IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子部品 図1
  • 特開-電子部品 図2
  • 特開-電子部品 図3
  • 特開-電子部品 図4
  • 特開-電子部品 図5
  • 特開-電子部品 図6
  • 特開-電子部品 図7
  • 特開-電子部品 図8
  • 特開-電子部品 図9
  • 特開-電子部品 図10
  • 特開-電子部品 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159693
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20231025BHJP
   H01G 4/252 20060101ALI20231025BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20231025BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01C7/10
H01G4/252 V
H01C7/18
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069561
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】篠沢 恒樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚義
(72)【発明者】
【氏名】中村 紘也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E034
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AF06
5E001AH01
5E001AJ03
5E034CB05
5E034CC02
5E034DA07
5E034DC01
5E082GG10
5E082GG28
(57)【要約】
【課題】端子電極の劣化が抑制された電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品の一種であるチップバリスタ1においては、その駆動時に、端子電極20A~20C間における角部同士で電界集中が生じ得る。ただし、チップバリスタ1では、側面10c、10dにおいて第三電極20C、20Dと第一電極20Aおよび第二電極20Bとの距離が長くなるように設計されており、第三電極20C、20Dの第1部分21と第一電極20Aおよび第二電極20Bの第1部分23との距離が素体10の稜線において最大距離d2となっているため、素体10の稜線付近に位置する第三電極20C、20Dの角部と第一電極20Aのおよび第二電極20Bの角部との間における電界集中が抑制されている。それにより、電界集中に起因する各端子電極20A~20Cの劣化が抑制されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向において互いに対向する第一面および第二面と、前記第1の方向に直交する第2の方向において互いに対向する第三面および第四面と、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において互いに対向する第五面および第六面とを有する素体と、
前記素体内に設けられた複数の導体と、
前記素体の前記第一面に設けられ、かつ、前記第三面および前記第四面に回り込んで前記第三面および前記第四面における前記第一面側の縁を覆う第1部分を有する第一電極と、
前記素体の前記第二面に設けられ、かつ、前記第三面および前記第四面に回り込んで前記第三面および前記第四面における前記第二面側の縁を覆う第1部分を有する第二電極と、
前記素体の前記第三面および前記第四面の少なくとも一方に設けられ、前記第五面および前記第六面との稜線の間にわたって延びる第1部分を有する第三電極と
を備え、
前記第三電極の第1部分と前記第一電極および前記第二電極の第1部分との距離は、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置における距離よりも前記第五面および前記第六面との稜線における距離のほうが長く、かつ、最大である、電子部品。
【請求項2】
前記第三電極の前記第1部分の前記第1の方向に関する長さが、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置において最大となり、前記第五面および前記第六面との稜線において最小となる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第三電極の第1部分が、前記第五面および前記第六面との稜線に向かって樽状に漸次幅狭となっている、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第一電極および前記第二電極の前記第1の方向に関する長さが、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置において最大となり、前記第五面および前記第六面との稜線において最小となる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第三電極が、前記第五面および前記第六面に回り込んで、前記第五面および前記第六面との稜線から離れる従って半円状に漸次幅狭となる第2部分をさらに有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記素体が、前記第3の方向において積層された積層構造を有し、
前記複数の導体が、前記素体の所定の層内おいて、前記第1の方向に沿って前記第一面から延びるとともに前記第一電極と接続された第一導体と、前記素体の前記第一導体とは異なる層内において前記第1の方向に沿って前記第二面から延びるとともに前記第二電極と接続され、前記第一導体と前記第3の方向において重なる重畳部を形成する第二導体と、前記素体の前記第一導体と前記第二導体との間に位置する層内において、前記第三面から前記第四面に亘って延びるとともに前記第三電極と接続され、前記重畳部と前記第3の方向において重なる機能部を有する第三導体とを含み、
チップバリスタである、請求項1に記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素体の端面に設けられた一対の端子電極に加えて、素体の側面に端子電極が設けられた多端子の電子部品が知られている。たとえば、下記特許文献1には、素体の端面に設けられた一対の端子電極に加えて、素体の側面にも端子電極が設けられた電子部品(積層セラミック素子)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/144987号
【特許文献2】特開2007-251010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電子部品においては、その駆動時に、素体の端面に設けられた端子電極および側面に設けられた端子電極の特に角部において電界集中が生じ、これらの端子電極間における角部同士でも電界集中が生じ得る。このような電界集中は各端子電極の劣化の原因となり得る。
【0005】
本発明は、端子電極の劣化が抑制された電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子部品は、第1の方向において互いに対向する第一面および第二面と、第1の方向に直交する第2の方向において互いに対向する第三面および第四面と、第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向において互いに対向する第五面および第六面とを有する素体と、素体内に設けられた複数の導体と、素体の第一面に設けられ、かつ、第三面および第四面に回り込んで第三面および第四面における第一面側の縁を覆う第1部分を有する第一電極と、素体の第二面に設けられ、かつ、第三面および第四面に回り込んで第三面および第四面における第二面側の縁を覆う第1部分を有する第二電極と、素体の第三面および第四面の少なくとも一方に設けられ、第五面および第六面との稜線の間にわたって延びる第1部分を有する第三電極とを備え、第三電極の第1部分と第一電極および第二電極の第1部分との距離は、素体の第3の方向に関する中間位置における距離よりも第五面および第六面との稜線における距離のほうが長く、かつ、最大である。
【0007】
上記電子部品においては、第三電極の第1部分と第一電極および第二電極の第1部分との距離が素体の稜線において最大となっているため、上記電界集中が抑制されており、第一電極、第二電極および第三電極の劣化が抑制されている。
【0008】
他の形態に係る電子部品は、第三電極の第1部分の第1の方向に関する長さが、素体の第3の方向に関する中間位置において最大となり、第五面および第六面との稜線において最小となる。
【0009】
他の形態に係る電子部品は、第三電極の第1部分が、第五面および第六面との稜線に向かって樽状に漸次幅狭となっている。
【0010】
他の形態に係る電子部品は、第一電極および第二電極の第1の方向に関する長さが、素体の第3の方向に関する中間位置において最大となり、第五面および第六面との稜線において最小となる。
【0011】
他の形態に係る電子部品は、第三電極が、第五面および第六面に回り込んで、第五面および第六面との稜線から離れる従って半円状に漸次幅狭となる第2部分をさらに有する。
【0012】
他の形態に係る電子部品は、素体が、第3の方向において積層された積層構造を有し、複数の導体が、素体の所定の層内おいて、第1の方向に沿って第一面から延びるとともに第一電極と接続された第一導体と、素体の第一導体とは異なる層内において第1の方向に沿って第二面から延びるとともに第二電極と接続され、第一導体と第3の方向において重なる重畳部を形成する第二導体と、素体の第一導体と第二導体との間に位置する層内において、第三面から第四面に亘って延びるとともに第三電極と接続され、重畳部と第3の方向において重なる機能部を有する第三導体とを含み、チップバリスタである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端子電極の劣化が抑制された電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る電子部品を示す概略斜視図である。
図2図1に示した素体の内部の各導体を示した斜視図である。
図3図1に示した素体の内部の各導体を示した断面図である。
図4】第一導体および第二導体のみを示した図である。
図5】第三導体と第三電極との位置関係を示した図である。
図6】各導体の位置関係を示した断面図である。
図7】各導体の位置関係を示した断面図である。
図8】素体の側面に設けられた第三電極を示した側面図である。
図9】異なる形態の電子部品を示した図である。
図10】異なる形態の電子部品を示した図である。
図11】異なる形態の電子部品を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
まず、図1図3を参照して、電子部品の一種であるチップバリスタ1の構成について説明する。
【0017】
チップバリスタ1は、多端子型の積層チップバリスタであり、素体10と4つの端子電極20A~20Dとを備えて構成されている。チップバリスタ1は、略直方体形状の外形を有し、いわゆる2012サイズ(長手方向長さが2.0mm、短手方向長さが1.25mm、高さが0.8mm)である。
【0018】
素体10は、略直方体形状の外形を有する積層構造体である。素体10は、長手方向(第1の方向)において互いに対向する長方形状の端面10a、10bと、端面10a、10bに直交する長方形状の4つの側面10c~10fとを有する。4つの側面10c~10fは、端面10a,10b間を連結するように延びている。端面10a、10bは、素体10の積層方向に対して平行に延在している。4つの側面10c~10fのうちの側面10c、10dは、素体10の積層方向に対して平行に延在しており、短手方向(第2の方向)において互いに対向している。4つの側面10c~10fのうちの側面10e、10fは、素体10の積層方向に対して直交するように延在しており、素体10の積層方向(第3の方向)において互いに対向している。
【0019】
素体10は、バリスタ特性を発現する焼結体(半導体セラミック)からなる。素体10は、バリスタ特性を発現する焼結体からなる複数の層からなる積層構造体である。実際の素体10では、構成する各層は、その間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体10は、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)などの金属単体やこれらの酸化物を含む。本実施形態において、素体10は、副成分としてCo、Pr、Cr、Ca、K、及びAlを含んでいる。素体10におけるZnOの含有量は、特に限定されないが、素体10を構成する全体の材料を100質量%とした場合に、通常、99.8~69.0質量%である。希土類金属元素(たとえば、Pr)は、バリスタ特性を発現させる物質として作用する。素体10における希土類金属元素の含有量は、たとえば0.01~10原子%程度に設定される。
【0020】
チップバリスタ1は、素体10内に複数の導体を備えており、具体的には第一導体30A、第二導体30Bおよび第三導体30Cを備えている。第一導体30A、第二導体30Bおよび第三導体30Cは、導電材を含んでいる。各導体30A、30B、30Cに含まれる導電材としては、特に限定されないが、PdまたはAg-Pd合金からなることが好ましい。各導体30A、30B、30Cの厚み(積層方向長さ)は、たとえば0.1~10μm程度である。
【0021】
第一導体30Aは、均一幅を有する帯状の形状を有し、素体10を構成する層内おいて、端面10a、10bの対向方向(すなわち、第1の方向)に沿って延在している。第一導体30Aは、一方の端部30aが端面10a(第一面)に露出するとともに他方の端部30bが素体10内に位置している。第一導体30Aの幅は、たとえば0.4mmである。
【0022】
第二導体30Bは、均一幅を有する帯状の形状を有し、第一導体30Aが形成された層とは異なる層内おいて、端面10a、10bの対向方向に沿って延在している。第二導体30Bは、一方の端部30aが端面10b(第二面)に露出するとともに他方の端部30bが素体10内に位置している。第二導体30Bの幅は、第一導体30Aの幅と同じになるように設計されており、たとえば0.4mmである。
【0023】
図3および図4に示すように、第一導体30Aと第二導体30Bとは素体10の積層方向から見て互いに位置合わせされており、素体10内に位置する端部30b同士が積層方向において完全に重なっている。第一導体30Aの端部30bと第二導体30Bの端部30bとが重なって形成された重畳部40は、積層方向から見て、長辺方向が端面10a、10bの対向方向に平行な長方形状を呈する。
【0024】
第三導体30Cは、側面10c、10dの対向方向(すなわち、第2の方向)に沿って延びる形状を有し、側面10c(第三面)から側面10d(第四面)に亘って延びている。図5に示すように、第三導体30Cは、一対の端部31、本体部32および一対の拡幅部33を有する。
【0025】
第三導体30Cの各端部31は、側面10c、10dの近傍に位置しており、側面10c、10dから露出している。各端部31は、均一な幅W1(端面10a、10bの対向方向に関する長さ)を有し、幅W1は一例として0.1mmである。
【0026】
第三導体30Cの本体部32は、両端部31の間であって第三導体30Cの中央に位置しており、第一導体30Aおよび第二導体30Bと交差している(本実施形態においては直交している)。本体部32は、第一導体30Aおよび第二導体30Bの重畳部40と素体10の積層方向において重なる部分である機能部34を有する。第三導体30Cは、第一導体30Aとは重畳部40においてのみ重なり、第二導体30Bとも重畳部40においてのみ重なる。そのため、機能部34の面積は、第三導体30Cと第一導体30Aとの重畳面積と一致し、かつ、第三導体30Cと第二導体30Bとの重畳面積とも一致する。本体部32は、均一な幅W2を有し、本体部32の幅W2は端部31の幅W1より広くなるように設計されている(W2>W1)。本体部32の幅W2は一例として0.2mmである。機能部34の幅は、本体部32の幅W2と一致しており、機能部34の幅に応じて、ESD耐量が調整される(たとえば高められる)。
【0027】
両端部31と本体部32との間には、それぞれ拡幅部33が介在している。拡幅部33は、端部31から本体部32に向かって漸次幅が拡がる部分である。
【0028】
図6および図7に示すように、第三導体30Cは、第一導体30Aと第二導体30Bとの中間に位置する層内に延在している。そのため、素体10の積層方向に関し、第三導体30Cと第一導体30Aとの離間距離は、第三導体30Cと第二導体30Bとの離間距離と実質的に同一である。機能部34は、第一導体30Aの端部30bとの間に第一機能層42を形成する。第一機能層42は、機能部34と第一導体30Aの端部30bとで挟まれた素体部分である。第一機能層42は、たとえば20~50pF程度の静電容量を有する。また、機能部34は、第二導体30Bの端部30bとの間に第二機能層44を形成する。第二機能層44は、機能部34と第二導体30Bの端部30bとで挟まれた素体部分である。上述したとおり、第三導体30Cは、第一導体30Aおよび第二導体30Bと実質的に同じ距離だけ離間しており、かつ、第一導体30Aおよび第二導体30Bと重畳面積が実質的に同じであるため、第二機能層44は、第一機能層42の静電容量と実質的に同じ静電容量を有する。
【0029】
4つの端子電極20A~20Dのうちの第三電極20C、20Dは、対をなしており、素体10の側面10c側および側面10d側にそれぞれ配置されている。第三電極20C、20Dは、素体10の側面10c、10dに露出した第三導体30Cの両端部31をそれぞれ覆うように形成されており、第三電極20C、20Dは、第三導体30Cと直接接続されている。一対の第三電極20C、20Dと第三導体30Cとは対称的に配置されているため、均一な放電を実現することができる。本実施形態において、第三電極20C、20Dは略紡錘状の全体形状を有する。
【0030】
第三電極20Cは、積層方向に延びて側面10e(第五面)と側面10f(第六面)に回り込んでいる。本実施形態では、第三電極20Cは、長方形状を有する側面10cの長辺の中間位置において積層方向に延びて側面10eと側面10fに回り込んでいるが、長辺の中間位置からある程度ズレた態様であってもよい。第三電極20Cは、より詳しくは、側面10cと側面10eおよび側面10fとの稜線の間にわたって延びる第1部分21と、第1部分21から一体的に延びて素体10の側面10e、10fのそれぞれに回り込んだ第2部分22とを含んで構成されている。素体10の側面10cに設けられた第三電極20Cの第1部分21は、素体10の積層方向における中間位置において最大幅w1となり、側面10cと側面10e、10fとの稜線(最小幅w2)に向けてその側縁が樽状に湾曲するように漸次幅狭となっている。第三電極20Cの第1部分21は、側面10cにおける積層方向に関する中間位置を基準に線対称(上下対称)の形状を呈する。そのため、側面10cと側面10eとの稜線における幅w2と、側面10cと側面10fとの稜線における幅w2とは同じである。素体10の稜線付近に位置する第三電極20Cの第1部分21の四隅はいずれも鈍角となっている。素体10の側面10e、10fにそれぞれ設けられた第三電極20Cの第2部分22は、側面10e、10fと側面10cとの稜線にから離れる従ってその側縁が略半円状に湾曲するように漸次幅狭となっている。
【0031】
同様に、第三電極20Dも、積層方向に延びて側面10e、10fに回り込んでいる。本実施形態では、第三電極20Dは、長方形状を有する側面10dの長辺の中間位置において積層方向に延びて側面10eと側面10fに回り込んでいるが、長辺の中間位置からある程度ズレた態様であってもよい。第三電極20Dは、より詳しくは、側面10dと側面10eおよび側面10fとの稜線の間にわたって延びる第1部分21と、第1部分21から一体的に延びて素体10の側面10e、10fのそれぞれに回り込んだ第2部分22とを含んで構成されている。素体10の側面10dに設けられた第三電極20Dの第1部分21は、素体10の積層方向における中間位置において最大幅w1となり、側面10dと側面10e、10fとの稜線(最小幅w2)に向けてその側縁が樽状に湾曲するように漸次幅狭となっている。第三電極20Dの第1部分21は、側面10dにおける積層方向に関する中間位置を基準に線対称(上下対称)の形状を呈する。そのため、側面10dと側面10eとの稜線における幅w2と、側面10dと側面10fとの稜線における幅w2とは同じである。素体10の稜線付近に位置する第三電極20Dの第1部分21の四隅はいずれも鈍角となっている。素体10の側面10e、10fにそれぞれ設けられた第三電極20Dの第2部分22は、側面10e、10fと側面10dとの稜線にから離れる従ってその側縁が略半円状に湾曲するように漸次幅狭となっている。
【0032】
すなわち、第三電極20C、20Dの第1部分21の幅(すなわち、第1の方向に関する長さ)は、素体10の側面10c、10dにおける積層方向に関する中間位置において最大幅であるw1となっている。素体10の側面10c、10dにおける積層方向に関する中間位置は、第三導体30Cの各端部31が露出する位置であり、第三電極20C、20Dの第1部分21は第三導体30Cの各端部31が露出する位置において最大幅w1となっている。また、第三電極20C、20Dの第1部分21の幅は、側面10c、10dと側面10e、10fとの稜線において最小幅であるw2となっている。
【0033】
図5に示すように、第三電極20C、20Dの第2部分22は、素体10の積層方向から見て、第三導体30Cの拡幅部33の少なくとも一部と重なっている。図5に示した形態では、第三電極20Dの第2部分22は、素体10の積層方向から見て、第三導体30Cの拡幅部33の全部と重なっている。
【0034】
4つの端子電極20A~20Dの一つである第一電極20Aは、素体10の端面10a側に配置されている。第一電極20Aは、端面10aと、4つの側面10c~10fの端面10a寄りの部分と、を覆うように形成されている。第一電極20Aは、素体10の端面10aに露出した第一導体30Aの一方の端部30aを覆うようにも形成されており、第一電極20Aは、第一導体30Aと直接接続されている。4つの端子電極20A~20Dの一つである第二電極20Bは、素体10の端面10b側に配置されている。第二電極20Bは、端面10bと、4つの側面10c~10fの端面10b寄りの部分と、を覆うように形成されている。第二電極20Bは、素体10の端面10bに露出した第二導体30Bの一方の端部30aを覆うようにも形成されており、第二電極20Bは、第二導体30Bと直接接続されている。
【0035】
第一電極20Aおよび第二電極20Bは、より詳しくは、素体10の側面10c、10dに回り込んで側面10c、10dにおける端面10a、10b側の縁を覆う第1部分23と、素体10の側面10e、10fに回り込んで側面10e、10fにおける端面10a、10b側の縁を覆う第2部分24とを含んで構成されている。本実施形態では、第1部分23は側面10c、10dにおける端面10a、10b側の全縁を覆っており、第2部分24は側面10e、10fにおける端面10a、10b側の全縁を覆っているが、第1部分23および第2部分24は縁の一部を覆う形態であってもよい。素体10の側面10c、10dに設けられた第1部分23は、その幅(すなわち、第1の方向に関する長さ)が、素体10の積層方向における中間位置において最大幅w3となり、かつ、側面10c、10dと側面10e、10fとの稜線において最小幅w4となり、素体10の積層方向における中間位置から稜線に向けてその側縁がD字状に湾曲するように漸次幅狭となっている。第1部分23および第2部分24の形状は、たとえば、D字状、半円状、半楕円状であってもよい。第1部分23は、側面10c、10dにおける積層方向に関する中間位置を基準に線対称(上下対称)の形状を呈する。そのため、側面10c、10dと側面10eとの稜線における幅w4と、側面10c、10dと側面10fとの稜線における幅w4とは同じである。素体10の稜線付近に位置し、かつ、第三電極20C、20Dと対向する第1部分23の隅はいずれも鈍角となっている。側面10eに設けられた第2部分24と側面10fに設けられた第2部分24とは、同一形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
【0036】
ここで、図8に示すように、第三電極20C、20Dの第1部分21と第一電極20Aおよび第二電極20Bの第1部分23との距離(より詳しくは、第1の方向に関する距離)は、素体10の側面10c、10dにおける積層方向(すなわち、第3の方向)に関する中間位置において、最小距離であるd1となっている。また、第三電極20C、20Dの第1部分21と第一電極20Aおよび第二電極20Bの第1部分23との距離は、素体10の側面10c、10dと側面10e、10fとの稜線において、最大距離であるd2となっている。素体10の稜線における距離d2は、側面10c、10dにおける積層方向に関する中間位置における距離d1より長い。第三電極20C、20Dの第1部分21と第一電極20Aおよび第二電極20Bの第1部分23との距離は、側面10c、10dにおける積層方向に関する中間位置から稜線へ向かうに従い、漸次長くなっている。
【0037】
チップバリスタ1においては、その駆動時に、端子電極20A~20C間における角部同士で電界集中が生じ得る。ただし、チップバリスタ1では、側面10c、10dにおいて第三電極20C、20Dと第一電極20Aおよび第二電極20Bとの距離が長くなるように設計されており、第三電極20C、20Dの第1部分21と第一電極20Aおよび第二電極20Bの第1部分23との距離が素体10の稜線において最大距離d2となっているため、素体10の稜線付近に位置する第三電極20C、20Dの角部と第一電極20Aのおよび第二電極20Bの角部との間における電界集中が抑制されている。それにより、電界集中に起因する各端子電極20A~20Cの劣化が抑制されている。
【0038】
また、端子電極20A~20Cは、素体10の側面10c、10dの稜線において幅狭(すなわち、最小幅w2、w4)となり、その隅が鈍角となっているため、端子電極20A~20Cそれぞれにおいて角部の電界集中が抑制されている。
【0039】
さらに、第三電極20C、20Dの幅W3は、第三導体30Cの端部31の幅W1より広くなるように設計されている(W3>W1)。また、第三電極20C、20Dの幅W3は、第三導体30Cの本体部32の幅W2より広くなるように設計されている(W3>W2)。第三電極20C、20Dの幅W3は一例として0.5mmである。本実施形態において、第三電極20Cの幅W3と第三電極20Dの幅W3とは同一である。第三電極20Cの幅W3と第三電極20Dの幅W3とは異なっていてもよい。
【0040】
各端子電極20A~20Dは、単層構造であっても複数層構造であってもよい。各端子電極20A~20Dは、たとえば焼付電極であり、導電性ペーストを素体10の表面に付与して焼き付けることにより形成される。導電性ペーストには、金属(たとえば、Pd、Cu、Ag、又はAg-Pd合金など)からなる粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられている。このような焼付電極上に、めっき層を形成することもできる。めっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層上に形成されたSnめっき層とを含んでいてもよい。
【0041】
チップバリスタ1においては、第三導体30Cの機能部34の幅W2を拡げることで、ESD耐量が高められる。第三導体30Cの端部31の幅W1は、第三電極20C、20Dの幅W3より短く(W3>W1)、かつ、第三導体30Cの機能部34の幅W2より短い(W2>W1)。そのため、たとえば第三電極20C、20Dを形成する際、端面10a、10bの対向方向に関する第三電極20C、20Dと第三導体30Cとの相対位置ズレがある場合でも、第三導体30Cの一部が第三電極20C、20Dに覆われない事態が生じにくい。すなわち、第三導体30Cと第三電極20C、20Dとの相対位置ズレが生じても、第三導体30Cと第三電極20C、20Dとの接続領域の大きさが変わらず、良好な接続を実現することができる。
【0042】
もし、第三導体30Cの端部31の幅W1が第三電極20C、20Dの幅W3以上である場合(W3≦W1)、端面10a、10bの対向方向に関する第三電極20C、20Dと第三導体30Cとの相対位置ズレがあると、第三導体30Cの一部が第三電極20C、20Dに覆われず、第三導体30Cの端部31が第三電極20C、20Dから露出する事態が生じ得る。第三導体30Cの端部31が第三電極20C、20Dから露出した場合、製品不良となり得る。または、第三導体30Cと第三電極20C、20Dとの接続領域の大きさが製品ごとに変わって、製品ごとの特性ズレが生じ得る。
【0043】
また、チップバリスタ1では、図5に示すとおり、第三電極20C、20Dの幅W3が、第三導体30Cの本体部32の幅W2より広い(W3>W2)。このように、第三電極20C、20Dを幅広とすることで、上述の相対位置ズレが大きい場合であっても、第三導体30Cと第三電極20C、20Dとの良好な接続を実現することができる。
【0044】
第三電極20C、20Dの幅W3は、図9に示すように、第三導体30Cの本体部32の幅W2より狭くてもよい(W3<W2)。第三導体30Cの本体部32における機能部34の幅(すなわち、幅W2)を、第三電極20C、20Dの幅W3に比べて広くすることで、高いESD耐量を実現することができる。第三電極20Cの幅W3と第三電極20Dの幅W3とは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0045】
また、上述したチップバリスタ1においては、第三導体30Cが拡幅部33を有するため、端部31と本体部32との幅が異なる場合であっても、端部31と本体部32との境界における応力集中が抑制され、クラック等の欠陥が生じる事態が抑制される。
【0046】
さらに、第三電極20C、20Dの第2部分22が、素体10の積層方向から見て、第三導体30Cの拡幅部33の少なくとも一部と重なる程度まで素体10の稜線から長く延びているため、素体10内(たとえば第三導体30C)において発生した熱を、第三電極20C、20Dの第2部分22から外部に効率よく放出することができる。素体10内において発生した熱は、素体10内部を通って第2部分22に直接的に伝わる場合や、第1部分21を介して第2部分22に間接的に伝わる場合が考えられる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0048】
素体10内に設けられた複数の導体は、上述した形態に限らず、様々な形態を態様することができる。
【0049】
たとえば、素体10内に設けられる複数の導体は、図10、11に示すような形態であってもよい。図10、11では、一対の第一導体30A、一対の第二導体30Bおよび第三導体30Cが素体10内に設けられている。
【0050】
一対の第一導体30Aはいずれも、均一幅を有する帯状の形状を有し、素体10を構成する層内おいて、端面10a、10bの対向方向に沿って延在している。一対の第一導体30Aは、素体10の異なる層内に位置している。各第一導体30Aは、一方の端部30aが端面10aに露出するとともに他方の端部30bが素体10内に位置している。一対の第一導体30Aは、素体10の積層方向から見て、寸法および形状が同じであり、完全に一致している。
【0051】
一対の第二導体30Bはいずれも、均一幅を有する帯状の形状を有し、第一導体30Aが形成された層と同じ層内おいて、端面10a、10bの対向方向に沿って延在している。第二導体30Bは、一方の端部30aが端面10b(第二面)に露出するとともに他方の端部30bが素体10内に位置している。一対の第二導体30Bは、素体10の積層方向から見て、寸法および形状が同じであり、完全に一致している。
【0052】
第一導体30Aと第二導体30Bとは、素体10の積層方向から見て互いに位置合わせされており、端面10a、10bの対向方向に沿って互いに近づく向きに延びている。ただし、素体10内に位置する第一導体30Aの端部30bと第二導体30Bの端部30bとは、端面10a、10bの対向方向において離間しており、素体10の積層方向において重なっていない。
【0053】
第三導体30Cは、側面10c、10dの対向方向に沿って延びる形状を有し、側面10cから側面10dに亘って延びている。図11に示すように、第三導体30Cは、一対の端部31および交差部32を有する。
【0054】
第三導体30Cの各端部31は、側面10c、10dの近傍に位置しており、側面10c、10dから露出している。各端部31は、均一な幅(第1の方向に関する長さ)を有する。
【0055】
第三導体30Cの交差部32は、両端部31の間であって第三導体30Cの中央に位置しており、側面10c、10dの対向方向に対して交差する方向に延びている。本実施形態では、第三導体30Cの交差部32は、側面10c、10dの対向方向に対して直交する方向に延びており、交差部32の幅(第1の方向に関する長さ)は端部31の幅より広くなるように設計されている。第三導体30Cは全体として、素体10の積層方向から見て十字状(クロス状)を呈する。本実施形態において、側面10c、10dの対向方向に関する交差部32の長さ(幅)は、第一導体30Aおよび第二導体30Bの幅と同じになるように設計されている。
【0056】
第三導体30Cの交差部32は、端面10a側に延びた先端部において第一導体30Aの端部30bと重なり、重畳部40Aを形成している。同様に、第三導体30Cの交差部32は、端面10b側に延びた先端部において第二導体30Bの端部30bと重なり、重畳部40Bを形成している。第三導体30Cは、一対の第一導体30Aとは重畳部40Aにおいてのみ重なり、一対の第二導体30Bとも重畳部40Bにおいてのみ重なる。
【0057】
第三導体30Cは、一対の第一導体30Aの中間に位置する層内に延在している。そのため、素体10の積層方向に関し、第三導体30Cと一方の第一導体30Aとの離間距離は、第三導体30Cと他方の第一導体30Aとの離間距離と実質的に同一である。交差部32は、一対の第一導体30Aの端部30bそれぞれとの間に第一機能層42を形成する。同様に、素体10の積層方向に関し、第三導体30Cと一方の第二導体30Bとの離間距離は、第三導体30Cと他方の第二導体30Bとの離間距離と実質的に同一である。交差部32は、一対の第二導体30Bの端部30bそれぞれとの間に第二機能層44を形成する。本実施形態では、重畳部40Aと重畳部40Bは同じ重畳面積を有し、そのため、第一機能層42と第二機能層44とは実質的に同じ静電容量を有する。
【0058】
また、素体10内に設けられた複数の導体は、バリスタ素子として機能する導体以外に、コンデンサ素子として機能する導体であってもよい。この場合、本発明に係る電子部品は、コンデンサとなる。
【0059】
上述した電子部品において、第三電極は、1つであってもよく、2つ(一対)であってもよい。
【0060】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
第1の方向において互いに対向する第一面および第二面と、前記第1の方向に直交する第2の方向において互いに対向する第三面および第四面と、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向において互いに対向する第五面および第六面とを有する素体と、
前記素体内に設けられた複数の導体と、
前記素体の前記第一面に設けられ、かつ、前記第三面および前記第四面に回り込んで前記第三面および前記第四面における前記第一面側の縁を覆う第1部分を有する第一電極と、
前記素体の前記第二面に設けられ、かつ、前記第三面および前記第四面に回り込んで前記第三面および前記第四面における前記第二面側の縁を覆う第1部分を有する第二電極と、
前記素体の前記第三面および前記第四面の少なくとも一方に設けられ、前記第五面および前記第六面との稜線の間にわたって延びる第1部分を有する第三電極と
を備え、
前記第三電極の第1部分と前記第一電極および前記第二電極の第1部分との距離は、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置における距離よりも前記第五面および前記第六面との稜線における距離のほうが長く、かつ、最大である、電子部品。
[付記2]
前記第三電極の前記第1部分の前記第1の方向に関する長さが、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置において最大となり、前記第五面および前記第六面との稜線において最小となる、付記1に記載の電子部品。
[付記3]
前記第三電極の第1部分が、前記第五面および前記第六面との稜線に向かって樽状に漸次幅狭となっている、付記2に記載の電子部品。
[付記4]
前記第一電極および前記第二電極の前記第1の方向に関する長さが、前記素体の前記第3の方向に関する中間位置において最大となり、前記第五面および前記第六面との稜線において最小となる、付記1に記載の電子部品。
[付記5]
前記第三電極が、前記第五面および前記第六面に回り込んで、前記第五面および前記第六面との稜線から離れる従って半円状に漸次幅狭となる第2部分をさらに有する、付記1に記載の電子部品。
[付記6]
前記素体が、前記第3の方向において積層された積層構造を有し、
前記複数の導体が、前記素体の所定の層内おいて、前記第1の方向に沿って前記第一面から延びるとともに前記第一電極と接続された第一導体と、前記素体の前記第一導体とは異なる層内において前記第1の方向に沿って前記第二面から延びるとともに前記第二電極と接続され、前記第一導体と前記第3の方向において重なる重畳部を形成する第二導体と、前記素体の前記第一導体と前記第二導体との間に位置する層内において、前記第三面から前記第四面に亘って延びるとともに前記第三電極と接続され、前記重畳部と前記第3の方向において重なる機能部を有する第三導体とを含み、
チップバリスタである、付記1に記載の電子部品。
【符号の説明】
【0061】
1…チップバリスタ、10…素体、20A…第一電極、20B…第二電極、20C、20D…第三電極、30A…第一導体、30B…第二導体、30C…第三導体、31…端部、32…本体部、33…拡幅部、34…機能部、40…重畳部、42…第一機能層、44…第二機能層。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11