(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159876
(43)【公開日】2023-11-01
(54)【発明の名称】試薬ガスを含むガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/262 20110101AFI20231025BHJP
【FI】
B60R21/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066794
(22)【出願日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】2203632
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】スコーグ、クラス
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD15
3D054DD17
3D054FF16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一旦エアバッグが展開された後に良好な性能を提供する一方で、動作/展開の開始時にエアバッグにかかる機械的応力を制限する試薬ガスを含むガス発生器を提案する。
【解決手段】第1の加圧ガスと第1の出口ポートとを有する第1のチャンバと、第2の加圧ガスと第2の出口ポートとを有する第2のチャンバと、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスを受けてエアバッグに向けて拡散させるように構成された拡散ゾーンと、を備える、ガス発生器であって、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとが、混合されると合わせて反応するように構成され、ガス発生器が、第2の加圧ガスの第2の放出軌道と別個の拡散ゾーン内における、第1の放出軌道を第1の加圧ガスに与えるように構成された、少なくとも1つの偏向器を備えることを特徴とする、ガス発生器。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の加圧ガスと、第1の破断可能封止手段によって閉じられた第1の出口ポートとを有する第1のチャンバと、
第2の加圧ガスと、第2の破断可能封止手段によって閉じられた第2の出口ポートとを有する第2のチャンバと、
前記第1の破断可能封止手段及び前記第2の破断可能封止手段が破断されたときに、前記第1の加圧ガス及び前記第2の加圧ガスを受けてエアバッグに向けて拡散させるように構成された拡散ゾーンと、
を備える、ガス発生器であって、
前記第1の加圧ガス及び前記第2の加圧ガスが、混合されると合わせて反応するように構成されており、
前記ガス発生器が、前記第2の加圧ガスの第2の放出軌道の別個の前記拡散ゾーン内における第1の放出軌道を前記第1の加圧ガスに与えるように構成されている、少なくとも1つの偏向器を備えることを特徴とする、ガス発生器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの偏向器が、前記拡散ゾーン内の前記第1の加圧ガスと前記第2の加圧ガスとの間の混合を制限するように配置される、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの偏向器が、前記第1のチャンバ及び/又は前記第2のチャンバの壁に形成された変形可能なタブである、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの偏向器が、
前記ガス発生器の動作前には、前記第1の破断可能封止手段又は前記第2の破断可能封止手段と協働して前記第1の出口ポート又は前記第2の出口ポートをそれぞれ閉鎖する支持位置、
前記ガス発生器の動作中には、前記第1又は第2の壊れやすい封止手段を破断した後、前記支持位置から移動された前記偏向器が、前記第1の加圧ガス及び/又は前記第2の加圧ガスに対する遮蔽板を形成する遮蔽位置、
を占めるように構成された、請求項3に記載のガス発生器。
【請求項5】
第1の偏向器及び第2の偏向器を備える、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記第1の偏向器及び前記第2の偏向器が、傾斜した舌部によって形成されている、請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記第1の偏向器及び前記第2の偏向器が、前記第1の加圧ガス及び前記第2の加圧ガスに対して、反対の、好ましくは半径方向に反対の排出方向を与えるように配置されている、請求項5に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記第1の偏向器及び前記第2の偏向器が、それぞれ前記第1のチャンバの一部及び前記第2のチャンバの一部によって形成され、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとが同一の構造を有する、請求項5に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記第1の偏向器が、前記第1のチャンバ上に第1の固定部分又はヒンジ部分を備え、
前記第2の偏向器が、前記第2のチャンバ上に第2の固定部分又はヒンジ部分を備え、
前記第1の固定部分又はヒンジ部分と、前記第2の固定部分又はヒンジ部分とは、前記ガス発生器の軸に対する角度がオフセットされている、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記角度のオフセットが、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、非常に優先的には少なくとも150°である、請求項9に記載のガス発生器。
【請求項11】
前記第1の破断可能封止手段及び/又は前記第2の破断可能封止手段が、カバー、好ましくは支持されたカバー、好ましくは前記少なくとも1つの偏向器によって支持されたカバーを備える、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項12】
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に配置された、少なくとも1つの火工式点火装置を備える、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項13】
前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間に配置され、前記拡散ゾーンを画定する拡散部を備える、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項14】
請求項1に記載のガス発生器と、
ハウジングと、
エアバッグと、を備える、安全モジュールであって、
前記少なくとも1つの偏向器が、
前記第1の加圧ガス、好ましくは水素を、前記エアバッグの方向に向かわせ、
かつ/又は、
前記第2の加圧ガス、好ましくは酸素を、前記ハウジングの方向に向かわせるように配置されている、安全モジュール。
【請求項15】
請求項1に記載のガス発生器、又は請求項14に記載の安全モジュールを備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して自動車用安全モジュールのエアバッグを膨張させるためのガス発生器に関する。特に、本発明は、試薬ガス、すなわち、水素及び酸素など、互いに反応することができるガスを含むガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術のガス発生器では、それぞれが水素及び酸素などの試薬ガスを収容する2つのチャンバを有する装置が知られている。一旦放出されると、試薬ガスは、例えば、ガス発生器の拡散ゾーン内及び/又はエアバッグ内での燃焼によって、互いに混合して反応することができる。他方では、これらの装置は、エアバッグが展開されるとき、動作の開始時にエアバッグに機械的に応力を加える欠点を有し得る。更に、乗員と連結する機能及び乗員の減速を実現するために、エアバッグが一旦展開された後は、エアバッグを正確に加圧することが重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの目的は、上述した背景技術の欠点に対応することであり、具体的には、第一に、
一旦エアバッグが展開された後に良好な性能を提供する一方で、動作/展開の開始時にエアバッグにかかる機械的応力を制限する試薬ガスを含むガス発生器を提案することである。
【0004】
それゆえ、この目的に向けて、本発明の第1の態様は、
第1の加圧ガスと、第1の破断可能封止手段によって閉じられた第1の出口ポートとを有する第1のチャンバと、
第2の加圧ガスと、第2の破断可能封止手段によって閉じられた第2の出口ポートとを有する第2のチャンバと、
第1の破断可能封止手段及び第2の破断可能封止手段が破断されたときに、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスを受けてエアバッグに向けて拡散させるように構成された拡散ゾーンと、
を備える、ガス発生器であって、
第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスが、混合されると合わせて反応するように構成されており、
ガス発生器が、第2の加圧ガスの第2の半径方向の放出方向の別個の拡散ゾーン内における第1の半径方向の放出方向を第1の加圧ガスに与えるように構成された、少なくとも1つの偏向器を備えることを特徴とする、ガス発生器に関する。
【0005】
前述の実施形態によるガス発生器は、別個の放出方向を与える偏向器を備える。すなわち、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスのそれぞれの軌道又は流れは合流しない、又はほとんど合流しないこととなる。その結果、拡散ゾーンにおける第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとの混合が制限される。特に、動作のごく初期において、このことが第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとの間の燃焼反応能力を減じかつ制限し、したがって、このことが、特に発生器の内部において第2の加圧ガスと反応する第1の加圧ガスの量を減じかつ制限する。燃焼反応が低減されるので、エアバッグを展開させるためにエアバッグに加えられる応力も低減される。更に、動作の開始時に反応しなかった試薬ガスは、一旦エアバッグ中で十分に混合されると反応し、これにより、一旦エアバッグが展開されると、より良好に加圧することが可能になる。全体的には、動作開始時にはエアバッグを広げる/展開するのに消費されない反応エネルギーは、一旦エアバッグが展開されると放出され、かつ/又は生成される。偏向器は、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとに異なる半径方向の放出方向を与えることによって、
まだ折り畳まれているエアバッグは、より低温の(かつ、未反応であるために占有体積が小さい)ガスによる応力を受けて展開することと、
エアバッグ内での混合の大部分が展開中に行われることと、
第1の加圧ガスと第2の加圧ガスの間の燃焼反応の大部分がエアバッグ内で行われ、したがって、より良好に加圧されることと、
ガス発生器内部での燃焼がより少ないために熱損失がより少ないので、システムによって失われるエネルギーがより少なく、実際、エアバッグはガス発生器の様々な金属部品よりも熱吸収が少ないこと、を確実にすることができる。
【0006】
換言すれば、本発明は、
第1の加圧ガスと、第1の破断可能封止手段によって閉じられた第1の出口ポートとを有する第1のチャンバと、
第2の加圧ガスと、第2の破断可能封止手段によって閉じられた第2の出口ポートとを有する第2のチャンバと、
第1の破断可能封止手段及び第2の破断可能封止手段が破断されたときに、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスを受けてエアバッグに向けて拡散させるように構成された拡散ゾーンと、
を備える、ガス発生器であって、
第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスが、混合されると合わせて反応するように構成されており、
ガス発生器が、
第2の加圧ガスの第2の放出軌道の別個の拡散ゾーン内における、第1の放出軌道を第1の加圧ガスに与えるように構成された、少なくとも1つの偏向器を備えることを特徴とする、ガス発生器に関する。
【0007】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、拡散ゾーンにおける第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとの間の混合を制限するように構成されてもよい。この実装形態によれば、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスの拡散ゾーンにおける混合がより少なく、したがって、ガス間の反応がより少なく、動作開始時に、それらのガスは反応がまだ起きていない低温ガスであり、エアバッグを開く力をエアバッグに及ぼす。こうした力は、公知のガス発生器の場合と比較して低減されている。公知のガス発生器では、動作開始から、拡散ゾーンにおいてガスが互いにより顕著に反応する(より高温のガスであり、より大きな体積を占めるため、より高い圧力を有する)。
【0008】
一実施形態によれば、拡散チャンバは拡散ゾーンであってもよい。換言すれば、拡散ゾーンは、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスを受けるように意図された、壁によって画定された空間であってもよい。
【0009】
一実施形態によれば、拡散ゾーンは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に配置されてもよく、又は第1のチャンバと第2のチャンバとによって画定されてもよい。一実施形態によれば、拡散ゾーンは、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとをエアバッグに向けて拡散させるための単一の受け入れ及び拡散用空間をガス発生器内に画定することができる。
【0010】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、第1の加圧ガスに第1の半径方向の拡散方向を与え、第2の加圧ガスに第2の半径方向の拡散方向を与えるように意図されていてもよい。一実施形態によれば、第1の半径方向の拡散方向は、第2の半径方向の拡散方向とは別個であってもよく、かつ/又は反対であってもよく、かつ/又は異なっていてもよい。ガス発生器の軸方向を横切る平面において、第1の半径方向の拡散方向の投影と第2の半径方向の拡散方向の投影とが、少なくとも45°、少なくとも90°、及び少なくとも150°だけオフセットされ得る。
【0011】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、第1及び/又は第2のチャンバの出口に直接面して配置されてもよい。
【0012】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、第1のチャンバ(又はその出口)からの第1の軌道を拡散ゾーンに向けて与えるように、かつ/又は第2のチャンバ(又はその出口)からの第2の軌道を拡散ゾーンに向けて与えるように構成されてもよい。
【0013】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、ガス発生器が点火される前の閉位置とガス発生器が点火された後の開位置との間で移動可能、又は関節結合されてもよい。
【0014】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、第1のチャンバ及び/又は第2のチャンバの壁に形成された変形可能なタブであってもよい。そのような変形可能なタブは、可塑的に変形するように構成されてもよく、ヒンジ又はチャンバへの取付け部分を中心に傾けるように構成されてもよい。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つの偏向器は、
ガス発生器の動作前には、第1の破断可能封止手段又は第2の破断可能封止手段と協働して第1の出口ポート又は第2の出口ポートをそれぞれ閉鎖する支持位置、
ガス発生器の動作中には、第1又は第2の壊れやすい封止手段を破断した後、支持位置から移動された(又は傾けられた又は傾斜された又は倒された)偏向器が、第1の加圧ガス及び/又は第2の加圧ガスに対する遮蔽板を形成する遮蔽位置、
を占めるように構成されてもよい。
【0016】
一実施形態によれば、ガス発生器は、第1の偏向器と第2の偏向器とを備えることができる。
【0017】
一実施形態によれば、ガス発生器は第1の偏向器と第2の偏向器とを備えることができ、第1の偏向器及び第2の偏向器は、平行な軸に沿って反対方向に展開するように関節結合され、それにより平行に移動かつ/又は変形する。換言すれば、第1の偏向器及び第2の偏向器はそれぞれ、ヒンジ部分を介してガス発生器に固定され、反対方向又は半径方向に反対の方向に向かって傾けることができ、第1の偏向器及び第2の偏向器の回転軸は平行である。具体的には、第1の偏向器及び第2の偏向器の回転軸に対して垂直な(又は実質的に垂直な)平面に沿った断面図において、かつ開放中に、第1の偏向器及び第2の偏向器の両方が同じ回転方向に枢動する(第1の偏向器及び第2の偏向器が両方とも時計回り又は反時計回り方向に枢動する)。
【0018】
一実施形態によれば、第1の偏向器及び第2の偏向器は、傾斜した舌部によって(ガス発生器をトリガした後の遮蔽板位置において)形成することができる。
【0019】
一実施形態によれば、第1の偏向器と第2の偏向器とは、第1の加圧ガス及び第2の加圧ガスに対して、反対の、好ましくは半径方向に反対の排出方向を与えるように配置されてもよい。
【0020】
一実施形態によれば、第1の偏向器と第2の偏向器は、それぞれ、第1のチャンバの一部と第2のチャンバの一部によって形成されてもよく、第1のチャンバ及び第2のチャンバは同一の構造を有してもよい。
【0021】
一実施形態によれば、
第1の偏向器は、第1のチャンバ上に第1の固定部分又はヒンジ部分を備えてもよく、
第2の偏向器は、第2のチャンバ上に第2の固定部分又はヒンジ部分を備えてもよく、
第1の固定部分又はヒンジ部分と、第2の固定部分又はヒンジ部分とが、ガス発生器の軸に対して角度がオフセットされていてもよい。換言すれば、偏向器(又は舌部)は、放出方向又は軌道を与えるために別個の半径方向に向けられている。
【0022】
一実施形態によれば、角度オフセットは、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、非常に優先的には少なくとも150°とすることができる。180°のオフセットを設けることも可能である。
【0023】
一実施形態によれば、第1の破断可能封止手段及び/又は第2の破断可能封止手段は、カバー、好ましくは支持されたカバー、好ましくは少なくとも1つの偏向器によって支持されたカバーを備えることができる。第1の破断可能封止手段及び第2の破断可能封止手段は、それぞれ、第1のチャンバ及び第2のチャンバに位置してもよい。
【0024】
一実施形態によれば、ガス発生器は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に配置された少なくとも1つの火工点火器を備えることができる。2つの火工式点火器を、第1チャンバと第2チャンバとの間に配置して設けてもよい。火工式点火器の少なくとも1つは、拡散ゾーン内に開口してもよい。
【0025】
一実施形態によれば、ガス発生器は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に配置され、拡散ゾーンを画定する拡散部を備えてもよい。拡散部は、典型的には、拡散孔を備える金属壁であってもよい。ガス拡散部は、ガス発生器の軸方向に従って、少なくとも200°、少なくとも230°、少なくとも260°を覆う拡散孔を含むことができる。
【0026】
本発明の第2の態様は、
第1の態様によるガス発生器と、
ハウジングと、
エアバッグと、を備える、安全モジュールであって、
少なくとも1つの偏向器が、
第1の加圧ガス、好ましくは水素を、エアバッグの方向に向かわせ、かつ/又は、
第2の加圧ガス、好ましくは酸素を、ハウジング、又はハウジングに隣接するエアバッグの壁、又は拡散ゾーンのデッドゾーンの方向に向かわせるように配置されている、安全モジュールに関する。
【0027】
本発明の第3の態様は、第1の態様によるガス発生器、又は第2の態様の安全モジュールを備える自動車に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の実施形態の詳細な説明を読むことで、より明らかとなるであろう。この説明は、例として提供されるが、これによりなんら限定されるものではなく、以下の添付図面によって示される。
【0029】
【
図1】中央拡散ゾーンによって分離された2つのチャンバを備えるガス発生器であって、中央拡散ゾーンが2つの点火サブアセンブリをも支持する、本発明によるガス発生器の斜視図である。
【
図2】
図1のガス発生器の、特に拡散ゾーンを示すための断面図である。
【
図3】
図1のガス発生器の2つのチャンバの底部の斜視図を示す。
【
図4】
図1のガス発生器の動作時の概略断面図である。
【
図5】
図1のガス発生器と背景技術のガス発生器との比較試験曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、細長いガス発生器であって、概して、第1のチャンバ10と、第2のチャンバ20と、第1のチャンバ10と第2のチャンバ20との間に配置された拡散部30とを備える細長いガス発生器を示す。
【0031】
拡散部30は拡散孔31を備え、かつガス発生器の作動手段40を形成する2つの点火サブアセンブリ41及び42を支持する。
【0032】
したがって、
図1のガス発生器は、軸方向Axを有する略細長い形態を有し、2つの点火サブアセンブリ41及び42は、軸方向Axに対して垂直に向けられている。更に、拡散部30は、軸方向Axに対して250°超にわたって分布する拡散孔31を有する。
【0033】
図2は、
図1のガス発生器の断面図であり、特に以下の内部構造を示している。
第1のチャンバ10が、第1の加圧ガス、ここでは例えば(例えば30%~50%の水素を含み、残りは例えばアルゴン及びヘリウムである)水素を収容し、
第2のチャンバ20が、第2の加圧ガス、ここでは例えば(例えば15%~25%の酸素を含み、残りは例えばアルゴン及びヘリウムである)酸素を収容し、
拡散部30が、点火サブアセンブリ41及び42に制御されるように意図された支持及び開放機構を備える。
【0034】
より詳細には、第1のチャンバ10は、第1のチャンバ底部12と、第1のピン18によって閉じられた充填用オリフィスを有する第1のキャップ13とによって形成され、第1のチャンバ10は、第1の可視舌部15(
図2及び
図3)によって形成され、第1のカバー14によって閉じられた第1の出口ポート16(
図3において可視である)を備える。
図3は、同じく第1のカバー14によって閉じられた、安全弁として機能し得る第1の二次出口オリフィス17の存在を示す。第1の舌部15は、細長いU字形又は馬蹄形を有し、一種のヒンジを形成する取り付け部分によって第1のチャンバ底部12に取り付けられていることに留意されたい。第1の舌部15は、取り付け部分を中心として変形かつ傾け又は折り曲げることができる。
【0035】
そして次に第2のチャンバ20は、第2のチャンバ底部22と、第2のピン28によって閉じられた充填用オリフィスを有する第2のキャップ23とによって形成され、第2のチャンバ20は、第2の舌部25(
図2及び
図3で可視である)によって形成され、第2のカバー24によって封止された第2の出口ポート26(
図3で可視である)を備える。第2の舌部25は、細長いU字形又は馬蹄形を有し、一種のヒンジを形成する取付け部分によって第2のチャンバ底部22に取り付けられていることに留意されたい。第2の舌部25は、取付け部分を中心として変形かつ傾け又は折り曲げることができる。
【0036】
拡散部30に関して、拡散部30は点火サブアセンブリ41及び点火サブアセンブリ42を支持して支持及び開放機構を取り囲み、支持及び開放機構は、特にスライダ51を備え、スライダ51は、(
図2において示された位置で第1の舌部15及び第2の舌部25を支持する。こうして、第1のカバー14及び第2のカバー24は、スライダ51にブロックされた第1の舌部15及び第2の舌部25によってそれぞれ良好に支持される。ガス発生器を作動させる必要がある場合、点火サブアセンブリ41が点火され、それによってスライダ51が下方に押され、その結果、第1の舌部15及び第2の舌部25は、もはやスライダ51によってブロックされず拡散部30の内側に傾くことができ、それによって第1のカバー14及び第2のカバー24が破裂する。第1の加圧ガス11及び第2の加圧ガス21は、拡散部30内に画定された拡散ゾーンに向かって放出され、拡散部30から抜け出てエアバッグに向かってもよい。点火サブアセンブリ42は、拡散部の内部要素を変位させて全流路表面を変更するために用いられてもよく、その結果、例えば緩衝されるべき衝撃力に基づく、変更された放出を得てもよい。
【0037】
上述したように、第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21とは互いに反応することができ、動作シーケンス中、以下の点に注目することができる。
保管中、第1の加圧ガス11及び第2の加圧ガス21は、それぞれのチャンバ内にあり、
作動中に、第1の舌部15及び第2の舌部25は傾き、第1のカバー14及び第2のカバー24の破裂を強制し、
その瞬間から、第1の加圧ガス11及び第2の加圧ガス21が拡散ゾーンに向けて放出されてもよく、
その後、第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21は拡散部30から抜け出して、エアバッグを広げ始め、
エアバッグが展開され、徐々に加圧され、
動作全体を通して、第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21とは、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスの燃焼反応を可能にする混合条件が満たされ次第、すなわち拡散ゾーン(拡散部30内)及び/又はエアバッグ内において、互いに反応することができる。
【0038】
また、第1のカバー14と第2のカバー24とが破裂した直後、エアバッグが強制的に広げられ始め、次に、同じく開かなければならない保護ハウジングを押す。エアバッグ及びハウジングに加えられる力は相当大きく、過度に激しい破裂又は展開を防ぐように管理されなければならないことに留意することもまた可能である。第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21とが互いに反応して、当該部分に加えられる力を増大させる可能性があることに留意しなければならない。
【0039】
この目的のために、第1の加圧ガス11及び第2の加圧ガス21を特定の方法で方向付けて、動作の最初の瞬間におけるそれらの燃焼反応を制限することが提案される。より詳細には、第1の舌部15と第2の舌部25を用いて、拡散ゾーン内における異なる軌道を第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21とに与える偏向器を形成することが意図されている。このようにして、第1の加圧ガス11と第2の加圧ガス21との混合が低減され、それにより燃焼反応の可能性が低減される。
【0040】
提案された構造は、
図3に示すように、第1の舌部15と第2の舌部25の角度を異なる半径方向に従うように向けることであり、第1の舌部15と第2の舌部25とは、「ヘッド・トゥ・テイル(head-to-tail)」又は反対方向である。
図3に示す180°以外の向きを定めることが可能である。要約すると、第1の舌部15及び第2の舌部25は、拡散部30において、第1の加圧ガスに第1の半径方向の排出方向を与え、第2の加圧ガスに第2の半径方向の排出方向を与える偏向器を形成し、第1の半径方向の排出方向は、第2の半径方向の排出方向とは異なる(かつこの場合、反対でさえある)。
【0041】
その結果、拡散ゾーンにおいて、第1の加圧ガス11及び第2の加圧ガス21は、第1のチャンバ10及び第2のチャンバ20から出るとすぐに異なる経路を辿り、これにより、特に拡散部30内でのそれらの混合が制限される。
【0042】
図4に示すように、(エアバッグ60がまだ折り畳まれている状態の)
図1のガス発生器の動作の最初に、第1の加圧ガス11は、第1のチャンバ10から上向きの半径方向に流出し、第2の加圧ガス21は、第2のチャンバ20から下向きの半径方向に流出する。
【0043】
出願人は、水素をエアバッグ60に直接向け、酸素をハウジング70の壁に直接向けることを選択することが有利であることに気付いた。実際に、そのような場合、燃焼反応は不完全であり、発熱が低く、圧力の上昇率を更に制限する。より詳細には、酸素が制限因子であり、最初にエアバッグに向けられた水素は完全に反応することができない。燃焼反応の生成物は、水(H2O)及び過酸化水素(H2O2)である。熱の発生がより低く、ガスの加熱がより少ないため、加圧がより少ない。したがって、拡散部30を出るガスの機械的攻撃性が低減される。
【0044】
図5は、
図3の「ヘッド・トゥ・テイル」である舌部15と舌部25を有する
図1のガス発生器(試験1)と、第1の加圧ガスと第2の加圧ガスとに対して同じ半径方向の放出方向を与えるように開口する、同じ方向に向けられた舌部を有する背景技術のガス発生器(参照)との比較試験曲線からなるグラフを示す。ガス発生器を密閉容器内で試験し、圧力を時間の関数として測定した。
図1のガス発生器の圧力曲線は実線であり、背景技術のガス発生器の圧力曲線は点線である。背景技術のガス発生器は、典型的には、ガス同士の混合を制限する偏向器を有していない。特に、背景技術のガス発生器は、第1の加圧ガス11が第2の加圧ガス21と混合するのを防止する反対の軌道を与える装置を有していない。
【0045】
図1のガス発生器の曲線は、0ミリ秒(ms)から10msの間でより小さい傾きを有し、これは、展開が始まるときのエアバッグに対するより低い機械的攻撃性を明確に確認することに留意されたい。80ms後のより高い最終圧力に注目することも可能である。実際に、動作の開始時に第2の加圧ガス21と混合されない第1の加圧ガス11は、最終的にエアバッグ60内で混合して、その中で反応し、エネルギーをエアバッグに直接放出する。損失が少なく、最終圧力が高い。特に、本発明では、拡散部30内での燃焼がより少ないため、エアバッグはガス発生器の様々な金属部品よりも熱吸収が少なく、熱損失が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るガス発生器及びその製造方法は、産業上利用可能である。
【0047】
本明細書で説明されている本発明の種々の実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明白な様々な修正及び/又は改善を加えることができる点が理解されるであろう。特に、本明細書の偏向器は、チャンバの壁に直接形成された舌部であるが、追加の又は別個の構成要素を有して、他の実装形態が提供されてもよいことに留意されたい。チャンバの1つから出るガスを案内するためのU字形チャネルなどの複雑な形状を提供することも可能である。他の開放装置も考えられ、単一の点火サブアセンブリもまた考えられる。
【外国語明細書】