(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159610
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】画像出力装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069406
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】柳田 朋則
(72)【発明者】
【氏名】緒方 祐史
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AB01
2G053CA01
2G053CB27
2G053CB29
2G053DB03
(57)【要約】
【課題】磁場などの信号源を可視化する。
【解決手段】画像出力装置20は、複数の信号源S1、S2から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサMSの測定結果を受けて、信号源S1、S2の位置およびベクトルの向きを特定する信号源特定部22と、信号源S1、S2を物体OBJごと撮像する撮像部2の撮像結果における、信号源特定部22の導出した信号源S1、S2の位置に相当する部分に、信号源S1、S2を示す画像を追加する信号源画像追加部24とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定部と、
前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定部の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加部と、
を備えた画像出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像出力装置であって、
前記信号源画像追加部が、前記撮像結果に、さらに座標軸を追加する画像出力装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像出力装置であって、
前記信号源を示す画像が、前記ベクトルの向きを示す画像出力装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像出力装置であって、
前記信号源画像追加部が、複数の時点に関する前記信号源を示す画像を追加する画像出力装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像出力装置であって、
前記信号源画像追加部が、前記信号源の位置の座標と前記撮像部による撮像の視点の座標とに基づき、前記視点を変更した場合の追加結果を出力する画像出力装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像出力装置であって、
前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例し、
前記信号源特定部が、
前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出部と、
前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出部と、
前記スペクトルに基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する位置導出部と、
を備えた画像出力装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像出力装置であって、
前記位置導出部が、各ボクセルにおいて前記スペクトルの各々がとる値の最大値に基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する画像出力装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像出力装置であって、
前記信号源特定部が、
前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録部と、
前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出部と、
を備え、
前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、
前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、
前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、
前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、
前記位置・ベクトル導出部の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定する、
画像出力装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像出力装置であって、
前記位置・ベクトル導出部の導出結果を、前記信号源の位置および前記ベクトルであると特定する、
画像出力装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像出力装置であって、
前記位置・ベクトル導出部により導出された前記信号源の位置を、前記信号源の個数のクラスタに分類するクラスタリング部と、
前記クラスタごとに、前記信号源の重心を導出する重心導出部と、
前記クラスタごとに、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記ベクトルを、前記信号源と前記重心との距離に反比例させて平均する加重平均部と、
を備え、
前記信号源の位置を、前記重心であると特定し、
前記ベクトルを、前記加重平均部の導出結果であると特定する、
画像出力装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像出力装置であって、
前記クラスタへの分類が、K-means法に則して行われる、
画像出力装置。
【請求項12】
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、
前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程と、
を備えた画像出力方法。
【請求項13】
画像出力処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記画像出力処理が、
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、
前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程と、
を備えたプログラム。
【請求項14】
画像出力処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記画像出力処理が、
複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、
前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程と、
を備えた記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場などの信号を発する信号源の可視化に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場などの信号を発する信号源を包含する物体がある。信号源としては、例えば、磁気マーカー(永久磁石など)や、磁性体(鉄筋など)がある。
【0003】
なお、従来より、磁気信号源の位置測定および表示については色々な技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献3、特許文献4、非特許文献1および非特許文献2を参照)。また、磁気信号源ではないが、音源の位置測定および表示についても色々な技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-535339号
【特許文献2】特開2012-133591号公報
【特許文献3】特開2002-355264号公報
【特許文献4】特開2007-170976号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jiawei Huang,外4名,“IM6D: Magnetic Tracking System with 6-DOF Passive Markers forDexterous 3D Interaction and Motion”, ACM Transactions on Graphics,2015年11月,Vol. 34, No. 6, Article 217, p.1-10
【非特許文献2】山内,外4名,“ARと3軸磁気センサを使った磁界可視化教材の検討”,電気学会全国大会、2019年、p.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、信号源を包含する物体を目視しても撮像しても、信号源の位置や信号ベクトルの向きを知ることはできない。
【0007】
そこで、本発明は、磁場などの信号源の可視化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる画像出力装置は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定部と、前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定部の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加部とを備えるように構成される。
【0009】
上記のように構成された画像出力装置は、信号源特定部が、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する。信号源画像追加部が、前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定部の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する。
【0010】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記信号源画像追加部が、前記撮像結果に、さらに座標軸を追加するようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記信号源を示す画像が、前記ベクトルの向きを示すようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記信号源画像追加部が、複数の時点に関する前記信号源を示す画像を追加するようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記信号源画像追加部が、前記信号源の位置の座標と前記撮像部による撮像の視点の座標とに基づき、前記視点を変更した場合の追加結果を出力するようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記センサの測定結果が、前記ベクトルの前記3軸の成分の各々に第一係数を乗じたものの和に比例し、前記信号源特定部が、前記センサの測定結果と、前記第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和とに基づき得られるスペクトルであって、前記信号を出力する信号源の存在するボクセルで極大値をとるスペクトルを導出するスペクトル導出部と、前記スペクトルを得るために用いられた前記第二係数に基づき、前記ベクトルの向きを導出する向き導出部と、前記スペクトルに基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出する位置導出部とを備えるようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記位置導出部が、各ボクセルにおいて前記スペクトルの各々がとる値の最大値に基づき、前記信号源の存在するボクセルの位置を導出するようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記信号源特定部が、前記軸ごとに前記センサの個数分まとめられた前記測定結果と、前記ベクトルとの関係を表す関係行列を記録する関係行列記録部と、前記測定結果と前記関係行列とに基づき、コスト関数を最小とするような、前記信号源の位置および前記ベクトルを導出する位置・ベクトル導出部とを備え、前記ベクトルにおいては、その成分が前記軸ごとに前記信号源の位置する空間の格子点の個数分まとめられており、前記コスト関数が、誤差関数と正則化項とを合計したものであり、前記誤差関数が、前記信号源の位置および前記ベクトルの真の値と前記真の値の候補値との誤差を表すものであり、前記正則化項が、正則化パラメータと、前記ベクトルのL1ノルムとの関数であり、前記位置・ベクトル導出部の導出結果に基づき、前記信号源の位置および前記ベクトルを特定するようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記位置・ベクトル導出部の導出結果を、前記信号源の位置および前記ベクトルであると特定するようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記信号源の位置を、前記信号源の個数のクラスタに分類するクラスタリング部と、前記クラスタごとに、前記信号源の重心を導出する重心導出部と、前記クラスタごとに、前記位置・ベクトル導出部により導出された前記ベクトルを、前記信号源と前記重心との距離に反比例させて平均する加重平均部とを備え、前記信号源の位置を、前記重心であると特定し、前記ベクトルを、前記加重平均部の導出結果であると特定するようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明にかかる画像出力装置は、前記クラスタへの分類が、K-means法に則して行われるようにしてもよい。
【0020】
本発明は、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程とを備えた画像出力方法である。
【0021】
本発明は、画像出力処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記画像出力処理が、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程とを備えたプログラムである。
【0022】
本発明は、画像出力処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記画像出力処理が、複数の信号源から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサの測定結果を受けて、前記信号源の位置および前記ベクトルの向きを特定する信号源特定工程と、前記信号源を撮像する撮像部の撮像結果における、前記信号源特定工程の特定した前記信号源の位置に相当する部分に、前記信号源を示す画像を追加する信号源画像追加工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第三の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】クラスタリング部180aによる信号源S1~S4の位置のクラスタリング(
図7(a))、重心導出部180bによるクラスタの重心の導出(
図7(b))、加重平均部180cによるベクトルの加重平均の導出(
図7(c))を示す図である。
【
図8】第四の実施形態にかかる画像出力装置20の構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】第四の実施形態の変形例1における画像表示部26の表示例を示す図である。
【
図11】第四の実施形態の変形例2における画像表示部26の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
図2は、本発明の第一の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0026】
図1を参照して、信号源S1および信号源S2が信号を出力する。信号は、所定の方向を有するベクトルmにより表される。ベクトルmは、例えば、磁気双極子モーメントである。なお、信号源の個数は、例えば2個であるが、磁気センサMSの個数未満であれば3個以上であってもよい。ただし、各信号源の出力する信号は、互いに周波数または位相が異なっているものとする。
【0027】
また、信号源S1および信号源S2が存在する空間内の位置は、ボクセルV(例えば、10×10×10=1000個のボクセル)により表される。信号源S1および信号源S2は、それぞれ異なるボクセルVに位置している。なお、1000個のボクセルVの各々を、V1~V1000と表記する。
【0028】
複数(例えば、8行8列の64個)の磁気センサMSは、信号(例えば、磁気双極子モーメント)を受け、互いに直交する3軸X、Y、Zの成分Bx、By、Bzを測定する。なお、64個の磁気センサMSの各々を、MS1~MS64と表記する。
【0029】
ここで、ベクトルrを、信号源(磁気双極子)から磁気センサMSまでの方向ベクトルとすると、磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、式(1)のように表される。ただし、μ0は、磁気定数である。また、ベクトルrは、ボクセルVの各々(V1~V1000)と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の位置関係といえる。
【0030】
【数1】
式(1)より、Bxは、以下の式(2)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、mx、my、mzは、それぞれ、ベクトルmのX成分、Y成分、Z成分である。
【0031】
【数2】
ここで、式(2)のmxの係数をvx1、myの係数をvx2、mzの係数をvx3とすると、式(2)は、式(2’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvx1、vx2、vx3(第一係数)を乗じたものの和(vx1mx+vx2my+vx3mz)に比例することなる。
【0032】
式(1)より、Byは、以下の式(3)のように表される。
【0033】
【数3】
ここで、式(3)のmxの係数をvy1、myの係数をvy2、mzの係数をvy3とすると、式(3)は、式(3’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Byは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvy1、vy2、vy3(第一係数)を乗じたものの和(vy1mx+vy2my+vy3mz)に比例することなる。
【0034】
式(1)より、Bzは、以下の式(4)のように表される。
【0035】
【数4】
ここで、式(4)のmxの係数をvz1、myの係数をvz2、mzの係数をvz3とすると、式(4)は、式(4’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bzは、ベクトルmの3軸X、Y、Zの成分mx、my、mzの各々にvz1、vz2、vz3(第一係数)を乗じたものの和(vz1mx+vz2my+vz3mz)に比例することなる。
【0036】
なお、vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3(第一係数)は、式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照して、ベクトルrに基づき定められている。
【0037】
図2を参照して、本発明の第一の実施形態にかかる信号源特定装置1は、相対位置記録部11、第一係数導出部12、伝達関数導出部13、雑音固有ベクトル導出部14、スペクトル導出部16、向き導出部18、位置導出部19を備える。
【0038】
信号源特定装置1は、複数のセンサMS1~MS64の測定結果を受けてベクトルmの向きを導出する。
【0039】
相対位置記録部11は、ボクセルVの各々1000個と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の相対位置であるベクトルrを記録する。
【0040】
第一係数導出部12は、相対位置記録部11からベクトルrを読み出し、第一係数vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3を導出する(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0041】
例えば、第一係数vx1は、以下の式(5)のように表される。
【0042】
【数5】
ベクトルrは、ボクセルVの位置と磁気センサMSの位置とによって定まるので、1000×64通りの値をとる。よって、第一係数vx1も、1000×64通りの値をとる。式(5)においては、1行目に磁気センサMS1に関するvx1、2行目に磁気センサMS2に関するvx1、…、64行目に磁気センサMS64に関するvx1を表記している。さらに、式(5)においては、1列目にボクセルV1に関するvx1、2列目にボクセルV2に関するvx1、…、1000列目にボクセルV1000に関するvx1を表記している。例えば、式(5)の1行1000列目の要素vx1(1,1000)は、磁気センサMS1およびボクセルV1000に関するvx1を意味する。すなわち、ベクトルrを、ボクセルV1000から磁気センサMS1までの方向ベクトルとして、式(2)のmxの係数に代入すると、vx1(1,1000)を求めることができる。
【0043】
他の第一係数vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3も同様に、1000×64通りの値をとる。
【0044】
なお、第一係数vx1は、そのまま用いることも考えられるが、以下の式(6)のように正規化して、以後の処理に使用する。
【0045】
【数6】
ただし、hは行、nは列を示す。すなわち、h行n列目の第一係数vx1を、1、2、…64行n列目の第一係数vx1を2乗して合計し1/2乗したもので割ったものを新たにh行n列目の第一係数vx1とする。
【0046】
他の第一係数vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3も同様に、正規化する。
【0047】
第一係数導出部12は、上記のようにして正規化した第一係数を出力する。
【0048】
雑音固有ベクトル導出部14は、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bzから、MUSIC法に則して、ノイズ部分空間の固有ベクトルを求める。
【0049】
まず、磁気センサMSの測定結果Bxから以下の式(7)のように、X(t)xを求める。ただし、tは測定を行った時間である。Tは転置を意味する。
【0050】
【数7】
X(t)xは、1行目に時間t1に測定されたBx、2行目に時間t2に測定されたBx、…、N行目に時間tNに測定されたBxを記載し、かつ、1列目に磁気センサM1により測定されたBx、2列目に磁気センサM2により測定されたBx、…、64列目に磁気センサM64により測定されたBxを記載した行列を転置した行列である。
【0051】
X(t)xを用いて、以下の式(8)のように相関行列を求める。
【0052】
【数8】
ただし、Eはアンサンブル平均を意味する。式(8)により、64行64列の行列が得られる。式(8)により得られた相関行列の固有値および固有ベクトルを求める。このようにして得られた固有値のうち、信号源の個数(2個)の分は、大きな値となるが、残りの固有値(64-2=62個)は小さな値となる。そこで、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルexとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルexは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルexは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0053】
なお、ノイズ部分空間の固有ベクトルeyも同様に求めることができる。まず、式(7)のBxをByに置き換え、式(7)および式(8)のX(t)xをX(t)yに置き換えて、式(8)により相関行列を求める。あとは、同様に、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルeyとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルeyは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルeyは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0054】
また、ノイズ部分空間の固有ベクトルezも同様に求めることができる。まず、式(7)のBxをBzに置き換え、式(7)および式(8)のX(t)xをX(t)zに置き換えて、式(8)により相関行列を求める。あとは、同様に、小さな値の固有値に対応する固有ベクトルを求め、ノイズ部分空間の固有ベクトルezとする。ノイズ部分空間の固有ベクトルezは、64行1列のベクトルである。ノイズ部分空間の固有ベクトルezは、小さな値の固有値に対応して62個存在する。
【0055】
伝達関数導出部13は、以下の式(9)、式(10)および式(11)のように、伝達関数vx、vyおよびvzを導出する。第一係数vx1、vx2、vx3に、それぞれ第二係数ax、bx、cxを乗じて得られた値の和を導出する(式(9)参照)。導出結果を、伝達関数vxという。第一係数vy1、vy2、vy3に、それぞれ第二係数ay、by、cyを乗じて得られた値の和を導出する(式(10)参照)。導出結果を、伝達関数vyという。第一係数vz1、vz2、vz3に、それぞれ第二係数az、bz、czを乗じて得られた値の和を導出する(式(11)参照)。導出結果を、伝達関数vzという。
【0056】
【数9】
なお、伝達関数vx、vyおよびvzは、MUSIC法における伝達関数である。また、第二係数は、いずれも0以外の値であってもよい。例えば、ax=bx=cx=1(すなわち、vx=vx1+vx2+vx3)でもよいし、ay=by=1、cy=-1(すなわち、vy=vy1+vy2-vy3)でもよいし、az=1、bz=-1、cz=1(すなわち、vz=vz1-vz2+vz3)でもよい。
【0057】
ただし、第二係数のいずれか一つまたは二つが0であってもよい。例えば、ax=1、bx=cx=0(すなわち、vx=vx1)でもよいし、ax=bx=1、cx=0(すなわち、vx=vx1+vx2)でもよい。
【0058】
ここで、(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)が、(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)、(1,1,0)、(1,-1,0)、(0,1,1)、(0,1,-1)、(1,0,1)、(-1,0,1)、(1,1,1)、(-1,1,1)、(1,-1,1)、(1,1,-1)の13種類あるものとする。これらに対応するvkをそれぞれ、vk1、vk2、…、vk13とする。
【0059】
例えば、(ax、bx、cx)が、(1,0,0)である場合、vx=vx1である。(ax、bx、cx)が、(1,1,0)である場合、vx=vx4=vx1+vx2である。(ax、bx、cx)が、(1,1,-1)である場合、vx=vx13=vx1+vx2-vx3である。
【0060】
例えば、(ay、by、cy)が、(1,0,0)である場合、vy=vy1である。(ay、by、cy)が、(1,1,0)である場合、vy=vy4=vy1+vy2である。(ay、by、cy)が、(1,1,-1)である場合、vy=vy13=vy1+vy2-vy3である。
【0061】
例えば、(az、bz、cz)が、(1,0,0)である場合、vz=vz1である。(az、bz、cz)が、(1,1,0)である場合、vz=vz4=vz1+vz2である。(az、bz、cz)が、(1,1,-1)である場合、vz=vz13=vz1+vz2-vz3である。
【0062】
スペクトル導出部16は、信号源S1、S2の存在するボクセルVで極大値をとるスペクトルを導出する。このようなスペクトルは、MUSIC法に則して求められる。スペクトルの極大値は、信号源の個数に対応して、2つある。なお、信号源の個数が3つ以上あれば、スペクトルの極大値も3つ以上ある。
【0063】
スペクトルは、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bz(から求められたノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ez)と、第一係数に第二係数を乗じて得られた値の和(すなわち、伝達関数vx、vy、vz)(式(9)、(10)、(11))とに基づき、スペクトル導出部16により導出される。スペクトル導出部16は、伝達関数導出部13の出力する伝達関数vx、vy、vzと、雑音固有ベクトル導出部14の出力するノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezとに基づきスペクトルを導出する。
【0064】
スペクトル導出部16は、以下のようにして、スペクトルPx1を導出する。
(1)ノイズ部分空間の固有ベクトルex(64行1列のベクトル)は、62個存在するが、これらのベクトルexを62列並べて、exを64行62列の行列とする。
(2)行列exを転置し、伝達関数vx1(64行1000列の行列)に乗じる。すなわち、exTvx1を求める。これは、62行1000列の行列となる。
(3)(2)で得た行列の各成分を2乗する。
(4)(3)で得た行列の成分を列ごとに合計し、1行に並べて、1行1000列の行列を得る。例えば、(3)で得た行列の1行Q列目+2行Q列目+…+62行Q列目が、(4)で得られる1行1000列の行列の1行Q列目の成分となる(ただし、Qは1~1000の整数)。
(5)(4)で得た行列の各成分の逆数をとると、スペクトルPx1(1行1000列の行列)が得られる。
【0065】
なお、スペクトルPx1の各列は、ボクセルV1~V1000に対応する。他のスペクトルも同様である。
【0066】
スペクトル導出部16は、スペクトルPx2、Px3、…、Px13も導出する。スペクトルPx2、Px3、…、Px13は、上記(2)における伝達関数vx1を、vx2、vx3、…、vx13に置き換えれば、導出することができる。
【0067】
スペクトル導出部16は、スペクトルPy1、Py2、Py3、…、Py13を導出する。上記(1)におけるノイズ部分空間の固有ベクトルexをeyに置き換え、上記(2)における伝達関数vx1を、vy1、vy2、vy3、…、vy13に置き換えれば、スペクトルPy1、Py2、Py3、…、Py13を導出することができる。
【0068】
スペクトル導出部16は、スペクトルPz1、Pz2、Pz3、…、Pz13を導出する。上記(1)におけるノイズ部分空間の固有ベクトルexをezに置き換え、上記(2)における伝達関数vx1を、vz1、vz2、vz3、…、vz13に置き換えれば、スペクトルPz1、Pz2、Pz3、…、Pz13を導出することができる。
【0069】
位置導出部19は、スペクトルPx1、Px2、Px3、…、Px13、Py1、Py2、Py3、…、Py13、Pz1、Pz2、Pz3、…、Pz13に基づき、信号源S1、S2の存在するボクセルVの位置を導出する。
【0070】
スペクトル導出部16の出力するスペクトルは、以下の式(12)のように表される。
【0071】
【数10】
各ボクセルにおいてスペクトルの各々がとる値の最大値P(すなわち、式(12)の各列における最大値)を求める(式(13)を参照)。
【0072】
【数11】
Pにおいて、極大値をとる列(ボクセルに対応)が信号源の個数(2つ)現れるので、その列に対応するボクセルが、信号源S1、S2の存在するボクセルである。極大値をとる列の検出法を、以下に説明する。
【0073】
図3は、最大値Pのグラフの一例である。
図3において、縦軸はスペクトルの値、横軸はボクセル(V1~V1000)を示す。
【0074】
図3を参照して、ボクセルV750において最大値P(のスペクトル)の値がSP1(極大値)、ボクセルV250において最大値P(のスペクトル)の値がSP2(極大値)をとるものとする。ただし、SP1がSP2よりも大きいものとする。
【0075】
位置導出部19は、最大値Pの内でも最大の値SP1から所定の範囲内(例えば、最大値Pの値が0.95SP1以上)の値をとるボクセルの重心を、所定の範囲を増やしながら(例えば、最大値Pの値が0.95SP1以上→0.90SP1以上→0.85SP1以上→…というように0.05SP1ずつ所定の範囲を広げる)、重心が所定量を超えて変化する回数に1を加えた値が信号源の個数(2個)になるまで、求める。
【0076】
最大値Pの内でも最大の値SP1から近傍におけるボクセルの重心は、おおむねボクセルV750である。しかし、最大の値SP1から所定の範囲が広がって、SP2を含むようになると、ボクセルの重心がボクセルV750から、かなり小さくなる。すると、重心が所定量を超えて変化するので、その回数(1回)に1を加えた値が信号源の個数(2個)になるので、ボクセルの重心を求めることを終了する。
【0077】
次に、重心を求めたボクセルを、信号源の個数(2個)だけクラスタリングする。例えば、教師なし機械学習のKmeansクラスタリングを行い、信号源の数だけラベリングする。
【0078】
最後に、クラスタリングされたボクセルの内で、スペクトルが最大の値をとるものを信号源の存在するボクセルの位置とする。
【0079】
なお、位置導出部19は、このようにして既に導出した信号源の存在するボクセルの位置に基づき、さらに、ボクセルの大きさを小さくして、信号源の存在するボクセルの位置を導出するようにしてもよい。このようにして、信号源の存在するボクセルの位置を、高精度かつ高速に計算することができる。
【0080】
向き導出部18は、位置導出部19から信号源S1、S2に対応する(すなわち、Pにおいて極大値をとる)Pkj(ただし、k=x、y、zかつj=1、2、3、…)を受ける。さらに、向き導出部18は、信号源S1、S2に対応するPkjを得るために用いられた第二係数に基づき、ベクトルmの向きを導出する。
【0081】
例えば、向き導出部18に、位置導出部19から信号源S1およびS2に対応するスペクトルとして、750列目(ボクセルV750)のPx13(Py13またはPz13)および250列目(ボクセルV250)のPx4(Px4またはPz4)が与えられたとする。
【0082】
すると、向き導出部18は、ボクセルV750の信号源S1におけるベクトルmの向きとして、Px13(Py13またはPz13)を得るために用いられた第二係数(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)は、(1,1,-1)である。よって、向き導出部18は、ボクセルV750の信号源S1におけるベクトルmの向きを、ベクトル(1,1,-1)に平行であると導出する。ただし、ベクトル(1,1,-1)は、X成分1、Y成分1、Z成分-1のベクトルである。
【0083】
さらに、向き導出部18は、ボクセルV250の信号源S2におけるベクトルmの向きとして、Px4(Px4またはPz4)を得るために用いられた第二係数(ak、bk、ck)(ただし、k=x、y、z)は、(1,1,0)である。よって、向き導出部18は、ボクセルV250の信号源S2におけるベクトルmの向きを、ベクトル(1,1,0)に平行であると導出する。ただし、ベクトル(1,1,0)は、X成分1、Y成分1、Z成分0のベクトルである。
【0084】
次に、本発明の第一の実施形態の動作を説明する。
【0085】
第一係数導出部12により、相対位置記録部11からベクトルrが読み出され、第一係数vx1、vx2、vx3、vy1、vy2、vy3、vz1、vz2、vz3が導出される(式(2)~(4)および式(2’)~(4’)を参照)。
【0086】
なお、第一係数は、1000×64通りの値をとり(式(5)参照)、正規化されて(式(6)参照)、伝達関数導出部13に与えられる。
【0087】
伝達関数導出部13によって、第一係数および第二係数ax、bx、cx、ay、by、cy、az、bz、czに基づき、伝達関数vx、vy、vzが導出される(式(9)、式(10)および式(11)参照)。
【0088】
雑音固有ベクトル導出部14によって、磁気センサMSの測定結果Bx、By、Bzから、MUSIC法に則して、ノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezが導出される。
【0089】
スペクトル導出部16により、伝達関数vx、vy、vzおよびノイズ部分空間の固有ベクトルex、ey、ezに基づき、スペクトルPx1、Px2、Px3、…、Px13、Py1、Py2、Py3、…、Py13、Pz1、Pz2、Pz3、…、Pz13が導出される(式(12)参照)。
【0090】
位置導出部19により、各ボクセルにおいてスペクトルの各々がとる値の最大値P(すなわち、式(12)の各列における最大値)が求められる(式(13)および
図3を参照)。最大値Pに基づき、信号源S1、S2の存在するボクセル250、750が導出される。
【0091】
向き導出部18により、信号源S1、S2に対応するPkjを得るために用いられた第二係数に基づき、ベクトルmの向きが導出される。
【0092】
本発明の第一の実施形態によれば、磁場などの信号の測定精度が向上する。
【0093】
例えば、伝達関数vkが、vk1、vk2、vk3のみである場合、ベクトルmの向きが、X方向、Y方向またはZ方向に平行な場合しか、ベクトルmの向きを測定できない。ベクトルmの向きが、それ以外の向き、例えば、ベクトル(1,1,0)(すなわち、X成分1、Y成分1、Z成分0のベクトル)に平行である場合は、ベクトルmの向きを測定できない。
【0094】
しかし、本発明の第一の実施形態によれば、伝達関数vkが、vk1、vk2、vk3、…、vk13と多くの種類があるので、ベクトルmの向きが、X方向、Y方向およびZ方向に平行ではない場合であっても、ベクトルmの向きを測定できる。
【0095】
なお、本発明の第一の実施形態においては、信号のベクトルを磁気双極子モーメントであるとしてきたが、信号のベクトルは磁気双極子モーメントに限定されない。信号のベクトルは、例えば、電気双極子モーメント(ベクトルp)であってもよい。
【0096】
磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、式(14)のように表される。
【0097】
【数12】
式(14)より、Bxは、以下の式(15)のように表される。ただし、px、py、pzは、それぞれ、ベクトルpのX成分、Y成分、Z成分である。
【0098】
【数13】
ここで、式(15)のpxの係数をvx1、pyの係数をvx2、pzの係数をvx3とすると、式(15)は、式(15’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvx1、vx2、vx3(第一係数)を乗じたものの和(vx1px+vx2py+vx3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Bxの成分と同じ方向(X方向)のベクトルの成分(px)は0であり、それに乗じられる第一係数vx1は1である。
【0099】
式(14)より、Byは、以下の式(16)のように表される。
【0100】
【数14】
ここで、式(16)のpxの係数をvy1、pyの係数をvy2、pzの係数をvy3とすると、式(16)は、式(16’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Byは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvy1、vy2、vy3(第一係数)を乗じたものの和(vy1px+vy2py+vy3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Byの成分と同じ方向(Y方向)のベクトルの成分(py)は0であり、それに乗じられる第一係数vy2は1である。
【0101】
式(14)より、Bzは、以下の式(17)のように表される。
【0102】
【数15】
ここで、式(17)のpxの係数をvz1、pyの係数をvz2、pzの係数をvz3とすると、式(17)は、式(17’)のように表される。すると、磁気センサMSの測定結果Bxは、ベクトルpの3軸X、Y、Zの成分px、py、pzの各々にvz1、vz2、vz3(第一係数)を乗じたものの和(vz1px+vz2py+vz3pz)に比例することなる。ただし、測定結果Bzの成分と同じ方向(Z方向)のベクトルの成分(pz)は0であり、それに乗じられる第一係数vz3は1である。
【0103】
信号源特定装置1の構成および動作は、信号のベクトルが磁気双極子モーメント(ベクトルm)の場合と同様であり、説明を省略する。
【0104】
第二の実施形態
図4は、本発明の第二の実施形態にかかるボクセルVおよび磁気センサMSの斜視図である。
図5は、本発明の第二の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0105】
図4を参照して、信号源S1および信号源S2が信号を出力する。信号は、所定の方向を有するベクトルaにより表される。ベクトルaは、例えば、磁気双極子モーメントである。なお、信号源の個数は、例えば2個であるが、磁気センサMSの個数未満であれば3個以上であってもよい。なお、各信号源の出力する信号は、互いに周波数または位相が異なっていてもよいが、そうでなくてもよい。すなわち、各信号源の出力する信号が同一周波数かつ同一位相であってもよい。さらに、各信号源の出力する信号がDC(直流)信号であってもよい。
【0106】
また、信号源S1および信号源S2が存在する空間内の位置は、ボクセルV(例えば、10×10×10=1000個のボクセル)により表される。信号源S1および信号源S2は、それぞれ異なるボクセルVに位置している。なお、1000個のボクセルVの各々を、V1~V1000と表記する。
【0107】
複数(例えば、8行8列の64個)の磁気センサMSは、信号(例えば、磁気双極子モーメント)を受け、互いに直交する3軸X、Y、Zの成分bx、by、bzを測定する。なお、64個の磁気センサMSの各々を、MS1~MS64と表記する。また、信号は、所定の方向を有するベクトルaにより表される。複数の磁気センサMSは、複数の信号源S1、S2から信号を受ける。
【0108】
ここで、ベクトルrを、信号源(磁気双極子)から磁気センサMSまでの方向ベクトルとすると、磁気センサMSにより測定される磁束密度B(ベクトルrの関数)は、ビオサバールの法則により、式(21)のように表される。ただし、μ0は、磁気定数である。また、ベクトルrは、ボクセルVの各々(V1~V1000)と、磁気センサMSの各々MS1~MS64との間の位置関係といえる。
【0109】
【数16】
式(21)より、bxは、以下の式(22)のように表される。ただし、rx、ry、rzは、それぞれ、ベクトルrのX成分、Y成分、Z成分である。また、ax、ay、azは、それぞれ、ベクトルaのX成分、Y成分、Z成分である。
【0110】
【数17】
ここで、式(22)のaxの係数をhxx、ayの係数をhxy、azの係数をhxzとすると(引数はベクトルr)、式(22)は、式(22’)のように表される。
【0111】
式(21)より、byは、以下の式(23)のように表される。
【0112】
【数18】
ここで、式(23)のaxの係数をhyx、ayの係数をhyy、azの係数をhyzとすると(引数はベクトルr)、式(23)は、式(23’)のように表される。
【0113】
式(21)より、bzは、以下の式(24)のように表される。
【0114】
【数19】
ここで、式(24)のaxの係数をhzx、ayの係数をhzy、azの係数をhzzとすると(引数はベクトルr)、式(24)は、式(24’)のように表される。
【0115】
ここで、bx、by、bzは、以下の式(25)のように表される。
【0116】
【数20】
すなわち、bxは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のX成分をまとめた1列の行列である。byは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のY成分をまとめた1列の行列である。bzは、磁気センサMS1~MS64の測定結果のZ成分をまとめた1列の行列である。例えば、bx1、by1、bz1は、磁気センサMS1の測定結果のX、Y、Z成分であり、bx64、by64、bz64は、磁気センサMS64の測定結果のX、Y、Z成分である。
【0117】
ここで、X、Y、Z軸ごとに、磁気センサMSの個数(64個)分まとめられた測定結果bは、bx、by、bzからなる1列の行列である。(式(28)の左辺および式(28’)の左辺を参照)。
【0118】
また、ax、ay、azは、以下の式(26)のように表される。
【0119】
【数21】
すなわち、ベクトルaの成分ax、ay、azは、信号源S1、S2の位置する空間の格子点(ボクセル)の個数(1000個)の成分を有する1列の行列である。例えば、ax1、ay1、az1は、ボクセルV1におけるベクトルaのX、Y、Z成分であり、ax1000、ay1000、az1000は、ボクセルV1000におけるベクトルaのX、Y、Z成分である。
【0120】
ここで、ベクトルaは1列の行列である。しかも、ベクトルaにおいては、その成分ax、ay、azが、X、Y、Z軸ごとに信号源の位置する空間の格子点の個数(1000個)分まとめられている(式(28)および式(28’)における右辺の右側の行列を参照)。
【0121】
図5を参照して、第二の実施形態にかかる信号源特定装置1は、相対位置記録部110、リードフィールド行列導出部120、リードフィールド行列記録部130、位置・ベクトル導出部150を備える。
【0122】
信号源特定装置1は、複数のセンサMS1~MS64の測定結果を受けて、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを特定する。
【0123】
相対位置記録部110は、ボクセルVの各々1000個と、磁気センサMSの各々MS1MS64との間の相対位置であるベクトルrを記録する。
【0124】
リードフィールド行列導出部120は、相対位置記録部110からベクトルrを読み出し、hxx、hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzz(引数はベクトルr)(後述する関係行列H(例えば、リードフィールド行列)の成分)を求める(式(22)~(24)および式(22’)~(24’)を参照)。
【0125】
例えば、hxxは、以下の式(27)のように表される。
【0126】
【数22】
ベクトルrは、ボクセルVの位置と磁気センサMSの位置とによって定まるので、1000×64通りの値をとる。よって、第一係数vx1も、1000×64通りの値をとる。式(27)においては、1行目に磁気センサMS1に関するhxx、2行目に磁気センサMS2に関するhxx、…、64行目に磁気センサMS64に関するhxxを表記している。さらに、式(27)においては、1列目にボクセルV1に関するvx1、2列目にボクセルV2に関するvx1、…、1000列目にボクセルV1000に関するhxxを表記している。例えば、式(27)の1行1000列目の要素hxx(1,1000)は、磁気センサMS1およびボクセルV1000に関するhxxを意味する。すなわち、ベクトルrを、ボクセルV1000から磁気センサMS1までの方向ベクトルとして、式(22)のaxの係数に代入すると、hxx(1,1000)を求めることができる。
【0127】
hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzzも同様に、1000×64通りの値をとる。
【0128】
ここで、式(22’)~(24’)は、以下の式(28)のように表すことができる。
【0129】
【数23】
また、式(28)における左辺をb(すなわち、X、Y、Z軸ごとに磁気センサの個数(64個)分まとめられた測定結果)とする。測定結果bは、1列の行列である。
【0130】
さらに、式(28)における右辺の右側の行列をベクトルa(ベクトルaにおいては、その成分ax、ay、azが、X、Y、Z軸ごとに信号源S1、S2の位置する空間の格子点の個数(1000個)分まとめられている)とする。ベクトルaは、1列の行列である。
【0131】
また、式(28)における右辺の左側の行列をHとする。Hは、測定結果bと、ベクトルaとの関係を表す関係行列(例えば、リードフィールド行列)である。
【0132】
すると、式(28)は式(28’)のように表すことができる。すなわち、測定結果bが、関係行列Hとベクトルaとの積である。
【0133】
リードフィールド行列導出部120は、先に説明したように、関係行列Hの成分を求め、さらに関係行列(リードフィールド行列)Hを導出する。
【0134】
リードフィールド行列記録部130は、リードフィールド行列導出部120から関係行列(リードフィールド行列)Hを受けて、記録する。
【0135】
位置・ベクトル導出部150は、測定結果bと関係行列Hとに基づき、コスト関数を最小とするような、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを導出する。
【0136】
すなわち、位置・ベクトル導出部150は、以下の式(29)を満たすようなベクトルaを導出する。
【0137】
【数24】
コスト関数は、誤差関数と正則化項とを合計したものである。
【0138】
誤差関数は、信号源S1、S2の位置およびベクトルaの真の値と真の値の候補値との誤差を表すものである。誤差関数は、測定結果b、関係行列Hおよび(ベクトルの真の値の)候補値aの関数である。誤差関数は、例えば(1/2)(b-Ha)T(b-Ha)である。
【0139】
正則化項は、正則化パラメータλと、ベクトルaのL1ノルムとの関数である。例えば、正則化項は、正則化パラメータλと、ベクトルaのL1ノルムとの積である。
【0140】
位置・ベクトル導出部150の導出結果aに基づき、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを特定する。例えば、位置・ベクトル導出部150の導出結果aを、信号源の位置およびベクトルであると特定する。例えば、信号源S1がボクセルV500に位置し、信号源S2がボクセルV600に位置している場合、導出結果aにおける(ax500、ay500、az500)が信号源S1の出力する信号のベクトルであり、(ax600、ay600、az600)が信号源S2の出力する信号のベクトルである。
【0141】
次に、第二の実施形態の動作を説明する。
【0142】
リードフィールド行列導出部120により、相対位置記録部110からベクトルrが読み出され、関係行列(リードフィールド行列)Hの成分hxx、hxy、hxz、hyx、hyy、hyz、hzx、hzy、hzzが導出される(式(22)~(24)および式(22’)~(24’)を参照)。
【0143】
リードフィールド行列記録部130は、リードフィールド行列導出部120から関係行列Hを受けて記録する。
【0144】
位置・ベクトル導出部150は、測定結果bと関係行列Hとに基づき、コスト関数を最小とするような、信号源S1、S2の位置およびベクトルaを導出する(式(29)参照)。
【0145】
第二の実施形態によれば、複数の信号源(コヒーレント信号源を含む)の位置推定精度が向上する。すなわち、第二の実施形態はLasso法に則したものなので、コヒーレント信号源であっても、位置推定が可能である。しかも、第二の実施形態によれば、測定結果bおよびベクトルaが、X、Y、Z軸ごとにまとめられており(式(28)および式(28’)を参照)、3軸の測定結果を利用できるため、複数の信号源の位置推定精度が向上する。
【0146】
第三の実施形態
第三の実施形態にかかる信号源特定装置1は、クラスタリング部180a、重心導出部180b、加重平均部180cを備える点が、第二の実施形態にかかる信号源特定装置1と異なる。
【0147】
図6は、本発明の第三の実施形態にかかる信号源特定装置1の構成を示す機能ブロック図である。第三の実施形態にかかる信号源特定装置1は、相対位置記録部110、リードフィールド行列導出部120、リードフィールド行列記録部130、位置・ベクトル導出部150、クラスタリング部180a、重心導出部180b、加重平均部180cを備える。
【0148】
相対位置記録部110、リードフィールド行列導出部120、リードフィールド行列記録部130および位置・ベクトル導出部150は、第二の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0149】
図7は、クラスタリング部180aによる信号源S1~S4の位置のクラスタリング(
図7(a))、重心導出部180bによるクラスタの重心の導出(
図7(b))、加重平均部180cによるベクトルの加重平均の導出(
図7(c))を示す図である。ただし、
図7(b)および
図7(c)においては、信号源S1、S2を図示省略する。
【0150】
図7(c)を参照して、位置G1が信号源の真の位置であり、信号のベクトルがag1である。しかし、位置G1が、ボクセルに合致していない場合、信号源の位置がS1およびS2であると導出してしまう。さらに、信号のベクトルも、A1およびA2と導出してしまう。
【0151】
さらに、位置G2が信号源の真の位置であり、信号のベクトルがag2である。しかし、位置G2が、ボクセルに合致していない場合、信号源の位置がS3およびS4であると導出してしまう。さらに、信号のベクトルも、A3およびA4と導出してしまう。
【0152】
このような位置・ベクトル導出部150の導出結果(S1~S4およびA1~A4)から、真の信号源の位置G1、G2および真の信号のベクトルag1、ag2を求める。
【0153】
まず、
図7(a)を参照して、クラスタリング部180aは、位置・ベクトル導出部150により導出された信号源の位置S1~S4を、信号源の個数(2個)のクラスタに分類する。
図7(a)の例では、信号源の位置S1およびS2をクラスタC1に、信号源の位置S3およびS4をクラスタC2に分類する。なお、信号源の位置S1とS2との距離をD1、信号源の位置S3とS4との距離をD2とする。
【0154】
次に、
図7(b)を参照して、重心導出部180bは、クラスタごとに、信号源の重心を導出する。クラスタC1における信号源の重心G1は、信号源の位置S1およびS2を結ぶ線分上にある。なお、S1G1/S2G1=A2の大きさ/A1の大きさ、である。クラスタC2における信号源の重心G2は、信号源の位置S3およびS4を結ぶ線分上にある。なお、S3G2/S4G2=A4の大きさ/A3の大きさ、である。
【0155】
なお、クラスタへの分類が、K-means法に則して行われるようにしてもよい。この場合、まず、2個の重心をランダムに配置してから、重心と信号源の位置S1~S4との距離の近さに応じて、信号源の位置S1~S4をクラスタに分類する。
【0156】
さらに、クラスタごとに信号源の重心を導出してから、導出した重心と信号源の位置S1~S4との距離の近さに応じて、信号源の位置S1~S4をクラスタに分類する。この重心の導出およびクラスタへの分類を、導出した重心が導出直前の重心と同じ位置になるまで、繰り返す。
【0157】
信号源の位置を、このようにして導出された重心G1、G2であると特定する。
【0158】
さらに、
図7(c)を参照して、加重平均部180cが、クラスタごとに、位置・ベクトル導出部150により導出されたベクトルaを、信号源と重心との距離に反比例させて平均する。
【0159】
クラスタC2を例にとって説明すると、ベクトルA3を(P, Q, 0)とし、およびベクトルA4を(R, S, 0)とすると、真の信号のベクトルag2を((P*D22+R*D21)/D2, (Q*D22+S*D21)/D2, 0)とする。なお、クラスタC1については同様であるので、説明を省略する。
【0160】
信号のベクトルを、このようにして導出された加重平均((P*D22+R*D21)/D2, (Q*D22+S*D21)/D2, 0)であると特定する。
【0161】
次に、第三の実施形態の動作を説明する。
【0162】
まず、相対位置記録部110、リードフィールド行列導出部120、リードフィールド行列記録部130および位置・ベクトル導出部150の動作は、第二の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0163】
位置・ベクトル導出部150の出力は、クラスタリング部180aに与えられ、信号源S1~S4の位置のクラスタリングが行われる(
図7(a)参照)。次に、重心導出部180bによるクラスタC1、C2の重心の導出が行われる(
図7(b)参照)。この重心G1、G2が、真の信号源の位置である。最後に、加重平均部180cによるベクトルの加重平均が導出される(
図7(c)参照)。加重平均ag1、ag2が、真の信号のベクトルである。
【0164】
第三の実施形態によれば、信号源の位置がボクセルに合致していない場合であっても、信号源の位置および信号のベクトルを求めることができる。
【0165】
なお、上述の実施形態においては、信号が磁気双極子モーメントであったが、電気双極子モーメントであってもよい。
【0166】
また、上述の実施形態においては、測定結果bが、関係行列Hとベクトルaとの積であったが、測定結果bのκ乗が、関係行列Hのκ乗とベクトルaとの積であるようにしてもよい(ただし、κ>1)(以下の式(30)参照)。
【0167】
【数25】
上述の実施形態においては、ベクトルaが、測定結果bおよび関係行列Hの関数となるが(例えば、a=f(b,H))、測定結果bのκ乗が、関係行列Hのκ乗とベクトルaとの積である場合は、a=f(b,H)のb、Hにbのκ乗、Hのκ乗を代入することにより、ベクトルaを導出できる。
【0168】
第四の実施形態
第四の実施形態は、第一、第二および第三の実施形態にかかる信号源特定装置1を信号源特定部22として備えた画像出力装置20に関するものである。
【0169】
図8は、第四の実施形態にかかる画像出力装置20の構成を示す機能ブロック図である。第四の実施形態にかかる画像出力装置20は、信号源特定部22、信号源画像追加部24、画像表示部26を備える。
【0170】
信号源特定部22は、複数の信号源S1、S2から所定の方向を有するベクトルにより表される信号を受け、互いに直交する3軸の成分を測定する複数のセンサ(磁気センサMS)の測定結果を受けて、信号源S1、S2の位置およびベクトルの向きを特定する。信号源S1、S2の位置およびベクトルの向きは、信号源画像追加部24に与えられる。
【0171】
信号源特定部22として、第一、第二および第三の実施形態にかかる信号源特定装置1を用いることができる。なお、物体OBJが、複数の信号源S1、S2を包含している。信号源S1、S2としては、例えば、磁気マーカー(永久磁石など)や、磁性体(鉄筋など)がある。一般的に、物体OBJを目視しても、信号源S1、S2も信号ベクトルの向きも知覚することはできない。
【0172】
撮像部2は、例えばカメラであり、信号源S1、S2を、物体OBJごと撮像する。一般的に、撮像部2の撮像結果を見ても、信号源S1、S2も信号ベクトルの向きも知覚することはできない。撮像部2の撮像結果には、物体OBJおよび磁気センサMSがあるだけである。撮像部2の撮像結果は、信号源画像追加部24に与えられる。
【0173】
信号源画像追加部24は、撮像部2の撮像結果における、信号源特定部22の特定した信号源S1、S2の位置に相当する部分に、信号源S1、S2を示す画像を追加する。
【0174】
画像表示部26は、信号源画像追加部24の追加結果を表示する。
【0175】
図9は、画像表示部26の表示例を示す図である。撮像部2の撮像結果(物体OBJおよび磁気センサMS)に、信号源S1、S2を示す画像(白と黒に塗り分けられた長方形)が追加されている。なお、信号源S1、S2を示す画像中の黒塗り部分がN極、白塗り部分がS極を示す。信号源S1、S2を示す画像において、N極およびS極が分かっているので、磁気ベクトルの向きも分かる。
【0176】
次に、第四の実施形態の動作を説明する。
【0177】
信号源S1、S2が、物体OBJごと、撮像部2により撮像され、その結果が信号源画像追加部24に与えられる。
【0178】
磁気センサMSが、信号源S1、S2から所定の方向を有する磁気ベクトルにより表される信号を受けると、互いに直交する3軸の成分を測定する。その測定結果は、信号源特定部22に与えられ、信号源S1、S2の位置およびベクトルの向きが得られる。信号源S1、S2の位置およびベクトルの向きは、信号源画像追加部24に与えられる。
【0179】
信号源画像追加部24によって、信号源S1、S2を示す画像が、撮像部2の撮像結果における、信号源特定部22の特定した信号源S1、S2の位置に相当する部分に追加される。追加結果は、画像表示部26に与えられ、画像として表示される(
図9参照)。
【0180】
第四の実施形態によれば、磁場などの信号源S1、S2を可視化することができる。
【0181】
なお、第四の実施形態には以下に示すような変形例1、2および3が考えられる。
【0182】
変形例1
図10は、第四の実施形態の変形例1における画像表示部26の表示例を示す図である。信号源画像追加部24が、撮像結果に、さらに座標軸X、YおよびZを追加する。
【0183】
変形例2
図11は、第四の実施形態の変形例2における画像表示部26の表示例を示す図である。信号源画像追加部24が、複数の時点(例えば、時点t1、t2)に関する信号源S1、S2を示す画像を追加する。例えば、
図11を参照して、信号源S1、S2が物体OBJごと破線矢印方向に移動したと仮定する。この場合、時点t1における撮像結果(物体OBJおよび磁気センサMS)に信号源S1、S2を示す画像を追加し、さらに、時点t2(>t1)における撮像結果(物体OBJおよび磁気センサMS)に信号源S1、S2を示す画像を追加する。
【0184】
変形例3
なお、信号源画像追加部24が、信号源S1、S2の位置の座標と撮像部2による撮像の視点の座標とに基づき、視点を変更した場合の追加結果を出力することも考えられる。
【0185】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば信号源特定部22および信号源画像追加部24を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0186】
1 信号源特定装置
2 撮像部
20 画像出力装置
22 信号源特定部
24 信号源画像追加部
26 画像表示部
OBJ 物体
MS 磁気センサ
S1、S2 信号源
X、YおよびZ 座標軸
t1、t2 時点