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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159642
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】紙器および包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/02 20060101AFI20231025BHJP
   B65D 5/54 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B65D5/02 B
B65D5/54 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069466
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】上山 奈々
(72)【発明者】
【氏名】駒板 重文
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AA04
3E060AB03
3E060BA08
3E060CE05
3E060CE07
3E060CE12
3E060CE22
3E060CE23
3E060CF05
3E060DA30
(57)【要約】
【課題】意図せずにジッパー部のミシン目が破断することを防止できる紙器および包装容器を提供する。
【解決手段】一対の側板部7は、上部側の部分における前後方向の中間部に高さ方向に延びる第1側板折曲線71を有し、一対の側板部7が第1側板折曲線71で折り曲げられると、前板部5の上縁部と、後板部の上縁部とが近接し、左右方向から見た形状が下側から上側に向かって漸次前後方向の長さが短くなり、上側に尖った形状になる第1状態となり、筒状部31は、高さ方向の中間部に全周にわたって設けられたジッパー部8を有し、ジッパー部8における一対の側板部7,7に設けられる側ジッパー部83は、第1側板折曲線71と交差して設けられ、左右方向から見た形状が側板部7の前端部から第1側板折曲線71の位置に向かって漸次上側に向かって斜め方向に延び、第1側板折曲線71の位置から側板部7の後端部に向かって下側に向かって斜めに延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に延びる筒状部と、
前記筒状部の前記高さ方向の一方側の端部に設けられる底板部と、を有し、
前記筒状部は、
前記底板部における前記高さ方向と交差する前後方向の一方側の縁部から前記高さ方向の他方側に延びる前板部と、
前記底板部における前記前後方向の他方側の縁部から前記高さ方向の他方側に延びる後板部と、
前記底板部における前記高さ方向および前記前後方向と交差する幅方向の両側それぞれの縁部から前記高さ方向の他方側に延びて前記前板部と前記後板部とを接続する一対の側板部と、を有し、
前記一対の側板部は、前記高さ方向の他方側の部分における前記前後方向の中間部に前記高さ方向に延びる第1側板折曲線を有し、
前記一対の側板部が前記第1側板折曲線で折り曲げられると、前記前板部の前記高さ方向の他方側の縁部と、前記後板部の前記高さ方向の他方側の縁部とが近接し、前記幅方向から見た形状が高さ方向の一方側から他方側に向かって漸次前後方向の長さが短くなり、前記高さ方向の他方側に尖った形状になる第1状態となり、
前記筒状部は、前記高さ方向の中間部に全周にわたって設けられたジッパー部を有し、
前記ジッパー部における前記一対の側板部に設けられる側ジッパー部は、
前記第1側板折曲線と交差して設けられ、
前記幅方向から見た形状が前記側板部の前記前後方向の一方側の端部から前記第1側板折曲線の位置に向かって漸次前記高さ方向の一方側から他方側に向かって斜め方向に延び、前記第1側板折曲線の位置から前記側板部の前記前後方向の他方側の端部に向かって漸次前記高さ方向の他方側から一方側に向かって斜めに延びている紙器。
【請求項2】
前記一対の側板部には、前記側ジッパー部における前記前後方向の一方側の端部と、前記前後方向の他方側の端部と、を結ぶ第2側板折曲線が設けられている請求項1に記載の紙器。
【請求項3】
前記第1状態と、
前記一対の側板部が前記第1側板折曲線で折り曲げられず平板状であり、前記前板部の前記高さ方向の他方側の縁部と、前記後板部の前記高さ方向の他方側の端部とが前記前後方向に離れ、前記幅方向から見た形状が矩形になる第2状態と、に切り替え可能であり、
前記後板部の前記高さ方向の他方側の縁部に接続された蓋板部を有し、
前記蓋板部は、
前記第1状態では、前記前板部と重なり、
前記第2状態では、前記前板部と前記後板部との間隔を塞ぐとともに、前記前板部と重なり、
前記前板部は、
前記第1状態の前記蓋板部を留める第1係止部と、
前記第2状態の前記蓋板部を留める第2係止部と、を有する請求項1または請求項2に記載の紙器。
【請求項4】
前記請求項1または2に記載の紙器と、
食品が充填されて前記紙器に収容されるパウチと、を有する包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙器および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などが充填されるパウチと、このパウチを収容する紙器とを有する包装容器が知られている。(例えば、特許文献1、2参照)。紙器とは、紙製の外箱などを示す。特許文献1に開示された紙器(スリーブ)は、ミシン目による切り取り線が設けられ所定の形状に切り取り可能である。このような紙器には、切り取りを容易にするため、ミシン目を平行に設けたジッパー部が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-241447号公報
【特許文献2】特開平9-77135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示された紙器(外箱)のように側方から見た外形を三角形にするためには、紙器の側部を構成する紙材に折曲線を設け、折曲線で鋭角を成すように折り曲げている。しかしながら、鋭角を成すように折り曲げられる部分にジッパー部を設けると、紙材を折曲げる際に意図せずジッパー部のミシン目が破断してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、意図せずにジッパー部のミシン目が破断することを防止できる紙器および包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る紙器は、高さ方向に延びる筒状部と、前記筒状部の前記高さ方向の一方側の端部に設けられる底板部と、を有し、前記筒状部は、前記底板部における前記高さ方向と交差する前後方向の一方側の縁部から前記高さ方向の他方側に延びる前板部と、前記底板部における前記前後方向の他方側の縁部から前記高さ方向の他方側に延びる後板部と、前記底板部における前記高さ方向および前記前後方向と交差する幅方向の両側それぞれの縁部から前記高さ方向の他方側に延びて前記前板部と前記後板部とを接続する一対の側板部と、を有し、前記一対の側板部は、前記高さ方向の他方側の部分における前記前後方向の中間部に前記高さ方向に延びる第1側板折曲線を有し、前記一対の側板部が前記第1側板折曲線で折り曲げられると、前記前板部の前記高さ方向の他方側の縁部と、前記後板部の前記高さ方向の他方側の縁部とが近接し、前記幅方向から見た形状が高さ方向の一方側から他方側に向かって漸次前後方向の長さが短くなり、前記高さ方向の他方側に尖った形状になる第1状態となり、前記筒状部は、前記高さ方向の中間部に全周にわたって設けられたジッパー部を有し、前記ジッパー部における前記一対の側板部に設けられる側ジッパー部は、前記第1側板折曲線と交差して設けられ、前記幅方向から見た形状が前記側板部の前記前後方向の一方側の端部から前記第1側板折曲線の位置に向かって漸次前記高さ方向の一方側から他方側に向かって斜め方向に延び、前記第1側板折曲線の位置から前記側板部の前記前後方向の他方側の端部に向かって漸次前記高さ方向の他方側から一方側に向かって斜めに延びている。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る包装容器は、上記の紙器と、食品が充填されて前記紙器に収容されるパウチと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、意図せずにジッパー部のミシン目が破断することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による紙器が第1状態の包装容器を示す斜視図である。
図2】紙器が第2状態で蓋板部が開けられた状態の包装容器を示す斜視図である。
図3】紙材の平面図である。
図4図1の正面図である。
図5図1の背面図である。
図6図1の側面図である。
図7】紙器が第2状態で蓋板部が閉められた状態の包装容器を示す斜視図である。
図8図7の側面図である。
図9】ジッパー部で切断された紙器の斜視図である。
図10】三角部が内側に折り曲げられた紙器の下部分の斜視図である。
図11】三角部が外側に折り曲げられた紙器の下部分の斜視図である。
図12】非常食セットが箱に多数備蓄された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による紙器および包装容器について、図1図12に基づいて説明する。
図1および図2に示す本実施形態による包装容器1は、非常食(備蓄食)セット11に設けられる。包装容器1は、食品が充填されるパウチ2(図2参照)と、パウチ2を収容する紙器3と、を有する。紙器3は、パウチ2を収容する紙製の外箱である。本実施形態の包装容器1は、1つの紙器3に2つのパウチ2が収容される。図1は、紙器3の蓋板部33を閉めた状態の包装容器1を示している。図2は、紙器3の蓋板部33を開けた状態の包装容器1を示している。
【0011】
パウチ2は、樹脂フィルム積層体からなる例えば略長方形状の袋体である。樹脂フィルム積層体の3辺または4辺が熱シールされている。
例えば、一方のパウチ2にはアルファ米が充填され、他方のパウチ2にはスープなどが充填される。パウチ2に充填されたアルファ米は、パウチ2の内部に湯を注ぐことによって加熱調理されてもよい。パウチ2に充填されたスープは、パウチ2の内部に湯を注ぐことによって加熱調理されてもよいし、パウチ2の内部に湯や水を注がずに食べられるものであってもよい。
【0012】
紙器3は、図3に示す1枚の紙材4を折り曲げて、必要箇所を貼り合わせて組み立てられている。
紙器3は、筒状部31と、底板部32と、蓋板部33と、を有する。筒状部31が延びる方向、すなわち筒状部31の軸方向を高さ方向と表記する。高さ方向に直交する一方向を左右方向と表記し、高さ方向および左右方向に直交する方向を前後方向と表記する。左右方向は、特許請求の範囲の幅方向に相当する。図面では、左右方向を矢印Xで示し、前後方向を矢印Yで示し、高さ方向を矢印Zで示す。高さ方向の一方側を下側、他方側を上側と表記する。前後方向の一方側を前側、他方側を後側と表記する。左右方向のうち、前後方向の前側を向いた状態の右側、左側をそのまま、右側、左側と表記する。
底板部32は、筒状部31の高さ方向の一方側の端部すなわち下端部311に接続されている。蓋板部33は、筒状部31の高さ方向の他方側、すなわち上側に接続されている。紙器3の説明において上端部を頂部36と表記することがある。
【0013】
底板部32は、板面が高さ方向を向く姿勢に配置される。底板部32は、高さ方向から見た形状が左右方向に延びる長尺の長方形である。本実施形態の底板部32は、複数の紙片が繋がっている。
筒状部31は、前板部5と、後板部6と、一対の側板部7と、を有する。前板部5、一方の側板部7、後板部6、他方の側板部7の順に、筒状部31の周方向に配列されている。周方向とは、筒状部31の軸線回りの方向である。筒状部31の周方向に隣り合う板部は連続している。筒状部31は、上端部312が開口している。
【0014】
図1図2および図4に示すように、前板部5は、底板部32の前縁部321から上方に延びている。図1図2および図5に示すように、後板部6は、底板部32の後縁部322から上方に延びている。図1図2および図6に示すように、一方の側板部7は、底板部32の左側の縁部323から上方に延びている。他方の側板部7は、底板部32の右側の縁部324(図1および図2参照)から上方に延びている。以下では、一方の側板部7を左側の側板部7と表記し、他方の側板部7を右側の側板部7と表記することがある。
前板部5および後板部6は、平板状である。後板部6の板面は、長方形である。前板部5の板面は、後板部6と同じ長方形に切欠部51(図2参照)が形成された形状ある。切欠部51は、前板部5の上部側に形成されている。
【0015】
一対の側板部7は、左右方向に対称である。側板部7は、図1に示す折り曲げられた状態、および図2に示す広げられた状態の両方の状態とすることが可能である。側板部7が折り曲げられた状態を第1状態と表記し、側板部7が広げられた状態を第2状態と表記する。第2状態の側板部7は、板面が左右方向を向いている。
【0016】
図1図2および図6に示すように、一対の側板部7,7には、それぞれ、第1側板折曲線71,第2側板折曲線72、第3側板折曲線73および第4側板折曲線74が設けられている。側板部7は、上記の各折曲線71-74において折り曲げ可能である。第1側板折曲線71は、側板部7の前後方向の中央部において上下方向に直線状に延びている。第1側板折曲線71は、側板部7の高さ方向の中間位置から上端部まで延びている。第2側板折曲線72は、側板部7における高さ方向の中間において前後方向全体にわたって延びている。第2側板折曲線72は、側板部7における第1側板折曲線71の下端711よりも上側となる位置に配置されている。第2側板折曲線72は、第1側板折曲線71と交差している。第3側板折曲線73は、第1側板折曲線71の下端711から側板部7の前側かつ下側の角部まで延びている。第4側板折曲線74は、第1側板折曲線71の下端711から側板部7の後側かつ下側の角部まで延びている。
【0017】
左側の側板部7は、第1側板折曲線71、第3側板折曲線73および第4側板折曲線74が右側に突出するように折り曲げられる。右側の側板部7は、第1側板折曲線71、第3側板折曲線73および第4側板折曲線74が左側に突出するように折り曲げられる。すなわち、一対の側板部7,7は、それぞれ第1側板折曲線71、第3側板折曲線73および第4側板折曲線74が紙器3の内側に突出するように折り曲げられる。第2側板折曲線72については後述する。
【0018】
一対の側板部7,7は、上記のように折り曲げられると、第1側板折曲線71よりも前側の部分と、第1側板折曲線71よりも後側の部分とが近づく。第1側板折曲線71が側板部7の上部側に設けられているとともに、第1側板折曲線71の下側には第3側板折曲線73、第4側板折曲線74および側板部7の下縁部に囲まれた三角形の部分76ある。このため、側板部7は、第1側板折曲線71がある上部側の方が、その下方よりもより折り曲げられる。これにより、上記のように折り曲げられた側板部7は、図6に示すように左右方向から見た形状が、下側から上側に向かって漸次前後方向の長さが短くなり、上側に尖った形状、すなわち、上側に尖った略三角形になる。略三角形には、三角形のみでなく、上底が下底よりも短い台形も含まれる。側板部7が上記のように左右方向から見て略三角形になった状態が第1状態である。第1状態では、紙器3を左右方向から見た形状が上側に尖った略三角形である。
【0019】
図1および図4に示すように、第1状態では、前板部5は、下側から上側に向かって漸次後側に向かって傾斜している。後板部6は、下側から上側に向かって漸次前側に向かって傾斜している。第1状態では、前板部5の上縁部54と後板部6の上縁部61とは、接触していてもよいし、隙間をあけて近接していてもよい。前板部5の上縁部54と後板部6の上縁部61とが接触すると、紙器3を左右方向から見た形状が上側に尖った三角形になる。前板部5の上縁部54と後板部6の上縁部61とが隙間をあけて近接すると、紙器3を左右方向から見た形状が上側に尖った台形になる。
図2に示すように、第2状態では、前板部5および後板部6は、底板部32から高さ方向に略垂直に延びている。第2状態では、前板部5の上縁部54と後板部6の上縁部61とは離れていて、筒状部31の上端部312が開口する。第2状態では、側板部7および紙器3を左右方向から見た形状が矩形である。
【0020】
図1図3に示すように、蓋板部33は、後板部6の上縁部61に連続して設けられている。蓋板部33と後板部6との境界には左右方向に延びる第1蓋板折曲線331が設けられている。蓋板部33と後板部6とは、第1蓋板折曲線331で折り曲げ可能である。蓋板部33には、第1蓋板折曲線331と離れた位置に、左右方向に延びる第2蓋板折曲線332が設けられる。蓋板部33における第2蓋板折曲線332よりも第1蓋板折曲線331側を第1蓋板部333と表記し、第1蓋板折曲線331と離れる側を第2蓋板部334と表記する。第1蓋板部333と第2蓋板部334とは、第2蓋板折曲線332で折り曲げ可能である。第1蓋板折曲線331と第2蓋板折曲線332との間隔は、底板部32の前後方向の寸法と略同じである。
【0021】
蓋板部33は、第1状態において第1蓋板折曲線331で前方かつ下方に折り曲げられると前板部5の前面と重なる。このとき蓋板部33は、第2蓋板折曲線332で折り曲げられずに平らである。図7および図8に示すように、蓋板部33は、第2状態において第1蓋板折曲線331で前方に折り曲げられるとともに、第2蓋板折曲線332で第2蓋板部334が下方に折り曲げられると、第1蓋板部333が前板部5と後板部6との間の上に配置され、第2蓋板部334が前板部5の前面と重なる。
【0022】
蓋板部33は、第1蓋板折曲線331で折り曲げられて前板部5の前面に重なったときの下部側に、被係止部335が設けられている。被係止部335は、蓋板部33に円弧状の切込み336を形成し、切込み336を押し出すことで突出する凸部である。前板部5には、第1状態において前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第1係止部52と、第2状態において前板部5と後板部6との間の上方および前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第2係止部53とが設けられている。第1係止部52および第2係止部53は、前板部5に形成された直線状の切込みである。
【0023】
上述しているように、紙器3は、1枚の紙材4を折り曲げて、必要箇所を貼り合わせて製作されている。図3に示すように、紙器3は、組み立てられる前の紙材4の状態では、前板部5と左側の側板部7とが折曲線41を介して隣接し、左側の側板部7と後板部6とが折曲線42を介して隣接し、後板部6と右側の側板部7とが折曲線43を介して隣接している。前板部5の右側には、折曲線44を介して糊代45が設けられている。糊代45は、右側の側板部7の前縁部近傍と貼り合わされる。
蓋板部33は、第1蓋板折曲線331を介して後板部6と隣接している。
上述しているように、底板部32は、複数の紙片が繋がっている。底板部32を構成する紙片は、前板部5の下縁部に折曲線46を介して隣接する第1片411、後板部6の下縁部に折曲線47を介して隣接する第2片412、左側の側板部7の下縁部に折曲線48を介して隣接する第3片413および右側の側板部7の下縁部に折曲線49を介して隣接する第4片414である。第1片411、第2片412、第3片413、第4片414は、それぞれの一部または全部が隣接する片と重なり、底板部32を構成している。
【0024】
図1図3に示すように、筒状部31の高さ方向の中間部には、全周にわたってジッパー部8が形成されている。ジッパー部8は、間隔をあけて平行に配置された2本のミシン目86,86を形成することで設けられる。2本のミシン目86,86は、上下に配置されている。ジッパー部8は、平行なミシン目86,86の間の部分が切り取られることで、筒状部31を高さ方向に2つに分割できる。ジッパー部8のうち、前板部5に設けられた部分を前ジッパー部81と表記し、後板部6に設けられた部分を後ジッパー部82と表記し、一対の側板部7,7に設けられた部分を側ジッパー部83と表記する。
図2図3および図5に示すように、前ジッパー部81および後ジッパー部82は、左右方向に直線状に延びている。
【0025】
図1図3および図7に示すように、側ジッパー部83は、第1側板折曲線71と交差している。側ジッパー部83は、側板部7の前縁部から前後方向の中央の第1側板折曲線71の位置に向かって漸次上側に向かって延びる第1側ジッパー部831と、側板部7の後縁部から第1側板折曲線71の位置に向かって漸次上側に向かって延びる第2側ジッパー部832と、が第1側板折曲線71の位置で繋がった山型形状である。第1側ジッパー部831と第2側ジッパー部832とは、前後方向に対称である。本実施形態では、第1側ジッパー部831および第2側ジッパー部832がともに直線状に延びていて、側ジッパー部83が逆V字形状である。
【0026】
側板部7が第1側板折曲線71で折り曲げられると、第1側ジッパー部831と第2側ジッパー部832とは、互いに近接する。側板部7は、折り曲げられると前縁部および後縁部に対して前後方向の中央部、すなわち第1側板折曲線71が設けられている部分が左右方向に移動する。右側の側板部7は、第1側板折曲線71が左側に移動し、左側の側板部7は、第1側板折曲線71が右側に移動する。第1側ジッパー部831および第2側ジッパー部832は、第1側板折曲線71が移動する方向、すなわち側板部7が折り曲げられる方向に対して斜め方向に延びている。
【0027】
第2側板折曲線72は、側ジッパー部83の下側のミシン目86の前端部と後端部とを結んだ線に沿って設けられている。側板部7における側ジッパー部83の下側のミシン目86と、第2側板折曲線72とに囲まれた三角形の部分を三角部75と表記する。
【0028】
図3に示すように、糊代45にも、重なる右側の側板部7の側ジッパー部83と同じ形状の糊代ジッパー部84が設けられる。糊代ジッパー部84は、前ジッパー部81と隣接する。糊代ジッパー部84と前ジッパー部81との間には、切込み85が設けられている。糊代ジッパー部84と前ジッパー部81とは、隣接しているが、連続していない。
ジッパー部8は、切込み85の左側、すなわち前ジッパー部81の右側の端部分811を把持して引っ張ることで、ミシン目86,86が切断され、ジッパー部8が切り取られる。図9に示すように、ジッパー部8が切り取られると、紙器3は、ジッパー部8の上方の部分と下方の部分とに分割される。紙器3におけるジッパー部8の上方の部分を上部分34と表記し、下方の部分を下部分35と表記する。
【0029】
非常食セット11は、紙器3の内部に2つのパウチ2が収容され、紙器3が第1状態であり、紙器3の蓋板部33が第1係止部52に係止された状態で備蓄される。非常食セット11は、パウチ2の中に湯や水を入れて調理した後に食べることができる。以下の説明では、パウチ2の中に湯を入れて加熱調理する。
【0030】
非常食セット11を調理する際には、まず、図2に示すように、蓋板部33を第1係止部52から外す。紙器3の内部から1つまたは2つのパウチ2を取り出す。側板部7を拡げて紙器3を第2状態にする。第2状態の紙器3の筒状部31は、略直方体になる。
取り出したパウチ2を開封し、パウチ2の中の食品がこぼれないようにして紙器3の内部に戻す。開封したパウチ2の内部に湯を入れ、パウチ2の中の食品を所定時間加熱調理する。
例えば、一方のパウチ2にアルファ米が充填され、他方のパウチ2に湯を入れる必要のないスープが充填されている場合には、アルファ米が充填されたパウチ2のみに湯を入れる。紙器3の内部において、湯が入れられたアルファ米のパウチ2と、スープのパウチ2とを並べて配置することによって、アルファ米の加熱調理時の熱でスープも温めることができる。
【0031】
パウチ2の内部に湯を入れた後には、図7および図8に示すように、蓋板部33を第1蓋板折曲線331および第2蓋板折曲線332で折り曲げ、第1蓋板部333を前板部5と後板部6との間の上方に重ね、第2蓋板部334を前板部5の前面と重ね、蓋板部33の被係止部335を第2係止部53に挿し込む。これにより、紙器3が第2状態に維持されるとともに、蓋板部33でパウチ2の上方が覆われるため、加熱調理時の保温性を高めることができる。
【0032】
所定時間が経過し、パウチ2の食品の加熱が完了した後には、ジッパー部8を切り取り、紙器3の上部分34を外す。パウチ2は、下部側が下部分35に収容され、上部側が露出し食べることが可能となる。
図10に示すように、紙器3の上部分34(図9参照)を外した後には、下部分35の側板部7の三角部75を第2側板折曲線72で内側に折り込むことができる。これにより、第2状態で広げられた側板部7が補強され、紙器3の下部分35を第2状態に維持できる。更に、内側に折り込んだ三角部75の前後に1つずつパウチ2を配置することで、2つのパウチ2の位置が安定する。
また、図11に示すように、紙器3の上部分34(図9参照)を外した後には、側板部7の三角部75を第2側板折曲線72で外側に折ることもできる。これにより、三角部75が外側に突出し、三角部75を持ち手として使用できる。パウチ2(図10参照)の食品が高温であっても、三角部75を把持できる。
【0033】
図12に示すように、非常食セット11を箱12などに多数備蓄する際には、例えば、上記の前後方向が上下方向となる向きで、紙器3の底板部32と頂部36とが上下方向に交互に並ぶように収容することによって、少ないスペースに多くの非常食セット11を備蓄することが可能である。
【0034】
次に、本実施形態による包装容器1および紙器3の作用・効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による包装容器1および紙器3では、ジッパー部8のうちの側板部7に設けられた側ジッパー部83は、側板部7の前縁部から前後方向の中央の第1側板折曲線71の位置に向かって漸次上側に向かって延びる第1側ジッパー部831と、側板部7の後縁部から第1側板折曲線71の位置に向かって漸次上側に向かって延びる第2側ジッパー部832と、が第1側板折曲線71の位置で繋がった山型形状である。第1側ジッパー部831および第2側ジッパー部832は、第1側板折曲線71が移動する方向、すなわち側板部7が折り曲げられる方向に対して斜め方向に延びている。このため、側板部7が第1側板折曲線71で折り曲げられる際に、側ジッパー部83のミシン目86,86を破断させる方向の力が作用しにくいため、意図せずに側ジッパー部83のミシン目86,86が破断することを防止できる。
【0035】
本実施形態による紙器3では、側板部7には、側ジッパー部83の下側のミシン目86の前端部と後端部とを結んだ線に沿って第2側板折曲線72が設けられている。これにより、紙器3の上部分34を外した後には、下部分35の側板部7の三角部75を第2側板折曲線72で内側に折り込むことで、第2状態で広げられた側板部7が補強され、紙器3の下部分35を第2状態に維持できる。更に、内側に折り込んだ三角部75の前後に1つずつパウチ2を配置することで、2つのパウチ2の位置を安定させることができる。また、三角部75を第2側板折曲線72で外側に折ることより、三角部75が外側に突出し、三角部75を持ち手として使用できる。
【0036】
本実施形態による紙器3では、前板部5には、第1状態において前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第1係止部52と、第2状態において前板部5と後板部6との間の上方および前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第2係止部53と、が設けられている。これにより、第1係止部52に係止された蓋板部33によって紙器3を第1状態に維持できるとともに、第2係止部53に係止された蓋板部33によって紙器3を第2状態に維持できる。
【0037】
以上、本発明による包装容器および紙器の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、紙器3の中に2つのパウチ2が収容されているが、1つや3つ以上のパウチ2が収容されていてもよい。パウチ2が収容されない紙器に、上記の実施形態の紙器3を採用してもよい。
上記の実施形態では、側ジッパー部83の第1側ジッパー部831および第2側ジッパー部832は、それぞれ直線状に延びているが、曲線状に延びていてもよい。例えば、側ジッパー部83が円弧状であってもよい。
【0038】
上記の実施形態では、側板部7には、側ジッパー部83の下側のミシン目86の前端部と後端部とを結んだ線に沿って第2側板折曲線72が設けられて、側板部7の三角部75を第2側板折曲線72で内側や外側に折り込んでいるが、第2側板折曲線72が設けられていなくてもよい。
【0039】
上記の実施形態では、前板部5には、第1状態において前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第1係止部52と、第2状態において前板部5と後板部6との間の上方および前板部5の前面と重なった蓋板部33の被係止部335を挿し込み可能な第2係止部53と、が設けられているが、第1係止部52および第2係止部53の一方または両方が設けられていなくてもよい。前板部5に蓋板部33を係止する係止部の形態は、上記以外であってもよい。
上記の実施形態では、紙器3に蓋板部33が設けられているが、蓋板部33が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 包装容器
2 パウチ
3 紙器
5 前板部
6 後板部
7 側板部
8 ジッパー部
31 筒状部
32 底板部
33 蓋板部
52 第1係止部
53 第2係止部
71 第1側板折曲線
72 第2側板折曲線
83 側ジッパー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12