特開 2023-159645 ころ軸受

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023159645

(43)【公開日】2023-11-01

(54)【発明の名称】ころ軸受

(51)【国際特許分類】

   F16C 33/58 20060101AFI20231025BHJP

   F16C 19/36 20060101ALI20231025BHJP

   F16C 35/06 20060101ALI20231025BHJP

【ＦＩ】

F16C33/58

F16C19/36

F16C35/06 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022069474

(22)【出願日】2022-04-20

(71)【出願人】

【識別番号】000004204

【氏名又は名称】日本精工株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002000

【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所

(72)【発明者】

【氏名】植松 俊一

(72)【発明者】

【氏名】近藤 正輝

【テーマコード（参考）】

3J117

3J701

【Ｆターム（参考）】

3J117AA04

3J117AA06

3J117CA07

3J117DB01

3J117DB06

3J117HA02

3J701AA16

3J701AA25

3J701AA32

3J701AA42

3J701AA54

3J701AA62

3J701BA53

3J701BA56

3J701FA04

3J701FA46

3J701GA31

3J701GA41

3J701GA51

(57)【要約】

【課題】鍔部材を内輪ボス部に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受を提供する。
【解決手段】内輪の軸方向一端部には、内輪と一体である鍔部が形成され、内輪の軸方向他端部には、内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、締結部材は、頭部と、頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、鍔部材は、内輪と軸方向に当接し、締結部材の頭部が着座する基部を有し、鍔部材の外周面には、カバー部材が圧入固定され、カバー部材は、鍔部材の外周面に固定され、軸方向に延びる本体部と、本体部から径方向内側に延びるフランジ部と、を有し、フランジ部の径方向内側端部は、締結部材の頭部の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
を備えるころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記鍔部材は、前記内輪と軸方向に当接し、前記締結部材の前記頭部が着座する基部を有し、
前記鍔部材の外周面には、カバー部材が圧入固定され、
前記カバー部材は、
前記鍔部材の前記外周面に固定され、軸方向に延びる本体部と、
前記本体部から径方向内側に延びるフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部の径方向内側端部は、前記締結部材の前記頭部の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する
ことを特徴とするころ軸受。

【請求項2】

前記鍔部材の前記外周面には、径方向内側に向かう溝部が凹設され、
前記カバー部材の前記本体部には、径方向内側に向かって延びる突起部が設けられ、
前記鍔部材の前記溝部に、前記カバー部材の前記突起部が係合する
請求項１に記載のころ軸受。

【請求項3】

前記鍔部材の前記基部には、前記基部を軸方向に貫き、外周面に雌ねじ部を有する貫通孔が形成され、
前記内輪には、前記貫通孔と軸方向に対向する位置に、外周面に雌ねじ部を有するねじ穴が軸方向に延びるように形成され、
前記締結部材の前記軸部は、
前記軸部の軸方向一端部に位置し、外周面に雄ねじ部を有するねじ部と、
前記ねじ部の軸方向他端側に位置し、外周面に雄ねじ部を有さない胴部と、
を含み、
前記胴部の外径は、前記ねじ部の外径よりも小さく、
前記締結部材による前記鍔部材と前記内輪との締結状態において、前記ねじ部は、前記貫通孔とは螺合せず、前記ねじ穴に螺合する
請求項１または２に記載のころ軸受。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ころ軸受に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、産業機械においては、機能や価格だけでなくライフサイクルコストが重要視されている。このため産業機械に組み付けるころ軸受に対しても、補修や再利用の要求が増えており、点検するために分解可能な軸受構造が求められている。

【0003】

特許文献１に記載の円すいころ軸受は、内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面及び外輪軌道面間を転動する転動体である複数の円すいころと、円すいころを周方向等間隔に保持するための保持器と、を備える。内輪の大径側端部に大鍔が一体に形成されるとともに、内輪の小径側端部に、円すいころの脱落を防止する、別体の小鍔部材が設けられる。小鍔部材は、ボルトによって内輪に係止される。したがって、円すいころ軸受の内部の点検や保持器の交換の際には、小鍔部材を取り外すことによって、分解することができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１４－１９０３５２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１の円すいころ軸受では、ボルトが適正な締付力で締結されない場合などにボルト緩みが生じ、ボルトが軸受から脱落するおそれがある。ボルトが脱落した場合、周辺の駆動部品(例えば減速機)へボルトが流れ込み、部品の損傷を引き起こす可能性がある。

【0006】

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、鍔部材を内輪部に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。

【0008】

（１） 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置された複数のころと、
を備えるころ軸受であって、
前記内輪の軸方向一端部には、前記内輪と一体である鍔部が形成され、
前記内輪の軸方向他端部には、前記内輪と別体である鍔部材が、軸方向に延びる締結部材により締結され、
前記締結部材は、頭部と、前記頭部から軸方向一端側に延びる軸部と、を有し、
前記鍔部材は、前記内輪と軸方向に当接し、前記締結部材の前記頭部が着座する基部を有し、
前記鍔部材の外周面には、カバー部材が圧入固定され、
前記カバー部材は、
前記鍔部材の前記外周面に固定され、軸方向に延びる本体部と、
前記本体部から径方向内側に延びるフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部の径方向内側端部は、前記締結部材の前記頭部の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する
ことを特徴とするころ軸受。
（２） 前記鍔部材の前記外周面には、径方向内側に向かう溝部が凹設され、
前記カバー部材の前記本体部には、径方向内側に向かって延びる突起部が設けられ、
前記鍔部材の前記溝部に、前記カバー部材の前記突起部が係合する
（１）に記載のころ軸受。
（３） 前記鍔部材の前記基部には、前記基部を軸方向に貫き、外周面に雌ねじ部を有する貫通孔が形成され、
前記内輪には、前記貫通孔と軸方向に対向する位置に、外周面に雌ねじ部を有するねじ穴が軸方向に延びるように形成され、
前記締結部材の前記軸部は、
前記軸部の軸方向一端部に位置し、外周面に雄ねじ部を有するねじ部と、
前記ねじ部の軸方向他端側に位置し、外周面に雄ねじ部を有さない胴部と、
を含み、
前記胴部の外径は、前記ねじ部の外径よりも小さく、
前記締結部材による前記鍔部材と前記内輪との締結状態において、前記ねじ部は、前記貫通孔とは螺合せず、前記ねじ穴に螺合する
（１）または（２）に記載のころ軸受。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、鍔部材を内輪部に締結する締結部材の脱落を防止できるころ軸受を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の第１実施形態に係る円すいころ軸受の断面図である。

【図2】図１の円すいころ軸受の要部断面図である。

【図3】本発明の第２実施形態に係る円すいころ軸受の断面図である。

【図4】図３の円すいころ軸受の要部断面図である。

【図5】ボルトの断面図である。

【図6】本発明の第２実施形態の変形例に係る円すいころ軸受の断面図である。

【図7】図６の円すいころ軸受の要部断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

（第１実施形態）
図１は、本発明の第１実施形態に係る円すいころ軸受１の断面図である。図２は、図１の円すいころ軸受１の要部断面図である。

【0012】

円すいころ軸受１は、外周面に円すい状の内輪軌道面１１を有する内輪１０と、内周面に円すい状の外輪軌道面２１を有する外輪２０と、内輪軌道面１１と外輪軌道面２１との間に転動自在に配置された複数の円すいころ３０と、を備える。

【0013】

円すいころ３０は、内輪軌道面１１と外輪軌道面２１の間に組み込まれた環状の保持器４０によって、周方向に一定の間隔を隔てて保持されている。保持器４０は、ピンタイプ保持器であり、一対の円環部４１，４２と、一対の円環部４１，４２を締結するピン４３と、を有している。

【0014】

なお、保持器４０の種類は限定されず、例えば、鋼板製のプレス保持器（かご型保持器）であって、大径リング部と、小径リング部と、大径リング部及び小径リング部を軸方向に連結する複数の柱部と、これら大径リング部と小径リング部と隣り合う柱部との間に画成されたポケット部と、を有するものを適用してもよい。

【0015】

内輪１０の軸方向一端部（図中、左側。大径側端部）には、内輪１０と一体である鍔部１３が形成される。鍔部１３は、内輪軌道面１１よりも径方向外側に突出し、円すいころ３０の軸方向一端側への脱落を防止する。鍔部１３は内輪１０の大鍔を構成する。

【0016】

内輪１０の軸方向他端部（図中、右側。小径側端部）には、内輪軌道面１１よりも軸方向他端側に突出する内輪ボス部１５が形成される。なお、図２には、内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａから内輪軌道面１１に垂直に延びる仮想平面Ａと、軸方向他端部１１ａから径方向に延びる仮想平面Ｂと、が示されている。内輪ボス部１５は、これら仮想平面Ａ及びＢよりも軸方向他端側に突出する。内輪ボス部１５は、内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａから径方向内側に離間した位置から軸方向他端側に向かう凸部であり、したがって、内輪ボス部１５と内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａとの間には段部１７が形成される。

【0017】

内輪ボス部１５には、内輪１０と別体である鋼材或いは樹脂材料からなる鍔部材５０が、ボルト６０により締結される。なお、本例のボルト６０は、六角穴付ボルトであるが、ボルトの種類は特に限定されず、ねじ等の他の種類の締結部材を用いてもよいことは言うまでもない。ボルト６０は、頭部６１と、頭部６１から軸方向一端側に延び、外周に雄ねじ部が形成された軸部６３と、を有する。

【0018】

ボルト６０等の締結部材は、軸方向に延び、内輪ボス部１５と鍔部材５０とを軸方向に締結するので、保持器形態に関わらず、ボルトを締結し易い。また、鍔部材５０の着脱を容易に行うことができるので、円すいころ軸受１の組立作業が容易になるとともに、円すいころ軸受１の内部の点検や円すいころ３０又は保持器４０の交換が容易となる。

【0019】

内輪ボス部１５には、外周面に雌ねじ部を有し、軸方向に向かうねじ穴１５ａが形成されている。ねじ穴１５ａの雌ねじ部は、軸方向において仮想平面Ａと重ならないように形成されることが好ましく、より具体的には、ねじ穴１５ａの雌ねじ部は、仮想平面Ａよりも軸方向他端側に配置されることが好ましい。この場合、ねじ穴１５ａの雌ねじ部に螺合するボルト６０の軸部６３の雄ねじ部も、軸方向において仮想平面Ａと重ならないように配置され、より具体的には、仮想平面Ａよりも軸方向他端側に配置される。

【0020】

また、より好ましくは、内輪ボス部１５のねじ穴１５ａの雌ねじ部は、軸方向において内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａ（仮想平面Ｂ）と重ならないように形成され、より具体的には、内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａ（仮想平面Ｂ）よりも軸方向他端側に配置される。この場合、ねじ穴１５ａの雌ねじ部に螺合するボルト６０の軸部６３の雄ねじ部も、軸方向において内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａ（仮想平面Ｂ）と重ならないように配置され、より具体的には、内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａ（仮想平面Ｂ）よりも軸方向他端側に配置される。

【0021】

このように、ボルト６０の軸部６３の雄ねじ部が軸方向において内輪軌道面１１を重ならないように配置すれば、ボルト締結部が内輪軌道面１１の径方向直下に配置されることが回避される。したがって、軸受使用時に軌道面に大荷重が発生した場合であっても、ボルト締結部に高応力が生じることを抑制することができる。

【0022】

ただし、上記記載は、ボルト締結部が軸方向において仮想平面Ａ，Ｂと重なるような態様を排除するものではない。

【0023】

鍔部材５０は、円環部材から構成されてもよく、円環の一部を形成する複数の円環片が周方向に間隔を空けて配置されることにより構成されてもよい。鍔部材５０は、内輪ボス部１５よりも径方向外側まで延びる円環状の基部５１と、基部５１の径方向外側端部から軸方向一方側に向かって突出する凸部５３と、を有する。基部５１は、内輪ボス部１５と軸方向において当接する。凸部５３は、内輪１０の段部１７に入り込む。

【0024】

図２に示すように、基部５１は、軸方向他端面５１ａから軸方向一方側に向かって凹設された凹部５１ｂを有する。凹部５１ｂは、ボルト６０の頭部６１が着座する着座部として機能する。本例の凹部５１ｂは、基部５１の全周に亘って形成され、径方向内側に開口しているが、当該凹部５１ｂの形状は特に限定されない。

【0025】

また、基部５１には、当該基部５１を軸方向の貫く貫通孔５１ｅが形成される。貫通孔５１ｅは、凹部５１ｂの底面５１ｃ（軸方向他端面）から、基部５１の軸方向一端面５１ｄまで貫く。貫通孔５１ｅは、内輪ボス部１５のねじ穴１５ａと軸方向に対向する位置に設けられる。したがって、貫通孔５１ｅは、ねじ穴１５ａと同数設けられる。

【0026】

そして、ボルト６０は、基部５１の貫通孔５１ｅを通り内輪ボス部１５のねじ穴１５ａに螺合して、軸方向に延び、内輪ボス部１５と鍔部材５０とを軸方向に締結する。このとき、ボルト６０の頭部６１は、基部５１の凹部５１ｂ内に位置し、当該凹部５１ｂの底面５１ｃに着座する。

【0027】

内輪ボス部１５に締結された鍔部材５０の凸部５３は、内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａよりも径方向外側に位置して円すいころ３０と軸方向に対向し、円すいころ３０の軸方向他端側への脱落を防止する。このように、鍔部材５０は、内輪１０の小鍔を構成する。

【0028】

鍔部材５０の外周面５０ａには、ボルト６０を脱落防止するように覆うカバー部材７０が圧入固定される。カバー部材７０は、鍔部材５０の外周面５０ａに固定され、軸方向に延びる本体部７１と、本体部７１の軸方向他端部から径方向内側に延びるフランジ部７３と、を有する断面略Ｌ字形状である。なお、カバー部材７０は、鍔部材５０の外周面５０ａの全周に設けられた円環状であってもよく、ボルト６０に重なる周方向位置に間欠的に複数設けられた部分円環状であってもよい。

【0029】

鍔部材５０の外周面５０ａには、径方向内側に向かう溝部５０ｂが凹設される。また、カバー部材７０の本体部７１の軸方向一端部には、径方向内側に向かって延びる突起部７１ａが設けられる。そして、鍔部材５０の溝部５０ｂに、カバー部材７０の突起部７１ａが嵌まり込んで係合するので、カバー部材７０が鍔部材５０から外れにくい構造とされている。なお、例えば圧入することでカバー部材７０の本体部７１が鍔部材５０の外周面５０ａに対して十分な嵌合力を確保でき、カバー部材７０が鍔部材５０から外れる可能性が十分に低いのであれば、必ずしも溝部５０ｂや当該溝部５０ｂに嵌まり込む突起部７１ａを設けなくてもよい。

【0030】

カバー部材７０のフランジ部７３は、ボルト６０の頭部６１よりも軸方向他端側に位置し、当該フランジ部７３の径方向内側端部は、ボルト６０の頭部６１の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する。すなわち、軸方向から見た時、フランジ部７３と、ボルト６０の頭部６１とは、少なくとも一部が重畳する。これにより、万が一ボルト６０に緩みが発生し、ボルト６０が軸方向に移動した場合であっても、ボルト６０の頭部６１がフランジ部７３に引っかかるため、ボルト６０が軸方向に脱落することが防止される。

【0031】

（第２実施形態）
次に、第２実施形態に係るころ軸受１について説明する。第２実施形態のころ軸受１は、第１実施形態に対してボルト６０の構造が主に異なる。その他の構成は、第１実施形態と概ね同一であるので、図面に同様の符号を付すことでその説明を省略又は簡略化する。

【0032】

図３は、本発明の第２実施形態に係る円すいころ軸受１の断面図である。図４は、図３の円すいころ軸受１の要部断面図である。図５は、ボルト６０の断面図である。

【0033】

本例のボルト６０は、軸部６３の先端側にのみ雄ねじ部が形成されたいわゆる脱落防止ボルトであり、鍔部材５０の貫通孔５１ｅに挿入された後、鍔部材５０から脱落しないような構造を有している。

【0034】

本実施形態の貫通孔５１ｅは、全長に亘って外周面に雌ねじ部を有する。ボルト６０の軸部６３は、軸部６３の軸方向一端部（先端部）に位置し、外周面に雄ねじ部を有するねじ部６３ａと、ねじ部６３ａの軸方向他端側（ねじ部６３ａと頭部６１の間）に位置し、外周面に雄ねじ部を有さない胴部６３ｂと、を含む。すなわち、胴部６３ｂの外周面は円筒面である。

【0035】

ねじ部６３ａの外径Ｄ１は、鍔部材５０の貫通孔５１ｅ及び内輪ボス部１５のねじ穴１５ａと略同一とされ、ねじ部６３ａの雄ねじ部を貫通孔５１ｅの雌ねじ部及びねじ穴１５ａの雌ねじ部にねじ込むことが可能とされている。これに対して、胴部６３ｂの外径Ｄ２は、ねじ部６３ａの外径Ｄ２より小さい。また、胴部６３ｂの軸方向長さは、貫通孔５１ｅの軸方向長さよりも長く、胴部６３ｂが貫通孔５１ｅに挿入された際に胴部ｂ６３は貫通孔５１ｅよりも軸方向他端側（図４中、左側）に突出する。

【0036】

図４に示すように、ボルト６０によって鍔部材５０と内輪ボス部１５とが締結している状態とするには、鍔部材５０と内輪ボス部１５とは分離した状態にしておく。そして先ず、ボルト６０の先端のねじ部６３ａを内輪ボス部１５の貫通孔５１ｅの雌ねじ部にねじ込んでいってそのまま雌ねじ部を通過させ、胴部６３ｂを貫通孔５１ｅの位置にもたらす。その後、ボルト６０のねじ部６３ａをねじ穴１５ａの雌ねじ部にねじ込み、鍔部材５０と内輪ボス部１５とを密着させるまで締めこむ。図４に示すようにボルト６０による鍔部材５０と内輪ボス部１５との締結状態においては、ねじ部６３ａは、貫通孔５１ｅとは螺合せず、ねじ穴１５ａとのみ螺合する。また胴部６３ｂの外径Ｄ２は、貫通孔５１ｅの直径よりも小さいので、胴部６３ｂと貫通孔５１ｅとの間には隙間が介在する。

【0037】

このような構造によれば、万が一、ボルト６０に緩みが発生し、鍔部材５０と内輪ボス部１５との締結が失われた場合であっても、ボルト６０のねじ部６３ａが鍔部材５０の貫通孔５１ｅに引っ掛かるため、鍔部材５０から容易に脱落することはない。

【0038】

さらに、第１実施形態と同様、本実施形態でもカバー部材７０が設けられているので、ボルト６０の緩みが発生した場合であっても、ボルト６０の頭部６１がフランジ部７３に引っかかるため、カバー部材７０による脱落防止とボルト６０を脱落防止ボルトとした脱落防止とで、より確実な脱落防止を図ることができる。

【0039】

（第２実施形態の変形例）
図６は、本発明の第２実施形態の変形例に係る円すいころ軸受１の断面図である。図７は、図６の円すいころ軸受１の要部断面図である。図３～図５に示すように第２実施形態に係る円すいころ軸受１においては、カバー部材７０が設けられていたが、図６～図７に示すように、カバー部材７０は必ずしも設けなくても構わない。この場合であっても、脱落防止ボルトとされたボルト６０は、鍔部材５０から容易に脱落することはない。

【0040】

なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。例えば、本発明は、円すいころ軸受以外にも円筒ころ軸受等、ころ軸受であれば適用可能である。

【0041】

例えば、上述した例では、内輪１０の軸方向他端部には、内輪軌道面１１よりも軸方向他端側に突出する内輪ボス部１５が形成されていたが、当該内輪ボス部１５は必ずしも設けなくても構わない。内輪ボス部１５が形成されない場合、上記特許文献１（特開２０１４－１９０３５２号公報）と同様に、内輪１０の軸方向他端部（内輪軌道面１１の軸方向他端部１１ａに隣接する位置）に鍔部材５０が配置される。この場合、内輪ボス部１５が形成されないので、内輪１０は段部１７を有さず、鍔部材５０は凸部５３を有さない。また、ねじ穴１５ａは、鍔部材５０の貫通孔５１ｅと対向する位置において、内輪１０の軸方向他端面から、軸方向一端側に向かうように形成される。

【0042】

また、上述した例では、鍔部材５０は、基部５１の軸方向他端面５１ａから軸方向一方側に向かって凹設され、ボルト６０の頭部６１が着座する凹部５１ｂを有していたが、鍔部材５０には凹部５１ｂが形成されなくても構わない。この場合、貫通孔５１ｅは、基部５１の軸方向他端面５１ａから軸方向一端面５１ｄを貫通するように形成され、ボルト６０の頭部６１は、基部５１の軸方向他端面５１ａに着座する。この場合も、カバー部材７０のフランジ部７３は、ボルト６０の頭部６１よりも軸方向他端側に位置し、当該フランジ部７３の径方向内側端部は、ボルト６０の頭部６１の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する。これにより、万が一ボルト６０に緩みが発生し、ボルト６０が軸方向に移動した場合であっても、ボルト６０の頭部６１がフランジ部７３に引っかかるため、ボルト６０が軸方向に脱落することが防止される。

【符号の説明】

【0043】

１ 円すいころ軸受（ころ軸受）
１０ 内輪
１１ 内輪軌道面
１１ａ 軸方向他端部
１３ 鍔部
１５ 内輪ボス部
１５ａ ねじ穴
１７ 段部
２０ 外輪
２１ 外輪軌道面
３０ 円すいころ（ころ）
４０ 保持器
４１，４２ 円環部
４３ ピン
５０ 鍔部材
５０ａ 外周面
５０ｂ 溝部
５１ 基部
５１ａ 軸方向他端面
５１ｂ 凹部
５１ｃ 底面
５１ｄ 軸方向一端面
５１ｅ 貫通孔
５３ 凸部
６０ ボルト（締結部材）
６１ 頭部
６３ 軸部
６３ａ ねじ部
６３ｂ 胴部
７０ カバー部材
７１ 本体部
７１ａ 突起部
７３ フランジ部
Ａ，Ｂ 仮想平面
Ｄ１，Ｄ２ 外径

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】