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特開2023-159750ハーネスの配策構造及び車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159750
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】ハーネスの配策構造及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231025BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069656
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 弓子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 暁
(72)【発明者】
【氏名】相馬 寿昭
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】クリップの取付位置の自由度が高く、ハーネスに掛かる負荷を軽減させることが可能なハーネスの配策構造及び車両用シートを得る。
【解決手段】シートクッションパッド14にはワイヤフレーム18にクリップ24が係止される。クリップ24にはワイヤハーネス22が保持され、クリップ24を介してシートクッション12に対してワイヤハーネス22を配設される。ワイヤハーネス22がクリップ24に保持された状態でワイヤハーネス22とクリップ24の間には隙間が設けられており、クリップ24に対してワイヤハーネス22は揺動可能とされる。このように、ワイヤハーネス22にクリップ24を係止させるようにすることで、クリップ24の取付位置の自由度は向上する。また、クリップ24は、ワイヤハーネス22との間に隙間が設けられ状態でワイヤハーネス22を保持するため、クリップ24に作用する負荷は軽減される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座する乗員を弾性的に支持するシートパッドと、
前記シートパッドに設けられ、前記シートパッドを支持するワイヤフレームと、
前記ワイヤフレームに係止されると共に、前記シートパッドに配置される装置に対して電気的に接続されるハーネスとの間に隙間を設けた状態で前記ハーネスを保持するクリップと、
を備えたハーネスの配策構造。
【請求項2】
前記シートパッドは、乗員が着座するシートクッションパッドであり、
前記ワイヤフレームは、前記シートクッションパッド内に埋設され、当該シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面から当該ワイヤフレームの一部が露出するように設定されている請求項1に記載のハーネスの配策構造。
【請求項3】
前記クリップは、
前記ワイヤフレームに係止される係止部と、
前記ハーネスを保持する保持部と、
を備えた一対の挟持片を含んで構成されている請求項2に記載のハーネスの配策構造。
【請求項4】
前記ワイヤフレームは、略円柱状を成しており、
前記係止部は、前記ワイヤフレームの長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレームと対向し、前記ワイヤフレームの径方向の外側から当該ワイヤフレームを覆うことで当該ワイヤフレームに対してそれぞれ係止される請求項3に記載のハーネスの配策構造。
【請求項5】
前記係止部は、
前記一対の挟持片のうち一方の挟持片に設けられ、クランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った略半分を覆う第1クランク部と、
前記一対の挟持片のうち他方の挟持片に設けられ、前記ワイヤフレームを間において前記第1クランク部を反転させた状態でクランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った残りの略半分を覆う第2クランク部と、
を含んで構成されている請求項4に記載のハーネスの配策構造。
【請求項6】
前記一対の挟持片は、
前記一方の挟持片と前記他方の挟持片を連結し、前記一対の挟持片が閉止された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を互いに対向させ、前記一対の挟持片が開放された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を離間させるヒンジ部をさらに備え、
前記保持部は、
前記一方の挟持片における前記第1クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、略円筒状を成す前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第1保持壁と、
前記他方の挟持片における前記第2クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第2保持壁と、
をさらに含んで構成されている請求項5に記載のハーネスの配策構造。
【請求項7】
前記ヒンジ部を中心にして、前記第1保持壁と前記第1クランク部とは対向する位置に配置されると共に前記第2保持壁と前記第2クランク部とは対向する位置に配置されている請求項6に記載のハーネスの配策構造。
【請求項8】
前記ワイヤフレームに対して前記クリップを固定させる固定構造が設けられている請求項5に記載のハーネスの配策構造。
【請求項9】
前記固定構造は、
前記第1クランク部の一部を成し、当該第1クランク部と前記第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第1上壁部と、
前記第2クランク部の一部を成し、前記第1クランク部と当該第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第2上壁部と、
を含んで構成されている請求項8に記載のハーネスの配策構造。
【請求項10】
前記クリップは、前記ワイヤフレームに係止される係止部と、前記ハーネスを保持する保持部と、を備えた一対の挟持片を含んで構成され、
前記一対の挟持片は、前記一方の挟持片と前記他方の挟持片を連結し前記一対の挟持片が閉止された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を互いに対向させ前記一対の挟持片が開放された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を離間させるヒンジ部をさらに備え、
前記保持部は、前記一方の挟持片における前記第1クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、略円筒状を成す前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第1保持壁と、前記他方の挟持片における前記第2クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第2保持壁と、をさらに含んで構成されると共に、
前記固定構造は、
前記第1保持壁に形成され、前記第1上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出された延出部と、
前記第2保持壁に形成され、前記第2上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって突設され、前記一対の挟持片が閉止された状態で前記延出部の上方側に配置され当該延出部が当接可能な突出部と、
をさらに含んで構成されている請求項9に記載のハーネスの配策構造。
【請求項11】
前記第1保持壁と第2保持壁とで前記ハーネスを保持し、当該ハーネスに対して前記クリップを仮止めさせる第1仮止め構造が設けられている請求項6に記載のハーネスの配策構造。
【請求項12】
前記ワイヤフレームに対して前記クリップを仮止めさせる第2仮止め構造が設けられ、
前記第2仮止め構造は、
前記ワイヤフレームに係止される係止部の一部を成し、当該ワイヤフレームの上に配置可能とされる上壁部と、
前記係止部の他の一部を成し、前記上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、前記上壁部が前記ワイヤフレームの上に配置された状態で、前記保持部によって保持されるハーネスの上に配置可能とされる延出部と、
を含んで構成されている請求項11に記載のハーネスの配策構造。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか1項に記載のハーネスの配策構造が適用された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスの配策構造及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両用シートに対してワイヤハーネスを配策させるワイヤハーネスの配策構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、シート本体に設けられたブラケットにクリップが取り付けられ、このクリップによってワイヤハーネスが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-203541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、シート本体に設けられたブラケットにクリップを取り付けるため、クリップを取り付けるための孔部を形成する必要があり、クリップの取付位置の自由度が低くなる。また、ブラケット周りの部品との干渉を回避するため、ハーネスの配策方向が制限され、配策方向によってはハーネスに負荷が掛かる場合が懸念される。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、クリップの取付位置の自由度が高く、ハーネスに掛かる負荷を軽減させることが可能なハーネスの配策構造及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、着座する乗員を弾性的に支持するシートパッドと、前記シートパッドに設けられ、前記シートパッドを支持するワイヤフレームと、前記ワイヤフレームに係止されると共に、前記シートパッドに配置される装置に対して電気的に接続されるハーネスとの間に隙間を設けた状態で前記ハーネスを保持するクリップと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、シートパッドと、ワイヤフレームと、クリップと、を備えており、ワイヤフレームは、着座する乗員を弾性的に支持するシートパッドに設けられ、当該シートパッドを支持する。一方、クリップは、ワイヤフレームに係止されると共に、シートパッドに配置される装置に対して電気的に接続されるハーネスとの間に隙間を設けた状態で当該ハーネスを保持する。
【0008】
つまり、本発明では、シートパッドを支持するワイヤフレームに係止されるクリップを備え、当該ワイヤフレームに係止されたクリップによって、ハーネスとの間に隙間が設けられ状態で当該ハーネスが保持される。
【0009】
このように、シートパッドを支持するワイヤフレームにクリップを係止させるようにすることで、クリップの取付位置の自由度は向上する。また、ワイヤフレームにクリップを係止させることによって、クリップを取り付けるためのブラケット等の別部材は不要とされ、また、当該別部材に対してクリップを取り付けるための孔部の形成も不要となる。
【0010】
また、本発明では、クリップは、ハーネスとの間に隙間が設けられ状態でハーネスを保持する。言い換えると、クリップによってハーネスが保持された状態で、クリップとハーネスとの間には隙間が設けられる。つまり、クリップによってハーネスが保持された状態でハーネスは揺動可能となっている。このため、クリップによってハーネスが保持された状態で当該ハーネスに作用する負荷が軽減される。
【0011】
請求項2に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項1に記載の発明に係るハーネスの配策構造において、前記シートパッドは、乗員が着座するシートクッションパッドであり、前記ワイヤフレームは、前記シートクッションパッド内に埋設され、当該シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面から当該ワイヤフレームの一部が露出するように設定されている。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、シートパッドは、乗員が着座するシートクッションパッドであり、当該シートクッションパッド内にワイヤフレームが埋設されている。シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面から当該ワイヤフレームの一部が露出するように設定されており、当該シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面から露出するワイヤフレームの一部にクリップが係止される。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項2に記載の発明に係るハーネスの配策構造において、前記クリップは、前記ワイヤフレームに係止される係止部と、前記ハーネスを保持する保持部と、を備えた一対の挟持片を含んで構成されている。
【0014】
請求項3に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、クリップは、係止部及び保持部を備えた一対の挟持片を含んで構成されており、係止部は、ワイヤフレームに係止され、係止部を介してクリップがワイヤフレームに係止された状態で、保持部によってハーネスが保持される。
【0015】
請求項4に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項3に記載の発明に係るハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームは、略円柱状を成しており、前記係止部は、前記ワイヤフレームの長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレームと対向し、前記ワイヤフレームの径方向の外側から当該ワイヤフレームを覆うことで当該ワイヤフレームに対してそれぞれ係止される。
【0016】
請求項4に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、ワイヤフレームは、略円柱状を成している。また、係止部は、一対の挟持片にそれぞれ設けられており、ワイヤフレームの長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレームと対向して配置されている。このため、当該係止部が、ワイヤフレームの径方向の外側から当該ワイヤフレームを覆うことによって、当該ワイヤフレームに対してそれぞれ係止されるように設定されている。
【0017】
請求項5に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項4に記載の発明に係るハーネスの配策構造において、前記係止部は、前記一対の挟持片のうち一方の挟持片に設けられ、クランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った略半分を覆う第1クランク部と、前記一対の挟持片のうち他方の挟持片に設けられ、前記ワイヤフレームを間において前記第1クランク部を反転させた状態でクランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った残りの略半分を覆う第2クランク部と、を含んで構成されている。
【0018】
請求項5に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、係止部は一対の挟持片にそれぞれ設けられており、第1クランク部及び第2クランク部を含んで構成されている。第1クランク部は、一方の挟持片に設けられており、クランク状に屈曲し、ワイヤフレームの周方向に沿った略半分を覆うように形成されている。また、第2クランク部は、他方の挟持片に設けられており、ワイヤフレームを間において第1クランク部を反転させた状態でクランク状に屈曲し、ワイヤフレームの周方向に沿った残りの略半分を覆うように形成されている。
【0019】
本発明では、第1クランク部及び第2クランク部によって、ワイヤフレームが径方向の外側から覆われることによって、当該ワイヤフレームに対して第1クランク部及び第2クランク部を介してクリップが係止される。
【0020】
請求項6に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項5に記載の発明に係るハーネスの配策構造において、前記一対の挟持片は、前記一方の挟持片と前記他方の挟持片を連結し、前記一対の挟持片が閉止された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を互いに対向させ、前記一対の挟持片が開放された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を離間させるヒンジ部をさらに備え、前記保持部は、前記一方の挟持片における前記第1クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、略円筒状を成す前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第1保持壁と、前記他方の挟持片における前記第2クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第2保持壁と、をさらに含んで構成されている。
【0021】
請求項6に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、一対の挟持片は、ヒンジ部をさらに備えており、保持部は、第1保持壁及び第2保持壁をさらに含んで構成されている。ヒンジ部は、一方の挟持片と他方の挟持片を連結しており、一対の挟持片が閉止された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を互いに対向させ、一対の挟持片が開放された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を離間させる。
【0022】
第1保持壁は、一方の挟持片における第1クランク部とヒンジ部の間に設けられており、略円筒状を成すハーネスの径方向の外側に設けられる。一方、第2保持壁は、他方の挟持片における第2クランク部とヒンジ部の間に設けられており、ハーネスの径方向の外側に設けられる。つまり、ヒンジ部によって、一対の挟持片が閉止された状態で、一方の挟持片に設けられた第1保持壁と他方の挟持片に設けられた第2保持壁との間でハーネスが保持される。
【0023】
請求項7に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項6に記載のハーネスの配策構造において、前記ヒンジ部を中心にして、前記第1保持壁と前記第1クランク部とは対向する位置に配置されると共に前記第2保持壁と前記第2クランク部とは対向する位置に配置されている。
【0024】
請求項7に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、ヒンジ部を中心にして、第1保持壁と第1クランク部とは対向する位置に配置されると共に第2保持壁と第2クランク部とは対向する位置に配置されることによって、一方の挟持片と他方の挟持片とは、第1保持壁、第2保持壁と第1クランク部、第2クランク部との間で交叉するように形成される。
【0025】
このように、一方の挟持片と他方の挟持片とで互いに交叉するように形成されることによって、本発明では、ワイヤフレームに対して、係止部が外れ難くなり、第1クランク部及び第2クランク部による係止力を向上させることが可能となる。
【0026】
請求項8に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項5に記載のハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームに対して前記クリップを固定させる固定構造が設けられている。
【0027】
請求項8に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、固定構造によってワイヤフレームに対してクリップが固定される。
【0028】
請求項9に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項8に記載のハーネスの配策構造において、前記固定構造は、前記第1クランク部の一部を成し、当該第1クランク部と前記第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第1上壁部と、前記第2クランク部の一部を成し、前記第1クランク部と当該第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第2上壁部と、を含んで構成されている。
【0029】
請求項9に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、固定構造は、第1上壁部及び第2上壁部を含んで構成されている。第1上壁部は、第1クランク部の一部を成しており、当該第1クランク部と第2クランク部とでワイヤフレームをその径方向の外側から覆った状態で、当該ワイヤフレームの上側に配置可能とされる。一方、第2上壁部は、第2クランク部の一部を成しており、第1クランク部と第2クランク部とでワイヤフレームをその径方向の外側から覆った状態で、当該ワイヤフレームの上側に配置可能とされる。
【0030】
請求項10に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項9に記載のハーネスの配策構造において、前記クリップは、前記ワイヤフレームに係止される係止部と、前記ハーネスを保持する保持部と、を備えた一対の挟持片を含んで構成され、前記一対の挟持片は、前記一方の挟持片と前記他方の挟持片を連結し前記一対の挟持片が閉止された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を互いに対向させ前記一対の挟持片が開放された状態で当該一方の挟持片と当該他方の挟持片を離間させるヒンジ部をさらに備え、前記保持部は、前記一方の挟持片における前記第1クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、略円筒状を成す前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第1保持壁と、前記他方の挟持片における前記第2クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第2保持壁と、をさらに含んで構成されると共に、前記固定構造は、前記第1保持壁に形成され、前記第1上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出された延出部と、前記第2保持壁に形成され、前記第2上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって突設され、前記一対の挟持片が閉止された状態で前記延出部の上方側に配置され当該延出部が当接可能な突出部と、をさらに含んで構成されている。
【0031】
請求項10に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、固定構造は、延出部及び突出部をさらに含んで構成されている。延出部は、第1保持壁に形成されており、第1上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出されている。一方、突出部は、第2保持壁に形成されており、第2上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって突設され、一対の挟持片が閉止された状態で延出部の上方側に配置され当該延出部が当接可能とされている。
【0032】
このように、第2保持壁に当接する延出部及び延出部に当接する突設部が設けられることによって、一対の挟持片の変形が抑制され、ワイヤフレームに対してクリップの固定された状態が維持される。
【0033】
請求項11に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項6に記載のハーネスの配策構造において、前記第1保持壁と第2保持壁とで前記ハーネスを保持し、当該ハーネスに対して前記クリップを仮止めさせる第1仮止め構造が設けられている。
【0034】
請求項11に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、第1仮止め構造によってハーネスに対してクリップが仮止めされる。第1仮止め構造では、第1保持壁と第2保持壁とでハーネスを保持することによって、当該ハーネスに対してクリップが仮止めされる。本発明では、このように、ハーネスに仮止めされたクリップをワイヤフレームに係止させればよいため、このような仮止め構造が設けられていない場合と比較して、作業性がよい。
【0035】
請求項12に記載の発明に係るハーネスの配策構造は、請求項11に記載のハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームに対して前記クリップを仮止めさせる第2仮止め構造が設けられ、前記第2仮止め構造は、前記ワイヤフレームに係止される前記係止部の一部を成し、当該ワイヤフレームの上に配置可能とされる上壁部と、前記係止部の他の一部を成し、前記上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、前記上壁部が前記ワイヤフレームの上に配置された状態で、前記保持部によって保持されるハーネスの上に配置可能とされる延出部と、を含んで構成されている。
【0036】
請求項12に記載の発明に係るハーネスの配策構造では、第2仮止め構造によってワイヤフレームに対してクリップが仮止めされる。当該第2仮止め構造は、上壁部及び延出部を含んで構成されている。上壁部は、ワイヤフレームに係止される係止部の一部を成しており、当該ワイヤフレームの上に配置可能とされる。一方、延出部は、係止部の他の一部を成しており、上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、当該上壁部がワイヤフレームの上に配置された状態で、保持部によって保持されるハーネスの上に配置可能とされる。
【0037】
つまり、ワイヤフレームの上に係止部の一部を成す上壁部を引っ掛けた状態で延出部の下方側に、保持部によって保持されるハーネスを配置させることによってハーネスを仮止めすることができ、作業性が向上する。
【0038】
請求項13に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項12の何れか1項に記載のハーネスの配策構造が適用されている。
【0039】
請求項13に記載の発明に係る車両用シートでは、請求項1~請求項12の何れか1項に記載のハーネスの配策構造によって得られる効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明に係るハーネスの配策構造及び車両用シートによれば、クリップの取付位置の自由度が高く、ハーネスに掛かる負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本実施の形態に係るハーネスの配策構造が適用されたシートクッションを左斜め後方側から見た斜視図である。
図2】本実施の形態に係るハーネスの配策構造が適用されたシートクッションにおいて表皮が除かれた状態を示す左斜め後方側から見た斜視図である。
図3】本実施の形態に係るハーネスの配策構造が適用されたシートクッションに設けられたワイヤフレーム及びクリップを示す左斜め後方側から見た斜視図である。
図4】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップが閉止された状態を示す斜視図である。
図5】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップが開放された状態を示す斜視図である。
図6】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップにハーネスが保持された状態を示す斜視図である。
図7】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップがワイヤフレームに係止される状態を示す動作図である。
図8】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップにハーネスが保持された状態でクリップがワイヤフレームに係止される状態を示す動作図である。
図9】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップにハーネスが保持されると共にクリップがワイヤフレームに係止される状態を示す動作図である。
図10】本実施の形態に係るハーネスの配策構造に用いられるクリップがワイヤフレームに対して仮止めされた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの配策構造が適用された車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、車両用シート10の前方、上方、シート幅方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0043】
まず、本実施の形態に係るワイヤハーネスの配策構造が適用された車両用シートの構成について簡単に説明する。
【0044】
図1図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション12と、図示はしないが、シートクッション12に着座した乗員の上体を支持するシートバックと、シートクッション12に着座した乗員の頭部を支持するヘッドレストと、を備えている。
【0045】
当該シートクッション12は、骨格部材であるシートフレーム(図示省略)と、シートクッションパッド(シートパッド)14と、シートクッションパッド14を被覆するシートクッション表皮16と、を備えている。
【0046】
本実施形態では、シートクッションパッド14内にワイヤフレーム18が埋設されている。ワイヤフレーム18は、例えば、断面形状が円柱状を成す線状の複数の金属材料を屈曲、或いは溶接により結合させて平面視で略矩形枠状を成すように形成されており、シートクッションパッド14の外周部に配置されている。このように、シートクッションパッド14の外周部にワイヤフレーム18が設けられることによって、当該シートクッションパッド14の形状を維持するための剛性が付与される。
【0047】
<ワイヤハーネスの配策構造の構成>
次に、本実施の形態に係るワイヤハーネスの配策構造の構成について説明する。
【0048】
本実施形態では、シートクッションパッド14におけるシート前後方向の後端面14Aかつシート幅方向の中央部から当該ワイヤフレーム18の一部(以下「露出部20」と称する)が露出している。露出部20は、平面視でシート前後方向の前方側を開口とする略U字状を成しており、当該露出部20には、ワイヤハーネス(ハーネス)22を保持するクリップ24が係止可能とされている。
【0049】
ここで、ワイヤハーネス22は、例えば、温度センサ(装置)26に接続されている。当該温度センサ26は、例えば、シートクッションパッド14とシートクッション表皮16の間に配置されており、シート幅方向の中央部においてシート前後方向に沿って延在されている。
【0050】
このように、温度センサ26が接続されたワイヤハーネス22は、図示はしないが、車両側の制御装置としての車載用ECU(ECU;Electronic Control Unit、以下単に「ECU」と称する)と電気的に接続されている。ECUは、CPU、ROM、RAM、ストレージ及び通信インタフェースを有し、これらの各構成部は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0051】
また、ECUは、機能構成として、制御部を有する。制御部の機能構成は、CPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。このため、当該制御部は、例えば、シートクッション12の温度を検出し、ヒータ等の空調装置が制御されるように設定される。
【0052】
なお、ここでは、シートクッションパッド14に配置される装置として温度センサ26を例に挙げて説明したが、温度センサ26に限らず、着座センサ等他のセンサでもよく、さらにはシート状ヒータ等、センサ以外の装置でも適用可能である。
【0053】
(クリップ)
ここで、クリップ24について説明する。
【0054】
図4図8に示されるように、クリップ24は、合成樹脂によって形成されており、一対の挟持片28、30を含んで構成されており、ワイヤフレーム18に係止される係止部32、34と、ワイヤハーネス22を保持する保持部36、38と、をそれぞれ備えている。
【0055】
図5図8に示されるように、挟持片28と挟持片30の間にはヒンジ部40が設けられており、このヒンジ部40を介して挟持片28と挟持片30は連結されると共に、当該ヒンジ部40を介して一対の挟持片28、30(クリップ24)は開閉可能とされている。
【0056】
図6図9の実線で示されるように、クリップ24が閉止された状態では、挟持片28と挟持片30は互いに対向して配置され、この状態で、クリップ24を介してワイヤハーネス22が保持される。一方、図5図9の二点鎖線で示されるように、クリップ24が開放された状態では、挟持片28と挟持片30は離間し、クリップ24に対してワイヤハーネス22は着脱可能とされる。
【0057】
図8に示されるように、クリップ24が閉止された状態では、挟持片28に設けられた係止部32と、挟持片30に設けられた係止部34は、ワイヤフレーム18の露出部20において長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレーム18と対向して配置される。そして、係止部32、34によってワイヤフレーム18の径方向の外側から当該ワイヤフレーム18を覆うことによって、当該ワイヤフレーム18に対して係止部32、34は係止される。
【0058】
ここで、図4図8図10に示されるように、挟持片28では、係止部32はクランク形状に形成されたクランク部42を含んで構成されており、保持部36は矩形状に形成された保持壁44を含んで構成されている。当該保持壁44とクランク部42とは、ヒンジ部40を中心に対向する位置に配置されている。
【0059】
また、挟持片30では、係止部34はクランク形状に形成されたクランク部46を含んで構成されており、保持部38は矩形状に形成された保持壁48を含んで構成されている。当該保持壁48とクランク部46とは、ヒンジ部40を中心に対向する位置に配置されている。
【0060】
つまり、本実施形態では、挟持片28と挟持片30とは、保持壁44、保持壁48とクランク部42、クランク部46との間で交叉するように形成されている。そして、クランク部42及びクランク部46によってワイヤフレーム18に対してクリップ24が係止され、保持壁44及び保持壁48によってワイヤハーネス22がクリップ24に保持される(第1仮止め構造)。
【0061】
挟持片28についてさらに具体的に説明する。
【0062】
前述のように、挟持片28は、クランク部42及び保持壁44を含んで構成されている。保持壁44はヒンジ部40側に設けられており、保持壁44の上端にはクランク部42が連設されている(後述する)。クリップ24が閉止された状態で、保持壁44は、シート側面視でシート前後方向の後方側に配置されている。
【0063】
ヒンジ部40は、ワイヤフレーム18の下方側に配置されるように設定されており、保持壁44は、ヒンジ部40から上方側へ向かうにつれてシート前後方向の後方側へ向かって傾斜している。そして、当該保持壁44の上端部44Aは、シート上下方向の上方側へ向かって起立して形成されている。
【0064】
ここで、保持壁44の上端におけるシート幅方向の半分側にクランク部42が連設されている。クランク部42は、クリップ24が閉止された状態で、シート側面視でシート前後方向の後方側を開口とする略U字状を成しており、係止されるワイヤフレーム18の下側に配置可能とされる下壁部42Aと、当該下壁部42Aから起立しワイヤフレーム18の前方側に配置可能とされる前壁部42Bと、当該前壁部42Bと繋がりワイヤフレーム18の上側に配置される上壁部42Cと、を含んで構成されている。
【0065】
そして、前壁部42Bは、図7に示されるように、下壁部42A側を起点としてシート前後方向の前方側へ向かって弾性変形可能としている。また、図4図5に示されるように、保持壁44の上端部44A側には、下壁部42Aと略平行に形成された突設部50が突設されている。
【0066】
次に、挟持片30についてさらに具体的に説明する。
【0067】
前述のように、挟持片30は、クランク部46及び保持壁48を含んで構成されている。保持壁48はヒンジ部40側に設けられており、保持壁48の上端にはクランク部46が連設されている(後述する)。保持壁48は、略板状を成しており、クリップ24が閉止された状態で、シート側面視でシート前後方向の前方側に配置されている。
【0068】
ヒンジ部40は、ワイヤフレーム18(図8参照)の下方側に配置されるように設定されているため、保持壁48は、ヒンジ部40から上方側へ向かうにつれてシート前後方向の前方側へ向かって傾斜している。そして、当該保持壁48の上端部48Aは、シート上下方向の上方側へ向かって起立して形成されている。
【0069】
ここで、保持壁48の上端におけるシート幅方向の半分側にクランク部46が連設されている。クランク部46は、クリップ24が閉止された状態で、シート側面視でシート前後方向の前方側を開口とする略U字状を成しており、係止されるワイヤフレーム18の下側に配置可能とされる下壁部46Aと、当該下壁部46Aから起立しワイヤフレーム18の前方側に配置可能とされる後壁部46Bと、当該下壁部46Aと対向して配置されワイヤフレーム18の上側に配置される上壁部46Cと、を含んで構成されている。
【0070】
そして、後壁部46Bは、図7に示されるように、下壁部46A側を起点としてシート前後方向の後方側へ向かって弾性変形可能としている。また、図4図5図8に示されるように、保持壁48における上端部48A側には、当該下壁部46Aと略平行に形成された延出片52が延出されている。当該延出片52は、クリップ24が閉止された状態では、保持壁44に当接可能とされ、延出片52の上には突設部50が当接可能とされている。
【0071】
なお、クランク部42とクランク部46は、ワイヤフレーム18の長手方向の異なる位置で当該ワイヤフレーム18とそれぞれ対向可能とされるため、シート幅方向の一方側にクランク部42が設けられ、シート幅方向の他方側にクランク部46が設けられている。このため、クリップ24が閉止された状態では、クランク部42とクランク部46は、ワイヤフレーム18を間において、ワイヤフレーム18の長手方向に沿って配置されることになる。
【0072】
また、ワイヤフレーム18に対してクリップ24が係止され、保持壁44及び保持壁48によってワイヤハーネス22がクリップ24に保持された状態で、本実施形態では、ワイヤハーネス22と延出片52の間には隙間が設けられるように設定され、クリップ24に対してワイヤハーネス22は揺動可能とされている。つまり、本実施形態では、ワイヤハーネス22は圧接されない状態でクリップ24に保持される。
【0073】
ここで、前述のように、クランク部46の上壁部46Cは、ワイヤフレーム18に係止される係止部34の一部を成しており、当該ワイヤフレーム18の上に配置可能とされる。一方、延出片52は、上壁部46Cの延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、当該上壁部46Cがワイヤフレーム18の上に配置された状態で、保持部36、38によって保持されるワイヤハーネス22の上に配置可能とされる。つまり、これにより、ワイヤフレーム18に対してクリップ24を仮止めさせてもよい(第2仮止め構造)。
【0074】
<ワイヤハーネスの配策構造の作用及び効果>
次に、本実施の形態に係るワイヤハーネスの配策構造の作用及び効果について説明する。
【0075】
図3に示されるように、本実施形態では、シートクッション12のシートクッションパッド14にはワイヤフレーム18が設けられており、シートクッションパッド14におけるシート前後方向の後端面14Aかつシート幅方向の中央部には、当該ワイヤフレーム18の一部が露出する露出部20が設けられている。
【0076】
本実施形態では、この露出部20にクリップ24が係止可能とされている。クリップ24には、ワイヤハーネス22が保持可能とされており、当該クリップ24を介して、シートクッション12に対してワイヤハーネス22を配設可能としている。
【0077】
そして、本実施形態では、ワイヤハーネス22がクリップ24に保持された状態で、ワイヤハーネス22とクリップ24の間には隙間が設けられるように設定されており、クリップ24に対してワイヤハーネス22は揺動可能とされている。
【0078】
このように、本実施形態では、シートクッションパッド14を支持するワイヤフレーム18にクリップ24を係止させるようにすることで、クリップ24の取付位置の自由度は向上する。また、ワイヤフレーム18にクリップ24を係止させることによって、比較例として、クリップ24を取り付けるためのブラケット等の別部材は不要とされ、また、当該別部材に対してクリップ24を取り付けるための孔部の形成も不要となる。
【0079】
また、本実施形態では、クリップ24は、ワイヤハーネス22との間に隙間が設けられ状態でワイヤハーネス22を保持するため、当該クリップ24によってワイヤハーネス22が保持された状態でワイヤハーネス22は揺動可能となっている。つまり、クリップ24によってワイヤハーネス22が保持された状態で、当該ワイヤハーネス22がクリップ24に対して圧接される場合と比較して、クリップ24に作用する負荷は軽減される。
【0080】
また、本実施形態では、図6図8図10に示されるように、クリップ24は、係止部32、34及び保持部36、38を備えた一対の挟持片28、30を含んで構成されており、保持部36、38によってワイヤハーネス22が保持された状態で、係止部32、34は、ワイヤフレームに係止され、係止部32、34を介してクリップ24がワイヤフレーム18に係止される。
【0081】
当該係止部32、34は、ワイヤフレーム18の長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレーム18と対向して配置され、ワイヤフレーム18の径方向の外側から当該ワイヤフレーム18を覆うことで当該ワイヤフレーム18に対してそれぞれ係止されるように設定されている。
【0082】
また、係止部32、34は、クランク部42、クランク部46を含んでそれぞれ構成されている。クランク部42は、クランク状に屈曲し、ワイヤフレーム18の周方向に沿った略半分を覆うように形成されている。また、クランク部46は、ワイヤフレーム18を間においてクランク部42を反転させた状態でクランク状に屈曲しており、ワイヤフレーム18の周方向に沿った残りの略半分を覆うように形成されている。
【0083】
ここで、一対の挟持片28、30は、ヒンジ部40をさらに備えており、保持部36、38は、保持壁44、保持壁48をさらにそれぞれ含んで構成されている。ヒンジ部40は、一方の挟持片28と他方の挟持片30を連結しており、一対の挟持片28、30が閉止された状態で当該一方の挟持片28と当該他方の挟持片30を互いに対向させ、一対の挟持片28、30が開放された状態で当該一方の挟持片28と当該他方の挟持片30を離間させる。
【0084】
保持壁44は、一方の挟持片28におけるクランク部42とヒンジ部40の間に設けられており、略円筒状を成すワイヤハーネス22の径方向の外側に設けられる。一方、保持壁48は、他方の挟持片30におけるクランク部46とヒンジ部40の間に設けられており、ワイヤハーネス22の径方向の外側に設けられる。つまり、ヒンジ部40によって、一対の挟持片28、30が閉止された状態で、一方の挟持片28に設けられた保持壁44と他方の挟持片30に設けられた保持壁48との間でワイヤハーネス22が保持される。
【0085】
本実施形態では、固定構造として、上壁部42C及び上壁部46Cを含んで構成されている。前述のように、上壁部42Cは、前壁部42B及び下壁部42Aを含んで構成されたクランク部42の一部を成しており、当該前壁部42Bは、図7の二点鎖線で示されるように、下壁部42A側を起点としてシート前後方向の前方側へ向かって弾性変形可能としている。また、上壁部46Cは、後壁部46B及び下壁部46Aを含んで構成されたクランク部46の一部を成しており、当該後壁部46Bは、下壁部46A側を起点としてシート前後方向の後方側へ向かって弾性変形可能としている。
【0086】
このため、ワイヤハーネス22が保持された状態のクリップ24をワイヤフレーム18の下方側に配置させた状態で、前壁部42B及び後壁部46Bを互いに離間する方向へ向かって弾性変形させ、上壁部42Cの先端と上壁部46Cの先端を離間させる。
【0087】
これにより、上壁部42Cの先端と上壁部46Cの先端の間をワイヤハーネス22が挿通可能となり、上壁部42Cの先端と上壁部46Cの先端の間にワイヤハーネス22を挿通させ前壁部42B及び後壁部46Bを復元させると、当該クランク部42とクランク部46がワイヤフレーム18に係止される。
【0088】
つまり、当該クランク部42とクランク部46によってワイヤフレーム18に対してクリップ24が係止され、クランク部42とクランク部46とでワイヤフレーム18をその周方向の外側から覆った状態で、上壁部42C及び上壁部46Cは、当該ワイヤフレーム18の上側に配置される。
【0089】
ここで、図6図8に示されるように、本実施形態では、挟持片28において、保持壁44とクランク部42とはヒンジ部40を中心に対向する位置に配置されると共に、挟持片30において、保持壁48とクランク部46とは、ヒンジ部40を中心に対向する位置に配置されている。
【0090】
つまり、挟持片28と挟持片30とは、保持壁44、保持壁48とクランク部42、クランク部46との間で交叉するように形成されている。これにより、本実施形態では、ワイヤフレーム18に対して、係止部32、34が外れ難くなり、クランク部42及びクランク部46による係止力を向上させることが可能となる。
【0091】
さらに、本実施形態では、固定構造として、延出片52及び突設部50をさらに含んで構成されている。延出片52は、保持壁48に形成されており、上壁部46Cの延出方向とは反対の方向へ向かって延出されている。一方、突設部50は、保持壁44に形成されており、上壁部42Cの延出方向とは反対の方向へ向かって突設され、一対の挟持片28、30が閉止された状態で延出片52の上方側に配置され当該延出片52が当接可能とされている。
【0092】
このように、保持壁48に当接する延出片52及び延出片52に当接する突設部50が設けられることによって、一対の挟持片28、30の変形が抑制され、ワイヤフレーム18に対してクリップ24の固定された状態が維持される。
【0093】
また、本実施形態では、仮止め構造によってワイヤフレーム18に対してクリップ24を仮止め可能とされている。第1仮止め構造では、保持壁44と保持壁48とでワイヤハーネス22を保持することによって、当該ワイヤハーネス22に対してクリップ24が仮止めされる。このため、本実施形態では、ワイヤハーネス22に仮止めされたクリップ24をワイヤハーネス22に係止させればよい。したがって、このような仮止め構造が設けられていない場合と比較して、本実施形態では作業性がよい。
【0094】
なお、前述のように、クランク部46の上壁部46Cは、ワイヤフレーム18に係止される係止部34の一部を成しており、当該ワイヤフレーム18の上に配置可能とされる。一方、延出片52は、上壁部46Cの延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、当該上壁部46Cがワイヤフレーム18の上に配置された状態で、保持壁48によって保持されるワイヤハーネス22の上に配置可能とされる。
【0095】
このため、本実施形態では、第2仮止め構造として、ワイヤフレーム18の上に上壁部46Cを引っ掛けた状態で延出片52の下方側に、保持部36、38によって保持されるワイヤハーネス22を配置させることによってワイヤハーネス22を仮止めしてもよい。
【0096】
(実施形態の補足事項)
以上の実施形態では、シートクッションパッド14内にワイヤフレーム18が埋設されているが、ワイヤフレーム18は必ずしもシートクッションパッド14内に埋設される必要はない。また、本実施形態では、ワイヤフレーム18は、平面視で略矩形枠状を成すように形成されているが、ワイヤフレーム18の形状についてはこれに限るものではない。
【0097】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス22を保持するクリップ24がワイヤフレーム18に対して係止することができればよいため、当該クリップ24の形状はこれに限るものではない。例えば、本実施形態では、クリップ24の係止部32、34は、クランク形状を成しているが、この形状に限るものではない。例えば、円弧状を成していてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス22について説明したが、ワイヤハーネス22に限るものではなく、ケーブル状のハーネスでもよい。
【0099】
さらに、本実施形態では、ワイヤハーネスの配策構造において、シートクッション12側に適用された例について説明したが、シートバック側に適用させてもよい。
【0100】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【0101】
<付記>
なお、下記の構成を適宜組み合わせて本発明に係るワイヤハーネスの配策構造としてもよい。
【0102】
(構成1)
ハーネスの配策構造において、着座する乗員を弾性的に支持するシートパッドと、前記シートパッドに設けられ、前記シートパッドを支持するワイヤフレームと、前記ワイヤフレームに係止されると共に、前記シートパッドに配置される装置に対して電気的に接続されるハーネスとの間に隙間を設けた状態で前記ハーネスを保持するクリップと、を備えている。
【0103】
(構成2)
ハーネスの配策構造において、前記シートパッドは、乗員が着座するシートクッションパッドであり、前記ワイヤフレームは、前記シートクッションパッド内に埋設され、当該シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面から当該ワイヤフレームの一部が露出するように設定されている。
【0104】
(構成3)
ハーネスの配策構造において、前記クリップは、前記ワイヤフレームに係止される係止部と、前記ハーネスを保持する保持部と、を備えた一対の挟持片を含んで構成されている。
【0105】
(構成4)
ハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームは、略円柱状を成しており、前記係止部は、前記ワイヤフレームの長手方向の異なる位置でそれぞれ当該ワイヤフレームと対向し、前記ワイヤフレームの径方向の外側から当該ワイヤフレームを覆うことで当該ワイヤフレームに対してそれぞれ係止される。
【0106】
(構成5)
ハーネスの配策構造において、前記係止部は、前記一対の挟持片のうち一方の挟持片に設けられ、クランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った略半分を覆う第1クランク部と、前記一対の挟持片のうち他方の挟持片に設けられ、前記ワイヤフレームを間において前記第1クランク部を反転させた状態でクランク状に屈曲し、前記ワイヤフレームの周方向に沿った残りの略半分を覆う第2クランク部と、を含んで構成されている。
【0107】
(構成6)
ハーネスの配策構造において、前記保持部は、前記一方の挟持片における前記第1クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、略円筒状を成す前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第1保持壁と、前記他方の挟持片における前記第2クランク部と前記ヒンジ部の間に設けられ、前記ハーネスの径方向の外側に設けられる第2保持壁と、をさらに含んで構成されている。
【0108】
(構成7)
ハーネスの配策構造において、前記ヒンジ部を中心にして、前記第1保持壁と前記第1クランク部とは対向する位置に配置されると共に前記第2保持壁と前記第2クランク部とは対向する位置に配置されている。
【0109】
(構成8)
ハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームに対して前記クリップを固定させる固定構造が設けられている。
【0110】
(構成9)
ハーネスの配策構造において、前記固定構造は、前記第1クランク部の一部を成し、当該第1クランク部と前記第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第1上壁部と、前記第2クランク部の一部を成し、前記第1クランク部と当該第2クランク部とで前記ワイヤフレームを径方向の外側から覆った状態で、前記ワイヤフレームの上側に配置可能とされる第2上壁部と、を含んで構成されている。
【0111】
(構成10)
ハーネスの配策構造において、前記固定構造は、前記第1保持壁に形成され、前記第1上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出された延出部と、前記第2保持壁に形成され、前記第2上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって突設され、前記一対の挟持片が閉止された状態で前記延出部の上方側に配置され当該延出部が当接可能な突出部と、をさらに含んで構成されている。
【0112】
(構成11)
ハーネスの配策構造において、前記第1保持壁と第2保持壁とで前記ハーネスを保持し、当該ハーネスに対して前記クリップを仮止めさせる第1仮止め構造が設けられている。
【0113】
(構成12)
ハーネスの配策構造において、前記ワイヤフレームに対して前記クリップを仮止めさせる第2仮止め構造が設けられ、前記第2仮止め構造は、前記ワイヤフレームに係止される係止部の一部を成し、当該ワイヤフレームの上に配置可能とされる上壁部と、前記係止部の他の一部を成し、前記上壁部の延出方向とは反対の方向へ向かって延出され、前記上壁部が前記ワイヤフレームの上に配置された状態で、前記保持部によって保持されるハーネスの上に配置可能とされる延出部と、を含んで構成されている。
【符号の説明】
【0114】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートクッションパッド(シートパッド)
14A 後端面(シートクッションパッドにおけるシート前後方向の後端面)
18 ワイヤフレーム
22 ワイヤハーネス(ハーネス)
24 クリップ
26 温度センサ(装置)
28 挟持片(一方の挟持片)
30 挟持片(他方の挟持片)
32 係止部
34 係止部
36 保持部
38 保持部
40 ヒンジ部
42 クランク部(一方の挟持片、第1クランク部、係止部)
42C 上壁部(固定構造、第1上壁部)
44 保持壁(一方の挟持片、第1保持壁、保持部)
46 クランク部(他方の挟持片、第2クランク部、係止部)
46C 上壁部(仮止め構造、固定構造、第2上壁部)
48 保持壁(他方の挟持片、第2保持壁、保持部)
50 突設部(固定構造、突出部)
52 延出片(仮止め構造、固定構造、延出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10