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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159658
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】回転軸クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 16/10 20060101AFI20231025BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B23Q16/10 A
B23Q1/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069492
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一弘
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048BC02
3C048BC03
3C048DD10
3C048DD19
(57)【要約】
【課題】構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる回転軸クランプ装置を提供する。
【解決手段】クランプ装置40は、所定の中心軸線まわりに相対回転可能な第1部材と第2部材とをクランプする回転軸クランプ装置であって、第1部材である回転軸41に形成されたディスク43の外周に形成されて中心軸線から所定距離の環状とされかつ互いに一定間隔で対向する一対の接触面46と、第2部材である支持体42に支持されて一対の接触面46に圧接可能な圧接部材44と、を有し、圧接部材44は、一対の接触面46の間に配置されて接触面46に対向する一対の表面47が中心軸線に沿った方向へ進出可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸線まわりに相対回転可能な第1部材と第2部材とをクランプする回転軸クランプ装置であって、
前記第1部材に支持されて前記中心軸線から所定距離の環状に形成されかつ互いに一定間隔で対向する一対の接触面と、前記第2部材に支持されて一対の前記接触面に圧接可能な圧接部材と、を有し、
前記圧接部材は、一対の前記接触面の間に配置されて前記接触面に対向する一対の表面が前記中心軸線に沿った方向へ進出可能である回転軸クランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転軸クランプ装置において、
前記第1部材は回転軸であり、
前記第2部材は前記回転軸を回転自在に支持する支持体であり、
前記回転軸の中間部には同軸でディスクが形成され、
一対の前記接触面は前記ディスクの外周に形成されかつ前記中心軸線方向に対向されており、
前記圧接部材は前記支持体に支持されている回転軸クランプ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転軸クランプ装置において、
前記第1部材は支持体であり、
前記第2部材は前記支持体に回転自在に支持された回転軸であり、
前記支持体の内側には前記回転軸と同軸で環状の接触部材が形成され、
一対の前記接触面は前記接触部材の内周に形成されかつ前記中心軸線方向に対向されており、
前記圧接部材は前記回転軸に支持されている回転軸クランプ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の回転軸クランプ装置において、
前記第1部材は回転軸であり、
前記第2部材は前記回転軸を回転自在に支持する支持体であり、
前記回転軸の中間部には同軸でディスクが形成され、
一対の前記接触面は前記ディスクの外縁に形成されかつ前記回転軸の径方向に対向されており、
前記圧接部材は前記支持体に支持されている回転軸クランプ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の回転軸クランプ装置において、
前記第1部材は支持体であり、
前記第2部材は前記支持体に回転自在に支持された回転軸であり、
前記支持体の内側には前記回転軸と同軸で環状の接触部材が形成され、
一対の前記接触面は前記接触部材の内縁に形成されかつ前記回転軸の径方向に対向されており、
前記圧接部材は前記回転軸に支持されている回転軸クランプ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の回転軸クランプ装置において、
前記圧接部材は、偏平かつ内部に供給される流体圧により膨出可能なダイヤフラムを有する回転軸クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転軸クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、例えば多軸工作機械の主軸ヘッドの向きや傾き調整用に、あるいは回転テーブルの角度位置の調整用に、それぞれ回転割出装置が用いられている。
回転割出装置には、回転軸を回転させる回転駆動装置とともに、所定の角度位置で回転軸を拘束するクランプ装置が設置される。
クランプ装置として、回転軸を拘束する軸拘束式、または回転軸に装着されたディスクを拘束するディスク式が利用されている。
【0003】
軸拘束式として、特許文献1および特許文献2がある。
軸拘束式の回転軸クランプ装置では、ダイヤフラム式の変位機構を回転軸の外周に圧接させ、摩擦により制動している。
ディスク式として、特許文献3および特許文献4がある。
ディスク式の回転軸クランプ装置では、回転軸に装着されたディスクを固定し、ダイヤフラム式の変位機構をディスクの表面に圧接させ、摩擦により制動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4996285号
【特許文献2】特許第4883815号
【特許文献3】特許第4993722号
【特許文献4】特許第5078526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したディスク式は、拘束位置の回転中心からの距離が大きい分、軸拘束式よりも拘束力を高めることができる。
しかし、ディスクに対する圧接力がディスクの片面側だけから加えられる場合、回転軸にスラスト方向(回転中心軸線方向)の負荷が生じ、回転割出装置としての位置精度に影響がある。
ここで、ディスクの両面側から圧接力を加える構成とすることで、各々の圧接力を相殺させて回転中心軸線方向の変位を抑制できる。しかし、ディスクの両面側にそれぞれダイヤフラムなどの変位機構を設置する場合、部品点数の増加や設置スペースの拡大など、回転割出装置の設置上の影響がある。
【0006】
本発明の目的は、構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる回転軸クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転軸クランプ装置は、所定の中心軸線まわりに相対回転可能な第1部材と第2部材とをクランプする回転軸クランプ装置であって、前記第1部材に支持されて前記中心軸線から所定距離の環状に形成されかつ互いに一定間隔で対向する一対の接触面と、前記第2部材に支持されて一対の前記接触面に圧接可能な圧接部材と、を有し、前記圧接部材は、一対の前記接触面の間に配置されて前記接触面に対向する一対の表面が前記中心軸線に沿った方向へ進出可能である。
【0008】
本発明の回転軸クランプ装置において、前記第1部材は回転軸であり、前記第2部材は前記回転軸を回転自在に支持する支持体であり、前記回転軸の中間部には同軸でディスクが形成され、一対の前記接触面は前記ディスクの外周に形成されかつ前記中心軸線方向に対向されており、前記圧接部材は前記支持体に支持されていてもよい。
【0009】
このような本発明では、既存のディスク式のクランプ装置と同様な基本構成とすることができ、圧接部材が接触面に圧接することで支持体に対して回転軸を拘束でき、回転軸から圧接部材までの距離を大きくすることで拘束力を確保できる。
ここで、本発明では、圧接部材がディスク外周に形成された一対の接触面の間に配置されるので、クランプ装置としての構造が簡素にできる。さらに、圧接部材が一対の接触面の内側にそれぞれ圧接し、接触面の各々に対する接触力が均等化されるため、回転軸には圧接に伴う中心軸線方向の力(スラスト力)が生じず、回転機構としての位置精度が確保できる。
【0010】
本発明の回転軸クランプ装置において、前記第1部材は支持体であり、前記第2部材は前記支持体に回転自在に支持された回転軸であり、前記支持体の内側には前記回転軸と同軸で環状の接触部材が形成され、一対の前記接触面は前記接触部材の内側に形成されかつ前記中心軸線方向に対向されており、前記圧接部材は前記回転軸に支持されていてもよい。
【0011】
このような本発明では、既存のディスク式のクランプ装置とは圧接部材および接触面の配置が逆となるが、圧接部材が接触面に圧接することで支持体に対して回転を拘束でき、回転軸から圧接部材までの距離を大きくすることで拘束力を確保できる。
ここで、本発明では、圧接部材が環状の接触部材の内側に形成された一対の接触面の間に配置されるので、クランプ装置としての構造が簡素にできる。さらに、圧接部材が一対の接触面の内側にそれぞれ圧接し、接触面の各々に対する接触力が均等化されるため、回転軸には圧接に伴う中心軸線方向の力(スラスト力)が生じず、回転機構としての位置精度が確保できる。
【0012】
本発明の回転軸クランプ装置において、前記第1部材は回転軸であり、前記第2部材は前記回転軸を回転自在に支持する支持体であり、前記回転軸の中間部には同軸でディスクが形成され、一対の前記接触面は前記ディスクの外縁に形成されかつ前記回転軸の径方向に対向されており、前記圧接部材は前記支持体に支持されていてもよい。
【0013】
このような本発明では、圧接部材が接触面に圧接することで支持体に対して回転軸を拘束でき、回転軸から圧接部材までの距離を大きくすることで拘束力を確保できる。
ここで、本発明では、圧接部材がディスク外縁に形成された一対の接触面の間に配置され、かつディスク外周より内側に圧接部材が配置されるので、クランプ装置としての構造が簡素かつコンパクトにできる。さらに、圧接部材が一対の接触面の内側にそれぞれ圧接し、接触面の各々に対する接触力が均等化されるため、回転軸には圧接に伴う中心軸線交差方向の力(ラジアル力)が生じず、回転機構としての位置精度が確保できる。
【0014】
本発明の回転軸クランプ装置において、前記第1部材は支持体であり、前記第2部材は前記支持体に回転自在に支持された回転軸であり、前記支持体の内側には前記回転軸と同軸で環状の接触部材が形成され、一対の前記接触面は前記接触部材の内縁に沿って形成されかつ前記回転軸の径方向に対向されており、前記圧接部材は前記回転軸に支持されていてもよい。
【0015】
このような本発明では、圧接部材が接触面に圧接することで支持体に対して回転を拘束でき、回転軸から圧接部材までの距離を大きくすることで拘束力を確保できる。
ここで、本発明では、圧接部材が接触部材内縁に形成された一対の接触面の間に配置され、かつディスク外周より内側に圧接部材を配置できるので、クランプ装置としての構造が簡素にできる。さらに、圧接部材が一対の接触面の内側にそれぞれ圧接し、接触面の各々に対する接触力が均等化されるため、回転軸には圧接に伴う中心軸線交差方向の力(ラジアル力)が生じず、回転機構としての位置精度が確保できる。
【0016】
本発明の回転軸クランプ装置において、前記圧接部材は、偏平かつ内部に供給される流体圧により膨出可能なダイヤフラムを有することが好ましい。
本発明において、ダイヤフラムは、偏平な圧接部材の両面に形成されていることが好ましい。ただし、ダイヤフラムは圧接部材の片面だけでもよい。ダイヤフラムが圧接部材の片面だけの場合、圧接部材の回転軸または支持体に対して中心軸線方向にスライド可能に支持すれば、スラスト力を確実に解消できる。
このような本発明では、圧接部材に加圧流体を供給してダイヤフラムを膨出させることで接触面に圧接させることができる。また、圧接部材から加圧流体を排出することで、ダイヤフラムを元の形状に戻し、接触面への圧接を解除できる。このようなダイヤフラム式の圧接部材は、構造を簡素にでき、保守性も向上できる。
【0017】
本発明において、圧接部材としては、ダイヤフラムのほか、偏平なピストンを用いてもよい。例えば、偏平な基材の両面に円形の凹部を形成し、そこに円形板状のピストンを嵌め込んだ構造が利用できる。ピストンの周囲のシール性を考慮して、内部に樹脂バルーンを収納してその内部に作動油を供給してもよい。このような圧接部材によれば、ピストンの進退ストロークが確保しやすく、圧接部材と接触面との間隔が比較的大きい場合でも確実なクランプが可能である。
圧接部材としては、板状の圧電素子を用いてもよい。例えば、偏平な基材の両面に板状の圧電素子を固定した構造が利用できる。このような圧接部材によれば、印加電圧の制御により圧電素子を膨出させて接触面に圧接させることができ、流体を用いる場合よりも構造をさらに簡素化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる回転軸クランプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の主軸ヘッドを示す正面図。
図2】前記第1実施形態の主軸ヘッドを示す側面図。
図3】前記第1実施形態の主軸ヘッドを示す平面図。
図4】前記第1実施形態の回転軸クランプ装置を示す断面図。
図5】前記第1実施形態の圧接部材を示す断面図。
図6】前記第1実施形態の他の圧接部材を示す断面図。
図7】前記第1実施形態の他の圧接部材を示す断面図。
図8】前記第1実施形態の他の圧接部材を示す断面図。
図9】本発明の第2実施形態の回転軸クランプ装置を示す断面図。
図10】本発明の第3実施形態の回転軸クランプ装置を示す断面図。
図11】本発明の第4実施形態の回転軸クランプ装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
図1から図3には5軸工作機械の5軸ヘッド10が示されている。
5軸ヘッド10は、主軸11に装着された刃物12を回転させてワークを加工するものであり、図示しない工作機械に装着されてXYZの3軸方向へ移動可能である。さらに、5軸ヘッド10は、B軸回転割出装置20およびC軸回転割出装置30を有し、主軸11の向きをB軸(Y軸回り)およびC軸(Z軸回り)の2軸へ回転可能である。
【0021】
5軸ヘッド10は、スピンドルヘッド13、アーム本体14およびヘッド本体15を有する。
ヘッド本体15は、矩形箱状に形成され、上面側が図示しない締結機構により工作機械のラム1の先端に装着可能である。
アーム本体14は、矩形箱状の下側からX軸に沿って切欠かれ、下部が一対のアーム141とされている。アーム本体14の上面には回転軸142が接続されている。回転軸142は、ヘッド本体15により回転自在に支持されている。
【0022】
スピンドルヘッド13は、一対のアーム141の間に配置されている。
スピンドルヘッド13は、中心軸がY軸に沿った円筒形状とされ、両端面にはスピンドルヘッド13の中心軸に沿って伸びる回転軸131が接続されている。一対の回転軸131は、それぞれ一対のアーム141の内部まで延び、アーム141に回転自在に支持されている。
スピンドルヘッド13は、前述した主軸11を回転自在に支持するとともに、主軸11を回転させる図示しない主軸モータを備えている。
【0023】
ヘッド本体15の上面にはスリップリングケース151が設置されている。回転軸142の上端にはスリップリング回転軸143が接続されている。スリップリング回転軸143はスリップリングケース151の内部に導入され、スリップリングケース151の内部にはスリップリングが形成されている。スリップリングケース151内のスリップリングを介して、前述した主軸モータおよび後述するB軸回転割出装置20およびC軸回転割出装置30への電気的配線および配管類がラム1側へと回転自在に接続される。
【0024】
B軸回転割出装置20として、一対のアーム141には、それぞれ駆動モータ21およびクランプ装置22が設置されている。一対の駆動モータ21は、回転軸131を回転させ、主軸11の向きをB軸の任意角度位置へ変更可能である(図2参照)。一対のクランプ装置22は、アーム本体14に対してスピンドルヘッド13がB軸の任意角度位置にある状態で回転軸131を拘束し、クランプ可能である。
【0025】
C軸回転割出装置30として、ヘッド本体15には、駆動モータ31およびクランプ装置32が設置されている。駆動モータ31は、回転軸142を回転させ、アーム本体14の向きをC軸の任意角度位置へ変更可能である(図3参照)。クランプ装置32は、ヘッド本体15に対してアーム本体14がC軸の任意角度位置にある状態で回転軸142を拘束し、クランプ可能である。
【0026】
本実施形態では、B軸回転割出装置20のクランプ装置22およびC軸回転割出装置30のクランプ装置32として、それぞれ図4に示すクランプ装置40を用いている。
図4のクランプ装置40において、回転軸41とは、クランプ装置22における回転軸131、またはクランプ装置32における回転軸142である。また、支持体42とは、クランプ装置22におけるアーム本体14、またはクランプ装置32におけるヘッド本体15である。
【0027】
クランプ装置40は、回転軸41(第1部材)の中間部に固定されたディスク43と、支持体42(第2部材)に支持された圧接部材44と、を備えている。
ディスク43の外周両面側には、それぞれ環状の接触部材45が固定されている。一対の接触部材45は、回転軸41の中心軸線A方向に所定間隔で対向配置され、各々の対向面に一対の接触面46が形成されている。一対の接触面46は、回転軸41の中心軸線Aから所定距離の環状に形成されかつ互いに一定間隔で対向されている。
圧接部材44は、環状かつ中心軸方向へ偏平に形成され、ディスク43の外側に全周に渡って同心状に配列されている(図3参照)。圧接部材44は、一部が一対の接触面46の間に配置され、接触面46に対向する表裏一対の表面47が回転軸41の中心軸線Aに沿った方向へ進出可能である。
【0028】
図5において、圧接部材44としては、全体として偏平で内部にキャビティ441を有し、両側の表面47がダイヤフラム442とされた部材が利用できる。このような圧接部材44では、内部のキャビティ441に外部から加圧流体を供給することで、流体圧によりダイヤフラム442が膨出し、表面47を接触面46に圧接させることができる。
【0029】
圧接部材44が一対の接触面46から均等な距離に配置されていれば、加圧流体の供給により両側のダイヤフラム442が均等に膨出し、両側の表面47がそれぞれ同時に一対の接触面46に接触し、均等に圧接してゆく。
その結果、両側の表面47と接触面46との間の摩擦力により、接触部材45が圧接部材44で拘束され、支持体42に対する回転軸41のクランプが行われる。この際、両側の表面47から対向する接触面46に加えられる圧接力は、各側で互いに逆向きであるため相殺され、支持体42に対する回転軸41の変位を生じさせることはない。
【0030】
これに対し、圧接部材44が一対の接触面46の片方に偏っていた場合、各側の表面47の接触面46への圧接は順次行われる。
すなわち、加圧流体の供給によるダイヤフラム442の膨出に伴って、先ず偏っている側の表面47が対向する接触面46に接触し、ダイヤフラム442の膨出が抑制される。偏っている側とは反対側のダイヤフラム442は膨出を続ける。
ここで、偏っている側だけで表面47と接触面46とが圧接されている状態では、同側の圧接力が回転軸41に作用するが、この段階での圧接力は支持体42による回転軸41の回転支持構造で負担可能であり、回転軸41を変位させることはない。
【0031】
続く加圧流体の供給によって、偏っている側と反対側の表面47が対向する接触面46に接触し、ダイヤフラム442の膨出が抑制される。そして、加圧流体をさらに圧送することで、両側のダイヤフラム442を介して各側の表面47が対向する接触面46に圧接される。
これにより、前述した均等な配置の場合と同様、両側の表面47と接触面46との間の摩擦力により、接触部材45が圧接部材44で拘束され、支持体42に対する回転軸41のクランプが行われる。この際、両側の表面47から対向する接触面46に加えられる圧接力は、各側で互いに逆向きであるため相殺され、支持体42に対する回転軸41の変位を生じさせることはない。
【0032】
従って、本実施形態のクランプ装置40では、既存のディスク式のクランプ装置と同様な基本構成とすることができ、圧接部材44が接触面46に圧接することで支持体42に対して回転軸41を拘束でき、ディスク43の外径により回転軸41から圧接部材44までの距離を大きくすることで拘束力を確保できる。
さらに、本実施形態では、圧接部材44がディスク43の外周に形成された一対の接触面46の間に配置されるので、クランプ装置40としての構造が簡素にできる。さらに、圧接部材44が一対の接触面46の内側にそれぞれ圧接し、接触面46の各々に対する接触力が均等化されるため、回転軸41には圧接に伴う中心軸線A方向の力(スラスト力)が生じず、回転機構であるB軸回転割出装置20およびC軸回転割出装置30としての位置精度が確保できる。
【0033】
さらに、2つのB軸回転割出装置20は、それぞれアーム本体14の両側端部に設置したので、アーム本体14の端部カバーを開くことで保守点検などが容易である。
【0034】
〔圧電素子の他の実施形態〕
本実施形態においては、図5の圧接部材44に代えて、図6ないし図8に示す圧接部材44A~44Cを用いることもできる。
図6において、圧接部材44Aは、全体として偏平で内部にキャビティ441を有する。キャビティ441は圧接部材44Aの片面に偏っており、両側の表面47のうち一方だけがダイヤフラム442とされている。圧接部材44Aは、支持体42に形成された凹部421に嵌め込まれ、回転軸41の軸線方向に延びるピン422が貫通され、回転軸41の回転方向に移動規制されつつ回転軸41の軸線方向には変位可能である。
【0035】
このような圧接部材44Aでは、内部のキャビティ441に外部から加圧流体を供給することで、流体圧によりダイヤフラム442が膨出し、一方の表面47が対向する接触面46に圧接する。加圧流体をさらに供給することで、ダイヤフラム442が膨出しつつ圧接部材44Aが変位し、反対側の表面47も対向する接触面46に圧接する。これにより、両側の表面47がそれぞれ一対の接触面46に圧接し、加圧流体をさらに供給することで十分な拘束力を確保できる。一方、回転軸41には圧接に伴う中心軸線A方向の力(スラスト力)が生じない。
【0036】
なお、図6のクランプ装置40では、圧接部材44Aの片側に接触部材45が配置されるとともに、反対側にはディスク43の一部を延長した接触部分43Aが配置されている。このような構造では、片側の接触部材45をディスク43から取り外すことで、圧接部材44Aを一対の接触面46の間に導入することができる。この点は、前述した図5、後述する図7および図8のクランプ装置40でも同様である。
【0037】
図7において、圧接部材44Bは、全体として偏平で内部にキャビティ441を有し、両側の表面47が偏平なピストン443で形成されている。このような圧接部材44Bでは、内部のキャビティ441に外部から加圧流体を供給することで、流体圧によりピストン443が進出し、表面47を接触面46に圧接させることができる。
【0038】
図8において、圧接部材44Cは、全体として偏平な板状に形成され、両側の表面47が偏平な圧電素子444で形成されている。このような圧接部材44Cでは、圧電素子444への電圧印加により圧電素子444を膨出させ、表面47を接触面46に圧接させることができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
本実施形態は、前述した第1実施形態と同様な5軸工作機械の5軸ヘッド10であって、クランプ装置40の構成が異なるものである。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図9には、本実施形態のクランプ装置40Aが示されている。
前述した第1実施形態のクランプ装置40では、回転軸41に固定されたディスク43に一対の接触面46が形成され、圧接部材44が支持体42に支持されていた。
これに対し、本実施形態のクランプ装置40Aでは、回転軸41および支持体42における圧接部材44および一対の接触面46の配置が逆になっている。
【0040】
図9において、支持体42には、円筒状の内周面に環状の溝が形成され、その内側の対向面が一対の接触面46とされている。一対の接触面46は、回転軸41の中心軸線Aから所定距離の環状に形成されかつ互いに中心軸線A方向に所定間隔で対向されている。一対の接触面46を形成する溝は、片側が支持体42から連続した接触部分42Aとされ、反対側が支持体42に着脱可能に固定された環状の接触部材45Aとされている。
圧接部材44は、ディスク43の外周に径方向外向きに固定され、それぞれ一対の接触面46の間まで延びている。圧接部材44は、接触部材45Aを支持体42から取り外した状態で、溝内に導入可能である。
圧接部材44は、前述した図5の構成または図6ないし図8の構成(圧接部材44A~44C)とされ、接触面46に対向する表裏一対の表面47が回転軸41の中心軸線Aに沿った方向へ進出可能である。
【0041】
このような本実施形態においても、圧接部材44の両側の表面47をそれぞれ進出させて一対の接触面46に圧接させることで、支持体42に対して回転軸41を変位させることなく拘束することができ、構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる。
【0042】
〔第3実施形態〕
本実施形態は、前述した第1実施形態と同様な5軸工作機械の5軸ヘッド10であって、クランプ装置40の構成が異なるものである。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図10には、本実施形態のクランプ装置40Bが示されている。
前述した第1実施形態のクランプ装置40では、回転軸41に固定されたディスク43の外周の一対の接触面46、および支持体42に支持された圧接部材44の表面47が、それぞれ回転軸41の径方向に沿って配置されていた。
これに対し、本実施形態のクランプ装置40Bでは、圧接部材44の表面47および一対の接触面46が回転軸41の径方向と交差方向、つまり回転軸41の周方向に沿って配置されている。
【0043】
図10において、ディスク43の外周近傍の片面には一対の接触部材45Bが固定されている。一対の接触部材45Bは、回転軸41の中心軸線Aに対して同軸状に配置され、各々の対向面に一対の接触面46が形成されている。一対の接触面46は、回転軸41の中心軸線Aから所定距離の環状に形成されかつ互いに一定間隔で対向されている。
圧接部材44は、支持体42の内側から張り出した内フランジ423に支持され、回転軸41の中心軸線A方向に延びて一対の接触面46の間まで達している。
圧接部材44は、前述した図5の構成または図6ないし図8の構成(圧接部材44A~44C)とされ、接触面46に対向する表裏一対の表面47が回転軸41の中心軸線Aに沿った方向へ進出可能である。
【0044】
このような本実施形態においても、圧接部材44の両側の表面47をそれぞれ進出させて一対の接触面46に圧接させることで、支持体42に対して回転軸41を変位させることなく拘束することができ、構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる。
【0045】
〔第4実施形態〕
本実施形態は、前述した第1実施形態と同様な5軸工作機械の5軸ヘッド10であって、クランプ装置40の構成が異なるものである。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図11には、本実施形態のクランプ装置40Cが示されている。
前述した第1実施形態のクランプ装置40では、回転軸41に固定されたディスク43の外周の一対の接触面46、および支持体42に支持された圧接部材44の表面47が、それぞれ回転軸41の径方向に沿って配置されていた。
これに対し、本実施形態のクランプ装置40Cでは、圧接部材44の表面47および一対の接触面46が回転軸41の径方向と交差方向、つまり回転軸41の周方向に沿って配置されている。さらに、回転軸41および支持体42における圧接部材44および一対の接触面46の配置が逆になっている。
【0046】
図11において、支持体42の内側から張り出した内フランジ423の片面には一対の接触部材45Cが固定されている。一対の接触部材45Cは、回転軸41の中心軸線Aに対して同軸状に配置され、各々の対向面に一対の接触面46が形成されている。一対の接触面46は、回転軸41の中心軸線Aから所定距離の環状に形成されかつ互いに一定間隔で対向されている。
圧接部材44は、ディスク43の外周近傍の片面に支持され、回転軸41の中心軸線A方向に延びて一対の接触面46の間まで達している。
圧接部材44は、前述した図5の構成または図6ないし図8の構成(圧接部材44A~44C)とされ、接触面46に対向する表裏一対の表面47が回転軸41の中心軸線Aに沿った方向へ進出可能である。
【0047】
このような本実施形態においても、圧接部材44の両側の表面47をそれぞれ進出させて一対の接触面46に圧接させることで、支持体42に対して回転軸41を変位させることなく拘束することができ、構造が簡素で拘束力および位置精度を確保できる。
【0048】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記各実施形態では、回転軸41に固定したディスク43の外周部に接触部材45または圧接部材44を支持したが、これらの支持はディスク43に限らず放射状のスポークなどであってもよい。また、接触部材45は圧接部材44の両側に限らず、片側はディスク43と一体に形成された接触部分43Aとしてもよい。さらに、支持体42に支持した環状の接触部材45は、支持体42と一体に形成された環状の接触部分42Aであってもよい。一対の接触面46は、一対の接触部材45の内側に対向する面に限らず、環状の溝の内側面として形成してもよい。さらに、圧接部材44についても、支持体42あるいはディスク43に一体形成してもよい。
前記各実施形態では、圧接部材44,44A,44B,44Cをそれぞれ偏平な環状としたが、環状に連続したものに限らず、断片的な圧接部材を複数、周方向に所定間隔で配列してもよい。
【0049】
前記各実施形態においては、B軸の回転軸131にB軸回転割出装置20を2つ設置し、C軸の回転軸142にC軸回転割出装置30を1つ設置したが、これらは1つ以上の任意の数であってもよい。
また、B軸回転割出装置20およびC軸回転割出装置30に、それぞれクランプ装置22あるいはクランプ装置32を1つずつ設置したが、各々に複数列設置してもよい。
前記各実施形態においては、本発明の回転軸クランプ装置を5軸工作機械の5軸ヘッド10のB軸回転割出装置20およびC軸回転割出装置30に適用したが、本発明の回転軸クランプ装置は、工作機械のワークテーブル回転機構ほかに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は回転軸クランプ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…ラム、10…5軸ヘッド、11…主軸、12…刃物、13…スピンドルヘッド、131…回転軸、14…アーム本体、141…アーム、142…回転軸、143…スリップリング回転軸、15…ヘッド本体、151…スリップリングケース、20…B軸回転割出装置、21,31…駆動モータ、22,32,40,40A,40B,40C…クランプ装置、30…C軸回転割出装置、41…回転軸、42…支持体、421…凹部、422…ピン、423…内フランジ、43…ディスク、44,44A,44B,44C…圧接部材、441…キャビティ、442…ダイヤフラム、443…ピストン、444…圧電素子、45,45B,45C…接触部材、42A,43A…接触部分、46…接触面、47…表面、A…中心軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11