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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159689
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】動物収容用檻
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
A01K67/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069553
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】390029698
【氏名又は名称】テック大洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】秋山 皓平
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
(57)【要約】
【課題】環境エンリッチメントに優れた動物収容用檻を提供すること。また、檻に動物を収容した際に、動物が被るダメージを低減することができ、動物の移動や治療・検診等の際に、作業者や獣医等の関係者が危険に晒されることが無く、かつ、収容した動物による損壊を防止し得る動物収容用檻を提供すること。
【解決手段】天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻において、檻内部に可動仕切面が設けられており、
当該可動仕切面は、檻外部に設けられた操作部材により、檻内部の上下方向、左右方向又は前後方向の少なくとも一方向に移動可能とされており、
可動仕切面の少なくとも一部と、可動仕切面と対向する面の少なくとも一部は、それぞれ緩衝面と非緩衝面とが切り替え可能とされている、動物収容用檻。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻において、檻内部に可動仕切面が設けられており、
当該可動仕切面は、檻外部に設けられた操作部材により、檻内部の上下方向、左右方向又は前後方向の少なくとも一方向に移動可能とされており、
可動仕切面の少なくとも一部と、可動仕切面と対向する面の少なくとも一部は、それぞれ緩衝面と非緩衝面とが切り替え可能とされている、動物収容用檻。
【請求項2】
可動仕切面における緩衝面と非緩衝面は、檻外部に設けられた操作部材により、可動仕切面の動きとは独立して切り替え可能とされている、請求項1に記載の動物収容用檻。
【請求項3】
可動仕切面及び/又は可動仕切面と対向する面における緩衝面と非緩衝面を構成する部材の少なくとも一部は、取り外し可能とされている、請求項1又は請求項2に記載の動物収容用檻。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の動物収容用檻を備え、
当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備え、
前記動物出入口と動物生活部とが連通している、動物用檻システム。
【請求項5】
前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して前記動物生活部と連通しており、
前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、請求項4に記載の動物用檻システム。
【請求項6】
天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻を備え、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備えており、
前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して動物生活部と連通しており、
前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、動物用檻システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物を収容する檻に関し、動物を傷付けずに搬送・治療・診断等をすることができる動物収容用檻に関する。
【背景技術】
【0002】
動物収容用檻は、動物を捕獲して動物園等に搬送したり、動物を治療するために病院に搬送したりする等、動物を所定の場所に移動することが必要な場合に用いられている。また、動物収容用檻は、動物の健康診断、採血、治療等を行う際に、動物を一定時間所定の場所に留めておくことが必要な場合にも用いられている。
動物園、水族館、動物公園、ペットショップ、畜産施設等で飼育する動物には、対応に注意が必要な動物もいる。動物の搬送・治療・診断等のために動物に接触したりする際に、作業者や獣医等の関係者との間に事故等が起こる可能性がある。
一方、近年は、飼育されている動物の福祉と健康を改善するため、動物の飼育環境を工夫する環境エンリッチメントが注目されている。
動物の搬送・治療・診断等に際して、麻酔銃等で薬物を投与して動物の行動を抑制したり、動物を無理やり檻に押し込めたりする等は、動物が被るダメージが大きく、さらに、環境エンリッチメントの観点から問題がある。また、動物を自然に檻に誘導するには、多くの時間がかかる等の問題があった。
そのような中、特許文献1には、檻外部からの操作により移動できる仕切柵を内部に設け、当該仕切柵と檻壁面との間に動物を挟み込むことで、麻酔銃等を使用せずに動物の行動範囲を制御する動物収容用檻(スクイーズケージ)が開示されている。
仕切柵の移動速度は緩慢なため、檻内部の動物に不測の怪我を負わせることは無いとされているが、当該仕切柵の材質が高強度の金属であり、これが動物の体に押し付けられることを鑑みると、環境エンリッチメントの観点から更なる改善が必要であり、また、動物収容用檻に収容した動物による損壊を受けにくい工夫も併せて必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-34376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、環境エンリッチメントに優れた動物収容用檻を提供することである。また、本発明が解決しようとする別の課題は、檻に動物を収容した際に、動物が被るダメージを低減することができ、動物の搬送・治療・診断等の際に、作業者や獣医等の関係者が危険に晒されることが無く、かつ、収容した動物による損壊を防止し得る動物収容用檻を提供することである。また、本発明が解決しようとするさらに別の課題は、檻に動物を収容する際に、動物が警戒することなく短時間で収容できる動物用檻システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、以下の構成を採用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
具体的な構成は、次のとおりである。
[項1]
天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻において、檻内部に可動仕切面が設けられており、
当該可動仕切面は、檻外部に設けられた操作部材により、檻内部の上下方向、左右方向又は前後方向の少なくとも一方向に移動可能とされており、
可動仕切面の少なくとも一部と、可動仕切面と対向する面の少なくとも一部は、それぞれ緩衝面と非緩衝面とが切り替え可能とされている、動物収容用檻。
[項2]
可動仕切面における緩衝面と非緩衝面は、檻外部に設けられた操作部材により、可動仕切面の動きとは独立して切り替え可能とされている、項1に記載の動物収容用檻。
[項3]
可動仕切面及び/又は可動仕切面と対向する面における緩衝面と非緩衝面を構成する部材の少なくとも一部は、取り外し可能とされている、項1又は項2に記載の動物収容用檻。
[項4]
項1又は項2に記載の動物収容用檻を備え、
当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備え、
前記動物出入口と動物生活部とが連通している、動物用檻システム。
[項5]
前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して前記動物生活部と連通しており、
前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、項4に記載の動物用檻システム。
[項6]
天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻を備え、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備えており、
前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して動物生活部と連通しており、
前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、動物用檻システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、環境エンリッチメントに優れた動物収容用檻を提供することができる。また、本発明により、檻に動物を収容した際に、動物が被るダメージを低減することができ、動物の移動や治療・検診等の際に、作業者や獣医等の関係者が危険に晒されることが無く、かつ、収容した動物による損壊を防止し得る動物収容用檻を提供することができる。
本発明は、檻外部からの操作により移動できる可動仕切面を内部に設け、当該可動仕切面と檻壁面との間に動物を挟み込むことで、麻酔銃等を使用せずに動物の行動範囲を制御する動物収容用檻(スクイーズケージ)に係るものであり、可動仕切面及び檻壁面の一部に緩衝材を使用することで、挟み込み時の動物の負担を小さくすることができる。緩衝面と非緩衝面とを切り替え可能にすることで、挟み込み時以外には、動物の接触による損壊から緩衝材を保護することができる。
また、緩衝面と非緩衝面の切り替え機構を可動仕切面の作動機構から独立させ、かつ、複数の切り替え機構を連動させることで、切り替え操作を容易化することができる。
さらに、動物が普段生活している空間(動物生活部)に動物収容用檻を組み込むことで、動物収容用檻に対する動物の警戒心を下げることができるため、必要な時に動物を動物収容用檻の内部に容易に導くことができ、短時間で収容することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る動物収容用檻の一実施形態の前方斜視概略図。
図2】本発明に係る動物収容用檻の一実施形態の後方斜視概略図。
図3】本発明に係る動物収容用檻の一実施形態の断面概略図。
図4】本発明に係る動物用檻システムの一実施形態の正面概略図。
図5】本発明に係る動物用檻システムの別の一実施形態の正面概略図。
図6】本発明に係る動物用檻システムの一実施形態の断面概略図。
図7】本発明に係る動物用檻システムの別の一実施形態の断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る動物収容用檻及び動物用檻システムの好適な一実施態様を説明するが、本発明は、以下の一実施態様に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲において、適宜変更することが可能である。なお、異なる図面における同じ参照番号の使用は、類似又は同一の項目又は特徴を示す。
【0009】
[動物収容用檻]
本発明の動物収容用檻は、天面、床面及び左右前後の側面で構成されており、檻内部に可動仕切面が設けられている。当該可動仕切面は、檻外部に設けられた操作部材により、檻内部の上下方向、左右方向又は前後方向の少なくとも一方向に移動可能とされている。また、可動仕切面の少なくとも一部と、可動仕切面と対向する面の少なくとも一部は、それぞれ緩衝面と非緩衝面とが切り替え可能とされている。
さらに、本発明の動物収容用檻は、可動仕切面における緩衝面と非緩衝面が、檻外部に設けられた操作部材により、可動仕切面の動きとは独立して切り替え可能とされている。
またさらに、本発明の動物収容用檻は、可動仕切面及び/又は可動仕切面と対向する面における緩衝面と非緩衝面を構成する部材の少なくとも一部が、取り外し可能とされている。
【0010】
図1乃至図3は、本発明に係る動物収容用檻の一実施形態を示す概略図であり、図1は斜め前から見た前方斜視概略図、図2は斜め後ろから見た後方斜視概略図、図3は断面概略図である。各図中、Aは動物収容用檻、1は可動仕切面を示す。また、本明細書において、動物収容用檻の前後左右の方向は、図1及び図2に示すように定義される。
【0011】
図1乃至図3に示される動物収容用檻Aは、床板(図示されていない)の上に、前面柵壁101、後面柵壁102、左面柵壁103、右面柵壁104をそれぞれ設置し、その上に天井(図示されていない)を設けた、箱型の檻として構成されている。本発明においては、床板、前面柵壁、後面柵壁、左面柵壁、右面柵壁及び天井は、それぞれ別個の部材により構成されていてもよく、これらの2つ以上に相当する部材(例えば、前面柵壁、後面柵壁、左面柵壁及び右面柵壁が一体化された部材等)により構成されていてもよい。
【0012】
動物収容用檻Aは、動物を収容する際に開閉する動物出入口を有する。動物出入口を設ける部位等は特に限定されず、天面、床面及び左右前後の側面のいずれか1つ以上に設けることができる。本発明においては、左面柵壁103及び右面柵壁104の1つ以上に動物出入口を設けることが好ましい。また、動物出入口には、開閉機構が設けられており、例えば、上下方向に動いて開閉する落とし扉構造、左右方向に動いて開閉する引き戸構造、前後方向に動いて開閉する扉構造等、任意の形式の開閉機構を採用することができる。本発明においては、迅速に扉を閉めることが可能であることから、上下方向に動いて開閉する落とし扉構造を用いることが好ましい。また、動物出入口は、作業者の安全性等を考量して、施錠可能とされていることが好ましい。これにより、動物が開閉機構を突破することを困難にすることができる。
【0013】
動物収容用檻Aは、可動仕切面1を、檻内部の上下方向、左右方向又は前後方向の少なくとも一方向に移動させるための可動仕切面移動部材2を1つ以上備えている(図1乃至図3においては、4つの可動仕切面移動部材2a乃至2dを備えている)。全ての可動仕切面移動部材2は、可動仕切面1と連接しており、少なくとも1つの可動仕切面移動部材2aは、動物収容用檻Aの外部に設けられた可動仕切面操作部材3に連結されている。可動仕切面操作部材3と連結している可動仕切面移動部材2aは、任意の手段により、他の可動仕切面移動部材2b乃至2dと直接又は間接的に連接している。これにより、可動仕切面操作部材3を操作することで生じた動きを、他の可動仕切面移動部材2b乃至2dに伝達することが可能であり、それにより、可動仕切面1を安定して移動させることができる。
例えば、図1乃至図3に示すように、可動仕切面移動部材2を4つとし、それぞれを四角形の可動仕切面1における4隅において連接することで、可動仕切面1の操作性、安定性を向上させ、可動仕切面1と可動仕切面1と対向する面の間に動物を固定(スクイーズ)した際にも、動物の固定を確実に行うことが可能となる。また、可動仕切面操作部材3を操作することで生じた可動仕切面移動部材2aの動きは、動物収容用檻Aの外部に設けられた縦方向動力伝達機構4及び/又は横方向動力伝達機構5(図1乃至図3においては、2つの横方向動力伝達機構5a及び5bを備えている)により、他の可動仕切面移動部材2b乃至2dに伝達される。
なお、可動仕切面移動部材2としては、例えば、ネジ棒、チェーン、ベルト、ギヤ等の任意の部材等が挙げられる。また、縦方向動力伝達機構4及び/又は横方向動力伝達機構5としては、チェーン、ベルト、シャフト又はギヤ等から選ばれる1種以上の部材を含む動力伝達機構であれば特に限定されない。
本発明においては、可動仕切面移動部材2として、例えば、ネジ棒を用いることが好ましい。縦方向動力伝達機構4としては、例えば、チェーン、ベルト、シャフト、ギヤによる機構が挙げられ、配置スペース、コスト、機構の簡便化、動力伝達の安定性等の観点等から、チェーン又はベルトの1種以上とギヤを組み合わせて用いることが好ましい。横方向動力伝達機構5としては、例えば、チェーン、ベルト、シャフト、ギヤによる機構が挙げられ、配置スペース、コスト、機構の簡便化、動力伝達の安定性等の観点等に加えて、チェーン使用時の弛みを防止する観点から、シャフトとギヤを組み合わせて用いることが好ましい。
【0014】
図1乃至図3に示される、本発明に係る動物収容用檻の一実施形態では、可動仕切面移動部材2として4本のネジ棒2a乃至2dが設けられている。これらのネジ棒2a乃至2dは、可動仕切面1の4か所に設けられたネジ結合部を貫通している。これらのネジ棒2a乃至2dの後面側端部には、かさ歯車が取り付けられ、前面側端部は、前面柵壁101の4カ所に設けられた軸受け部で受けている。
左上ネジ棒2aの後面側端部に取り付けられたかさ歯車と、右上ネジ棒2bの後面側端部に取り付けられたかさ歯車は、横方向動力伝達機構5として両端に別のかさ歯車が取り付けられた上部シャフト5aに接続されており、左上ネジ棒2aと右上ネジ棒2bが同調して回転するようになっている。同様に、左下ネジ棒2cの後面側端部に取り付けられたかさ歯車と、右下ネジ棒2dの後面側端部に取り付けられたかさ歯車は、横方向動力伝達機構5として両端に別のかさ歯車が取り付けられた下部シャフト5bに接続されており、左下ネジ棒2cと右下ネジ棒2dが同調して回転するようになっている。
また、左上ネジ棒2a及び左下ネジ棒2cの後面側端部付近には、平歯車が取り付けられており、これらの平歯車には、縦方向動力伝達機構4としてチェーンが掛けられ、左上ネジ棒2aと左下ネジ棒2cが同調して回転するようになっている。
さらに、左上ネジ棒2aの前面側端部には、可動仕切面操作部材3として仕切面駆動ハンドル3が取り付けられており、この仕切面駆動ハンドル3を回転させることにより、全てのネジ棒2a乃至2dが同調して回転する。
【0015】
動物収容用檻Aの前面柵壁101、後面柵壁102及び可動仕切面1には、複数の棒材が設けられている。前面柵壁101、後面柵壁102及び可動仕切面1にそれぞれ設けられる棒材の本数は特に限定されず、檻に収容する動物等の大きさや特性等を踏まえ、収容した動物が逃走しない間隔で設けることができる。これらの棒材の上面側端部には、棒材切替操作部材6からの動力を直接又は間接的に受け取る動力受部材(歯車、チェーン、ベルト等)が設けられている。図1乃至図3に示す動物収容用檻Aにおいては、ピニオン歯車が取り付けられ、下面側端部は、前面柵壁101、後面柵壁102及び可動仕切面1の枠に設けられた軸受け部で受けている。前面柵壁棒材のそれぞれに取り付けられたピニオン歯車は、棒材切替操作部材6又は棒材切替動力伝達部材7(例えば、平歯車(板歯車)、ベルト、チェーン等)と接続されている。
【0016】
図1乃至図3に示す動物収容用檻Aにおいては、棒材切替操作部材6からの動力を棒材の動力受部材に伝達する棒材切替動力伝達部材7として、前面柵壁ラック歯車7aに接続されており、全ての前面柵壁棒材が同調して回転するようになっている。同様に、後面柵壁棒材のそれぞれに取り付けられたピニオン歯車は、後面柵壁ラック歯車7bに接続されており、全ての後面柵壁棒材が同調して回転するようになっている。更に、可動仕切面棒材に取り付けられたピニオン歯車のそれぞれは、可動仕切面ラック歯車7cに接続されており、全ての可動仕切面棒材が同調して回転するようになっている。これらラック歯車7a乃至7cは、別のピニオン歯車を介してシャフト8に接続されており、前面柵壁棒材、後面柵壁棒材、可動仕切面棒材の全てが同調して回転するようになっている。シャフト8の前面側端部には、棒材切替操作部材6が取り付けられており、この棒材切替操作部材6を操作(回転)させることにより、全ての棒材が同調して回転することで、緩衝面・非緩衝面の切り替えが行われる。
【0017】
動物収容用檻Aにおいて、可動仕切面1に設けられる棒材切替動力伝達部材7は、棒材切替操作部材6と連結したシャフト8の長手方向に移動可能とされるとともに、当該シャフト8と同期して回転するように構成されている。例えば、シャフト8に凹部又は凸部を設け、当該凹部又は凸部と嵌合する凸部又は凹部を棒材切替動力伝達部材7に設け、両者を嵌合させることにより、構成することができる。
図1乃至図3においては、棒材切替ハンドル6と連結したシャフト8と可動仕切面ラック歯車7cを接続するピニオン歯車9には、キー溝穴加工(又はスプライン加工)が施されており、シャフト8には、当該キー溝(又は当該スプライン形状)と合致するキー加工(又はスプライン加工)が施されている。これにより、ピニオン歯車9は、回転力を伝達したままシャフト8の長手方向に滑ることができる。即ち、可動仕切面1の位置に寄らず、ピニオン歯車9と可動仕切面ラック歯車7cの嵌合が保持されるため、可動仕切面1の動きとは独立して、可動仕切面棒材の回転が可能となる。
【0018】
図1乃至図3に示す動物収容用檻Aにおいて、棒材には、それぞれの片面に緩衝材10が取り付けられており、緩衝材が取り付けられた面が緩衝面を、緩衝材が取り付けられていない面が非緩衝面をそれぞれ構成している。棒材切替ハンドル6を回転させることにより、全ての棒材が同調して回転するが、その際、前面柵壁緩衝材の向きが全て同じになるように、緩衝材10の取り付け位置が調整されている。同様に、後面柵壁緩衝材の向きが全て同じになるように、また、可動仕切面緩衝材の向きが全て同じになるように、緩衝材10の取り付け位置が調整されている。動物収容用檻Aにおいて、動物を可動仕切面1により挟み込む際には、可動仕切面の動物に接する側と、可動仕切面と対向し動物を押さえる面が、いずれも緩衝面となるように、緩衝材10の取り付け位置が調整されている。また、それ以外の場合は、動物による緩衝面の破壊等を削減するため、動物と相対する面が非緩衝面となることが好ましい。
【0019】
動物収容用檻Aにおいて、棒材は、必要に応じて、取り外し可能となっていてもよい。具体的には、棒材の下面側端部は、軸受け部に差し込んだ構成として、固定部材等で固定されておらず、棒材の上面側端部は、貫通孔等に通すだけとして、固定部材等で固定されていないことが好ましい。
なお、可動仕切面1を移動させる操作は、人が手動でこれを行うことが好ましい。これにより、収容動物の怪我等を防止することができる。
【0020】
動物収容用檻Aの天面には、作動機構を隠し、収容動物や作業者等の怪我を防止し、作動機構の汚れ・腐食等を防止・抑制し、檻の意匠性を得るために、天井部材を設けることができる。天井部材は、金属、木材、プラスチック等の任意の材料で構成することができる。
動物収容用檻Aの床面には、作動機構を隠し、収容動物や作業者等の怪我を防止し、作動機構の汚れ・腐食等を防止・抑制し、内部の清掃を容易に行うことができるように、床板部材を設けることができる。床板部材は、金属、木材、プラスチック等の任意の材料で構成することができ、通気・通液性のために、メッシュ状とされていてもよい。
【0021】
動物収容用檻Aの床面下面には、複数の車輪が取り付けられていてもよく、これにより、動物収容用檻Aを容易に移動させることが可能となる、前面柵壁101及び後面柵壁102の何れか一方又は双方には、取っ手が設けられており、動物収容用檻Aと動物通路用檻Bを連結又は分離する際、動物収容用檻Aの容易な移動が可能である。
【0022】
図1乃至図3に示される、本発明の動物収容用檻Aを使用するに当たっては、まず、左面柵壁103又は右面柵壁104の一方を開け、動物の導入口とする。この際、動物を入れやすいよう、仕切面駆動ハンドル3を回して、可動仕切面1を前面柵壁101又は後面柵壁102の何れかに寄せておく。導入口より動物が動物収容用檻Aの中に入った後は、速やかに導入口を閉じる。次いで、棒材切替ハンドル6を回して、緩衝材10が動物側を向くよう、棒材の向きを調整する。その後、仕切面駆動ハンドル3を回して、可動仕切面1を徐々に動物側に移動させる。移動した可動仕切面1は、動物収容用檻Aの中にいる動物を、前面柵壁101又は後面柵壁102と可動仕切面1との間に固定し、動物の動きを押さえることが可能となる。仕切面駆動ハンドル3の回転量と比較し、可動仕切面1の移動量は少ないため、動物に不測の怪我を与えることは無い。また、可動仕切面1の移動は、仕切面駆動ハンドル3の回転運動を直線運動に変換したものであるため、動物が檻内で暴れたとしても簡単に押し戻されることは無い。更に、緩衝材10が動物に接しているため、動物を挟み込む時も、動物が檻内で暴れた時も、動物の負担は小さい。
【0023】
[動物用檻システム]
本発明の動物用檻システムは、動物収容用檻を備え、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備え、前記動物出入口と動物生活部とが連通している、動物用檻システムであって、動物収容用檻が、前記[動物収容用檻]において記載した檻である。本発明の動物用檻システムにおいて、前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して前記動物生活部と連通しており、前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されていることが好ましい。
また、本発明の動物用檻システムは、天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻を備えており、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備えており、前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して動物生活部と連通しており、前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、動物用檻システムである。
図4乃至図7は、本発明に係る動物用檻システムの一実施形態を示す概略図であり、図4及び図5は正面概略図、図6及び図7は断面aにおける断面概略図である。各図中、Aは動物収容用檻、Bは動物通路用檻、Cは動物生活部を示す。また、図4及び図6は、動物収容用檻Aと動物通路用檻Bが連結している状態、図5及び図7は、動物収容用檻Aと動物通路用檻Bが分離している状態を示す。さらに、図4及び図5は、動物通路用檻Bが動物生活部Cに接続している状態を示す。
動物生活部Cは、飼育されている動物が生活している場所であれば特に限定されず、飼育スペース、展示スペース、運動スペース、寝室、餌場、飲水場等が挙げられる。
【0024】
図4乃至図7において示されている動物収容用檻Aは、天面、床面及び左右前後の側面で構成されており、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備えている。例えば、前記[動物収容用檻]に記載したものと同様の動物収容用檻Aであり、図1乃至図3に示されるものを例示できる。本実施形態では、左面柵壁及び右面柵壁の双方が、上下方向に動いて開閉する落とし扉構造となっている。これらの柵壁の上端には、それぞれ取っ手21が設けられており、取っ手21に接続されたワイヤー22を上げ下げすることにより、当該柵壁の開閉が可能である。取っ手21は、ワイヤー22の接続部の横ずれを防止するよう、中央に凹みがある形状となっていることが好ましい。
【0025】
動物通路用檻Bは、互いに離れた動物の生活部Cをつなぐ通路の一部として機能するものであって、通路から動物が出ることが出来ないように構成されたものであれば特に限定されない。
図4乃至図7に示される動物用檻システムにおける動物通路用檻Bは、1対の箱型檻から構成される。それぞれの箱型檻の左面柵壁及び右面柵壁の双方が、上下方向に動いて開閉する落とし扉構造となっている。当該1対の箱型檻は、これらの間に動物収容用檻Aを挿入・連結できる隙間を空けて、配置されている。それぞれの箱型檻の床板上面には、連結時に動物収容用檻Aの床板上面との間の段差を無くすよう、スロープ23が設けられていることが好ましい。これにより、動物の怪我や逃走等を抑制することが可能である。
【0026】
それぞれの箱型檻の左面柵壁及び右面柵壁のうち、連結時に動物収容用檻Aと接する側の柵壁の上部には、動物収容用檻Aの左面柵壁及び右面柵壁が上下に摺動するためのレール24が取り付けられている。レール24には、動物収容用檻Aの柵壁開閉用のワイヤー22が取り付けられている。動物収容用檻Aの柵壁を容易に上げ下げするため、ワイヤー22には、滑車を介してバランスウェイト25が接続されていることが好ましい。
【0027】
図4乃至図7に示される、本発明の一実施態様に係る動物用檻システムを使用するに当たっては、まず、箱型檻の左面柵壁及び右面柵壁が閉じている状態で、動物通路用檻Bを動物生活部Cに接続する。次いで、1対の箱型檻の間に動物収容用檻Aを移動する。この際、動物収容用檻Aの左面柵壁及び右面柵壁を閉じておく。また、動物収容用檻Aの仕切面駆動ハンドル3を回して、可動仕切面を前面柵壁又は後面柵壁のいずれかに寄せておき、棒材切替ハンドル6を回して、緩衝材が動物側を向かないよう、棒材の向きを調整しておく。その後、動物収容用檻Aの左面柵壁及び右面柵壁の取っ手21にワイヤー22を接続し、ワイヤー22を操作して、これらの柵壁を開く。最後に、箱型檻の左面柵壁及び右面柵壁を開くことより、動物通路用檻Bを介して、動物が動物生活部Cと動物収容用檻Aとの間を自由に行き来することができるようになり、その間に動物が動物収容用檻Aに慣れることが期待される。なお、動物収容用檻Aの緩衝材が動物側を向いていないため、動物の接触による損壊から緩衝材を保護することができる。
【0028】
図4乃至図7に示される、本発明の一実施態様に係る動物用檻システムを使用し、動物収容用檻Aにおいて動物の動きを押さえる際には、動物収容用檻Aの内部に餌、水や遊具等を置き動物の興味・関心を集める等により、動物を動物収容用檻Aの中に迅速かつ安全に誘導することができる。図4乃至図7に示される動物用檻システムは、普段は動物が通路として使用していることから、動物が動物収容用檻Aの中に入ることに抵抗を示すことが少ない。そのため、動物を動物収容用檻Aに誘導する手間が大幅に削減され、さらに、動物を動物収容用檻Aに誘導する際に暴れる等で作業者が怪我をするリスクも少なくなっている。
動物が動物収容用檻Aに入った後は、[動物収容用檻]に記載した方法により、動物収容用檻A内において、動物を押さえ込めばよい。
【0029】
本発明の動物用檻システムは、天面、床面及び左右前後の側面で構成された動物収容用檻を備えており、当該動物収容用檻は、開閉可能な動物出入口を少なくとも1つ備えており、前記動物出入口の少なくとも1つは、動物通路用檻を介して動物生活部と連通しており、前記動物出入口と前記動物通路用檻は、脱着可能な状態で連結されている、動物用檻システムであってもよい。
当該動物用檻システムにおいては、特に動物を押さえ込む必要がない場合において、動物収容用檻に餌、水、遊具等を置き動物の興味・関心を集める等により、動物を動物収容用檻の中に迅速かつ安全に誘導することが可能である。例えば、動物収容用檻及び動物通路用檻を日常的に使用することで、動物を動物収容用檻に抵抗なく誘導することが可能となる。これにより、動物を動物収容用檻に誘導する手間が大幅に削減され、さらに、動物を動物収容用檻に誘導する際に暴れる等で作業者が怪我をするリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0030】
A.動物収容用檻
B.動物通路用檻
C.動物生活部
101.前面柵壁
102.後面柵壁
103.左面柵壁
104.右面柵壁
1.可動仕切面
2a.可動仕切面移動部材(左上ネジ棒)
2b.可動仕切面移動部材(右上ネジ棒)
2c.可動仕切面移動部材(左下ネジ棒)
2d.可動仕切面移動部材(右下ネジ棒)
3.可動仕切面操作部材(仕切面駆動ハンドル)
4.縦方向動力伝達機構
5a.横方向動力伝達機構(上部シャフト)
5b.横方向動力伝達機構(下部シャフト)
6.棒材切替操作部材(棒材切替ハンドル)
7a.棒材切替動力伝達部材(前面柵壁ラック歯車)
7b.棒材切替動力伝達部材(後面柵壁ラック歯車)
7c.棒材切替動力伝達部材(可動仕切面ラック歯車)
8.シャフト(キー加工あり)
9.ピニオン歯車(キー溝穴加工あり)
10.緩衝材
21.取っ手
22.ワイヤー
23.スロープ
24.レール
25.バランスウェイト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7