(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159836
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】基板搬送ロボットの制御装置及び基板搬送ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231025BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069786
(22)【出願日】2022-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】今西 泰希
(72)【発明者】
【氏名】北野 真也
(72)【発明者】
【氏名】中矢 敦史
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES03
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5F131AA02
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(57)【要約】
【課題】基板搬送の柔軟性を維持しつつ、ハンドに対する基板の位置ズレを簡素な構成で取得する。
【解決手段】制御装置は、ハンドと、関節と、関節モータと、を備える基板搬送ロボットを制御する。前記ハンドは、基板を保持可能である。前記関節の軸は上下方向を向く。前記関節モータは、前記関節を駆動する。前記制御装置は、前記ハンドによって前記基板を搬送しながら第1センサ及び第2センサを通過させるように、前記関節モータを制御する。前記基板が2つのセンサを通過するときの平面視における前記ハンドの向きが、前記2つのセンサを結ぶ直線に対して垂直な方向から傾斜するように制御される。前記制御装置は、前記2つのセンサを含む複数のセンサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも3回における前記ハンドの位置に基づいて、前記ハンドに対する前記基板の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持可能なハンドと、
軸が上下方向を向く関節と、
前記関節を駆動する関節モータと、
を備える基板搬送ロボットを制御する制御装置であって、
前記ハンドによって前記基板を搬送しながら第1センサ及び第2センサを通過させ、前記基板が前記第1センサ及び前記第2センサを通過するときの平面視における前記ハンドの向きが、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ直線に対して垂直な方向から傾斜しているように、前記関節モータを制御し、
前記第1センサ及び前記第2センサを含む複数のセンサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも3回における前記ハンドの位置に基づいて、前記ハンドに対する前記基板の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する、基板搬送ロボットの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送ロボットの制御装置であって、
前記第1センサ及び前記第2センサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも2回において、検出時の前記ハンドの向きが互いに異なる、基板搬送ロボットの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板搬送ロボットの制御装置であって、
前記第1センサ及び前記第2センサのうち何れかが前記基板の外縁を検出したそれぞれのタイミングでの、前記ハンドの位置及び向きを求め、
前記ハンドの位置に基づいて、前記第1センサ及び前記第2センサのうち前記基板の外縁を検出したセンサである検出センサの位置と、前記ハンドの位置と、の関係を示すベクトルを求め、
前記ハンドの向きに基づいて、前記ベクトルを、前記ハンドを基準とする座標系であるツール座標系に変換した変換後ベクトルを求め、
少なくとも3つの前記変換後ベクトルに基づいて、前記ツール座標系における前記基板の位置ズレを求める、基板搬送ロボットの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板搬送ロボットの制御装置であって、
前記基板を搬送する過程で得られた前記位置ズレ情報に基づいて、前記基板を搬送先に置く場合における前記ハンドの目標位置を修正する、基板搬送ロボットの制御装置。
【請求項5】
基板を保持可能なハンドと、
軸が上下方向を向く関節と、
前記関節を駆動する関節モータと、
を備える基板搬送ロボットを制御する制御方法であって、
前記ハンドによって前記基板を搬送しながら第1センサ及び第2センサを通過させ、前記基板が前記第1センサ及び前記第2センサを通過するときの平面視における前記ハンドの向きが、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ直線に対して垂直な方向から傾斜しているように、前記関節モータを制御し、
前記第1センサ及び前記第2センサを含む複数のセンサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも3回における前記ハンドの位置に基づいて、前記ハンドに対する前記基板の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する、基板搬送ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送ロボットの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板搬送システムにおいて、搬送対象の基板に位置ズレが生じた場合に、基板を置く場合のハンドの位置を変更することで、位置ズレを解消する構成が知られている。
【0003】
特許文献1は、円板状の基板を、ハンドを有する搬送手段によって基板処理室へ搬送する基板搬送方法を開示する。特許文献1では、センサ対が、基板処理室へ搬送されるウエハの外縁の通過をそれぞれ検知し、これにより、ウエハの位置ずれが検出される。取得された位置ずれに基づいて目標位置が修正され、この結果、ウエハの搬送経路が修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における位置ずれの取得は、ウエハの外縁がセンサ対によって複数回検知される間、ハンドの向きが常に、センサ対を結ぶ仮想直線に対して垂直に向けられていることが前提である。更に言えば、ウエハが搬送される向きが、センサ対を結ぶ仮想直線に対して垂直に向けられていることが前提である。しかし、そのような制限は、ロボットによる基板の搬送効率を低下させる場合がある。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、基板搬送の柔軟性を維持しつつ、ハンドに対する基板の位置ズレを簡素な構成で取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成の基板搬送ロボットの制御装置が提供される。即ち、基板搬送ロボットの制御装置は、ハンドと、関節と、関節モータと、を備える基板搬送ロボットを制御する。前記ハンドは、基板を保持可能である。前記関節の軸は、上下方向を向く。前記関節モータは、前記関節を駆動する。前記制御装置は、前記ハンドによって前記基板を搬送しながら第1センサ及び第2センサを通過させるように、前記関節モータを制御する。前記制御装置は、前記基板が前記第1センサ及び前記第2センサを通過するときの平面視における前記ハンドの向きが、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ直線に対して垂直な方向から傾斜しているように、前記関節モータを制御する。前記制御装置は、前記第1センサ及び前記第2センサを含む複数のセンサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも3回における前記ハンドの位置に基づいて、前記ハンドに対する前記基板の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する。
【0009】
本開示の第2の観点によれば、以下の基板搬送ロボットの制御方法が提供される。即ち、基板搬送ロボットの制御方法では、ハンドと、関節と、関節モータと、を備える基板搬送ロボットを制御する。前記ハンドは、基板を保持可能である。前記関節の軸は、上下方向を向く。前記関節モータは、前記関節を駆動する。この制御方法では、前記ハンドによって前記基板を搬送しながら第1センサ及び第2センサを通過させるように、前記関節モータを制御する。前記制御方法では、前記基板が前記第1センサ及び前記第2センサを通過するときの平面視における前記ハンドの向きが、前記第1センサと前記第2センサを結ぶ直線に対して垂直な方向から傾斜しているように、前記関節モータを制御する。前記制御方法では、前記第1センサ及び前記第2センサを含む複数のセンサのうち何れかが前記基板の外縁を検出した少なくとも3回における前記ハンドの位置に基づいて、前記ハンドに対する前記基板の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する。
【0010】
これにより、ハンドによって基板を柔軟に搬送しつつ、ハンドに対する基板のズレ量を適切に得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、基板搬送の柔軟性を維持しつつ、ハンドに対する基板の位置ズレを簡素な構成で取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットシステムの全体的な構成を示す斜視図。
【
図3】コントローラに関する電気的構成を示すブロック図。
【
図4】位置ズレ検出装置の第1センサがウエハの外縁の1回目の通過を検出した状態を示す平面図。
【
図5】位置ズレ検出装置の第1センサがウエハの外縁の2回目の通過を検出した状態を示す平面図。
【
図6】位置ズレ検出装置の第2センサがウエハの外縁の1回目の通過を検出した状態を示す平面図。
【
図7】位置ズレ検出装置の第2センサがウエハの外縁の2回目の通過を検出した状態を示す平面図。
【
図8】ツール座標系において、4回の検出タイミングで得られたベクトルからウエハの位置ズレを求める処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るロボットシステム100の構成を示す斜視図である。
図2は、ロボット1の構成を示す斜視図である。
図3は、ロボットシステム100の一部の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すロボットシステム100は、クリーンルーム等の作業空間内でロボット(基板搬送ロボット)1に作業を行わせるシステムである。
【0015】
ロボットシステム100は、ロボット1と、位置ズレ検出装置4と、コントローラ5と、を備える。コントローラ5は、制御装置の一種である。
【0016】
ロボット1は、例えば、保管容器6に保管されるウエハ2を基板処理室7へ搬送するウエハ移載ロボットとして機能する。本実施形態では、ロボット1は、SCARA(スカラ)型の水平多関節ロボットによって実現される。SCARAは、Selective Compliance Assembly Robot Armの略称である。
【0017】
ロボット1が搬送するウエハ2は、基板の一種である。ウエハ2は、円形の薄い板状に形成されている。
【0018】
ロボット1は、
図2に示すように、ハンド10と、マニピュレータ11と、関節モータ12a,12b,12cと、を備える。ハンド10は、保持部の一種である。
【0019】
ハンド10は、エンドエフェクタの一種であって、概ね、平面視でV字状又はU字状に形成されている。ハンド10は、マニピュレータ11(具体的には、後述の第2リンク16)の先端に支持されている。ハンド10は、第2リンク16に対して、上下方向に延びる第3軸c3を中心として回転する。
【0020】
ハンド10は、ウエハ2を載せることができる。ハンド10には基準位置が定められており、ハンド10の所定の位置にウエハ2を位置ズレなく載せた場合に、ウエハ2の中心2cはハンド10の基準位置に一致する。以下、この基準位置を、ハンド10の中心10cと呼ぶことがある。
【0021】
マニピュレータ11は、主として、基台13と、昇降軸14と、第1リンク15と、第2リンク16と、を備える。
【0022】
基台13は、地面(例えば、クリーンルームの床面)に固定される。基台13は、昇降軸14を支持するベース部材として機能する。
【0023】
昇降軸14は、基台13に対して上下方向に移動する。この昇降により、第1リンク15、第2リンク16、及びハンド10の高さを変更することができる。
【0024】
第1リンク15は、昇降軸14の上部に支持されている。第1リンク15は、昇降軸14に対して、上下方向に延びる第1軸c1を中心として回転する。これにより、第1リンク15の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0025】
第2リンク16は、第1リンク15の先端に支持されている。第2リンク16は、第1リンク15に対して、上下方向に延びる第2軸c2を中心として回転する。これにより、第2リンク16の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0026】
このように、マニピュレータ11は、軸が上下方向を向く3つの関節を含んで構成されている。以下では、それぞれの関節を特定するために、中心軸の符号c1,c2,c3を付して呼ぶことがある。
【0027】
関節モータ12a,12b,12cは、それぞれ関節c1,c2,c3を駆動する。これにより、平面視でのハンド10の位置及び姿勢を様々に変更することができる。関節モータ12a,12b,12cは、電動モータの一種であるサーボモータとして構成されている。
【0028】
関節c1を駆動する関節モータ12aは、第1リンク15に配置されている。関節c2を駆動する関節モータ12bは、第1リンク15に配置されている。関節c3を駆動する関節モータ12cは、第2リンク16に配置されている。ただし、各モータのレイアウトは上記に限定されない。
【0029】
位置ズレ検出装置4は、第1センサ41と、第2センサ42と、を備える。第1センサ41及び第2センサ42のそれぞれは、ロボット1によりウエハ2が基板処理室7へ搬送される経路の近傍に配置されている。移動先である基板処理室7にハンド10が到達する直前には、ハンド10及びウエハ2は、概ね、
図1に示す方向D1に移動する。位置ズレ検出装置4は、基板処理室7の近傍であって、基板処理室7に対して方向D1と反対側に配置されている。第1センサ41及び第2センサ42は、ウエハ2が基板処理室7へ搬送される途中において、ウエハ2の外縁の通過を検出することができる。
【0030】
第1センサ41及び第2センサ42は、何れも非接触式のセンサとして構成されている。センサの構成は任意であるが、例えば、反射型センサとして構成することができる。反射型センサに代えて、例えば、透過型センサが適用されても良い。
【0031】
位置ズレ検出装置4の構成は特許文献1等で開示されているため、以下、簡単に説明する。第1センサ41及び第2センサ42は、ウエハ2の直径よりも小さい間隔を形成するように、平面視で適宜離れて配置される。第1センサ41及び第2センサ42は、何れも検出軸を上下方向に向けて配置される。
【0032】
第1センサ41及び第2センサ42のそれぞれは、ウエハ2の外縁の通過を検出することができる。第1センサ41及び第2センサ42の検出結果は、コントローラ5に入力される。コントローラ5は、第1センサ41及び第2センサ42がウエハ2の外縁の通過を検出したタイミングでのハンド10の中心位置及び向きを、例えば、関節モータ12a,12b,12cに設けられた図略のエンコーダによって取得することができる。
【0033】
ウエハ2が経路に沿って搬送される過程で、第1センサ41は、ウエハ2の外縁の通過を2回検出することができる。1回目の検出が
図4に、2回目の検出が
図5に、それぞれ示されている。
【0034】
ウエハ2が経路に沿って搬送される過程で、第2センサ42は、ウエハ2の外縁の通過を2回検出することができる。1回目の検出が
図6に、2回目の検出が
図7に、それぞれ示されている。
【0035】
ウエハ2がハンド10によって搬送される過程で、第1センサ41及び第2センサ42のうち何れかが、
図4、
図6、
図7、
図5の順番で、ウエハ2の外縁を合計4回検出する。
【0036】
図4に示す検出タイミングにおいて、平面視でのハンド10の向きは、第1センサ41及び第2センサ42を結ぶ仮想直線PL1に対して垂直な直線から傾斜している。
図5、
図6、及び
図7に示す検出タイミングにおいても同様である。本実施形態において、ロボット1は、ハンド10の平行移動と回転を同時に行いながらウエハ2を搬送する。従って、
図4、
図6、
図7、
図5の順にウエハ2の外縁が検出される過程で、ハンド10の向きは少しずつ変化している。
【0037】
図4から
図7までに示す4回の検出タイミングのそれぞれに関して、コントローラ5は、ハンド10の中心位置及び向きをそれぞれ算出する。
【0038】
ここで、ウエハ2の搬送経路の平面図に相当する水平な2次元平面を考える。2次元平面での位置は、
図4から
図7までに示す、直交した2つの軸BX,BYで定義される2次元直交座標系で表すことができる。以下、この直交座標系をベース座標系と呼ぶことがある。
【0039】
ベース座標系における第1センサ41及び第2センサ42の位置は、予め求められ、コントローラ5に設定されている。
図4及び
図5に示す2回の検出タイミングのそれぞれに関して、ハンド10の中心10cから第1センサ41へ向かうベクトルが算出される。同様に、
図6及び
図7に示す2回の検出タイミングのそれぞれに関して、ハンド10の中心10cから第2センサ42へ向かうベクトルが算出される。得られたベクトルは、
図4から
図7までにおいて白抜き矢印で示されている。
【0040】
ベース座標系とは別に、ハンド10を基準とする水平な2次元平面を考える。この2次元平面は、直交した2つの軸TX,TYによって定義される。1つの軸TYはハンド10の向きと一致し、残りの軸TXはハンド10の向きと直交する。2つの軸TX,TYの交点である原点は、ハンド10の中心10cに一致する。以下、この直交座標系をツール座標系と呼ぶことがある。ツール座標系は、ハンド10の位置及び向きに追従して変化する。
【0041】
図4から
図7までの検出タイミングのそれぞれにおいて求められた4つのベクトルが、ベース座標系からツール座標系に変換される。この変換は、4回の検出のそれぞれにおけるハンド10の向きを用いて、簡単な計算で行うことができる。
【0042】
例えば
図4に示す検出タイミングにおいて、ハンド10の中心10cの座標がベース座標系において(Lx1,Ly1)であり、第1センサ41の座標がベース座標系において(Sx1,Sy1)である場合、上記のベクトルは、ベース座標系において(Sx1-Lx1,Sy1-Ly1)と表すことができる。
図4に示す検出タイミングにおいて、ハンド10の向きがθである場合、このベクトルをツール座標系に変換した場合のベクトル(VCx,VCy)は、良く知られた回転の公式により、以下のように計算することができる。ただし、θは、ツール座標系のTX軸がベース座標系のBX軸に対してなす角度を意味し、反時計回りを正とする。
【数1】
【0043】
図5、
図6及び
図7に示す検出タイミングにおいても、同様の計算が行われる。
図4から
図7までに示す各タイミングにおいて、ハンド10の向きθが異なるため、ツール座標系の軸TX,TYの向きも異なる。
【0044】
上記により、ツール座標系に変換された4つのベクトルが得られる。これらのベクトルは、変換後ベクトルと呼ぶこともできる。
図8には、ツール座標系にプロットされた4つのベクトルが示されている。コントローラ5は、4つのベクトルのうち3つを任意に選択し、選択された3つのベクトルの先端を通過する仮想円の中心位置を、ツール座標系において計算する。仮想円はウエハ2の外縁に相当するので、仮想円の中心はウエハ2の中心2cを表す。ツール座標系はハンド10の中心10cを原点として定められるので、ツール座標系における仮想円の中心の座標は、ウエハ2のハンド10に対するズレ量を意味する。ズレ量は、ツール座標系の原点から仮想円の中心へ延びる平面ベクトル(ox,oy)で表すことができる。ズレ量を表すベクトルが、
図8に太線で示されている。
【0045】
4つのベクトルのうち任意の3つのベクトルを選択する組合せは、4通り存在する。それぞれの組合せについてウエハ2のハンド10に対するズレ量を求め、ズレ量の平均を計算することが好ましい。これにより、位置ズレを精度良く求めることができる。
【0046】
コントローラ5は、
図3に示すように、ズレ量取得部51と、制御部52と、を備える。コントローラ5は、CPU、ROM、RAM、補助記憶装置等を備える公知のコンピュータとして構成されている。補助記憶装置は、例えばHDD、SSD等として構成される。補助記憶装置には、本開示の関節モータ12a,12b,12cの制御方法を実現するためのロボット制御プログラム等が記憶されている。これらのハードウェア及びソフトウェアの協働により、コントローラ5を、ズレ量取得部51及び制御部52等として動作させることができる。
【0047】
ズレ量取得部51は、上述のように、位置ズレ検出装置4を構成する第1センサ41及び第2センサ42の検出結果に基づいて、ウエハ2のズレ量を取得する。ズレ量は、例えば平面ベクトル(ox,oy)で表される。
【0048】
制御部52は、予め定められる動作プログラム又はユーザから入力される移動指令等に従って、上述のロボット1の各部を駆動するそれぞれの駆動モータに指令値を出力して制御し、予め定められる指令位置にハンド10を移動させる。駆動モータには、昇降軸14を上下に変位させるための図略の電動モータのほか、上述の関節モータ12a,12b,12cが含まれる。
【0049】
制御部52は、移動先位置修正部53を備える。
【0050】
ウエハ2を置くときのハンド10の本来の位置は、その中心10cが基板処理室7の基準位置7pと一致している位置である。しかし、ハンド10に対するウエハ2の位置ズレが何らかの理由で生じている場合は、その位置ズレが、そのまま基板処理室7の基準位置7pに対するウエハ2の位置ズレとなってしまう。そこで、移動先位置修正部53は、ハンド10がウエハ2を置く位置を、ズレ量取得部51から入力したズレ量に基づいて修正する。ズレ量は、ウエハ2の位置ズレを示す情報(位置ズレ情報)である。
【0051】
修正は、上記の位置ズレをキャンセルするように行われる。即ち、コントローラ5は、得られたウエハ2のズレ量を示す平面ベクトル(ox,oy)を反転し、反転後の平面ベクトル(-ox,-oy)を、ツール座標系からベース座標系に変換する。この変換は、ウエハ2を基板処理室7に置くときのハンド10の向きθに基づいて行われる。変換後のベクトルが、ベース座標系において、ハンド10の搬送先の座標に加算される。以上により、ウエハ2の中心2cが基板処理室7の基準位置7pと一致するように、ウエハ2を正しく置くことができる。
【0052】
このように、本実施形態では、第1センサ41及び第2センサ42をウエハ2が通過するときのハンド10の向きが、第1センサ41及び第2センサ42を結ぶ仮想直線PL1に対して垂直でなくても、ウエハ2のズレ量を求めることができる。更に言えば、第1センサ41及び第2センサ42をウエハ2が通過する途中にハンド10の向きが変化しても、ウエハ2のズレ量を正しく求めることができる。従って、第1センサ41及び第2センサ42との関係で、ウエハ2の搬送経路の自由度を高めることができる。例えば、ウエハ2の位置ズレを修正しながら、最短距離の経路に従ってウエハ2を搬送することができる。この結果、搬送スループットを向上させることができる。
【0053】
ハンド10に対するウエハ2の位置ズレは、ウエハ2を搬送先の基板処理室7へ搬送している途中で検出される。移動先位置修正部53は、ハンド10によるウエハ2の搬送の途中で、ハンド10の移動先の位置を、修正前の位置から修正後の位置に変更する。これにより、搬送効率の低下を防止しながら、ウエハ2を正確な位置で基板処理室7にセットすることができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のコントローラ5は、ハンド10と、関節c1,c2,c3と、関節モータ12a,12b,12cと、を備えるロボット1を制御する。ハンド10は、ウエハ2を保持可能である。関節c1,c2,c3の軸は、何れも上下方向を向く。関節モータ12a,12b,12cは、対応する関節c1,c2,c3を駆動する。コントローラ5は、ハンド10によってウエハ2を搬送しながら第1センサ41及び第2センサ42を通過させるように、関節モータ12a,12b,12cを制御する。コントローラ5は、ウエハ2が第1センサ41及び第2センサ42を通過するときの平面視におけるハンド10の向きが、第1センサ41と第2センサ42を結ぶ仮想直線PL1に対して垂直な方向から傾斜しているように、関節モータ12a,12b,12cを制御する。コントローラ5は、第1センサ41又は第2センサ42がウエハ2の外縁を検出した4回の検出タイミングにおけるハンド10の位置に基づいて、ハンド10に対するウエハ2の位置ズレを示す位置ズレ情報を生成する。
【0055】
これにより、ハンド10によってウエハ2を柔軟に搬送しつつ、ハンド10に対するウエハ2のズレ量を適切に得ることができる。
【0056】
本実施形態のロボット1のコントローラ5において、第1センサ41又は第2センサ42がウエハ2の外縁を検出した4回の検出タイミングの全てにおいて、ハンド10の向きが互いに異なる。
【0057】
これにより、ウエハ2のズレ量を取得しつつ、ハンド10によってウエハ2を搬送する経路の自由度を高めることができる。
【0058】
本実施形態のロボット1のコントローラ5は、第1センサ41又は第2センサ42が基板の外縁を検出した4回の検出タイミングのそれぞれに関して、ハンド10の位置及び向きを求める。以下、それぞれの検出タイミングにおいて、第1センサ41及び第2センサ42のうちウエハ2の外縁を検出したセンサを検出センサと呼ぶ。コントローラ5は、4回の検出タイミングのそれぞれに関して、ハンド10の位置に基づいて、検出センサの位置と、ハンド10の位置と、の関係を示すベクトルをベース座標系において求める。コントローラ5は、得られた4つのベクトルを、4回の検出タイミングのそれぞれにおけるハンド10の向きに基づいて、ツール座標系に変換する。コントローラ5は、ツール座標系に変換された4つのベクトルに基づいて、ツール座標系におけるウエハ2の位置ズレを求める。
【0059】
これにより、ハンド10の向きに応じたツール座標系を用いて、ハンド10に対するウエハ2のズレ量を簡素な処理で求めることができる。
【0060】
本実施形態のロボット1のコントローラ5において、ウエハ2を搬送する過程で得られた位置ズレ情報に基づいて、ウエハ2を搬送先に置く場合におけるハンド10の目標位置を修正する。
【0061】
これにより、搬送スループットの低下を抑制しつつ、位置ズレを防止してウエハ2を搬送先の正確な位置に置くことができる。
【0062】
以上に本開示の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0063】
上述の実施形態では、第1センサ41及び第2センサ42の両方がウエハ2の外縁を2回ずつ検出している。例えば、第1センサ41及び第2センサ42のうち一方が、ウエハ2の外縁を2回検出し、残りがウエハ2の外縁を1回だけ検出する構成とすることもできる。3つのベクトルが得られれば、ウエハ2の中心2cに相当する位置を、ツール座標系において問題なく得ることができる。
【0064】
位置ズレ検出装置4が、第1センサ41及び第2センサ42に加えて図略の第3センサを備えても良い。第3センサは、ウエハ2の外縁を検出することができる。第3センサは、例えば、第1センサ41及び第2センサ42と同様の構成とすることができる。第3センサは、仮想直線PL1又はその延長線上に配置することができる。第1センサ41、第2センサ42及び第3センサが3角形をなすように、第3センサを配置することもできる。
図4から
図7までに示したのと同様に、第3センサがウエハ2の外縁を検出したタイミングでのハンド10の位置に基づいて、ハンド10の中心10cから第3センサへ向かうベクトルを算出することができる。このベクトルは、ウエハ2のハンド10に対するズレ量を表すベクトル(ox,oy)の計算のために用いることができる。例えば、第1センサ41、第2センサ42及び第3センサがウエハ2の外縁を1回ずつ検出することにより、3つのベクトルを得る構成とすることができる。第1センサ41、第2センサ42及び第3センサがウエハ2の外縁を2回ずつ検出することにより、6つのベクトルを得る構成とすることもできる。位置ズレ検出装置4が、ウエハ2の外縁を検出可能な4つ以上のセンサを備えても良い。
【0065】
ベース座標系におけるBX軸及びBY軸の方向は任意である。例えば、
図4における左側がプラス方向となるようにBX軸を定めても良いし、
図4の下側がプラス方向になるようにBY軸を定めても良い。
【0066】
同様に、ツール座標系におけるTX軸及びTY軸の方向は任意である。例えば、TX軸を、ハンド10の向きと一致するように定めることができる。
【0067】
ウエハ2がハンド10によって搬送される経路は、直線状であっても良いし、曲線状であっても良い。
【0068】
ウエハ2を搬送する過程で、ハンド10の向きが仮想直線PL1に垂直となる状態が過渡的に生じても良い。複数の検出タイミングのうち何れかにおいて、ハンド10の向きが仮想直線PL1に垂直となっても良い。
【0069】
第1センサ41及び第2センサ42が、ロボット1の基台13に配置されても良い。
【0070】
ロボット1によるウエハ2の搬送先は、基板処理室7に限定されず、例えばロードロック室等の別の場所であっても良い。
【0071】
マニピュレータ11が有する、軸が上下方向を有する関節の数は、3つに限らず、1つ、2つ、又は4つ以上であっても良い。
【0072】
上記の実施形態で説明した制御は、ロボット1がウエハ2以外の基板を搬送する場合にも適用することができる。
【0073】
本開示にて開示するコントローラ5をはじめとする各要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0074】
1 ロボット(基板搬送ロボット)
2 ウエハ(基板)
5 コントローラ(制御装置)
10 ハンド
12a 関節モータ
12b 関節モータ
12c 関節モータ
41 第1センサ
42 第2センサ
c1 関節
c2 関節
c3 関節
PL1 仮想直線