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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159747
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】打抜き装置及び打抜き方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20231025BHJP
【FI】
B21D28/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069653
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光央
(72)【発明者】
【氏名】和田 紀彦
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048AD01
4E048AD02
4E048AD04
(57)【要約】
【課題】 打抜き加工における抜きカスの堆積を低減できる打抜き装置及び打抜き方法を提供する。
【解決手段】 パンチ1と、積載した被加工物3をパンチで打抜く孔部2aを有するダイ2と、打抜き方向の加工抵抗を測定する荷重計45と、打抜き方向と直交する面内で、パンチとダイとの相対位置を変化させる駆動部46と、制御部80と、を備え、制御部は、パンチを孔部に挿入した状態で駆動部を駆動させることで、所定の方向においてパンチとダイとの距離を縮め、その後、パンチを打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチと、
積載した被加工物を前記パンチで打抜き方向に打抜く孔部を有するダイと、
前記打抜き方向の加工抵抗を測定する荷重計と、
前記ダイを支持して、前記打抜き方向と直交する面内で、前記パンチと前記ダイとの相対位置を変化させる駆動部と、
前記荷重計から測定された加工抵抗を取得して前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記パンチを前記孔部に挿入した状態で前記駆動部を前記打抜き方向と直交する面内で駆動させることで、所定の方向において前記パンチと前記ダイとの間のクリアランスの距離を縮め、その後、前記パンチを前記打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行う、
打抜き装置。
【請求項2】
前記制御部は、
打抜き加工毎の加工抵抗に基づき、前記パンチが前記被加工物に接触してから前記被加工物の厚み相当まで到達するまでの経過時間の力積である第一力積を算出し、
前記パンチが前記被加工物の厚み相当まで到達してから下死点までの到達時間の力積である第二力積を算出し、
前記第一力積と前記第二力積とを比較した結果に基づいて、前記ゴミ取り動作を行うかどうかを決定する、
請求項1に記載の打抜き装置。
【請求項3】
パンチと、
積載した被加工物を前記パンチで打抜き方向に打抜く孔部を有するダイと、
前記打抜き方向の加工抵抗を測定する荷重計と、
前記ダイを支持して、前記打抜き方向と直交する面内で、前記パンチと前記ダイとの相対位置を変化させる駆動部と、
前記荷重計から測定された加工抵抗を取得して前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を備える打抜き装置を使用して実施する打抜き方法であって、
前記制御部の制御の下に、前記パンチを前記孔部に挿入した状態で前記打抜き方向と直交する面内で前記駆動部を駆動させることで、所定の方向において前記パンチと前記ダイとの間のクリアランスの距離を縮め、その後、前記パンチを前記打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行う、
打抜き方法。
【請求項4】
前記ゴミ取り動作を行う前に、前記制御部において、
打抜き加工毎の加工抵抗に基づき、前記パンチが前記被加工物に接触してから前記被加工物の厚み相当まで到達するまでの経過時間の力積である第一力積を算出し、
前記パンチが前記被加工物の厚み相当まで到達してから下死点までの到達時間の力積である第二力積を算出し、
前記第一力積と前記第二力積とを比較した結果に基づいて、前記ゴミ取り動作を行うかどうかを決定する、
請求項3に記載の打抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平板をプレス加工する打抜き装置及び打抜き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、平板の打抜き加工時に打抜かれた側のカスがダイの下方に落下せずに、パンチの下死点付近に堆積する現象は、“カス詰まり”と呼ばれる。カスは、実抜き加工時の抜かれた側の平板を指す。カス詰まりは、カス自体の自重が大きい場合はダイ内で落下するので、多くは薄帯(例えばおおよそ0.2mm以下の厚さの帯状部材)の打抜き時に問題となる現象である。
【0003】
従来の打抜き装置として、特許文献1に示したものがある。特許文献1において、加工開始すると、抜きカスがパンチ下死点付近で溶着し、容易に排出されずにカス詰まりが発生するという課題がある。
【0004】
この課題に対し、特許文献1においては、ダイの孔部の内壁に熱可塑性の樹脂コーティング、もしくは樹脂スリーブを設けることで、カスと樹脂コーティングとの間での摩擦を減少させ、カスの排出を促進している。その結果、パンチ及びダイの損傷が少なくなるため、工具寿命が延びることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-210728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、摩擦低減の目的で施したダイ内壁の樹脂コーティングが摩滅することで効能を失い、その度にダイの交換又はダイに再処理を施すことで生産性が低下するという課題を有している。
【0007】
本開示は、打抜き加工における抜きカスの堆積を低減できる打抜き装置及び打抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の1つの態様にかかる打抜き装置は、パンチと、
積載した被加工物を前記パンチで打抜き方向に打抜く孔部を有するダイと、
前記打抜き方向の加工抵抗を測定する荷重計と、
前記ダイを支持して、前記打抜き方向と直交する面内で、前記パンチと前記ダイとの相対位置を変化させる駆動部と、
前記荷重計から測定された加工抵抗を取得して前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記パンチを前記孔部に挿入した状態で前記駆動部を前記打抜き方向と直交する面内で駆動させることで、所定の方向において前記パンチと前記ダイとの間のクリアランスの距離を縮め、その後、前記パンチを前記打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行う。
【0009】
また、本開示の別の態様にかかる打抜き方法は、パンチと、
積載した被加工物を前記パンチで打抜き方向に打抜く孔部を有するダイと、
前記打抜き方向の加工抵抗を測定する荷重計と、
前記ダイを支持して、前記打抜き方向と直交する面内で、前記パンチと前記ダイとの相対位置を変化させる駆動部と、
前記荷重計から測定された加工抵抗を取得して前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を備える打抜き装置を使用して実施する打抜き方法であって、
前記制御部の制御の下に、前記パンチを前記孔部に挿入した状態で前記打抜き方向と直交する面内で前記駆動部を駆動させることで、所定の方向において前記パンチと前記ダイとの間のクリアランスの距離を縮め、その後、前記パンチを前記打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行う。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本開示の打抜き装置及び打抜き方法によれば、パンチを前記孔部に挿入した状態で前記打抜き方向と直交する面内で前記駆動部を駆動させることで、所定の方向において前記パンチと前記ダイとの間のクリアランスの距離を縮め、その後、前記パンチを前記打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行うことができる。よって、打抜き加工によって発生した抜きカスを除去することで、打抜き加工時にカス詰まりが発生することなく、金型破損に至るトラブルを回避でき、打抜き加工における生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ゴミ詰まりを模した基礎実験の結果を説明する図
図2】本開示の実施の形態1における打抜き装置のゴミ取りモード時の動作を説明する概略図
図3】本開示の実施の形態1における打抜き装置の構成例を示す説明図
図4】本開示の実施の形態1における打抜き装置に搭載する駆動テーブルの構成例を示す説明図
図5】本開示の実施の形態1における打抜き装置のゴミ取り動作について詳細に説明する図
図6】本開示の実施の形態1におけるゴミ取りモードに入る判定方法(力積による異常判定の例)を示す説明図
図7】本開示の実施の形態1におけるゴミ取りモードに入る判定方法(仕事による異常判定の例)を示す説明図
図8】本開示の実施の形態1におけるゴミ取りモードの設定例を示す説明図
図9】本開示の実施の形態1における打抜き装置のゴミ取りモード時の動作パターンを説明する図
図10】従来のカス詰まり現象を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示に至った経緯)
従来のカス詰まりが発生する根本課題について、図10を使って説明する。
【0013】
カス詰まりが生じた状態を、図10(a)に示す。本来、抜きカス104がダイ下方に落下せずにパンチ101の下死点付近のダイ102の孔部102a内に堆積しているので、カス104が積み重なるごとに加工抵抗は増加することになる。
【0014】
図10(b)にカス詰まりが生じた時の加工抵抗プロファイル例を示す。縦軸が加工抵抗を示す荷重、横軸に経過時間を示す。経過時間が200msec付近で生じた900N程度の荷重ピークは、打抜き時の荷重である。その後、時間の経過とともにパンチ101の先端は下死点に向かって移動するが、カス詰まりのため、荷重はゼロとならず、むしろ、打抜き時に生じる荷重よりも荷重が増加することとなる。この状態がさらに進行すれば、パンチが折れ、金型全体が破損する重大トラブルに至ることがある。それ故に、カス詰まりは回避しないといけない問題となる。
【0015】
カス詰まりは、以上で説明したように、複数枚の被加工物103の抜きカス104がパンチ下死点付近で堆積することにより加工抵抗が増大し、打抜き荷重より増大すると考えられていた。
【0016】
しかしながら、抜きカス104が1枚だけであったとしても、打ち抜き後の加工抵抗が増大することがある。
【0017】
そこで、これらの課題を解消するため、本開示の実施の形態を想到するに至った現象を、図1を用いて説明する。
【0018】
図1(a)は、抜きカスが1枚の被加工物3だけで打ち抜き後の加工抵抗が増大する様子を模式的に示す。パンチ1が平板状の被加工物3をダイ2との間で挟み込むようにして、打抜いた様子を示す。その後、打抜き回数(すなわち、ショット数)を重ねると、パンチ1の先端は摩耗又は微細なチッピングが生じた状態となり、合わせて、打抜きによる粉塵(例えば被加工物3の微細なゴミ)が発生し、それらが、ダイ2の孔部2aの内壁にゴミ5として付着する。同様に、図1(a)には図示しなかったが、パンチ1の側面にもゴミが付着する。このような摩耗したパンチ1で打抜き加工すると、打抜かれた抜きカス4が、パンチ1が下死点に移動する過程で、ダイ2内壁に付着したゴミ5を巻き込んで荷重が増大する。即ち、これが、ゴミ詰まりによる打抜き荷重増大モデルである。
【0019】
図1(b)に、その時の打抜き加工時の荷重のプロファイルを示す。後述するように、打抜き装置には、一般に、ストリッパーによる材料押さえがあるので、打抜き加工時の荷重は、打抜きに至るまでに既に所定の荷重に達するのが通常である。図1(b)の荷重Aが打抜き直前のストリッパー荷重で、その後、打抜き荷重Bが発生する。打抜き後、一旦、荷重は下がるが、パンチ1が下死点に向かって進行する過程で、打抜き加工時の荷重が最大荷重Cに達し、その後、下死点で少し低下する。この荷重プロファイルは、図1(a)に示した抜きカス4がゴミ5を巻き込みながら移動するとき、生じる。ここでは、打抜き荷重Bよりもはるかに大きい荷重Cが発生するのが特徴である。
【0020】
このように、抜きカス4が1枚であったとしても、打抜き荷重よりはるかに大きな荷重が生じだすと、抜きカス4の排出がより困難になり、次に、抜きカス4がパンチ1の下死点付近で堆積しだすので、カス詰まりが生じることを見出した。カス詰まりが生じだすと加工抵抗はさらに増大するので、最終的に金型破損に至る。すなわち、ゴミ5の排出を促進することで、カス詰まりの発生も抑制することができる。
【0021】
さらに説明すると、ゴミ詰まりは、抜きカス4と、摩耗ないしはチッピングしたパンチ1と、ゴミ5との3要素が揃ったときに発生しやすい。この3要素において、抜きカスを完全に無くすことは難しく、パンチ1とダイ2との間で被加工物3と物理的な接触があるので、工具摩耗を無くすことも困難である。よって、3つ目の要素である、ゴミを、パンチ内壁及びパンチ側面に付着しないようにすることが重要となる。
【0022】
以下、ゴミをパンチ内壁及びパンチ側面に付着しないようにするための、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
次に、本開示の実施の形態1にかかる打抜き方法を、初めに、図2を用いて概略的に説明する。図2は金型を中央で切断した断面図であり、2次元的に描いている。
【0024】
本開示の実施の形態1にかかる打抜き方法のポイントは、ダイ2の孔部2aの内壁に付着しかつ打抜きで発生したゴミ5を、パンチ1を使って、こそぎ落とす動作を行うことによってゴミ取り動作を実施するものである。
【0025】
一般的に、パンチ1とダイ2との間は、一定の間隔のクリアランス79があり、互いに近づけたり遠ざけたりはできない。
【0026】
そこで、本実施の形態1にかかる打抜き方法を実施する打ち抜き装置11においては、打抜き方向(Z軸)と直交する面内(X-Y面)で、X軸方向に前後移動可能、Y軸方向に前後移動可能、更には必要に応じてZ軸まわりの回転方向となるγ軸まわりに正逆回転可能な駆動部の一例として駆動テーブル46を備えている。
【0027】
加えて、駆動テーブル46の上に、加工抵抗を測定するための、1軸、ないしは3軸の荷重センサ45を備えている。
【0028】
本実施の形態1の打抜き装置11の場合、図2に示す通り、荷重センサ45の上にダイ2を設置することで、パンチ1とダイ2との間にあるクリアランス79の間隔を、駆動テーブル46の移動又は回転を制御することで変更可能となっている。
【0029】
次に、打抜き装置11の具体的なゴミ取り動作を説明する。
【0030】
図2中の打抜き動作中のゴミ取り動作の第1工程では、パンチ1が上方の初期位置I(図3参照)より下降し、パンチ1を孔部2aに挿入した状態の所定の間隔調整位置II(図2の点線で示す位置参照)で、例えば図2の右側のパンチ1とダイ2とのクリアランス79の間隔分に近い距離Δx1だけ近づくように駆動テーブル46の右方向への移動を制御する。
【0031】
そのようにしてパンチ1とダイ2とが近づいた状態で、間隔調整位置IIのパンチ1を下降動作すると、ダイ2の右側内壁に付着したゴミ5を、パンチ1の先端でこそぎ落とすことができる。この結果、ダイ2の孔部2aの右側の内壁のゴミ5を除去できる。
【0032】
その後、パンチ1は上方の元の初期位置Iに移動する。
【0033】
その次に、打抜き動作中のゴミ取り動作の第N工程(ただし、Nは2以上の整数。)において、パンチ1が上方の初期位置I(図3参照)より下降し、パンチ1を孔部2aに挿入した状態の間隔調整位置IIで、先ほどとは反対方向の左方向に駆動テーブル46を制御して距離Δx2だけ移動したのち、パンチ1を先ほどと同様に間隔調整位置IIから下降することで、ダイ2の孔部2aの左側内壁のゴミ5を、こそぎ落とし、同様にダイ2の孔部2aの左側の内壁のゴミ5を除去できる。
【0034】
その後、パンチ1は、上方の元の初期位置Iに戻る。
【0035】
ここで、前記第N工程のNとは、ゴミ取り動作の“N”回目を意味する。例えば、ダイ2の形状を最も単純な正方形としたとき(図9(a)参照)、正方形の内面は4辺で構成されるので、ゴミ取り動作は少なくとも4回必要となる。すなわち、1辺目のゴミ取り動作⇒2辺目のゴミ取り動作⇒・・・N辺目のゴミ取り動作を行うことになる。
【0036】
しかしながら、ダイ2の形状が長方形で、短辺と長辺との比が10倍あるような場合、ゴミ取り動作は、影響の大きいと考えられる長辺の2辺だけで十分な場合もある。
【0037】
要するに、ゴミ取り動作を何回実施すればよいかは、ダイ2の形状によって変わり、一概に決定できないため、説明の便宜上、「第N工程」というように表現している。図2の様な断面図で描くと、右と左との2つの工程だけのように見えるが、前後方向もあるので、必要な回数決定は、ダイ形状によって異なる。図9(c)の様な円形状の場合、90度ごとの4回のゴミ取り動作で良い場合もあるし、それ以外の回数のゴミ取り動作の場合もある。
【0038】
以上のゴミ取り動作によれば、パンチ1の側面に付着したゴミ(図示せず)も、ダイ2の孔部2aの内壁のゴミを除去するのと同時に、除去することができる。実際のパンチ1及びダイ2はそれぞれ三次元的な立体形状なので、先ほど説明した方法を、X-Y面内で駆動テーブル46を使ってX軸方向沿い及びY軸方向沿いにそれぞれ前後に動かしながら、同様の動作を繰り返せば、ダイ2の孔部2aの内壁の全周に付着したゴミ5を除去できる。
【0039】
以上が、本実施の形態に1おける打抜き方法の基本的なゴミ取り動作の説明である。
【0040】
次に、本開示の実施の形態1における打抜き装置11の具体的な構成について、図3、及び図4を使って説明する。
【0041】
初めに、図3において、本開示を実現する打抜き装置11の例を示す。本実施の形態1では、基本的な打抜き装置11として、サーボプレス装置を用いている。この理由は、サーボモータ12により主軸のボールねじ17を直接駆動して下型22に対して上型21を上下動させるので、制御性が良いからであるが、一般的なクランク式又は油圧式のプレス装置でも実現可能である。
【0042】
打抜き装置11は、パンチ1と、ダイ2と、荷重計の一例として荷重センサ45と、駆動部の一例としての駆動テーブル46と、制御部80とを少なくとも備えている。
【0043】
パンチ1は、サーボプレス装置の上型21に固定され、上型21と一体的に上下動する。
【0044】
ダイ2は、サーボプレス装置の下型22に固定され、ダイ2に積載した被加工物3をパンチ1で打抜き方向に打抜く孔部2aを有する。
【0045】
荷重センサ45は、下型側に配置され、打抜き方向の加工抵抗を測定する。
【0046】
駆動テーブル46は、ダイ2を支持して、打抜き方向と直交する面内で、パンチ1とダイ2との相対位置を変化させる。
【0047】
制御部80は、サーボプレス用制御装置18と、演算部の一例としてのコンピュータ31と、駆動テーブル用コントローラ35とを備えて、パンチ1の打抜き動作と、荷重センサ45から取得した加工抵抗に基づく駆動テーブル46の駆動動作とを制御する。
【0048】
制御装置18は、パンチ1を孔部2aに挿入した状態で駆動テーブル46を打抜き方向と直交する面内で駆動させることで、所定の方向においてパンチ1とダイ2との間のクリアランス79の距離を縮め、その後、パンチ1を打抜き方向に駆動させるよう制御して、ゴミ取り動作を行う。
【0049】
以下、この打抜き装置11について詳しく説明する。
【0050】
図3に示した打抜き装置11おいて、制御装置18の制御の下にサーボプレス装置のサーボモータ12が駆動すると、上端に上プレート13が固定され下端に架台15が固定された4本のシャフト16にガイドされた可動プレート14が、上下に移動する。可動プレート14の天面には金型の上型21が取り付けられている。
【0051】
金型の上型21は、主には工具となるパンチ1と、被加工物3を押さえるためのストリッパー23とで構成され、ストリッパー23は、与圧をかけた状態でストリッパーばね24が組み込まれている。
【0052】
一方、上型21と相対するように下方には、架台15側に支持された下型22が設置されている。下型22にはダイ2が組み込まれ、可動プレート14の下向きの動きに合わせて上型21が下方に移動したとき、パンチ1の先端がダイ2とぶつかることなくダイ2の孔部2a内に挿入するように組み合わさっている。
【0053】
更に、下型22は、荷重センサ45を介して駆動テーブル46に取り付けられている。
【0054】
駆動テーブル46の後述する固定部46bは、打抜き装置11のベースプレート25に固定されて、動かないようになっている一方、後述する可動部46bは固定部46bに対して異動可能となっている。このような構成であれば、駆動テーブル46の可動部46b上に下型22を設置すれば、駆動テーブル46をX-Y面内で駆動すると、パンチ1に対して相対的にダイ2を動かすことができる。
【0055】
平板状の被加工物3は、上型23と下型22との間に、ダイ2に載せるように配置されている。
【0056】
打抜き装置11の制御部80は、荷重センサ45から加工抵抗を取得し、制御装置18とコンピュータ31とコントローラ35とでの構成に基づく制御動作により、サーボモータ12と駆動テーブル46とをそれぞれ駆動して、打抜き装置11全体の、ゴミ取り動作を含む打抜き動作の制御が可能となっている。
【0057】
荷重センサ45は、荷重センサ45のアンプ34を介して制御部80のコンピュータ31とつながっており、荷重センサ45で測定して取得した加工抵抗をコンピュータ31に入力する。
【0058】
同様に、駆動テーブル46の圧電素子などの各駆動装置は、制御部80の駆動テーブル用コントローラ35を介して、コンピュータ31とつながっており、コントローラ35又はコンピュータ31から各駆動装置に対して駆動量を出力できるようにしている。
【0059】
図3の構成では、可動プレート14の位置を精密に測長するために、サーボプレス装置の外部に固定されて可動プレート14の下面との距離を測定するギャップセンサ32を設けている。ギャップセンサ32は、ギャップセンサ用アンプ33を介して、コンピュータ31とつながっており、測定された可動プレート14の下面との距離をコンピュータ31に入力してコンピュータ31で可動プレート14の位置を精度良く検出して、パンチ1の初期位置I、間隔調整位置II、下死点の位置III、及び、最下点の位置IVなどを検出できるようにしている。
【0060】
よって、制御部80は、荷重センサ45から測定された加工抵抗を取得するとともにギャップセンサ32から測長された可動プレート14の位置を取得して、取得した情報を基に、パンチ1の上下動の駆動量と駆動テーブル46の駆動するための駆動量などの駆動情報を求めて、制御装置18とコントローラ35とにそれぞれ出力して、それぞれ駆動制御する。
【0061】
続けて、駆動テーブル46の構成について、図4を用いて説明する。駆動テーブル46は、外周の矩形枠状の固定部46aと、固定部46aの中央の矩形の開口部46g内に配置された中央の正方形などの矩形盤状の可動部46bとで構成され、2つの部分46a,46bは4つの隅部と角部とがそれぞれ互いに弾性ヒンジ46hにより繋がれた一体構造である。可動部46bは、本例の場合、複数個(例えば図4では6個)の圧電素子46c(46c1~46c6)を駆動テーブル用コントローラ35によってそれぞれ独立して駆動することによって、X軸方向に左右に移動、Y軸方向に前後に移動、及び、γ方向に正逆回転される。図4では、一例として、固定部46aの内部に、可動部46bの左側に中心線CLに対して同じ間隔dをあけて2か所にX軸方向沿いの圧電素子46c5,46c6を配置し、左側の圧電素子46c5,46c6と同軸に可動部46bの右側に中心線CLに対して同じ間隔dをあけて2か所にX軸方向沿いの圧電素子46c2,46c3を配置し、可動部46bの上側と下側に1か所ずつX軸方向には位置をずらせて(中心線CLに対して距離dだけずらせて)Y軸方向沿いの圧電素子46c1,46c4を配置している。各圧電素子46c1~46c6は、固定部46aの矩形の凹部46k内に配置され、各圧電素子46c1~46c6の底部と凹部46kの底部との間には板ばね46mが縮装されて各圧電素子46c1~46c6の先端がその先端に対面する可動部46bの縁部を常に押圧して接触するように配置している。
【0062】
固定部46aの内部の左上側の圧電素子46c6と右下側の圧電素子46c3と下側の圧電素子46c4とのそれぞれの近傍には距離センサ46d(46d1~46d3)を備えて、各距離センサ46dとそれに対面する可動部46bの縁部との距離を測定し、測定した距離を各距離センサ46dからコントローラ35にフィードバックされ、X軸方向移動、Y軸方向移動(並進)と、及びγ方向回転(Z軸まわりの回転)の3軸駆動制御可能となっており、必要に応じてコントローラ35で制御動作可能になっている。本例では小型化が容易なのでアクチュエータとして圧電素子46cを使用したが、磁歪素子のようなアクチュエータであってもかまわない。
【0063】
このような構成において、圧電素子46c1~46c6に初期電圧が無い場合は、可動部46bは片寄った位置にあり、設定した初期電圧を圧電素子46c1~46c6に掛けることで、可動部46bは初期位置(具体的には、例えば、圧電素子46c1~46c6の可動範囲の中央付近に設定する位置)に移動する。同時に、この初期位置を距離センサ46d(46d1~46d3)の原点位置として設定する。以降の制御では、距離センサ46dの位置を保持するフィードバック制御が働くので、駆動テーブル用コントローラ35からの指令が無い限り、位置が変わることは無い。これらの電源投入時の初期動作は、圧電素子を使った可動ステージでは極めて一般的なシーケンスである。
【0064】
可動部46bの可動について、X方向の並進動作を例に説明する。X方向に並進する場合には、距離センサ46d2が同じ位置を保った状態で、可動部46bの左側の2つの圧電素子46c5,46c6と右側の46c2,46c3を同期駆動して同じ駆動量だけ、例えばX(―)方向に2μm移動するならば、距離センサ46d1が2μm小さくなるように圧電素子46c2,46c3を縮む方向に制御し、距離センサ46d3が2μm大きくなるように圧電素子46c5,46c6を伸びる方向に同期制御すればよい。同様に、Y方向に並進動作する場合も、同様にX方向の距離センサ46d1と46d3が現状位置を維持した状態で、Y方向の距離センサ46d2が所定の値となるようにX方向の圧電素子46c2,46c3,46c5,46c6と、Y方向の圧電素子46c1,46c4を制御すれば良い。
【0065】
また、γ方向の回転(すなわち、Z軸回りの回転)の仕方について、ここでは一例として、具体的に正回転(右回り)の方法について説明する。γ方向の回転は、回転角度を直接制御するのでなく微小な距離センサでの微小な変位を制御することで回転動作する。距離センサ46d1と46d3が同じ値だけ遠くなる方向に圧電素子46c3,46c6を伸びる方向に制御する。同時に、圧電素子46c2,46c5,46c1,46c4を同じ距離だけ縮む方向に制御する。但し、距離センサ46d2は現状位置を保持する。以上のように制御することで、可動部46bが右回転する。このγ軸の回転角度と制御する距離との関係は、事前に校正すれば良い。
【0066】
中央の可動部46bには、荷重センサ45を介して下型22が取り付けられる。即ち、図3に示すとおり、打抜き荷重のかかる下型22は、可動部46bに支えられ、可動部46bはさらにベースプレート25に移動可能に支えられる。
【0067】
次に、打抜き動作毎にダイ2の孔部2aの内壁に付着したゴミ5を除去する動作について、図5を用いて詳細に説明する。なお、一例として、図5の説明においては、図3に示した打抜き装置11において被加工物3を連続的に所定回数打抜くことで、打ち抜きに伴うゴミが発生し、ダイ内壁及びパンチ側面に付着しているものとする。
【0068】
打抜き装置11内において、通常の打抜き動作から後述する条件に達したときは、ゴミ取り動作に移行する。ゴミ取り動作においては、被加工物3を打抜かないので、上型21と下型22との間に被加工物3は無いものとする。
【0069】
図5(a)において、上型21は上方の所定の初期位置にあるとして、初期位置Iのパンチ1のみを描いているが、ストリッパー等も含めて特段取り外す必要は無い。ダイ2を含む下型22は、駆動テーブル46の上に、荷重センサ45を介して設置してある。ダイ2の孔部内壁には、ゴミ5が堆積しているものとする。
【0070】
次いで、図5(b)では、パンチ1の先端がダイ2の上面より微小な距離だけ(Δt、具体的な値は条件によって異なるが、例えば10μm程度)下方に位置する間隔調整位置IIまで下降させる。この間隔調整位置IIでは、図示しないストリッパーは、ダイ2の上面と接触している。
【0071】
次いで、図5(c)では、パンチ1の間隔調整位置IIにおいて、駆動テーブル46を駆動して、パンチ1とダイ2とが接触する位置まで接近させる。具体的には、3軸荷重センサ45を使用し、水平分力となるX軸荷重(方向がY軸方向の場合は、Y軸荷重)を検出することで、容易に接触位置を確認できる。この後更に、接触した位置から例えば0.5~1μmだけパンチ1とダイ2とを離すと、なお良い。これは、後述のゴミ取り動作において、パンチ1とダイ2との摩擦を低減するためである。
【0072】
次いで、図5(d)では、Z軸方向にパンチ1を下降し、ダイ2内壁に付着したゴミ5をパンチ1の先端によって、こそぎ落とす。この時の加工速度は、打抜き速度と同じであってもかまわないし、遅くてもよい。パンチ1の最下点の位置IVは、通常の加工時の下死点の位置IIIより下方であることが望ましい。さらに、パンチ1の最下点の位置IVは、ダイ2の孔部内壁のストレート部を過ぎてテーパー形状で下方に向かうに従い広くなっている位置であることが望ましい。パンチ1の加工時における下死点の位置IIIと、ゴミ取り動作時の最下点の位置IVが異なるような動作を含む場合、図3の実施例に示したようなサーボプレス装置を用いると、プログラムの変更だけで容易に変えることができるので、利便性が高い。
【0073】
次いで、図5(e)は、最下点の位置IVから上方への戻り動作である。最下点の位置IVにおいて、パンチ1を図5(a)と同じセンター位置に戻した後に、上方の初期位置Iへ戻すことが望ましい。
【0074】
以上、図5(a)~(e)の動作によって、ゴミ取りを実現することができる。
【0075】
なお、図5(c)では、パンチ1とダイ2とをわずかに接触させる例を説明している。そのために荷重センサ45は3軸センサが必要であるが、パンチ1とダイ2とのクリアランス79の間隔が事前にわかっているのであれば、荷重センサ45として、高価な3軸荷重センサを使用せずに、1軸荷重センサを使用しても、同様に操作できる。具体的には、例えば、クリアランス79の間隔が事前に例えば10μmとするならば、駆動テーブル46による水平移動距離を例えば9.5μmとして移動させたとしても、パンチ1とダイ2とが接触することは無い。この場合、装置全体の構成をより安価に構成できる。
【0076】
次に、打抜き動作による通常の連続生産中から、どの様なタイミングでゴミ取り動作に入るのかを説明する。
【0077】
図1(b)において、ダイ孔部内壁にゴミが付着すると、打抜き後の荷重がゼロとならずに増加することを説明している。そこで、打抜き時、及び打抜き後の荷重プロファイルに着目し、力積を比較することを考える。
【0078】
図6に打抜きプロセスにおける力積を、演算部の一例として機能するコンピュータ31で算出する例を示す。縦軸は打抜き荷重であり、横軸が経過時間となる。打抜き開始点は、ストリッパーばね24のリニアな荷重増加からパンチ1の先端が被加工物3に接触した段階なので、急激な荷重増加となって現れることでコンピュータ31で検出できる。パンチ1の先端が被加工物3を貫通するときに要した時間は、打抜き速度と被加工物3の材料厚みとをコンピュータ31に事前に記憶させることでコンピュータ31で算出できる。よって、同図中の打抜き時荷重プロファイルから、打抜き時の力積Aをコンピュータ31で求めることができる。
【0079】
同様に、パンチ1の先端が被加工物3を貫通してから、下死点の位置IIIにパンチ1が到達するまでの時間がコンピュータ31で予め設定されているため、ゴミ詰まり部の力積Bもコンピュータ31で求まる。結果、打抜き時の力積Aとゴミ詰まり部の力積Bとをコンピュータ31で比較することで、ゴミ詰まりの進行程度をコンピュータ31で求め、求めた進行程度を、打抜き装置11の動作を打抜き動作による連続生産からゴミ取り動作に移行するための判定基準とすることができる。
【0080】
具体的には、コンピュータ31において、生産からゴミ取り動作に移行する判定基準J=B/Aとする。ゴミ詰まり部の力積Bは、パンチ1と被加工物3との間の摩擦力、及びカス4とダイ2との間の摩擦力しかないので、非常に小さい(具体的には、J<1)。しかしながら、ゴミ詰まりが生じると、Jの値は1以上に大きくなるので、判定基準として使用しやすい。但し、判定基準Jの値が小さすぎる場合、頻繁に打抜き装置11が停止し、ゴミ取り動作に移行するので、打抜き装置11としての生産性が低下する。反対に、大きな値に設定しすぎると、ゴミ取り動作に移行する前に金型破損等の大トラブルが発生する可能背もある。よって、その判定基準Jは、ユーザが状況を見ながら適切に設定する必要がある。具体的なゴミ取り動作に移行するJの値としては、例えば2<J<10が適切である。
【0081】
図7には、図6と異なり、打抜きプロセスにおける仕事をコンピュータ31で算出する例を示す。縦軸は打抜き荷重であり、横軸がパンチ1の下降距離となる。図3において、ギャップセンサ32の出力を横軸として取ればよい。打抜き開始点は、ストリッパーばね24のリニアな荷重増加からパンチ1の先端が被加工物3に接触した段階なので、急激な荷重増加となって現れることでコンピュータ31で検出できる。パンチ1の先端が被加工物3を貫通するのに要した距離は、被加工物3の材料厚みをコンピュータ31に事前に記憶させることでコンピュータ31で算出できる。よって、同図中の打抜き時荷重プロファイルから、打抜き時の仕事Cをコンピュータ31で求めることができる。
【0082】
同様に、ゴミ詰まり部の仕事は、パンチ1の先端が被加工物3を貫通してから、下死点の位置IIIに到達するまでの下降距離がコンピュータ31で予め設定されているため、ゴミ詰まり部の仕事Dもコンピュータ31で求まる。結果、打抜き時の仕事Cとゴミ詰まり部の仕事Dとをコンピュータ31で比較することで、ゴミ詰まりの進行程度をコンピュータ31で求め、求めた進行程度を、打抜き装置の動作を連続生産からゴミ取り動作に移行するための判定基準とすることができる。
【0083】
具体的には、生産からゴミ取り動作に移行する判定基準J=D/Cとする。ゴミ詰まり部の仕事Dは、パンチ1と被加工物3との間の摩擦力、及びカス4とダイ2との間の摩擦力しかないので、非常に小さい(具体的には、J<1)。しかしながら、ゴミ詰まりが生じると、Jの値は1以上に大きくなるので、判定基準として使用しやすい。但し、判定基準Jの値が小さすぎる場合、頻繁に打抜き装置11が停止し、ゴミ取り動作に移行するので、打抜き装置11としての生産性が低下する。反対に大きな値に設定しすぎると、ゴミ取り動作に移行する前に金型破損等の大トラブルが発生する可能もある。よって、その判定基準Jは、ユーザが状況を見ながら適切に設定する必要がある。具体的なゴミ取り動作に移行するJの値としては、例えば2<J<10が適切である。
【0084】
なお、ゴミ取り動作への移行のきっかけについては、図6図7の例と異なってもよい。最も単純な例として、所定の生産数を経たら、ゴミ取り動作に移行してもよい。もしくは、打抜き後の荷重が、打抜き荷重より大きくなったら、ゴミ取り動作に移行してもよい。
【0085】
次に、ゴミ取り動作の設定について、図8を使って説明する。
【0086】
パンチ1とダイ2との間には、X軸方向とY軸方向の設定クリアランス79として(Δx、Δy)がある。このクリアランス79は概ねΔx=Δyとなるが、便宜的に分けて記す。その上で、図8中右側に、設定例を記す。ここでは、判定基準Jを20倍と設定し、Δx=±10μm、Δy=±10μm、動作モードは1と設定している。この“動作モード1”とは、例えば図9で後述するように、同図(a),(b),(c)・・・などのゴミ取り動作の基本パターンを指す。
【0087】
なお、例えば、生産からゴミ取り動作に移行するタイミングを、図6又は図7に記したように力積又は仕事と置くならば、その判定基準Jの設定部がコンピュータ31内にあってもよい。あるいは、生産を所定の回数実施した後、その後、ゴミ取り動作に移行するならば、動作移行タイミングを生産回数としてもよい。更に、ゴミ取り動作時の駆動テーブル移動量の設定値があってもよい。加えて、どの様なモードで、ゴミ取り動作をするかを設定してもよい。
【0088】
ゴミ取り動作時のモードについては、図9を使って説明する。打抜き形状は製品によって多種多様で、矩形又は丸形状以外があるが、おおむねX軸方向、Y軸方向にクリアランス79があるので、形状に合わせて必要な動作モードを設定すればよい。
【0089】
図9の例では、パンチ1が矩形のパンチならば、孔部2aにおいて、同図中(a)に示すような四隅に順に相対移動してゴミ取りするモード、(b)に示す対角方向の2か所に動作させてゴミ取りするモード、(c)はパンチ1が丸パンチによる例であり、ダイ2の孔部2aの内壁に沿って一巡するかの如くゴミ取りするモード、などが考えられる。
【0090】
前記実施の形態1によれば、パンチ1を孔部2aに挿入した状態で打抜き方向と直交する面内で駆動テーブル46を駆動させることで、X軸方向又はY軸方向などの所定の方向においてパンチ1とダイ2との間のクリアランス79の距離を縮め、その後、パンチ1を打抜き方向に駆動させるよう制御するゴミ取り動作を行うことができる。よって、打抜き加工によって発生した抜きカス4を除去することで、打抜き加工時にカス詰まりが発生することなく、金型破損に至るトラブルを回避でき、打抜き加工における生産性を向上することができる。
【0091】
なお、前記様々な実施の形態又は変形例のうちの任意の実施の形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施の形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施の形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示の前記態様にかかる打抜き装置及び打抜き方法は、打抜き加工によって発生したゴミを除去可能となり、打抜き加工時にカス詰まりが発生することなく、金型破損に至るトラブルを避けることができ、打抜き加工における生産性を向上することができる。よって、金属平板に限ることなく、樹脂フィルム、セラミックの本焼成前のシートの打ち抜きの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 パンチ
2 ダイ
2a 孔部
3 被加工物
4 抜きカス、もしくは、(打抜かれた)加工物
11 打抜き装置
12 サーボモータ
13 上プレート
14 可動プレート
15 架台
16 シャフト
17 ボールねじ
18 サーボプレス用制御装置
21 上型
22 下型
23 ストリッパー
24 ストリッパーばね
25 ベースプレート
31 コンピュータ
32 ギャップセンサ
33 ギャップセンサ用アンプ
34 荷重センサ用コントローラ(荷重センサ用アンプ)
35 2軸(3軸)駆動テーブル用コントローラ
45 打抜き用荷重センサ(1軸又は3軸)
46 2軸(3軸)駆動テーブル
46a 固定部
46b 可動部
46c、46c1~46c6 圧電素子
46d、46d1~46d3 距離センサ
46h 弾性ヒンジ
46k 凹部
46m 板ばね
79 クリアランス
80 制御部
101 パンチ
102 ダイ
102a 孔部
103 被加工物
104 抜きカス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10