(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159715
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231025BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20231025BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/08 A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069602
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 奈留
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA06
2H042DA11
2H042DA12
2H042DA22
2H042DB01
2H042DB08
2H042DC02
2H149AA01
2H149BA02
2H149BA04
2H149BA05
2H149BA22
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA03
2H149FA27W
2H149FC07
2H149FC10
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA66
2H199CA68
(57)【要約】
【課題】薄型であり、かつ光利用効率が高い表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】表示パネルと、上記表示パネルの表示光を円偏光に変換して透過させる円偏光素子と、上記円偏光を透過させる複数の光透過部、及び、上記円偏光素子に対向する面の反対面に設けられた光反射部を有するパターニングミラーと、上記パターニングミラーを透過した上記円偏光を透過するレンズと、上記レンズを透過した上記円偏光を選択的に反射する円偏光選択反射素子とを備える表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルの表示光を円偏光に変換して透過させる円偏光素子と、
前記円偏光を透過させる複数の光透過部、及び、前記円偏光素子に対向する面の反対面に設けられた光反射部を有するパターニングミラーと、
前記パターニングミラーを透過した前記円偏光を透過するレンズと、
前記レンズを透過した前記円偏光を選択的に反射する円偏光選択反射素子とを備える表示装置。
【請求項2】
前記複数の光透過部は、それぞれ前記表示パネルに含まれる複数の画素の少なくとも一つと重畳する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルは、有機発光ダイオード又は量子ドット発光ダイオードを含む請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記円偏光素子は、コレステリック液晶素子である請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、一対の基板と前記一対の基板に挟持された液晶層とを含む液晶パネルであり、
前記円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含み、
前記表示パネルの前記円偏光素子と反対側に、更に第二の直線偏光板を備える請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項7】
更に、前記第二の直線偏光板の前記液晶パネルと反対側に、光源を含むバックライトを備え、
前記バックライトは、前記光源から出射された光を、前記液晶パネルの厚み方向に沿った方向に集光させる請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記円偏光選択反射素子は、反射型の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記円偏光選択反射素子は、コレステリック液晶素子である請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示パネルと前記円偏光素子との間に、複数の光透過部の少なくとも一つと重畳する集光レンズを有する請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項11】
前記円偏光素子と前記パターニングミラーとの間に、複数の光透過部の少なくとも一つと重畳する集光レンズを有する請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項12】
前記請求項1又は2に記載の表示装置と、頭部に装着する装着部とを備えるヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び上記表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)は、ユーザの頭部に装着された状態でユーザが画像を見ることができるように画像を出力する表示装置である。HMDとしては、例えば、両眼を覆い、ユーザの視野にはHMDの表示が見えるようにした没入型のHMDがある。没入型のHMDは、外光が遮蔽されて深い没入感が得られ、VR(Virtual Reality)デバイスとも呼ばれる。
【0003】
近年、HMDにはコンパクト化が求められている。コンパクト化の手段としては、偏光の特性を利用する折り返し光学系の開発が行われている(特許文献1~5)。上記折り返し光学系としては、例えば、特許文献1の
図5に、バックライト、液晶パネル、1/4波長版、半透鏡、レンズ、円偏光選択半透鏡を備えたHMDが開示されている。また、特許文献2及び5にも、半透鏡(ハーフミラー)を備えたHMDが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3295583号
【特許文献2】特許第5018758号
【特許文献3】特許第4408159号
【特許文献4】特許第6687805号
【特許文献5】特許第6777622号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ACM Transactions on Graphics,(米),2020,Vol.39,No.4,Article67.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハーフミラーを用いた折り返し光学系のHMDは、薄型化が期待できる一方で、光利用効率が低く、改善の余地があった。ハーフミラーを用いた折り返し光学系のHMDは、バックライトからの出射光がハーフミラーを2回透過する際に、それぞれ入射光の50%ずつ光を損失するため、原理的に視認できる映像として使用できる光は25%である。バックライトの輝度を上げることでHMDの輝度を補うこともできるが、近年はバッテリーで駆動させるワイヤレスタイプのHMDが求められること、HMDの筐体内の発熱を抑える必要があること等から、低消費電力化が重要である。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、薄型であり、かつ光利用効率が高い表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一実施形態は、表示パネルと、上記表示パネルの表示光を円偏光に変換して透過させる円偏光素子と、上記円偏光を透過させる複数の光透過部、及び、上記円偏光素子に対向する面の反対面に設けられた光反射部を有するパターニングミラーと、上記パターニングミラーを透過した上記円偏光を透過するレンズと、上記レンズを透過した上記円偏光を選択的に反射する円偏光選択反射素子とを備える表示装置である。
【0009】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記複数の光透過部は、それぞれ上記表示パネルに含まれる複数の画素の少なくとも一つと重畳する表示装置である。
【0010】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記表示パネルは、有機発光ダイオード又は量子ドット発光ダイオードを含む表示装置である。
【0011】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(3)の構成に加え、上記円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む表示装置である。
【0012】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(3)の構成に加え、上記円偏光素子は、コレステリック液晶素子である表示装置である。
【0013】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記表示パネルは、一対の基板と上記一対の基板に挟持された液晶層とを含む液晶パネルであり、上記円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含み、上記表示パネルの上記円偏光素子と反対側に、更に第二の直線偏光板を備える記載の表示装置である。
【0014】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(6)の構成に加え、更に、上記第二の直線偏光板の上記液晶パネルと反対側に、光源を含むバックライトを備え、上記バックライトは、上記光源から出射された光を、上記液晶パネルの厚み方向に沿った方向に集光させる表示装置である。
【0015】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記円偏光選択反射素子は、反射型の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む表示装置である。
【0016】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記円偏光選択反射素子は、コレステリック液晶素子である表示装置である。
【0017】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(9)のいずれかの構成に加え、上記表示パネルと上記円偏光素子との間に、複数の光透過部の少なくとも一つと重畳する集光レンズを有する表示装置である。
【0018】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(10)のいずれかの構成に加え、上記円偏光素子と上記パターニングミラーとの間に、複数の光透過部の少なくとも一つと重畳する集光レンズを有する表示装置である。
【0019】
(12)本発明の他の実施形態は、上記(1)~(11)のいずれかに記載の表示装置と、頭部に装着する装着部とを備えるヘッドマウントディスプレイである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄型であり、かつ光利用効率が高い表示装置、及び、該表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【
図2】発光ダイオードを含む表示パネルの一例を示した平面模式図である。
【
図3】円偏光素子が第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む例を示した断面模式図である。
【
図4】円偏光素子がコレステリック液晶素子である例を示した断面模式図である。
【
図5】パターニングミラーの一例を示した平面模式図である。
【
図6】
図2の表示パネルと
図5のパターニングミラーとを重ねた平面模式図である。
【
図7】集光レンズが配置された第一の例を示した断面模式図である。
【
図8】集光レンズが配置された第二の例を示した断面模式図である。
【
図9】実施形態2に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
【
図10】
図9に示した液晶パネルの平面模式図である。
【
図11】マイクロレンズの一例を示した平面模式図である。
【
図12】パターニングミラーの他の一例を示した平面模式図である。
【
図14】エッジライト型のバックライトの第一例を示した断面模式図である。
【
図15】エッジライト型のバックライトの第二例を示した断面模式図である。
【
図16】直下型のバックライトの一例を示した断面模式図である。
【
図17】実施例で用いたパターニングミラーとOLEDパネルとを重ねた平面模式図である。
【
図18】実施例1-1~1-4の輝度視野角を示したグラフである。
【
図19】実施例2-1~2-4の輝度視野角を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1に係る表示装置は、表示パネルと、上記表示パネルの表示光を円偏光に変換して透過させる円偏光素子と、上記円偏光を透過させる複数の光透過部、及び、上記円偏光素子に対向する面の反対面に設けられた光反射部を有するパターニングミラーと、上記パターニングミラーを透過した上記円偏光を透過するレンズと、上記レンズを透過した上記円偏光を選択的に反射する円偏光選択反射素子とを備える表示装置である。
【0024】
図1は、実施形態1に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。
図1に示したように、実施形態1に係る表示装置100は、観察者側に向かって、表示パネル10と、円偏光素子20と、パターニングミラー30と、レンズ40と、円偏光選択反射素子50とをこの順に備える。
図1では、円偏光素子20が第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体を含む場合を例示した。本明細書中、分解断面図では、各部材間に間隔を設けて図示しているが、各部材は接着されていてもよいし、間隔を空けて配置されていてもよい。
【0025】
表示パネル10は、観察者側に光(表示光)を出射し、第一の直線偏光板21は、表示パネル10の表示光を直線偏光に変換する(
図1の(i))。1/4波長板22を透過した上記直線偏光は円偏光に変換される(
図1の(ii))。上記円偏光を右回りの円偏光とすると、右回りの円偏光はパターニングミラー30の光透過部31を透過し、回転方向を変えずにレンズ40を透過する(
図1の(iii)、(iv))。円偏光選択反射素子50は、右回りの円偏光を選択的に反射し(
図1の(v))、反射された上記右回りの円偏光は、再びレンズ40を透過する(
図1の(vi))。レンズ40を透過した右回りの円偏光は、パターニングミラー30の光反射部32で反射され、左回りの円偏光に変換される(
図1の(vii))。左回りの円偏光は、再びレンズ40を透過し(
図1の(viii))、円偏光選択反射素子50を透過して、観察者側に出射される(
図1の(ix))。本明細書中、「観察面側」とは、ディスプレイの画面(表示画面)に対してより近い側を意味し、「背面側」とは、ディスプレイの画面(表示画面)に対してより遠い側を意味する。
【0026】
実施形態1に係る表示装置100は、パターニングミラー30と円偏光選択反射素子50との間で光が反射される折り返し光学系とすることで、表示パネル10から観察者側に向かって出射された光(表示光)を折り畳んで観察者側に出射するため、表示装置100の厚みを薄くしつつ、光路を長くとることができる。また、従来のHMDで用いられてきたハーフミラーではなく、パターニングミラー30を用いることで、光の利用効率を向上させることができる。
【0027】
(表示パネル)
表示パネル10は、複数の画素を含むことが好ましい。上記画素は、画像表示を行うための表示単位であり、カラー表示を行う場合は、例えば、赤色、青色、緑色の画素を含む。
【0028】
表示パネル10は、複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が配置されたTFT基板を有してもよい。上記TFT基板は、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線とを備えてもよい。複数のゲート線及び複数のソース線は、平面視において格子状に形成されてもよく、複数のゲート線及び複数のソース線により区画された各領域が、画素に対応する。
【0029】
支持基板は、透明基板であることが好ましく、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0030】
各ゲート線と各ソース線との交点には、画素毎にスイッチング素子としてのTFTが配置されていてもよい。TFTのゲート端子はゲート線に接続され、ソース端子はソース線に接続され、ドレイン端子は画素電極に接続されてもよい。表示パネル10は、上記画素電極とは別に、共通電極電圧が印加される共通電極を有してもよい。
【0031】
実施形態1に係る表示装置100は、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を含むOLEDパネルを有してもよいし、量子ドット発光ダイオード(QD‐LED:Quantum Dot‐Light Emitting Diode)を含むQD‐LEDパネルを有してもよい。本明細書中、OLED、QD‐LEDを特に区別しない場合、発光ダイオード(LED)ともいう。
【0032】
発光ダイオードの構成は、特に限定されず、例えば、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極をこの順で積層されたものが挙げられる。
【0033】
陰極、陽極の材料は、特に限定されないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、ZnO等の透明導電材料、アルミニウム、銀又はこれらの合金等が挙げられる。
【0034】
トップエミッション型のLEDの場合、上記TFT基板の画素電極を陽極として用い、共通電極を陰極として用いてもよい。陽極としてアルミニウム、銀又はこれらの合金等の反射電極を用いてもよいし、陰極として上記透明導電材料を用いてもよい。
【0035】
正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層に輸送する層である。正孔輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられる。
【0036】
電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層の材料は特に限定されないが、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等のキノリン誘導体、アザインドリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。
【0037】
陰極、電子輸送層との間に、電子注入層を有してもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよい。電子注入層の材料としては、無機絶縁材料を用いることができ、アルカリ金属の酸化物又はハロゲン化物、並びにアルカリ土類金属の酸化物又はハロゲン化物等が挙げられる。
【0038】
表示パネル10がOLEDである場合、上記発光層は、発光材料として蛍光材料、燐光材料等を含んでもよい。
【0039】
赤色の蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、テトラアリールジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられる。
【0040】
緑色の蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、アントラセン誘導体等が挙げられる。
【0041】
青色の燐光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン等が挙げられる。
【0042】
燐光材料としては、燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。上記金属錯体は、配位子の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。
【0043】
赤色の燐光材料としては、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジネート-N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-12H,23H-ポルフィリン-白金(II)、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジネート-N,C3’]イリジウム、ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0044】
緑色の燐光材料としては、ファク-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジネート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク-トリス[5-フルオロ-2-(5-トリフルオロメチル-2-ピリジン)フェニル-C,N]イリジウムが挙げられる。
【0045】
青色の燐光材料としては、ビス[4,6-ジフルオロフェニルピリジネート-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、トリス[2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジネート-N,C2’]イリジウム、ビス[2-(3,5-トリフルオロメチル)ピリジネート-N,C2’]-ピコリネート-イリジウム、ビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジネート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0046】
上記蛍光材料、燐光材料はドーパントともいい、発光層は、ドーパントに対して電荷輸送を行うホスト材料を含んでもよい。ホスト材料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体等のアセン誘導体(アセン系化合物)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニルカルバゾール、4,4’-N,N’-ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’-ビス(2,2’-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、適宜、蛍光材料、燐光材料と組み合わせて用いることができる。
【0047】
表示パネル10がQD‐LEDパネルである場合、上記発光層は、発光材料として量子ドットを含んでもよい。量子ドットは、量子力学に従う光学特性を持つナノスケール(例えば、平均粒子径が2~10nm)の半導体結晶であり、例えば、10~50個ほどの原子で構成されたコロイド粒子が挙げられる。
【0048】
上記量子ドットとしては、カドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdTe)、硫化カドミウム(CdS)、硫化鉛(PbS)、若しくは、リン化インジウム(InP)等の化合物、又は、CdSeS等の合金を含むものが挙げられる。
【0049】
上記量子ドットとしては、内部組成が均一な単一組成の半導体結晶から構成されたコア型量子ドット、複数種類の半導体の合金からから構成された合金型量子ドット、コア型量子ドット又は合金型量子ドットの表面を半導体化合物で被覆したコア・シェル型量子ドットが挙げられる。量子ドットの粒子径を調整することで、発光波長ピークを調整することができる。また、量子ドットの組成や内部構造を変えることで、光学的特性、電子的特性を調整することができる。
【0050】
画素毎に発光ダイオード(OLED又はQD‐LED)が配置されてもよい。OLEDパネル又はQD‐LEDパネルの場合、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素に、それぞれ、赤色の発光材料含む発光層を備えた赤色のLED(OLED又はQD‐LED)、緑色の発光材料含む発光層を備えた緑色のLED、青色の発光材料を含む発光層を備えた青色のLEDを配置してもよい。
【0051】
上記蛍光又は燐光材料を組み合わせることで白色の蛍光又は燐光を発するOLEDを作製することもできる。OLEDパネルの場合、白色のOLEDに、赤色、緑色、青色の樹脂層を含むカラーフィルタを重ねて、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素としてもよい。
【0052】
QD‐LEDパネルの場合、白色、青色等の単色の量子ドット層に、赤色のOLED、緑色のOLED、青色のOLEDを含むカラーOLED層又はカラーフィルタを重ねて、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素としてもよい。
【0053】
画素の配置は、特に限定されないが、緑色の画素数を、赤色の画素数、青色の画素数の2倍とするペンタイル配列としてもよいし、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素を1:1:1で配置するリアルRGB配列としてもよい。
【0054】
図2は、発光ダイオードを含む表示パネルの一例を示した平面模式図である。
図2は、ペンタイル配列の例示である。
図2に示したように、表示パネル10は、基板11上に、赤色のLED12R、緑色のLED12G、青色のLED12Bを含む発光ダイオード12を有してもよい。赤色のLED12R、緑色のLED12G、青色のLED12Bが配置された画素が、それぞれ赤色、青色、緑色の画素である。基板11は、TFT基板であってもよい。
【0055】
ペンタイル配列の場合、表示パネル10の表示画面(表示領域)に占めるLEDの割合は、20~40%であってもよい。ペンタイル配列で赤色、青色、緑色のLEDが同じサイズである場合、一つのLEDの直径は、例えば、2~30μmであってもよい。赤色の画素及び青色の画素のサイズは、緑色の画素のサイズより大きくてもよい。ペンタイル配列で色毎にサイズを変える場合、例えば、赤色のLEDの直径2~25μmであってもよく、緑色のLEDの直径2~25μmであってもよく、青色のLEDの直径5~30μmであってもよい。なお、LEDの直径は平面視における最大長をいう。
【0056】
パターニングミラー30の光透過部31に光を効率良く透過させることができる観点からは、画素を小さくすることが好ましい。赤色のLED12R、緑色のLED12G、青色のLED12Bを、1:1:1で配置する場合、一つのLEDの直径は、例えば、2~10μmであってもよい。このようなマイクロLEDを用いることで高精細とすることができる。例えば画素サイズ(LEDの直径)を5μmとして、パターニングミラー30に一辺が10μmの正方形の光透過部31を設けた場合、精細度が1,000ppiで開口率を5%とすることができる。
【0057】
(円偏光素子)
円偏光素子20は、表示パネル10の表示光を円偏光に変換して透過させる。直線偏光板と1/4波長板とを組み合わせて円偏光素子として機能させることができる。
図3は、円偏光素子が第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含む例を示した断面模式図である。上述のように、第一の直線偏光板21は、表示光を直線偏光に変換し(
図1の(i))、1/4波長板22は、上記直線偏光を円偏光に変換する(
図1の(ii))。
【0058】
図3に示したように、表示パネル10と円偏光素子20、円偏光素子20とパターニングミラー30は、空気層を介さずに積層してもよい。このような構成とすることで、表示パネル10とパターニングミラー30との距離を短くして光のロスを低減し、パターニングミラー30の光透過部31により多くの光を集めることで、表示装置100の輝度を向上させることができる。
図3及び後述する
図4は、後述する
図6のX1-X2線における断面模式図に相当する。
【0059】
第一の直線偏光板21は、特定の振動方向をもつ直線偏光を透過させるものであれば特に限定されず、表示装置の分野で一般的な偏光板を用いることができる。直線偏光板は、吸収型であってもよいし、反射型であってもよい。
【0060】
吸収型偏光板とは、特定方向に振動する光を吸収し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。吸収型偏光板は、透過軸と、上記透過軸と直交する吸収軸とを有する。吸収型の直線偏光板としては、例えば、ヨウ素化合物分子を吸着させたポリビニルアルコールを一軸延伸したフィルムをトリアセチルセルロース(TAC)で挟持したもの等が挙げられる。
【0061】
反射型偏光板とは、特定方向に振動する光を反射し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有するものである。反射型偏光板は、透過軸と、上記透過軸と直交する反射軸とを有する。反射型の直線偏光板としては、二種類の樹脂からなる共押出しフィルムを1軸延伸して得られる反射型偏光板(例えば、日東電工社製のAPCFや3M社製のDBEF)、金属細線を並べたワイヤグリッド偏光板等が挙げられる。ワイヤグリッド偏光板としては、例えば、直径10μ~100μm程度の金属細線を、20μ~200μmのピッチで並べたものが挙げられる。
【0062】
1/4波長板22は、入射光に対して1/4の位相差を与える位相差板であれ特に限定されない。1/4波長板22は、例えば波長550nmの光に対して1/4波長(厳密には、137.5nm)の面内位相差を付与する位相差板をいい、120nm以上、150nm以下の面内位相差を付与するものであればよい。
【0063】
円偏光素子20は、コレステリック液晶素子23であってもよい。
図4は、円偏光素子がコレステリック液晶素子である例を示した断面模式図である。円偏光素子20がコレステリック液晶素子23である場合、コレステリック液晶素子23は、表示パネル10から出射された表示光を円偏光に変換する(
図1の(ii))。
【0064】
本明細書では、光の進行方向に対向して光を観察した場合に、光波の電気変位ベクトルの振動方向が、光波の進行とともに時計回りに回転するものを右回りの円偏光といい、光波の進行とともに反時計回りに回転するものを左回りの円偏光という。また、円偏光は、完全な円偏光(楕円率(短軸/長軸)=1.00)のみならず、楕円率が0.90以上、1.00未満の楕円偏光も含むものとする。
【0065】
コレステリック液晶素子23としては、例えば一対の基板にコレステリック液晶を含むコレステリック液晶層が挟持されたものが挙げられる。基板に配向処理を施し、コレステリック液晶の配向方位を制御することで、右回り及び左周りの円偏光のいずれか一方向の円偏光を反射し、他方向の円偏光を透過するコレステリック液晶素子を作製することができる。コレステリック液晶層は、数μmの厚みで作製可能なため、表示パネル10とパターニングミラー30との距離を近付けることができる。表示パネル10の観察者側の基板を支持基材として用い、表示パネル10の観察者側の基板の表面にコレステリック液晶層を形成してもよい。
【0066】
(パターニングミラー)
実施形態1に係る表示装置100は、従来のハーフミラーに変えて、パターニングミラーを用いる。パターニングミラーを用いることで、透過時及び反射時の両方で光利用効率を高められることから、表示装置100全体としての輝度を高くすることができ、消費電力を低減したHMDを実現できる。
【0067】
図5は、パターニングミラーの一例を示した平面模式図である。
図5に示したように、パターニングミラー30は、複数の光透過部31及び光反射部32を有する。複数の光透過部31は、円偏光素子20から出射された円偏光の回転方向を変えずに透過させる。従来のハーフミラーは光を透過させる際に50%の光をロスしていたのに対し、パターニングミラー30を用いると、上記円偏光が光透過部31を透過することができるため、レンズ40に入射される光の量を多くすることができる。
【0068】
光反射部32は、パターニングミラー30の円偏光素子20に対向する面の反対面に設けられる。レンズ40を透過した後、円偏光選択反射素子50により選択的に反射され、再度レンズ40を透過した光は、光反射部32によりレンズ40側に再度反射される。光反射部32での反射により、円偏光の回転方向は逆向きになる。従来のハーフミラーは、光を反射させる際に50%の光をロスしていたのに対し、光反射部32で反射させることで、再度レンズ40に入射される光の量を多くすることができる。
【0069】
光反射部32は、パターニングミラー30の円偏光素子20に対向する面の反対面に設けられていればよく、パターニングミラー30の円偏光素子20に対向する面(表示パネル10側の面)には、光反射部が設けられなくてもよい。一般的に反射体を蒸着等で形成すると、裏面も光反射部となるので、この場合、反射光が映像に寄与することができ、光の利用効率は高くなる。但し、画素とパターニングミラーの距離が遠くなると、画像のボケの原因となるため、表示パネル10側の面は、ブラックレジスト等の樹脂やクロムなどのメタル等の光吸収体を設けた方が望ましい。
【0070】
光反射部32の反射率は、83%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。上記反射率は、JIS R 3220「鏡材」で規格される可視光反射率をいう。
【0071】
光透過部31の透過率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。上記透過率は、JIS K 7375で規格される全光線透過率をいう。
【0072】
図6は、
図2の表示パネルと
図5のパターニングミラーとを重ねた平面模式図である。
図6に示したように、平面視において、画素の外縁の周辺まで光反射部32を形成してもよい。画素の外縁と光反射部32との距離は、例えば1~5μmであってもよい。
【0073】
パターニングミラー30の開口率は、5%以上、40%以下であることが好ましい。パターニングミラー30の光透過部31を透過する光の量と、パターニングミラー30の光反射部32で反射される光の量とのバランスを考慮すると上記開口率の範囲とすることが好ましい。上記開口率は、10%以上、20%以下であることがより好ましい。
【0074】
上記パターニングミラー30の開口率は、下記式により求められる。下記式中、下記式中、「パターニングミラーの表面積」は、複数の光透過部31と光反射部32とを足し合わせた面積である。また、「パターニングミラーの表面積」は、表示パネル10の複数の画素が形成された表示パネル10の表示領域と重畳するパターニングミラー30の表面積を指し、表示パネル10の額縁領域と重畳するパターニングミラー30の面積は含まない。例えば、表示パネル10の表示領域上の1周期(例えば
図6の緑色のLED12Gが配置された3画素×3画素の外周に位置する8画素(図示せず)の中心を結んだ正方形)の面積に対して、その面積に重畳するパターニングミラーの光透過部の面積の合計の比率となる。
パターニングミラーの開口率(%)=(複数の光透過部の面積の合計/パターニングミラーの表面積)×100
【0075】
複数の光透過部31は、表示パネル10の表示領域と重畳する位置に配置されていてもよい。複数の光透過部31は、それぞれ複数の画素の少なくとも一つと重畳してもよく、表示パネル10から出射された光を効率よく光透過部31に透過させることができる。一つの光透過部31は、一つの画素の一部と重畳してもよいし、
図6に示したように一つの画素の全体と重畳してもよい。
【0076】
一つの光透過部31の平面視における形状(以下、平面形状ともいう)は、正方形等の正多角形、長方形、菱型、円形、楕円形、及びその組合せ等が挙げられる。表示装置100を観察者側から見た平面視において、各光透過部31は、光反射部32に囲まれていているともいえる。
【0077】
光透過部31の直径W
31は2μm~30μmであってもよい。光透過部31の直径は5μm~15μmであることがより好ましい。なお、光透過部31の直径は、一つの光透過部31の最大長をいう。複数の光透過部31のサイズは、表示パネル10の画素のサイズに合わせて適宜変更することができ、複数の光透過部31が同じサイズであってもよいし、
図5に示したように、異なるサイズの光透過部31を配置してもよい。
【0078】
複数の光透過部31の配置は、表示パネル10の画素の配置に合わせて適宜設定できるが、行方向及び列方向にマトリクス状に配置されてもよいし、一列毎に行方向に半行分ずらして配置されてもよいし、一行毎に列方向に半列分ずつずらして配置されてもよい。
【0079】
パターニングミラー30は、例えば、ガラスや樹脂板の表面に、アルミ、銀、チタン、タングステン等の金属膜を形成したものが挙げられる。ガラス板、樹脂板の基材に、光透過部31に対応する部分をマスキングし、金属膜を形成してもよい。金属膜が形成された部分が光反射部32に相当し、金属膜が形成されていない部分が光透過部31に相当する。
【0080】
金属膜を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、金属蒸着、スパッタリング等が挙げられる。金属膜の厚さは、例え50nm~200nmである。
【0081】
表示装置100の厚みを薄くし、かつ表示光のロスを少なくできる観点からは、別途基材を用いずに、近接する円偏光素子20(
図1では1/4波長板22)の表示装置100と反対側の表面に金属膜を形成してもよい。
【0082】
パターニングミラー30の他の作製方法としては、鏡を準備し、光透過部31に対応する部分を物理的に除去し、残りの鏡部分を光反射部32としてもよい。
【0083】
(レンズ)
レンズ40は、パターニングミラー30を透過した円偏光を透過させる。レンズ40は、表示パネル10に表示される表示画像の拡大像(虚像)を視認させる。
【0084】
レンズ40は、表示パネル10の画像を拡大するものであれば特に限定されないが、レンズ40を透過した光を観察者の眼に集めるように設計された非球面レンズが好ましい。レンズ40としては、屈折型のレンズであってもよいし、回折型のレンズであってもよい。
【0085】
屈折型のレンズとしては、HMDの分野で通常用いるものを用いることができ、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカスレンズ等の曲面(凸面)を有する屈折レンズが挙げられる。また、フレネルレンズを併用しても良い。屈折型のレンズは、凸面が表示パネル10側となるように配置されることが好ましい。屈折型のレンズは、波長分散の異なる2つのレンズを貼り合せたアクロマティックレンズを用いたり、複数のレンズを組み合わせたりしてもよい。例えば、レンズパワーを適切に得るために2枚のレンズを用いた光学系が一般的に用いられているが、その2枚のうち、表示装置に近いレンズには両凸レンズ、観察者に近いレンズにはパネル側を凸のフレネルレンズとした凸平レンズ、を用いるようなことが考えられる。
【0086】
回折型のレンズとしては、透過型のホログラフィック光学素子等が挙げられる。回折型のレンズとして用いる透過型のホログラフィック光学素子は、上記光の回折現象を利用することで表示パネル10の画像を結像させることができる。ホログラムフィルムとしては、入射光と出射光に相当する光を用いて、干渉露光させることで所望の光学特性を持たせたものと用いることができる。また、ホログラムフィルムの製造方法としては、近年ではCGH(Computer Generated Hologram)と呼ばれる、小エリア毎に露光していくことで所望の光学特性を得る方法もある。
【0087】
(円偏光選択反射素子)
円偏光選択反射素子50は、レンズ40を透過した円偏光を選択的に反射する。円偏光選択反射素子50は、円偏光素子20を透過した円偏光と回転方向が同じである円偏光を反射し、円偏光素子20を透過した円偏光と回転方向が反対である円偏光を透過することが好ましい。例えば、円偏光素子20を透過した円偏光が右回りで合った場合、円偏光選択反射素子50は、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。
【0088】
円偏光選択反射素子50は、反射型の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含んでもよい。反射型の直線偏光板、1/4波長板は、円偏光素子20として例示した上述の反射型の直線偏光板、1/4波長板と同様のものを用いることができる。上述の円偏光素子20が有する1/4波長板の遅相軸と、円偏光選択反射素子50が有する1/4波長板の遅相軸は、直交することが好ましい。
【0089】
円偏光選択反射素子50は、コレステリック液晶素子であってもよい。円偏光選択反射素子50がコレステリック液晶素子である場合、円偏光素子20として例示した上述のコレステリック液晶素子23と同様のものを用いることができる。コレステリック液晶素子を透過した光は円偏光である。円偏光素子20及び円偏光選択反射素子50がともにコレステリック液晶素子である場合、円偏光素子20としてコレステリック液晶素子と、円偏光選択反射素子50としてコレステリック液晶素子とは、透過した円偏光の方向(右回り、左回り)が逆であることが好ましい。
【0090】
(集光レンズ)
光利用効率を高める観点から、パターニングミラー30の光透過部31に光を集光させる集光レンズ60を配置してもよい。OLED、QD‐LED等を含む自発光パネルは、通常ランバーシアン配向であるため視野角が広いが、VRデバイスのような虚像を用いる光学系では、設計にもよるが表示装置100の法線方向に近い角度(例えば法線から±30度内)の光は映像に寄与するが、それよりも遠い角度の光はほぼ映像に寄与しない。そのため、集光レンズを配位することで光利用効率を高めることができる。
【0091】
図7は、集光レンズが配置された第一の例を示した断面模式図である。
図7に示したように、集光レンズ60は、表示パネル10と円偏光素子20との間に配置されてもよい。表示パネル10と円偏光素子20との間に配置される場合、集光レンズ60は凸部がパターニングミラー30側となるように配置されることが好ましい。円偏光素子20が第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体である場合、集光レンズ60は、表示パネル10と第一の直線偏光板21との間に配置されてもよい。
【0092】
図8は、集光レンズが配置された第二の例を示した断面模式図である。
図8に示したように、集光レンズ60は、円偏光素子20とパターニングミラー30との間に配置されてもよい。円偏光素子20とパターニングミラー30との間に配置される場合、集光レンズ60は凸部が表示パネル10側となるように配置されることが好ましい。円偏光素子20が第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体である場合、集光レンズ60は、1/4波長板22とパターニングミラー30との間に配置されてもよい。集光レンズ60と円偏光素子20との間には接着剤層61を設けてもよい。
【0093】
集光レンズ60を複数の光透過部31の少なくとも一つと重畳するように配置することで、表示パネル10から出射された光の指向性をもたせ、光透過部31に集光することができる。集光レンズ60は画素毎に配置されてもよい。集光レンズ60は、色収差を低減できるように、赤色、緑色、青色の画素毎に屈折率が最適化されたレンズを用いてもよい。
【0094】
集光レンズ60としては、マイクロレンズ、ホログラムレンズフィルム等が挙げられる。
【0095】
上記マイクロレンズは、直径が30~40μmの凸レンズであってもよい。マイクロレンズの曲率半径は20~30μmであってもよい。マイクロレンズの高さは5~20μmであってもよい。マイクロレンズは、曲面を有することが好ましく、半球、ドーム型等であってもよい。複数のマイクロレンズが並べられたマイクロレンズアレイを用いてもよい。
【0096】
上記ホログラムフィルムとしては、透過型のホログラフィックフィルムを用いてもよい。上述のマイクロレンズと同様の光学機能を記録した透過型ホログラムフィルムを用いれば、同様の集光効果が得られる。
【0097】
<実施形態2>
実施形態2に係る表示装置は、表示パネルとして液晶パネルを用いる。実施形態2において、表示パネルは、一対の基板と上記一対の基板に挟持された液晶層とを含む液晶パネルであり、円偏光素子は、第一の直線偏光板と1/4波長板との積層体を含み、表示パネルの円偏光素子と反対側に、更に第二の直線偏光板を備える。実施形態1と重複する構成については、説明を省略する。
【0098】
図9は、実施形態2に係る表示装置を模式的に示した分解断面図である。実施形態2に係る表示装置200において、表示パネル(液晶パネル)70は、一対の基板71、72と上記一対の基板71、72に挟持された液晶層73とを含む。基板71はTFT基板であってもよく、基板72は対向基板であってもよい。
【0099】
TFT基板71としては、実施形態1で例示したように、支持基板上に、互いに平行に延設された複数のゲート線と、ゲート絶縁膜を介して各ゲート線と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース線と、各ゲート線と各ソース線との交点に画素毎に配置された複数のTFTとを有するものが挙げられる。
【0100】
液晶パネルの表示モードは特に限定されず、対向電極がTFT基板71に設けられた水平配向(横電界)モードの液晶パネルであってもよいし、対向電極が液晶層73を挟んで対向基板72に設けられた垂直配向(縦電界)モードであってもよい。
【0101】
図10は、
図9に示した液晶パネルの平面模式図である。対向基板72は、支持基板と、支持基板上に形成されたブラックマトリクス及びCF層を備えるカラーフィルタ(CF)基板であってもよい。
【0102】
CF基板は、例えば、カラーフィルタ74が面内に並べられ、ブラックマトリクス75で区画された構成を有してもよい。カラーフィルタ74は、赤色のカラーフィルタ74R、緑色のカラーフィルタ74G及び青色のカラーフィルタ74Bを含んでもよい。カラーフィルタ74の配置は、行方向に赤色、緑色、青色のカラーフィルタが繰り返し並べられ、列方向に同色のカラーフィルタ74R、74G、74Bが並べられたストライプ配列であってもよい。赤色、緑色及び青色のカラーフィルタ74R、74G、74Bと重畳する画素が、それぞれ赤色、緑色、青色の画素となる。
【0103】
ブラックマトリクス75としては、液晶パネルの分野で通常用いられるものを用いることができ、例えば黒色顔料を含む樹脂からなるものであってもよい。ブラックマトリクス75は、平面視において、ゲート線及び/又はソース線と重なるように格子状に設けられてもよい。
【0104】
液晶層73は、液晶分子を含む。共通電極と画素電極との間に電圧が印加されると、液晶層73中に電界が発生し、上記電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、光の透過量を制御することができる。電圧無印加時における液晶分子の配向方位は、配向膜の規制力によって制御される。上記電圧無印加時とは、液晶層73中に一対の電極間に電圧が印加されていないか、液晶分子の閾値未満の電圧が印加された場合をいう。
【0105】
上記液晶分子は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するものであってもよく、負の値を有するものであってもよい。
Δε=(長軸方向の誘電率)-(短軸方向の誘電率)
【0106】
TFT基板と液晶層73との間及び対向基板と液晶層73との間には、それぞれ配向膜が設けられてもよい。液晶層73への電圧無印加時には、主に配向膜の働きによって液晶分子の配向が制御される。例えば、水平配向モードでは、電圧無印加時の液晶分子のチルト角(プレチルト角)が、0~5°であってもよく、好ましくは0~3°、より好ましくは0~1°である。液晶分子のチルト角は、液晶分子の長軸(光軸)がTFT基板及び対向基板の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0107】
第二の直線偏光板80は、液晶パネル70の円偏光素子20と反対側(液晶パネル70の背面側)に配置される。第一の直線偏光板21の透過軸と第二の直線偏光板80の透過軸とは直交するようにクロスニコルに配置されることが好ましい。第二の直線偏光板80としては、第一の直線偏光板21と同様のものを用いることができる。
【0108】
ノーマリーブラックモードを例に挙げると、電圧無印加時には液晶分子の配向方位は平面視において、第一及び第二の直線偏光板21、80の透過軸のいずれか一方と略平行に配向している。液晶パネルの背面から入射された光は、第二の直線偏光板80を透過し、直線偏光となる。上記直線偏光は、液晶層73を透過するが、第一の直線偏光板21を透過しないため、液晶パネルは黒表示となる。一方で、液晶層73に電圧が印加されると、液晶分子の配向方位が初期配向方位から変化し、液晶分子の長軸方向が第一及び第二の直線偏光板21、80の透過軸と角度を成すことで、第一の直線偏光板21を光が透過し、液晶パネルは白表示となる。
【0109】
実施形態2では、第一の直線偏光板21を透過した直線偏光が1/4波長板22を透過することで円偏光となる。円偏光素子として上述のコレステリック液晶素子を用いた場合、コレステリック液晶素子により反射された光が迷光となり、本来出射する光透過部31とは異なる位置や角度で観察者側に出射されることになり、映像が不鮮明に見える一因となるため、液晶パネルの表示品位を低下させるおそれがある。そのため、表示パネルとして液晶パネルを用いた実施形態2では、円偏光素子として、第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体を用いることが好ましい。
【0110】
実施形態2において、実施形態1と同様に、パターニングミラー30の光透過部31に光を集光させる集光レンズ60を配置してもよい。液晶パネルの画素の面積は、通常自発光パネルの画素の面積よりも広いため、表示光を効率よくパターニングミラー30の光透過部31に集光させることで、表示装置200の輝度を向上させることができる。
【0111】
集光レンズ60は、複数の光透過部31の少なくとも一つと重畳することが好ましく、円偏光素子20とパターニングミラー30との間に配置されてもよいし、パターニングミラー30と円偏光選択反射素子50側との間に配置されてもよい。円偏光素子20が第一の直線偏光板21と1/4波長板22との積層体である場合、集光レンズ60は、液晶パネル70と第一の直線偏光板21との間に配置されてもよし、1/4波長板22とパターニングミラー30との間に配置されてもよい。
【0112】
図11は、マイクロレンズの一例を示した平面模式図である。
図12は、パターニングミラーの他の一例を示した平面模式図である。
図13は、
図10の液晶パネルと
図11のマイクロレンズと
図12のパターニングミラーとを重ねた平面模式図である。
図11に示したように、マイクロレンズは、平面視において一つのレンズを囲むように6個のレンズが隣接する六方細密充填構造となるように配置してもよい。また、
図12、
図13に示したように、パターニングミラー30の光透過部31は、マイクロレンズと重畳するように設けられてもよい。
図12では、光透過部31の平面形状が円形である場合を例示した。
【0113】
図13に示したように、パターニングミラー30の光透過部31は、一つの画素の全体と重畳していなくてもよく、一つの画素の一部と重畳していればよい。マイクロレンズを平面視において六方細密充填構造となるように配置することで、RGBストライプ配列で画素が配置された場合に、光透過部31の位置と画素の位置を精密に合わせなくても表示装置200の輝度を高くすることができる。
【0114】
(バックライト)
実施形態2に係る表示装置200は、更に、第二の直線偏光板80の液晶パネル70と反対側に、光源を含むバックライトを備えてもよい。
【0115】
バックライトは、直下型であってもよいし、エッジライト型であってもよい。直下型のバックライトは、液晶パネルの背面に光源が配置されている。エッジライト型のバックライトは、液晶パネルの背面に配置された導光板と、上記導光板の側面に配置された光源とを有する。エッジライト型のバックライトは、光源から導光板の側面に光を入射し、導光板から液晶パネル側に光を出射する。導光板の背面に反射シートが配置されてもよく、導光板と表示装置200との間にプリズムシート、拡散シート等が配置されてもよい。
【0116】
上記バックライトは、上記光源から出射された光を、上記液晶パネルの厚み方向に沿った方向に集光させることが好ましい。上記バックライトの半値幅(全角)は、15°~30°であってもよい。上記半値幅は、IEC61747-30に準拠した方法で輝度視野角特性を測定し、最大輝度に対して半分以上の輝度となる角度範囲によって規定することができる。
【0117】
以下に指向性バックライトを例示する。
図14は、エッジライト型のバックライトの第一例を示した断面模式図である。
図14に示したように、バックライト90Aは、導光板93の側面に光源としてレーザー光源91を用い、導光板93の背面に反射板92を配置してもよい。
【0118】
導光板93としては特に限定されず、バックライトの分野で通常用いられるものを用いることができる。反射板92としては、反射型のホログラムフィルムを用いてもよい。反射型のホログラムフィルムとしては、レーザー光源91の入射光と反射板側から導光板の法線方向に沿って導光板側に出射する平行光を出射光として露光を行ったホログラムフィルム(体積型ホログラムフィルム)を用いてもよい。バックライト90Aは、光源としてレーザー光源91を用い、反射板92として反射型ホログラムフィルムを用いることで、バックライトの指向性を高めることができる。
【0119】
図15は、エッジライト型のバックライトの第二例を示した断面模式図である。
図15に示したように、バックライト90Bは、光源としてLED光源94を用い、反射板92と導光板93との間に、液晶パネル70側に凹凸形状が形成されたプリズムフィルム95を有する。反射板92としては特に限定されず、アルミニウム、銀等の反射層が形成されたものが挙げられる。バックライト90Bは、プリズムフィルム95を配置することで、指向性を高めることができる。
【0120】
図16は、直下型のバックライトの一例を示した断面模式図である。
図16に示したように、バックライト90Cは、反射板92の表面に複数のLED光源94を有し、液晶パネル70側に集光手段としてマイクロレンズフィルム96を有する。上記集光手段は、光の出射方向に光を集光できるものであれば特に限定されず、バックライトの分野で通常用いられるものを用いることができる。マイクロレンズフィルム96は、例えば、半球状のレンズを並べたものが挙げられる。反射板92としては特に限定されず、アルミニウム、銀等の反射層が形成されたものが挙げられる。バックライト90Cは、マイクロレンズフィルム96を配置することで、指向性を高めることができる。
【0121】
バックライトは、面内(例えばバックライトや表示パネルに平行な平面)の方位をx軸、上記x軸と直交するy軸と定義するときに、x軸及びy軸の両方に集光するものであってもよいし、x軸及びy軸のいずれか一方に集光させるものであってもよい。2軸方向に集光するバックライトとしては、集光手段として上記マイクロレンズフィルム96を用いたものが挙げられる。1軸方向に集光するバックライトとしては、集光手段として、かまぼこ型(半円柱)のレンズを並べたレンチキュラーレンズを用いたものが挙げられる。レンチキュラーレンズを用いる場合、液晶パネル70側と反対側に凹凸形状が形成されたプリズムフィルムを用いた逆プリズム方式のバックライトであってもよい。
【0122】
レーザー光源91、LED光源94は、それぞれ白色であってもよい。レーザー光源91が、赤色、緑色及び青色のレーザー光源を含む場合、又は、LED光源94が、赤色、緑色及び青色のLEDを含む場合、液晶パネル70の対向基板にカラーフィルタを配置せずにフィールドシーケンシャル駆動によりカラー表示を行うこともできる。
【0123】
<実施形態3>
実施形態3に係るヘッドマウントディスプレイは上記実施形態に記載の表示装置と、頭部に装着する装着部とを備える。実施形態3に係るHMDは、装着時にユーザの眼が外光から遮蔽された空間内に配置される没入型のHMDであってもよいし、眼鏡型のHMDであってもよい。
【0124】
没入型のHMDである場合、上記装着部は、表示装置をユーザの頭部へ固定する装着バンドであってもよい。HMDは、更に表示装置とユーザの顔との間に配置されたフェイスクッションを備えてもよい。眼鏡型のHMDである場合、眼鏡のレンズに相当する部分が表示装置であり、上記装着部は、ユーザの耳に掛ける眼鏡のフレームであってもよい。
【0125】
HMDの方式は、左右の眼に対して一つの表示パネルが配置される1ディスプレイ方式であってもよいし、左右の眼にそれぞれ表示パネルが配置される2ディスプレイ方式であってもよい。上記没入型のHMDは、1ディスプレイ方式及び2ディスプレイ方式に適用できる。眼鏡型のHMDは、2ディスプレイ方式に適用できる。
【0126】
HMDは、更に、音声、音楽、効果音等の音響を発生させる機能を有する音響出力部を備えてもよい。
【実施例0127】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
(実施例1―1)
実施形態1の具体例として、
図1に示した構成を有し、OLEDパネル、直線偏光板、1/4波長板、パターニングミラー、レンズ、円偏光選択反射素子をこの順で備える1ディスプレイ方式の表示装置を作成した。
【0129】
OLEDパネルとしては、赤色、緑色及び青色のOLEDを含むOLEDパネルを用いた。OLEDパネル上に、粘着材を用いて厚さ約40μmの直線偏光板及び厚さ約45μmの1/4波長板をこの順で貼り付けた。直線偏光板、1/4波長板及び粘着材の厚さの合計は120μmであった。1/4波長板の直線偏光板と反対側の表面に直接金属蒸着を行い、パターニングミラーを作製した。レンズとしては、観察者側のレンズ面の曲率半径が、パネル側のレンズ面の曲率半径よりも大きい両凸レンズを用いた。上記両凸レンズは、パネル側のレンズ面の湾曲具合が比較的急峻(例えば曲率半径50mm以下)であり、観察者側のレンズ面の湾曲具合が緩やか(例えば曲率半径80mm以上)の両凸レンズを用いてもよい。円偏光選択反射素子としては、反射型の直線偏光板の上に粘着材を用いて1/4波長板を貼り付けたものを用いた。
【0130】
図17は、実施例で用いたパターニングミラーとOLEDパネルとを重ねた平面模式図である。OLEDパネルは、発光素子として、赤色、緑色及び青色のOLEDがペンタイル配列で配置されたものを用いた。赤色、緑色及び青色のOLEDの一辺の長さbは全て12μmとし、
図17に示した間隔で、赤色、緑色及び青色のOLEDを配置した。行方向及び列方向に隣接するOLED間の距離は45umとし、疑似解像度は564ppiとした。光透過部の平面形状は、一辺aが20μmの正方形(W
31:28.3μm)とした。実施例1では、赤色、緑色及び青色のOLEDと重なる光透過部のサイズは全て同じとした。パターニングミラーの開口率は35%であった。
【0131】
(実施例1-2)
図7に示したように、OLEDパネルと直線偏光板との間に集光レンズを有する点以外は実施例1―2と同様の構成を有する。集光レンズとしてマイクロレンズを各画素と重畳するように配置した。マイクロレンズは、凸形状のレンズであり、平面形状が円形(直径φ=20μm)で、曲率半径が20μm、高さが2.5μmのドーム型のマイクロレンズを用いた。マイクロレンズは、凸形状がパターニングミラー側となるように配置した。
【0132】
(実施例1-3)
実施例1-3に係る表示装置は、マイクロレンズの曲率半径は20μmのままとし、直径を30μm、高さを7μmに変えた点以外は実施例1-2と同様の構成を有する。
【0133】
(実施例1-4)
実施例1-4に係る表示装置は、マイクロレンズの曲率半径は20μmのままとし、直径を40μm、高さを20μmに変えた点以外は実施例1-2と同様の構成を有する。
【0134】
(実施例2-1)
実施例2-1に係る表示装置は、OLEDパネル、直線偏光板、1/4波長板、パターニングミラー、レンズ、円偏光選択反射素子をこの順で備える表示装置であり、パターニングミラーの光透過部を一辺aが15μmの正方形(最大長:21.2μm)に変えた点以外は、実施例1-1と同様の構成を有する。
【0135】
(実施例2-2)
実施例2-2に係る表示装置は、OLEDパネルと直線偏光板との間に集光レンズを有する点以外は実施例2-1と同様の構成を有する。集光レンズとしては、実施例1-2と同様に、平面形状が円形(直径φ=20μm)で、曲率半径が20μm、高さが2.5μmのドーム型のマイクロレンズを用いた。
【0136】
(実施例2-3)
実施例2-3に係る表示装置は、マイクロレンズの曲率半径を20μmのままとし、直径を30μm、高さを7μmに変えた点以外は実施例2-2と同様の構成を有する。
【0137】
(実施例2-4)
実施例2-4に係る表示装置は、マイクロレンズの曲率半径を20μmのままとし、直径を40μm、高さを20μmに変えた点以外は実施例2-2と同様の構成を有する。
【0138】
<反射時の光利用効率の検討>
パターニングミラーの反射率は、JIS R 3220「鏡材」に準拠した方法で測定した。実施例1-1~1-4で用いた光透過部の一辺が20μmのパターニングミラーの開口率が約60%で銀蒸着の反射率が約95%であることから、反射率は約57%であり、実施例2-1~2-4で用いた光透過部の一辺が15μmのパターニングミラーの反射率は同様に約74%であった。従来用いられてきたハーフミラーの反射率は50%であることから、実施例1-1~1-4は、従来のハーフミラーを用いた場合と比較して、反射時の光利用効率が約1.15倍高いことが確認された。同様に、実施例2-1~2-4は、従来のハーフミラーを用いたHMDと比較して、反射時の光利用効率が約1.48倍高いことが確認された。
【0139】
<透過時の光利用効率の検討>
以下の方法で、実施例について輝度視野角のシミュレーションを行った。
図17に示したように、9個の緑色のLED、2個の赤色のLED及び2個の青色のLEDの合計13個のLEDが配置された範囲について、
図17中に点線で囲んだ中央の緑色のLEDのみを点灯させ、上記13個のLEDと重畳する13個の光透過部から出射される光の輝度を積算した。上記シミュレーションは、CYBERNET社製の「LightTools」を用いて行った。
【0140】
結果を
図18、
図19にまとめた。
図18は、実施例1-1~1-4の輝度視野角を示したグラフである。
図19は、実施例2-1~2-4の輝度視野角を示したグラフである。
図18及び
図19中、視野角は、表示装置を観察者側から見た法線方向を0°とし、上記0°から表示装置の右側に正の視野角をとり、左側に負の視野角をとった。
【0141】
図18から、パターニングミラーの光透過部が一辺が20μmの正方形である場合、マイクロレンズを配置しなかった実施例1-1と比較して、直径40μm、高さ20μmのマイクロレンズを用いた実施例1-4は、視野角0°での輝度が約2倍であった。
図19から、パターニングミラーの光透過部が一辺が15μmの正方形である場合、マイクロレンズを配置しなかった実施例2-1と比較して、直径40μm、高さ20μmのマイクロレンズを用いた実施例2-4は、視野角0°での輝度が約1.5倍であった。これらのことから、マイクロレンズを配置することで、透過時の光利用効率を向上させることができることが確認された。
【0142】
また、実施例1-4、2-4は、HMDで映像に寄与する視野の中心付近(視野角-30°~+30°の範囲)で、輝度が上昇していることから、マイクロレンズを有する表示装置をHMDに適用することで、より低消費電力なHMDを実現できることが分かった。
【0143】
従来のハーフミラーを用いたHMDと比較して、反射時及び透過時の光利用効率を加味したトータルの光利用効率は、実施例1-4では2×1.15=約2.3倍であり、実施例2-4では1.5×1.48=約2.2倍であった。