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特開2023-159697仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159697
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 19/04 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
E02D19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069570
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】幸田 聡
(72)【発明者】
【氏名】市川 義高
(57)【要約】
【課題】堰の周囲の完全閉塞と一部閉塞を可能にし、閉合して内部の水抜きをした際に作用する水圧に起因する軸力を周方向へ伝達可能にする、仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法を提供する。
【解決手段】堰柱10の周囲に構築される仮締切り体100,200であり、堰柱10の周囲には上流側箱体20と下流側箱体30が配設され、堰柱10の側方には第1隙間10aがあり、上流側箱体20と下流側箱体30はそれぞれ上流側壁体40と下流側壁体50を備えており、壁体40,50を閉合することにより、閉塞型の仮締切り体200が形成され、第1隙間10aが閉塞された際に、壁体40,50の端部42,52同士が連続部材80により連続され、仮締切り体200と堰柱10の間の水が抜かれることにより仮締切り体200に作用する水圧Pに起因する軸力Nが、連続部材80を介して仮締切り体200の周方向に伝達される。
【選択図】図8B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堰柱と、該堰柱の側方に延設する昇降自在な本設ゲートと、を有する堰において、
前記堰柱の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、箱体に含まれる上流側箱体と下流側箱体が配設され、双方の該箱体の間の前記堰柱の側方には第1隙間があり、
前記上流側箱体と前記下流側箱体はそれぞれ、壁体に含まれる上流側壁体と下流側壁体を備えており、
前記壁体を閉合することにより、前記第1隙間が閉塞されて、双方の前記箱体と双方の前記壁体とにより、閉塞型の仮締切り体が形成される、仮締切り体であって、
前記第1隙間が閉塞された際に、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士が連続部材により連続され、前記仮締切り体と前記堰柱の間の水が抜かれることにより該仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力が、該連続部材を介して該仮締切り体の周方向に伝達されることを特徴とする、仮締切り体。
【請求項2】
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の一方に設けられているジャッキと、他方に設けられているジャッキ受けとにより形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記ジャッキが前記ジャッキ受けを押圧することにより、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士が連続されることを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り体。
【請求項3】
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の一方もしくは双方に固定されている雌ナットと、該雌ナットに螺合する雄ボルトとにより形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記雄ボルトが回転されて他方の前記壁体側へスライドして他方の該壁体に連続されることを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り体。
【請求項4】
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部間にある第2隙間を閉塞する単数もしくは複数のブロック状もしくは板状の第1間詰め材により形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記第2隙間に単数もしくは複数の前記第1間詰め材が挿入され、該第1間詰め材を介して前記上流側壁体と前記下流側壁体が連続することを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り体。
【請求項5】
前記連続部材は、前記上流側箱体と前記下流側箱体の端部間にある第2隙間を閉塞する単数もしくは複数の第2間詰め材により形成され、
前記第2間詰め材は、袋体と、該袋体の内部に収容された流動体とを備えており、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記第2隙間に単数もしくは複数の前記第2間詰め材が挿入され、該第2間詰め材を介して前記上流側壁体と前記下流側壁体が連続することを特徴とする、請求項1に記載の仮締切り体。
【請求項6】
前記第1隙間が閉塞された際に、前記上流側壁体と前記下流側壁体の対向する双方の端部の前記堰柱側には、壁体支持用支柱が立設しており、
前記上流側壁体と前記下流側壁体の双方の端部にある当接領域が、前記壁体支持用支柱の被当接領域に当接して前記第1隙間の閉塞姿勢を形成し、
前記当接領域と前記被当接領域の少なくとも一方に止水材が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の仮締切り体。
【請求項7】
堰柱と、該堰柱の側方に延設する昇降自在な本設ゲートと、を有する堰において、
前記堰柱の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、箱体に含まれる上流側箱体と下流側箱体が配設され、双方の該箱体の間の前記堰柱の側方には第1隙間があり、
前記上流側箱体と前記下流側箱体はそれぞれ、壁体に含まれる上流側壁体と下流側壁体を備えており、
前記壁体を閉合することにより、前記第1隙間が閉塞されて、双方の前記箱体と双方の前記壁体とにより、閉塞型の仮締切り体を形成する、閉塞型の仮締切り体の形成方法であって、
前記第1隙間を閉塞した後、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士を連続部材により連続し、前記仮締切り体と前記堰柱の間の水を抜くことにより該仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力を、該連続部材を介して該仮締切り体の周方向に伝達させることを特徴とする、閉塞型の仮締切り体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川のうち、その分岐点付近には、水位の調節や制限により洪水や低水を計画的に分流させる分流堰が設けられ、その河口部(感潮区間)には、塩水の遡上を防止して流水の正常な機能を維持する潮止堰が設けられ、その他、河川の水位を調節することにより、都市用水や灌漑用水、発電水等を取水する取水堰が設けられる。また、上記各種の堰に関し、基礎地盤から固定部の天端までの高さが15m以上であり、流水の貯留による流量調節を目的とし、堤防に接続しないものがダムである。さらには、上記各種の堰に関し、堤防の機能を有し、洪水や高潮による流水の氾濫を防止もしくは軽減するもが水門や樋門である。従って、本明細書において、「堰」と称する場合は、上記する各種の堰や、ダムや水門、樋門等を含むものとする。
ところで、河口部に設けられる堰は、河川を締め切り、海水の遡上を遮蔽することにより、農業用水や工業用水等の確保のために利用されるとともに、洪水や高潮を防止する治水を目的として利用される。この堰は、間隔を置いて立設されている複数の堰柱と、隣接する堰柱と堰柱の間において上下に昇降自在に配設されている本設ゲート(門扉)とを備えている。堰柱は、水底にある例えば鉄筋コンクリート製のフーチング体の上方において水上まで立設しており、堰柱に設けられている昇降機構により本設ゲートが昇降されるようになっている。
堰柱と本設ゲートを備えた堰において、堰柱の耐震補強を含む補修工事や改修工事を行う場合、例えば本設ゲートにて海水の遡上を防止した状態で堰柱の周囲を気中作業環境下に置くべく、仮締切りが行われる。
一般には、堰柱の周囲に鋼矢板を打設したり、築堤を造成することにより仮締切りを構築して堰柱を囲った後、これら仮締切りの内部の水を排水することにより、気中作業環境を形成している。しかしながら、これらの仮締切りの構築方法では、仮設である仮締切りが大掛かりなものとなり、仮締切り構築作業とその後の仮締切り撤去作業に多くの時間と費用を要する。そのため、補修工事等が渇水期に限定され得る河川工事においては、補修工事等のための作業時間が制約を受けるといった課題がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、側面に開口部を有する作業函が提案されている。この作業函は、平面視において開口部を通って水中にある構造物の一部を収容し、作業函と構造物とにより作業空間が形成された状態において、構造物に取り付いて上下方向に延びる作業函の端部が、作業空間の内側が狭く、外側が広くなるように傾斜した第1傾斜面と、構造物と第1傾斜面との隙間に設けられた楔形の第1止水パッキンとを備える。第1止水パッキンを第1傾斜面に沿って作業空間に近づく方向に移動させ、作業空間からの排水を行って第1止水パッキンに水平方向に加わる水圧を作用させることにより、作業函の止水が行われる。尚、この工法は、NDR(Neo-Dry Repair Method)工法とも称される。
一方、特許文献2には、台座に立設した構造物に外装し、水没した台座に着座して締切る締切り用ケーソンが提案されている。この締切り用ケーソンは、複数に縦割りした浮力調整可能な分割函体からなり、各分割函体の一方側を開閉自在にヒンジで連結し、各分割函体の刃口の底面に連続して緩衝シール材を取り付け、各分割函体の刃口の底面に分割函体の刃口を台座から離隔して支持する支持脚を突設し、分割函体の内側に構造物と一定距離を保って係合可能な複数のガイドスぺーサを横向きに突設している。この締切り用ケーソンを適用し、ケーソンを構成する分割函体を開閉操作して構造物に外装し、緩衝シール材を台座に着座させ、ケーソンの刃口部に沿って止水グラウトを充填し、緩衝シール材と止水グラウトとによりケーソンの刃口部を止水することにより、締切りが行われる。尚、この工法は、RUP(Reinforce & Repair Underwater Pier)工法とも称される。
【0004】
特許文献1に記載の作業函を用いた仮締切り工法では、堰柱等の構造物の側方に本設ゲートが延設する堰において、海水や河川水の行き来を遮蔽した状態で仮締切りを構築しようとした場合に、構造物における本設ゲートの一方側しか仮締切りを行うことができない。一方、特許文献2に記載の締切り用ケーソンを用いた仮締切り工法では、その仮締切り対象が橋脚等であることから、堰柱の側方に本設ゲートが延設している堰において、海水や河川水の行き来を遮蔽した状態で仮締切りを構築することができない。
【0005】
ところで、出水期と渇水期では、本設ゲートの昇降のタイミングや頻度が相違する。例えば、出水期においては、上流側に流入する雨量が多くなると干拓域に水が浸入する可能性があることから、堰の上流側の水位が下流側の水位(潮位)より高くなった段階で本設ゲートが開放され、上流側の水を下流側に放流する。そのため、複数の堰が併設され、隣接する堰の間で本設ゲートが昇降する場合には、全ての本設ゲートを昇降(稼働)できる状態で補修工事等を行う必要がある。
一方、渇水期においては、必ずしも全ての本設ゲートを昇降できる状態とする必要はないことから、一部の本設ゲートのみ昇降できる状態とし、残りの本設ゲートを側方に備える堰に関しては、当該堰の周囲を完全に閉塞して補修工事等を行うことができる。
以上のことから、堰の周囲の完全な閉塞と、堰の周囲の一部の閉塞を可能にした仮締切り体にて堰を包囲することにより、出水期と渇水期の双方に対応した補修工事等が可能になる。
しかしながら、特許文献1,2には、堰の周囲の完全閉塞と一部閉塞を可能にした仮締切り体に関する記載はない。
【0006】
そこで、特許文献3には、堰の周囲の完全閉塞と一部閉塞を可能にした仮締切り体が記載されている。この仮締切り体は、堰柱と、堰柱の側方に延設する昇降自在な本設ゲートとを有する堰において、堰柱の周囲に構築される仮締切り体である。堰柱の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、上流側箱体と下流側箱体が配設され、双方の箱体の間の堰柱の側方には第1隙間があり、上流側箱体と下流側箱体はそれぞれ、上流側壁体と下流側壁体を備えていて、壁体を閉合することにより、第1隙間が閉塞されて双方の箱体と双方の壁体とにより、閉塞型の仮締切り体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-79591号公報
【特許文献2】特開平9-189043号公報
【特許文献3】特開2021-063433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載の仮締切り体によれば、上流側壁体と下流側壁体を備えていて、上流側箱体と下流側箱体を閉合することにより、閉塞型の仮締切り体を形成することができる。そのため、双方の壁体を閉合しない場合は、堰柱の側方にある第1隙間は開放されることになり、開放型の仮締切り体が形成されることから、出水期には、双方の壁体を閉合せずに開放し、堰柱の側方において本設ゲートを昇降自在としておき、堰柱のうち、上流側箱体と下流側箱体にて包囲されている領域の補修工事等を行うことが可能になる。一方、渇水期には、双方の壁体を閉合することによって堰柱の周囲を完全に閉塞する閉塞型の仮締切り体を形成することにより、堰柱の周囲の全域の補修工事等を行うことが可能になる。
【0009】
ところで、閉塞型の仮締切り体を形成した後、閉塞型の仮締切り体と堰柱の全周との間の内部空間の水抜きを行うことで当該内部空間をドライ空間とし、堰柱の全周の補修等工事を行うことになるが、内部空間をドライ空間にした際に、仮締切り体の外側にある河川水との間に水頭差が生じ、仮締切り体に大きな水圧が作用し得る。作用する水圧に対抗する断面を備えた箱体の製作にはコストと時間を要し、箱体の断面規模も大きくなり得る。このことに関し、閉合した仮締切り体においては、壁体に作用する水圧は閉合した仮締切り体の周方向への軸力(圧縮力)に変換され、仮締切り体に周方向の圧縮力が作用することにより、閉合強度の高い仮締切り体となり、箱体の断面も周方向の圧縮力に対抗できる合理的な大きさに設定可能となる。
しかしながら、特許文献3では、上流側壁体と下流側壁体を閉合させる旨の記載はあるものの、仮締切り体の周方向への軸力伝達を可能にしながら、壁体の端部同士を繋ぐ手段に関する具体的な記載がない。
【0010】
本発明は、堰の周囲の完全閉塞と一部閉塞を可能にし、閉合して内部の水抜きをした際に作用する水圧に起因する軸力を周方向へ伝達可能にする、仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による仮締切り体の一態様は、
堰柱と、該堰柱の側方に延設する昇降自在な本設ゲートと、を有する堰において、
前記堰柱の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、箱体に含まれる上流側箱体と下流側箱体が配設され、双方の該箱体の間の前記堰柱の側方には第1隙間があり、
前記上流側箱体と前記下流側箱体はそれぞれ、壁体に含まれる上流側壁体と下流側壁体を備えており、
前記壁体を閉合することにより、前記第1隙間が閉塞されて、双方の前記箱体と双方の前記壁体とにより、閉塞型の仮締切り体が形成される、仮締切り体であって、
前記第1隙間が閉塞された際に、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士が連続部材により連続され、前記仮締切り体と前記堰柱の間の水が抜かれることにより該仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力が、該連続部材を介して該仮締切り体の周方向に伝達されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、仮締切り体が閉合されて第1隙間が閉塞された際に、上流側壁体と下流側壁体の端部同士が連続部材によって連続されることにより、仮締切り体と堰柱の間の水が抜かれた際に仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力(圧縮力)を、連続部材を介して仮締切り体の周方向に伝達することが可能になる。双方の壁体の閉合の際に、双方の壁体の端部同士を連続部材にて連続させる作業は、双方もしくは一方の壁体の端部に予め設けられている連続部材を、作業員やダイバー等が作動させることにより他方の壁体の端部に連続させる形態や、ダイバー等が双方の端部間に連続部材を挿入等することにより連続させる形態等がある。
【0013】
また、本発明による仮締切り体の他の態様において、
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の一方に設けられているジャッキと、他方に設けられているジャッキ受けとにより形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記ジャッキが前記ジャッキ受けを押圧することにより、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士が連続されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、一方の壁体の端部にあるジャッキと、他方の壁体の端部にあるジャッキ受けとによって連続部材が形成され、ジャッキ受けをジャッキが押圧することで双方の壁体の端部同士が連続することにより、双方の壁体の端部同士の連続構造をスムーズかつ確実に形成することができる。
ここで、ジャッキには、キリンジャッキや油圧ジャッキ等が適用できるが、壁体の外側にジャッキとジャッキ受けがある場合はジャッキが水中で伸長することになるため、例えば、キリンジャッキのハンドルをダイバー等が回して伸長させる方法が適用されるのが好ましい。
また、対応するジャッキとジャッキ受けの組み合わせ(ユニット)が、双方の壁体の端部において上下方向に間隔を置いて複数組設けられていることにより、壁体の全域において軸力を仮締切り体の周方向に有効に伝達することが可能になる。
【0015】
また、本発明による仮締切り体の他の態様において、
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の一方もしくは双方に固定されている雌ナットと、該雌ナットに螺合する雄ボルトとにより形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記雄ボルトが回転されて他方の前記壁体側へスライドして他方の該壁体に連続されることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、一方もしくは双方の壁体の端部に固定されている雌ナットと、雌ナットに螺合する雄ボルトによって連続部材が形成され、雌ナットに沿ってスライドした雄ボルトの先端が他方の壁体の端部を押圧することで双方の壁体の端部同士が連続することにより、双方の壁体の端部同士の連続構造をスムーズかつ確実に形成することができる。
雄ボルトの回転は、作業員やダイバー等が手動にて行うことの他に、雄ボルトの端部にモータを装備しておき、モータを遠隔操作にて駆動する方法が適用されてもよい。
この形態においても、雌ナットと雄ボルトにより形成される連続部材が、少なくとも一方の壁体の端部において上下方向に間隔を置いて複数設けられていることにより、壁体の全域において軸力を仮締切り体の周方向に有効に伝達することが可能になる。
【0017】
また、本発明による仮締切り体の他の態様において、
前記連続部材は、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部間にある第2隙間を閉塞する単数もしくは複数のブロック状もしくは板状の第1間詰め材により形成され、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記第2隙間に単数もしくは複数の前記第1間詰め材が挿入され、該第1間詰め材を介して前記上流側壁体と前記下流側壁体が連続することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、連続部材が、壁体間にある第2隙間を閉塞するブロック状もしくは板状の第1間詰め材であり、単数もしくは複数の第1間詰め材が第2隙間に挿入されることによって壁体同士が連続されることにより、双方の壁体の端部同士の連続構造をスムーズかつ確実に形成することができる。
例えば、厚みの異なる複数の板状の第1間詰め材が適用されることにより、相対的に厚みの厚い第1間詰め材を第2隙間に最初に挿入した後、残りの隙間に挿入可能な厚みの第1間詰め材を挿入することにより、速やかな間詰めを実現できる。ここで、相対的に厚みの厚い第1間詰め材を、一方の壁体の端部に予め取り付けておいてもよい。また、ブロック状や板状の第1間詰め材の挿入方向前方に、先細のテーパー面や湾曲面が設けられていることにより、第1間詰め材の僅かな隙間に対する容易な挿入を実現できる。
この形態においても、例えば複数の第1間詰め材により形成される連続部材が、双方の壁体の端部において上下方向に間隔を置いて複数挿入さられていることにより、壁体の全域において軸力を仮締切り体の周方向に有効に伝達することが可能になる。
【0019】
また、本発明による仮締切り体の他の態様において、
前記連続部材は、前記上流側箱体と前記下流側箱体の端部間にある第2隙間を閉塞する単数もしくは複数の第2間詰め材により形成され、
前記第2間詰め材は、袋体と、該袋体の内部に収容された流動体とを備えており、
前記第1隙間が閉塞された後に、前記第2隙間に単数もしくは複数の前記第2間詰め材が挿入され、該第2間詰め材を介して前記上流側壁体と前記下流側壁体が連続することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、連続部材が、壁体間にある第2隙間を閉塞する第2間詰め材により形成され、第2間詰め材が、袋体と、袋体の内部に収容された流動体を備えていて、単数もしくは複数の第2間詰め材が第2隙間に挿入されることによって壁体同士が連続されることにより、双方の壁体の端部同士の連続構造をスムーズかつ確実に形成することができる。
袋体の内部に収容される流動体には、フレッシュなモルタルやコンクリート等の他、水や油等の液体が含まれる。流動体がモルタルやコンクリートの場合は、第2隙間に挿入する際は変形性があることからスムーズな挿入を実現でき、挿入後の時間の経過に伴いモルタル等が硬化することにより、双方の壁体の端部同士を硬質な第2間詰め材が押圧しながら双方の連続構造を形成できる。
この形態においても、例えば複数の第2間詰め材により形成される連続部材が、双方の壁体の端部において上下方向に間隔を置いて複数挿入さられていることにより、壁体の全域において軸力を仮締切り体の周方向に有効に伝達することが可能になる。
【0021】
また、本発明による仮締切り体の他の態様において、
前記第1隙間が閉塞された際に、前記上流側壁体と前記下流側壁体の対向する双方の端部の前記堰柱側には、壁体支持用支柱が立設しており、
前記上流側壁体と前記下流側壁体の双方の端部にある当接領域が、前記壁体支持用支柱の被当接領域に当接して前記第1隙間の閉塞姿勢を形成し、
前記当接領域と前記被当接領域の少なくとも一方に止水材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、双方の壁体の端部にある当接領域が、堰柱側に立設している壁体支持用支柱の被当接領域に当接して第1隙間の閉塞姿勢を形成するとともに、当接領域と被当接領域の少なくとも一方に止水材が設けられていることにより、双方の壁体に対して作用する水圧によって止水材が潰されることで壁体の端部と壁体支持用支柱との間の止水構造が形成されながら、壁体の端部間における軸力の伝達が可能になる。
ここで、壁体の端部や壁体支持用支柱において、それらの上下に連続した止水材が適用されることにより、閉合した仮締切り体の内部を、外周の河川水から完全に止水することができる。
【0023】
また、本発明による閉塞型の仮締切り体の形成方法の一態様は、
堰柱と、該堰柱の側方に延設する昇降自在な本設ゲートと、を有する堰において、
前記堰柱の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、箱体に含まれる上流側箱体と下流側箱体が配設され、双方の該箱体の間の前記堰柱の側方には第1隙間があり、
前記上流側箱体と前記下流側箱体はそれぞれ、壁体に含まれる上流側壁体と下流側壁体を備えており、
前記壁体を閉合することにより、前記第1隙間が閉塞されて、双方の前記箱体と双方の前記壁体とにより、閉塞型の仮締切り体を形成する、閉塞型の仮締切り体の形成方法であって、
前記第1隙間を閉塞した後、前記上流側壁体と前記下流側壁体の端部同士を連続部材により連続し、前記仮締切り体と前記堰柱の間の水を抜くことにより該仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力を、該連続部材を介して該仮締切り体の周方向に伝達させることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、仮締切り体が閉合されて第1隙間を閉塞した後、上流側壁体と下流側壁体の端部同士を連続部材によって連続することにより、仮締切り体と堰柱の間の水を抜いた際に仮締切り体に作用する水圧に起因する軸力(圧縮力)を、連続部材を介して仮締切り体の周方向に伝達可能な閉塞型の仮締切り体を形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法によれば、堰の周囲の完全閉塞と一部閉塞を可能にし、閉合して内部の水抜きをした際に作用する水圧に起因する軸力を周方向へ伝達可能にする、仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る仮締切り体の設置方法の一例を説明する図である。
図2】実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、開放型の仮締切り体の一例の斜視図である。
図3】実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、閉塞型の仮締切り体の一例の斜視図である。
図4】閉塞型の仮締切り体の側方に仮設ゲートが取り付けられている状態を示す斜視図である。
図5】(a)から(c)の順に、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体の形成方法のうち、壁体の端部同士を連続部材にて連続するまでの施工内容を説明する工程図である。
図6図5に続いて、(a)から(c)の順に、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体の形成方法のうち、壁体の端部同士を連続部材にて連続するまでの施工内容を説明する工程図である。
図7図6(c)のVII方向矢視図であって、閉合している上流側壁体と下流側壁体の正面図である。
図8A図7のVIII方向矢視図であって、連続部材の一例を示す図であり、連続部材が双方の壁体の端部同士を連続させる前の状態を示す図である。
図8B】連続部材の一例が、双方の壁体の端部同士を連続させた状態を示す図である。
図9】堰柱と閉塞型の仮締切り体の平面図であって、仮締切り体の周方向に軸力が伝達されている状態を説明する図である。
図10A】連続部材の他の例を示す図であり、連続部材が双方の壁体の端部同士を連続させる前の状態を示す図である。
図10B】連続部材の他の例が、双方の壁体の端部同士を連続させた状態を示す図である。
図11A】連続部材のさらに他の例を示す図であり、連続部材が双方の壁体の端部同士を連続させる前の状態を示す図である。
図11B】連続部材のさらに他の例が、双方の壁体の端部同士を連続させた状態を示す図である。
図12A】連続部材のさらに他の例を示す図であり、連続部材が双方の壁体の端部同士を連続させる前の状態を示す図である。
図12B】連続部材のさらに他の例が、双方の壁体の端部同士を連続させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る仮締切り体と、閉塞型の仮締切り体の形成方法]
図1乃至図12を参照して、実施形態に係る仮締切り体の一例と、閉塞型の仮締切り体の形成方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る仮締切り体の設置方法の一例を説明する図である。また、図2は、実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、開放型の仮締切り体の一例の斜視図であり、図3は、実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、閉塞型の仮締切り体の一例の斜視図であり、図4は、閉塞型の仮締切り体の側方に仮設ゲートが取り付けられている状態を示す斜視図である。また、図5(a)から(c)、及び図6(a)から(c)は順に、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体の形成方法の一例を説明する工程図である。
【0029】
図1に示すように、仮締切りが構築されて気中作業環境下に置かれた状態で補修や改修が行われる堰柱10は、堰1(河口堰)を形成する。この補修は、例えば、大規模地震時の樋門損壊による農業用水源の喪失や塩害を防止するための耐震化対策の一環である、連続繊維巻き付け工法等による補強工事である。尚、図示例は、堰1として河口堰を例示しているが、堰には、分流堰や潮止堰、取水堰が含まれ、さらにはダムや水門、樋門が含まれる。従って、実施形態に係る仮締切り体は、様々な堰の補修工事に適用される。また、実施形態に係る仮締切り体は、堰の補修工事の他にも、水中にある橋台や橋脚等、水中に存在する様々な水中構造物の補修等工事に際して、その周囲を仮締切りする際にも適用可能である。
【0030】
堰1は、河口の幅方向に間隔を置いて配設される複数の堰柱10と、隣接する堰柱10の有する昇降機構16により上下に昇降される本設ゲート14(門扉)とを有する。
【0031】
また、水底には、図2に示すように、鉄筋コンクリート製の底盤15があり、底盤15の上方において水上まで堰柱10が立設している。堰柱10の側面11には、本設ゲート(図示せず)の端部が遊嵌される本設ゲート落とし込み溝12が設けられており、本設ゲート落とし込み溝12から離れた位置には、仮設ゲート73(図5参照)が落とし込まれる第1落とし込み溝13が設けられている。
【0032】
堰柱10の周囲に対する仮締切り体の施工に際して、仮締切り体を構成する箱体20等を堰柱10の周囲に搬送し、設置する概要は以下の通りとなる。まず、工場にて製作された、下段箱体21,上段箱体22,23(図2参照)がトラックに積み込まれ、陸上輸送にて作業ヤードである不図示の桟橋まで搬送される。桟橋には図1にその一部が示されているフロート台船330が係留されており、桟橋にある重機により、まず下段箱体21が入り江331に吊り下ろされる。入り江331に吊り下ろされた下段箱体21の上方に、重機にて上段箱体22,23を順次吊り下ろし、下段箱体21と上段箱体22,23を相互に連結することにより、箱体20を形成する。
【0033】
この連結作業は、フロート台船330を作業床として行うことができる。また、箱体20の形成の過程で、下段箱体21の中空部に外部水を随時注水することにより、箱体20の喫水を所望に調整することができる。入り江331にて形成された箱体20を入り江331に仮固定し、不図示の曳舟にてフロート台船330を施工対象の堰柱10まで曳航する。
【0034】
次に、施工対象の堰柱10に曳航されたフロート台船330を、不図示の複数の係留ワイヤを介して係留する。ここで、図示例の施工区域では、堰柱10の上方に空頭制限障害物400である管理道路等が存在しており、この空頭制限障害物400との干渉を防止しながら堰柱10に対して箱体20を設置する。より詳細には、図1に示すように、堰柱10の近傍にフロート台船330を係留した後、箱体20が空頭制限障害物400と干渉しないように喫水を調整し、設置に先行して箱体20を所望にY1方向に沈降させる。
【0035】
次に、フロート台船330の入り江331では、引き戻しウインチ332及び送り出しウインチ333と、箱体20との間に取り付けられているワイヤ334,335とを利用して、ワイヤリングにより箱体20をY2方向に進退させながら姿勢調整を行い、箱体20の備える開口26を介して堰柱10の一部を箱体20の内部に収容しながら、箱体20を堰柱10に設置する。ここで、図示を省略するが、別途の箱体30も、同様の方法により堰柱10まで搬送され、堰柱10の周囲に設置される。
【0036】
上記する設置方法(施工方向)により、図2に示すような開放型の仮締切り体100が設置される。堰柱10の側面11の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、上流側箱体20と下流側箱体30が配設され、双方の箱体20,30の間の堰柱10の側方(堰柱10の左右の側方)には、第1隙間10aがある。上流側箱体20と下流側箱体30はいずれも平面視略コの字状を呈しており、それぞれの端部にある開口26,36を介して堰柱10の両端部がそれぞれの内部25,35に収容され、堰柱10に取り付けられている。
【0037】
ここで、「上流側」と「下流側」とは、例えば、湖側と湾側、河川側と海側、河川のうちの山側と海側等、対象となる堰の設置位置等により、それらの内容は多様である。
【0038】
上流側箱体20と下流側箱体30は、それぞれの端部にある開口26,36において、上流側壁体40と下流側壁体50を回動自在に備えており、図2では、上流側壁体40と下流側壁体50が開放された状態の、開放型の仮締切り体100が示されている。
【0039】
上流側箱体20は、下段に配設される下段箱体21と、下段箱体21の上に搭載される、複数段(図示例は2段)の上段箱体22,23とを有する3段構造を呈しており、下段箱体21と上段箱体22,23が相互に接続されている。また、最上段の上段箱体23の最上面には、波圧抵抗用パネル24が取り付けられている。
【0040】
一方、下流側箱体30も、下段に配設される下段箱体31と、下段箱体31の上に搭載される、複数段(図示例は2段)の上段箱体32,33とを有する三段構造を呈しており、下段箱体31と上段箱体32,33が相互に接続されている。また、最上段の上段箱体33の最上面には、波圧抵抗用パネル34が取り付けられている。
【0041】
箱体20,30は、図示例以外にも、1段もしくは3段以上の上段箱体を有していてもよいし、積層構造ではなくて一体構造であってもよい。
【0042】
堰柱10の側面11と箱体20,30との間には、仮設支保工60を構成する複数の切梁62が架け渡されている。より具体的には、箱体20,30の内壁面に沿って間隔を置いて複数の支柱61が立設され、対向する支柱61は対を成し、対を成す支柱61の間に切梁62が架け渡されている。また、堰柱10の側面11の近傍においては、支柱63が堰柱10の側面11との間に僅かな第3隙間69を置いて立設され、この支柱63と対を成す内壁面に立設している支柱61との間に切梁62が架け渡されている。
【0043】
そして、僅かな第3隙間69には、短尺切梁64が配設され、支柱63と堰柱10の側面11の間に架け渡されている。支柱61,63や切梁62は、例えばH形鋼等の形鋼材により形成され、切梁62はその途中位置や端部にキリンジャッキ等のジャッキ(図示せず)を備えている。また、短尺切梁64は、短尺のH形鋼等の形鋼材や鋼管、円管等により形成され、同様にジャッキ(図示せず)を備えていてよい。ジャッキを作動させることにより、切梁62に軸力が導入され、対向する支柱61,63にて箱体20,30に作用する外水圧等に対抗できるようになるとともに、切梁62と対応する短尺切梁64とにより、箱体20,30が堰柱10の側面11に固定される。
【0044】
仮設支保工60に含まれる支柱63が、堰柱10の近傍において堰柱10の側面11との間に第3隙間69を置いて立設され、第3隙間69において、短尺切梁64が支柱63と堰柱10との間に架け渡されていることにより、堰柱10の側面11を補修等する際には、短尺切梁64の一部を盛り替えて第3隙間69に作業空間を形成することができる。従って、短尺切梁64の長さは、必要な作業空間を確保できる長さに設定される。
【0045】
図示例の仮設支保工60の構成によれば、堰柱10の側面11の補修等に際して切梁が障害となる場合において、延長の長い切梁を盛り替える必要がなく、短尺切梁64を盛り替えるだけでよいことから、仮設支保工60を大掛かりに変更することなく、堰柱10の補修等を効率的に行うことができる。
【0046】
箱体20,30のそれぞれの開口26,36の側方にある開口接合部20'、30'は、図3に示す閉塞型の仮締切り体200の形成に当たり、撤去されるようになっており、図3に示すように、開口接合部20'、30'の撤去された領域には、箱体20,30を支持する開口補強支柱65と、開口補強支柱65と堰柱10の側面11を繋ぐ開口補強短尺切梁66が設けられるようになっている。
【0047】
箱体20,30には、対応する壁体40,50が、複数のヒンジ機構41,51を介して回動自在に取り付けられている。
【0048】
各箱体20,30に対してそれぞれ、壁体40,50が回動自在に取り付けられていることにより、双方の壁体40,50の回動による壁体40,50の閉合(図3に示す状態)と開放(図2に示す状態)をスムーズに行うことができる。また、双方の壁体40,50が双方の箱体20,30の外側で回動することから、壁体40,50の回動が箱体20,30の内部の補修工事等に影響することがない。
【0049】
尚、箱体20,30に対する壁体40,50の開閉形態は、図示例の他にも、双方の箱体20,30において、第1隙間10aに向かって壁体40,50がスライド自在に収納されていて、壁体40,50が収納されることにより第1隙間10aが開放され、壁体40,50がスライドして張り出すことにより第1隙間10aが閉合される形態であってもよい。さらには、壁体40,50を第1隙間10aに曳航し、重機やダイバー等によって双方の箱体20,30に壁体40,50を取り付けることにより第1隙間10aを閉合する手動形態などもある。
【0050】
図3に示すように、閉塞型の仮締切り体200では、双方の壁体40,50の端部と堰柱10の側面との間にも、仮設支保工が構築される。具体的には、双方の壁体40,50の内側面に跨がるようにして壁体支持用支柱67が立設され、壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11の間に壁体支持用短尺切梁68が架け渡される。
【0051】
このように、堰柱10の側面11と箱体20,30との間に、仮設支保工60を構成する切梁62と短尺切梁64が架け渡されていることにより、堰柱10の周囲に箱体20,30を安定的に固定することができる。また、閉塞型の仮締切り体200においては、さらに、双方の壁体40,50と堰柱10との間にも、仮設支保工を構成する壁体支持用短尺切梁68が架け渡されていることにより、堰柱10に対して壁体40,50を安定的に固定することができる。
【0052】
また、図4に示すように、閉塞型の仮締切り体200においては、上流側壁体40と下流側壁体50のいずれか一方の側方(図示例は、上流側壁体40の側方)に、仮設ゲート73が取り付けられている。
【0053】
より具体的には、上流側壁体40の側方には、間隔をおいて第2落とし込み溝72を左右に備える複数の仮支柱71が立設している。この仮支柱71は、例えばH形鋼により形成され、ウエブと二つのフランジとにより第2落とし込み溝72が形成される。
【0054】
仮設ゲート73は、複数(図示例は3枚)の角落とし材74,75が相互に接続金物76を介して連結されることにより一体に形成されている。下方の2枚の角落とし材74は、例えば既に存在する既設角落とし材であり、上方の角落とし材75は、例えば新規の新設角落とし材である。尚、角落とし材の枚数は図示例に限定されず、さらには、全ての角落とし材が新設角落とし材であってもよい。新設角落とし材75の上面には、牽引具78から垂下される吊り材79の下端が係止される吊りフック75aが設けられている。
【0055】
また、壁体40の側方には端部支持鋼材46が立設しており、端部支持鋼材46にて壁体側の端部にある仮設ゲート73の端面が支持されている。そして、壁体40の側面には第3落とし込み溝47が設けられており、壁体側の端部にある仮設ゲート73の端部は第3落とし込み溝47に落とし込まれている。
【0056】
出水期には、図2に示す開放型の仮締切り体100が形成されることにより、第1隙間10aが開放されることによって、本設ゲート14を昇降自在としておき、堰柱10のうち、上流側箱体20と下流側箱体30にて包囲されている領域の補修工事等を行うことができる。
【0057】
一方、渇水期には、双方の壁体40,50を閉合することによって、堰柱10の側面11の周囲を完全に閉塞する、閉塞型の仮締切り体200を形成することにより、堰柱10の周囲の全域の補修工事等を行うことができる。
【0058】
さらに、上流側壁体40と下流側壁体50のいずれか一方の側方に、図4に示すように仮設ゲート73が取り付け自在であることから、例えば閉塞型の仮締切り体200の側方に仮設ゲート73が取り付けられることにより、本設ゲート14が開放された(上昇位置にある)状態でも、仮設ゲート73にて上流側と下流側の海水や河川水の行き来を遮断することができる。
【0059】
次に、図5及び図6を参照して、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体の形成方法のうち、連続部材により壁体の端部同士を連続させるまでの一連の工程について説明する。尚、連続部材による壁体の端部同士を連続させる内容については、以下、図7乃至図12を参照して説明する。
【0060】
閉塞型の仮締切り体の形成方法では、まず、図5(a)に示すように、堰柱10の側面11の周囲のうち、上流側には上流側箱体20を配設し、下流側には下流側箱体30を配設し、双方の箱体20,30の間に第1隙間10aを設ける。また、それぞれの箱体20,30の内部には仮設支保工60を設置し、箱体20,30を堰柱10の側面11に固定することにより、開放型の仮締切り体100を構築する。
【0061】
次に、本設ゲート14の昇降を可能にするべく、第1隙間10aのうち、本設ゲート14と干渉しない上流側において壁体支持用支柱67を立設し、壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11を壁体支持用短尺切梁68で繋ぐ。
【0062】
壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11を壁体支持用短尺切梁68で繋いだ後、図5(b)に示すように、上流側壁体40をX1方向に回動させて第1隙間10aに張り出させ、上流側壁体40の端部を、仮設支保工を構成する壁体支持用支柱67と接続する。
【0063】
次に、図5(c)に示すように、上流側壁体40の内側面に設けられている第3落とし込み溝47と、対応する堰柱10の第1落とし込み溝13に対して仮設ゲート73を落とし込む。
【0064】
さらに、上流側壁体40の外側に端部支持鋼材46を立設し、間隔を置いて複数の仮支柱71を立設した後、上流側壁体40の外側面に設けられている第3落とし込み溝47と、隣接する仮支柱71の備える第2落とし込み溝72に対して仮設ゲート73を落とし込む。
【0065】
さらに、隣接する仮支柱71の双方の第2落とし込み溝72に対して仮設ゲート73を落とし込むことにより、堰柱10の側面11の側方に連続した仮設ゲート73を施工する。
【0066】
次に、図6(a)に示すように本設ゲート14を上昇させ、図6(b)に示すように、下流側壁体50をX2方向に回動させて第1隙間10aに張り出させ、下流側壁体50の端部を、仮設支保工を構成する壁体支持用支柱67と接続することにより、双方の壁体40,50によって第1隙間10aを閉塞して、双方の箱体20,30と双方の壁体40,50とにより構成される、閉塞型の仮締切り体200を構築する。
【0067】
また、閉塞型の仮締切り体200が構築された後、図6(b)に示すように、開口接合部20'、30'の側方に盛り替え用の開口補強支柱65と開口補強短尺切梁66を設置する。次いで、図6(c)に示すように、堰柱10の側面11と、双方の壁体40,50と、開口接合部20'、30'とにより形成される壁体内部空間からの水抜きを行い、開口接合部20'、30'の撤去を行うことにより、堰柱10の側面11の周面の全域を連通させる。
【0068】
ここで、上記する水抜き施工においては、箱体20,30の内部に注水して、開口接合部20'、30'に対する箱体20,30からの水圧と壁体内部空間からの水圧をバランスさせた後に、開口接合部20'、30'の側方に盛り替え用の開口補強支柱65と開口補強短尺切梁66を設置し、開口接合部20'、30'の撤去を行い、箱体20,30と壁体内部空間からの水抜きを行う方法が適用されてもよい。
【0069】
図示する閉塞型の仮締切り体の形成方法によれば、閉塞型の仮締切り体200が形成された後に壁体内部空間からの水抜きを行い、開口接合部20'、30'の撤去を行うことにより、閉塞型の仮締切り体200と堰柱10の側面11の全周との間の空間をドライ空間にでき、堰柱10の側面11の全周の補修等工事を行うことができる。
【0070】
尚、例えば渇水期には、図5(a)の状態で、双方の箱体20,30によって包囲されている堰柱10の側面11の領域のみをドライ空間にして、補修等工事を行うことができる。
【0071】
次に、図7乃至図12を参照して、閉塞型の仮締切り体の形成方法のうち、壁体の端部同士を連続部材により連続させる方法について説明する。ここで、図7は、図6(c)のVII方向矢視図であって、閉合している上流側壁体と下流側壁体の正面図である。また、図8Aは、図7のVIII方向矢視図であって、連続部材の一例を示す図であり、連続部材が双方の壁体の端部同士を連続させる前の状態を示す図であり、図8Bは、連続部材の一例が、双方の壁体の端部同士を連続させた状態を示す図である。さらに、図9は、堰柱と閉塞型の仮締切り体の平面図であって、仮締切り体の周方向に軸力が伝達されている状態を説明する図である。
【0072】
図7に示すように、上流側と下流側の壁体40,50の端部42,52が閉合することにより、第1隙間10aが閉塞されて、双方の箱体20,30と双方の壁体40,50とにより、閉塞型の仮締切り体200が形成される。
【0073】
壁体40,50の端部42,52のうち、上下方向に間隔を置いて複数箇所(図示例は4箇所)に端部連続エリアAが設定され、それぞれの端部連続エリアAに設けられている連続部材により壁体40,50の連続構造が形成される。以下、図8図10乃至図12に示す複数例の連続部材と、それぞれの連続部材による端部42,52の連続構造について説明する。
【0074】
図8に示す連続部材80は、壁体50の端部52に設けられているジャッキ81と、壁体40の端部42に設けられているジャッキ受け82とにより形成される。ジャッキ81とジャッキ受け82はいずれも、ボルト83により壁体50,40の外側面に固定される。ここで、ジャッキ81が端部42に設けられ、ジャッキ受け82が端部52に設けられてもよい。また、上下方向にある4箇所の端部連続エリアAにおいて、ジャッキ81とジャッキ受け82の設置される端部が、交互に異なるように設けられてもよい。
【0075】
H形鋼により形成される壁体支持用支柱67が、双方の壁体40,50の端部42,52の堰柱側に立設しており、壁体支持用支柱67の下端は、底盤15に対して例えば不図示のアンカーボルト等により固定されている。
【0076】
壁体支持用支柱67の一方のフランジには壁体支持用短尺切梁68が接続されており、壁体支持用短尺切梁68の他端が堰柱10の側面に接続されている。図示するように、双方の壁体40,50の端部42,52の当接領域42a、52aにはそれぞれ、端部42,52の上下方向に延設する帯状の止水材85がボルト等により固定されており、双方の止水材85が壁体支持用支柱67の他方のフランジにおける被当接領域67aに当接される。ここで、止水材85は、ガスケット等により形成される。尚、止水材85は、壁体支持用支柱67の被当接領域67aに設けられていてもよい。また、端部42,52の当接領域42a、52aと壁体支持用支柱67の被当接領域67aの双方に、止水材85が設けられてもよい。
【0077】
図示例のジャッキ81はキリンジャッキであり、手回しハンドル81aを回転させることにより、ジャッキ81の一部が伸長する。例えば、不図示のダイバーが壁体40,50の外側の河川水に潜り、手回しハンドル81aを回転させることにより、図8Bに示すようにジャッキ81の一部がジャッキ受け82側へZ1方向に伸長してジャッキ受け82に当接し、連続部材80を介した壁体40,50の端部42,52の連続構造が形成される。
【0078】
その後、壁体40,50の内部25,35における水抜きを行うことにより、壁体40,50の内外で水頭差が生じ、壁体40,50に対して外側からの水圧Pが作用する。この際、閉塞型の仮締切り体200は、図9に示すように全周が完全に閉じた構造を呈していることから、作用する水圧Pは仮締切り体200の周方向の軸力N(圧縮力)に変換される。そして、壁体40,50の端部42,52の連続構造においては、連続部材80を介して軸力Nが伝達されることになる。
【0079】
また、水圧Pが作用することで止水材85が被当接領域67aに押圧され、シール性に優れた止水構造が形成される。
【0080】
この連続構造においては、図7に示すように、対応するジャッキ81とジャッキ受け82の組み合わせ(ユニット)が、双方の壁体50,40の端部52,42において上下方向に間隔を置いて4組設けられていることにより、壁体50,40の上下方向の全域において軸力Nを仮締切り体200の周方向に有効に伝達することが可能になる。
【0081】
また、作用する水圧Pは、壁体40,50の端部42,52を介して壁体支持用支柱67に作用するが、壁体支持用支柱67は壁体支持用短尺切梁68を介して堰柱10の側面に反力を取ることができるため、壁体40,50の端部42,52の連続構造を水圧Pに抗して安定的に支持することができる。
【0082】
一方、図10に示す連続部材80Aは、壁体50の端部52に固定されている複数(図示例は2つ)の雌ナット86と、それぞれの雌ナット86に対してスライド自在に螺合している雄ボルト87とにより形成される。尚、図7に示すように、4箇所の端部連続エリアAのそれぞれに、図10に示す2つの連続部材80Aが設けられている。ここで、図示を省略するが、連続部材80Aが壁体40の端部42に設けられてもよいし、2つの連続部材80Aの一方が壁体50の端部52に設けられ、他方が壁体40の端部42に設けられてもよい。さらに、2つで1組の連続部材80Aが、壁体40,50の双方の端部42,52の対応する位置にそれぞれ設けられてもよい(2組で、計4つの連続部材80Aが設けられている形態)。
【0083】
図10Bに示すように、作業員やダイバーが雄ボルト87を回転工具等によって回転することにより、雄ボルト87が他方の壁体40の端部42側へZ2方向にスライドして端部42に当接し、連続部材80Aを介した壁体40,50の端部42,52の連続構造が形成される。
【0084】
ここで、図示を省略するが、それぞれの雄ボルト87の一端にモータが装備されていて、遠隔操作によってモータを駆動することで雄ボルト87を自動回転させる形態であってもよい。
【0085】
一方、図11に示す連続部材80Bは、厚みの異なる複数の板状の第1間詰め材88a、88b、88cにより形成される。図11Aに示すように、例えば相対的に厚みの厚い第1間詰め材88aを第2隙間70に最初Z3方向に挿入した後、残りの隙間に次に厚みの厚い第1間詰め材88bをZ4方向に挿入し、さらに、厚みの最も薄い第1間詰め材88cをZ5方向に挿入することにより、図11Bに示すように、3種の第1間詰め材88a、88b、88cによって第2隙間70が閉塞され、連続部材80Bを介した壁体40,50の端部42,52の連続構造が形成される。
【0086】
ここで、図示を省略するが、第1間詰め材はブロック状であってもよい。また、相対的に厚みの厚い第1間詰め材88aが、例えば端部42に予め取り付けられていて、他の第1間詰め材88b、88cを順次挿入する形態であってもよい。また、第1間詰め材の挿入方向前方に、先細のテーパー面や湾曲面が設けられていてもよく、この先細形態では、第1間詰め材の僅かな隙間への容易な挿入を実現できる。
【0087】
一方、図12に示す連続部材80Cは、袋体89aと、袋体89aに収容されている流動体89bとにより形成される。ここで、流動体89bには、フレッシュなモルタルやコンクリート等の他、水や油等の液体が含まれる。
【0088】
図12Aに示すように、ダイバー等が第2隙間70に対して連続部材80CをZ6方向に押し込みながら挿入することにより、図12Bに示すように、連続部材80Cによって第2隙間70が閉塞され、連続部材80Cを介した壁体40,50の端部42,52の連続構造が形成される。
【0089】
流動体89bがモルタルやコンクリートの場合は、第2隙間70に挿入する際は変形性があることからスムーズな挿入を実現でき、挿入後の時間の経過に伴いモルタル等が硬化することにより、双方の壁体40,50の端部42,52同士を硬質な第2間詰め材80Cが押圧しながら双方の連続構造を形成できる。
【0090】
以上で説明した連続部材80、80A,80B、80Cのいずれを適用した場合であっても、壁体40,50の端部42,52同士の連続構造を、スムーズかつ確実に形成することができ、作用する水圧Pに起因する軸力Nを、連続部材80、80A,80B、80Cを介して仮締切り体200の周方向に伝達させることが可能になる。このことにより、閉合強度の高い仮締切り体200を形成でき、壁体40,50の断面も周方向の圧縮力に対抗できる合理的な大きさに設定することができる。
【0091】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0092】
1:堰(河口堰)
10:堰柱
10a:第1隙間
11:側面
12:本設ゲート落とし込み溝
13:第1落とし込み溝
14:本設ゲート
15:底盤
16:昇降機構
20:上流側箱体(箱体)
20':開口接合部
21:下段箱体
22:上段箱体(二段目箱体)
23:上段箱体(三段目箱体)
24:波圧抵抗用パネル
25:内部
26:開口
30:下流側箱体(箱体)
30':開口接合部
31:下段箱体
32:上段箱体(二段目箱体)
33:上段箱体(三段目箱体)
34:波圧抵抗用パネル
35:内部
36:開口
40:上流側壁体(壁体)
41:ヒンジ機構
42:端部
42a:当接領域
46:端部支持鋼材
47:第3落とし込み溝
50:下流側壁体(壁体)
51:ヒンジ機構
52:端部
52a:当接領域
60:仮設支保工
61:支柱
62:切梁
63:支柱
64:短尺切梁
65:開口補強支柱
66:開口補強短尺切梁
67:壁体支持用支柱
67a:被当接領域
68:壁体支持用短尺切梁
69:第3隙間
70:第2隙間
71:仮支柱
72:第2落とし込み溝
73:仮設ゲート
74:既存角落とし材(角落とし材)
75:新設角落とし材(角落とし材)
75a:吊りフック
76:接続金物
80,80A,80B,80C:連続部材
81:キリンジャッキ(ジャッキ)
81a:手回しハンドル
82:ジャッキ受け
83:ボルト
85:止水材
86:雌ナット
87:雄ボルト
88a,88b,88c:第1間詰め材
89a:袋体(第2間詰め材)
89b:流動体(第2間詰め材)
100:開放型の仮締切り体(仮締切り体)
200:閉塞型の仮締切り体(仮締切り体)
330:フロート台船
331:入り江
332:引き戻しウインチ
333:送り出しウインチ
334,335:ワイヤ
400:空頭制限障害物(管理道路)
W:外部水(海水、河川水)
A:端部連続エリア
P:水圧
N:軸力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B