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  • 特開-フィルムおよびフィルムコンデンサ 図1
  • 特開-フィルムおよびフィルムコンデンサ 図2
  • 特開-フィルムおよびフィルムコンデンサ 図3
  • 特開-フィルムおよびフィルムコンデンサ 図4
  • 特開-フィルムおよびフィルムコンデンサ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159760
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】フィルムおよびフィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20231025BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
B29C65/02
H01G4/32 301B
H01G4/32 511G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069671
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】安平 睦基
【テーマコード(参考)】
4F211
5E082
【Fターム(参考)】
4F211AA11
4F211AA24
4F211AA27
4F211AC03
4F211AD03
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH33
4F211AP02
4F211AP05
4F211AP06
4F211AP12
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR07
4F211TA01
4F211TA13
4F211TC08
4F211TD11
4F211TH30
4F211TJ29
4F211TN02
4F211TQ01
5E082BC31
5E082EE07
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082FG52
5E082PP04
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】 フィルム部分同士の連結部の引張強度を向上されたフィルムを提供する。
【解決手段】 段差を有する連結部3を含み、段差がテーパ状の傾斜面2であり、傾斜面2の、連結部3の厚み方向一方側に露出する主面3aに対する傾斜角度が6°以上80°以下の構成とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差を有する連結部を含み、
前記段差がテーパ状の傾斜面であり、
前記傾斜面の、前記連結部の厚み方向一方側に露出する主面に対する傾斜角度が6°以上80°以下である、フィルム。
【請求項2】
連結部を含み、
視野210μm×270μm相当のレーザプローブで計測した、前記連結部の表面粗さSa値が、0.2μm以上4.8μm以下である、フィルム。
【請求項3】
連結部を含み、
流れ方向に引張試験を施した際に、前記連結部の引張強度が、前記連結部を含まないフィルムの24%以上である、フィルム。
【請求項4】
2μm以上5μm以下の厚みを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルムと、
前記フィルムの表面に蒸着された金属膜と、を有する金属化フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の金属化フィルムを用いた、フィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘電体フィルムおよびそれ用いたフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、例えば特許文献1に記載されている。この従来技術では、熱可塑性樹脂から成る2つのフィルムどうしを、合掌状に融着結合し、その融着連結部は、該融着連結部に連なる平坦状のフィルム部分から50~800μm突出し、高い引張強度および気密性を有することが記載されている。
【0003】
他の従来技術は、例えば特許文献2に記載されている。この従来技術では、第1フィルムおよび第2フィルムの互いに接合される連結部の両側の領域に、接合前に面圧を付与して、皺が発生しない状態で熱溶着し、連結部の剥がれ、破断を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3390737号公報
【特許文献2】特開2012-153134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の従来技術では、融着連結部が合掌状に突出しているので、フィルムの表面に金属薄膜を形成することができない。また、フィルムの連結部に金属材料を蒸着して金属薄膜を形成できたとしても、金属薄膜の形成後に、連結部をクーリングローラに密着させて冷却することができず、蒸着時の熱負けとも称される熱影響によって、融着連結部の引張強度が低いという問題がある。
【0006】
また、前述の特許文献2の従来技術では、光学フィルムの延伸処理を効率よく実施するために、フィルムの後端部と先端部とが熱圧着によって連結されるが、フィルムへの金属薄膜の蒸着工程での熱影響によって、連結部の引張強度が低いというという問題がある。
【0007】
したがって、フィルムの連結部の引張強度の低下を抑制することができるフィルム、金属化フィルムおよびフィルムコンデンサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のフィルムは、段差を有する連結部を含み、前記段差がテーパ状の傾斜面であり、前記傾斜面の、前記連結部の厚み方向一方側に露出する主面に対する傾斜角度が6°以上80°以下である構成とする。
【0009】
本開示の金属化フィルムは、前記フィルムと、前記フィルムの表面に蒸着された金属膜と、を有する構成とされる。
【0010】
本開示のフィルムコンデンサは、前記金属化フィルムを用いた構成とされる。
【発明の効果】
【0011】
本開示のフィルム、金属化フィルムおよびフィルムコンデンサによれば、フィルム部分どうしの連結部の引張強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態のフィルムの連結部を模式的に示す拡大断面図である。
図2】2枚の金属化フィルム部分の巻回型フィルムコンデンサの一例を模式的に示す展開斜視図である。
図3】熱圧着装置の構成を模式的に示す図である。
図4】引張強度測定試験で用いる試料を示す図である。
図5】引張強度測定装置の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態のフィルムの連結部およびその近傍を模式的に示す拡大断面図である。本実施形態では、フィルムコンデンサの金属化フィルムのベースフィルムとして用いられる誘電体フィルムの一例について説明する。
【0015】
本実施形態のフィルム1は、段差を有する連結部3を含み、前記段差は、テーパ状の傾斜面2であり、傾斜面2の連結部3の厚み方向一方側に露出する主面3aに対する傾斜角度θが6°以上80°以下に構成される。
【0016】
連結部3は、視野210μm×270μm相当のレーザプローブで計測した、表面粗さSa値が0.2μm以上4.8μm以下である。フィルム1は、厚みT1が2μm以上5μm以下の第1フィルム部分1aと第2フィルム部分2aとを、第1フィルム部分1aの一端部1a1および第2フィルム部分1bの一端部1b1を熱融着で連結する後述の熱圧着工程を繰り返すことによって連結し、10000m~30000mの長さを有する長尺の帯状フィルムとして製造される。第2フィルム部分1bは、第1フィルム部分1aと同一材料から成る。
【0017】
熱融着によって連結された連結部3は、熱融着時に傾斜面2周辺の段差部分の樹脂が溶融し、表面張力の作用によってフィレット4が形成され、傾斜面2の、連結部3の厚み方向一方側に露出する主面3aに対する傾斜角度θは、6°以上80°以下に構成される。傾斜面2の傾斜角度θは、フィレット4の最下部4aと最上部4bとが成す角度である。傾斜角度θはフィルム段差部の、レーザ顕微鏡断面画像の画像処理にて算出される。
【0018】
第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの材料となる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、またはシクロオレフィンポリマー等の有機樹脂材料が使用されてもよい。第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの製造手順としては、樹脂粉末と有機溶剤とを攪拌容器に投入し、室温で12時間攪拌し、樹脂粉末を有機溶剤によって溶解させて解砕し、スラリー状の溶液を作製する。有機溶剤としては、例えばテトラヒドロフランが用いられてもよい。また、樹脂粉末としては、ポリアリレート(PAR)の樹脂粉末が用いられてもよい。得られたスラリー状の溶液は、ろ過精度が0.1μmのフィルタを備えた濾過器によって濾過し、高分子樹脂が粒径10nm以下に解砕された溶液に調製する。ろ過された溶液は、減圧脱泡機によって乾燥温度70~100℃、相対湿度6%RHで15秒間乾燥させて該溶液中から気泡を除去し、原材料溶液を調製する。
【0019】
調製された原材料溶液は、塗布装置の噴射ヘッドから第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの基材フィルムの第1面に塗布され、原材料溶液が塗布された塗布フィルムは、乾燥炉の炉内に搬入され、原材料溶液の塗膜から溶剤を気化させて除去し、基材フィルム上に定着させた後、基材フィルム上に作製されたフィルム部分を基材フィルムから剥離して、巻取リールに巻き取って回収し、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bが製造される。第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの長さは、例えば1000m~7000mである。
【0020】
連結部3の厚みT2は、4μm以上10μm以下である。この連結部3の主面3aの表面粗さは、算術平均粗さSaで0.2μm以上4.8μm以下である。また、連結部3の流れ方向MD(Machine Direction)の引張強度は、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの、連結部3以外の残余部分の流れ方向MDの引張強度と同等以上に保つことができる。
【0021】
図2は、2枚の金属化フィルム部分の巻回型フィルムコンデンサの一例を模式的に示す展開斜視図である。本実施形態の巻回型フィルムコンデンサ5は、前述の第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bのそれぞれの一方主面に金属材料を蒸着して金属膜5a,5bが形成された2枚の第1金属化フィルム部分6aおよび第2金属化フィルム部分6bを重ねて巻回することによって、本体部7が構成され、本体部7の対向する端面7a,7bに金属蒸着して外部電極8a,8bが設けられる。金属膜5a,5bに用いられる金属材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金等が挙げられる。金属膜5a,5bの膜厚は、例えば、10nm以上30nm以下であってもよい。
【0022】
第1金属化フィルム部分6aは、前述の第1フィルム部分1aの主面にコンデンサの内部電極となる金属膜5aを有し、第2金属化フィルム部分6bは、第2フィルム部分1bの主面にコンデンサの内部電極となる金属膜5bを有する。図2において、第1金属化フィルム部分6aおよび第2金属化フィルム部分6bは、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの長手方向に垂直な幅方向の一端側および他端側に、金属膜5a,5bが形成されずに第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bが露出した金属膜非形成部10a,10bを有している。金属膜非形成部10a,10bは、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの長手方向に連続して延びる。
【0023】
また、外部電極8a,8bの材料としては、例えば亜鉛、アルミニウム、銅およびハンダから選ばれる一種の金属材料が用いられてもよい。
【0024】
第1金属化フィルム部分6aおよび第2金属化フィルム部分6bは、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの幅方向において、金属膜非形成部10a,10bが互いに異なる端部に位置するように交互に積層されている。また、第1金属化フィルム部分6aおよび第2金属化フィルム部分6bは、金属膜非形成部10a,10bとは異なる側の端部が第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bから幅方向に露出するように、幅方向にずれた状態で重ね合わされている。
【0025】
図3は、熱圧着装置の構成を模式的に示す図である。前述の第1フィルム部分1aの一端部1a1と第2フィルム部分1bの一端部1b1とは、熱圧着装置20によって熱圧着される。熱圧着装置20は、下金型22、支持部材23、下緩衝部材24、上緩衝部材25、押圧部材26、および上金型29を含む。
【0026】
下金型22上には、支持部材23が乗載される。支持部材23は、厚さ5mmのアルミニウム板から成ってもよい。支持部材23の上面には、下緩衝部材24が貼着される。下緩衝部材24は、例えば厚さ90μmの耐熱性粘着テープから成ってもよい。この下緩衝部材24上には、第1フィルム部分1aの一端部1a1と、第2フィルム部分1bの一端部1b1とが重ねて載置される。上金型29の下面には、押圧部材26が固定される。押圧部材26は、例えば厚さ5mmのシリコーンゴムシートから成ってもよい。押圧部材26の下面には、上緩衝部材25が貼着される。上緩衝部材25は、前述の下緩衝部材24と同様に、例えば厚さ90μmの耐熱性粘着テープから成ってもよい。上金型29および下金型22は、内蔵された発熱抵抗線等の発熱によってそれぞれ加熱され、上金型29は下金型22に近接および離反する方向に変位駆動される。支持部材23は、下金型22からの熱が導かれて加熱され、支持部材23の熱が下緩衝部材24に熱伝導し、下緩衝部材24が第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの溶融温度付近まで加熱される。押圧部材26は、上金型29からの熱が導かれて加熱され、押圧部材26の熱が上緩衝部材25に熱伝導し、上緩衝部材25が第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの溶融温度付近まで加熱される。
【0027】
第1フィルム部分1aの一端部1a1と第2フィルム部分1bの一端部1b1とが下金型22上の下緩衝部材24に重ねて乗載され、上方から上金型29が下降することによって、下緩衝部材24上で重なった一端部1a1と一端部1b1とが上緩衝部材25を介して押圧部材26によって押圧され、予め設定された適切な加圧力で加圧され、熱圧着される。
【0028】
本件発明者は、フィルム1の連結部3の引張強度を確認するため、熱圧着装置20によって傾斜角度θの異なる傾斜面2が形成された連結部3を有する複数の試料1~8を作製し、図4に示されるように、試料1~8を連結部3の両側に互いに間隔ΔL=5mmをあけた位置に幅が9mmの長方形の紙片27,28を貼付け、各紙片27,28に引張力を付与して引張強度を測定する引張強度測定試験を行った。引張強度測定装置には、島津製作所製、製品名「オートグラフ(AG-1S)」を用い、温度24℃、湿度68%RH、クロスヘッド速度1.0mm/minで引張り試験を実施した。
【0029】
引張強度測定試験では、図5に示されるように、引張強度測定装置によって一定の速度で引張り試験を実施し、各試料1~8それぞれの応力の最大値を、引張強度の5回の測定値の平均値Pと定義した。引張強度を算出する際のフィルム断面積は、幅B=9mmとフィルム厚さ(μm)との積であり、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの連結部3を含まない領域の引張強度P0で上記平均値Pを割った値(=P/P0)を引張強度比率とし、熱圧着時間は3分間とした。引張強度測定試験の結果を、以下の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1において、試料1,2,8は、破れが生じ、必要な引張強度を得られない。これに対し、残りの試料3~7は、高い引張強度比率24%~89%を有し、連結部3は連結部3以外の部分よりも高い引張強度を有することが確認された。この場合、試料3~7の傾斜面2の傾斜角度θは、6°以上80°以下であった。
【0032】
また、本件発明者は、さらに適切な引張強度を得られる表面粗さを確認するため、以下の表2に示されるように、第1金属化フィルム部分6aおよび第2金属化フィルム部分6bを作製して、前述の熱圧着装置20によって連結部3を有する試料9~20を作製し、連結部3の主面3aの表面粗さおよびを測定した。その測定結果は、表2に示される。試料9~20について、連結部3の表面粗さを、ISO25178の規定に準拠し、レーザプローブによって横270μm×縦202μmの視野の表面粗さ計測を行った。試料9~20のうち破れなかった試料は、試料11~17であり、これらの試料11~17の連結部3の主面の表面粗さは、算術平均粗さSaで0.2μm以上4.8μm以下であることを確認した。
【0033】
【表2】
【0034】
上記の引張強度測定試験の結果、連結部3の傾斜面2の傾斜角度θが6°未満であれば、加熱および加圧のし過ぎで連結部3の引張強度が低下した、また傾斜角度θが80°を超えると、逆に加圧が不十分であり、連結部3の強度が低下し、連結部3の剥がれが生じた。レーザプローブ顕微鏡による視野270×202μmの連結部3の表面粗さを測定したところ、表面粗さが算術併記粗さSaで0.2μm以上4.8μm以下の範囲内であった場合、試料に皺は発生せず、0.1μm未満の場合、試料に熱圧着で使用する下緩衝部材24および上緩衝部材25にフィルム材が付着することに起因する、皺が発生した。5μmを超えると、試料に熱変形に起因する皺が発生した。
【0035】
本実施形態によれば、連結部3においても、金属元素が第1フィルム部分1aおよび1bに精確に到達できる経路を確保でき、蒸着工程のクーリングローラが連結部3の全面に密着し、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bに皺が発生しなくなる。また連結部3の傾斜面2の傾斜角度θが6°未満であると、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bに熱および圧力を印加し過ぎであり、蒸着工程の最大応力を下回る引張強度になってしまう。
【0036】
また熱圧着工程で、下緩衝部材24および上緩衝部材25の表面粗さが、そのまま第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bに転写され、下緩衝部材24および上緩衝部材25の表面粗さが0.2μmを下回ると、引き離す際に下緩衝部材24および上緩衝部材25に第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bが付着し、皺を生じさせる。また、下緩衝部材24および上緩衝部材25の表面粗さが大きくなり過ぎると、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの引張強度が低下する。表面粗さが0.2μm以上4.8μm以下の範囲であれば、皺の発生を抑制し、引張強度の低下が生じないことを確認した。
【0037】
また、熱圧着工程で、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの素材によっては、可撓性を失い、脆くなってしまうものがある。引張強度測定試験を実施した際に、最大応力が生じたときの引張応力が低く、一度に同じ条件での蒸着が可能になるので、プロセス上の条件のばらつきが無くなり、常に一定の金属化フィルムの導電率およびコンタミ発生量を保つことが可能になり、品質を安定化することができる。
【0038】
前述の実施形態では、第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bの材料となる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、またはシクロオレフィンポリマー等の有機樹脂材料を使用する場合について述べたが、他の実施形態では、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びシクロオレフィンポリマー等から選ばれた1種であってもよい。
【0039】
連結部3の傾斜面2の傾斜角度θは、前述のように6°以上80°以下が好ましく、さらに好ましくは20°以上60°以下が好ましい。このように傾斜角度θを20°以上60°以下とすることによって、連結部3に皺の発生をより確実に抑制し、引張強度を向上することができる。
【0040】
他の実施形態として、熱圧着装置20の下緩衝部材24および上緩衝部材25の少なくとも第1フィルム部分1aおよび第2フィルム部分1bが接触する領域の表面粗さを調製することによって、連結部3の表面3aの表面粗さを制御するようにしてもよい。
【0041】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 フィルム
1a,1b フィルム部分
1a1,1b1 一端部
2 段差面
3 連結部
3a 主面
4 フィレット
4a 最下部
4b 最上部
5 巻回型フィルムコンデンサ
5a,5b 金属膜
6a,6b 金属化フィルム部分
7a,7b 端面
8a,8b 外部電極
10a,10b 金属膜非形成部
20 熱圧着装置
22 下金型
23 支持部材
24 下緩衝部材
25 上緩衝部材
26 押圧部材
27,28 紙片
29 上金型
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5