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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159716
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】リリーフ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
F16K17/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069603
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】神丸 直毅
(72)【発明者】
【氏名】▲蔭▼山 遼太
(72)【発明者】
【氏名】山本 滉
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA05
3H059BB24
3H059CD05
3H059CF02
3H059EE01
(57)【要約】
【課題】流体の圧力上昇を適切に低減し、且つ、リリーフ弁の耐久性を向上させる。
【解決手段】リリーフ弁10は、流体の流入路11と、弁室13と、流入路11と弁室13とを連通させる弁孔12と、弁室13に連通する流出路14とが形成されたケーシング1と、弁室13に設けられ、弁孔12を開閉する弁体5と、弁体5を閉弁方向へ付勢する弾性体7とを備える。リリーフ弁10は、流入路11又は流出路14に設けられた絞り弁8をさらに備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と、弁室と、前記流入路と前記弁室とを連通させる弁孔と、前記弁室に連通する流出路とが形成されたケーシングと、
前記弁室に設けられ、前記弁孔を開閉する弁体と、
前記弁体を閉弁方向へ付勢する弾性体とを備えたリリーフ弁であって、
前記流入路又は前記流出路に設けられた絞り弁をさらに備えているリリーフ弁。
【請求項2】
請求項1に記載のリリーフ弁において、
前記絞り弁は、前記流入路の内部に設けられ、
前記流入路には、雌ねじが形成され、
前記絞り弁は、前記雌ねじに対してねじ込み深さが変更可能にねじ込まれて、前記ねじ込み深さに応じて前記弁孔の開度を変化させ、
前記絞り弁の外周面と前記雌ねじとの間に、前記絞り弁のねじ込み方向に貫通する第1連通路が形成されているリリーフ弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリリーフ弁において、
前記弁体は、前記弁体の外周面が前記弁室の内周面に沿って前記弁孔の軸心方向に摺動して前記弁孔を開閉し、
前記弁体の外周面と前記弁室の内周面との間には、前記弁孔の軸心方向に貫通し、且つ、前記流出路に連通する第2連通路が形成されているリリーフ弁。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のリリーフ弁において、
前記ケーシングは、
前記弁体及び前記弾性体を収容する筒状の収容部材と、
前記収容部材の軸心方向の一端部側に取り付けられ、前記弁体が離着座する弁座と前記弁体が前記弁座に離着座することによって開閉される前記弁孔とが形成された弁体受けとを有しているリリーフ弁。
【請求項5】
請求項4に記載のリリーフ弁において、
前記弁体は、前記収容部材の軸心方向に変位することによって前記弁座に離着座し、
前記弾性体は、前記弁体を前記収容部材の軸心方向に付勢し、
前記ケーシングは、前記収容部材の前記弁体受け側とは反対側に取り付けられて前記弾性体を支持する弾性体受けをさらに有し、
前記弾性体受けは、前記収容部材に対して前記収容部材の軸心方向に変位可能に取り付けられているリリーフ弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、リリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧室と低圧室との間に組み込まれるリリーフ弁が開示されている。リリーフ弁は、高圧室と低圧室とを連通させる弁孔と、低圧室側に設けられて弁孔を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向へ付勢するばねとを有している。高圧室の流体の圧力が低いとき、弁体は、ばねの付勢力によって弁孔を閉塞する。高圧室の流体の圧力が高くなると、弁体は、ばねの付勢力に抗して開弁方向に変位し、弁孔を開放する。これにより、高圧室の流体は、弁孔を介して低圧室に流出し、高圧室の流体の圧力の上昇が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-249352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したリリーフ弁では、高圧室における流体の脈動等を要因として流体の圧力が変動し、これに伴って弁体が振動する虞がある。弁体の振動が生じると、弁体が弁座等の周囲物に接触して弁体及び周囲物が劣化する等、リリーフ弁の耐久性において問題となる。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流体の圧力上昇を適切に低減し、且つ、リリーフ弁の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたリリーフ弁は、流体の流入路と、弁室と、前記流入路と前記弁室とを連通させる弁孔と、前記弁室に連通する流出路とが形成されたケーシングと、前記弁室に設けられ、前記弁孔を開閉する弁体と、前記弁体を閉弁方向へ付勢する弾性体とを備えたリリーフ弁であって、前記流入路又は前記流出路に設けられた絞り弁をさらに備えている。
【発明の効果】
【0007】
前記リリーフ弁は、流体の圧力上昇を適切に低減し、且つ、リリーフ弁の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、リリーフ弁の縦断面図である。
図2図2は、リリーフ弁の弁室部分の拡大断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線における断面図である。
図4図4は、開弁時におけるリリーフ弁の弁室部分の拡大断面図である。
図5図5は、リリーフ弁の流入路部分の拡大断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線における断面図である。
図7図7は、変形例のリリーフ弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、リリーフ弁10の縦断面図である。リリーフ弁10は、流体の流通を制御する流体システムに設けられる。リリーフ弁10は、流体システムの流体の圧力が設定圧力を超えたときに自動的に開弁し、流体を流出させる。リリーフ弁10は、例えば、給湯装置の温水配管9に設けられる。
【0010】
リリーフ弁10は、流体が流通する流路が形成されたケーシング1と、ケーシング1に収容された弁体5及び弾性体7を備えている。流路は、流体の流入路11と、弁室13と、流入路11と弁室13とを連通させる弁孔12と、弁室13に連通する流出路14とを含む。弁体5は、弁室13に設けられ、弁室13側から弁孔12を開閉する。弾性体7は、弁室13に設けられ、弁孔12を閉弁させる方向に弁体5を付勢する。
【0011】
ケーシング1は、仮想の軸Xを軸心として軸心方向に貫通する筒状の収容部材3と、収容部材3の軸心方向の一端部側に取り付けられた弁体受け2と、収容部材3の軸心方向の他端部側に取り付けられた弾性体受け4とを有している。以下、収容部材3の軸心方向、すなわち、軸Xが延びる方向を単に「軸方向」という。
【0012】
収容部材3は、弁体5及び弾性体7を収容する。収容部材3は、例えば、鉄やステンレス等の金属製である。収容部材3の軸方向の一端部の内周面には、弁体受け2に接続される雌ねじ32が形成されている。雌ねじ32が形成された収容部材3の端部とは反対側の端部の内周面には、弾性体受け4に接続される雌ねじ33が形成されている。
【0013】
弁体受け2は、収容部材3に収容された弁体5を受ける。弁体受け2は、例えば、鉄やステンレス等の金属製である。弁体受け2は、軸方向に貫通する筒状に形成されている。弁体受け2の軸方向の一端部の外周面には、雄ねじ23が形成されている。雄ねじ23は、収容部材3の雌ねじ32に螺合している。弁体受け2の収容部材3側とは反対側の端部の外周面には、雄ねじ22が形成されている。雄ねじ22は、温水配管9等の一次側の配管に接続される。
【0014】
弁体受け2の収容部材3側には、凹部27が形成されている。凹部27は、収容部材3と同軸の有底孔である。凹部27の底部には、弁体5が離着座する弁座25が形成されている。弁座25は環状弁座であり、その内周側には、弁孔12が形成されている。弁孔12は、弁体5が弁座25に離着座することによって、開閉される。弁孔12は、凹部27と同軸の孔である。弁孔12の軸心方向は、軸方向と一致している。
【0015】
弁体受け2には、さらに流入路11が形成されている。流入路11は、弁体受け2の収容部材3側とは反対側の端から収容部材3側に向かって延びている。流入路11は、弁孔12と同軸の孔である。流入路11の収容部材3側は、弁孔12に連通している。
【0016】
弾性体受け4は、収容部材3の弁体受け2とは反対側に取り付けられ、収容部材3に収容された弾性体7を受ける。弾性体受け4は、例えば、鉄やステンレス等の金属製である。弾性体受け4は、軸方向に貫通する筒状に形成されている。弾性体受け4の軸方向の一端部の外周面には、収容部材3の雌ねじ33に螺合する雄ねじ41が形成されている。雄ねじ41は、収容部材3の雌ねじ33に対してねじ込み深さが変更可能にねじ込まれている。これにより、弾性体受け4は、収容部材3に対して軸方向に変位可能に取り付けることができる。
【0017】
弾性体受け4の収容部材3側には、凹部49が形成されている。凹部49の底部は、弾性体7を支持する支持部44を形成する。
【0018】
弾性体受け4には、さらに流出路14が形成されている。流出路14は、弾性体受け4の収容部材3側とは反対側の端から収容部材3側に向かって延びた、凹部49と同軸の孔である。流出路14の収容部材3側には、流出路14よりも流路断面積が小さく、軸方向に貫通する連通孔45が形成されている。流出路14は、連通孔45を介して凹部49に連通している。流出路14の内周面には、二次側の配管に接続される雌ねじ43が形成されている。
【0019】
弁室13は、凹部27、収容部材3及び凹部49によって区画されている。つまり、弁室13の軸X周りは、凹部27の内周面27a、収容部材3の内周面及び凹部49の内周面によって形成されている。凹部27の内周面27aは、弁室13の内周面の一例である。弁室13には、弁体5と弾性体7とが軸方向に並んだ状態で収容されている。
【0020】
図2は、リリーフ弁10の弁室13部分の拡大断面図である。弁体5は、弁座25に対向している。弁体5は、弁室13において、軸方向に変位して弁座25に離着座する。弁体5は、弾性体7に付勢されるベース51と、ベース51に取り付けられ、閉弁時に弁座25に圧接される環状のシール部材52とを有している。
【0021】
ベース51は、例えば、鉄やステンレス等の金属製である。ベース51の弁座25側の面には、円環状の環状溝58と、環状溝58の内側に位置する凹部61とが形成されている。
【0022】
シール部材52は、環状溝58に嵌め込まれている。シール部材52は、弁孔12を囲む円環状に形成され、弁座25に対向するように配置されている。シール部材52は、ベース51よりも弾性係数の大きい材料から形成されている。具体的には、シール部材52は、樹脂から形成されている。より詳しくは、シール部材52は、フッ素樹脂から形成されている。
【0023】
凹部61の周壁部の弁座25側の端部には、外周側に向かって屈曲した抜止部62が形成されている。抜止部62は、シール部材52の環状溝58からの脱落を防止する。抜止部62は、例えば、治具を凹部61に挿入して、治具により凹部61の周壁部をかしめることによって形成される。
【0024】
弁体5の変位方向は、弁室13の内周面によって軸方向に規制されている。具体的には、弁体5の変位方向は、ベース51の軸X周りの外周面53が凹部27の内周面27aにガイドされることによって規制される。
【0025】
図3は、図2のIII-III線における断面図である。図3に示すように、弁体5のベース51の軸方向と直交する断面形状は、弁体受け2の凹部27の軸方向と直交する断面形状と異なっている。具体的には、ベース51の断面形状は略矩形であり、凹部27の断面形状は円形状である。断面形状が略矩形であるベース51の各角部が、円弧状の接触面54を構成する。このため、弁体5が軸方向に変位するとき、接触面54が凹部27の内周面27aに沿って摺動する。
【0026】
ベース51の外周面53のうち接触面54以外の部分は、凹部27の内周面27aから離間する非接触面55を構成する。非接触面55と凹部27の内周面27aとの間には、軸方向に貫通する連通路56が形成されている。連通路56は、第2連通路の一例である。連通路56は、流出路14に連通している。
【0027】
弾性体7は、図1に示すように、軸方向に圧縮された状態で、弁体5と弾性体受け4との間に配置されている。弾性体7は、コイルばねである。弾性体7の軸方向の一端部は、弁体5の弾性体受け4側に形成された凹部59に収容されている。弾性体7の軸方向の他端部(弁体5側とは反対側の端部)は、弾性体受け4の凹部49に収容され、支持部44によって支持されている。弾性体7は、弁体5のベース51(図2)を軸方向に沿って弁座25側に付勢する。
【0028】
流入路11には、流体として、例えば、温水配管9からの温水が流入する。流入路11の流体の圧力が低いとき、弁体5は、弾性体7に付勢されることによって、図2に示すように弁座25に着座し、弁孔12を閉塞する。詳しくは、シール部材52が弁座25に圧接され、ベース51と弁座25との間がシール部材52によって密閉される。
【0029】
図4は、開弁時における弁体5を示した断面図である。流入路11の流体の圧力が高くなると、弁体5は、図4に示すように、弾性体7の付勢力に抗して弁座25側とは反対側に変位し、弁座25から離座する。このとき、弁体5の凹部61に流れ込んだ流体の圧力により、弁体5の接触面54(図3)は、弁体受け2の凹部27の内周面27aに沿って軸方向に摺動する。弁体5が離座することにより、シール部材52と弁座25との間に隙間が形成され、弁孔12が開放される。
【0030】
以上のように、弁体5の開弁時には、温水配管9の流体は、流入路11及び弁孔12を介して弁室13に流入する。弁室13に流入した流体は、シール部材52と弁座25との間の隙間を通過し(図4)、弁室13を介して流出路14に流れ込む。流出路14に流入した流体は、弾性体受け4に接続された二次側の配管に流出する。このように温水配管9の流体がリリーフ弁10を介して流出することにより、リリーフ弁10の一次側に接続された流体システムの流体の最高圧力を一定に抑えることができる。尚、弾性体受け4には、二次側の配管が接続されなくてもよい。この場合、流体は、流出路14から大気に直接排出される。
【0031】
弁体5のリフト、すなわち、開弁時における弁体5のシール部材52から弁座25までの軸方向の距離は、流入路11の流体の圧力に応じて変動する。流入路11の流体の圧力が低いとき、弁体5のリフトは小さくなるので、リリーフ弁10を介して流出する流体の流量は少なくなる。一方、流入路11の流体の圧力が高いとき、弁体5のリフトは大きくなるので、リリーフ弁10を介して流出する流体の流量は多くなる。したがって、リリーフ弁10では、流体システムの流体の圧力に応じて、リリーフ弁10を介して流出する流体の流量が変化し、流体システムの流体の最高圧力を一定に抑えることができる。
【0032】
温水配管9の流体の圧力が低下し、流入路11の流体の圧力が低くなると、弁体5は、図1及び図2に示すように、弾性体7の付勢力によって弁座25側に変位し、弁座25に着座する。このとき、弁体5が変位する方向が閉弁方向である。弁体5が閉弁方向に変位するときも、弁体5の接触面54は、凹部27の内周面27aに沿って軸方向に摺動する。弁体5が弁座25に着座することにより、流入路11と弁室13とが連通しなくなる(非連通状態)。
【0033】
リリーフ弁10の設定圧力、すなわち、弁体5が開弁し始める流体の圧力は、弾性体7が弁体5を弁座25側に付勢する付勢力に応じて変化する。弾性体7の付勢力は、収容部材3に対する弾性体受け4の軸方向の取付位置に応じて変化する。具体的には、弾性体受け4の軸方向における位置は、収容部材3に対する弾性体受け4のねじ込み深さ、すなわち、雌ねじ33に対する雄ねじ41のねじ込み深さに応じて変化する。
【0034】
弾性体受け4のねじ込み深さが深くなると、支持部44から弁体5までの軸方向の距離が小さくなり、弾性体受け4によって軸方向に圧縮される弾性体7の圧縮量が大きくなる。そのため、弾性体7が弁体5を付勢する付勢力が大きくなり、設定圧力が大きくなる。一方、弾性体受け4のねじ込み深さが浅くなると、弾性体7の軸方向の圧縮量が小さくなる。そのため、弾性体7が弁体5を付勢する付勢力が小さくなり、設定圧力が小さくなる。
【0035】
弾性体受け4は、弁体5に接触して、弁体5の最大リフトを規制する機能を有している。具体的には、弾性体受け4は、収容部材3側の端部に筒状のストッパ48を有している。ストッパ48は、凹部49の周壁部を形成している。
【0036】
ストッパ48は、軸方向において弁体5のベース51に対向している。弁体5が、弁座25から離れる方向、すなわち開弁方向に大きく変位したとき、ベース51はストッパ48に接触する。これにより、ベース51はそれ以上開弁方向に変位することができなくなり、弁体5の最大リフトが規制される。
【0037】
ストッパ48には、弾性体受け4の周方向に間隔をあけて形成された複数の切欠き47が形成されている。切欠き47は、弁体5側に開口し、且つ、弾性体受け4の径方向に貫通している。弁体5がストッパ48に接触したとき、切欠き47は、連通路56と隣接し、連通路56と連通する。したがって、ストッパ48によって弁体5の最大リフトが規制されているとき、弁孔12から連通路56に流入した流体は、切欠き47を介して凹部49の中に流入し、流出路14へ流出することができる。
【0038】
軸方向におけるストッパ48の位置は、弾性体受け4の収容部材3に対する軸方向の取付位置に応じて変化する。すなわち、弾性体受け4の雌ねじ33に対するねじ込み深さを深くすると、ストッパ48は軸方向において弁座25に近づく。そのため、弁体5の最大リフトは、小さくなる。一方、弾性体受け4のねじ込み深さを浅くすると、ストッパ48は軸方向において弁座25から遠ざかる。そのため、弁体5の最大リフトは、大きくなる。
【0039】
図5は、リリーフ弁10を構成する弁体受け2の流入路11部分の断面図である。流入路11の内部には、絞り弁8が設けられている。以下、流入路11及び絞り弁8について詳述する。
【0040】
流入路11の内周面には、絞り弁8が取り付けられる雌ねじ17が形成されている。すなわち、流入路11は、ねじ孔である。
【0041】
絞り弁8は、弁孔12を流通する流体の流量を変化させる。絞り弁8は、例えば、鉄やステンレス等の金属製である。絞り弁8は、軸方向に延びた形状をなしている。絞り弁8は、雌ねじ17に取り付けられる基部81と、弁孔12の開度を変化させる弁部82とを有している。
【0042】
図6は、図5のVI-VI線における断面図である。尚、図6では、絞り弁8の形状を明確に示すため、雌ねじ17の図示を省略している。絞り弁8の基部81は、軸方向に延びた形状をなし、基部81の軸方向と直交する断面形状は、非円形(円を切り欠いた形状)である。具体的には、基部81の断面形状は、互いに対向する2つの円弧と、これらの2つの円弧の両端をそれぞれつなぐ2つの平行線分とから構成される形状をなしている。基部81の外周面の円弧状の部分(円弧面)には、雄ねじ84が形成されている。
【0043】
基部81の雄ねじ84は、雌ねじ17に対してねじ込み深さが変更可能にねじ込まれる。基部81の雌ねじ17に対するねじ込み方向は、軸方向と一致する。軸方向における絞り弁8の位置は、雌ねじ17に対する基部81のねじ込み深さに応じて変化する。
【0044】
基部81の弁部82側とは反対側の端部には、嵌合溝88が形成されている。嵌合溝88には、絞り弁8を回転させるドライバ等の工具が嵌合し得る。
【0045】
基部81の外周面の円弧面以外の部分には、離間部85が形成されている。離間部85は、弁体受け2の雌ねじ17(すなわち、流入路11の内周面)から離間した部分である。離間部85と雌ねじ17との間には、軸方向に貫通する連通路86が形成されている。連通路86は、第1連通路の一例である。連通路86は、弁孔12に連通している。
【0046】
図5に示すように、弁部82は、基部81から弁孔12側に向けて突出した形状である。弁部82は、軸方向に延びた略円柱状に形成されている。弁部82の弁孔12側の端部の周縁には、円環状のテーパ面87が形成されている。テーパ面87により、弁部82の直径は端面89に向けて暫次小さくなっている。
【0047】
流入路11に流入した流体は、連通路86を通過する。弁体5の開弁時において、流体は、テーパ面87と弁孔12との間を通過して弁室13へ流出する。
【0048】
弁孔12を流通する流体の流量を変化させる場合、ユーザは、例えば、嵌合溝88に工具を嵌合し、工具により絞り弁8を軸Xを中心に回転させ、雌ねじ17に対する絞り弁8のねじ込み深さを変更する。絞り弁8のねじ込み深さが深くなると、テーパ面87と弁孔12の端部12aとの間隔が小さくなり、弁孔12の開度が小さくなる。そのため、弁体5の開弁時に弁孔12を通過する流量が少なくなる。一方、絞り弁8のねじ込み深さが浅くなると、テーパ面87と弁孔12の端部12aとの間隔が大きくなり、弁孔12の開度が大きくなる。そのため、弁体5の開弁時に弁孔12を通過する流体の流量が多くなる。なお、テーパ面87と弁孔12の端部12aとの間隔が所定間隔以上になると、流体の流量は増加せずに一定となる。
【0049】
以上の構成を有するリリーフ弁10は、絞り弁8を操作して弁孔12を通過する流体の流量を変更することにより、リリーフ弁10を流通する流体の流量を調節することができる。このため、リリーフ弁10を流通する流体の流量を、給湯装置等の機器に応じて適切な値に設定することができ、流体の圧力上昇からの機器の保護と、リリーフ弁10の耐久性の向上との両立を図ることができる。
【0050】
すなわち、給湯装置等の機器を流体の圧力上昇から適切に保護するには、開弁時のリリーフ弁10を流通する流体の流量を十分に確保する必要がある。この流量は、例えば、給湯装置の性能や給湯装置に供給される水の圧力等により、機器に応じて異なる。一方、機器において流体の脈動により流体の圧力変動が生じたときの弁体5の振動を低減するには、リリーフ弁10を流通し得る流体の流量を少なくし、リリーフ弁10における流体の流量の変動を低減する必要がある。本願に開示したリリーフ弁10においては、流通する流体の流量を、機器の流体の圧力上昇時にはリリーフ弁10から流体が適切な量流出するように、且つ、流体の脈動時にはリリーフ弁10を流通する流体が少なくなるように調節することができる。このようにリリーフ弁10を流通する流体の流量を調節することにより、機器の流体の圧力上昇時には、流体の流出量を確保しつつ、機器における流体の最高圧力を一定に抑えて、機器を保護できる。加えて、流体の脈動により機器における流体の圧力変動が生じたときには、リリーフ弁10に流入した全ての流体が弁体5に直接作用することを回避できるので、弁体5の振動を低減できる。そのため、弁体5が振動して弁座25等の周囲物に接触することを防止でき、弁体5や周囲物の劣化や損傷等を低減できる。
【0051】
加えて、絞り弁8の離間部85と雌ねじ17との間に、軸方向に貫通する連通路86を形成することにより、雌ねじ17を用いて絞り弁8をケーシング1に設けることができる。また、弁体受け2の外周に雄ねじ22が形成される場合には、弁体受け2の内周に雌ねじ17を、雄ねじ22と同軸方向において重複する位置に形成することができる。そのため、雌ねじ17を設けることに起因する、ケーシング1の軸方向の大型化を回避できる。
【0052】
また、弁体5の外周面53と弁室13の内周面との間に連通路56を形成することにより、弁室13の内周面を利用して弁体5の変位方向を規制することができる。
【0053】
また、弁座25を有する弁体受け2と、弁体5及び弾性体7を収容する収容部材3とを別部材にすることにより、弁体受け2から収容部材3を取り外した状態で、弁体受け2を加工することができる。そのため、弁体受け2の加工の際、収容部材3が邪魔にならず、弁体受け2の加工が容易になる。特に弁座25は、弁体受け2に収容部材3が取り付けられた状態では収容部材3に囲まれるため精度良く加工することが難しいが、弁体受け2から収容部材3を取り外すことにより、精度良く加工することができる。そのため、弁体5が弁座25を閉弁したときの密閉性を向上させることができる。加えて、加工後の検査において弁座25を視認する際にも収容部材3が邪魔にならず、検査を容易に行うことができる。
【0054】
また、弾性体受け4の収容部材3に対する軸方向の取付位置を変更することにより、弾性体受け4が弾性体7を支持する位置を変更し、弾性体7の軸方向の圧縮量を変更することができる。すなわち、弾性体受け4の取付位置の変更により、弾性体7が弁体5を付勢する付勢力を変更し、リリーフ弁10の設定圧力を変更することができる。したがって、機器毎に異なる流体の圧力に応じてリリーフ弁10の設定圧力を適切に調節でき、機器を流体の圧力上昇から適切に保護することができる。特に、リリーフ弁10の設定圧力を低くした場合には、弁体5は流体に押されて変位しやすくなるが、この場合でも、絞り弁8によってリリーフ弁10を流通する流体の流量を適切に設定することにより、弁体5の振動を低減できる。
【0055】
さらに、弾性体受け4は、弁体5に接触して弁体5の最大リフトを規制する。そのため、弾性体受け4の収容部材3に対する軸方向の取付位置を変更することにより、弁体5の最大リフトを調節することができる。したがって、開弁時においてリリーフ弁10を流通する流体の最大流量を機器等に応じて適切に設定することができる。
【0056】
図7は、変形例のリリーフ弁10Aの縦断面図である。この例のリリーフ弁10Aは、絞り弁8Aが流入路11ではなく流出路14に設けられていることが、リリーフ弁10と異なる。以下、リリーフ弁10Aについて、リリーフ弁10と異なる点を中心に説明する。
【0057】
絞り弁8Aは、弾性体受け4の連通孔45を流通する流体の流量を変化させる。図示は省略するが、絞り弁8Aの基部81Aの軸方向と直交する断面形状は、図6に示す基部81Aの軸方向と直交する断面形状と同様に、非円形(円を切り欠いた形状)である。基部81Aの外周面には、雄ねじが形成されている。雄ねじは、流出路14の雌ねじ43に対して、ねじ込み深さが変更可能にねじ込まれている。基部81Aの外周面と雌ねじ43の内周面との間には、軸方向に貫通する連通路86Aが形成されている。連通路86Aは、第1連通路の一例である。連通路86Aは、連通孔45に連通している。
【0058】
弁部82Aは、基部81Aから連通孔45側に向けて突出した形状である。弁部82Aの連通孔45側の端部の周縁には、円環状のテーパ面87Aが形成されている。テーパ面87Aにより、弁部82Aの直径は端面89Aに向けて暫次小さくなっている。
【0059】
弁体5の開弁時において、弁孔12から弁室13に流入した流体は、テーパ面87Aと連通孔45との間を通過し、連通路86Aを介して流出路14から流出する。
【0060】
連通孔45を流通する流体の流量を変化させる場合、ユーザは、基部81Aの嵌合溝88Aに工具を嵌合し、工具により絞り弁8Aを軸Xを中心に回転させ、雌ねじ43に対する絞り弁8Aのねじ込み深さを変更する。絞り弁8Aのねじ込み深さが深くなると、テーパ面87Aと連通孔45の端部45aとの間隔が小さくなり、連通孔45の開度が小さくなる。そのため、弁体5の開弁時に連通孔45を通過する流量が少なくなり、これに伴って弁孔12を通過する流体の流量も少なくなる。一方、絞り弁8Aのねじ込み深さが浅くなると、テーパ面87Aと連通孔45の端部45aとの間隔が大きくなり、連通孔45の開度が大きくなる。そのため、弁体5の開弁時に連通孔45を通過する流体の流量が多くなり、弁孔12を通過する流体の流量も多くなる。尚、テーパ面87Aと連通孔45の端部45aとの間隔が所定間隔以上になると、流体の流量は増加せずに一定となる。
【0061】
以上のように本開示の技術の第1側面に係るリリーフ弁10,10Aは、流体の流入路11と、弁室13と、流入路11と弁室13とを連通させる弁孔12と、弁室13に連通する流出路14とが形成されたケーシング1と、弁室13に設けられ、弁孔12を開閉する弁体5と、弁体5を閉弁方向へ付勢する弾性体7とを備えたリリーフ弁であって、流入路11又は流出路14に設けられた絞り弁8,8Aをさらに備えている。
【0062】
この構成によれば、絞り弁8,8Aを操作して弁孔12を通過する流体の流量を変更することにより、リリーフ弁10,10Aを流通する流体の流量を調節することができる。このため、リリーフ弁10,10Aを流通する流体の流量を、機器に応じて適切な値に設定することができ、流体の圧力上昇からの機器の保護と、リリーフ弁10,10Aの耐久性の向上との両立を図ることができる。
【0063】
また、本開示の技術の第2側面のリリーフ弁10では、第1側面のリリーフ弁10において、絞り弁8は、流入路11の内部に設けられ、流入路11には、雌ねじ17が形成され、絞り弁8は、雌ねじ17に対してねじ込み深さが変更可能にねじ込まれて、ねじ込み深さに応じて弁孔12の開度を変化させ、絞り弁8の外周面と雌ねじ17との間に、絞り弁8のねじ込み方向に貫通する連通路86(第1連通路)が形成されている。
【0064】
この構成によれば、雌ねじ17を用いて絞り弁8をケーシング1の内部に設けることができる。
【0065】
また、本開示の技術の第3側面のリリーフ弁10,10Aでは、第1側面又は第2側面のリリーフ弁10,10Aにおいて、弁体5は、弁体5の外周面が弁室13の内周面に沿って弁孔12の軸心方向に摺動して弁孔12を開閉し、弁体5の外周面53と弁室13の内周面との間には、弁孔12の軸心方向に貫通し、且つ、流出路14に連通する連通路56(第2連通路)が形成されている。
【0066】
この構成によれば、弁室13の内周面を利用して、弁体5の変位方向を弁孔12の軸心方向に規制することができる。
【0067】
また、本開示の技術の第4側面のリリーフ弁10,10Aでは、第1側面乃至第3側面のいずれか1つのリリーフ弁10,10Aにおいて、ケーシング1は、弁体5及び弾性体7を収容する筒状の収容部材3と、収容部材3の軸心方向の一端部に取り付けられ、弁体5が離着座する弁座25と弁体5が弁座25に離着座することによって開閉される弁孔12とが形成された弁体受け2とを有している。
【0068】
この構成によれば、弁座25を有する弁体受け2と、弁体5及び弾性体7を収容する収容部材3とが別部材であるので、弁体受け2から収容部材3を取り外した状態で弁体受け2を加工することができる。そのため、弁体受け2の加工の際、弁体受け2が邪魔にならず、弁体受け2の加工が容易になる。特に弁座25の弁体5が着座する面は、弁体受け2に収容部材3が取り付けられた状態では収容部材3に囲まれるため精度良く加工することが難しいが、弁体受け2から収容部材3を取り外すことによって精度良く加工することができる。そのため、弁体5が弁座25を閉弁したときの密閉性を向上させることができる。
【0069】
また、本開示の技術の第5側面のリリーフ弁10,10Aでは、第4側面のリリーフ弁10,10Aにおいて、弁体5は、収容部材3の軸心方向に変位することによって弁座25に離着座し、弾性体7は、弁体5を収容部材3の軸心方向に付勢し、ケーシング1は、収容部材3の弁体受け2側とは反対側に取り付けられて弾性体7を支持する弾性体受け4をさらに有し、弾性体受け4は、収容部材3に対して収容部材3の軸心方向に変位可能に取り付けられている。
【0070】
この構成によれば、弾性体受け4の収容部材3に対する取付位置を収容部材3の軸心方向に変位させ、弾性体受け4が弾性体7を支持する位置を変更することにより、弾性体7が弁体5を付勢する付勢力を変更し、リリーフ弁10,10Aの設定圧力を変更することができる。したがって、機器毎に異なる流体の圧力に応じてリリーフ弁10,10Aの設定圧力を適切に調節でき、機器を流体の圧力上昇から適切に保護することができる。
【0071】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0072】
例えば、リリーフ弁10,10Aは、給水装置、圧力容器又はボイラ等の給湯装置以外の装置に設けられてもよい。リリーフ弁10,10Aの対象流体は、水に限定されず、水以外の液体又は気体であってもよい。リリーフ弁10,10Aの取付対象は、配管に限定されず、タンク等であってもよい。
【0073】
ケーシング1を形成する部材の数は、3つに限定されない。ケーシング1は、1つのみ、2つのみ、又は4つ以上の部材から形成されてもよい。例えば、ケーシング1は、弁体受け2と収容部材3とが一体に形成された部材と、弾性体受け4との2つの部材によって形成されてもよい。弁体受け2、収容部材3及び弾性体受け4のそれぞれの材料及び形状は、限定されない。
【0074】
弁体5は、ベース51とシール部材52との2つの部材で形成されているが、1つの部材で形成されてもよい。例えば、弁体5は、鉄やステンレス等の金属部材のみで形成されてもよい。ベース51及びシール部材52の材料は、限定されない。例えば、ベース51は、鉄やステンレス以外の金属から形成されてもよいし、金属以外の材料から形成されてもよい。シール部材52は、フッ素樹脂以外の樹脂から形成されてもよいし、鉄やステンレス等の金属から形成されてもよい。
【0075】
弾性体7は、コイルばねに限定されない。弾性体7は、コイルばね以外のばねであってもよいし、ゴムであってもよい。
【0076】
絞り弁8、8Aの材料、形状及び大きさは、限定されない。絞り弁8,8Aは、弁孔12を流通する流体の流量を調整可能であれば、雌ねじ17,43に取り付けられるものに限定されない。
【符号の説明】
【0077】
10,10A リリーフ弁
1 ケーシング
11 流入路
12 弁孔
13 弁室
14 流出路
17 雌ねじ
2 弁体受け
25 弁座
3 収容部材
4 弾性体受け
5 弁体
56 連通路(第2連通路)
7 弾性体
8,8A 絞り弁
86 連通路(第1連通路)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7