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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159653
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】圧接端子及び圧接コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/2455 20180101AFI20231025BHJP
【FI】
H01R4/2455
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069486
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120628
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 慎一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】早川 明
(72)【発明者】
【氏名】柳田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】今泉 鉄一郎
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012AA08
5E012AA42
(57)【要約】
【課題】被覆電線に対する保持能力を損なうことなく電線保持部の小型化が可能な圧接端子、及び圧接コネクタを提供すること。
【解決手段】圧接端子200は、接点部210と、芯線を被覆部で被覆した被覆電線300を受け入れるスロット223、225を有し、被覆電線300がスロット223、225に挿入される際に被覆部を切断して芯線に圧接する圧接部220と、接点部210及び圧接部220と一体に形成され、内側に被覆電線300の被覆部を受け入れる、弾性を有する一対のフック形状の電線保持部230と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点部と、
芯線を被覆部で被覆した被覆電線を受け入れるスロットを有し、前記被覆電線が前記スロットに挿入される際に前記被覆部を切断して前記芯線に圧接する圧接部と、
前記接点部及び前記圧接部と一体に形成され、内側に前記被覆電線の被覆部を受け入れる、弾性を有する一対のフック形状の電線保持部と、を備える圧接端子。
【請求項2】
前記一対のフック形状の電線保持部が、挿入される前記被覆電線の延在方向に関して異なる位置において互いに対向する、請求項1記載の圧接端子。
【請求項3】
前記一対のフック形状の電線保持部はそれぞれJ字形状であり、前記圧接部に一続きとなった基部と、前記被覆電線の延在方向に対して直交する幅方向内側に向けて屈曲した先端部と、を有し、前記被覆電線の延在方向から見た場合の前記先端部の間の距離は、前記圧接端子の板厚以下である、請求項2記載の圧接端子。
【請求項4】
前記一対のフック形状の電線保持部が、挿入される前記被覆電線の延在方向に関して同位置において互いに対向する、請求項1記載の圧接端子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の圧接端子と、当該圧接端子を収容する収容部を有するハウジングと、を備える圧接コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、複数の前記収容部が前記被覆電線の延在方向に関して直交する幅方向に配列して設けられており、それぞれの前記収容部に前記圧接端子が収容されている、請求項5記載の圧接コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接端子及び圧接コネクタ、特に、圧接接続された被覆電線を保持する構造を有する圧接端子及び圧接コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芯線を被覆材料で被覆した被覆電線を接続するためのコネクタとして、被覆電線を受け入れるU字形状のスロットを有する圧接コネクタが使用されている。こうした圧接コネクタにおいて、被覆電線をU字形状のスロットに挿入すると、被覆部分がスロット内の圧接片によって切断され、芯線と圧接片との電気的な導通が確立する。
【0003】
なお、この圧接コネクタにおいては、電気的な導通を確立した部分に外力が加わらないようにするための、電線保持構造が採用されている。この電線保持構造は、「ストレインリリーフ」構造とも呼ばれている。
【0004】
下記特許文献1は、被覆電線の被覆部に食い込んで芯線と接触するスロット部を有するコンタクトと、当該コンタクトを保持する絶縁ハウジングを備える圧接コネクタを開示している。この圧接コネクタの絶縁ハウジングには、スロット内に圧入された被覆電線の一部を受け入れる電線保持溝が設けられ、電線保持溝の開口部には、被覆電線を保持するための保持アームが形成されている。
【0005】
下記特許文献2は、被覆電線の被覆部を切断するための圧接刃と、被覆電線の被覆部にかしめられるかしめ部と、を含む圧接コネクタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63-77266号公報
【特許文献2】特許第6193050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の圧接コネクタのように、絶縁ハウジングに電線保持の構成を設けた場合、保持アームは樹脂製であるため、ほとんど弾性を有していない。したがって、対向し合う保持アームの間の間隙を狭くして被覆電線に対する保持性を向上させようとすると、当該保持アームが強度不足となり、クラックが生じる可能性がある。そのため、保持アームに強度を持たせるためには、当該保持アームの大きさをある程度の大きさに維持せざるを得ず、圧接コネクタ全体の小型化にとって妨げとなっている。
【0008】
また、上記特許文献2記載の圧接コネクタでは、被覆電線を圧接刃に挿入する工程に加えて、かしめ部を電線の被覆部にかしめる作業が必要となり、作業工程の増大につながっていた。
【0009】
本発明の目的は、被覆電線に対する保持能力を損なうことなく電線保持部の小型化が可能な圧接端子、及び圧接コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の圧接端子は、
接点部と、
芯線を被覆部で被覆した被覆電線を受け入れるスロットを有し、前記被覆電線が前記スロットに挿入される際に前記被覆部を切断して前記芯線に圧接する圧接部と、
前記接点部及び前記圧接部と一体に形成され、内側に前記被覆電線の被覆部を受け入れる、弾性を有する一対のフック形状の電線保持部と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様において、前記一対のフック形状の電線保持部が、挿入される前記被覆電線の延在方向に関して異なる位置において互いに対向する。
【0012】
また、本発明の一態様において、前記一対のフック形状の電線保持部はそれぞれJ字形状であり、前記圧接部に一続きとなった基部と、前記被覆電線の延在方向に対して直交する幅方向内側に向けて屈曲した先端部と、を有し、前記被覆電線の延在方向から見た場合の前記先端部の間の距離は、前記圧接端子の板厚以下である。
【0013】
また、本発明の一態様において、前記一対のフック形状の電線保持部が、挿入される前記被覆電線の延在方向に関して同位置において互いに対向する。
【0014】
また、本発明の圧接コネクタは、上記いずれかの態様の圧接端子と、当該圧接端子を収容する収容部を有するハウジングと、を備える。
【0015】
また、本発明の一態様において、前記ハウジングは、複数の前記収容部が前記被覆電線の延在方向に関して直交する幅方向に配列して設けられており、それぞれの前記収容部に前記圧接端子が収容されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記一態様によれば、被覆電線に対する保持能力を損なうことなく電線保持部の小型化が可能な圧接端子を提供できる。
【0017】
本発明の上記一態様によれば、一対のフック形状の電線保持部間の距離を狭めたり広げたりする設計自由度を向上させることができる。
【0018】
本発明の上記一態様によれば、一対のフック形状の電線保持部間の距離を、被覆電線の延在方向から見た場合に圧接端子の板厚以下とすることにより、電線保持部に挿入された被覆電線の保持性能を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の上記一態様によれば、一対の電線保持部が、当該電線保持部に挿入された被覆電線の、挿入方向と反対方向への移動を制限することが可能となる。
【0020】
本発明の上記一態様によれば、被覆電線に対する保持能力を損なうことなく電線保持部の小型化が可能な圧接コネクタを提供できる。
【0021】
本発明の上記一態様によれば、ハウジングに被覆電線を保持するための構成を不要としたから、圧接コネクタの幅方向の寸法を小さくすることができ、特に、フック形状の電線保持部が、挿入される前記被覆電線の延在方向に関して異なる位置において互いに対向している場合には、被覆電線を挿入する際に電線保持部が幅方向外側に撓んでも隣接する電線保持部に接触しないから、幅方向の挟ピッチ化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態の圧接コネクタに被覆電線を接続した状態を示す外観斜視図である。
図2図2(A)は、被覆電線を取り外した状態の第一実施形態の圧接コネクタを後方側から見た場合の外観斜視図、図2(B)は、図2(A)の圧接コネクタを前方側から見た場合の外観斜視図、図2(C)は、図2(A)の圧接コネクタの上面図、図2(D)は、図2(A)の圧接コネクタの正面図である。
図3図3(A)は、本発明の第一実施形態の圧接コネクタに使用される圧接端子を前方側から見た場合の外観斜視図、図3(B)は図3(A)の圧接端子を後方側から見た場合の外観斜視図である。
図4図4(A)は、図3(A)の圧接端子の正面図、図4(B)は左側面図、図4(C)は右側面図、図4(D)は後面図、図4(E)は上面図、図4(F)は底面図である。
図5図5(A)は、本発明の第一実施形態の圧接端子に被覆電線を圧接した状態を示す斜視図、図5(B)は図5(A)の圧接端子及び被覆電線を異なる方向から見た場合の斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態の圧接コネクタに被覆電線を接続した状態を示す外観斜視図である。
図7図7(A)は、被覆電線を取り外した状態の第二実施形態の圧接コネクタを後方側から見た場合の外観斜視図、図7(B)は、図7(A)の圧接コネクタを前方側から見た場合の外観斜視図、図7(C)は、図7(A)の圧接コネクタの上面図、図7(D)は、図7(A)の圧接コネクタの正面図である。
図8図8(A)は、本発明の第二実施形態の圧接コネクタに使用される圧接端子を前方側から見た場合の外観斜視図、図8(B)は図8(A)の圧接端子を後方側から見た場合の外観斜視図である。
図9図9(A)は、図8(A)の圧接端子の正面図、図9(B)は左側面図、図9(C)は右側面図、図9(D)は後面図、図9(E)は上面図、図9(F)は底面図である。
図10】金属板から打ち抜いた状態の圧接端子の平面図である。
図11図11(A)は、本発明の第二実施形態の圧接端子に被覆電線を圧接した状態を示す斜視図、図11(B)は図11(A)の圧接端子及び被覆電線を異なる方向から見た場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
第一実施形態の圧接コネクタ10を、図1図2(A)-図2(D)、図3(A)、図3(B)、図4(A)-図4(F)、図5(A)、図5(B)を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の圧接コネクタ及び圧接端子を例示して説明するものであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された他の形態の圧接端子及び圧接コネクタにも等しく適用されるべきものである。
【0024】
図1に示すように、圧接コネクタ10は、合成樹脂で形成されたハウジング100と、このハウジング100の収容部120に圧入されて保持された圧接端子200とを有する。ハウジング100は、図2(A)-図2(D)に示すように、前面101、後面102、右側面103、左側面104、及び底面105を有する、直方体の箱型形状に形成されており、上側が開口している。
【0025】
なお、以下の説明においては、この圧接コネクタ10が相手側コネクタに接続される方向を嵌合方向あるいは前後方向と呼ぶこととする。また、嵌合方向に対して直交する方向のうち、右側面103と左側面104を垂直に貫通する方向を幅方向、嵌合方向と幅方向の両方に直交し、底面105を垂直に貫通する方向を上下方向と呼ぶこととする。また、嵌合方向において、相手側コネクタに面する側を後側又は後方、反対側を前側又は前方と呼ぶこととする。
【0026】
ハウジング100の右側面103と左側面104の間には、複数(第一実施形態では5つ)の収容部120が幅方向に平行に配列して設けられている。それぞれの収容部120は、後面102から前方に向かって前面101の手前まで延在する仕切り壁106によって幅方向に隔てられた前後方向に長尺な空間であり、それぞれの収容部120に圧接端子200が圧入され収容される。それぞれの仕切り壁106は、前面101の後方側において上部分が切り欠かれたスロット107を有する。また右側面103、左側面104の幅方向内側の面にも、前面101の後方側において上部分が幅方向外側に向かって凹んだスロット凹部108が形成されている。これらのスロット107、スロット凹部108は、後述する圧接端子200の保持片231A、231Bが幅方向外側に撓んだ際にその変形を許容するための空間である。
【0027】
ハウジング100の前面101には、電線導入口109が各収容部120に対応した位置に形成されている。それぞれの電線導入口109は、上方が開いたU字形状のスロット状の開口であり、上方から挿入される被覆電線300を受け入れる。また、ハウジング100の後面102には、相手側コネクタのコンタクトを受け入れるコンタクト挿入孔110がそれぞれの収容部120に対応して、後面102を貫通するように、幅方向に複数形成されている。
【0028】
圧接端子200は、単一の導電性金属薄板(例えば、鍍金した銅板)に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施して形成した一体品であり、図3(A)、図3(B)、図4(A)-図4(F)に示すように、接点部210、圧接部220、電線保持部230を有する。接点部210は、嵌合方向及び幅方向に広がる平板状の接点基部211と、この接点基部211の幅方向の両端部分から下方に向けて互いに平行に延びた一対の弾性接触片212A、212Bとを有する。これら弾性接触片212A、212Bの間に、相手側コネクタのコンタクト(図示せず)が挿入されて接続される。
【0029】
圧接部220は、前後方向に間隔を開けて配置された第一圧接部221と第二圧接部222を有している。第一圧接部221は、下端部分が接点基部211の前端に接続され、接点基部211の前端から略垂直に屈曲して上方向に延び、上側がU字形状に開いた第一圧接スロット223を挟んで幅方向で対向する一対の第一圧接刃224A、224Bを含む。
【0030】
第二圧接部222は、第一圧接刃224A、224Bと前後方向に間隔を空けて対向し、第一圧接スロット223と略同一形状の、上側がU字形状い開いた第二圧接スロット225を挟んで幅方向で対向する一対の第二圧接刃226A、226Bを含む。幅方向における一方側の第一圧接刃224Aと第二圧接刃226Aは、それぞれの上端部分が前後方向に延びる連結板227Aによって接続される。同様に、幅方向における他方側の第一圧接刃224Bと第二圧接刃226Bは、それぞれの上端部分が前後方向に延びる連結板227Bによって接続される。
【0031】
電線保持部230は、接点部210及び圧接部220と一体に形成され、内側に被覆電線300の被覆部を受け入れる、弾性を有する一対のフック形状の保持片231A、231Bを有する。これらフック形状の保持片231A、231Bは、それぞれJ字形状であり、圧接部220に一続きとなった基部233A、233Bと、幅方向内側に向けて屈曲した先端部234A、234Bとを有する。このフック形状の保持片231A、231Bの間が電線保持空間232となっている。
【0032】
基部233A、233Bは、保持片231A、231Bの下端部分が、側面視で同一位置において略垂直に屈曲して後方に向かって延びており、第二圧接部222の下端部分に接続されている。この構成により、保持片231A、231Bは、電線保持空間232に挿入される被覆電線300の延在方向に関して同位置において互いに対向する。また、基部233A、233Bの間には基部スロット235が第二圧接部222の下端部分に達しない位置まで後方に向かって形成され、これにより、保持片231A、231Bが幅方向に独立して弾性変形可能となっている。なお、第二圧接部222の下端部分に接続した基部233A、233Bは、第一圧接部221の下端部分よりも下方に位置している。これにより、先端部234A、234Bの間に被覆電線300が挿入された際に、保持片231A、231Bは幅方向外側により大きく撓むことが可能となる。
【0033】
この圧接端子200をハウジング100に形成された収容部120に圧入する。すると、接点部210の弾性接触片212A、212Bの中心部分と、ハウジング100のコンタクト挿入孔110の仮想中心線の位置が揃う。この状態で、相手側コネクタのコンタクト(図示せず)がコンタクト挿入孔110に挿入されると、コンタクトは弾性接触片212A、212Bの間に挿入され、電気的な導通状態が確立されることになる。また、電線保持部230の保持片231A、231Bの間の幅方向の中心部分は、ハウジング100の電線導入口109の幅方向の中心部分と位置が揃った状態となる。
【0034】
このように圧接端子200を収容部120に圧入した状態で、被覆電線300を圧接端子200に圧接接続する。図5(A)、図5(B)を参照して、このときの圧接端子200と被覆電線300との接続の状態について説明する。被覆電線300は、第一圧接部221、第二圧接部222、及び電線保持部230の先端部234A、234Bの上方から第一圧接スロット223、第二圧接スロット225、電線保持空間232に挿入される。
【0035】
このとき、被覆電線300の第一圧接スロット223に圧入された部分は、第一圧接刃224A、224Bの内片部分によって被覆部が切断され、芯線と第一圧接刃224A、224Bの内片部分とが圧接接続する。同様に、被覆電線300の第二圧接スロット225に圧入された部分は、第二圧接刃226A、226Bの内片部分によって被覆部が切断され、芯線と第二圧接刃226A、226Bの内片部分とが圧接接続する。また、このとき、被覆電線300は一対の連結板227A、227Bの間を通過して第一圧接スロット223と第二圧接スロット225の間の空間に挿入される。
【0036】
さらに、被覆電線300の嵌合方向前方側の部分が、保持片231A、231Bの先端部234A、234Bの間に上方から挿入される。すると、保持片231A、231Bは、先端部234A、234Bを、被覆電線300を通過させるようにそれぞれ基部233A、233Bを支点として幅方向外側に撓む。このとき、保持片231A、231Bは、ハウジング100の仕切り壁106の前面101の後方側に形成されたスロット107、あるいは右側面103、左側面104の前面101の後方側に形成されたスロット凹部108内に侵入できる。したがって、保持片231A、231Bは幅方向に大きく撓むことが可能である。
【0037】
被覆電線300が先端部234A、234Bを通過すると、保持片231A、231Bの撓みが解消され、基部233A、233Bを支点として幅方向内側に変位し、元の状態に戻る。そして、被覆電線300は、保持片231A、231Bの間の電線保持空間232に保持された状態となる。
【0038】
保持片231A、231Bは、J字形状のフック形状であるため、電線保持空間232に保持された被覆電線300を上方に移動することを阻止し、振動や上方への引っ張り圧力等の要因によって被覆電線300が圧接端子200から脱落するのを防止する。
【0039】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態の圧接コネクタ10’を、図6図7(A)-図7(D)、図8(A)、図8(B)、図9(A)-図9(F)、図10図11(A)、図11(B)を参照して説明する。第二実施形態の圧接コネクタ10’は、第一実施形態の圧接コネクタ10と、圧接端子200’の構成が異なるだけで他の構成は同一であるから、同一の構成部分には同一の符号を付して説明するものとし、同一の構成についての説明は省略する。
【0040】
図8(A)、図8(B)、図9(A)-図9(F)に示すように、圧接端子200’は、第一実施形態の圧接端子200と同様に、接点部210、圧接部220、電線保持部230’を有する。第二実施形態における圧接端子200’の接点部210と圧接部220の構成は、第一実施形態の圧接端子200の接点部210と圧接部220の構成と略同一であるから詳細な説明を省略し、電線保持部230’の構成についてのみ説明する。
【0041】
第二実施形態の電線保持部230’は、第一実施形態のものと異なり、後述する一対のフック形状の保持片231A’、231B’が、挿入される被覆電線300の延在方向に関して異なる位置で互いに対向、つまり前後にずれた位置で対向している。第二実施形態の電線保持部230’の保持片231A’、231B’は、第一実施形態と同様に、接点部210及び圧接部220と一体に形成され、内側に被覆電線300の被覆部を受け入れる。保持片231A’、231B’は、それぞれJ字形状であり、圧接部220に一続きとなった基部233A’、233B’と、幅方向内側に向けて屈曲した先端部234A’、234B’とを有する。
【0042】
図面を参照して明らかなように、保持片231A’、231B’、先端部234A’、234B’の形状は、第一実施形態のものと実質的に同一であるが、基部233A’、233B’の前後方向の長さが、第一実施形態のものと異なっている。すなわち、幅方向一方側(前方から見て右側)の基部233A’の前後方向の延在長さは、幅方向他方側(前方から見て左側)の基部233B’の前後方向の延在長さよりも短い。つまり、基部233A’、233B’は、第二圧接部222の下端部分に、前後方向における同位置で接続されているが、右側の基部233A’の長さが左側の基部233B’の長さよりも短い。具体的には、右側の基部233A’の長さは、左側の基部233B’の長さよりも、少なくともこの圧接端子200を形成する金属板体の板厚の分だけ短くなっている。その結果、右側の保持片231A’は、左側の保持片231B’よりも後方で略垂直に上方に屈曲し、左側の保持片231B’は前方で略垂直に上方に屈曲している。
【0043】
この構成により、保持片231A’、231B’は、挿入される被覆電線300の延在方向に関して異なる位置において互いに対向し、互いの間に電線保持空間232’を形成する。また、図10に示すように、幅方向における右側と左側の基部233A’、233B’の長さが異なるため、金属板体から打ち抜く際の、金属板体上における先端部234A’、234B’の位置は、長手方向で同位置になく、互いにずれている。そのため、金属板体の長手方向から見た場合の先端部234A’、234B’の間の距離を狭めて圧接端子200’を打ち抜くことができる。具体的には、先端部234A’、234B’の、金属板体の長手方向から見た場合の距離を、圧接端子200’を形成する金属板体の板厚以下にすることができる。さらには、先端部234A’、234B’の、金属板体の長手方向から見た場合の距離を、同一位置、又は重なり合う位置としてもよい。
【0044】
このようにして形成された圧接端子200’の保持片231A’、231B’及び先端部234A’、234B’は、幅方向から見た場合(側面視で見た場合)に互いに重ならない位置にある。したがって、右側の保持片231A’と左側の保持片231B’は、先端部234A’、234B’が前後方向から見た場合に重なり合う位置に形成された場合でも、互いに接触したり、干渉したりすることがない。
【0045】
また、第一実施形態と同様に、基部233A’、233B’の間には基部スロット235’が第二圧接部222の下端部分に達しない位置まで後方に向かって形成され、これにより、保持片231A’、231B’が幅方向に弾性変形可能となっている。
【0046】
この圧接端子200’をハウジング100に形成された収容部120に圧入する。すると、接点部210の弾性接触片212A、212Bの中心部分と、ハウジング100のコンタクト挿入孔110の中心線の位置が揃う。また、電線保持部230’の保持片231A’、231B’の、嵌合方向から見た場合の中心部分は、ハウジング100の電線導入口109の幅方向の中心部分と位置が揃った状態となる。
【0047】
圧接端子200’を収容部120に圧入した状態で、被覆電線300を圧接端子200’に圧接接続する。図11(A)、図11(B)に示すように、被覆電線300は、第一圧接部221、第二圧接部222、及び電線保持部230’の先端部234A’、234B’の上方から第一圧接スロット223、第二圧接スロット225、電線保持空間232’に挿入される。
【0048】
このとき、第一実施形態と同様に、被覆電線300の第一圧接スロット223に圧入された部分は、第一圧接刃224A、224Bの内片部分によって被覆部が切断され、芯線と第一圧接刃224A、224Bの内片部分とが圧接接続する。同様に、被覆電線300の第二圧接スロット225に圧入された部分は、第二圧接刃226A、226Bの内片部分によって被覆部が切断され、芯線と第二圧接刃226A、226Bの内片部分とが圧接接続する。また、このとき、被覆電線300は一対の連結板227A、227Bの間を通過して第一圧接スロット223と第二圧接スロット225の間の空間に挿入される。
【0049】
さらに、被覆電線300の嵌合方向前方側の部分は、保持片231A’、231B’の先端部234A’、234B’の間に上方から挿入される。すると、保持片231A’、231B’は、先端部234A’、234B’を、被覆電線300を通過させるようにそれぞれ基部233A’、233B’を支点として幅方向外側に撓む。このとき、保持片231A’、231B’は、ハウジング100の仕切り壁106の前面101の後方側に形成されたスロット107、あるいは右側面103、左側面104の前面101の後方側に形成されたスロット凹部108内に侵入できる。
【0050】
このとき、保持片231A’、231B’は、幅方向から見た場合に前後方向にずれた位置にある。したがって、隣接し合う圧接端子200’の保持片231A’231B’がそれぞれ幅方向外側に撓んだ場合であっても、一つの圧接端子200’の保持片231A’と、それに隣接した他の圧接端子200’の保持片231B’とが接触したり干渉したりすることがない。したがって、ハウジング100に組み込む圧接端子200’の配置間隔を狭めた挟ピッチの圧接コネクタ10’とすることができる。
【0051】
被覆電線300が先端部234A’、234B’を通過すると、保持片231A’、231B’の撓みが解消され、基部233A’、233B’を支点として幅方向内側に変位し、元の状態に戻る。そして、被覆電線300は、保持片231A’、231B’の間の電線保持空間232’に保持された状態となる。
【0052】
保持片231A’、231B’は、J字形状のフック形状であり、さらに先端部234A’、234B’間の隙間は前後方向から見た場合に圧接端子200’の板厚以下である。したがって、保持片231A’、231B’は、電線保持空間232’に保持された被覆電線300の上方への移動を確実に阻止し、振動や上方への引っ張り圧力等の要因によって被覆電線300が圧接端子200’から脱落するのを防止する。
【0053】
以上、第一実施形態、及び第二実施形態の圧接コネクタ10、10’について説明した。上記説明したように、圧接端子200、200’に電線保持部230、230’を一体形成したことにより、ハウジング100にいわゆるストレインリリーフ構造を形成する必要がなくなり、圧接コネクタ10、10’を小型化することが可能となる。
【0054】
また、圧接端子200、200’に形成された電線保持部230、230’は金属製であり、且つばね性を有している。そのため、樹脂製のハウジング100にストレインリリーフを形成した場合に生じるようなクラック等の損傷の懸念がない。したがって、圧接端子200、200’は、大小の異なる径の被覆電線300の圧入に対応することが可能である。
【0055】
また、第二実施形態における圧接端子200’のように、電線保持部230’の保持片231A’、231B’の基部233A’、233B’の長さを異ならせることにより、先端部234A’、234B’の形状を自由に変更することが容易となる。つまり、先端部234A’、234B’の形状を第二実施形態のように三角形状とするだけでなく、圧入される被覆電線300の大きさに合わせて、他の形状とすることが可能である。これにより、設計時に、被覆電線300の大きさに合わせて電線保持空間232’の大きさを調整することが容易となり、被覆電線300の圧入時の挿入力と電線保持力とのバランスがとりやすくなる。
【0056】
また、上記実施形態においては、圧接端子200、200’のJ字形状の保持片231A、231B、231A’、231B’は、プレスで打ち抜き加工して当該形状を形成した場合を説明したが、J字形状となるようにプレス曲げ加工で形成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10、10’圧接コネクタ
100 ハウジング
101 前面
102 後面
103 右側面
104 左側面
105 底面
106 仕切り壁
107 スロット
108 スロット凹部
109 電線導入口
110 コンタクト挿入孔
120 収容部
200、200’ 圧接端子
210 接点部
211 接点基部
212A、212B 弾性接触片
220 圧接部
221 第一圧接部
222 第二圧接部
223 第一圧接スロット
224A、224B 第一圧接刃
225 第二圧接スロット
226A、226B 第二圧接刃
227A、227B 連結板
230、230’ 電線保持部
231A、231B、231A’、231B’ 保持片
232、232’ 電線保持空間
233A、233B、233A’、233B’ 基部
234A、234B、234A’、234B’ 先端部
235 基部スロット
300 被覆電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11