(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159638
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】反応器、及びケミカルヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
F25B 37/00 20060101AFI20231025BHJP
F25B 30/04 20060101ALI20231025BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20231025BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F25B37/00
F25B30/04 510Z
F28D20/00 G
F25B17/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069461
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新家 大地
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP04
3L093PP07
3L093QQ03
3L093QQ05
(57)【要約】
【課題】ケミカルヒートポンプのサイズの小型化が可能となる反応器、及びケミカルヒートポンプを提供する。
【解決手段】反応器21は、ケミカルヒートポンプに用いられる。反応器21は、第1熱交換器と化学蓄熱材とを有する蓄熱部31と、第2熱交換器と水蒸気を吸収する吸収材とを有する蒸気回収部41とを備える。反応器21は、蓄熱部31が配置される蓄熱室と蒸気回収部41が配置される蒸気回収室とを有する容器51と、蓄熱室と蒸気回収室との連通及び非連通を切り替える開閉弁V1とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルヒートポンプに用いられる反応器であって、
第1熱交換器と化学蓄熱材とを有する蓄熱部と、
第2熱交換器と水蒸気を吸収する吸収材とを有する蒸気回収部と、
前記蓄熱部が配置される蓄熱室と前記蒸気回収部が配置される蒸気回収室とを有する容器と、
前記蓄熱室と前記蒸気回収室との連通及び非連通を切り替える開閉弁と、を備える、反応器。
【請求項2】
前記容器は、
外側容器と、
前記外側容器内に配置される内側容器と、を備え、
前記蓄熱室は、前記内側容器の内部の空間であり、
前記蒸気回収室は、前記外側容器と前記内側容器との間の空間である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記蒸気回収室は、真空断熱可能に構成されている、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
前記外側容器及び前記内側容器は、円筒形の容器である、請求項2又は請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
反応器を備えるケミカルヒートポンプであって、
前記反応器は、第1熱交換器と化学蓄熱材とを有する蓄熱部と、
第2熱交換器と水蒸気を吸収する吸収材とを有する蒸気回収部と、
前記蓄熱部が配置される蓄熱室と前記蒸気回収部が配置される蒸気回収室とを有する容器と、
前記蓄熱室と前記蒸気回収室との連通及び非連通を切り替える開閉弁と、を備える、ケミカルヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器、及びケミカルヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、工場等で発生する排熱を再利用するための装置として、ケミカルヒートポンプが知られている。ケミカルヒートポンプは、反応器と蒸気回収器とを備えている。反応器は、脱水反応により蓄熱し、かつ水和反応により放熱する化学蓄熱材を収容する。蒸気回収器は、ケミカルヒートポンプの蓄熱動作時において、反応器内の化学蓄熱材の脱水反応により生じた水蒸気を回収する。蒸気回収器は、水蒸気を吸収する吸収材を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような反応器及び蒸気回収器を備えるケミカルヒートポンプのサイズは、大型化する傾向にある。このため、例えば、ケミカルヒートポンプの設置場所の確保が困難となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する反応器は、ケミカルヒートポンプに用いられる反応器であって、第1熱交換器と化学蓄熱材とを有する蓄熱部と、第2熱交換器と水蒸気を吸収する吸収材とを有する蒸気回収部と、前記蓄熱部が配置される蓄熱室と前記蒸気回収部が配置される蒸気回収室とを有する容器と、前記蓄熱室と前記蒸気回収室との連通及び非連通を切り替える開閉弁と、を備える。この構成によれば、化学蓄熱材の反応と吸収材の反応を一つの反応器により行うことができる。
【0006】
上記反応器において、前記容器は、外側容器と、前記外側容器内に配置される内側容器と、を備え、前記蓄熱室は、前記内側容器の内部の空間であり、前記蒸気回収室は、前記外側容器と前記内側容器との間の空間であってもよい。この構成によれば、蓄熱室は、蒸気回収室により囲まれるように配置されるため、蓄熱室と外部との不要な伝熱を抑えることができる。
【0007】
上記反応器において、前記蒸気回収室は、真空断熱可能に構成されていてもよい。この構成によれば、蓄熱室と外部との不要な伝熱をより抑えることができる。
上記反応器において、前記外側容器及び前記内側容器は、円筒形の容器であってもよい。この構成によれば、例えば、反応器の容器の耐圧性を容易に高めることができる。
【0008】
ケミカルヒートポンプは、反応器を備えるケミカルヒートポンプであって、前記反応器は、第1熱交換器と化学蓄熱材とを有する蓄熱部と、第2熱交換器と水蒸気を吸収する吸収材とを有する蒸気回収部と、前記蓄熱部が配置される蓄熱室と前記蒸気回収部が配置される蒸気回収室とを有する容器と、前記蓄熱室と前記蒸気回収室との連通及び非連通を切り替える開閉弁と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ケミカルヒートポンプのサイズの小型化が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態における蒸気発生システムを示す概略図である。
【
図6】
図6は、放熱動作及び再生動作を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、反応器、及びケミカルヒートポンプの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のケミカルヒートポンプは、蒸気発生システム11の蒸気発生装置12に用いられる。蒸気発生装置12は、ケミカルヒートポンプ13と、水蒸気を供給先へ供給する蒸気供給部14とを備えている。
【0012】
<ケミカルヒートポンプの概要>
ケミカルヒートポンプ13は、排熱源HSから供給される熱を蓄熱した後、排熱源HSよりも高い温度の放熱を行う装置である。ケミカルヒートポンプ13は、反応器21を備えている。反応器21は、化学蓄熱材の蓄熱反応及び脱水反応を行う。ケミカルヒートポンプ13は、排熱を回収する排熱回収部61と、排熱回収部61から反応器21に熱を輸送する熱輸送経路71とを備えている。また、ケミカルヒートポンプ13は、復水器81を備えている。
【0013】
<反応器>
図1~
図3に示すように、反応器21は、蓄熱部31と、蒸気回収部41とを有している。反応器21は、蓄熱部31及び蒸気回収部41を収容する容器51と、開閉弁V1とを備えている。
【0014】
(蓄熱部)
蓄熱部31は、第1熱交換器32と化学蓄熱材HMとを有している。第1熱交換器32は、化学蓄熱材HMと熱交換する。第1熱交換器32としては、例えば、フィンチューブ型の熱交換器、フィンレス熱交換器等が挙げられる。なお、以下で説明する熱交換器についても、同様の熱交換器を用いることができる。
【0015】
反応器21は、第1熱交換器32に接続される第1供給管P1a及び第1排出管P1bとを備えている。第1供給管P1aは、第1熱交換器32に熱媒体を供給する。また、第1排出管P1bは、第1熱交換器32から熱媒体を排出する。
【0016】
化学蓄熱材HMは、ケミカルヒートポンプ13の蓄熱動作時に脱水反応する。また、化学蓄熱材HMは、ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時に水和反応する。化学蓄熱材HMとしては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材HMは、化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、アルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材HMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
化学蓄熱物質の一種である塩化カルシウムの脱水反応及び水和反応は、例えば、下記式(A)で表される。
CaCl2・H2O+H2O⇔CaCl2・2H2O・・・(A)
(蒸気回収部)
蒸気回収部41は、第2熱交換器42と、水蒸気を吸収する吸収材LMとを有している。第2熱交換器42は、吸収材LMと熱交換する。反応器21は、第2熱交換器42に接続される第2供給管P2a及び第2排出管P2bとを備えている。第2供給管P2aは、熱媒体を第2熱交換器42に供給する。第2排出管P2bは、第2熱交換器42から熱媒体を排出する。
【0018】
吸収材LMは、蓄熱部31の化学蓄熱材HMから発生した水蒸気を回収する。このような吸収材LMは、化学蓄熱材HMを脱水反応させる温度を下げるために用いられる。すなわち、吸収材LMを用いることで、より低い温度の排熱であっても、化学蓄熱材HMの脱水反応を進行させることが可能となる。また、吸収材LMは、排熱源HSの加熱媒体の温度において、脱水反応可能な物質が用いられる。これにより、排熱源HSを利用して吸収材LMを再生することができる。
【0019】
冷却源CSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Cは、排熱源HSの温度における化学蓄熱材HMの平衡蒸気圧VP1Hよりも低いことで、化学蓄熱材HMの脱水反応を好適に促進することができる。一方、排熱源HSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Hは、同じく排熱源HSの温度における化学蓄熱材HMの平衡蒸気圧VP1Hよりも高いことが好ましい。このような吸収材LMは、化学蓄熱材HMよりも脱水し易いため、排熱源HSを用いて吸収材LMを再生することで、次の蓄熱動作に効率的に使用することができる。また、排熱源HSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Hは、冷却源CSの温度における水の平衡蒸気圧VP3Cよりも高いことが好ましい。これにより、排熱源HSにより吸収材LMを加熱して発生した水蒸気を冷却源CSによる冷却で凝縮させることで、吸収材LMの再生を効率的に行うことができる。
【0020】
吸収材LMとしては、例えば、ゼオライト、水酸化リチウム、硫酸マグネシウム、シュウ化ストロンチウム、活性炭、多孔性金属錯体(MOF)等が挙げられる。吸収材LMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
吸収材LMの一種である臭化ストロンチウムの脱水反応及び水和反応は、例えば、下記式(B)で表される。
SrBr2・H2O+5H2O⇔SrBr2・6H2O・・・(B)
(容器及び開閉弁)
反応器21の容器51は、蓄熱部31が配置される蓄熱室52と蒸気回収部41が配置される蒸気回収室53とを有している。開閉弁V1は、蓄熱室52と蒸気回収室53との連通及び非連通を切り替える。すなわち、開閉弁V1の開状態では、蓄熱室52と蒸気回収室53とが連通された状態となる。一方、開閉弁V1の閉状態では、蓄熱室52と蒸気回収室53とが非連通の状態となる。開閉弁V1の具体例としては、仕切弁、バタフライ弁等が挙げられる。
【0022】
図2~
図4に示すように、本実施形態の容器51は、外側容器54と、外側容器54内に配置される内側容器55とを備えている。
図4に示すように、蓄熱室52は、内側容器55の内部の空間により構成される。蒸気回収室53は、外側容器54と内側容器55との間の空間により構成される。上記開閉弁V1は、
図3に模式的に示すように、内側容器55を構成する壁を開閉するように設けられている。外側容器54及び内側容器55は、円筒形の容器である。外側容器54及び内側容器55を構成する材料としては、例えば、金属材料、樹脂系材料等が挙げられる。
【0023】
図2~
図4に示すように、反応器21は、蓄熱室52に接続される蓄熱室流路管F1を備えている。蓄熱室流路管F1は、蓄熱室52の内部と反応器21の外部との間に水蒸気を流通させる流路である。反応器21は、蒸気回収室53に接続される蒸気回収室流路管F2を備えている。蒸気回収室流路管F2は、蒸気回収室53の内部と反応器21の外部との間に水蒸気を流通させる流路である。
【0024】
蒸気回収室53は、真空断熱可能に構成されている。すなわち、蒸気回収室53は、真空に耐え得る耐圧性と、真空断熱効果が発揮される圧力まで減圧可能な気密性とを有している。蒸気回収室53の真空断熱効果を高めるという観点から、蒸気回収室53内の圧力は、10-3[Pa]以下に設定されることが好ましい。蒸気回収室53の圧力は、図示を省略した減圧装置により低下させることができる。
【0025】
<排熱回収部及び熱輸送経路>
排熱回収部61は、排熱源HSから熱輸送される加熱媒体が供給される熱交換器を備えている。排熱回収部61に供給される加熱媒体の形態は、液体(排水等)であってもよいし、気体であってもよい。
【0026】
熱輸送経路71は、排熱回収部61の熱交換器の一部として構成される第1熱輸送管72と、反応器21の蓄熱部31における第1熱交換器32の一部として構成される第2熱輸送管73とを備えている。熱輸送経路71は、第1熱輸送管72と第2熱輸送管73との間で熱輸送する中間熱輸送管74をさらに備えている。
【0027】
第1熱輸送管72、第2熱輸送管73、及び中間熱輸送管74としては、例えば、ヒートパイプを好適に用いることができる。例えば、第1熱輸送管72の内部には、毛細管現象を利用して作動流体(水)を中間熱輸送管74側に送るウィックが配置されている。周知のようにウィックは、毛細管構造を有する多孔質体であり、熱輸送経路71において作動流体を一方向に送る役割を果たす。排熱回収部61では、排熱源HSから排熱回収部61に供給される熱媒体と第1熱輸送管72との間で熱交換が行われる。
【0028】
<復水器>
復水器81は、熱交換器を備えている。復水器81の熱交換器は、冷却源CSから供給される冷却媒体と、復水器81内に供給される水蒸気との熱交換を行う。復水器81は、ケミカルヒートポンプ13において、吸収材LMを再生する再生動作時に発生した水蒸気を凝縮する。また、復水器81は、ケミカルヒートポンプ13の蓄熱動作時に第2熱輸送管73の内部で凝縮した凝縮水を貯留する。また、復水器81は、ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時に第2熱輸送管73に送水する。詳述すると、ケミカルヒートポンプ13は、復水器81内の水を第2熱輸送管73に送る送液ポンプ82と、第2熱輸送管73と復水器81の容器との間で水を循環させる循環路83とを備えている。なお、復水器81は、外部から水を補充可能に構成されている。
【0029】
<蒸気供給部>
図1に示すように、蒸気発生装置12の蒸気供給部14は、供給先としての蒸気ヘッダSHに連結される部分である。蒸気供給部14は、蒸気移送パイプ部15から送られる蒸気の圧力を検出する検出器14aと、供給先への蒸気の供給を制御する制御弁14bとを備えている。制御弁14bを制御する制御部は、例えば、検出器14aで検出された圧力と、予め決定した閾値との対比結果に基づいて制御弁14bを開閉動作させる。
【0030】
なお、制御部は、検出器14aで検出された圧力と、供給先の蒸気ヘッダSH内の圧力との対比結果に基づいて制御弁14bを開閉動作させるものであってもよい。蒸気ヘッダSH内の水蒸気の圧力は、検出器SH1で検出することができる。例えば、蒸気ヘッダSH内の水蒸気の圧力よりも、蒸気供給部14内の蒸気の圧力が高くなったとき、制御弁14bを開動作する供給開始の制御を行うように制御部を構成することができる。また、例えば、蒸気ヘッダSH内の蒸気の圧力よりも、蒸気供給部14内の蒸気の圧力が低くなったとき、制御弁14bを閉動作する供給停止の制御を行うように制御部を構成することができる。
【0031】
蒸気移送パイプ部15は、ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時に第2熱輸送管73の内部で発生させた水蒸気を蒸気供給部14へ送る。蒸気移送パイプ部15は、ケミカルヒートポンプ13の中間熱輸送管74に接続されている。
【0032】
<蒸気発生システム>
蒸気発生システム11は、化学蓄熱材HMの水和反応を進行させる水蒸気を蓄熱室52内に導入する導入経路L1を備えている。導入経路L1は、エゼクタEJ及びボイラBを備えている。
【0033】
エゼクタEJに吸入させる水蒸気は、蒸気発生装置12における排熱回収部61を利用して発生させることが好ましい。なお、エゼクタEJに吸入させる水蒸気は、例えば、排熱を利用した蒸発器を別途設けることで発生させることもできる。
【0034】
エゼクタEJの駆動蒸気としては、ボイラBで発生する蒸気の一部を用いることができる。ボイラBとしては、工場等の施設において、別の用途で既設されているものを用いることができる。なお、エゼクタEJの駆動蒸気は、既設の蒸気配管から供給することもできる。
【0035】
蒸気発生システム11における流体の流路には、開閉弁又は流量調整弁等の制御弁が設けられている。蒸気発生装置12におけるケミカルヒートポンプ13の蓄熱動作と放熱動作は、制御弁の開閉により切り替えることができる。また、蒸気発生システム11では、配管や容器内の温度や圧力を計測するセンサの検出値に基づいて、流量調整弁の開度を調整してもよい。
【0036】
<蒸気発生システムの動作>
蒸気発生システム11は、蓄熱動作、放熱動作、及び再生動作を繰り返すことで、排熱を利用して水蒸気を供給することができる。
【0037】
(蓄熱動作)
図5には、蓄熱動作中の蒸気発生システム11を示している。ケミカルヒートポンプ13の熱輸送経路71は、排熱回収部61から反応器21の蓄熱部31に熱を輸送する。熱輸送経路71の第1熱輸送管72、第2熱輸送管73、及び中間熱輸送管74がヒートパイプの場合を一例として熱輸送経路71について説明する。排熱回収部61内の第1熱輸送管72の内部で蒸発した作動流体(水)は、中間熱輸送管74を通じて蓄熱部31内の第2熱輸送管73に流入する。第2熱輸送管73内において、作動流体は、蓄熱部31内の化学蓄熱材HMと熱交換することで凝縮する。第2熱輸送管73内で凝縮した作動流体は、復水器81に貯留される。復水器81に貯留された作動流体は、第1熱輸送管72内に供給される。このように熱輸送経路71を作動流体が一方向に還流するループ型ヒートパイプとして動作させることができる。
【0038】
蓄熱部31に輸送された熱は、化学蓄熱材HMを加熱する。これにより、化学蓄熱材HMの脱水反応が行われる。このとき、反応器21の開閉弁V1が開状態とされることで、反応器21の蓄熱室52と蒸気回収室53とは、連通した状態とされる。これにより、蓄熱室52内において化学蓄熱材HMの脱水反応で発生した水蒸気は、蒸気回収室53内の蒸気回収部41によって回収される。詳述すると、蒸気回収室53内では、吸収材LMの水和反応が行われる。このとき、蒸気回収部41の第2熱交換器42に冷却源CSから冷却媒体を供給することで、吸収材LMの水和反応を促進することができる。
【0039】
(放熱動作及び再生動作)
図6には、放熱動作及び再生動作中の蒸気発生システム11を示している。放熱動作では、ケミカルヒートポンプ13の蓄熱部31において水蒸気を発生させることができる。水蒸気は、蒸気移送パイプ部15を通じて蓄熱部31から蒸気供給部14へ送られる。
【0040】
放熱動作時では、排熱回収部61内の第1熱輸送管72の内部で水蒸気を発生させる。詳述すると、排熱回収部61内の第1熱輸送管72に復水器81から水を供給する。第1熱輸送管72内の水が熱交換器により加熱されることで、水蒸気となる。
【0041】
一方、ボイラBは、水蒸気をエゼクタEJに駆動蒸気として供給する。エゼクタEJは、第1熱輸送管72の内部で発生した水蒸気を吸引する。このようなエゼクタEJは、ボイラBで発生する水蒸気よりも圧力が低く、第1熱輸送管72の内部で発生する水蒸気よりも圧力の高い水蒸気を吐出する。エゼクタEJから吐出された水蒸気は、反応器21の蓄熱室52内に導入される。これにより、蓄熱室52内では、化学蓄熱材HMの水和反応が行われる。
【0042】
蓄熱部31内の第2熱輸送管73内の水は、化学蓄熱材HMの水和反応の発熱によって加熱される。これにより、第2熱輸送管73内の水は、水蒸気となる。蒸気供給部14は、制御弁14bの開動作により、供給先である蒸気ヘッダSHに蒸気を供給する。制御弁14bの開動作は、蒸気供給部14に供給された水蒸気が所定の圧力に達した後に行われる。
【0043】
第2熱輸送管73内への水の供給は、復水器81内の水を用いて行うことができる。第2熱輸送管73内に水を供給する場合、第2熱輸送管73から蒸気移送パイプ部15への流路は、閉鎖されるとともに、循環路83が開放される。この状態で、復水器81内の水は、送液ポンプ82を用いて第2熱輸送管73に送液することができる。一方、第2熱輸送管73内の水蒸気を蒸気供給部14へ移送する場合、循環路83が閉鎖されるとともに、第2熱輸送管73から蒸気移送パイプ部15への流路が開放される。このような流路の切替操作は、例えば、三方弁を用いることで容易に行うことができる。
【0044】
再生動作では、排熱源HSから加熱媒体を蒸気回収部41の第2熱交換器42に供給することで、吸収材LMを加熱する。これにより、吸収材LMの脱水反応が行われる。吸収材LMの脱水反応によって発生した水蒸気は、復水器81に導入される。復水器81に導入された水蒸気は、復水器81の熱交換器により冷却されることで凝縮する。これにより、蒸気回収室53内の圧力を低下させることができるため、吸収材LMの脱水反応を進行させることができる。
【0045】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ケミカルヒートポンプ13に用いられる反応器21は、第1熱交換器32と化学蓄熱材HMとを有する蓄熱部31と、第2熱交換器42と水蒸気を吸収する吸収材LMとを有する蒸気回収部41とを備えている。反応器21は、蓄熱部31が配置される蓄熱室52と蒸気回収部41が配置される蒸気回収室53とを有する容器51を備えている。反応器21は、蓄熱室52と蒸気回収室53との連通及び非連通を切り替える開閉弁V1を備えている。この構成によれば、化学蓄熱材HMの反応と吸収材LMの反応を一つの反応器21により行うことができる。従って、ケミカルヒートポンプ13のサイズの小型化が可能となる。
【0046】
(2)反応器21の容器51は、外側容器54と、外側容器54内に配置される内側容器55とを備えている。反応器21の蓄熱室52は、内側容器55の内部の空間であり、反応器21の蒸気回収室53は、外側容器54と内側容器55との間の空間である。この場合、蓄熱室52は、蒸気回収室53により囲まれるように配置されるため、蓄熱室52と外部との不要な伝熱を抑えることができる。従って、蓄熱室52の熱損失が抑えられることで、ケミカルヒートポンプ13の効率を高めることが可能となる。
【0047】
(3)反応器21の蒸気回収室53は、真空断熱可能に構成されている。この場合、蓄熱室52と外部との不要な伝熱をより抑えることができる。従って、蓄熱室52の熱損失が抑えられることで、ケミカルヒートポンプ13の効率をより高めることが可能となる。
【0048】
(4)反応器21の外側容器54及び内側容器55は、円筒形の容器である。この場合、例えば、反応器21の容器51の耐圧性を容易に高めることができる。従って、反応器21の耐久性を容易に高めることが可能となる。
【0049】
(5)反応器21の開閉弁V1は、内側容器55を構成する壁を開閉するように設けられている。この場合、例えば、反応器21をより小型化することが可能となる。
<変更例>
上記実施形態を次のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・蒸気発生システム11のボイラB及びエゼクタEJを省略してもよい。すなわち、エゼクタEJ及びボイラBを用いずに、排熱回収部61で生成した水蒸気を蓄熱室52に導入してもよい。この場合であっても、化学蓄熱材HMを水和反応させることができる。
【0051】
・蓄熱動作時において、反応器21の蓄熱部31の第2熱輸送管73中では、凝縮水が発生する。このように第2熱輸送管73内で生じた凝縮水を蓄熱動作後の放熱動作において水蒸気の生成に用いてもよい。
【0052】
・再生動作時において、蒸気回収部41を加熱する加熱媒体として、排熱回収部61で生成した水蒸気を用いてもよい。
・蓄熱動作時において、蒸気回収部41を冷却する冷却媒体として、復水器81の水を用いてもよい。
【0053】
・反応器21の内側容器55は、円筒形以外の形状であってもよい。反応器21の外側容器54は、円筒形以外の形状であってもよい。円筒形以外の形状としては、例えば、四角筒形等の多角筒形が挙げられる。
【0054】
・反応器21の蒸気回収室53は、真空断熱されない構成に変更することもできる。
・反応器21の開閉弁V1は、外側容器54の内側に配置されているが、外側容器54の外方に配置することもできる。この場合、例えば、蓄熱室流路管F1と、蒸気回収室流路管F2とを外側容器54の外方で連結する流路管を設けるとともに、その流路管に開閉弁を設ければよい。
【0055】
・反応器21において、内側容器55の内部の空間を蒸気回収室とし、外側容器54と内側容器55との間の空間を蓄熱室としてもよい。
・反応器21の容器51は、外側容器54と内側容器55とを備えているが、一つの容器と、その容器内を仕切る仕切壁を備える構成に変更することもできる。すなわち、容器51は、蓄熱室52と蒸気回収室53とは、一方の室で他方の室を取り囲む構成に限定されず、左右や上下に沿って並列された二室からなる構成であってもよい。
【0056】
・ケミカルヒートポンプ13は、工場等の排熱源HSから発生する排熱を利用する排熱利用システムに用いることができる。例えば、ケミカルヒートポンプ13の用途は、蒸気を供給する用途に限定されず、加熱対象を加熱する用途等であってもよい。加熱対象は、例えば、熱を利用して発電を行う発電設備であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
13…ケミカルヒートポンプ
21…反応器
31…蓄熱部
32…第1熱交換器
41…蒸気回収部
42…第2熱交換器
51…容器
52…蓄熱室
53…蒸気回収室
54…外側容器
55…内側容器
HM…化学蓄熱材
LM…吸収材
V1…開閉弁