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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159745
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231025BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069651
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶彦
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA46
2H033BA10
2H033CA02
2H033CA36
2H270LA25
2H270LB02
2H270MA34
2H270MC55
2H270MC60
2H270MD10
2H270NE01
2H270NE11
(57)【要約】
【課題】画像に白スジが発生するのを防止し、画像品位を向上させることができ、しかも、ジャムが発生するのを防止することができるようにする。
【解決手段】媒体上の現像剤像を加熱する加熱体と、媒体上の現像剤像を加圧して定着させる加圧体と、加圧体の温度を検出する温度検出部と、媒体搬送路を切り替える切替部材と、媒体に形成される画像の印刷デューティを算出する印刷デューティ算出部Pr5と、切替部材の温度が上昇したと判断されたときに、加圧体の温度及び印刷速度制御用の閾値に基づいて印刷条件を変更する印刷条件変更処理部Pr4とを有する。切替部材の温度が過剰に上昇するのを抑制することができる。画像に白スジが発生することがなく、画像品位を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)加熱源からの熱を受けて媒体上の現像剤像を加熱する加熱体と、
(b)該加熱体との間に定着ニップ部を形成し、媒体上の現像剤像を加圧して媒体に定着させる加圧体と、
(c)該加圧体の温度を検出する温度検出部と、
(d)前記現像剤像が定着させられた媒体が搬送される媒体搬送路を切り替える切替部材と、
(e)媒体に形成される画像の印刷デューティを算出する印刷デューティ算出部と、
(f)前記温度検出部による加圧体の温度の複数の検出結果に基づいて前記切替部材の温度が上昇したと判断されたときに、前記加圧体の温度、及び印刷デューティに応じて設定された印刷速度制御用の閾値に基づいて印刷条件を変更する印刷条件変更処理部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
(a)前記加圧体の温度の検出結果に基づいて複数の温度保持値が算出され、
(b)該各温度保持値が温度上昇判定用の閾値以上である場合に、前記切替部材の温度が上昇したと判断される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷速度制御用の閾値は、印刷デューティが高いほど低く、印刷デューティが低いほど高く設定される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷速度制御用の閾値は、画像形成装置の印刷速度を変更するために設定される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記印刷条件変更処理部は、前記加圧体の温度が印刷速度制御用の閾値以上である場合に、印刷速度を減速する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷条件変更処理部は、前記加圧体の温度が印刷速度制御用の閾値以上である場合に、印刷を停止させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
(a)前記印刷デューティは、媒体の搬送方向に対して直交する、媒体の幅方向において複数の領域に分割され、
(b)該各領域の印刷デューティに応じて印刷速度制御用の閾値が設定される請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタには画像形成ユニットが配設され、該画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面がLEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラによって現像されてトナー像が形成され、該トナー像が、転写ローラによって、用紙カセットから供給された媒体としての用紙に転写されるようになっている。そして、定着装置としての定着器において前記トナー像が用紙に定着させられることによって画像が形成され、印刷が行われる。
【0003】
ところで、用紙の両面に印刷を行うことができるようにしたプリンタにおいては、用紙が搬送される用紙搬送路がセパレータによって切り替えられ、表(おもて)面に画像が形成された用紙が反転させられ、用紙の裏面に画像が形成されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-3587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、用紙の裏面に画像を形成する際に、用紙の表面に形成された画像のトナーが、加熱され、溶融させられ、前記セパレータに付着し、固着することがある。
【0006】
その場合、その後、セパレータに固着し、用紙からの熱を受けて溶融させられたトナーと用紙の表面において溶融させられたトナーとが擦れると、画像に白スジが発生し、画像品位が低下してしまう。また、セパレータに用紙が貼り付くと、ジャムが発生してしまう。
【0007】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、画像に白スジが発生するのを防止することができ、画像品位を向上させることができ、しかも、ジャムが発生するのを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の画像形成装置においては、加熱源からの熱を受けて媒体上の現像剤像を加熱する加熱体と、該加熱体との間に定着ニップ部を形成し、媒体上の現像剤像を加圧して媒体に定着させる加圧体と、該加圧体の温度を検出する温度検出部と、前記現像剤像が定着させられた媒体が搬送される媒体搬送路を切り替える切替部材と、媒体に形成される画像の印刷デューティを算出する印刷デューティ算出部と、前記温度検出部による加圧体の温度の複数の検出結果に基づいて前記切替部材の温度が上昇したと判断されたときに、前記加圧体の温度、及び印刷デューティに応じて設定された印刷速度制御用の閾値に基づいて印刷条件を変更する印刷条件変更処理部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置においては、加熱源からの熱を受けて媒体上の現像剤像を加熱する加熱体と、該加熱体との間に定着ニップ部を形成し、媒体上の現像剤像を加圧して媒体に定着させる加圧体と、該加圧体の温度を検出する温度検出部と、前記現像剤像が定着させられた媒体が搬送される媒体搬送路を切り替える切替部材と、媒体に形成される画像の印刷デューティを算出する印刷デューティ算出部と、前記温度検出部による加圧体の温度の複数の検出結果に基づいて前記切替部材の温度が上昇したと判断されたときに、前記加圧体の温度、及び印刷デューティに応じて設定された印刷速度制御用の閾値に基づいて印刷条件を変更する印刷条件変更処理部とを有する。
【0010】
この場合、温度検出部による加圧体の温度の複数の検出結果に基づいて切替部材の温度が上昇したと判断されると、加圧体の温度、及び印刷デューティに応じて設定された印刷速度制御用の閾値に基づいて印刷条件が変更されるので、切替部材の温度が過剰に上昇するのを抑制することができる。
【0011】
したがって、両面印刷を行う場合に、媒体の表面において溶融させられた現像剤と、切替部材に固着し、媒体からの熱を受けて溶融させられた現像剤とが擦れることがない。その結果、画像に白スジが発生する防止するのを防止することができるので、画像品位を向上させることができる。しかも、切替部材に媒体が貼り付くことがないので、ジャムが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における定着器の概念図である。
図4】本発明の第1の実施の形態における定着制御部によって作動させられる定着回路を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態におけるヒータをオン・オフさせる際の判定フローを示す図である。
図6】本発明の第1の実施の形態における印刷デューティを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度とセパレータ温度との関係を示す図である。
図7】本発明の第1の実施の形態における温度上昇判定部の動作を示す第1のフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施の形態における温度上昇判定部の動作を示す第2のフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第1のフローチャートである。
図10】本発明の第1の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第2のフローチャートである。
図11】本発明の第1の実施の形態における閾値テーブルの例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態における用紙の幅方向の各領域において印刷デューティを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度とセパレータ温度との関係を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第1のフローチャートである。
図14】本発明の第2の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第2のフローチャートである。
図15】本発明の第2の実施の形態における第1の閾値テーブルの例を示す図である。
図16】本発明の第2の実施の形態における第2の閾値テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0014】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0015】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の外装体としての筐体である。該筐体Csは、前壁Wf、背壁Wr、頂壁Wt、底壁Wb、前壁Wf側からプリンタ10を見たときの左側に配設された図示されない左側壁、及び前壁Wf側からプリンタ10を見たときの右側に配設された図示されない右側壁を備える。
【0016】
また、Bdは前記プリンタ10の本体、すなわち、装置本体であり、該装置本体Bdの下部に媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に媒体としての用紙Pが収容される。そして、前記用紙カセット11の前端に隣接させて給紙機構が配設され、該給紙機構は、回転自在に配設され、回転に伴って用紙カセット11から用紙Pを繰り出す繰出部材としてのピックアップローラ12、該ピックアップローラ12によって繰り出された用紙Pを第1の媒体搬送路としての、かつ、用紙Pの一方の面に画像を形成する片面印刷用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に送る図示されないフィードローラ、及び該フィードローラに当接させて配設され、用紙Pを1枚ずつ分離させるための分離部材としての図示されないリタードローラを備える。
【0017】
前記用紙搬送路Rt1には、給紙機構より下流側に第1の搬送部材としての搬送ローラ対m1が、該搬送ローラ対m1より下流側に第2の搬送部材としての搬送ローラ対(レジストローラ対)m2が、該搬送ローラ対m2より下流側に第1の媒体検出部としての書出しセンサs1が配設される。前記給紙機構によって給紙された用紙Pは、搬送ローラ対m1によって搬送され、搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、書出しセンサs1によって用紙Pの有無が検出された後、画像形成部Q1に送られる。なお、書出しセンサs1は、用紙Pを検出するとオンに、用紙Pを検出しないとオフになる。
【0018】
前記書出しセンサs1の検出信号は、露光装置としての後述されるLEDヘッドHdにおける発光素子としての図示されない各LED素子の発光タイミング、転写部材としての後述される転写ローラ21に高電圧(転写電圧)を印加するタイミング等を発生させ、現像剤像としてのトナー像を形成するための基準信号になる。
【0019】
前記画像形成部Q1は、画像形成ユニット(イメージドラムユニット)20、LEDヘッドHd、転写ローラ21等を備える。
【0020】
前記画像形成ユニット20は、本体部22、及び該本体部22に対して一体に、又は着脱自在に配設された現像剤収容部としてのトナーカートリッジCtを備え、前記本体部22内に、回転自在に配設された像担持体としての感光体ドラム23、該感光体ドラム23に当接させて回転自在に配設された帯電装置としての帯電ローラ24、前記感光体ドラム23に当接させて回転自在に配設された現像剤担持体としての現像ローラ25、該現像ローラ25に当接させて回転自在に配設された現像剤供給部材としての供給ローラ26、現像ローラ25に圧接させて配設された現像剤規制部材としての現像ブレード27、トナー像が用紙Pに転写された後に、感光体ドラム23上に残留した現像剤としてのトナーを掻き取り、除去するクリーニング部材としてのクリーニングブレード28等を備える。
【0021】
感光体ドラム23の表面が、帯電ローラ24によって一様に帯電させられた後、前記LEDヘッドHdによって画像データに基づいて露光されると、感光体ドラム23の表面に潜像としての静電潜像が形成される。続いて、現像ローラ25によってトナーが静電潜像に付着させられて静電潜像が現像され、感光体ドラム23の表面にトナー像が形成される。また、前記供給ローラ26は、現像ローラ25と同じ方向に回転させられ、前記トナーカートリッジCtから本体部22内に供給されたトナーを現像ローラ25に供給するとともに、トナーを摩擦帯電させる。そして、前記現像ブレード27は、供給ローラ26によって現像ローラ25に供給されたトナーを薄層化し、現像剤層としてのトナー層を形成する。
【0022】
前記用紙カセット11から用紙搬送路Rt1を搬送され、画像形成部Q1に供給された用紙Pは、感光体ドラム23と転写ローラ21との間の転写ニップ部を通過する際に、前記転写ローラ21によって、感光体ドラム23上に形成されたトナー像が転写させられる。
【0023】
前記用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側には、定着装置としての定着器31が装置本体Bdに対して着脱自在に配設される。
【0024】
前記定着器31は、第1の定着部材としての、かつ、加熱体としてのヒートローラ(加熱ローラ)32、及び第2の定着部材としての、かつ、加圧体としてのバックアップローラ(加圧ローラ)33を備え、ヒートローラ32内に加熱源としての後述されるヒータHt(図3)が配設され、該ヒータHtに電力が供給される。
【0025】
ヒートローラ32とバックアップローラ33との間には定着ニップ部が形成され、定着器31に供給された用紙Pが定着ニップ部を通過する際、すなわち、通紙時に、用紙P上のトナー像が、ヒータHtからの熱を受けたヒートローラ32によって加熱され、溶融させられ、バックアップローラ33によって加圧されて用紙Pに定着させられる。
【0026】
用紙Pの搬送方向における前記定着器31より上流側には、定着器31のヒートローラ32と対向させて、非接触式の温度検出部としてのサーモパイルThpが配設される。該サーモパイルThpによって検出されたヒートローラ32の温度である検出温度Twは、後述される印刷制御部50(図1)に送られ、該印刷制御部50において、検出温度Twが、印刷条件に応じた温度である目標温度TtになるようにヒータHtが制御される。
【0027】
用紙搬送路Rt1における定着器31より下流側には、定着器31の、用紙Pの出口に隣接させて第2の媒体検出部としての出口センサs2が、該出口センサs2より下流側に第3の搬送部材としての搬送ローラ対m3が、該搬送ローラ対m3より下流側に第4の搬送部材としての搬送ローラ対m4が、該搬送ローラ対m4より下流側に第5の搬送部材としての搬送ローラ対(排出ローラ対)m5が配設される。
【0028】
定着器31において画像が形成された用紙Pは、出口センサs2によって用紙Pの有無が検出された後、搬送ローラ対m3によって搬送され、用紙搬送路Rt1に沿って搬送ローラ対m4によって搬送され、搬送ローラ対m5によって排出口h1から装置本体Bd外に排出され、頂壁Wtに形成されたスタッカsk1に積載される。なお、出口センサs2は、用紙Pを検出するとオンに、用紙Pを検出しないとオフになる。
【0029】
ところで、前記プリンタ10においては、用紙Pの両面に画像を形成し、両面印刷を行うことができるようになっている。
【0030】
そのために、用紙搬送路Rt1における搬送ローラ対m3より下流側で、かつ、搬送ローラ対m3に隣接する箇所に分岐部pt1が形成され、該分岐部pt1から下流側に向けて分岐させて、第2の媒体搬送路としての、かつ、用紙Pを退避させるための退避用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt2が形成される。また、頂壁Wtに、用紙搬送路Rt2を開口させるための退避口h2が形成される。
【0031】
そして、前記分岐部pt1に、画像が形成された用紙Pを搬送するための用紙搬送路を用紙搬送路Rt1と用紙搬送路Rt2とで切り替えるための切替部材としてのセパレータSr1が揺動自在に配設される。該セパレータSr1は、後述される切替ソレノイドSOLが駆動されることによって第1、第2の位置に置かれ、第1の位置で用紙搬送路Rt1と用紙搬送路Rt2とを遮断し、第2の位置で用紙搬送路Rt1と用紙搬送路Rt2とを連通させる。
【0032】
該用紙搬送路Rt2には、前記分岐部pt1より下流側に、分岐部pt1と所定の距離を置いて、第6の搬送部材としての退避ローラ対m6が、該退避ローラ対m6より下流側に第7の搬送部材としての退避ローラ対m7が配設される。
【0033】
さらに、前記用紙搬送路Rt2における前記分岐部pt1より下流側の所定の箇所に、分岐部pt1と所定の距離を置いて分岐部pt2が形成され、該分岐部pt2から上流側に向けて分岐させて、退避させられた用紙Pを前記用紙搬送路Rt1に戻すための第3の媒体搬送路としての、かつ、反転用の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt3が形成される。
【0034】
なお、分岐部pt2における用紙搬送路Rt3の傾斜角度は用紙搬送路Rt2の傾斜角度より大きくされる。したがって、用紙搬送路Rt2において分岐部pt2より下流側に退避させられた用紙Pを逆方向に搬送すると、用紙Pが自重で用紙搬送路Rt3に送られるので、用紙搬送路Rt2と用紙搬送路Rt3とはセパレータを使用することなく切り替えられる。
【0035】
前記用紙搬送路Rt3には、前記分岐部pt2より下流側に、分岐部pt2と所定の距離を置いて、第8の搬送部材としての搬送ローラ対m8が、該搬送ローラ対m8より下流側に、第9の搬送部材としての搬送ローラ対m9が、該搬送ローラ対m9より下流側に、第10の搬送部材としての搬送ローラ対m10が配設される。
【0036】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0037】
片面印刷を行い、用紙Pの一方の面に画像を形成して装置本体Bdから用紙Pを排出する場合、前記用紙カセット11に収容された用紙Pは、給紙機構によって用紙搬送路Rt1に給紙され、前記搬送ローラ対m1によって用紙搬送路Rt1を搬送され、搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、画像形成部Q1に送られる。
【0038】
用紙Pは、画像形成部Q1において、感光体ドラム23と転写ローラ21との間の転写ニップ部を通過する際に感光体ドラム23上のトナー像が転写され、前記定着器31において、トナー像が加熱され、加圧されて定着させられて一方の面に画像が形成される。
【0039】
続いて、用紙Pは、セパレータSr1の上を通り、用紙搬送路Rt1を搬送ローラ対m4によって搬送され、搬送ローラ対m5によって排出口h1から装置本体Bd外に排出されてスタッカsk1に積載される。
【0040】
一方、両面印刷を行い、用紙Pの両面に画像を形成する場合、用紙カセット11から給紙された用紙Pは、搬送ローラ対m1によって用紙搬送路Rt1を搬送され、搬送ローラ対m2によって斜行が矯正され、画像形成部Q1に送られる。
【0041】
そして、用紙Pは、画像形成部Q1においてトナー像が転写され、前記定着器31においてトナー像が定着させられ、用紙Pの一方の面に画像が形成される。
【0042】
続いて、用紙Pは、セパレータSr1の下を通り、用紙搬送路Rt2に送られ、退避ローラ対m6、m7によって搬送され、用紙搬送路Rt2において、前端を退避口h2から突出させて退避位置で停止させられた後、反転(スイッチバック)させられ、用紙搬送路Rt3に送られる。反転させられた用紙Pは、用紙搬送路Rt3を搬送ローラ対m8~m10によって搬送され、用紙搬送路Rt1に戻される。
【0043】
そして、用紙Pは、再び用紙搬送路Rt1を搬送され、画像形成部Q1においてトナー像が転写され、定着器31においてトナー像が定着させられ、用紙Pの他方の面に画像が形成される。このようにして、両面に画像が形成された用紙Pは、用紙搬送路Rt1を搬送され、装置本体Bdから排出されてスタッカsk1に積載される。
【0044】
次に、定着器31について説明する。
【0045】
図3は本発明の第1の実施の形態における定着器の概念図である。
【0046】
図において、31は定着器、32はヒートローラ、33はバックアップローラ、Htはヒータ、Thpはサーモパイルである。
【0047】
ヒートローラ32は、アルミニウム、ステンレス鋼等の基材から成る筒状のローラであり、基材に、シリコームゴムから成る弾性層、及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂コーティング又はそれらを加工したチューブから成る表層を積層することによって形成される。
【0048】
ヒータHtは、左側壁側の端部をLEとし、右側壁側の端部をREとしたとき、端部LE、RE間に320〔mm〕の発熱領域ARを有する。該発熱領域ARにおいて、ヒートローラ32の軸方向(長手方向)における中央部Pmから端部LE、REにかけてそれぞれ所定の距離、本実施の形態においては、110〔mm〕の部位が配熱分布切替点Psにされ、該各配熱分布切替点Ps間に中央部領域Arcが、前記配熱分布切替点Psと端部LE、REとの間に端部領域Arsが形成される。
【0049】
そして、ヒータHtは、第1、第2の加熱部Hf、Hsを備え、該第1、第2の加熱部Hf、Hsに電力を供給することによって、中央部領域Arc及び端部領域Arsがそれぞれの配熱分布に応じて発熱させられる。
【0050】
そのために、第1、第2の加熱部Hf、Hsには、定着器31の設計条件に基づいて、ヒートローラ32の軸方向における配熱分布、配熱分布の切替位置等が設定され、本実施の形態においては、第1の加熱部Hfにおいて、中央部領域Arcが相対的に高温に、端部領域Arsが相対的に低温になるように、端部領域Arsの配熱が中央部領域Arcの配熱の80〔%〕にされ、中央部高配熱・端部低配熱の設定がされ、第2の加熱部Hsにおいて、中央部領域Arcが相対的に低温に、端部領域Arsが相対的に高温になるように、中央部領域Arcの配熱が端部領域Arsの配熱の80〔%〕にされ、中央部低配熱・端部高配熱の設定がされる。そして、第1の加熱部Hfにおいて、発熱体としてのシーズ線の配線密度は、中央部領域Arcにおいて高く、端部領域Arsにおいて低くされ、第2の加熱部Hsにおいて、シーズ線の配線密度は、中央部領域Arcにおいて低く、端部領域Arsにおいて高くされる。
【0051】
サーモパイルThpは、ヒートローラ32の表面から発生する赤外線を受光し、温度に変換する非接触式の温度センサであり、定着器31における用紙Pの入口側で、かつ、ヒートローラ32の軸方向における中央に位置させられる。なお、サーモパイルThpを定着器31内に配設することもできるが、その場合、定着器31を交換する際にサーモパイルThpも交換することになり、コストが高くなる。
【0052】
また、ヒートローラ32の両端の非通紙部、すなわち、プリンタ10における印刷領域外(本実施の形態においては、A4判の用紙Pを横送りで搬送したときの印刷可能な最大幅である297〔mm〕の外側)の温度を検出するために、中央部Pmから端部LE、REにかけてそれぞれ所定の距離、本実施の形態においては、151〔mm〕の位置に、接触式の第1の温度検出部としてのサイドサーミスタLth、Rthがヒートローラ32に当接させて配設される。なお、サイドサーミスタLth、Rthが配設される位置は、ヒートローラ32の設計条件に基づいて設定される。
【0053】
そして、バックアップローラ33の表面の温度を検出するために、バックアップローラ33の軸方向における中央部に、接触式の第2の温度検出部としてのロワサーミスタCthが配設され、中央部からバックアップローラ33の端部にかけて、それぞれ所定の距離、本実施の形態においては、130〔mm〕の位置に、接触式の第3の温度検出部としてのロワサイドサーミスタSthがいずれもバックアップローラ33に当接させて配設される。
【0054】
前記ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthは、バックアップローラ33の表面の温度、すなわち、バックアップローラ温度Tbを検出する。また、前記ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthは、間接的にヒートローラ32の温度を検出することによって、例えば、幅の狭い用紙Pに対して連続印刷を行う際に、ヒートローラ32の表面における用紙Pと当接しない部分、すなわち、非通紙部の温度の上昇を監視する。なお、ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthが配設される位置は、バックアップローラ33の設計条件に基づいて設定される。
【0055】
次に、前記プリンタ10の制御装置について説明する。
【0056】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0057】
図において、10はプリンタ、50は該プリンタ10の全体の制御を行う印刷制御部、51は上位装置としてのホストコンピュータPCとの間で通信を行う通信部、52は不揮発性メモリから成る第1の記憶部としてのROM、53は揮発性メモリから成る第2の記憶部としてのRAM、60は操作パネル、s1は書出しセンサ、s2は出口センサ、Thpはサーモパイルである。なお、本実施の形態においては、前記ROM52として書換え可能なフラッシュROMが使用される。
【0058】
また、M1はIDモータ、M2は定着モータ、M3は反転モータ、HdはLEDヘッド、64は高圧回路、SOLは切替ソレノイド、66はヒータHtの制御を行うトライアック駆動回路である。
【0059】
前記印刷制御部50は、図示されない演算装置としてのCPU、タイマ、カウンタ、入出力ポート等を備え、ROM52に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。
ROM52には、前記プログラムのほかに、後述される閾値テーブルTB1(図11)、各種の設定値等が記録される。また、RAM53には、ホストコンピュータPCから送信された印刷データに基づいて生成された、通常の印刷を行うための画像データのほかに、各種の制御用のデータ、本実施の形態においては、後述されるバックアップローラ温度保持カウントi(図7)、高温判定スルーカウントj等が一時的に記録される。なお、前記RAM53は、前記CPUが演算を行う際にワーキングメモリとして使用される。
【0060】
また、前記印刷制御部50は、印刷処理部Pr1、定着制御部Pr2、温度上昇判定部Pr3、印刷条件変更処理部としての印刷速度制御部Pr4、印刷デューティ算出部Pr5等を有する。
【0061】
印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、前記ホストコンピュータPCから送られた印刷ジョブを受信すると、印刷ジョブごとに印刷データを編集し、画像データを生成し、生成した画像データをRAM53に記録し、続いて、前記書出しセンサs1によって用紙Pの有無が検出されると、LEDヘッドHdに画像データを送り、感光体ドラム23を露光して感光体ドラム23の表面に静電潜像を形成する。そして、印刷処理部Pr1は、画像形成ユニット20において、静電潜像にトナーを付着させて感光体ドラム23上にトナー像を形成し、転写ローラ21によってトナー像を用紙Pに転写して、定着器31においてトナー像を用紙Pに定着させる。
【0062】
定着制御部Pr2は、定着制御処理を行い、サーモパイルThpのセンサ出力である検出温度Twを読み込み、該検出温度Twが、用紙Pの厚さである用紙厚さ、用紙Pの幅である用紙幅等の印刷条件に応じた目標温度TtになるようにヒータHt(図3)のオン・オフを制御する。
【0063】
温度上昇判定部Pr3は、温度上昇判定処理を行い、前記ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthによるバックアップローラ温度Tbの複数の検出結果である、後述されるバックアップローラ温度保持値Tb(i)(i=1、2、…、10)を算出し、該バックアップローラ温度保持値Tb(i)に基づいて、前記セパレータSr1(図2)の温度、すなわち、セパレータ温度Tsが上昇したかどうかを判断する。本実施の形態においては、10個のバックアップローラ温度保持値Tb(0)~Tb(10)が温度上昇判定用の閾値Tbth以上である場合に、セパレータ温度Tsが上昇したと判断される。
【0064】
印刷速度制御部Pr4は、印刷条件変更処理としての印刷速度制御処理を行い、温度上昇判定部Pr3によってセパレータ温度Tsが上昇したと判断された場合に、バックアップローラ温度Tb及び印刷デューティDpに応じて設定された印刷速度制御用の閾値である、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3に基づいて、印刷条件としての印刷速度vpを制御する。
【0065】
印刷デューティ算出部Pr5は、印刷デューティ算出処理を行い、印刷ジョブごとに、前記画像データに基づいて、画像データ全体に占めるドットの割合を表す印刷デューティDpを算出する。
【0066】
なお、印刷デューティ算出部Pr5は、LEDヘッドHdのLED素子の発光時間及び非発光時間の各積算値に基づいて印刷デューティDpを算出することもできる。
【0067】
IDモータM1は、DCモータから成り、画像形成ユニット20において、感光体ドラム23、現像ローラ25、供給ローラ26等を回転させるほかに、前記ピックアップローラ12を回転させて用紙カセット11から用紙Pを繰り出したり、搬送ローラ対m1、m2、m8~m10を回転させて用紙Pを搬送したりする。
【0068】
定着モータM2は、DCモータから成り、定着器31のバックアップローラ33を回転させ、ヒートローラ32を回転させて定着ニップ部において用紙Pを通紙させたり、搬送ローラ対m3、m4を回転させて用紙Pを搬送したり、搬送ローラ対m5を回転させて用紙Pを装置本体Bd外に排出したりする。なお、定着器31において、定着モータM3の回転は、図示されないギヤ列を介して減速させられた後、バックアップローラ33に伝達される。
【0069】
反転モータM3は、パルスモータから成り、用紙搬送路Rt2に配設された退避ローラ対m6、m7を回転させる。
【0070】
LEDヘッドHdは、印刷処理部Pr1から送られた画像データに基づいて感光体ドラム23の表面を露光する。
【0071】
高圧回路64は、画像形成ユニット20において、帯電ローラ24、現像ローラ25、供給ローラ26、現像ブレード27等に高電圧を印加したり、転写ローラ21に高電圧を印加したりする。
【0072】
切替ソレノイドSOLはセパレータSr1を切り替える。
【0073】
トライアック駆動回路66は、後述されるトライアックTR1、TR2(図4)を駆動して、ヒータHtの制御を行う。
【0074】
操作パネル60は、プリンタ10の状態を表示するためのLED画面等から成る表示部61、及びプリンタ10に操作者が指示を入力し、用紙設定等を行うためのスイッチ、キー等から成る操作部62を備える。なお、操作パネル60がタッチパネルによって形成される場合、表示部61は操作部としても機能する。
【0075】
次に、定着器31の制御装置について説明する。
【0076】
図4は本発明の第1の実施の形態における定着制御部によって作動させられる定着回路を示す図である。
【0077】
図において、31は定着器、32はヒートローラ、50は印刷制御部、Pr2は定着制御部、66はトライアック駆動回路、68は交流電源となる商用電源、Htはヒータ、Hfは第1の加熱部、Hsは第2の加熱部、TR1は、第1の加熱部Hfをオン・オフする主スイッチング素子としてのトライアック、TR2は、第2の加熱部Hsをオン・オフする副スイッチング素子としてのトライアックである。また、Thpはサーモパイル、Lth、Rthはサイドサーミスタ、Cthはロワサーミスタ、Sthはロワサイドサーミスタである。
【0078】
前記印刷制御部50には、サーモパイルThp、サイドサーミスタLth、Rth、ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthの各センサ出力が入力される。
【0079】
前記商用電源68の一方の端子は、第1、第2の加熱部Hf、Hsの前記端部RE(図3)側の電極に接続され、商用電源68の他方の端子は、トライアックTR1、TR2を介して第1、第2の加熱部Hf、Hsの前記端部LE側の電極に接続される。
【0080】
前記トライアック駆動回路66は、図示されないフォトトライアックから成り、一次側と二次側とが絶縁され、一次側において前記印刷制御部50に接続され、二次側においてトライアックTR1、TR2の各ゲート端子に接続される。
【0081】
前記定着制御部Pr2の指示に基づいて印刷制御部50から第1の加熱部Hfの駆動信号SG1及び第2の加熱部Hsの駆動信号SG2が送られると、トライアック駆動回路66は、駆動信号SG1、SG2のオン・オフに応じてトライアックTR1、TR2を駆動し、第1、第2の加熱部Hf、Hsに供給される電力を変更する。
【0082】
印刷が行われている間、定着制御部Pr2は、制御周期τである100〔ms〕ごとに検出温度Twと目標温度Ttとの差である温度偏差ε
ε=Tt-Tw
に基づいたPID計算を行い、駆動信号SG1、SG2をオン・オフさせる際のオンデューティを表すデューティ値Dhを算出する。
【0083】
なお、n番目の制御周期τにおけるデューティ値をDh(n)とすると、デューティ値Dh(n)は次の式(1)で表すことができる。
【0084】
Dh(n)=Kp*ε+Ki*Σε+Kd*dε/dt+DutyMod(n-1) …(1)
ε:温度偏差
Kp:比例ゲイン
Ki:積分ゲイン
Kd:微分ゲイン
DutyMod(n-1):(n-1)番目の制御周期τで利用されなかったデューティ値Dh(n-1)
本実施の形態においては、駆動信号SG1、SG2のデューティ値Dhが共通の値にされるが、第1、第2の加熱部Hf、Hsごとに目標温度Ttを異ならせることによって、デューティ値Dhを駆動信号SG1、SG2ごとに異ならせたり、駆動信号SG1、SG2のうちの一方のデューティ値Dhに所定の係数を乗算したものを他方のデューティ値Dhにしたり、駆動信号SG1、SG2の各デューティ値Dhに、印刷条件によって所定の重み付けを与え、例えば、用紙幅の設定値が所定の値未満である場合は第1の加熱部Hfのデューティ値Dhを大きくし、用紙幅の設定値が所定の値以上である場合は第2の加熱部Hsのデューティ値Dhを大きくしたりすることができる。
【0085】
次に、デューティ値Dhに基づいてヒータHt(第1、第2の加熱部Hf、Hs)をオン・オフさせる際の動作について説明する。
【0086】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるヒータをオン・オフさせる際の判定フローを示す図である。
【0087】
各制御周期τにおいて、温度偏差εに基づいてPDI計算によって算出されたPDI計算値Doに、一つ前の制御周期τにおいて算出されたDutyModが加算器69によって加算されてデューティ値Dhが算出され、該デューティ値Dhが、最小値0及び最大値Dmaxによって制限され、
0≦Dh≦Dmax
になる。
【0088】
続いて、デューティ値Dhが所定の閾値(ヒータ・オン閾値)α以上である場合、駆動信号SG1、SG2をオンにし、デューティ値Dhが閾値α未満である場合、駆動信号SG1、SG2をオフにする。
【0089】
ところで、両面印刷を行うに当たり用紙P(図2)の裏面に画像を形成する際に、用紙Pの表面に形成された画像のトナーが加熱され、溶融させられ、セパレータSr1に付着し、固着することがある。
【0090】
その場合、その後、セパレータSr1に固着し、用紙Pからの熱を受けて溶融させられたトナーと用紙Pの表面において溶融させられたトナーとが擦れると、画像に白スジが発生し、画像品位が低下してしまう。また、セパレータSr1に用紙Pが貼り付くと、ジャムが発生してしまう。なお、本実施の形態においては、セパレータSr1に固着し、溶融させられたトナーと用紙Pの表面において溶融させられたトナーとが擦れたり、セパレータSr1に用紙Pが貼り付いたりする可能性を、以下、「貼付きリスク」という。
【0091】
次に、印刷デューティDpを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係について説明する。
【0092】
図6は本発明の第1の実施の形態における印刷デューティを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度とセパレータ温度との関係を示す図である。なお、図において、横軸にバックアップローラ温度Tbを、縦軸にセパレータ温度Tsを採ってある。
【0093】
図において、L1は印刷デューティDpが高いときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係を示す線、L2は印刷デューティDpが低いときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係を示す線である。
【0094】
セパレータ温度Tsが90〔℃〕以上になると貼付きリスクが高くなる。
【0095】
バックアップローラ温度Tbは、バックアップローラ33(図2)が、非通紙時にヒートローラ32からの熱エネルギーを受けることによって上昇し、通紙時に、ヒートローラ32からの熱エネルギーが用紙Pに奪われて低下するが、連続印刷が行われると、上昇と低下とを繰り返し、徐々に上昇していく。また、セパレータ温度Tsは、セパレータSr1に用紙Pを介して熱エネルギーが供給されるので、用紙Pが有する熱エネルギーが多いほど上昇しやすくなる。
【0096】
印刷デューティDpが低い印刷、すなわち、低デューティ印刷が行われると、用紙Pに奪われる熱エネルギーの分だけヒータHt(図3)がオンにされるが、印刷デューティDpが高い印刷、すなわち、高デューティ印刷が行われると、用紙Pに奪われる熱エネルギーに加えて、トナーを溶融する分の熱エネルギーが必要になるので、低デューティ印刷時よりヒータHtがオンにされる時間が長くなる。
【0097】
その結果、ヒートローラ32から供給される熱エネルギーが相対的に多くなり、高デューティ印刷時におけるバックアップローラ33の飽和温度は低デューティ印刷時より上昇する。また、セパレータ温度Tsも、セパレータSr1が用紙P及び溶融したトナーの熱エネルギーを受けるので、低デューティ印刷時より上昇し、図に示されるように、90〔℃〕以上になることがある。
【0098】
そこで、本実施の形態においては、前記温度上昇判定部Pr3(図1)によってバックアップローラ温度Tbを検出し、バックアップローラ温度Tbが上昇したかどうかによって、貼付きリスクが高くなったかどうかを判断し、貼付きリスクが高くなった場合に、印刷速度制御部Pr4によって、印刷デューティDp及びバックアップローラ温度Tbに対応させて印刷速度vpが制御されるようになっている。
【0099】
次に、温度上昇判定部Pr3の動作について説明する。
【0100】
図7は本発明の第1の実施の形態における温度上昇判定部の動作を示す第1のフローチャート、図8は本発明の第1の実施の形態における温度上昇判定部の動作を示す第2のフローチャートである。
【0101】
この場合、定着ニップ部において非通紙時にバックアップローラ温度Tbが低下したり、バックアップローラ温度Tbが、一時的に上昇した後、数枚の用紙Pに印刷が行われる間に低下したりした場合は、セパレータ温度Tsが上昇したと判断されない。
【0102】
まず、印刷制御部50は、ホストコンピュータPCから印刷データを受信すると、定着器31のウォームアップ又はクールダウンを行う(ステップS1)。また、温度上昇判定部Pr3は温度上昇判定処理を開始する。
【0103】
次に、温度上昇判定部Pr3は、セパレータ温度Tsが上昇したかどうかを判断するために、保持しているすべてのバックアップローラ温度保持値Tb(i)をリセットする(ステップS2)。
【0104】
ここで、バックアップローラ温度保持値Tb(i)は、ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthによって検出された温度に基づいて算出される温度上昇判定用の指標になる値である。
【0105】
次に、温度上昇判定部Pr3は、バックアップローラ温度保持値Tb(i)の数を表すバックアップローラ温度保持カウントi、及びセパレータ温度Tsが上昇したかどうかの判断を停止させるための高温判定スルーカウントjに0をセットする(ステップS3)。
【0106】
続いて、温度上昇判定部Pr3は、出口センサs2(図2)がオンになったかどうかを判断し(ステップS4)、出口センサs2がオンになった場合、ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthによって検出された温度をバックアップローラ温度Tbとしてサンプリングし、サンプリングしたバックアップローラ温度Tbの平均値をi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)として算出する(ステップS5)。なお、出口センサs2がオンになったときに検出した一つのバックアップローラ温度Tbをi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)にすると、ばらつきが大きくなるので、温度上昇判定部Pr3は、所定の時間、本実施の形態においては、5〔秒〕間における制御周期τごとの検出値の移動平均をi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)として算出する。
【0107】
出口センサs2がオンになっていない場合、温度上昇判定部Pr3は、搬送される用紙Pの間隔、すなわち、紙間が所定の値より大きいかどうかを判断し(ステップS6)、紙間が所定の値より大きい場合、温度上昇判定処理を再び開始し、紙間が所定の値以下である場合、次の用紙Pによって出口センサs2がオンになったかどうかを判断する(ステップS4)。なお、前記所定の値は、両面印刷時の紙間、帯電ローラ24のクリーニング時間等を考慮して設定され、本実施の形態においては434〔mm〕にされる。
【0108】
次に、温度上昇判定部Pr3は、高温判定スルーカウントjをインクリメントする(ステップS7)。
【0109】
続いて、温度上昇判定部Pr3は、0番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(0)からi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)までのi+1個のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)(i=0、1、…、i)のうちの所定のN1個、本実施の形態においては、10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(0)~Tbu(9)が閾値Tbth以上であるかどうかを判断する(ステップS8)。
【0110】
10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(0)~Tbu(9)が閾値Tbth以上である場合、温度上昇判定部Pr3は、高温判定スルーカウントjが所定の数、本実施の形態においては、N2以上、本実施の形態においては、15以上であるかどうかを判断する(ステップS9)。本実施の形態においては、15〔枚〕の印刷が行われる間は、セパレータ温度Tsが上昇したかどうかの判定が行われない。なお、N2は、高温状態のバックアップローラ温度Tbが十分に低下する印刷枚数に基づいて設定される。
【0111】
高温判定スルーカウントjが15以上である場合、温度上昇判定部Pr3は、セパレータ温度Tsが上昇したと判断し(ステップS10)、処理を終了する。
【0112】
そして、10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(0)~Tbu(9)が閾値Tbth以上ではない場合、又は高温判定スルーカウントjが15より小さい場合、温度上昇判定部Pr3は、バックアップローラ温度保持カウントiをインクリメントする(ステップS11)。
【0113】
続いて、温度上昇判定部Pr3は、バックアップローラ温度保持カウントiが所定の値N1、本実施の形態においては、10であるかどうかを判断し(ステップS12)、バックアップローラ温度保持カウントiが10である場合、バックアップローラ温度保持カウントiに0をセットし(ステップS13)、バックアップローラ温度保持カウントiが10でない場合、次の用紙Pによって出口センサs2がオンになったかどうかを判断する(ステップS4)。
【0114】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 印刷制御部50は定着器31のウォームアップ又はクールダウンを行う。
ステップS2 温度上昇判定部Pr3は保持しているすべてのバックアップローラ温度保持値Tb(i)をリセットする。
ステップS3 温度上昇判定部Pr3はバックアップローラ温度保持カウントi及び高温判定スルーカウントjに0をセットする。
ステップS4 温度上昇判定部Pr3は出口センサs2がオンになったかどうかを判断する。出口センサs2がオンになった場合はステップS5に進み、出口センサs2がオンにならなかった場合はステップS6に進む。
ステップS5 温度上昇判定部Pr3はバックアップローラ温度保持値Tbu(i)を算出する。
ステップS6 温度上昇判定部Pr3は紙間が所定の値より大きいかどうかを判断する。紙間が所定の値より大きい場合はステップS1に戻り、紙間が所定の値以下である場合はステップS4に戻る。
ステップS7 温度上昇判定部Pr3は高温判定スルーカウントjをインクリメントする。
ステップS8 温度上昇判定部Pr3は10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が閾値Tbth以上であるかどうかを判断する。10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が閾値Tbth以上である場合はステップS9に進み、10個のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が閾値Tbth以上でない場合はステップS11に進む。
ステップS9 温度上昇判定部Pr3は高温判定スルーカウントjが15以上であるかどうかを判断する。高温判定スルーカウントjが15以上である場合はステップS10に進み、高温判定スルーカウントjが15より小さい場合はステップS11に進む。
ステップS10 温度上昇判定部Pr3はセパレータ温度Tsが上昇したと判断し、処理を終了する。
ステップS11 温度上昇判定部Pr3はバックアップローラ温度保持カウントiをインクリメントする。
ステップS12 温度上昇判定部Pr3はバックアップローラ温度保持カウントiが10であるかどうかを判断する。バックアップローラ温度保持カウントiが10である場合はステップS13に進み、バックアップローラ温度保持カウントiが10でない場合はステップS4に戻る。
ステップS13 温度上昇判定部Pr3はバックアップローラ温度保持カウントiに0をセットし、ステップS4に戻る。
【0115】
このようにして、セパレータ温度Tsが上昇したと判断されると、印刷速度制御部Pr4は印刷速度制御処理を開始する。
【0116】
次に、印刷速度制御部Pr4の動作について説明する。
【0117】
図9は本発明の第1の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第1のフローチャート、図10は本発明の第1の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第2のフローチャート、図11は本発明の第1の実施の形態における閾値テーブルの例を示す図である。
【0118】
まず、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティ算出部Pr5によって算出された印刷デューティDpを読み込み、印刷デューティDpが5〔%〕以下(低印刷デューティ)であるかどうかを判断し(ステップS21)、印刷デューティDpが5〔%〕以下である場合、閾値テーブルTB1を参照し、低印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定する(ステップS22)。
【0119】
一方、印刷デューティDpが5〔%〕より大きい場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティDpが25〔%〕以下(中印刷デューティ)であるかどうかを判断し(ステップS23)、印刷デューティDpが25〔%〕以下である場合、中印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定する(ステップS24)。
【0120】
なお、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3は、印刷デューティDpが高いほど低く、印刷デューティDpが低いほど高く設定される。
【0121】
そして、印刷デューティDpが25〔%〕より大きい(高印刷デューティである)場合、印刷速度制御部Pr4は、高印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定する(ステップS25)。
【0122】
続いて、印刷速度制御部Pr4は、プリンタ10に設定された印刷速度vpが、プリンタ10の仕様で決まる規定値、すなわち、37〔ppm〕又は45〔ppm〕であるかどうかを判断する(ステップS26)。なお、印刷速度vpが24〔ppm〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は印刷速度vpを減速しない。
【0123】
印刷速度vpが37〔ppm〕又は45〔ppm〕である場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷が終了しているかどうかを判断し(ステップS27)、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0124】
一方、印刷が終了していない場合、印刷速度制御部Pr4は、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が印刷デューティDpに対応した減速判定用閾値T1以上であるかどうかを判断する(ステップS28)。
【0125】
バックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T1以上である場合、印刷速度制御部Pr4は、セパレータ温度Tsも上昇していて、貼付きリスクが高いと判断し、印刷速度vpを規定値である37〔ppm〕又は45〔ppm〕から24〔ppm〕に減速し(ステップS29)、印刷が終了しているかどうかを判断し(ステップS30)、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0126】
なお、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定した後の印刷速度vpが規定値でない場合も、印刷速度制御部Pr4は、印刷が終了しているかどうかを判断し(ステップS30)、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0127】
また、印刷が終了していない場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷を継続し、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が印刷デューティDpに対応した停止判定用閾値T2以上であるかどうかを判断する(ステップS31)。
【0128】
バックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T2以上である場合、印刷速度制御部Pr4は、セパレータ温度Tsもかなり上昇していて、貼付きリスクが極めて高いと判断し、印刷を一時停止させる(ステップS32)。
【0129】
続いて、印刷速度制御部Pr4は、バックアップローラ温度保持値Tbを読み込み、バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T3以下になるのを待機し(ステップS33)、バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T3以下になると、印刷速度vpを24〔ppm〕に減速した状態で印刷を再開する(ステップS34)。
【0130】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS21 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpが5〔%〕以下であるかどうかを判断する。印刷デューティDpが5〔%〕以下である場合はステップS22に進み、印刷デューティDpが5〔%〕より大きい場合はステップS23に進む。
ステップS22 印刷速度制御部Pr4は低印刷デューティの閾値を設定する。
ステップS23 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpが25〔%〕以下であるかどうかを判断する。印刷デューティDpが25〔%〕以下である場合はステップS24に進み、印刷デューティDpが25〔%〕より大きい場合はステップS25に進む。
ステップS24 印刷速度制御部Pr4は中印刷デューティの閾値を設定する。
ステップS25 印刷速度制御部Pr4は高印刷デューティの閾値を設定する。
ステップS26 印刷速度制御部Pr4はプリンタ10に設定された印刷速度vpが規定値であるかどうかを判断する。プリンタ10に設定された印刷速度vpが規定値である場合はステップS27に進み、プリンタ10に設定された印刷速度vpが規定値でない場合はステップS30に進む。
ステップS27 印刷速度制御部Pr4は印刷が終了しているかどうかを判断する。印刷が終了している場合は処理を終了し、印刷が終了していない場合はステップS28に進む。
ステップS28 印刷速度制御部Pr4はi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T1以上であるかどうかを判断する。i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T1以上である場合はステップS29に進み、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T1より小さい場合はステップS27に戻る。
ステップS29 印刷速度制御部Pr4は印刷速度を減速する。
ステップS30 印刷速度制御部Pr4は印刷が終了しているかどうかを判断する。印刷が終了している場合は処理を終了し、印刷が終了していない場合はステップS31に進む。
ステップS31 印刷速度制御部Pr4はi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T2以上であるかどうかを判断する。i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T2以上である場合はステップS32に進み、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T2より小さい場合はステップS30に戻る。
ステップS32 印刷速度制御部Pr4は印刷を一時停止させる。
ステップS33 印刷速度制御部Pr4はバックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T3以下になるのを待機する。バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T3以下になった場合はステップS34に進む。
ステップS34 印刷速度制御部Pr4は印刷を再開し、ステップS30に戻る。
【0131】
このように、本実施の形態においては、ロワサーミスタCth及びロワサイドサーミスタSthによるバックアップローラ温度Tbの複数の検出結果に基づいてセパレータ温度Tsが上昇したと判断されると、バックアップローラ温度Tb、及び印刷デューティDpに応じて設定された減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3に基づいて印刷速度vpが変更されるので、セパレータ温度Tsが過剰に上昇するのを抑制することができる。
【0132】
したがって、両面印刷を行うに当たり用紙Pの裏面に画像を形成する際に、セパレータSr1に固着し、用紙Pからの熱を受けて溶融させられたトナーと用紙Pの表面において溶融させられたトナーとが擦れるのを防止することができる。その結果、画像に白スジが発生するのを防止することができ、画像品位を向上させることができる。しかも、セパレータSr1に用紙Pが貼り付くことがないので、ジャムが発生するのを防止することができる。
【0133】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0134】
この場合、印刷デューティ算出部Pr5は、媒体としての用紙Pの搬送方向に対して直交する、用紙Pの幅方向において分割された領域ごとに印刷デューティ値Dpを算出する。
【0135】
そのために、前記第1の実施の形態においては、加熱源としてのヒータHtの中央部Pmから端部LE、REにかけてそれぞれ110〔mm〕の距離の部位に配熱分布切替点Psが設定され、各配熱分布切替点Ps間に中央部領域Arcが、配熱分布切替点Psと端部LE、REとの間に端部領域Arsが形成されることから、第2の実施の形態においては、用紙Pの幅方向における中央部から両縁にかけてそれぞれ110〔mm〕の部位に印刷デューティ切替点を設定し、各印刷デューティ切替点間に中央部領域PArcが、印刷デューティ切替点と用紙Pの両縁との間に端部領域PArsが形成され、中央領域PArcに印刷デューティDpcが、端部領域PArsに印刷デューティDpsが設定される。
【0136】
なお、用紙Pの幅方向における中央部から両縁にかけてそれぞれ他の所定の距離の部位を印刷デューティ切替点に設定したり、用紙Pの幅方向における複数箇所に印刷デューティ切替点を設定したりすることもできる。
【0137】
また、本実施の形態において、第1の記憶部としてのROM52には、後述される第1の閾値テーブルTB2(図15)が記録される。
【0138】
次に、用紙Pの幅方向の各領域において印刷デューティを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係について説明する。
【0139】
図12は本発明の第2の実施の形態における用紙の幅方向の各領域において印刷デューティを異ならせて両面印刷を行ったときのバックアップローラ温度とセパレータ温度との関係を示す図である。なお、図において、横軸にバックアップローラ温度Tbを、縦軸にセパレータ温度Tsを採ってある。
【0140】
図において、L11は用紙Pの幅方向における全領域の印刷デューティが高いときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係を示す線、L12は用紙Pの中央部領域の印刷デューティが高いときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係を示す線、L13は用紙P(図2)の端部領域の印刷デューティが高いときのバックアップローラ温度Tbとセパレータ温度Tsとの関係を示す線である。
【0141】
用紙Pの端部領域の印刷デューティが高い場合、第1の定着部材としての、かつ、加熱体としてのヒートローラ32の中央部領域PArcより端部領域PArsの温度の低下が大きくなるので、定着制御部Pr2(図1)は第2の加熱部Hsを第1の加熱部Hfより長い時間オンにする。第1、第2の加熱部Hf、Hs(図3)をバランス良くオンにすることによって、ヒートローラ32の軸方向における温度バランスを適正に保持することができる。
【0142】
用紙Pの中央部領域の印刷デューティが高い場合、ヒートローラ32の端部領域PArsより中央部領域PArcの温度の低下が大きくなるので、定着制御部Pr2は第1の加熱部Hfを第2の加熱部Hsより長い時間オンにする。そのため、ヒートローラ32の長手方向の温度バランスは端部領域PArsが高温になり、第2の温度検出部としてのロワサイドサーミスタSthによって検出される第2の定着部材としての、かつ、加圧体としてのバックアップローラ33の両端部の温度も高温になる。
【0143】
次に、中央部領域PArcにおける印刷デューティDpcが端部領域PArsにおける印刷デューティDpsより大きい場合の印刷条件変更処理部としての印刷速度制御部Pr4の動作について説明する。
【0144】
図13は本発明の第2の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第1のフローチャート、図14は本発明の第2の実施の形態における印刷速度制御部の動作を示す第2のフローチャート、図15は本発明の第2の実施の形態における第1の閾値テーブルの例を示す図である。
【0145】
まず、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティ算出部Pr5によって算出された中央部領域PArcにおける印刷デューティDpc及び端部領域PArsにおける印刷デューティDpsを読み込み、印刷デューティDpcが印刷デューティDpsより大きいかどうかを判断する(ステップS41)。
【0146】
印刷デューティDpcが印刷デューティDpsより大きい場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティDpc、Dpsを読み込み、印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であり、印刷デューティDpsが5〔%〕以下であるかどうかを判断する(ステップS42)。
【0147】
印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であり、印刷デューティDpsが5〔%〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は、第1の閾値テーブルTB2を参照し、中央部領域PArsが中印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが低印刷デューティの閾値(中央:中、端部:低印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する(ステップS43)。
【0148】
なお、印刷デューティDpc、Dpsが、いずれも、5〔%〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は、図9~11に記載された、第1の実施の形態と同じ動作を行い、低印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定する。
【0149】
また、印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下ではなく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下ではない場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下であるかどうかを判断する(ステップS44)。
【0150】
印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は、中央部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが低印刷デューティの閾値(中央:高、端部:低印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する(ステップS45)。
【0151】
また、印刷デューティDpcが25〔%〕より大きくはなく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下ではない場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であるかどうかを判断し(ステップS46)、印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は、中央部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが中印刷デューティの閾値(中央:高、端部:中印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する(ステップS47)。
【0152】
印刷デューティDpc、Dpsが、いずれも、25〔%〕より大きい場合、印刷速度制御部Pr4は、図9~11に記載された、第1の実施の形態と同じ動作を行い、高印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T1、停止判定用閾値T2及び再開判定用閾値T3を設定する。
【0153】
続いて、印刷速度制御部Pr4は、プリンタ10に設定された印刷速度vpが、規定値、すなわち、37〔ppm〕又は45〔ppm〕であるかどうかを判断する(ステップS48)。
【0154】
そして、印刷速度vpが37〔ppm〕又は45〔ppm〕である場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷が終了しているかどうかを判断し(ステップS49)、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0155】
印刷が終了していない場合、印刷速度制御部Pr4は、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が、印刷デューティDpc、Dpsに対応した減速判定用閾値T11以上であるかどうかを判断する(ステップS50)。
【0156】
バックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T11以上である場合、印刷速度制御部Pr4は、セパレータ温度Tsも上昇していて、貼付きリスクが高いと判断し、印刷速度vpを規定値である37〔ppm〕又は45〔ppm〕から24〔ppm〕に減速し(ステップS51)、印刷が終了しているかどうかを判断し(ステップS52)、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0157】
なお、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定した後の印刷速度vpが規定値でない場合も、印刷速度制御部Pr4は、印刷が終了しているかどうかを判断し、印刷が終了している場合、処理を終了する。
【0158】
また、印刷が終了していない場合、印刷速度制御部Pr4は、印刷を継続し、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が印刷デューティDpc、Dpsに対応した停止判定用閾値T12以上であるかどうかを判断する(ステップS53)。
【0159】
バックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T12以上である場合、印刷速度制御部Pr4は、セパレータ温度Tsもかなり上昇していて、貼付きリスクが極めて高いと判断し、印刷を一時停止させる(ステップS54)。
【0160】
続いて、印刷速度制御部Pr4は、バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T13以下になるのを待機し(ステップS55)、バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T13以下になると、印刷速度vpを24〔ppm〕に減速した状態で印刷を再開する(ステップS56)。
【0161】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS41 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpcが印刷デューティDpsより大きいかどうかを判断する。印刷デューティDpcが印刷デューティDpsより大きい場合はステップS42に進み、印刷デューティDpcが印刷デューティDps以下である場合は処理を終了する。
ステップS42 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であり、印刷デューティDpsが5〔%〕以下であるかどうかを判断する。印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であり、印刷デューティDpsが5〔%〕以下である場合はステップS43に進み、印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下ではなく、かつ、印刷デューティDpsが5〔%〕以下ではない場合はステップS44に進む。また、印刷デューティDpc、Dpsが、いずれも、5〔%〕以下である場合、印刷速度制御部Pr4は第1の実施の形態と同じ動作を行う。
ステップS43 印刷速度制御部Pr4は中央部領域PArsが中印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが低印刷デューティの閾値(中央:中、端部:低印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する。
ステップS44 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下であるかどうかを判断する。印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下である場合はステップS45に進み、印刷デューティDpcが25〔%〕より大きくはなく、印刷デューティDpsが5〔%〕以下ではない場合はステップS46に進む。
ステップS45 印刷速度制御部Pr4は中央部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが低印刷デューティの閾値(中央:高、端部:低印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する。
ステップS46 印刷速度制御部Pr4は印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下であるかどうかを判断する。印刷デューティDpcが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpsが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下である場合はステップS47に進む。また、印刷デューティDpc、Dpsが、いずれも、25〔%〕より大きい場合、印刷速度制御部Pr4は第1の実施の形態と同じ動作を行う。
ステップS47 印刷速度制御部Pr4は中央部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、端部領域PArsが中印刷デューティの閾値(中央:高、端部:中印刷デューティの閾値)として、減速判定用閾値T11、停止判定用閾値T12及び再開判定用閾値T13を設定する。
ステップS48 印刷速度制御部Pr4は印刷速度vpが規定値であるかどうかを判断する。印刷速度vpが規定値である場合はステップS49に進み、印刷速度vpが規定値でない場合はステップS52に進む。
ステップS49 印刷速度制御部Pr4は印刷が終了しているかどうかを判断する。印刷が終了している場合は処理を終了し、印刷が終了していない場合はステップS50に進む。
ステップS50 印刷速度制御部Pr4はi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T11以上であるかどうかを判断する。i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T11以上である場合はステップS51に進み、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が減速判定用閾値T11より小さい場合はステップS49に戻る。
ステップS51 印刷速度制御部Pr4は印刷速度vpを減速する。
ステップS52 印刷速度制御部Pr4は印刷が終了しているかどうかを判断する。印刷が終了している場合は処理を終了し、印刷が終了していない場合はステップS53に進む。
ステップS53 印刷速度制御部Pr4はi番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T12以上であるかどうかを判断する。i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T12以上である場合はステップS55に進み、i番目のバックアップローラ温度保持値Tbu(i)が停止判定用閾値T12より小さい場合はステップS52に戻る。
ステップS54 印刷速度制御部Pr4は印刷を一時停止させる。
ステップS55 印刷速度制御部Pr4はバックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T13以下になるのを待機する。バックアップローラ温度保持値Tbが再開用閾値T13以下になった場合はステップS56に進む。
ステップS56 印刷速度制御部Pr4は印刷速度vpを減速した状態で印刷を再開し、ステップS52に戻る。
【0162】
このように、本実施の形態においては、用紙Pの幅方向に分割された領域である中央部領域PArcの印刷デューティDpc及び端部領域PArsの印刷デューティDpsが算出され、印刷デューティDpc、Dpsに応じて印刷速度vpが減速されたり、印刷が停止させられたりするので、セパレータ温度Tsが過剰に上昇するのを一層抑制することができる。
【0163】
なお、端部領域PArsの印刷デューティDpsが中央領域PArcの印刷デューティDpcより大きい場合は、ROM52に、後述される第2の閾値テーブルTB3が記録される。
【0164】
図16は本発明の第2の実施の形態における第2の閾値テーブルの例を示す図である。
【0165】
図において、TB3は第2の閾値テーブルであり、この場合、図に示されるように、印刷デューティDpsが、5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下である場合、端部領域PArsが中印刷デューティで、かつ、中央部領域PArcが低印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T21、停止判定用閾値T22及び再開判定用閾値T23が設定され、印刷デューティDpsが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpcが5〔%〕以下である場合、端部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、中央部領域PArcが低印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T21、停止判定用閾値T22及び再開判定用閾値T23が設定され、印刷デューティDpsが25〔%〕より大きく、印刷デューティDpcが5〔%〕より大きく、かつ、25〔%〕以下である場合、端部領域PArsが高印刷デューティで、かつ、中央部領域PArcが中印刷デューティの閾値として、減速判定用閾値T21、停止判定用閾値T22及び再開判定用閾値T23が設定される。
【0166】
前記各実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を電子写真方式のプリンタ、コピー機、ファクシミリ装置、及びこれらの機能を複数兼ね備えたマルチファンクションプリンタ等の画像形成装置に適用することができる。
【0167】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0168】
10 プリンタ
32 ヒートローラ
33 バックアップローラ
Cth ロワサーミスタ
Dp 印刷デューティ
Ht ヒータ
P 用紙
Pr4 印刷速度制御部
Pr5 印刷デューティ算出部
Rt1、Rt2 用紙搬送路
Sr1 セパレータ
Sth ロワサイドサーミスタ
Tb バックアップローラ温度
Ts セパレータ温度
T1、T11、T21 減速判定用閾値
T2、T12、T22 停止判定用閾値
T3、T13、T23 再開判定用閾値
vp 搬送速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16