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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159737
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/14 20220101AFI20231025BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20231025BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20231025BHJP
   F24H 15/225 20220101ALI20231025BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20231025BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20231025BHJP
   F24H 15/375 20220101ALN20231025BHJP
【FI】
F24H15/14
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/225
F24H15/238
F24H4/02 F
F24H15/375
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069637
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA13
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA63
3L122AB22
3L122AB33
3L122BB03
3L122BB25
3L122BB26
3L122BB27
3L122BB28
3L122DA21
3L122EA47
3L122EA56
(57)【要約】
【課題】タンク滅菌運転の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する給湯システムは、貯湯タンクと、タンク循環路と、タンク循環ポンプと、ヒートポンプと、コントローラを備える。コントローラは、滅菌実施条件が成立すると、タンク循環ポンプによって貯湯タンクとヒートポンプの間で湯水を循環させ、ヒートポンプで湯水を加熱するタンク滅菌運転を実行する。タンク滅菌運転は、ヒートポンプから流出する湯水の温度が第1目標温度となるようにタンク循環ポンプとヒートポンプの動作を制御する予備加熱処理と、予備加熱処理の終了後に、ヒートポンプから流出する湯水の温度が第1目標温度よりも高い第2目標温度となるようにタンク循環ポンプとヒートポンプの動作を制御するメイン加熱処理を含む。メイン加熱処理での湯水の昇温幅は、予備加熱処理での湯水の昇温幅よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に給水路が接続されると共に上部に出湯路が接続され、湯水が貯められる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、
前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、
前記タンク循環路の途中に設けられており、前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、
コントローラと、を備えており、
前記コントローラは、所定の滅菌実施条件が成立したときに、前記タンク循環ポンプによって前記貯湯タンクと前記ヒートポンプの間で湯水を循環させ、前記ヒートポンプによって湯水を加熱するタンク滅菌運転を実行するように構成されており、
前記タンク滅菌運転は、
前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が第1目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、予備加熱処理と、
前記予備加熱処理の終了後に、前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が前記第1目標温度よりも高い第2目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、メイン加熱処理と、を含んでおり、
前記メイン加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅が、前記予備加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅よりも小さい、給湯システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記メイン加熱処理の実行中、前記ヒートポンプへ流入する湯水の温度が閾値温度以上となった場合、前記ヒートポンプによる湯水の加熱を停止するように構成されており、
前記閾値温度は、前記第1目標温度以上であり、かつ前記第2目標温度よりも低い温度に設定されている、請求項1の給湯システム。
【請求項3】
前記タンク滅菌運転は、所定の均一化終了条件が成立するまでの間、前記ヒートポンプの駆動を停止した状態で前記タンク循環ポンプを駆動する、貯湯温均一化処理をさらに含んでおり、
前記コントローラは、前記予備加熱処理の終了後であって、前記メイン加熱処理の開始前に、前記貯湯温均一化処理を実行するように構成されている、請求項1の給湯システム。
【請求項4】
外気温度を検出する外気温度センサをさらに備えており、
前記コントローラは、前記メイン加熱処理において、
前記外気温度センサの検出温度が所定の基準温度以上である場合には、前記ヒートポンプを第1加熱能力で駆動し、
前記外気温度センサの前記検出温度が前記基準温度を下回る場合には、前記ヒートポンプを前記第1加熱能力よりも低い第2加熱能力で駆動するように構成されている、請求項1から3の何れか一項の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下部に給水路が接続されると共に上部に出湯路が接続され、湯水が貯められる貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、前記タンク循環路の途中に設けられており、前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、コントローラと、を備える給湯システムが開示されている。前記コントローラは、所定の滅菌実施条件が成立したときに、前記タンク循環ポンプによって前記貯湯タンクと前記ヒートポンプの間で湯水を循環させ、前記ヒートポンプによって湯水を加熱するタンク滅菌運転を実行するように構成されている。前記タンク滅菌運転は、前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が第1目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、予備加熱処理と、前記予備加熱処理の終了後に、前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が前記第1目標温度よりも高い第2目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、メイン加熱処理と、を含んでいる。前記メイン加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅は、前記予備加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅と同等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-094505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給湯システムでは、貯湯タンク内の湯水が一定期間使用されない場合、レジオネラ属菌などの細菌が水中で増殖する可能性がある。このため、所定の滅菌実施条件が成立する場合には、貯湯タンク内の湯水を滅菌するためのタンク滅菌運転を実行する必要がある。タンク滅菌運転では、貯湯タンク内の湯水を、上記の細菌を滅菌可能な温度(例えば60℃以上の温度)まで昇温加熱する。この際に、特許文献1の給湯システムのように、貯湯タンクの湯水を段階的に沸き上げることで、ヒートポンプの圧縮機に過大な負荷をかけることなく、ヒートポンプを駆動することができる。
【0005】
しかしながら、上記のように、タンク滅菌運転において、貯湯タンク内の湯水を段階的に沸き上げる構成とすると、予備加熱処理からメイン加熱処理に切り替わる際の切替速度(昇温速度)が遅い場合、湯水が中途半端な温度に加熱されることで、貯湯タンク内に中間温度成層が形成されてしまう。ここで、タンク滅菌運転の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲が大きいと、滅菌効果が不十分になるなどの不具合を招く可能性がある。本明細書では、タンク滅菌運転の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することが可能な技術を提供する。
【0006】
なお、本明細書では、低温の湯水の層の上に高温の湯水の層が積み重なっている状態を「温度成層」と呼ぶ。また、中途半端な温度に加熱された湯水によって形成される温度成層を「中間温度成層」と呼ぶ。そして、貯湯タンクの容積に対する中間温度成層の容積の割合を「中間温度成層の成層範囲」と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する給湯システムは、下部に給水路が接続されると共に上部に出湯路が接続され、湯水が貯められる貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、前記タンク循環路の途中に設けられており、前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、コントローラと、を備えている。前記コントローラは、所定の滅菌実施条件が成立したときに、前記タンク循環ポンプによって前記貯湯タンクと前記ヒートポンプの間で湯水を循環させ、前記ヒートポンプによって湯水を加熱するタンク滅菌運転を実行するように構成されている。前記タンク滅菌運転は、前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が第1目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、予備加熱処理と、前記予備加熱処理の終了後に、前記ヒートポンプから流出する湯水の温度が前記第1目標温度よりも高い第2目標温度となるように、前記タンク循環ポンプおよび前記ヒートポンプの動作を制御する、メイン加熱処理と、を含んでいる。前記メイン加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅は、前記予備加熱処理における前記ヒートポンプでの湯水の昇温幅よりも小さい。なお、本明細書では、各処理(予備加熱処理やメイン加熱処理)におけるヒートポンプへの入水温度と、ヒートポンプからの出湯温度との間の温度幅を「昇温幅」と呼ぶ。
【0008】
一般的に、ヒートポンプでの加熱開始時または温度切り替え時における湯水の昇温幅が大きいほど、湯水の温度の立ち上がりが遅くなり、中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大するため、形成される中間温度成層の成層範囲も増大する。上記の構成によれば、メイン加熱処理での昇温幅を予備加熱処理での昇温幅よりも小さくすることで、メイン加熱処理において、中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減することができ、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【0009】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記コントローラは、前記メイン加熱処理の実行中、前記ヒートポンプへ流入する湯水の温度が閾値温度以上となった場合、前記ヒートポンプによる湯水の加熱を停止するように構成されている。前記閾値温度は、前記第1目標温度以上であり、かつ前記第2目標温度よりも低い温度に設定されている。
【0010】
タンク滅菌運転のメイン加熱処理では、貯湯タンク内の湯水は高温である第2目標温度まで加熱される。このため、仮にメイン加熱処理において、ヒートポンプに第2目標温度の湯水が流入するまでヒートポンプによる湯水の加熱を継続してしまうと、高温の湯水が流入して、ヒートポンプの圧縮機にかかる負荷が過大となったり、ヒートポンプにおける加熱効率が低下したりするおそれがある。これに対し、上記の構成によれば、メイン加熱処理において、第2目標温度よりも低い閾値温度の湯水が流入する場合に、ヒートポンプによる湯水の加熱を停止するので、ヒートポンプに高温の湯水が流入することを抑制できる。このため、圧縮機にかかる負荷が過大となったり、ヒートポンプにおける加熱効率が低下したりすることを抑制できる。なお、メイン加熱処理に先立つ予備加熱処理において、貯湯タンク内の湯水は第1目標温度まで加熱されているので、仮に閾値温度が第1目標温度を下回っていると、メイン加熱処理の開始直後にヒートポンプでの湯水の加熱動作が停止してしまい、滅菌効果が不十分となるおそれがある。上記の構成によれば、閾値温度が第1目標温度以上の温度に設定されているので、メイン加熱処理の開始直後にヒートポンプでの湯水の加熱動作が停止してしまうことを抑制することができ、滅菌効果を十分に確保することができる。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記タンク滅菌運転は、所定の均一化終了条件が成立するまでの間、前記ヒートポンプの駆動を停止した状態で前記タンク循環ポンプを駆動する、貯湯温均一化処理をさらに含んでいる。前記コントローラは、前記予備加熱処理の終了後であって、前記メイン加熱処理の開始前に、前記貯湯温均一化処理を実行するように構成されている。
【0012】
予備加熱処理の終了後には、貯湯タンクの下部に第1目標温度より低い温度の湯水が存在することもあれば、貯湯タンクの上部に第1目標温度より高い温度の湯水が存在することもある。このように、貯湯タンク内の湯水の温度が不均一な状態で、メイン加熱処理が開始されると、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大し、メイン加熱処理の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲も増大する可能性がある。上記の構成では、予備加熱処理の終了後、メイン加熱処理の開始前に、貯湯温均一化処理において、タンク循環ポンプの循環によって貯湯タンク内の湯水を撹拌することで、貯湯タンク内の湯水の温度を均一化することができる。したがって、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減し、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記給湯システムは、外気温度を検出する外気温度センサをさらに備えている。前記コントローラは、前記メイン加熱処理において、前記外気温度センサの検出温度が所定の基準温度以上である場合には、前記ヒートポンプを第1加熱能力で駆動し、前記外気温度センサの検出温度が前記基準温度を下回る場合には、前記ヒートポンプを前記第1加熱能力よりも低い第2加熱能力で駆動するように構成されている。
【0014】
外気温度が低い状況において、ヒートポンプによる湯水の加熱を行うと、ヒートポンプの蒸発器に着霜してしまうことがある。ヒートポンプによる湯水の加熱の実行中に、蒸発器に着霜すると、ヒートポンプによる湯水の加熱を一時的に中断して、除霜運転を実行する必要がある。仮に、メイン加熱処理の実行中に除霜運転が実行されると、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大し、メイン加熱処理の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲も増大する可能性がある。これに対し、上記の構成によれば、外気温度が低い状況では、ヒートポンプの加熱能力を低く抑えた状態でメイン加熱処理を実行する。このため、メイン加熱処理の実行中に蒸発器に着霜することを抑制することができ、ヒートポンプによる湯水の加熱を一時的に中断して除霜運転を実行する事態の発生を抑制することができる。したがって、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減し、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1から3に係る給湯システム2の構成を模式的に示す図である。
図2】実施例1に係る給湯システム2において、コントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
図3】実施例1に係るタンク滅菌運転が実行されている間の、タンク30の上部の湯水の温度と、タンク30の下部の湯水の温度の時間変化を模式的に示した図である。
図4】実施例2に係る給湯システム2において、コントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
図5】実施例2に係るタンク滅菌運転が実行されている間の、タンク30の上部の湯水の温度と、タンク30の下部の湯水の温度の時間変化を模式的に示した図である。
図6】実施例3に係る給湯システム2において、コントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
図7】実施例3に係るタンク滅菌運転が実行されている間の、タンク30の上部の湯水の温度と、タンク30の下部の湯水の温度の時間変化を模式的に示した図である。
図8】特許文献1に開示されている給湯システムにおいて、タンク滅菌運転が実行されている間の、タンクの上部の湯水の温度と、タンクの下部の湯水の温度の時間変化を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
図1に示すように、本実施例に係る給湯システム2は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。
【0017】
HPユニット4は、外気から吸熱して湯水を加熱するヒートポンプ10を備える。ヒートポンプ10は、圧縮機11と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16を備えている。圧縮機11は、冷媒(例えばフロン系冷媒)を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、HP往き管26から流入してHP戻り管28に流出する湯水との熱交換により冷媒を冷却する。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、外気との熱交換により冷媒を加熱する。ヒートポンプ10は、冷媒を、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、蒸発器16において外気から吸熱して、凝縮器12において湯水を加熱する。
【0018】
ヒートポンプ10はまた、除霜弁19と、除霜経路19aを備えている。除霜経路19aは、凝縮器12と膨張弁14との間と、膨張弁14と蒸発器16との間に、膨張弁14をバイパスして接続されている。除霜弁19は、平常時は閉じられており、後述する除霜運転が実行されるときに開かれる。
【0019】
HP往き管26には、凝縮器12に向けて湯水を流動させる循環ポンプ18と、HP往き管26を流れる湯水の温度を検出する往きサーミスタ20が取り付けられている。HP戻り管28には、HP戻り管28を流れる湯水の温度を検出する戻りサーミスタ22が取り付けられている。HPユニット4は、外気温度を検出する外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24をさらに備えている。
【0020】
タンクユニット6は、タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34を備えている。タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に湯水を蓄える密閉型の容器である。本実施例のタンク30の容量は、例えば100リットルである。タンク30の下部にはHP往き管26が連通しており、タンク30の上部にはHP戻り管28が連通している。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、タンク30の下部から湯水が吸い出されてヒートポンプ10の凝縮器12へ送られる。ヒートポンプ10で加熱されて高温となった湯水は、タンク30の上部からタンク30内に戻される。ヒートポンプ10によって加熱された湯水がタンク30に流れ込むと、タンク30の内部には、低温の湯水の層の上に高温の湯水の層が積み重なった温度成層が形成される。タンク30には、上部の湯水の温度を検出する上部サーミスタ36と、下部の湯水の温度を検出する下部サーミスタ38が取り付けられている。
【0021】
タンクユニット6には、給水管40を介して水道水が供給される。給水管40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度を検出する入水サーミスタ44が取り付けられている。給水管40は、タンク30の下部に連通するタンク給水管46と、混合弁32に連通するタンクバイパス管48に分岐している。タンク給水管46とタンクバイパス管48には、それぞれ逆止弁50、52が取り付けられている。また、タンクバイパス管48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水側水量センサ54が取り付けられている。タンク30の上部と混合弁32は、タンク出湯管56を介して連通している。タンク出湯管56には、逆止弁58と、混合弁32に流入するタンク30からの湯水の流量を検出する湯側水量センサ60が取り付けられている。
【0022】
混合弁32は、タンクバイパス管48から流れ込む水道水と、タンク出湯管56から流れ込むタンク30からの湯水を混合して、第1給湯管62に送り出す。混合弁32は、ステッピングモータによって弁を駆動し、タンクバイパス管48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯管56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯管62には、混合弁32から送り出される湯水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。
【0023】
タンクユニット6からは、第2給湯管66を介して、台所やシャワー、カラン等の給湯箇所への給湯が行われる。第2給湯管66には、給湯箇所へ供給される湯水の温度を検出する給湯出口サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。第1給湯管62と第2給湯管66の間は、給湯バイパス管72によって連通している。給湯バイパス管72には、バイパス制御弁34が取り付けられている。
【0024】
タンクユニット6はさらに、タンクコントローラ74と、タンクコントローラ74と通信可能なリモコン76を備えている。タンクコントローラ74は、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御する。リモコン76は、スイッチやボタン等を介して、ユーザからの各種の操作入力を受け入れる。また、リモコン76は、表示や音声によってユーザに給湯システム2の設定や動作に関する各種の情報を通知する。
【0025】
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88を備えている。バーナ80は、ガスの燃焼によって熱交換器82を流れる湯水を加熱する熱源である。熱交換器82には、バーナ往き管90を介して、タンクユニット6の第1給湯管62からの湯水が流れ込む。熱交換器82を通過した湯水は、バーナ戻り管92を介して、タンクユニット6の第2給湯管66へ流れ出る。バーナ往き管90には、熱交換器82へ流れ込む湯水の流量を調整する水量サーボ86が取り付けられている。バーナ往き管90とバーナ戻り管92の間は、バーナバイパス管94を介して連通している。バーナ往き管90とバーナバイパス管94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往き管90からバーナバイパス管94へ流れる湯水の流量を調整する。バーナ戻り管92には、熱交換器82から流れ出る湯水の温度を検出するバーナ給湯サーミスタ96が取り付けられている。バーナ戻り管92からは、湯はり管98が分岐している。湯はり管98には、湯はり弁88が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり管98を介して、給湯箇所である浴槽への湯はりが行われる。バーナユニット8はさらに、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御するバーナコントローラ100を備えている。
【0026】
HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、互いに通信可能である。従って、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100が協調して制御を行うことで、給湯システム2は沸上げ運転や給湯運転等の各種の動作を行うことができる。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100を総称して、単にコントローラとも呼ぶ。
【0027】
以下では、給湯システム2の主要な動作について説明する。
【0028】
(沸上げ運転)
沸上げ運転では、給湯システム2は、HPユニット4を駆動して、タンク30内の湯水を沸かし上げる。沸上げ運転を開始するタイミングは、様々な観点から設定することが可能である。例えば、前日までの給湯実績に基づいて、大きな給湯需要の発生が予想される時刻の直前に、タンク30の湯水の沸かし上げが終了するように、コントローラが沸上げ運転の開始タイミングを決定してもよい。あるいは、ユーザがリモコン76を介してタンク30の湯水の沸かし上げを指示することで、コントローラが沸上げ運転を開始してもよい。
【0029】
沸上げ運転が開始されると、コントローラは、圧縮機11を駆動して、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で湯水を循環させる。これによって、タンク30の下部から吸い出された湯水は、凝縮器12において、所定の沸上げ温度(例えば45℃)まで加熱されて、タンク30の上部に戻される。タンク30内の湯水が全て沸上げ温度まで加熱された湯水で置き換えられると、コントローラは、沸上げ運転を終了する。
【0030】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯設定温度の湯水を給湯箇所へ供給する。本実施例の給湯システム2では、例えば水側水量センサ54で検出される水量と、湯側水量センサ60で検出される水量を合算した水量(給湯水量)が、所定値以上となった場合に、給湯運転を開始する。
【0031】
給湯運転が開始されると、コントローラは、タンク30が湯切れをしているか否かを判断する。本実施例では、コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度を下回った場合に、タンク30が湯切れしたものと判断する。
【0032】
タンク30が湯切れしていない場合、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を禁止する。また、コントローラは、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の湯水と、給水管40から供給される低温の水道水が、混合弁32において給湯設定温度となるように混合されて、給湯箇所へ供給される。
【0033】
タンク30が湯切れしている場合、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を許可する。また、コントローラは、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度よりもわずかに低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の湯水と、タンクバイパス管48から供給される低温の水道水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって給湯設定温度まで加熱されて、給湯箇所へ供給される。
【0034】
コントローラは、例えば水側水量センサ54で検出される水量と、湯側水量センサ60で検出される水量を合算した水量(給湯水量)が、所定値を下回った場合に、バーナ80の燃焼運転を禁止して、給湯運転を終了する。
【0035】
(タンク滅菌運転)
タンク滅菌運転は、タンク30内の湯水に雑菌が繁殖しているおそれがある場合に、タンク30の湯水を殺菌可能な高温(例えば65℃)まで加熱する運転である。コントローラは、所定の滅菌実施条件が成立したときに、HPユニット4のヒートポンプ10および循環ポンプ18を駆動して、タンク滅菌運転を開始する。所定の滅菌実施条件とは、例えば、タンク30の上部の湯水が、低温(例えば60℃以下の温度)のまま長時間(例えば72時間以上)滞留していると判断されることである。
【0036】
図2に示すように、タンク滅菌運転が開始されると、S2において、コントローラは、外気温度サーミスタ23で検出される外気温度が、第1基準温度(例えば10℃)を下回るか否かを判断する。外気温度が第1基準温度を下回る場合(YESの場合)、処理はS4へ進む。
【0037】
S4では、コントローラは、ヒートポンプ10の加熱能力を予備加熱能力(例えば2.8kw)に設定する。S4の後、処理はS6へ進む。
【0038】
S6では、コントローラは、タンク30内の湯水の循環加熱を実行する。コントローラは、ヒートポンプ10の圧縮機11を駆動して、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で湯水を循環させる。これによって、タンク30の下部から吸い出された湯水は、凝縮器12で加熱されて、タンク30の上部に戻される。この時、コントローラは、戻りサーミスタ22で検出される温度(HP戻り温度)が第1目標温度(例えば45℃)となるように循環ポンプ18の能力を制御する。S6の後、処理はS8へ進む。
【0039】
S8では、コントローラは、第1目標温度から下部サーミスタ38で検出される温度(タンク30の下部の湯水の温度)を引いた時の差が第1所定値(例えば5℃)以下であるか否かを判断する。第1目標温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第1所定値を上回る場合(NOの場合)、処理はS6に戻る。第1目標温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第1所定値以下である場合(YESの場合)、処理はS10へ進む。
【0040】
S10では、コントローラは、ヒートポンプ10の加熱能力を第1メイン加熱能力(例えば2.0kw)に設定する。S10の後、処理はS12へ進む。
【0041】
S12では、コントローラは、タンク30内の湯水の循環加熱を実行する。コントローラは、ヒートポンプ10の圧縮機11を駆動して、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で湯水を循環させる。これによって、タンク30の下部から吸い出された湯水は、凝縮器12で加熱されて、タンク30の上部に戻される。この時、コントローラは、戻りサーミスタ22で検出されるHP戻り温度が第2目標温度(例えば65℃)となるように循環ポンプ18の能力を制御する。S12の後、処理はS14へ進む。
【0042】
S14では、コントローラは、往きサーミスタ20で検出される温度(HP往き温度)が、所定の閾値温度(例えば47℃)以上であるか否かを判断する。HP往き温度が閾値温度を下回る場合(NOの場合)、処理はS12に戻る。HP往き温度が閾値温度以上である場合(YESの場合)、コントローラは、ヒートポンプ10および循環ポンプ18の駆動を停止して、図2に示す処理を終了する。
【0043】
S2において、外気温度が第1基準温度以上である場合(NOの場合)、処理はS20へ進む。S20では、コントローラは、ヒートポンプ10の加熱能力を通常加熱能力(例えば2.4kw)に設定する。S20の後、処理はS22へ進む。
【0044】
S22では、コントローラは、タンク30内の湯水の循環加熱を実行する。コントローラは、圧縮機11を駆動して、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で湯水を循環させる。これによって、タンク30の下部から吸い出された湯水は、凝縮器12で加熱されて、タンク30の上部に戻される。この時、コントローラは、戻りサーミスタ22で検出されるHP戻り温度が第2目標温度(S12と同様)となるように循環ポンプ18の能力を制御する。S22の後、処理はS24へ進む。
【0045】
S24では、コントローラは、HP往き温度が閾値温度(S14と同様)以上であるか否かを判断する。HP往き温度が閾値温度を下回る場合(NOの場合)、処理はS22に戻る。HP往き温度が閾値温度以上である場合(YESの場合)、コントローラは、ヒートポンプ10および循環ポンプ18の駆動を停止して、図2に示す処理を終了する。
【0046】
本実施例では、図2のS4からS8までの処理を「予備加熱処理」と呼ぶ。図2のS10からS14までの処理を「メイン加熱処理」と呼ぶ。図2のS20からS24までの処理を「通常加熱処理」と呼ぶ。
【0047】
例えば外気温度が4℃である場合に本実施例のタンク滅菌運転が開始されると、コントローラは、図2のS2の処理でYESと判断して、予備加熱処理とメイン加熱処理を順に実行する。この場合、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度は、それぞれ図3に示すように推移する。一方、同一条件下で従来のタンク滅菌運転を実行する場合、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度は、それぞれ図8に示すように推移する。
【0048】
(従来技術との比較)
図8に示す従来のタンク滅菌運転では、予備加熱処理での湯水の昇温幅は約30℃であり、メイン加熱処理での湯水の昇温幅も約30℃である。一方で、図3に示す本実施例のタンク滅菌運転では、予備加熱処理での湯水の昇温幅は約40℃であり、メイン加熱処理での湯水の昇温幅は約20℃である。本実施例のタンク滅菌運転では、従来のタンク滅菌運転とは異なり、メイン加熱処理での湯水の昇温幅が、予備加熱処理での湯水の昇温幅よりも小さくなっている。その結果、本実施例のタンク滅菌運転では、メイン加熱処理の終了時(すなわち、タンク滅菌運転の終了時)におけるタンク30の下部の湯水の温度は、従来のタンク滅菌運転の場合と比較して約10℃ほど高くなっている。すなわち、本実施例のタンク滅菌運転では、タンク滅菌運転の終了後に形成される中間温度成層の温度幅は、従来のタンク滅菌運転の場合と比較して約10℃ほど低減される。
【0049】
また、本実施例のタンク滅菌運転では、メイン加熱処理での湯水の昇温幅が、従来のタンク滅菌運転と比較して約10℃ほど低減されるともいえる。このため、本実施例のタンク滅菌運転では、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量が比較的低減され、タンク滅菌運転の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲も比較的低減される。
【0050】
以上より、本実施例のタンク滅菌運転では、中間温度成層の温度幅の低減効果と中間温度成層の成層範囲の低減効果が相まって、従来のタンク滅菌運転の場合と比較して、タンク滅菌運転の滅菌効果が向上される。
【0051】
(除霜運転)
外気温度が低い状況において、ヒートポンプ10を駆動すると、蒸発器16に着霜してしまうことがある。蒸発器16に着霜すると、外気との熱交換率が低下し、ヒートポンプ10における加熱効率が低下する。そこで、コントローラは、ヒートポンプ10によってタンク30の湯水の加熱の実行中に、蒸発器16に着霜したと判断される場合には、ヒートポンプ10によるタンク30の湯水の加熱を中断するとともに、循環ポンプ18の駆動を停止して、蒸発器16を除霜する除霜運転を実行する。具体的には、コントローラは、一時的に除霜弁19を開くことにより、圧縮機11から吐出した高温の冷媒を凝縮器12に通過させ、冷媒が膨張弁14をバイパスして蒸発器16に流れるようにする。これにより、蒸発器16に高温の冷媒が流れるため、蒸発器16が除霜される。
【0052】
(実施例1の対応関係)
以上のように、給湯システム2は、下部にタンク給水管46(給水路の例)が接続されると共に上部にタンク出湯管56(出湯路の例)が接続され、湯水が貯められるタンク30(貯湯タンクの例)と、タンク30の下部と上部を接続したHP往き管26およびHP戻り管28(タンク循環路の例)と、タンク30の下部に貯まった湯水を、HP往き管26およびHP戻り管28を介してタンク30の上部に循環させる循環ポンプ18と、HP往き管26とHP戻り管28の間(タンク循環路の途中の例)に設けられており、HP往き管26およびHP戻り管28を流通する湯水を加熱するヒートポンプ10と、コントローラを備えている。コントローラは、所定の滅菌実施条件が成立したときに、循環ポンプ18によってタンク30とヒートポンプ10の間で湯水を循環させ、ヒートポンプ10によって湯水を加熱するタンク滅菌運転を実行するように構成されている。タンク滅菌運転は、HP戻り温度(ヒートポンプから流出する湯水の温度の例)が第1目標温度となるように、循環ポンプ18およびヒートポンプ10の動作を制御する予備加熱処理と、予備加熱処理の終了後に、HP戻り温度が第1目標温度よりも高い第2目標温度となるように、循環ポンプ18およびヒートポンプ10の動作を制御するメイン加熱処理を含む。メイン加熱処理におけるヒートポンプ10での湯水の昇温幅は、予備加熱処理におけるヒートポンプ10での湯水の昇温幅よりも小さい。
【0053】
一般的に、ヒートポンプ10での加熱開始時または温度切り替え時における湯水の昇温幅が大きいほど、湯水の温度の立ち上がりが遅くなり、中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大するため、形成される中間温度成層の成層範囲も増大する。上記の構成によれば、メイン加熱処理での昇温幅を予備加熱処理での昇温幅よりも小さくすることで、メイン加熱処理において、中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減することができ、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【0054】
1つまたはそれ以上の実施形態において、コントローラは、メイン加熱処理の実行中、HP往き温度(ヒートポンプへ流入する湯水の温度の例)が閾値温度以上となった場合、ヒートポンプ10による湯水の加熱を停止するように構成されている。閾値温度は、第1目標温度以上であり、かつ第2目標温度よりも低い温度に設定されている。
【0055】
タンク滅菌運転のメイン加熱処理では、タンク30内の湯水は高温である第2目標温度まで加熱される。このため、仮にメイン加熱処理において、ヒートポンプ10に第2目標温度の湯水が流入するまでヒートポンプ10による湯水の加熱を継続してしまうと、高温の湯水が流入して、ヒートポンプ10の圧縮機11にかかる負荷が過大となったり、ヒートポンプ10における加熱効率が低下したりするおそれがある。これに対し、上記の構成によれば、メイン加熱処理において、第2目標温度よりも低い閾値温度の湯水が流入する場合に、ヒートポンプ10による湯水の加熱を停止するので、ヒートポンプ10に高温の湯水が流入することを抑制できる。このため、圧縮機11にかかる負荷が過大となったり、ヒートポンプ10における加熱効率が低下したりすることを抑制できる。なお、メイン加熱処理に先立つ予備加熱処理において、タンク30内の湯水は第1目標温度まで加熱されているので、仮に閾値温度が第1目標温度を下回っていると、メイン加熱処理の開始直後にヒートポンプ10での湯水の加熱動作が停止してしまい、滅菌効果が不十分となるおそれがある。上記の構成によれば、閾値温度が第1目標温度以上の温度に設定されているので、メイン加熱処理の開始直後にヒートポンプ10での湯水の加熱動作が停止してしまうことを抑制することができ、滅菌効果を十分に確保することができる。
【0056】
(実施例2)
本実施例の給湯システム2は、実施例1の給湯システム2と同様の構成を備えている。本実施例の給湯システム2では、コントローラは、タンク滅菌運転を実行する際に、図2に示す処理を実行する代わりに、図4に示す処理を実行する。図4に示す処理は、一部を除いて、図2に示す処理と共通である。以下では、図4に示す処理における図2に示す処理との相違点について説明する。なお、両者の共通点については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
図4に示す処理では、S8の後、処理はS30へ進む。S30では、コントローラは、ヒートポンプ10の駆動を停止した状態で、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で湯水を循環させる。S30の後、処理はS32へ進む。
【0058】
S32では、コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度(タンク30の上部の湯水の温度)から下部サーミスタ38で検出される温度(タンク30の下部の湯水の温度)を引いた時の差が第2所定値(例えば2℃)以下であるか否かを判断する。タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第2所定値を上回る場合(NOの場合)、処理はS30に戻る。タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第2所定値以下である場合(YESの場合)、処理はS10へ進む。
【0059】
本実施例では、図4のS4からS8までの処理を「予備加熱処理」と呼ぶ。図4のS30およびS32の処理を「貯湯温均一化処理」と呼ぶ。図4のS10からS14までの処理を「メイン加熱処理」と呼ぶ。図4のS20からS24までの処理を「通常加熱処理」と呼ぶ。
【0060】
例えば外気温度が4℃である場合に本実施例のタンク滅菌運転が開始されると、コントローラは、図4のS2の処理でYESと判断して、予備加熱処理と、貯湯温均一化処理と、メイン加熱処理を順に実行する。この場合、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度は、それぞれ図5に示すように推移する。
【0061】
実施例2のタンク滅菌運転は、貯湯温均一化処理を含む点で、実施例1のタンク滅菌運転と異なる。貯湯温均一化処理では、予備加熱処理の終了後に形成される温度成層が解消されることで、タンク30の上部の湯水の温度は低下し、タンク30の下部の湯水の温度は上昇する。
【0062】
(実施例2の対応関係)
1つまたはそれ以上の実施形態において、タンク滅菌運転は、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第2所定値以下となる(所定の均一化終了条件が成立することの例)までの間、ヒートポンプ10の駆動を停止した状態で循環ポンプ18を駆動する、貯湯温均一化処理をさらに含んでいる。コントローラは、予備加熱処理の終了後であって、メイン加熱処理の開始前に、貯湯温均一化処理を実行するように構成されている。
【0063】
予備加熱処理の終了後には、タンク30の下部に第1目標温度より低い温度の湯水が存在することもあれば、タンク30の上部に第1目標温度より高い温度の湯水が存在することもある。このように、タンク30内の湯水の温度が不均一な状態で、メイン加熱処理が開始されると、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大し、メイン加熱処理の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲も増大する可能性がある。上記の構成では、予備加熱処理の終了後、メイン加熱処理の開始前に、貯湯温均一化処理において、循環ポンプ18の循環によってタンク30内の湯水を撹拌することで、タンク30内の湯水の温度を均一化することができる。したがって、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減し、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【0064】
(実施例3)
本実施例の給湯システム2は、実施例1の給湯システム2と同様の構成を備えている。本実施例の給湯システム2では、コントローラは、タンク滅菌運転を実行する際に、図2に示す処理を実行する代わりに、図6に示す処理を実行する。図6に示す処理は、一部を除いて、図2に示す処理と共通である。以下では、図6に示す処理における図2に示す処理との相違点について説明する。なお、両者の共通点については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
図6に示す処理では、S8の後、処理はS40へ進む。S40では、コントローラは、外気温度サーミスタ23で検出される外気温度が、第2基準温度(例えば5℃)を下回るか否かを判断する。外気温度が第2基準温度以上である場合(NOの場合)、処理はS42へ進む。
【0066】
S42では、コントローラは、ヒートポンプ10の加熱能力を、実施例1のS10と同様の第1メイン加熱能力に設定する。S42の後、処理はS12へ進む。
【0067】
S40において、外気温度が第2基準温度を下回る場合(YESの場合)、処理はS44へ進む。S44では、コントローラは、ヒートポンプ10の加熱能力を第2メイン加熱能力(例えば1.8kw)に設定する。S44の後、処理はS12へ進む。
【0068】
本実施例では、図6のS4からS8までの処理を「予備加熱処理」と呼ぶ。図6のS40からS44までの処理と、S12からS14までの処理を「メイン加熱処理」と呼ぶ。図6のS20からS24までの処理を「通常加熱処理」と呼ぶ。
【0069】
例えば外気温度が4℃である場合に本実施例のタンク滅菌運転が開始されると、コントローラは、図6のS2の処理でYESと判断して、予備加熱処理とメイン加熱処理を順に実行する。また、コントローラは、メイン加熱処理において、図6のS40の処理でYESと判断して、ヒートポンプ10の加熱能力を、第2メイン加熱能力に設定する。
この場合、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度は、それぞれ図7に示すように推移する。
【0070】
実施例3のタンク滅菌運転は、コントローラが、メイン加熱処理において、外気温度に応じてヒートポンプ10の加熱能力を可変する点で、実施例1のタンク滅菌運転と異なる。外気温度が低い状況(すなわち、蒸発器16に着霜しやすい状況)では、コントローラは、メイン処理におけるヒートポンプ10の加熱能力を、第1メイン加熱能力よりも低い第2メイン加熱能力に設定する。ヒートポンプ10を第2メイン加熱能力で駆動する場合、蒸発器16を流れる冷媒の温度は、ヒートポンプ10を第1メイン加熱能力で駆動する場合よりも高くなる。このため、実施例3のメイン加熱処理では、実施例1のメイン加熱処理と比較して、蒸発器16への着霜が抑制されている。
【0071】
(実施例3の対応関係)
1つまたはそれ以上の実施形態において、給湯システム2は、外気温度を検出する外気温度サーミスタ23(外気温度センサの例)をさらに備えている。コントローラは、メイン加熱処理において、外気温度サーミスタ23の検出温度が第2基準温度(所定の基準温度の例)以上である場合には、ヒートポンプ10を第1メイン加熱能力(第1加熱能力の例)で駆動し、外気温度サーミスタ23の検出温度が第2基準温度を下回る場合には、ヒートポンプ10を第1メイン加熱能力よりも低い第2メイン加熱能力(第2加熱能力の例)で駆動するように構成されている。
【0072】
外気温度が低い状況において、ヒートポンプ10による湯水の加熱を行うと、ヒートポンプ10の蒸発器16に着霜してしまうことがある。ヒートポンプ10による湯水の加熱の実行中に、蒸発器16に着霜すると、ヒートポンプ10による湯水の加熱を一時的に中断して、除霜運転を実行する必要がある。仮に、メイン加熱処理の実行中に除霜運転が実行されると、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量が増大し、メイン加熱処理の終了後に形成される中間温度成層の成層範囲も増大する可能性がある。これに対し、上記の構成によれば、外気温度が低い状況では、ヒートポンプ10の加熱能力を低く抑えた状態でメイン加熱処理を実行する。このため、メイン加熱処理の実行中に蒸発器16に着霜することを抑制することができ、ヒートポンプ10による湯水の加熱を一時的に中断して除霜運転を実行する事態の発生を抑制することができる。したがって、メイン加熱処理において中途半端な温度に加熱される湯水の量を低減し、メイン加熱処理の終了後(すなわち、タンク滅菌運転の終了後)に形成される中間温度成層の成層範囲を低減することができる。
【0073】
(変形例)
上記の実施例1から3では、滅菌実施条件が、タンク30の上部の湯水が低温のまま長時間滞留していると判断されることである構成について説明した。別の実施例では、滅菌実施条件は、最近実施されたタンク滅菌運転を終了してからの経過時間が所定時間(例えば720時間)を上回ることであってもよい。
【0074】
上記の実施例1から3では、コントローラが、外気温度が第1基準温度を下回る場合(S2の処理でYESの場合)には、予備加熱処理とメイン加熱処理を順に実行し、外気温度が第1基準温度以上である場合(S2の処理でNOの場合)には、通常加熱処理を実行する構成について説明した。別の実施例では、コントローラは、外気温度が第1基準温度を下回るか否かにかかわらず、予備加熱処理とメイン加熱処理を順に実行するように構成されていてもよい。
【0075】
上記の実施例1から3では、タンク滅菌運転が、予備加熱処理とメイン加熱処理を含んでおり、HPユニット4が、タンク30内の湯水を2段階に分けて循環加熱する構成について説明した。別の実施例では、タンク滅菌運転は、予備加熱処理と同様の加熱処理をさらに含んでいてもよく、HPユニット4は、タンク30内の湯水を3段階に分けて循環加熱してもよい。具体的には、コントローラは、予備加熱処理に先立って、タンク30内の湯水が第1目標温度よりも低い温度(例えば25℃)となるように、圧縮機11および循環ポンプ18を駆動してタンク30内の湯水を循環加熱するように構成されていてもよい。さらに別の実施例では、HPユニット4は、タンク30内の湯水を4段階以上に分けて循環加熱してもよい。
【0076】
上記の実施例1から3では、第1目標温度が所定の温度(45℃)となっている構成について説明した。別の実施例では、タンク滅菌運転は、コントローラによって第1目標温度を特定する処理をさらに含んでいてもよく、第1目標温度は、タンク滅菌運転の運転状況に応じて特定されてもよい。具体的には、コントローラは、予備加熱処理の開始時におけるタンク30内の湯水の温度(上部サーミスタ36で検出される温度や下部サーミスタ38で検出される温度)を記録するように構成されていてもよく、記録された予備加熱処理の開始時におけるタンク30内の湯水の温度と第2目標温度との間の平均値に、所定値(例えば10℃)を加算して得られる温度を、第1目標温度として特定してもよい。この場合、メイン加熱処理におけるヒートポンプ10での湯水の昇温幅は、予備加熱処理におけるヒートポンプ10での湯水の昇温幅よりも、所定値を2倍した値分、小さくなる。
【0077】
上記の実施例1から3では、コントローラが、メイン加熱処理の実行中、HP往き温度が閾値温度以上となった場合、ヒートポンプ10の駆動を停止する構成について説明した。別の実施例では、コントローラは、メイン加熱処理の実行中、HP往き温度が閾値温度以上となった場合、ヒートポンプ10の駆動を停止せず、ヒートポンプ10による湯水の加熱のみを停止してもよい。コントローラは、その後HP往き温度が閾値温度を下回った場合には、ヒートポンプ10による湯水の加熱を直ちに再開してもよい。
【0078】
上記の実施例1から3では、コントローラが、ヒートポンプ10による湯水の加熱を停止する条件として、HP往き温度が閾値温度以上となるか否かを判断する構成について説明した。別の実施例では、コントローラは、ヒートポンプ10による湯水の加熱を停止する条件として、タンク30の下部の湯水の温度が閾値温度以上となるか否かを判断するように構成されていてもよい。
【0079】
上記の実施例1から3では、コントローラが、メイン加熱処理の終了と同時にタンク滅菌運転を終了する構成について説明した。別の実施例では、コントローラは、メイン加熱処理の終了と同時にタンク滅菌運転を終了するように構成されていなくてもよい。例えば、コントローラは、メイン加熱処理の終了後に、実施例2で説明した貯湯温均一化処理をさらに実行し、貯湯温均一化処理の終了後にタンク滅菌運転を終了するように構成されていてもよい。
【0080】
上記の実施例2では、コントローラが、タンク30の上部の湯水の温度とタンク30の下部の湯水の温度の差が第2所定値以下となるまでの間(図4のS32の処理でYESとなるまでの間)、貯湯温均一化処理を実行し続ける構成について説明した。別の実施例では、コントローラは、貯湯温均一化処理が開始されてから所定時間が経過するまでの間、貯湯温均一化処理を実行し続けるように構成されていてもよい。
【0081】
上記の実施例3において、コントローラは、図6に示すS8の処理の後であって、S40の処理の前に、実施例2で説明した貯湯温均一化処理をさらに実行するように構成されていてもよい。
【0082】
上記の実施例1から3において、タンク30の容量、第1基準温度、第2基準温度、通常加熱能力、予備加熱能力、第1メイン加熱能力、第2メイン加熱能力、第1所定値、第2所定値、および閾値温度のそれぞれの値は、適宜変更されてもよい。
【0083】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0084】
2 :給湯システム
4 :HPユニット
6 :タンクユニット
8 :バーナユニット
10 :ヒートポンプ
11 :圧縮機
12 :凝縮器
14 :膨張弁
16 :蒸発器
18 :循環ポンプ
19 :除霜弁
19a :除霜経路
20 :往きサーミスタ
22 :戻りサーミスタ
23 :外気温度サーミスタ
24 :HPコントローラ
26 :HP往き管
28 :HP戻り管
30 :タンク
32 :混合弁
34 :バイパス制御弁
36 :上部サーミスタ
38 :下部サーミスタ
40 :給水管
42 :減圧弁
44 :入水サーミスタ
46 :タンク給水管
48 :タンクバイパス管
50 :逆止弁
52 :逆止弁
54 :水側水量センサ
56 :タンク出湯管
58 :逆止弁
60 :湯側水量センサ
62 :第1給湯管
64 :混合サーミスタ
66 :第2給湯管
68 :給湯出口サーミスタ
70 :逆止弁
72 :給湯バイパス管
74 :タンクコントローラ
76 :リモコン
80 :バーナ
82 :熱交換器
84 :バイパスサーボ
86 :水量サーボ
88 :湯はり弁
90 :バーナ往き管
92 :バーナ戻り管
94 :バーナバイパス管
96 :バーナ給湯サーミスタ
98 :湯はり管
100 :バーナコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8