0042】
一般式(b2)の化合物の具体例としては、N-オクチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-デシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ヘキサデシル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ドデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-トリデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-テトラデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩、N-ペンタデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩及びN-ヘキサデシル-N-メチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0043】
本発明の除菌剤組成物は、(c)成分として、揮発性溶剤を含有する。
本発明において、揮発性溶剤とは、大気圧で沸点が50℃以上260℃以下の溶剤をいう。
【0044】
(c)成分としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチル-2-プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(メチルプロピレングリコール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、フェノキシイソプロパノール、ジブチレンジグリコール、及びベンジルアルコールから選ばれる1種以上が挙げられ、低基材損傷性の観点から、好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくはエタノール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上である。
【0045】
本発明の除菌剤組成物は、(a)成分を、除菌性の観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、仕上がり性の観点から、3質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下含有する。
【0046】
本発明の除菌剤組成物は、(b)成分を、除菌性の観点から、0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有する。
本発明において、(b)成分として、一般式(b1)で表される化合物、及び一般式(b2)で表される化合物を含有する場合、これら化合物の質量に関する規定は、クロル塩に換算した値を用いるものとする。
【0047】
本発明の除菌剤組成物は、(c)成分を、速乾性に基づく除菌性の観点から、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、そして、仕上がり性の観点から、5質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下含有する。
【0048】
本発明の除菌剤組成物は、水を含有する。すなわち、前記(a)~(c)成分及び下記任意成分以外の残部が水である。
本発明の除菌剤組成物は、水を、80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下含有する。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水等を使用することが好ましい。
【0049】
本発明の除菌剤組成物には、上記成分の他、製品の付加価値や品質を向上させるなどのために、必要に応じて、パラトルエンスルホン酸などのハイドロトロープ剤、クエン酸やEDTAなどのキレート剤、分散剤、表面改質剤、pH調整剤、香料、染料、顔料、防腐剤、酵素、酸化防止剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤等(但し、(a)~(c)成分に該当するものは除く)を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0050】
本発明の除菌剤組成物のpHは、基材低損傷性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは6.2以上、更に好ましくは6.5以上、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは7.8以下、より更に好ましくは7.5以下である。本発明の除菌剤組成物のpHは、25℃におけるpHであってよい。
pHは、下記に記載のpHの測定法に従って測定する。このようなpHに調整するには、通常の硫酸、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸等の酸剤と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アルカノールアミン等のアルカリ剤を用いることができる。
<pHの測定法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーターF-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、20℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプルを20℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0051】
本発明の除菌剤組成物の粘度は、仕上がり性の観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2mPa・s以上、そして、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは80mPa・s、更に好ましくは40mPa・s以下である。
本発明の除菌剤組成物の粘度は、25℃における粘度であってよい。
なお、これらの粘度は、B型粘度計((株)東京計器製、VISCOMETER MODEL DVM-B)を用い、ローターNo.1、2又は3、回転数60r/min、測定時間60秒で測定されたものである。ローターはサンプルの粘度に適したものが選択されるが、測定可能な粘度領域が重なる場合であって、異なった数値が得られた場合は、No.2の数値を採用するものとする。
【0052】
本発明の対象表面の除菌方法は、本発明の除菌剤組成物を、対象表面に対して、(a)成分と(b)成分の合計残留量が、仕上がり性の観点から、0.01mg/cm2以上、好ましくは0.015mg/cm2以上、より好ましくは0.017mg/cm2以上、そして、0.5mg/cm2以下、好ましくは0.4mg/cm2以下、より好ましくは0.3mg/cm2以下、更に好ましくは0.2mg/cm2以下、より更に好ましくは0.1mg/cm2以下、より更に好ましくは0.08mg/cm2以下となるように接触させる。
対象表面に対する(a)成分と(b)成分の合計残留量は、例えば下記実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の対象表面の除菌方法は、本発明の除菌剤組成物を、液状で対象表面接触させることが好ましい。
【0053】
本発明の除菌剤組成物を対象表面に接触させる方法としては、対象表面に対する本発明の除菌剤組成物の残留量が0.01mg/cm2以上0.5mg/cm2以下であれば、対象表面に、本発明の除菌剤組成物を、噴霧、又は塗布する方法や、本発明の除菌剤組成物に対象表面を浸漬させる方法であってよいが、乾燥速度を向上させるために、本発明の除菌剤組成物を薄くかつ広範囲に塗り拡げる観点から、本発明の除菌剤組成物を基体に含侵させたもので対象表面をふき取ることで、基体から本発明の除菌剤組成物を対象表面に移行させる方法が好ましい。
【0054】
本発明の除菌剤組成物を基体に含侵させたもので対象表面をふき取る方法の場合、基体としては、可撓性を有し、除菌剤組成物が含浸可能なものであり、使用時に十分な強度を有し、くず等の発生の無いものが用いられる。特に、無荷重下において後述の量の除菌剤組成物を含浸し得る基体を用いることが好ましい。
【0055】
そのような基体としては、繊維状材料から構成される繊維構造体、例えば、各種紙、不織布、織布若しくは編布が挙げられる。これらの繊維構造体を構成する繊維状材料としては、例えば、セルロース系繊維、変性セルロース系繊維、合成繊維及びこれらの二種以上の混合物等が挙げられる。上記セルロース系繊維としては、例えば木材系パルプや綿、麻等の天然繊維、テンセル、ビスコースレーヨンやアセテート等のセルロース系化学繊維が挙げられる。一方、上記合成繊維としては、例えば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維及びこれらの合成繊維の少なくとも二種を芯鞘型等に複合化した繊維、並びにこれらの合成繊維の少なくとも二種を混合した繊維等が挙げられる。
また、樹脂中に気泡を分散させて得られる多孔質構造体(例えば、スポンジ状構造体)も上記基体として使用できる。
【0056】
基体は、汚れ除去性や乾燥性等の観点から、セルロース系繊維、変性セルロース繊維、合成繊維、及びこれらの二種以上の混合物から選ばれる繊維状材料から構成される繊維構造体が好ましく、セルロース系繊維、変性セルロース繊維、及びこれらの二種以上の混合物から選ばれる繊維状材料から構成される繊維構造体がより好ましい。またこれらの繊維構造体は、シートを用いることもできる。シートの構成材料は同一でも良く、或いは異なっていても良い。またこれらの繊維構造体は、経済性や使用後にトイレに流せる簡便性等の観点から、排水処理可能な水溶性繊維が好ましい。水溶性繊維の好ましい具体例としては、環境負荷低減の観点から古紙をリサイクルして製造される、トイレットペーパーが挙げられる。
【0057】
本発明の除菌剤組成物を含浸させた基体は、基体に予め除菌剤組成物を含浸させてなるもの、あるいは乾燥した基体に除菌剤組成物をスプレー等により使用直前に含浸させてなるもの、の何れでもよい。
【0058】
本発明の除菌剤組成物を基体に含侵させる場合、除菌剤組成物の含浸率は、速乾性の観点から、好ましくは100質量%以上、より好ましくは120質量%以上、更に好ましくは150質量%以上、そして、仕上がり性の観点から、好ましくは300質量%以下、より好ましくは250質量%以下、更に好ましくは200質量%以下である。
含侵率は以下の式より算出する。
含浸率(質量%)=(基体に含浸させた除菌剤組成物の質量/未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量)×100
【0059】
基体がシートである場合、除菌剤組成物の含浸前の坪量は、拭き取り性の観点から、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上、そして、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは45g/m2以下である。
【0060】
本発明の除菌剤組成物を含浸させた基体を対象表面に接触させる場合、本発明の除菌剤組成物を基体から対象表面に移行させる移行率は、仕上がり性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、そして、速乾性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは12質量%以下である。
移行率は、以下の式より算出する。
移行率(質量%)=((対象表面に接触後の含侵基体の質量)/((基体に含浸させた除菌剤組成物の質量)+(未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量)))×100
【0061】
本発明の除菌剤組成物を対象表面に接触後、除菌性の観点から、好ましくは60秒以内、より好ましくは45秒以内、更に好ましくは30秒以内、より更に好ましくは15秒以内に乾燥させる。乾燥は、自然乾燥させる方法、空気の送風、除湿、減圧等の方法が挙げられ、自然乾燥させる方法が好ましい。
【0062】
本発明の除菌方法は、対象表面が、居間、部屋、台所、浴室、浴槽、洗面器、タイル、化粧室、洗面台、鏡、トイレといった居住まわり等の硬質表面(各種物品、床、壁、天井等)の除菌に好適に用いられる。
本発明の除菌方法は、トイレまわりの硬質表面に好適に用いられる。ここで、トイレまわりとは、トイレの便器、便座、床に加え、壁、扉、ドアノブなど、トイレ内に存在する他の硬質表面を有する物品をも対象とするものである。
硬質表面は、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、及びステンレスなどの金属から選ばれる1種以上の材料から構成される硬質表面が挙げられる。ふき取り性の観点から、特にプラスチック、ガラス、木などの硬質表面に対して好適に用いることができる。
【0063】
本発明の対象表面の除菌方法が対象とする菌としては、例えば、クラドスポリウム(Cladosporium)属、エクソフィアラ(Exophiala)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、キャンディダ(Candida)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アルタナリア(Alternaria)属、フォーマ(Phoma)属、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属真菌に代表される黴や、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属真菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Pseudomonas putida等のシュードモナス(Pseudomonas)属細菌、大腸菌(Escherichia coli)、アルカリジェネス(Alcaligenes faecalis)、クレブシエラ(Klebsiellapneumoniae)、プロテウス(Proteus vulgaris)、セラチア(Serratia marcescense)、モラクセラ(Moraxella osloensis)、メチロバクテリウム(Methylobacterium)等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)に代表されるグラム陽性菌が挙げられる。
本発明の対象表面の除菌方法は、特に大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して除菌性に優れる。
【0064】
〔除菌用物品〕
本発明は、本発明の除菌剤組成物を、基体に含侵させた除菌用物品を提供する。
本発明の除菌用物品を用いることで、本発明の対象表面の除菌方法を簡便に行うことができる。
また本発明の除菌用物品は、好ましくは硬質表面の除菌用物品、より好ましくはトイレまわりの除菌用物品として好適に用いることができる。
本発明の除菌用物品において、本発明の除菌剤組成物、基体、除菌剤組成物の基体への含浸率、対象とする硬質表面は、本発明の対象表面の除菌方法で記載した態様と同じである。
本発明の除菌用物品は、本発明の対象表面の除菌方法で記載した態様を適宜適用することができる。
【実施例0065】
[除菌剤組成物の調製]
下記配合成分を用いて、表1に示す除菌剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1に示す。表1の除菌剤組成物の調製は、適量の滅菌水に、(a)成分、(b)成分、(c)成分、その他成分として、キレート剤、粘度調整剤、香料などを添加し、室温(25℃)で溶解させた後、pH調整剤(水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、又は塩酸)を添加してpH(25℃)を表1に記載の通り調整することで除菌剤組成物を得た。なお、表1中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
【0066】
<配合成分>
(a)成分
・ラウリルジメチルアミンオキシド:一般式(a11)中、R11aが炭素数12のアルキル基、R12a及びR13aがメチル基、q=0、p=0の化合物、(a1)成分、アンヒトール20N、花王(株)製
・ラウリン酸アミドプロピルベタイン:一般式(a12)中、R14aが炭素数11のアルキル基、R15aがプロピレン基、Aが-CONH-、rが1、R16a及びR17aがメチル基、R18aがメチレン基、Bが-COO-である化合物、(a1)成分、アンヒトール20AB、花王(株)製
・ラウリルグリコシド:一般式(a21)中、R21aが炭素数12のアルキル基、xが0、Gがグルコースに由来する残基、yが1以上2以下の化合物、(a2)成分、マイドール12、花王(株)製
・2-エチルヘキシルグリセリルエーテル:(a2)成分、ペネトールGE-EH、花王(株)製
(b)成分
・アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド:一般式(b2)中、R5bが炭素数12~16のアルキル基、R6b及びR7bがメチル基、X-がクロルイオンである化合物、サニゾールB―50、花王(株)製
・アルキルトリメチルアンモニウムクロライド:一般式(b1)中、R1bが炭素数12のアルキル基、R2b、R3b及びR4bがメチル基、X-がクロルイオンである化合物、コータミン24P、花王(株)製
(c)成分
・エタノール:日本アルコール販売(株)製
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:日本乳化剤(株)製
【0067】
[試験基体の作製]
調整した除菌剤組成物を含侵させる基体として、綿布(かなきん3号、綿、JISL0803準拠染色堅ろう度試験用添付白布)、合成繊維布(レーヨンとポリエステルの混合繊維、テーブルふきん、モノタロウ社製)、パルプ繊維(キッチンペーパー、パルプ、エリエール超吸収キッチンタオル、大王製紙社製)を用いた。
試験基体は、拭き取り操作の障害にならないよう、それぞれ約15cm×10cmに裁断した。
綿布については以下のように作製した。イオン交換水1Lに対して、ポリソルベート80を5gおよび炭酸ナトリウム5gを溶解して湿潤剤を得た。次にイオン交換水5Lに対して、湿潤剤2.5g、炭酸カルシウム2.5gを添加し、裁断した綿布を入れて1時間煮沸した。その後、湿潤剤を除去するために、溶媒をイオン交換水に置換し、再度10分程煮沸し、この操作を3回行った。最後に冷水で置換し、脱水後、一枚ずつ広げて乾燥させた。乾燥後、布片をアルミ包装、又はビーカーに充填し、オートクレーブにて滅菌処理した。その後、恒温槽で乾燥させ、これを試験基体とした。
合成繊維布、パルプ繊維については、裁断した試験基体をアルミ包装またはビーカーに充填し、オートクレーブにて滅菌処理した。その後、恒温槽で乾燥させ、これを試験基体とした。
【0068】
[乾燥時間、仕上がり性試験]
ステンレス天板(JISG4305、SUS304、幅2.5cm×長さ15cm×厚さ1.0mm)を「一般財団法人日本衛生材料工業連合会ウエットワイパー類の除菌性能試験方法(https://www.jhpia.or.jp/standard/wet_wiper/img/wetwiper_standard05-3.pdf)」記載の除菌試験用治具へセットし、当該除菌性能試験方法に準じて、表1の除菌剤組成物を表1に記載の含侵率となるように所定量含浸させた各試験基体(綿布、合成繊維布、パルプ繊維)へ150gの重りを装着し、上から圧をかけないようにレール上で2往復拭き取って、除菌剤組成物を試験基体からステンレス天板へ表1の移行率、残留量となるように移行させた。
含侵率は以下の式より算出した。
含浸率(質量%)=(基体に含浸させた除菌剤組成物の質量/未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量)×100
対象表面であるステンレス天板への除菌剤組成物の移行率、(a)成分と(b)成分の合計残留量は以下の式より算出した。
移行率(質量%)=((拭き取り後の基体の質量)/((基体に含浸させた除菌剤組成物の質量)+(未含浸状態(乾燥状態)の基体の質量)))×100
(a)成分と(b)成分の合計残留量(mg/cm2)=(基体に含浸させた除菌剤組成物の質量×((除菌剤組成物中の(a)成分と(b)成分の合計含有量(質量%))/100)×(移行率(質量%)/100)/拭き取った面積(9cm×1.5cm)
【0069】
また各除菌剤組成物を含浸させた各試験基体でステンレス天板を拭き取った直後の乾燥時間を測定し、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。なお、ステンレス天板上の除菌剤組成物が乾燥したか否かは、ステンレス天板上の拭き取った部分が濡れているか否かを目視で確認した。
〇:30秒以内の乾燥時間を要した
△:60秒以内の乾燥時間を要した
×:61秒以上の乾燥時間を要した
【0070】
また各除菌剤組成物を含浸させた各試験基体でステンレス天板を拭き取り、乾燥させた後、パネラー4人(20代から30代の当該技術分野の熟練した研究員)がステンレス天板の仕上がり性を目視にて観察し、下記の基準にて判定した。表1には、4人の平均値を示した。
5点:拭き筋がほとんどないレベル
4点:わずかに拭き筋が残るが全く気にならないレベル
3点:わずかに拭き筋が残るが気にならないレベル
2点:拭き筋が残り気になるレベル
1点:拭き筋が著しく残るレベル
【0071】
[除菌試験]
大腸菌Escherichia coli(保存番号NBRC3972)、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus (保存番号NBRC12732)をそれぞれニュートリエント寒天培地(Difco社製のNutrientAgar試薬を能書どおりに調製)上で37℃/24時間培養を2回繰り返したものをかきとり、1/2ニュートリエント液体培地(Difco社製、Nuturient Broth試薬を能書の1/2濃度で調製したもの)に懸濁・分散させて、1/2ニュートリエント液体培地を用いて菌濃度を約2.5×109cfu/mLに調製し、13質量%ウシ血清アルブミン水溶液と等容量混合して試験菌液とした。
試験操作としては、調製した各試験菌液を0.01mLピペッターで採取し、滅菌処理されたSUS(ステンレス)試験担体(JISG4305、SUS304、幅2.5cm×長さ15cm×厚さ1.0mm)の中央部幅1.5cm×長さ9cmになるように塗り広げ、クリーンベンチ内で見た目乾燥するまで放置したあと、[乾燥時間、仕上がり性試験]と同様に「一般財団法人日本衛生材料工業連合会ウエットワイパー類の除菌性能試験方法」記載の除菌試験用治具へセットし、当該除菌性能試験方法に準じて、表1の除菌剤組成物を表1に記載の含侵率となるように所定量含浸させた各試験基体(綿布、合成繊維布、パルプ繊維)へ150gの重りを装着し、上から圧をかけないようにレール上で2往復拭き取って、除菌剤組成物を試験基体からSUS試験担体へ表1の移行率、(a)成分と(b)成分の合計残留量となるように移行させた。含侵率、及び対象表面であるSUS試験担体への除菌剤組成物の移行率、(a)成分と(b)成分の合計残留量の算出方法は、[乾燥時間、仕上がり性試験]に記載した式と同じである。
拭き取り操作終了後、おもりを取り外し、試験担体をピンセットで取り出し、見た目乾燥させた後、試験担体表面全体を拭き取りキット(日水製薬社製)の綿棒で十分に拭き取った。拭き取った綿棒をLP希釈液中で転倒混和し、生菌数を混釈培養法でカウントした。
対照操作としては、除菌剤組成物の代わりにリン酸生理食塩水PBSを含侵率150%となるように含浸させた各試験基体(綿布、合成繊維布、パルプ繊維)を用いて上記と同様の試験を行った。除菌活性値は、対照操作と試験操作での生菌数の対数差で示した。結果を表1に示す。表1中、「>2」と表記しているのは、対照操作と試験操作での生菌数の対数差が2を超えていることを示す。また「<2」と表記しているのは、対照操作と試験操作での生菌数の対数差が2未満であることを示す。
【0072】
【0073】
[基体としてトイレットペーパーを用いた実施例]
表2の実施例6では、基体としてトイレットペーパー(パルプ、トイレットティシューコンパクトシングル、大王製紙社製)を用い、拭き取りによる各種評価を行った。
表2の除菌剤組成物の調製は、適量の滅菌水に、(a)成分、(b)成分、(c)成分、その他成分として、キレート剤、粘度調整剤、香料などを添加し、室温(25℃)で溶解させた後、pH調整剤(水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、又は塩酸)を添加してpH(25℃)を表2に記載の通り調整することで除菌剤組成物を得た。なお、表2中の配合成分の質量%は、全て有効分に基づく数値である。
基体をトイレットペーパー(パルプ、トイレットティシューコンパクトシングル、大王製紙社製)に代えた以外は、上記の[乾燥時間、仕上がり性試験]、及び[除菌試験]と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】