(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159628
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】コンクリート用混和剤及びコンクリート用混和剤を含むコンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20231025BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20231025BHJP
C04B 24/10 20060101ALI20231025BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20231025BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20231025BHJP
C04B 28/08 20060101ALI20231025BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
C04B24/26 F
C04B24/26 A
C04B24/26 B
C04B24/06 A
C04B24/10
C04B18/14 A
C04B28/02
C04B28/08
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069439
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】亀島 健太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 信一
【テーマコード(参考)】
4G112
4J127
【Fターム(参考)】
4G112MD00
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PA29
4G112PB17
4G112PB19
4G112PB28
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4G112PB31
4J127AA07
4J127BB021
4J127BB101
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4J127BB151
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4J127CC091
4J127CC152
4J127CC153
4J127FA52
(57)【要約】
【課題】細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができるコンクリート用混和剤を提供する。
【解決手段】(A)加水分解性基を有する共重合体を含む、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加する、コンクリート用混和剤であり、前記(A)加水分解性基を有する共重合体が、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体であるコンクリート用混和剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性基を有する共重合体を含む、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加する、コンクリート用混和剤であり、
前記(A)加水分解性基を有する共重合体が、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体であるコンクリート用混和剤。
【請求項2】
さらに、(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を含む請求項1に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項3】
前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、0.30以上10以下である請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項4】
前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、1.1以上5.0以下である請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項5】
前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーが、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
8は、炭素数2~20のアルキレン基、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物である請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項6】
前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーが、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
12は、水素、メチル基または炭素数2~20の脂肪族炭化水素基、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド基、aは、1~350の整数、mは、0または1、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物である請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項7】
前記コンクリート用混和剤中に、前記(A)加水分解性基を有する共重合体を0.50質量%以上40.0質量%以下含む請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項8】
前記コンクリート用混和剤中に、前記(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を0.10質量%以上15.0質量%以下含む請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤。
【請求項9】
請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤を含み、セメントの質量に対する水の質量割合を示す水セメント比が45%以上であるコンクリート。
【請求項10】
請求項1または2に記載のコンクリート用混和剤を含み、高炉スラグ微粉末を30質量%超含むセメントが配合されたコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの流動保持性(流動性)を調整するコンクリート用混和剤及びコンクリート用混和剤を含むコンクリートに関し、特に、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加するコンクリート用混和剤及びコンクリート用混和剤を含むコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、橋梁、道路等の土木構造物や、ビル等の建築物を施工する際、一般的には、コンクリート等の建設材料が使用される。建設材料として使用されるコンクリートは、製造プラントにて製造された後、コンクリート運搬車両(トラックアジテータ)により建設現場まで運搬され、ポンプ車に荷卸され、打設場所までポンプ圧送されて施工される。従って、建設材料として使用されるコンクリートは、製造されてから現場で打ち込まれるまでには、長い時間を要する。このため、流動保持性がコンクリートに付与されていないと、施工性が大きく低下する。
【0003】
一方で、コンクリートには、細骨材として砂が配合されるが、粒形判定実積率が高く、また、粒形の優れた砂である天然砂、山砂は入手が難しくなってきている。そこで、細骨材として、天然砂、山砂に代えて、一部、砕砂を使用することがある。しかし、細骨材として砕砂を用いると、天然砂、山砂と比較して、コンクリートの流動保持性とハンドリング(特に経過時間後のハンドリング性)が低下する傾向がある。コンクリートのハンドリング性が低下すると、コンクリートをポンプ圧送する際に、コンクリートが配管等を閉塞してしまう恐れがある。上記から、コンクリートの流動保持性と経過時間後のハンドリング性を確保することは、コンクリートを施工していくうえで重要である。
【0004】
そこで、細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用したコンクリートにも流動保持性を付与できる混和剤として、(A)カルボキシル基を有する共重合体と、(B)末端にヒドロキシル基またはグリセロール基である単量体を含む共重合体と、(C)重量平均分子量が6,000~50,000であるポリエチレングリコールと、を含む混和剤が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、天然砂、山砂と比較して、砕砂は、粒形判定実積率が低く、その表面に角部が残っているので、コンクリートに空気が多く連行されやすい傾向がある。細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用したコンクリートは、その練混ぜ直後には規定量の空気が連行されていても、運搬中にコンクリートがアジテートされることで、時間の経過とともにコンクリートに空気が巻き込まれていき、空気量が規定値よりも多くなってしまう、すなわち、空気安定性が得られないという問題があった。特許文献1の混和剤では、空気安定性の点で改善の必要性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができるコンクリート用混和剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)加水分解性基を有する共重合体を含む、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加する、コンクリート用混和剤であり、
前記(A)加水分解性基を有する共重合体が、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体であるコンクリート用混和剤。
[2]さらに、(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を含む[1]に記載のコンクリート用混和剤。
[3]前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、0.30以上10以下である[1]または[2]に記載のコンクリート用混和剤。
[4]前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、1.1以上5.0以下である[1]または[2]に記載のコンクリート用混和剤。
[5]前記(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーが、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
8は、炭素数2~20のアルキレン基、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物である[1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤。
[6]前記(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーが、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
12は、水素、メチル基または炭素数2~20の脂肪族炭化水素基、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド基、aは、1~350の整数、mは、0または1、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物である[1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤。
[7]前記コンクリート用混和剤中に、前記(A)加水分解性基を有する共重合体を0.50質量%以上40.0質量%以下含む[1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤。
[8]前記コンクリート用混和剤中に、前記(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を0.10質量%以上15.0質量%以下含む[1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤。
[9][1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤を含み、セメントの質量に対する水の質量割合を示す水セメント比が45%以上であるコンクリート。
[10][1]または[2]のいずれか1つに記載のコンクリート用混和剤を含み、高炉スラグ微粉末を30質量%超含むセメントが配合されたコンクリート。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である(A)加水分解性基を有する共重合体を含み、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加することにより、細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用した前記コンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができる。
【0010】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、さらに、(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を含むことにより、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、ハンドリング性がさらに向上する。
【0011】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、0.30以上10以下であることにより、優れた流動保持性と空気安定性を確実に得ることができる。
【0012】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が、1.1以上5.0以下であることにより、より長時間にわたっての流動保持性がさらに向上する。
【0013】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、(A)加水分解性基を有する共重合体を0.50質量%以上40.0質量%以下含むことにより、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性をより確実に付与しつつ、空気安定性をより確実に向上させることができる。
【0014】
本発明のコンクリート用混和剤の態様によれば、(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を0.10質量%以上15.0質量%以下含むことにより、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、流動保持性と空気安定性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコンクリート用混和剤は、(A)加水分解性基を有する共重合体を含む、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を含むコンクリートに添加する、コンクリート用混和剤であり、前記(A)加水分解性基を有する共重合体が、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である。本発明のコンクリート用混和剤は、少なくとも上記成分が分散媒(例えば、水)に分散、溶解された溶液である。
【0016】
本発明のコンクリート用混和剤では、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である、(A)成分の加水分解性基を有する共重合体を含み、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートに添加することにより、細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用した前記コンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができる。
【0017】
以下に、本発明のコンクリート用混和剤の配合成分について、詳細を説明する。
【0018】
<(A)加水分解性基を有する共重合体>
本発明のコンクリート用混和剤では、(A)成分である加水分解性基を有する共重合体が、必須成分である。加水分解性基を有する共重合体は、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である。従って、加水分解性基を有する共重合体は、加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーとポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを必須の構成成分とする少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である。上記から、加水分解性基を有する共重合体は、加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位とポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位とを有している。
【0019】
加水分解性基を有する共重合体が配合されることで、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができる。また、加水分解性基を有する共重合体が配合されることで、適度な凝結時間を付与できる。また、加水分解性基を有する共重合体は、加水分解性基が加水分解されることで、セメント等に対する活性結合部を生成するので、加水分解性基が加水分解されたエチレン性不飽和モノマーの残部を有する共重合体は、コンクリート中における分散性が向上する。セメント等に対する活性結合部としては、カルボン酸基が好ましい。
【0020】
(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマー
加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーとは、コンクリート中において、加水分解によりセメント等に対する活性結合部を生成するモノマーである。加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位は、ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位とあいまって、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させる。また、加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位は、加水分解されるとセメント等に対する活性結合部を生成して、コンクリート中において、経過時間とともにセメント等を分散させることができる。加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーである(メタ)アクリル酸エステルのうち、アクリル酸エステルが好ましく、ヒドロキシアルキルアクリレートがより好ましく、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートが特に好ましい。
【0021】
加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
8は、炭素数2~20のアルキレン基、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物を挙げることができる。このうち、R
7は、水素が好ましく、R
8は、炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~4のアルキレン基が特に好ましい。
【0022】
なお、上記一般式(1)の化合物では、エステル結合が加水分解されることで、加水分解性基を有する共重合体からHO-R8-OHで表される化合物が離脱する。
【0023】
(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマー
ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位は、加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位とあいまって、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させる。
【0024】
ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーのポリアルキレンオキサイドエーテル鎖の繰り返し単位は、2以上が好ましく、10以上が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、下記一般式(2)
【化4】
(式中、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、R
12は、水素、メチル基または炭素数2~20の脂肪族炭化水素基、AOは、炭素数2~4のアルキレンオキサイド基、aは、1~350の整数、mは、0または1、nは、0~2の整数を表す。)で表される化合物を挙げることができる。このうち、R
11は、メチル基が好ましく、mが1且つnが0の場合には、R
11はメチル基が特に好ましい。また、R
12は、水素、メチル基または炭素数2~5の脂肪族炭化水素基が好ましく、水素またはメチル基が特に好ましい。また、aは、1~350の整数であるが、その下限値は、2が好ましく、3がより好ましく、5がさらに好ましく、10が特に好ましく、20が最も好ましい。一方で、aの上限値は、200が好ましく、100が特に好ましい。
【0025】
必要に応じて、加水分解性基を有する共重合体は、加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーとポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマー以外のエチレン性不飽和モノマー(以下、「他のエチレン性不飽和モノマー」ということがある。)由来の構造単位を有していてもよい。他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸を挙げることができる。加水分解性基を有する共重合体が、さらに不飽和カルボン酸由来の構造単位を有していることにより、分散性を所定の時間経過後にも発揮することができる。
【0026】
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸等を挙げることができる。
【0027】
ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比((a1)成分のモル数/(a2)成分のモル数)は、特に限定されないが、優れた流動保持性と空気安定性を確実に得る点から、0.30以上10以下が好ましく、0.75以上7.5以下がより好ましく、より長時間にわたっての流動保持性がさらに向上する点から、1.1以上5.0以下がさらに好ましく、1.5以上4.5以下が特に好ましい。
【0028】
他のエチレン性不飽和モノマー由来の構造単位を有する場合、ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する他のエチレン性不飽和モノマーのモル比(他のエチレン性不飽和モノマーのモル数/(a2)成分のモル数)は、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない範囲で選択可能であり、例えば、0.10以上2.00以下が好ましく、0.20以上1.50以下が特に好ましい。
【0029】
加水分解性基を有する共重合体の含有量(固形分)は、特に限定されないが、その下限値は、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性をより確実に付与しつつ、空気安定性をより確実に向上させることができる点から、コンクリート用混和剤中に、0.50質量%が好ましく、1.00質量%がより好ましく、5.00質量%が特に好ましい。一方で、加水分解性基を有する共重合体の含有量の上限値は、過剰な減水性を防止する点から、コンクリート用混和剤中に、40質量%が好ましく、35質量%が特に好ましい。
【0030】
本発明のコンクリート用混和剤では、必要に応じて、さらに、(B)ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を配合してもよい。さらに、(B)成分であるヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を含むことにより、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、ハンドリング性がさらに向上する。
【0031】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、上記ヒドロキシカルボン酸のナトリウム等の金属塩等を挙げることができる。これらのヒドロキシカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、糖類としては、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、デンプン糖化物が挙げられる。これらの糖類のうち、グルコース、フルクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、サッカロース、デキストリンが好ましい。糖類の重量分子量は、特に限定されないが、コンクリートに粘性が付与されるのを確実に防止する点から、3,000以下であることが好ましい。これらの糖類は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類の含有量(固形分)は、特に限定されないが、ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類を配合する場合、その下限値は、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、流動保持性と空気安定性がさらに向上する点から、コンクリート用混和剤中に、0.10質量%が好ましく、1.00質量%がより好ましく、2.00質量%が特に好ましい。一方で、ヒドロキシカルボン酸及び/または糖類の含有量の上限値は、適切な減水性と凝結遅延を得る点から、コンクリート用混和剤中に、20.0質量%が好ましく、15.0質量%がより好ましく、12.0質量%が特に好ましい。
【0033】
本発明のコンクリート用混和剤では、必要に応じて、さらに、(C)リグニン誘導体を配合してもよい。さらに、(C)成分であるリグニン誘導体を含むことにより、水セメント比の高い貧配合のコンクリートであっても、適度な減水性、優れたハンドリング性と流動保持性を付与することに寄与する。リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸系のリグニン誘導体、リグニンスルホン酸系化合物と芳香族系水溶性化合物との反応物であるリグニン誘導体等を挙げることができる。また、リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸系分散剤(AE減水剤)を挙げることができる。
【0034】
リグニン誘導体の含有量(固形分)は、特に限定されないが、その下限値は、水セメント比の高い貧配合のコンクリートに優れたハンドリング性と流動保持性を付与する点から、コンクリート用混和剤中に、0.20質量%が好ましく、0.30質量%がより好ましく、1.00質量%が特に好ましい。一方で、リグニン誘導体の含有量(固形分)の上限値は、コンクリートの過度な粘度上昇と過剰な減水性とを確実に防止して、施工性とハンドリング性を得る点から、コンクリート用混和剤中に、20.0質量%が好ましく、15.0質量%が特に好ましい。
【0035】
本発明のコンクリート用混和剤では、必要に応じて、さらに、加水分解性基を有さない共重合体を配合してもよい。さらに、加水分解性基を有さない共重合体を含むことにより、減水性と流動保持性の向上に寄与することができる。
【0036】
加水分解性基を有さない共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体(好ましくは、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコールメタクリル酸エステル共重合体)、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコールビニルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-マレイン酸-ポリアルキレングリコールビニルエーテル共重合体、マレイン酸-ポリアルキレングリコールビニルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコールアリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-マレイン酸-ポリアルキレングリコールアリルエーテル共重合体、マレイン酸-ポリアルキレングリコールアリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコールメタリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-マレイン酸-ポリアルキレングリコールメタリルエーテル共重合体、マレイン酸-ポリアルキレングリコールメタリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-ポリアルキレングリコールイソプレニルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸-マレイン酸-ポリアルキレングリコールイソプレニルエーテル共重合体、マレイン酸-ポリアルキレングリコールイソプレニルエーテル共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
加水分解性基を有さない共重合体の含有量(固形分)は、特に限定されないが、加水分解性基を有さない共重合体を配合する場合、その下限値は、減水性と流動保持性の向上に確実に寄与する点から、コンクリート用混和剤中に、1.00質量%が好ましく、2.00質量%が特に好ましい。一方で、加水分解性基を有さない共重合体の含有量の上限値は、適切な減水性を得る点から、コンクリート用混和剤中に、25.0質量部が好ましく、20.0質量%がより好ましく、16.0質量%が特に好ましい。
【0038】
本発明のコンクリート用混和剤の固形分は、特に限定されないが、15.0質量%以上40.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上35.0質量%以下が特に好ましい。また、本発明のコンクリート用混和剤の固形分の分散媒としては、水が好ましい。
【0039】
本発明のコンクリート用混和剤のセメント等の水硬性結合材への添加量は、特に限定されないが、セメント等の水硬性結合材100質量部に対して、0.30質量部以上2.00質量部以下が好ましく、0.50質量部以上1.50質量部以下が特に好ましい。
【0040】
コンクリートには、後述するセメント等の水硬性結合材以外に、骨材が配合される。骨材としては、砂等の細骨材、砂利、砕石等の粗骨材が挙げられる。細骨材として使用される砂としては、川砂、海砂、山砂、砕砂等が挙げられる。このうち、本発明のコンクリート用混和剤は、細骨材として、川砂、海砂、山砂と比較して粒形判定実積率が低く、その表面に角部が残っている砕砂が含まれている細骨材が使用されたコンクリートに適用することができる。具体的には、本発明のコンクリート用混和剤は、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材が配合されているコンクリートに適用することができる。
【0041】
本発明のコンクリート用混和剤は、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、空気安定性を向上させることができる。従って、本発明のコンクリート用混和剤は、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材を使用したコンクリートであっても、運搬中に時間の経過とともにコンクリートに空気が巻き込まれて空気量が規定値よりも多くなってしまうことを防止できる。
【0042】
本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリートに配合される細骨材としては、粒形判定実積率が57%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材でもよく、粒形判定実積率が55%以下の砕砂を20体積%以上含む細骨材でもよい。細骨材中に20体積%以上含まれる砕砂の粒形判定実積率の下限値としては、例えば、50%が挙げられる。粒形判定実積率が50%を下回る砕砂を細骨材として使用すると、骨材同士が干渉してコンクリートの流動性を阻害する傾向がある。また、本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリートに配合される細骨材としては、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を30体積%以上含む細骨材でもよく、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を50体積%以上含む細骨材でもよく、粒形判定実積率が60%以下の砕砂を70体積%以上含む細骨材でもよい。細骨材中における粒形判定実積率が60%以下の砕砂の配合量の上限値としては、例えば、100体積%または90体積%が挙げられる。
【0043】
本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリート中における細骨材の配合量は、例えば、20質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0044】
本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリートとしては、例えば、セメントの質量に対する水の質量割合を示す水セメント比が45%以上の貧配合のコンクリートが挙げられる。また、本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリートの水セメント比としては、50%以上または60%以上でもよく、45%未満でもよい。また、本発明のコンクリート用混和剤が適用されるコンクリートの水セメント比の上限としては、例えば、70%または65%が挙げられる。上述の貧配合のコンクリートでは、水セメント比が低い、貧配合ではないコンクリートと比較して、細骨材の影響が大きくなるため、本発明のコンクリート用混和剤の効果が顕著になる。
【0045】
コンクリートに配合されるセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、リン酸マグネシウムセメント、リン酸マグネシウムカリウムセメント、スルホアルミン酸セメント、ポゾランセメント、スラグセメント等の水硬性セメントが挙げられる。
【0046】
水セメント比が45%以上の貧配合のコンクリートの場合には、スラグセメントが使用されることがある。スラグセメントには、高炉スラグ微粉末を含む高炉セメントが挙げられる。高炉セメントは、混合される高炉スラグ微粉末の分量により、JIS A 5211によりA種(5質量%を超え30質量%以下)、B種(30質量%を超え60質量%以下)、C種(60質量%を超え70質量%以下)の3種類に分類されている。このうち、B種が最も多く生産され、幅広い分野で使用されている。また、高炉スラグ微粉末はセメントと別途に計量されコンクリート中に配合されることもあるが、高炉スラグ微粉末とセメントを混合した混合セメントをコンクリート中に配合する場合においても、セメントと高炉スラグ微粉末を別途計量してコンクリート中に配合する場合においても、高炉スラグ微粉末の配合量が増加すると、所要の減水性を得るためのコンクリート混和剤の添加量が減少する傾向にある。従って、高炉スラグ微粉末を含む高炉セメントを使用すると、所望の性能、特に、流動保持性が得られない場合がある。本発明のコンクリート用混和剤は、特に、高炉スラグ微粉末の配合量が30質量%を超え70質量%以下の場合でも、流動保持性が得られ、高炉スラグ微粉末の配合量が30質量%を超え60質量%以下の場合に、流動保持性がより確実に得られる。
【0047】
なお、本発明のコンクリート用混和剤は、必要に応じて、適宜、他の添加剤を添加することができる。他の添加剤としては、従来から慣用されているAE剤、分子量3000を超えるポリサッカライド誘導体、乾燥収縮低減剤、促進剤、起泡剤、消泡剤、防錆剤、急結剤等が挙げられる。他の添加剤は、本発明のコンクリート用混和剤の成分の一部として含有させてもよいし、本発明のコンクリート用混和剤とは別に、上記したコンクリートに添加してもよい。他の添加剤を本発明のコンクリート用混和剤の成分の一部として添加する場合、他の添加剤の配合量は、本発明のコンクリート用混和剤の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されず、本発明のコンクリート用混和剤に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
【実施例0048】
以下、本発明のコンクリート用混和剤並びにこれを用いたコンクリートについて、実施例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例、比較例で使用する共重合体について、構成モノマーを下記表1に示す。なお、下記表1に示す通り、共重合体1~5が加水分解性基を有する共重合体であり、共重合体6、7が加水分解性基を有さない共重合体である。
【0050】
【0051】
上記した共重合体を配合して調製したコンクリート用混和剤の成分を下記表2に示す。なお、表2において、配合量は混和剤中の固形分として質量%にて記載した。また、表2中、リグニン誘導体は、日本製紙株式会社製「サンエキスM」及びボレガード社製「Borresperse NA」を使用した。GNaはグルコン酸ナトリウムを意味する。なお、表2の配合物以外は全て水である。
【0052】
【0053】
また、表2の混和剤20で配合した(メタ)アクリル系粘性調整成分である高分子1の構成モノマーを下記表3に示す。
【0054】
【0055】
コンクリート試験は以下の手順に従って実施した。なお、試験用コンクリートの調製は、下記表4の材料を用いて、下記表5に示す配合条件にて行った。なお、表5中のW/Cは水セメント比、s/aは全骨材に対する細骨材の容積比率を意味する。
【0056】
練混ぜ方法及び試料の採取
環境温度20℃にて、実機試験用の強制二軸ミキサで練混ぜを行った。材料投入は、混和剤を含んだ水と細骨材を同時投入し、続いて、セメント、最後に粗骨材を投入し、45秒間練り混ぜた。なお、練混ぜ後、トラックアジテータに積み込みし、練混ぜから180分後まで、低速攪拌(アジテート)を行い、下記所定時間に試料を排出した。なお、排出前に10秒間の高速攪拌後に試料を採取した。
【0057】
試験項目は下記の通りである。また、下記試験はいずれも環境温度20℃にて行った。
【0058】
試験項目
(1)スランプ試験
JIS A 1101に準じて、練混ぜ直後、30分後、60分後、90分後、120分後、150分後、180分後のスランプを測定した。下記評価基準に従ってスランプ値を評価し、90分後でもスランプ値が○評価以上を流動保持性(保持)に優れる、60分後でスランプ値が○評価以上であり90分後でスランプ値が×評価を流動保持性(保持)が良好、60分後でスランプ値が×評価を流動保持性(保持)が不良、と評価した。
◎:スランプ値が20.5cmから18.0cm以内。
○:スランプ値が18.0cm未満から15.5cm以内。
×:スランプ値20.5cmを超える又は15.5cm未満。
【0059】
(2)空気安定性試験
JIS A 1128に準じて、0分、30分後、60分後、90分後、120分後、150分後、180分後の空気量(体積%)を測定した。下記評価基準に従って評価し、この評価結果を「空気安定性」とした。
〇:良好。0分の空気量を基準とし、0分~60分後まで空気量の増減値が-1.0体積%以上+1.0体積%以下。
×:不良。0分~60分後の間に空気量の増減値が-1.0%未満又は+1.0%を超える。
【0060】
(3)凝結
JIS A 1147に準じて凝結時間を測定し、始発時間により下記評価基準に従って評価した。
◎:優れる。始発時間が6時間から10時間以内。
○:良好。始発時間が10時間を超えて17時間以内。
×:不良。始発時間が6時間未満又は18時間を超える。
【0061】
(4)圧縮強度
JIS A 1108に準じて28日の圧縮強度を測定し、下記評価基準に従って評価した。
○:良好。28日の圧縮強度が34N/mm2以上。
×:不良。28日の圧縮強度が34N/mm2未満。
【0062】
(5)経時後の状態(ハンドリング性)
評価者5名による官能評価で、練混ぜから30分後以降のハンドリング性につき、以下の基準により評価した。
◎:優れる。スコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが非常に良好で、スコップからのコンクリートの離れが非常に良好。
○:良好。スコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが良好で、スコップからのコンクリートの離れが良好。
×:不良。スランプが17.5cm未満又はスコップでコンクリートを切り返した際のハンドリングが悪く、スコップからのコンクリートの離れが悪い。
【0063】
(6)分散
JIS A 1128に準じて0分のスランプを測定した。配合1においては、セメント質量に対する混和剤の添加量(表中Cx%と表記)を1.00としたときのスランプ値を基準に、配合2においては、セメント質量に対する混和剤の添加量(表中Cx%と表記)を0.90としたときのスランプ値を基準に、下記評価基準に従って評価した。
○:良好。スランプ値が18.5cmから22.5cm。
×:不良。スランプ値が18.5cm未満または22.5cmを超える。
【0064】
コンクリート試験に用いた材料を下記表4に、その配合を下記表5に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
実施例の測定結果を下記表6に、比較例と参考例の測定結果を下記表7に、実施例の評価結果を下記表8に、比較例と参考例の評価結果を下記表9に、それぞれ、示す。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
上記から、(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーと(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーとを含む少なくとも2種からなるモノマーの共重合体である、(A)加水分解性基を有する共重合体が配合された、実施例1~15のコンクリート用混和剤では、粒形判定実積率が54.2%の砕砂を80体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加しても、コンクリートは、空気安定性に優れ、また、優れた流動保持性(保持)と経時後の状態(ハンドリング性)を有していた。また、実施例1~15のコンクリート用混和剤では、粒形判定実積率が54.2%の砕砂を80体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加しても、コンクリートは、分散性、凝結性、圧縮強度にも優れていた。
【0073】
特に、ヒドロキシカルボン酸または糖類をさらに配合した実施例12、13、15のコンクリート用混和剤では、ハンドリング性がさらに向上した。
【0074】
また、(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が1.6以上4.1以下の(A)加水分解性基を有する共重合体を使用した実施例7~9のコンクリート用混和剤は、(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が0.32である実施例5のコンクリート用混和剤、(a2)ポリアルキレンオキサイドエーテル鎖を有するエチレン性不飽和モノマーに対する(a1)加水分解性を有するエチレン性不飽和モノマーのモル比が0.86である実施例6のコンクリート用混和剤と比較して、流動保持性がさらに向上した。
【0075】
一方で、加水分解性基を有する共重合体が配合されず、リグニン誘導体とヒドロキシカルボン酸を配合した比較例1のコンクリート用混和剤、加水分解性基を有さない共重合体とヒドロキシカルボン酸を配合した比較例2、3のコンクリート用混和剤、ヒドロキシカルボン酸と糖類を配合した比較例4のコンクリート用混和剤、(メタ)アクリル系粘性調整成分と加水分解性基を有さない共重合体とヒドロキシカルボン酸を配合した比較例5のコンクリート用混和剤では、いずれも、粒形判定実積率が54.2%の砕砂を80体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加すると、コンクリートは、空気安定性が得られなかった。また、比較例1~3のコンクリート用混和剤では、粒形判定実積率が54.2%の砕砂を80体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加すると、コンクリートは、流動保持性も得られなかった。また、比較例1~4のコンクリート用混和剤では、粒形判定実積率が54.2%の砕砂を80体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加すると、コンクリートは、ハンドリング性も得られなかった。
【0076】
なお、参考例1~3から、実施例1のコンクリート用混和剤、比較例1、2のコンクリート用混和剤を、粒形判定実積率が60.4%の山砂を100体積%含む細骨材を使用したコンクリートに添加すると、コンクリートは、空気安定性に優れ、また、優れた流動保持性(保持)と経時後の状態(ハンドリング性)を有しており、分散性、凝結性、圧縮強度にも優れていた。従って、実施例のコンクリート用混和剤でも比較例のコンクリート用混和剤でも、山砂を100体積%含む高品質の細骨材を使用したコンクリートに添加すると、コンクリートに空気安定性の低下という問題が生じないことが判明した。
本発明のコンクリート用混和剤は、細骨材の少なくとも一部に砕砂を使用したコンクリートであっても、コンクリートに優れた流動保持性とハンドリング性を付与しつつ、コンクリートの空気安定性を向上させることができるので、人工骨材を使用したコンクリートへ適用するコンクリート用混和剤の分野で利用価値が高い。