(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015988
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】メッキ用治具の製造方法、メッキ用治具の管理方法、及びメッキ用治具
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20230125BHJP
C25D 21/12 20060101ALI20230125BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C25D17/08 S
C25D21/12 Z
G06K19/077 140
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082567
(22)【出願日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2021119745
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593083491
【氏名又は名称】化興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 功
(72)【発明者】
【氏名】田中 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 基寛
(57)【要約】
【課題】メッキ用治具の管理をより適切に行う。
【解決手段】メッキの対象となるワークを保持するメッキ用治具10の製造方法であって、ワークを保持するワーク保持部102を有する治具フレーム12の少なくとも一部となる部材であるフレーム部材を準備する準備工程と、非接触で情報の読み取りが可能な電子部品である電子タグ16をフレーム部材の表面に取り付ける電子部品取付工程と、メッキに使用する薬液に耐性のある物質で形成される被膜14によって電子タグ16を被覆する被覆工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキの対象となるワークを保持するメッキ用治具の製造方法であって、
前記ワークを保持するワーク保持部を有する治具フレームの少なくとも一部となる部材であるフレーム部材を準備する準備工程と、
非接触で情報の読み取りが可能な電子部品を前記フレーム部材の表面に取り付ける電子部品取付工程と、
メッキに使用する薬液に耐性のある被膜によって前記電子部品を被覆する被覆工程と
を備えることを特徴とするメッキ用治具の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程は、前記治具フレームの表面の少なくとも一部をコーティングすることで前記被膜を形成する工程であり、前記治具フレームの表面の少なくとも一部に前記被膜を形成するのと同時に、前記電子部品を被覆する前記被膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項3】
前記被覆工程において、前記治具フレームにおける前記電子部品が取り付けられている位置が前記被膜の材料に浸かるように、前記被膜の材料に前記治具フレームを浸漬することで、前記治具フレームの表面の少なくとも一部に前記被膜を形成するのと同時に、前記電子部品を被覆する前記被膜を形成することを特徴とする請求項2に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項4】
前記治具フレームの表面において前記電子部品が取り付けられている部分と隣接する位置に対して前記電子部品が突出する高さを部品実装高と定義し、前記被覆工程で前記治具フレームにおける平坦な箇所に形成される前記被膜の厚さを被膜厚と定義した場合、
前記被覆工程において、前記被膜厚が前記部品実装高よりも大きくなるように、前記被膜を形成することを特徴とする請求項2に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程は、熱収縮チューブを用いて前記フレーム部材に対して前記電子部品を固定する工程であり、前記電子部品と共に前記フレーム部材の一部を覆うように前記フレーム部材及び前記電子部品に対して前記熱収縮チューブを被せて、前記熱収縮チューブを加熱することで、収縮した前記熱収縮チューブの少なくとも一部が前記被膜となるように、前記熱収縮チューブによって前記電子部品を被覆することを特徴とする請求項1に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項6】
前記フレーム部材と前記熱収縮チューブとの間の隙間に充填される充填剤を更に用い、
前記電子部品取付工程において、前記熱収縮チューブによって覆われる部分の少なくとも一部に対して前記充填剤を塗布し、
前記被覆工程において、前記充填剤が塗布されている前記フレーム部材及び前記電子部品に対して前記熱収縮チューブを被せて、前記熱収縮チューブを加熱することを特徴とする請求項5に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項7】
前記準備工程において、絶縁耐食性の膜である絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われている前記フレーム部材を準備し、
前記電子部品取付工程において、前記フレーム部材の表面の一部における前記絶縁耐食膜を剥離して、前記絶縁耐食膜を剥離した位置に、前記電子部品を取り付け、
前記被覆工程において、前記電子部品取付工程で前記絶縁耐食膜を剥離した範囲の少なくとも一部が前記熱収縮チューブに覆われるように、前記フレーム部材及び前記電子部品に対して前記熱収縮チューブを被せることを特徴とする請求項5に記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項8】
前記電子部品は、当該電子部品が取り付けられている前記メッキ用治具の識別情報を非接触で読み取り可能な電子タグであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項9】
前記電子部品は、前記メッキ用治具が製造された後にも情報の書き込みが可能な部品であり、少なくとも前記メッキ用治具の使用履歴を記憶することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のメッキ用治具の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のメッキ用治具の製造方法で製造されるメッキ用治具を管理するメッキ用治具の管理方法であって、
前記メッキ用治具の前記使用履歴を当該メッキ用治具に取り付けられている前記電子部品に記憶させておき、メッキを行う工程での当該メッキ用治具の使用回数が予め設定された回数になった時点で、当該メッキ用治具に対して所定のメンテナンスを行うことを特徴とするメッキ用治具の管理方法。
【請求項11】
前記治具フレームの表面の少なくとも一部には、絶縁耐食性の膜である絶縁耐食膜が形成されており、
前記所定のメンテナンスとして、前記絶縁耐食膜を剥離し、その後、前記治具フレームの表面の少なくとも一部に対し、新たな前記絶縁耐食膜を形成することを特徴とする請求項10に記載のメッキ用治具の管理方法。
【請求項12】
メッキの対象となるワークを保持するメッキ用治具であって、
前記ワークを保持するワーク保持部を有する治具フレームと、
非接触で情報の読み取りが可能であり、前記治具フレームの表面における所定の位置に取り付けられている電子部品と、
メッキに使用する薬液に耐性があり、前記電子部品を被覆する被膜と
を備えることを特徴とするメッキ用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ用治具の製造方法、メッキ用治具の管理方法、及びメッキ用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な物に対するメッキによる表面処理が広く行われている(例えば、特許文献1参照)。メッキを行う工程では、例えば、メッキの対象物であるワークを治具(メッキ用治具)で保持して、メッキに使用する薬液(メッキ液)に対し、治具と共にワークを浸漬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メッキ用治具を用いてメッキを行う場合、通常、メッキに使用する薬液に対して耐性(耐薬品性)がある被膜(絶縁耐食膜)で表面が被覆(コーティング)された治具を用いる。しかし、この場合も、メッキ用治具を繰り返して用いると、表面の被膜に劣化が生じる場合がある。また、その結果、ワークに対するメッキが適切に行えなくなる場合がある。より具体的に、メッキ用治具で複数のワークを保持してメッキを行う場合において、メッキ用治具の表面の一部において被膜の劣化が生じると、一部のワークに対すメッキが正しく行われなくなり、不良品が生じる場合がある。このような問題に対しては、例えば、メッキ用治具において不良品となるワークの位置を管理しておき、その部分を除外してメッキ用治具を使い続けることが考えられる。また、メッキ用治具において、発生する不良品の率が所定の許容範囲を超えた場合等には、メッキ用治具に対し、被膜の補修や再形成(再コーティング)を行うこと等も考えられる。
【0005】
しかし、メッキを行う工程では、同じ形状の多数のメッキ用治具を用いる場合がある。そして、この場合、不良品となるワークの位置をメッキ用治具毎に管理しようとすると、例えば、同じ形状のメッキ用治具の間で、不良品となるワークの位置の取り違えが生じやすくなること等が考えられる。また、メッキ用治具に対し、被膜の補修や再形成を行う場合にも、同様の問題が生じることが考えられる。そのため、従来、メッキ用治具の管理をより適切に行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるメッキ用治具の製造方法、メッキ用治具の管理方法、及びメッキ用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、メッキ用治具をより適切に管理する方法について、鋭意研究を行った。そして、先ず、個々のメッキ用治具を識別可能にする電子タグ(IDタグ)をメッキ用治具に取り付けることを考えた。このように構成すれば、例えば、同じ形状の複数のメッキ用治具を用いる場合でも、個々のメッキ用治具を容易かつ適切に識別することができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具の管理をより適切に行うことができる。
【0007】
しかし、単に電子タグをメッキ用治具に取り付けるのみであると、メッキ用治具の使用時において、薬液の影響で電子タグが故障することが考えられる。また、メッキ用治具を用いてメッキを行う場合、治具でワークを保持したまま、メッキの工程の前工程や後工程を実行する場合もある。そして、この場合、電子タグがメッキ用治具に取り付けられていると、例えば電子タグの表面に薬液が付着することや、電子タグと治具の表面との間に薬液が入り込むこと等によって、次の工程への薬液の持ち込みの原因になるおそれがある。
【0008】
これに対し、本願の発明者は、単に電子タグをメッキ用治具に取り付けるのではなく、メッキに使用する薬液に耐性のある被膜によって電子タグを被覆することを考えた。このように構成すれば、例えば、メッキに使用する薬液によって電子タグが故障することを適切に防止することができる。また、被膜によって電子タグを被覆することで、例えば、電子タグの表面への薬液の付着や、電子タグと治具の表面に薬液が入り込むことを生じ難くすることもできる。そのため、このように構成すれば、例えば、電子タグが次の工程への薬液の持ち込みの原因になることについても、適切に防止できる。また、本願の発明者は、実際に様々な実験を行うことで、このような効果が適切に得られることを確認した。また、電子タグに限らず、非接触で情報の読み取り(読み出し)が可能な電子部品について、同様にしてメッキ用治具に取り付けることで、メッキ用治具の管理や、メッキ用治具を用いて行う工程の管理等に用いることが可能であることを確認した。
【0009】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、メッキの対象となるワークを保持するメッキ用治具の製造方法であって、前記ワークを保持するワーク保持部を有する治具フレームの少なくとも一部となる部材であるフレーム部材を準備する準備工程と、非接触で情報の読み取りが可能な電子部品を前記フレーム部材の表面に取り付ける電子部品取付工程と、メッキに使用する薬液に耐性のある被膜によって前記電子部品を被覆する被覆工程とを備える。
【0010】
このように構成すれば、例えば、電子部品を取り付けたメッキ用治具を適切に製造することができる。また、メッキに使用する薬液に耐性のある被膜によって電子部品を被覆することで、例えば、メッキに使用する薬液によって電子部品が故障することを適切に防止することができる。また、被膜によって電子部品を被覆することで、例えば、電子部品が次の工程への薬液の持ち込みの原因になることについても、適切に防止できる。更に、非接触で情報の読み取りが可能な電子部品を用いることで、例えば、被膜によって電子部品が被覆された状態でも、電子部品からの情報の読み取りを適切に行うことができる。また、これにより、例えば、電子部品に格納されている情報等を利用して、メッキ用治具の管理等を適切に行うことができる。
【0011】
このメッキ用治具の製造方法において、フレーム部材としては、例えば、金属等の導電性の部材で形成された部材を用いることが考えられる。また、電子部品を被覆する被膜については、例えば、治具フレームの表面を覆う被膜と同時に形成することが考えられる。この場合、被覆工程の一例として、例えば、治具フレームの表面の少なくとも一部をコーティングする工程であるコーティング工程を行うことが考えられる。また、この場合、コーティング工程で形成する被膜について、例えば、メッキに使用する薬液に耐性のある物質で形成される膜等と考えることができる。また、このような膜としては、例えば、絶縁耐食性の膜(被膜)である絶縁耐食膜を形成することが考えられる。この場合、コーティング工程では、例えば、治具フレームの表面の少なくとも一部に被膜を形成するのと同時に、電子部品を被覆する被膜を形成する。このように構成すれば、例えば、電子部品を被覆する被膜を効率的かつ適切に形成することができる。コーティング工程では、例えば、治具フレームの表面に被膜を形成するために行う公知の工程と同一又は同様にして、コーティングを行うことが考えられる。この場合、コーティング工程では、例えば、電子部品が治具フレームと被膜との間に挟まれるように、被膜を形成する。
【0012】
また、より具体的に、コーティング工程では、例えば、ディップコーティング法で、治具フレームの表面の少なくとも一部に被膜を形成することが考えられる。この場合、コーティング工程において、例えば、治具フレームにおける電子部品が取り付けられている位置が被膜の材料に浸かるように、被膜の材料に治具フレームを浸漬する。また、これにより、例えば、治具フレームの表面の少なくとも一部に被膜を形成するのと同時に、電子部品を被覆する被膜を形成する。このように構成すれば、例えば、治具フレームの表面及び電子部品を覆う被膜を適切に形成することができる。また、この場合、ディップコーティング法で被膜を形成することで、例えば、表面が滑らかな状態で電子部品を覆う被膜を形成することができる。そのため、この場合、例えば、薬液が付着しやすい凹凸等が電子部品の取り付け位置に形成されることを適切に防止することもできる。また、コーティング工程での被膜の形成については、ディップコーティング法以外の方法で行うこと等も考えられる。
【0013】
また、電子部品の取り付け位置への薬液の付着をより適切に防止をするためには、例えば、被膜の厚みに対して、電子部品の部品実装高を低くすることが好ましい。そのため、厚い被膜を形成できる方法でコーティング工程を行う場合等には、コーティング工程において、被膜厚が部品実装高よりも大きくなるように、被膜を形成することが考えられる。この場合、部品実装高については、例えば、治具フレームの表面において電子部品が取り付けられている部分と隣接する位置に対して電子部品が突出する高さ等と考えることができる。また、被膜厚については、例えば、コーティング工程で治具フレームにおける平坦な箇所に形成される被膜の厚さ等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、表面が滑らかな被膜によって電子部品を適切に被覆することができる。また、これにより、例えば、電子部品の取り付け位置への薬液の付着をより適切に防止することができる。
【0014】
また、被覆工程では、電子部品を被覆する被膜について、コーティング以外の方法で形成してもよい。また、この場合、例えば、熱収縮チューブを用いて被膜を形成することが考えられる。この場合、被覆工程について、例えば、熱収縮チューブを用いてフレーム部材に対して電子部品を固定する工程等と考えることができる。また、より具体的に、この場合、被覆工程では、例えば、電子部品と共にフレーム部材の一部を覆うようにフレーム部材及び電子部品に対して熱収縮チューブを被せる。そして、熱収縮チューブを加熱することで、例えば、収縮した熱収縮チューブの少なくとも一部が電子部品を覆う被膜となるように、熱収縮チューブによって電子部品を被覆する。このように構成した場合も、例えば、電子部品を取り付けたメッキ用治具を適切に製造することができる。また、これにより、例えば、電子部品に格納されている情報等を利用して、メッキ用治具の管理等を適切に行うことができる。
【0015】
また、この場合、単に熱収縮チューブを用いるのみであると、例えば電子部品の周囲等において、熱収縮チューブとフレーム部材との間に余計な隙間が生じやすくなる場合がある。また、このような隙間が生じると、例えば、メッキに使用する薬液等が熱収縮チューブとフレーム部材との間に侵入しやすくなり、電子部品の損傷や次の工程への薬液の持ち込みの原因になること等も考えられる。そのため、熱収縮チューブを用いて電子部品の被覆を行う場合、例えば、フレーム部材と熱収縮チューブとの間の隙間に充填される充填剤を更に用いることが好ましい。この場合、電子部品取付工程では、例えば、熱収縮チューブによって覆われる部分の少なくとも一部に対して充填剤を塗布する。また、被覆工程では、例えば、充填剤が塗布されているフレーム部材及び電子部品に対して熱収縮チューブを被せて、熱収縮チューブを加熱する。このように構成すれば、例えば、熱収縮チューブとフレーム部材との間に余計な隙間が生じることを適切に防止しつつ、熱収縮チューブを用いて、フレーム部材に対して電子部品をより適切に固定することができる。
【0016】
また、熱収縮チューブによって電子部品を覆う場合、メッキ用治具の製造時において、熱収縮チューブにより形成される被膜とは別に、治具フレームの表面の少なくとも一部に対して、例えばコーティングを行う工程により、絶縁耐食膜を形成することが考えられる。この場合、絶縁耐食膜について、例えば、電子部品が取り付けられる範囲とは別の位置で治具フレームの表面の少なくとも一部を覆う被膜等と考えることができる。また、この場合、熱収縮チューブにより形成される被膜について、例えば、このような絶縁耐食膜とは別の被膜等と考えることができる。
【0017】
また、熱収縮チューブを用いてフレーム部材に対して電子部品を取り付ける場合、例えば、このような絶縁耐食膜が既に形成されているメッキ用治具に対して電子部品を後付けすることで、電子部品付きのメッキ用治具を製造すること等も考えられる。また、この場合、例えば、必要に応じて絶縁耐食膜の一部を剥離して、その位置に電子部品を取り付けること等も考えられる。より具体的に、この場合、準備工程では、例えば、絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているフレーム部材を準備する。そして、電子部品取付工程では、例えば、フレーム部材の表面の一部における絶縁耐食膜を剥離して、絶縁耐食膜を剥離した位置に、電子部品を取り付ける。また、被覆工程では、例えば、電子部品取付工程で絶縁耐食膜を剥離した範囲の少なくとも一部が熱収縮チューブに覆われるように、フレーム部材及び電子部品に対して熱収縮チューブを被せる。このように構成すれば、例えば、絶縁耐食膜が既に形成されているフレーム部材に対し、電子部品を適切に取り付けることができる。また、これにより、例えば電子部品が取り付けられていない既存のメッキ用治具を用いて、電子部品付きのメッキ用治具を容易かつ適切に製造することができる。また、電子部品を取り付ける位置等によっては、例えば、絶縁耐食膜の剥離を行わずに、既存のメッキ用治具に対して電子部品を取り付けること等も考えられる。
【0018】
また、この構成において、電子部品としては、例えば、電子タグを用いることが考えられる。この場合、電子タグについては、例えば、自身が取り付けられているメッキ用治具の識別情報を非接触で読み取り可能な電子部品等と考えることができる。電子部品として電子タグを用いることで、例えば、メッキ用治具の識別を容易かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具の管理をより適切に行うことができる。電子部品としては、例えば各種のセンサ等の、電子タグ以外の部品を用いてもよい。また、電子部品としては、例えば、情報の読み取りのみではなく、書き込みも可能な部品を用いてもよい。この場合、電子部品として、例えば、メッキ用治具が製造された後にも情報の書き込みが可能な部品(例えば、不揮発性メモリ等)を好適に用いることができる。
【0019】
また、この場合、電子部品において、例えば、少なくともメッキ用治具の使用履歴を記憶すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、使用履歴を利用して、メッキ用治具をより適切に管理することができる。また、より具体的に、この場合、メッキ用治具を管理するメッキ用治具の管理方法として、例えば、メッキ用治具の使用履歴をそのメッキ用治具に取り付けられている電子部品に記憶させておくことが考えられる。この場合、例えば、メッキを行う工程でのメッキ用治具の使用回数が予め設定された回数になった時点で、そのメッキ用治具に対して所定の更新やメンテナンスを行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具が実際に使用された履歴に基づき、メッキ用治具に対して適切に更新やメンテナンスを行うことができる。また、これにより、例えば、被膜の劣化によってメッキの工程で不良品が生じる前に、メッキ用治具の更新やメンテナンスを適切に行うことができる。メッキ用治具に対するメンテナンスとしては、例えば、被膜の再形成を行うこと等が考えられる。この場合、上記の所定のメンテナンスとして、例えば、メンテナンスの対象となったメッキ用治具から被膜を剥離し、その後、治具フレームの表面の少なくとも一部に対し、新たな被膜を形成する。また、この場合、メッキ用治具から剥離する被膜について、例えば、上記において説明をした絶縁耐食膜に対応する被膜等と考えることができる。また、メンテナンスの対象のメッキ用治具について、例えば、治具フレームの表面の少なくとも一部に絶縁耐食膜が形成されていると考えることができる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具の被膜が過度に劣化する前に、新たな被膜を適切に形成することができる。また、本発明の構成として、例えば、上記と同様の特徴を有するメッキ用治具の構成等を考えることもできる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、メッキ用治具の管理等をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るメッキ用治具10の一例を示す図である。
図1(a)は、メッキ用治具10の構成の一例を示す。
図1(b)は、メッキ用治具10の特徴部分を拡大して示す。
【
図2】メッキ用治具10に対する電子タグ16の取り付け方について更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、治具フレーム12の一部を構成するフレーム部材の例を示す。
図2(b)は、フレーム部材と電子タグ16とを並べて示す。
図2(c)は、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける位置の例を示す。
図2(d)は、
図2(b)、(c)に示した例とは異なる電子タグ16を用いる場合について、フレーム部材と電子タグ16とを並べて示す。
図2(e)は、治具フレーム12に対して被膜14を形成した状態の例を示す。
【
図3】メッキ用治具10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】メッキ用治具10の管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】被膜14の形成の仕方や電子タグ16の取り付け方の様々な例について説明をする図である。
図5(a)は、被膜14の形成の仕方の一例を示す。
図5(b)は、電子タグ16の取り付け方の変形例を示す。
図5(c)は、電子タグ16の取り付け方の更なる変形例を示す。
【
図6】電子タグ付きのメッキ用治具の製造方法の変形例について説明をする図である。
図6(a)~(c)は、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける動作の途中の状態を示す。
【
図7】電子タグ付きのメッキ用治具の製造方法の変形例について説明をする図である。
図7(a)、(b)は、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける動作における取り付け後の状態を示す。
【
図8】電子タグ付きのメッキ用治具を製造する製造方法の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るメッキ用治具10の一例を示す。
図1(a)は、メッキ用治具10の構成の一例を示す写真であり、メッキ用治具10の特徴部分を含むメッキ用治具10の一部の構成を示す。
図1(b)は、メッキ用治具10の特徴部分を拡大して示す写真である。
【0023】
本例において、メッキ用治具10は、メッキ(めっき)を行う工程(以下、メッキ工程という)においてメッキの対象となるワークを保持する治具である。この場合、メッキ工程については、例えば、ワークの表面に金属の膜を形成する表面処理を行う工程等と考えることができる。ワークについては、例えば、メッキ工程での表面処理の対象物となる製品等と考えることができる。メッキ用治具10については、例えば、ワークが取り付けられることでワークを固定する表面処理用治具の一例と考えることができる。また、メッキ用治具10について、例えば、メッキ工程用の専用治具等と考えることもできる。メッキ工程としては、一般的に、例えば、電気メッキ(電解メッキ)の工程、又は無電解メッキの工程を行うことが考えられる。この場合、電気メッキについては、例えば、ワークに対して通電を行うメッキの工程等と考えることができる。無電解メッキについては、例えば、ワークに対して通電を行わないメッキの工程等と考えることができる。また、以下において説明をする点を除き、メッキ用治具10は、公知のメッキ用治具と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、
図1(a)に示した部分以外において、本例のメッキ用治具10は、公知のメッキ用治具と同一又は同様の特徴を有してよい。また、以下において説明をするように、本例のメッキ用治具10には、電子タグ16が取り付けられている。そして、電子タグ16に関連する事項以外において、本例のメッキ用治具10は、公知のメッキ用治具と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0024】
また、本例において、メッキ用治具10は、電気メッキの工程で用いられる治具であり、治具フレーム12、被膜14、及び電子タグ16を備える。治具フレーム12は、メッキ用治具10の本体部分(治具本体)となる骨組みを構成するフレームである。治具フレーム12については、例えば、メッキ用治具10における導電性の骨組み部分等と考えることもできる。また、本例において、治具フレーム12は、導電性のフレーム部材の一例である金属のフレーム部材により構成されている。フレーム部材については、例えば、治具フレーム12の少なくとも一部となる部材等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、治具フレーム12は、複数の金属の平板棒状部材を組み合わせることで構成されている。この場合、例えば、それぞれの平板棒状部材について、フレーム部材の一例と考えることができる。また、この場合において、複数の平板棒状部材が組み合わされている治具フレーム12の全体について、フレーム部材の一例と考えることもできる。
【0025】
また、本例において、治具フレーム12は、複数のワーク保持部102及び複数の上端部104を有する。ワーク保持部102は、メッキ工程の実施時にワークを保持する部分である。また、上端部104は、治具フレーム12において鉛直方向の最上部となる部分である。この場合、治具フレーム12の最上部については、例えば、メッキ工程でのメッキ用治具10の使用時におけるメッキ用治具10の向きでの最上部等と考えることができる。また、メッキ工程でのメッキ用治具10の使用時におけるメッキ用治具10の向きについては、例えば、メッキに使用する薬液(以下、メッキ液という)にメッキ用治具10が浸漬される動作でのメッキ用治具10の向き等と考えることができる。メッキ液については、例えば、メッキ工程においてワークの表面に金属の膜を形成するためにメッキ用治具10を浸漬する薬液等と考えることができる。本例において、治具フレーム12における上端部104は、メッキ工程の実行時にメッキ液に浸漬されない部分である。また、上端部104は、フック状に折り曲げられており、吊り下げによってメッキ用治具10を保持する場合に、メッキ用治具10を保持するための部材と係合する。
【0026】
被膜14は、治具フレーム12の表面を覆う膜であり、メッキ液に耐性のある物質で形成される。メッキ液に耐性のある物質で被膜14が形成されることについては、例えば、メッキ工程でのメッキ用治具10の使用時に被膜14に溶解等が生じないこと等と考えることができる。被膜14に溶解等が生じないことについては、例えば、メッキ用治具10に求められる品質に応じた範囲で、実質的に溶解等が生じないこと等と考えることができる。また、メッキ液に耐性のあることについては、例えば、メッキを行う工程で求められる品質に応じた耐食性及び耐久性を有すること等と考えることもできる。このように構成した場合、治具フレーム12の表面に被膜14を形成することで、例えば、メッキ工程で治具フレーム12の表面にまで金属の膜が形成されることを適切に防止することができる。
【0027】
また、本例において、被膜14は、非導電性の膜であり、治具フレーム12に対してコーティングを行うコーティング工程において、メッキに使用する薬液に耐性のある物質により、治具フレーム12の表面における一部を除いた部分に形成される。この場合、被膜14について、例えば、絶縁耐食性の被膜である絶縁耐食膜等と考えることができる。また、上記のように、本例において、メッキ用治具10は、電気メッキの工程で用いられる治具である。そして、この場合、電源の一方の電極(例えば、アノード電極)をメッキ液に浸漬して、他方の電極(例えば、カソード電極)を治具フレーム12に接続することで、治具フレーム12を介して、ワークに電流を流すことが考えられる。また、この場合、治具フレーム12に対しては、例えば上端部104のようなメッキ液に浸からない部分に対して、電源の電極を接続する。そして、例えば、治具フレーム12におけるワーク保持部102の位置において、治具フレーム12とワークとを電気的に接続する。この場合、治具フレーム12について、例えば、ワークに電流を流すための電極として機能すると考えることもできる。また、このような電気的な構成を実現するために、本例において、被膜14は、治具フレーム12の表面のうち、ワーク保持部102の一部と、上端部104の少なくとも一部とを除いた部分を覆うように形成される。このように構成すれば、例えば、メッキ工程において、治具フレーム12の表面を適切に保護しつつ、ワークに対するメッキを適切に行うことができる。また、メッキ用治具10の変形例においては、メッキ用治具10について、無電解メッキの工程で用いること等も考えられる。この場合、ワークや治具フレーム12に電流を流すことが不要になるため、被膜14について、治具フレーム12の表面の全てを覆うように形成してもよい。
【0028】
電子タグ16は、メッキ用治具10に取り付けられる電子部品の一例である。電子タグ16については、例えば、識別情報等を記憶する集積回路(ICタグ)等と考えることができる。本例において、電子タグ16は、非接触で情報の読み取りが可能な電子部品(RFIDタグ)であり、治具フレーム12と共に被膜14に覆われることで、治具フレーム12の表面における所定の位置に取り付けられる。また、より具体的に、本例において、電子タグ16は、治具フレーム12における上端部104の近傍で、かつ、被膜14に覆われる部分に取り付けられる。この場合、上端部104の近傍については、例えば、上端部104又はその近傍等と考えることができる。また、本例において、メッキ用治具10の製造時に被膜14を形成する工程では、電子タグ16と共に治具フレーム12の表面を覆うように被膜14を形成することで、治具フレーム12と被膜14との間に挟まれる位置に電子タグ16を固定する。また、これにより、治具フレーム12、被膜14、及び電子タグ16を一体物とする一体製法で、被膜14を形成する。このように構成すれば、被膜14によって電子タグ16を覆うことで、例えば、電子タグ16を適切に保護することができる。また、これにより、例えば、メッキ液によって電子タグ16が腐食すること等を適切に防ぐことができる。また、非接触で情報の読み取りが可能な電子タグ16を用いることで、例えば、被膜14に覆われた状態の電子タグ16からの情報の読み取りを適切に行うことができる。
【0029】
ここで、本例において、電子タグ16は、少なくとも、その電子タグ16が取り付けられているメッキ用治具10を識別するための識別情報を記憶している。この場合、電子タグ16について、例えば、自身が取り付けられているメッキ用治具10の識別情報を非接触で読み取り可能な電子部品等と考えることができる。このような電子タグ16を用いることにより、例えば、メッキ用治具10の識別を容易かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10の管理を適切に行うことができる。また、この場合、例えば、メッキ用治具10の識別情報と対応付けて、様々な情報を管理することもできる。
【0030】
電子タグ16に記憶されている識別情報と対応付ける様々な情報については、例えば、メッキ用治具10の外部において、コンピュータ等で管理することが考えられる。この場合、例えば、メッキ用治具10における電子タグ16から読み取った識別情報に基づき、その識別情報に対応する様々な情報をコンピュータ等から読み取ることが考えられる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10に関する様々な情報を適切に管理することができる。また、この場合、コンピュータとして、例えばタブレット端末等の携帯端末を用いること等も考えられる。また、メッキ用治具10の識別情報に対応する様々な情報については、例えば、電子タグ16に記憶させること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な情報を識別情報に対してより確実に対応付けることができる。また、この場合、電子タグ16について、例えば、非接触で読み取り可能な状態で、識別情報以外の様々な情報を更に記憶していると考えることができる。また、メッキ用治具10の用途によっては、電子タグ16において、識別情報を記憶せずに、その他の情報のみを記憶してもよい。
【0031】
また、電子タグ16としては、例えば、情報の読み取りのみではなく、書き込みも可能な部品を用いることが考えられる。このような電子タグ16としては、例えば、メッキ用治具10が製造された後にも情報の書き込みが可能な不揮発性メモリ等を好適に用いることができる。このように構成すれば、様々な情報を電子タグ16に適切に記憶させることができる。また、本例においては、情報の書き込みも非接触で行える電子タグ16を用いる。このように構成すれば、例えば、電子タグ16を覆う被膜14を形成した後にも、電子タグ16への情報の書き込みを適切に行うことができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10の使用を開始した後にも、必要に応じて、電子タグ16に記憶されている情報を書き換えることができる。
【0032】
また、より具体的に、本例においては、メッキ用治具10に電子タグ16を取り付けることで、例えば、製品の詳細な生産履歴の管理等を行うことが可能になる。この場合、製品については、例えば、メッキ工程でメッキ用治具10によって保持されるワークから製造される製品等と考えることができる。また、生産履歴の管理としては、例えば、ロット管理、製品の識別、製造を行った日時の管理、又は製造時の工程で用いた処理データ等の管理を行うことが考えられる。また、メッキ用治具10に電子タグ16を取り付けることで、例えば、メッキ用治具10の使用履歴等のような、治具自体に関する情報を管理すること等も可能になる。この場合、例えば、メッキ用治具10の製造データ、メッキ用治具10の使用回数等を管理することが考えられる。このような情報を管理することで、例えば、メッキ用治具10に対してメンテナンスを行う時期の判断やメッキ用治具10の寿命の判断等について、より容易かつ適切に行うこと等が可能になる。
【0033】
また、電子タグ16を用いることで、例えば、メッキ工程で使用するメッキ用治具10を探し出すこと等も容易になる。また、これにより、例えば、メッキ工程で誤ったメッキ用治具10を用いること等を適切に防止することができる。より具体的に、メッキ工程では、通常、ワークの形状等に合わせて製造されたメッキ用治具10を用いる。そのため、メッキ工程を行う現場(例えば、工場等)では、通常、様々な製品に対応する様々な形状のワークに合わせて、複数種類のメッキ用治具10中から、次に行うメッキ工程で使用するメッキ用治具10を選ぶことが必要になる。また、この場合において、形状が似ている複数種類のメッキ用治具10の中から、正しいメッキ用治具10を選ぶことが必要になる場合がある。これに対し、本例においては、例えば、電子タグ16に記憶されている情報に基づき、それぞれのメッキ用治具10を識別することができる。また、これにより、例えば、上記のように、メッキ工程で誤ったメッキ用治具10を用いること等を適切に防止することができる。
【0034】
また、電子タグ16を用いることで、例えば、メッキ用治具10の所在管理等を適切に行うこと等も可能になる。この場合、例えば、多数のメッキ用治具10を保管する倉庫等の治具置き場の中でそれぞれのメッキ用治具10が置かれる設置位置について、メッキ用治具10の識別情報と対応付けて管理することが考えられる。また、この場合、識別情報と設置位置とを対応付けた情報をメッキ用治具10の外部のコンピュータ等に格納しておき、使用したいメッキ用治具10の識別情報の入力に応じて、設置位置を取得することが考えられる。このように構成すれば、治具置き場にある多数のメッキ用治具10の中から、必要なメッキ用治具10を正確かつ適切に探し出すことができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10の所在管理を適切に行うことができる。
【0035】
続いて、メッキ用治具10に対する電子タグ16の取り付け方や、メッキ用治具10の製造方法等について、更に詳しく説明をする。
図2は、メッキ用治具10に対する電子タグ16の取り付け方について更に詳しく説明をする図である。尚、
図2においては、図示の便宜上、治具フレーム12の一部を構成する部材を抜き出して示すことで、電子タグ16の取り付け方の一例を示している。また、上記においても説明をしたように、本例においては、治具フレーム12の少なくとも一部を構成する部材について、フレーム部材と考えることができる。そのため、以下においては、治具フレーム12の一部に対応する部材について、単に、フレーム部材という。また、メッキ用治具10の製造時には、例えば、複数のフレーム部材によって治具フレーム12を組み立てた状態で、治具フレーム12に電子タグ16を取り付けることが考えられる。また、メッキ用治具10の製造条件によっては、いずれかのフレーム部材に対して電子タグ16を取り付けた後に、治具フレーム12を組み立ててもよい。また、説明の便宜上、以下においては、治具フレーム12の一部に対応するフレーム部材について、単に、治具フレーム12という場合がある。
【0036】
図2(a)は、治具フレーム12の一部を構成するフレーム部材の例を示す。
図2(b)は、フレーム部材と電子タグ16とを並べて示す。
図2(c)は、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける位置の例を示す。
図2(d)は、
図2(b)、(c)に示した例とは異なる電子タグ16を用いる場合について、フレーム部材と電子タグ16とを並べて示す。
図2(e)は、治具フレーム12に対して被膜14を形成した状態の例を示す。
【0037】
図2(c)において電子タグ16を取り付けている位置は、電子タグ16の取り付け位置の一例である。電子タグ16については、
図2(c)に示す位置以外の位置に取り付けてもよい。例えば、電子タグ16について、
図2(c)において治具フレーム12の裏側になっている面に取り付けてもよい。また、電子タグ16を取り付ける位置については、例えば、治具フレーム12において被膜14によって覆われる範囲の中で、上端部104又は上端部104に近い位置にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、電子タグ16の情報を読み取る動作等をより容易に行うことができる。より具体的に、本例において、被膜14は、治具フレーム12の表面のうち、上端部104におけるブスバーとの接触部等を除いた部分を覆うように形成される。そして、この場合、上記のような位置に電子タグ16を取り付けた場合、上端部104の側で被膜14が形成されている範囲の端付近を探すことで、電子タグ16を容易かつ適切に探し出すことができる。また、これにより、例えば、電子タグ16に対する読み取りの動作等をより容易に行うことができる。また、メッキ用治具10の保管時には、例えば、メッキ用治具10の使用時の向きに合わせて、上端部104が上側になるように、メッキ用治具10を設置することが考えられる。そして、この場合、保管時に上側になる上端部104の近くに電子タグ16を取り付けることで、例えば作業者の目線に近い位置で、電子タグ16に対する読み取りの動作等をより容易に行うことができる。
【0038】
更に、上端部104又は上端部104に近い位置に電子タグ16を取り付けることで、例えば、メッキ工程において、電子タグ16の位置が必要以上にメッキ液に浸かることを防止することもできる。また、これにより、例えば、電子タグ16の位置での被膜14の劣化が生じ難くすることもできる。より具体的に、この場合、電子タグ16について、例えば、治具フレーム12におけるいずれのワーク保持部102(
図1参照)よりも上端部104に近い位置に取り付けること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、電子タグ16の位置をメッキ液に浸けずにメッキ工程を行うこと等も可能になる。また、
図1に図示したように、治具フレーム12としては、例えば、上下方向へ延伸する複数のフレーム部材である複数の縦杆部と、複数の縦杆部をつなぐように水平方向へ延伸する一つ以上のフレーム部材である横杆部とを有する構成を用いることが考えられる。そして、この場合、電子タグ16については、例えば、いずれかの縦杆部において、いずれの横杆部よりも上端部104に近くなる位置に取り付けることが考えられる。
【0039】
また、
図2(e)においては、図示の便宜上、
図2(d)に示す電子タグ16を用いる場合について、治具フレーム12の一部を構成するフレーム部材に対して被膜14を形成した状態を示している。しかし、実際のメッキ用治具10の製造時には、例えば、複数のフレーム部材によって治具フレーム12を組み立てた状態で、治具フレーム12の表面に被膜14を形成することが考えられる。また、メッキ用治具10の製造条件によっては、それぞれのフレーム部材に対して被膜14を形成した後に、治具フレーム12を組み立てること等も考えられる。
【0040】
本例によれば、例えば、サイズの大小等にかかわらず、様々な形状の電子タグ16をメッキ用治具10に適切に取り付けることができる。また、この場合において、被膜14によって電子タグ16を覆うことで、例えばメッキ液に対する電子タグ16の耐食性能の有無等にかかわらず、様々な電子タグ16を適切に使用することができる。また、以下において詳しく説明をするように、本例においては、治具フレーム12と電子タグ16とを一体にコーティングする方法で、被膜14を形成する。そのため、本例によれば、例えば、電子タグ16の脱落等を適切に防止することができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10を製造した後に電子タグ16が移動して、電子タグ16の位置が変化すること等を防止することもできる。また、被膜14によって電子タグ16の位置を安定にすることで、例えば、メッキ用治具10の量産時において、同一の取り付け位置に電子タグ16をより適切に取り付けることができる。更に、本例においては、柔軟な被膜14によって電子タグ16を包み込むことで、例えば衝撃に対して敏感な電子タグ16を用いる場合等にも、電子タグ16の破損等を適切に防止することができる。また、治具フレーム12と電子タグ16とを一体にコーティングする方法で被膜14を形成することで、例えば、メッキ液等の薬液が電子タグ16に付着すること等を適切に防止することもできる。また、これにより、例えば、次工程への薬液の持ち込みを低減して、品質向上及びコストダウンを適切に実現すること等も可能になる。
【0041】
また、本例において、被膜14については、例えば、
図3を用いて以下において説明をするメッキ用治具10の製造方法の中で形成することが考えられる。
図3は、メッキ用治具10の製造方法の一例を示すフローチャートである。メッキ用治具10を製造する場合、先ず、メッキ用治具10を構成する各部品の準備を行う(S102)。本例において、ステップS102は、フレーム部材を準備する準備工程の一例であり、治具フレーム12及び電子タグ16を準備する。この場合、複数のフレーム部材が組み立てられた状態の治具フレーム12を準備することについて、フレーム部材を準備する動作の一例と考えることができる。また、メッキ用治具10の製造方法の変形例では、ステップS102において、既に組み立てられた状態の治具フレーム12ではなく、治具フレーム12を構成するそれぞれのフレーム部材を準備してもよい。この場合、以降のいずれかのタイミングにおいて、治具フレーム12の組み立てを行う。例えば、この場合、いずれかのフレーム部材に対して電子タグ16を取り付けた後に、治具フレーム12を組み立ててもよい。
【0042】
また、ステップS102で治具フレーム12及び電子タグ16を準備した後には、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける(S104)。本例において、ステップS104は、電子部品取付工程の一例であり、治具フレーム12におけるいずれかのフレーム部材の表面に電子タグ16を取り付けることで、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける。この場合、電子タグ16の取り付けについては、例えば、治具フレーム12において予め決められた所定の位置に電子タグ16を取り付けること等と考えることができる。また、本例において、ステップS104において行う電子タグ16の取り付けについては、例えば、被膜14によって電子タグ16を覆う前に電子タグ16の位置を決める動作等と考えることができる。この場合、後に行う被膜14を形成する工程で電子タグ16の位置がずれない状態で、治具フレーム12の表面における所定の位置へ電子タグ16を仮止めすることが考えられる。また、この場合、例えば両面テープや接着剤等を用いて、治具フレーム12の表面に電子タグ16を固定すること等が考えられる。
【0043】
また、この場合、使用する電子タグ16の性能等に応じて、例えば、導電性の両面テープ又は接着剤等を用いて、治具フレーム12に対して電子タグ16を固定することが考えられる。より具体的に、電子タグ16としては、金属対応の電子タグを用いることが考えられる。また、この場合、金属に対して取り付けられることで、例えば取り付け対象の金属部材をアンテナとして機能させて、読み取り可能な距離を長くできる電子タグ16を用いること等も考えられる。そして、このような場合、電子タグ16と治具フレーム12との間が電気的に接続されない状態になると、電子タグ16の機能を適切に活かせなくなる場合がある。そのため、このような場合には、上記のように、導電性の両面テープ等を用いて、治具フレーム12に対して電子タグ16を固定することが好ましい。また、この場合、電子タグ16として、例えば、UHF帯用のRFIDタグ等を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、治具フレーム12を適切にアンテナとして機能させて、電子タグ16の読み取り可能な距離を伸ばすことができる。また、より具体的に、本例において、電子タグ16としては、例えば、日本ミクロン株式会社より販売されているSmaCoシリーズ(登録商標)の多環境対応RFIFタグ等を好適に用いることができる。
【0044】
また、治具フレーム12の表面に電子タグ16を取り付けた後には、治具フレーム12の表面に被膜14を形成する(S106)。本例において、ステップS106は、コーティング工程の一例であり、電子タグ16が取り付けられた治具フレーム12に対して被膜14を形成することで、治具フレーム12の表面の少なくとも一部を覆う被膜14を形成するのと同時に、電子タグ16を被覆する被膜14を形成する。この場合、コーティング工程については、例えば、治具フレーム12の表面の少なくとも一部をコーティングする工程等と考えることができる。また、本例において、コーティング工程は、被覆工程の一例である。より具体的に、ステップS106では、例えば、公知のメッキ用治具の製造時に治具フレームの表面に被膜を形成するために行う公知の工程と同一又は同様にして、治具フレーム12に対して被膜14を形成するコーティングを行うことが考えられる。この場合、本例のステップS106では、電子タグ16が治具フレーム12と被膜14との間に挟まれるように、被膜14を形成することになる。このように構成すれば、例えば、電子タグ16を被覆する被膜14を効率的かつ適切に形成することができる。また、メッキ液に耐性のある被膜14によって電子タグ16を覆うことで、例えば、電子タグ16を適切に固定し、保護することができる。また、本例においては、以上の工程により、メッキ用治具10を製造する。
【0045】
ここで、ステップS106で被膜14を形成する動作や、本例において形成する被膜14の特徴等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、ステップS102では、例えば、複数のフレーム部材が組み立てられた状態で、治具フレーム12を準備する。この場合、ステップS106では、組み立てられた状態の治具フレーム12に対して、被膜14を形成することになる。また、メッキ用治具10の製造方法の変形例では、例えば、ステップS104で電子タグ16を取り付けた後に治具フレーム12を組み立てることも考えられる。この場合、例えば、フレーム部材に対して被膜14を形成した後に、治具フレーム12の組み立ててもよい。この場合も、電子タグ16を覆うように被膜14を形成する動作について、例えば、治具フレーム12の表面の少なくとも一部に被膜14を形成するのと同時に電子タグ16を被覆する被膜14を形成する動作と考えることができる。
【0046】
また、ステップS106においては、加熱を伴う方法により、被膜14の形成を行うことが考えられる。例えば、ステップS106では、被膜14の材料となる物質の塗布と、加熱とを行うことで、被膜14を形成すること等が考えられる。そして、この場合、電子タグ16について、仕様上の耐熱温度がこの加熱での加熱温度よりも高い電子部品を用いることが好ましい。より具体的に、被膜14の形成の仕方について、ステップS106では、例えば、ゾルコーティング法(ゾル・ゲルコーティング法)で被膜14を形成することが考えられる。この場合、例えば、添加剤によって柔軟になっている被膜14の材料(塗布材料)を治具フレーム12に塗布した後、加熱によって添加剤を除去することで塗布材料を硬化させて、被膜14を形成する。そのため、この場合、電子タグ16として、添加剤を除去するための加熱時の加熱温度よりも耐熱温度が高い電子部品を用いることが考えられる。また、ゾルコーティング法での通常の加熱温度を考慮した場合、電子タグ16の耐熱温度は、好ましくは200℃以上、更に好ましくは400℃以上である。また、本例においては、ゾルコーティング法で被膜14を形成することで、例えば、被膜14により、治具フレーム12と共に電子タグ16を適切に包み込むことができる。また、これにより、例えば、メッキ液によって電子タグ16が腐食すること等を適切に防止して、過酷な環境で電子タグ16を用いることが可能になる。また、この場合、ステップS106について、例えば、塗布工程及び加熱工程を行うステップ等と考えることもできる。塗布工程については、例えば、軟化した状態の被膜の材料を治具フレーム12に塗布する工程等と考えることができる。加熱工程については、例えば、治具フレーム12を加熱する工程等と考えることができる。
【0047】
また、より具体的に、ステップS106における塗布工程では、例えば、ディップコーティング法で、治具フレーム12の表面の少なくとも一部に被膜14を形成することが考えられる。この場合、塗布工程で被膜14を形成することについては、例えば、被膜14の材料を治具フレーム12の表面に塗布すること等と考えることができる。ディップコーティング法については、例えば、被膜が形成される対象物を被膜の材料に浸けることで被膜を形成する方法等と考えることができる。また、ディップコーティング法について、例えば、ディップコーター装置(ディップコーティング装置)を用いて被膜を形成する方法等と考えることもできる。ディップコーター装置としては、公知のディップコーター装置等を好適に用いることができる。また、ディップコーティング法で塗布工程を行う場合、例えば、添加剤の添加等によって柔軟化した被膜14の材料を貯留する貯留槽を用い、治具フレーム12において電子タグ16が取り付けられている位置が被膜14の材料に浸かるように、被膜14の材料に治具フレーム12を浸漬する。そして、その後に治具フレーム12を取り出すことで、被膜14の材料を治具フレームに塗布する。また、加熱工程では、例えば、治具フレーム12に対して加熱を行うことで、治具フレーム12に形成された被膜14に含まれている添加剤を除去して、被膜14を硬化させる。このように構成すれば、例えば、治具フレーム12の表面の少なくとも一部に被膜14を形成するのと同時に、電子タグ16を被覆する被膜14を適切に形成することができる。また、この場合、例えば、表面が滑らかな状態で電子タグ16を覆う被膜14を形成することで、薬液が付着しやすい凹凸等が電子タグ16の取り付け位置に形成されることを適切に防止することもできる。
【0048】
尚、治具フレーム12に形成する被膜14について、被膜14の厚さが薄い場合、例えばピンホール等が生じやすくなることで、治具フレーム12の腐食等が生じやすくなる場合がある。一方で、被膜14の厚さを過度に厚くする場合、被膜14の材料のコストの増大等の問題が生じることになる。そのため、ゾルコーティング法で被膜14を形成する場合、被膜14の厚さについては、例えば、1~3mm程度にすることが好ましい。また、この場合、被膜14の材料として、例えば、塩化ビニル等を好適に用いることができる。また、ゾルコーティング法等で被膜14を形成する場合において、塗布工程をディップコーティング法で行う場合、形成しようとする被膜14の厚さに応じて、被膜14の材料への治具フレーム12の浸漬を複数回行うことが考えられる。この場合、例えば、上記において説明をした塗布工程及び加熱工程の動作を複数回繰り返すことが考えられる。このように構成すれば、例えば、必要な厚さの被膜14をより適切に形成することができる。また、メッキ用治具10に求められる仕様等によっては、1回の塗布工程及び加熱工程で被膜14を形成してもよい。
【0049】
また、被膜14の形成については、上記と異なる方法で行うことも考えられる。例えば、塗布工程について、ディップコーティング法以外の方法で行ってもよい。この場合、被膜14の材料について、例えば、塗布工程の動作に合わせた材料を用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、粉体塗装法(静電塗装法)で被膜14を形成すること等が考えられる。このような方法で被膜14を形成する場合にも、例えば、メッキ液に対して耐性がある物質で電子タグ16及び治具フレーム12を覆う被膜14を形成することで、電子タグ16を適切に保護することができる。また、上記と異なる方法で被膜14を形成する場合にも、例えば塗布工程及び加熱工程を含む工程によって被膜14を形成することが考えられる。この場合も、電子タグ16としては、仕様上の耐熱温度が加熱工程での加熱温度よりも高い部品を用いることが好ましい。また、この場合、加熱工程については、被膜14の形成の仕方に応じて、塗布工程の前、後、又は塗布工程と同時のいずれかに行うことが考えられる。また、被膜14の材料としても、様々な材料を使用することができる。例えば、被膜14の材料として、フッ素コーティング(フッ素樹脂コーティング、テフロン(登録商標)コーティング)用の材料を用いることも考えられる。また、この場合、被膜14の形成については、例えば、公知の方法と同一又は同様にして、フッ素コーティング法等で行うこと等が考えられる。このように構成すれば、例えば、薬液の付着等が生じ難いフッ素樹脂の被膜14により、治具フレーム12の表面及び電子タグ16を適切に覆うことができる。
【0050】
以上のように、本例によれば、例えば、電子タグ16を取り付けたメッキ用治具10を適切に製造することができる。また、メッキ液に耐性のある物質で形成される被膜14によって電子タグ16を被覆することで、例えば、メッキ液によって電子タグ16が故障することを適切に防止することができる。更には、被膜14によって電子タグ16を被覆することで、例えば、電子タグ16の位置へのメッキ液等の薬液の付着を生じ難くすることができる。また、これにより、例えば、電子タグ16が次の工程への薬液の持ち込みの原因になることについても、適切に防止できる。
【0051】
また、メッキ用治具10を製造する工程では、例えば、
図3に示した工程以外の工程を更に行ってもよい。この場合、例えば、電子タグ16への情報の書き込みを行う工程(情報書込工程)を更に行うこと等が考えられる。また、この工程では、例えば、メッキ用治具10の管理に用いる管理情報等を電子タグ16に書き込むこと等が考えられる。管理情報としては、例えば、メッキ用治具10の識別情報等を用いることが考えられる。また、管理情報として、識別情報以外の情報を電子タグ16に書き込んでもよい。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、電子タグ16に様々な情報を記憶させることで、メッキ用治具10の管理等を適切に行うことができる。そこで、以下、電子タグ16の利用の仕方の例について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、非接触での情報の読み取り及び書き込みが可能な電子タグ16を用いる。そのため、メッキ用治具10の使用を開始した後にも、必要に応じて、電子タグ16に記憶されている情報を書き換えることができる。そして、この場合、電子タグ16において、例えば、メッキ用治具10の使用履歴等を記憶しておき、メッキ用治具10の使用状況に応じて使用履歴を書き換えることが考えられる。
【0053】
より具体的に、メッキ用治具10は、通常、メッキ工程において、繰り返して使用される。そして、この場合、メッキ用治具10を使い続けることで、治具フレーム12の表面の被膜14が劣化することが考えられる。また、被膜14の劣化が原因で、一部のワーク保持部102(
図1参照)で保持しているワークに対して適切にメッキが行えなくなり、不良品が発生する場合がある。このような場合、例えば、不良品が発生するワーク保持部102を使わず、他のワーク保持部102のみでワークを保持する方法で、メッキ用治具10を使い続けることが考えられる。しかし、この場合、例えば、メッキ用治具10の管理の手間が増大することになる。また、管理のミス等により、使用すべきでないワーク保持部102を使用することで、不良品が発生する場合もある。被膜14の劣化に対しては、例えば、被膜14において劣化している箇所を特定して修繕を行うことや、被膜14の再形成(再コーティング)を行うこと等も考えられる。しかし、この場合、被膜14の劣化について、不良品が発生することで検知することになる。そのため、不良品が発生するまでメッキ用治具10を使うことになり、不良品の発生率が高くなることが考えられる。また、被膜14の劣化箇所の修繕や被膜14の再形成を行う場合、不良品が発生する度に修繕等の作業が必要になることで、メッキ用治具10の管理のためのコストが大きくなる。
【0054】
この点に関し、メッキ用治具10の管理を簡単に行うことを考えた場合、例えばメッキ用治具10を製造した時点からある程度の期間がたった時点で、メッキ用治具10に対して一律に、例えば被膜14の再形成等のメンテナンスを行えばよいようにも思われる。しかし、メッキ工程を行って製品を大量生産する場合等には、同時期に多数のメッキ用治具10を製造する場合がある。そして、この場合において、製造したメッキ用治具10のうちの一部のみを使用し、他のメッキ用治具10を倉庫等に保管しておく場合もある。また、例えば複数の拠点でメッキ工程を行う場合等には、拠点によってメッキ用治具10の使用頻度に大きな差が生じること等も考えられる。そのため、単にメッキ用治具10の製造時からの期間に基づいてメッキ用治具10のメンテナンスを行う場合、必要以上のメンテナンスを行うことになり、メンテナンスのコストの増大要因になることが考えられる。これに対し、本例においては、電子タグ16を用いてメッキ用治具10の使用履歴を管理することで、メッキ用治具10が実際に使用された状況に合わせて、メッキ用治具10のメンテナンスを行うことができる。また、この場合、例えば
図4に示す動作によって、メンテナンスの対象となるメッキ用治具10を選択することが考えられる。
【0055】
図4は、メッキ用治具10の管理方法の一例を示すフローチャートであり、使用履歴に基づいてメンテナンスの対象となるメッキ用治具10を選択する動作の一例を示す。このフローチャートの動作では、複数のメッキ用治具10について、それぞれのメッキ用治具10の使用履歴をそのメッキ用治具10に取り付けられている電子タグ16に書き込むことで、それぞれのメッキ用治具10の使用履歴を電子タグ16に記憶させる。そして、メッキ工程でのメッキ用治具の使用回数が予め設定された回数になった時点で、そのメッキ用治具10に対して所定のメンテナンスを行う。この場合、使用履歴として、例えば、メッキ工程でメッキ用治具10を使用した回数を電子タグ16に記憶させることが考えられる。また、使用履歴として、例えば、メッキ用治具10を使用した日時や、メッキ用治具10を使用した工程を識別する情報(例えば、ロット番号等)を電子タグ16に記録しておくことも考えられる。
【0056】
より具体的に、この場合、メッキ工程の実行時において、メッキ用治具10を使用する毎に、メッキ用治具10における電子タグ16に格納されている情報を読み取る(S202)。また、本例において、ステップS202では、少なくとも、メッキ用治具10の使用履歴を読み取る。この場合、例えば、電子タグ16の情報を取得する装置をユーザが操作することで、電子タグ16からの情報を読み取ることが考えられる。このような装置としては、例えば、電子タグ16に対する情報の読み取り及び書き込みを行う入出力装置が接続された携帯端末(例えば、タブレット端末等)等を用いることが考えられる。また、ステップS202で用いる装置として、例えば、電子タグ16に対する情報の読み取り及び書き込みの機能を自身で有している携帯端末等を用いること等も考えられる。
【0057】
そして、ステップS202で取得したメッキ用治具10の使用履歴に基づき、そのメッキ用治具10がメッキ工程で使用可能か否かの判断を行う(S204)。この場合、例えば、メンテナンスを行う時期として予め設定された設定回数と、その時点までにそのメッキ用治具10が使用された使用回数とを比較して、使用回数が設定回数よりも少なければ、そのメッキ用治具10が使用可能であると判断する。また、使用回数が設定回数以上になっていた場合、メッキ用治具10について、メンテナンスを行う時期に達しており、使用不可であると判断する。この場合、例えば、電子タグ16からの情報の読み取りを行うためにユーザが使用する装置において、使用履歴に基づき、メッキ用治具10が使用可能であるか否かを判断することが考えられる。また、この場合、この装置の表示部への表示等により、判断の結果をユーザに通知することが考えられる。
【0058】
また、ステップS204において、メッキ用治具10が使用可能であると判断をした場合(S204、Yes)、そのメッキ用治具10の使用履歴を更新して(S206)、メッキ工程において、そのメッキ用治具10を使用する(S208)。この場合、ステップS206では、例えばユーザによる携帯端末の操作によって、新たな使用履歴を電子タグ16に書き込むことで、使用履歴を更新する。また、ステップS204において、メッキ用治具10が使用不可であると判断した場合(S204、No)、そのメッキ用治具10をメンテナンスの対象として選択する(S210)。この場合、そのメッキ用治具10を使用せず、他のメッキ用治具10を使用して、メッキ工程を行う。また、メンテナンスの対象として選択したメッキ用治具10に対しては、別途、所定のメンテナンスを行う。
【0059】
本例によれば、例えば、電子タグ16に格納する使用履歴に基づき、メンテナンスを行うべきメッキ用治具10を適切に選択することができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10に対し、被膜14の劣化等によってメッキ工程で実際に不良品等が発生する前に、適切にメンテナンスを行うことができる。また、この場合、メッキ工程でメッキ用治具10を使用する毎にそのメッキ用治具10の対応する使用履歴を更新し、電子タグ16に書き込むことで、使用履歴に基づき、メッキ用治具10を適切に管理することができる。
【0060】
ここで、図中に示すように、本例においては、メッキ工程でメッキ用治具10を使用する前に、メッキ用治具10の使用履歴に基づき、メッキ用治具10の使用の可否を判断している。また、メッキ工程でメッキ用治具10を使用する前に、使用履歴を更新する。メッキ用治具10の管理方法の変形例では、例えば、メッキ用治具10の使用の可否について、メッキ工程を行った後に判断をしてもよい。この場合、例えば、メッキ工程を行った直後において、使用したメッキ用治具10の電子タグ16から使用履歴を読み取り、次に行うメッキ工程でそのメッキ用治具10を使用できるか否かを判断する。そして、次のメッキ工程では使用できないと判断したメッキ用治具10について、メンテナンスの対象として選択する。また、メッキ用治具10の管理方法の変形例では、例えば、実際にメッキ工程でメッキ用治具10を使用した後に、使用履歴を更新してもよい。このように構成した場合も、メッキ用治具10の管理を適切に行うことができる。
【0061】
また、本例において、メッキ用治具10に対するメンテナンスとしては、例えば、被膜14の再形成を行うこと等が考えられる。この場合、ステップS210でメンテナンスの対象として選択したメッキ用治具10に対し、被膜14を剥離し、その後、新たな被膜14を形成する。この場合、被膜14の剥離については、例えば公知の方法と同様に、硝酸等を用いて行うことが考えられる。また、新たな被膜14の形成については、メッキ用治具10の製造時と同様に、電子タグ16及び治具フレーム12を覆うように、治具フレーム12の少なくとも一部に被膜14を形成する。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10における被膜14が過度に劣化する前に、新たな被膜14を適切に形成することができる。また、被膜14の再形成を行う場合、電子タグ16については、例えば、そのまま再利用(リユース)することが考えられる。このように構成すれば、例えば、被膜14の再形成時にかかるコストを適切に低減することができる。また、被膜14の再形成時には、電子タグ16の交換を更に行ってもよい。このように構成すれば、例えば、経年劣化等による電子タグ16の故障をより確実に防止することができる。また、被膜14の再形成を行う場合、電子タグ16に対し、再形成を行ったことを示す情報を書き込んでもよい。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10の管理をより適切に行うことができる。
【0062】
また、本例においては、使用履歴に基づいてメンテナンスのタイミングを決定することで、例えば、その時点で明確に問題が生じていないメッキ用治具10に対しても、事前に検査や被膜14の再形成等を行うことができる。また、この場合、次にメンテナンスを行うことになるタイミングを事前に予測することが容易になるため、例えば不良品が発生するタイミングで対症療法的にメンテナンスを行う場合等と異なり、メンテナンスを行うタイミングの調整等も容易になる。また、これにより、例えば、一つのメッキ用治具10毎に被膜14の再形成を行うのではなく、予め計画したタイミングで、複数のメッキ用治具10に対してまとめて被膜14の再形成を行うこと等も可能になる。また、この場合、定期的に被膜14の再形成を行うことで、例えば、メッキ用治具10の状態を常に良好に保つこと等も可能になる。そのため、本例によれば、電子タグ16を用いることで、例えば、従来のメッキ用治具とは異なる方法で、より適切にメッキ用治具10の管理及びメンテナンスを実行することができる。また、本例においては、使用履歴を考慮することで、例えば、倉庫に保管されたまま長時間が経過したメッキ用治具10に対して余計なメンテナンスを行うこと等も適切に防止できる。
【0063】
ここで、メッキ用治具10のメンテナンスを行うべきタイミングについては、例えば、メッキ用治具10における被膜14の厚さ、メッキ液の種類、メッキ工程での条件(例えば温度等)によって、異なることが考えられる。そのため、メッキ用治具10の使用回数と比較する設定回数については、メッキ用治具10の構成や用途に応じて決定することが好ましい。また、この場合、この設定回数についても、電子タグ16に格納しておくことが考えられる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10の構成や用途に応じて、メンテナンスを行うべきタイミングをより適切に設定することができる。また、本例において、使用回数に基づいてメンテナンスの対象となるメッキ用治具10を選択する動作については、例えば、メッキ用治具10の耐久時間を考慮してメンテナンスの対象を選択する動作等と考えることもできる。また、この場合、使用回数と設定回数とを比較する動作について、例えば、メッキ用治具10における耐久時間の残りを判定している等と考えることもできる。
【0064】
また、上記においても説明をしたように、被膜14の再形成を行う場合、電子タグ16に対し、再形成を行ったことを示す情報を書き込むことが考えられる。この場合、例えば、被膜14の再形成を行った記録に基づき、メッキ用治具10を更新するタイミングを決定すること等も考えられる。より具体的に、メッキ用治具10においては、被膜14以外の箇所においても、経年による劣化が生じる場合がある。そのため、被膜14の再形成を繰り返して行うと、被膜14以外の箇所で生じる劣化が問題になること等も考えられる。そして、この場合、例えば、被膜14の再形成を行う回数に制限を設けておき、制限に達したメッキ用治具10については、被膜14の再形成の対象ではなく、更新の対象とすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10について、過度に長期間使い続けることを適切に防止して、適切に更新を行うことができる。また、メッキ用治具10の管理の仕方の変形例においては、電子タグ16に格納されているメッキ用治具10の使用履歴に基づき、直接、メッキ用治具10の更新のタイミングを決定してもよい。このように構成した場合も、例えば、メッキ用治具10の更新を適切に行うことができる。また、この場合、例えば、被膜14の再形成を行うことなく、メッキ用治具10の更新を行うこと等も考えられる。
【0065】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明や、変形例の説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例において、メッキ用治具10に取り付ける電子タグ16は、非接触での読み取り及び書き込みが可能である。そのため、本例によれば、例えばメッキ用治具10の外部の装置等ではなく、メッキ用治具10自身の中に、様々な情報を格納することができる。また、これにより、例えば、システムの大型化や情報の矛盾等を防止しつつ、より適切にメッキ用治具10の管理を行うことができる。
【0066】
より具体的に、メッキ用治具10の管理のみを行うという点を考えた場合、メッキ用治具10における電子タグ16にはメッキ用治具10を識別する識別情報等のみを格納しておき、その他の情報について、メッキ用治具10の外部のサーバや端末等に格納してもよい。また、メッキ用治具10の管理の仕方によっては、このような方法でメッキ用治具10を管理する方が好ましい場合もある。しかし、様々な情報をサーバで管理する場合、システムの大型化等の問題が生じることが考えられる。更に、メッキ工程を実行する現場では、サーバへのアクセスが難しくなる場合もある。また、タブレット端末等の端末で情報の管理を行う場合、例えばメッキ工程を実行する現場で複数の端末が用いられていると、複数の端末の間で情報の矛盾が生じること等も考えられる。これに対し、本例においては、メッキ用治具10における電子タグ16に様々な情報を格納することで、このような問題が発生することを適切に防止することもできる。
【0067】
また、この場合、メッキ用治具10を管理する管理者やメッキ用治具10の所有者が変わった場合にも、情報の引き継ぎを確実に行うことができる。より具体的に、メッキ工程を行う事業者等は、メッキ用治具10を製造する製造者からメッキ用治具10を購入する場合がある。そして、この場合、メッキ用治具10の外部に様々な情報を格納していると、情報の引き継ぎに余計な手間が必要になる。これに対し、本例によれば、例えば、このような場合にも、情報の引き継ぎを適切かつ確実に行うことができる。また、この点に関し、メッキ用治具10の製造時には、例えば、製造時点でのメッキ用治具10に関する情報を電子タグ16に書き込むことが考えられる。より具体的に、メッキ用治具10の製造時には、例えば、メッキ用治具10の型番、製造番号、製造日時、メッキ用治具10の製造工程でのロット番号等を電子タグ16に書き込んでおくことが考えられる。そして、この場合、メッキ工程を実行する事業者等は、これらの情報を利用して、メッキ用治具10の管理を行うことができる。
【0068】
また、上記においても説明をしたように、本例のメッキ用治具10では、治具フレーム12と電子タグ16とを一体にコーティングする方法で被膜14を形成することで、例えば、メッキ液等の薬液が電子タグ16に付着すること等を適切に防止することもできる。また、これにより、例えば、次工程への薬液の持ち込みを低減することができる。この点に関し、上記のように、電子タグ16を被膜14で覆うことのみでも、電子タグ16の位置への薬液の付着を生じ難くすることができる。しかし、次工程への薬液の持ち込みをより確実に低減するためには、被膜14について、電子タグ16の位置での薬液の付着がより生じ難いように形成することが好ましい。そして、この場合、電子タグ16の位置において、できるだけ滑らかに被膜14で電子タグ16を覆うことが好ましい。より具体的に、この場合、例えば、例えば
図5に示すように、十分に厚い被膜14を形成することや、被膜14に大きな凹凸等が生じ難い方法で治具フレーム12に電子タグ16を取り付けること等が考えられる。
【0069】
図5は、被膜14の形成の仕方や電子タグ16の取り付け方の様々な例について説明をする図である。
図5(a)は、被膜14の形成の仕方の一例を示す。電子タグ16の取り付け位置への薬液の付着をより適切に防止をするためには、例えば、電子タグ16の部品実装高に対して十分に厚い被膜14を形成することが好ましい。この場合、部品実装高については、例えば、治具フレーム12の表面において電子タグ16が取り付けられている部分と隣接する位置に対して電子タグ16が突出する高さ等と考えることができる。また、
図5(a)に示す構成の場合、部品実装高は、図中に示す値aになっている。部品実装高については、例えば、電子タグ16を取り付ける面に対して電子タグ16が突出する高さ等と考えることもできる。
【0070】
また、例えばゾルコーティング法等のように、比較的厚い膜を形成することが容易な方法で被膜14を形成する場合、電子タグ16の部品実装高に対して十分に厚い被膜14を容易かつ適切に形成することができる。そのため、厚い被膜14を形成できる方法で被膜14を形成する場合等には、被膜14の形成時において、被膜14の厚さである被膜厚が部品実装高よりも大きくなるように、被膜14を形成することが考えられる。この場合、被膜厚については、例えば、治具フレーム12における平坦な箇所に形成される被膜14の厚さ等と考えることができる。治具フレーム12における平坦な箇所については、例えば、治具フレーム12における凹凸がない箇所等と考えることができる。治具フレーム12における凹凸がない箇所については、例えば、治具フレーム12の表面において段差や折り曲がり等がない箇所等と考えることができる。より具体的に、本例において、被膜厚については、例えば、電子タグ16が取り付けられる位置の周囲における被膜14の厚さ等と考えることができる。また、
図5(a)に示す構成の場合、被膜厚は、図中に示す値bになっている。また、電子タグ16が取り付けられている位置において、治具フレーム12の表面から被膜14の表面までの距離は、図中に示すように、被膜厚の値bよりも大きな値cになっている。
【0071】
このような十分に厚い被膜14で電子タグ16を覆うことで、例えば、表面が滑らかな被膜14によって電子タグ16を適切に被覆することができる。また、これにより、例えば、電子タグ16の取り付け位置への薬液の付着をより適切に防止することができる。また、この場合、電子タグ16の周囲における被膜14の厚さが部品実装高よりも大きくなることで、例えば、被膜14の形成時において、周囲の被膜14の中に電子タグ16を埋没させることができる。また、これにより、例えば、電子タグ16を覆う被膜14をより確実に形成することができる。また、この場合、十分に厚い被膜14を形成することで、例えばメッキ用治具10の使用開始後に被膜14に劣化が進んだ場合等にも、電子タグ16の周縁部等で被膜14に切れが生じて電子タグ16が露出すること等をより適切に防止することができる。
【0072】
尚、上記においても説明をしたように、被膜14の形成については、ゾルコーティング法等に限らず、様々な方法で行うことが考えられる。そして、この場合、上記のような厚い被膜14を形成することが難しくなる場合もある。より具体的に、例えば、上記においても説明をしたように、被膜14の形成については、例えばフッ素コーティング法で行うことも考えられる。そして、この場合、通常、被膜14の厚さについて、最大で0.5mm程度(例えば、0.3~0.5mm程度)にすることが考えられる。このような場合には、被膜厚について、部品実装高以下にしてもよい。この場合も、電子タグ16を被膜14で覆うことで、上記のように、薬液の付着を適切に低減することができる。また、フッ素コーティング法で被膜14を形成する場合には、被膜14の特性によって、被膜厚が小さい場合でも、適切に薬液の付着を防止することが可能である。
【0073】
また、部品実装高を小さくするためには、例えば、
図5(b)に示すように、治具フレーム12に電子タグ16を取り付けること等も考えられる。
図5(b)は、電子タグ16の取り付け方の変形例を示す図であり、穴部112を有する治具フレーム12に電子タグ16を取り付ける構成の例を示す。本変形例において、治具フレーム12は、電子タグ16を取り付ける位置に、穴部112を有する。穴部112は、治具フレーム12の表面から凹む穴であり、電子タグ16の少なくとも一部を収容することで、電子タグ16の高さよりも部品実装高が小さくなるように、電子タグ16を保持する。この場合、電子タグ16の高さについては、例えば、電子タグ16を取り付ける向きでの電子タグ16の最下部から最上部までの高さ等を考えることができる。また、
図5(b)に示す構成の場合、穴部112の深さは、図中に示す値dになっている。電子タグ16の高さは、図中に示す値eになっている。そして、部品実装高は、値eから値dを減じた値になることで、値eよりも小さな値aになっている。そのため、このように構成すれば、例えば電子タグ16の高さが大きい場合等にも、部品実装高を適切に低減することができる。また、これにより、例えば、被膜14を形成した状態において、電子タグ16の位置への薬液の付着等をより適切に防止することができる。また、この場合も、被膜14の被膜厚について、部品実装高よりも大きくすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10に対する薬液の付着等をより適切に防止することができる。
【0074】
尚、治具フレーム12における穴部112については、電子タグ16の形状に合わせて形成することが好ましい。また、穴部112は、電子タグ16の側面において電子タグ16との間に隙間が生じる穴であってもよい。この場合も、被膜14の材料がこの隙間を埋めるように被膜14を形成することで、治具フレーム12と共に電子タグ16を覆う被膜14を適切に形成できる。
【0075】
また、電子タグ16の取り付け方の更なる変形例においては、例えば
図5(c)に示すように、電子タグ16の周囲に他の部材を設置すること等も考えられる。
図5(c)は、電子タグ16の取り付け方の更なる変形例を示す図であり、電子タグ16の周囲に傾斜部材22を設置する構成の例を示す。傾斜部材22は、電子タグ16の上面と治具フレーム12の表面とを滑らかにつなぐ傾斜面を形成するための部材であり、電子タグ16の周囲において、電子タグ16に近い側で電子タグ16に高さを合わせ、電子タグ16から離れるに従って徐々に高さが低くなるように上面が傾斜することで、電子タグ16の上面と治具フレーム12の表面とを滑らかにつなぐ。また、この場合、電子タグ16の周囲の少なくとも一部に傾斜部材22を設置して、電子タグ16と共に傾斜部材22が治具フレーム12と被膜14との間に挟まれるように、被膜14を形成する。このように構成すれば、例えば、電子タグ16の位置での被膜14について、滑らかで薬液の付着等が生じ難い状態で適切に形成することができる。また、この場合、例えば被膜14の被膜厚が電子タグ16の部品実装高と比べて小さい場合等であっても、薬液の付着等をより適切に防止することができる。
【0076】
また、上記においては、電子タグ16に格納する情報の例として、メッキ用治具10の識別情報等を説明した。この点に関し、メッキ用治具10の用途や管理の仕方によっては、電子タグ16に対し、識別情報以外の情報のみを格納してもよい。また、電子タグ16に格納する情報としては、上記において説明をした情報以外にも、様々な情報を用いることが考えられる。例えば、電子タグ16に格納する情報として、どのような条件のメッキ工程で使用するメッキ用治具10であるかを示す情報や、メッキ用治具10について説明をする情報等を用いることが考えられる。また、メッキ用治具10について説明する情報としては、例えば、メッキ用治具10の型番や名称等を電子タグ16に格納することが考えられる。この場合、メッキ用治具10の型番や名称等を電子タグ16に格納しておくことで、例えば、倉庫等に保管されている多種類のメッキ用治具10の中から所望のメッキ用治具10を探す場合等に、より容易にメッキ用治具10を探すことが可能になる。また、この場合、電子タグ16の情報を読み取る端末において、電子タグ16から読み取った型番又は名称等をユーザに対して示すことが考えられる。このように構成すれば、例えば、メッキ用治具10を探し出す作業をより効率的かつ適切に行うことができる。
【0077】
また、上記においては、電子タグ16の情報を読み取る装置の例として、タブレット端末等を用いる場合について、説明をした。しかし、電子タグ16の情報を読み取る装置としては、タブレット端末等に限らず、様々な装置を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、小型の専用端末を用いて、電子タグ16からの情報を読み取ること等も考えられる。また。このような専用端末では、例えば、LEDの点灯状態等の簡易な表示によって、ユーザへ情報を伝えてもよい。より具体的に、例えば、電子タグ16に格納されている使用履歴に基づいてメッキ用治具10に対するメンテナンスの要否を判断する場合等において、メンテナンスを行うべきタイミングが到来していることについて、LEDの点灯等によってユーザに通知することが考えられる。また、例えば型番や名称等の指定によって所望のメッキ用治具10を探す場合等において、所望のメッキ用治具10であるか否かを示す情報をLEDの点灯等によってユーザに通知することも考えられる。
【0078】
また、上記においては、主に、一つのメッキ用治具10に対して一つの電子部品(電子タグ16等)を取り付ける場合の構成等について、説明をした。しかし、メッキ用治具10の変形例では、一つのメッキ用治具10に対し、複数の電子部品を取り付けてもよい。この場合、それぞれの電子部品について、例えば、互いに異なる用途で用いることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、互いに異なる用途の複数の電子部品を一つのメッキ用治具10に取り付けることが考えられる。また、例えば、一部の電子部品について、メッキ用治具10の製造者が情報を書き込むために使用し、他の電子部品について、メッキ工程を実行する事業者等が情報を書き込むために使用すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、電子部品毎に書き込みが可能なユーザを容易かつ適切に分けることができる。また、これにより、例えば、それぞれの電子部品に書き込まれるデータが他者によって不用意に上書きされること等を適切に防止することができる。
【0079】
また、メッキ用治具10に取り付ける電子部品としては、電子タグ16以外に、例えば各種のセンサ等を用いることも考えられる。この場合も、非接触で情報の読み取りが可能なセンサを用いて、治具フレーム12の表面と共にセンサを被膜14で覆うことで、例えば、センサを適切に保護しつつ、センサからの情報の取得を適切に行うことができる。また、例えば外部の環境や衝撃等に対して敏感なセンサを用いる場合等でも、センサの長寿命化を適切に実現することができる。このようなセンサとしては、例えば、温度センサ、電圧計、又は電流計等の様々なセンサを用いることが考えられる。この場合、電圧計や電流計では、例えば、メッキ工程の実行時に治具フレーム12にかかる電圧や治具フレーム12に流れる電流を検知する。このように構成すれば、例えば、ワークにかかる電圧や電流を適切に管理できる。また、このようなセンサを用いることで、例えばメッキ工程の実行時において、センサを適切に保護しつつ、多くの情報を取得して、広範囲なデータ管理をタイムリーに行うことができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具10を用いて行う工程の管理等を適切に行うことができる。このようなセンサとしては、例えば、電子タグ16と同様の形状のセンサ等を好適に用いることができる。
【0080】
また、メッキ用治具10に対する電子部品の取り付け位置についても、上記において説明をした位置に限らず、様々に変更が可能である。例えば、電子部品としてセンサを用いる場合、被膜14でセンサを固定することで、メッキ用治具10における多種多様な部位に対し、容易かつ適切にセンサを取り付けることができる。そのため、この場合、例えば、センサで測定する対象に合わせた位置に対し、適切かつ確実にセンサを取り付けることができる。
【0081】
また、上記においては、電子タグ16を覆う被膜の形成の仕方について、主に、コーティング工程で被膜を形成する場合の例について、説明をした。この場合、例えば、治具フレーム12において絶縁耐食膜として機能する被膜が電子タグ16を覆う被膜を兼ねると考えることができる。これに対し、メッキ用治具10の製造の仕方の変形例においては、例えば、治具フレーム12において絶縁耐食膜として機能する被膜とは別に、電子タグ16を覆う被膜を形成することも考えられる。この場合、治具フレーム12において絶縁耐食膜として機能する被膜については、例えば、公知のメッキ用治具の表面に形成される被膜と同一又は同様の被膜等と考えることができる。また、治具フレーム12において絶縁耐食膜として機能する被膜について、例えば、電子タグ16を覆わずに治具フレーム12の表面の少なくとも一部に形成される被膜等と考えることもできる。また、より具体的に、この場合、例えば
図6、7に示すように、電子タグ16を覆う被膜について、熱収縮チューブ32を用いて形成すること等が考えられる。
【0082】
図6、7は、電子タグ16を取り付けたメッキ用治具(電子タグ付きのメッキ用治具)の製造方法の変形例について説明をする図であり、熱収縮チューブ32を用いて治具フレーム12に対して電子タグ16を固定する方法の一例を示す。
図6(a)~(c)及び
図7(a)、(b)は、本変形例において治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける動作の途中又は取り付け後の状態を示す。
【0083】
尚、図示の便宜上、
図6、7においても、上記において説明をした
図2と同様に、治具フレーム12の一部を構成するフレーム部材を抜き出して示すことで、電子タグ16の取り付け方の一例を示している。また、以下に説明をする点を除き、本変形例でのメッキ用治具の製造方法は、
図1~5を用いて説明をした製造方法と同一又は同様である。例えば、熱収縮チューブ32を用いて治具フレーム12に対して電子タグ16を固定することに関連する事項以外に点において、本変形例でのメッキ用治具の製造方法は、
図1~5を用いて説明をした製造方法と同一又は同様である。例えば、以下に説明をする点を除き、本変形例で製造するメッキ用治具は、
図1~5を用いて説明をしたメッキ用治具10(
図1参照)と同一又は同様の特徴を有する。また、
図6、7において、
図1~5と同じ符号を付した構成は、
図1~5における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0084】
本変形例においては、
図3に示したフローチャートの動作を一部変更した動作により、メッキ用治具の製造を行う。また、この場合、
図3におけるステップS102に対応する工程では、例えば
図6(a)に示すように、熱収縮チューブ32を更に準備する。この場合、例えば図中に示すように、電子タグ16を覆えるサイズに適宜切断された熱収縮チューブ32を準備することが考えられる。熱収縮チューブ32としては、メッキ液に対して耐性(耐食性及び耐久性)のある公知の熱収縮チューブを好適に用いることができる。より具体的に、熱収縮チューブ32としては、例えばPVC、ポリオレフィン系の材質、又はフッ素系の材質等で形成された公知の熱収縮チューブを好適に用いることができる。また、本変形例においては、この工程で、以下において説明をする充填剤34を更に準備する。
【0085】
また、ステップS102に対応する工程に続いて行うステップS104に対応する工程では、例えば
図6(b)に示すように、治具フレーム12に対して電子タグ16を取り付ける。この場合も、例えば、使用する電子タグ16の性能等に応じて、導電性の両面テープ又は接着剤等を用いて治具フレーム12に対して電子タグ16を固定することが考えられる。また、本変形例においては、熱収縮チューブ32を用いることに関連して、例えば図中に示すように、電子タグ16の周囲等に対し、充填剤34の塗布を更に行う。より具体的に、熱収縮チューブ32を用いて電子タグ16を取り付ける場合において、単に熱収縮チューブ32を用いるのみであると、例えば電子タグ16の周囲等において、熱収縮チューブ32と治具フレーム12との間に余計な隙間が生じやすくなる場合がある。また、このような隙間が生じると、例えば、メッキ液等が熱収縮チューブ32と治具フレーム12との間に侵入しやすくなり、電子タグ16の損傷や次の工程への薬液の持ち込みの原因になること等も考えられる。そのため、熱収縮チューブ32を用いて電子タグ16の被覆を行う場合、被覆時に治具フレーム12と熱収縮チューブ32との間の隙間に充填されるように、充填剤34を更に用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、熱収縮チューブ32による電子タグ16の被覆時において、熱収縮チューブ32と治具フレーム12との間に余計な隙間が生じることを適切に防止しつつ、熱収縮チューブ32を用いて治具フレーム12に対して電子タグ16をより適切に固定することができる。また、これにより、例えば、メッキ用治具の使用時等に意図しない薬液侵入等が生じることを適切に防止することができる。
【0086】
尚、本変形例において、充填剤34については、例えば、熱収縮チューブ32と共に用いる補助材料等と考えることができる。このような充填剤34としては、例えば、メッキ液に対して耐性があるペースト状の物質等を好適に用いることができる。また、充填剤34としては、例えば、塗布後にも柔軟性を保ち、熱収縮チューブ32の収縮時に熱収縮チューブ32の収縮に応じて形状が変化するような物質を用いることが好ましい。この場合、塗布後にも柔軟性を保つことについては、例えば、少なくとも熱収縮チューブ32の収縮時まで柔軟性を保つこと等と考えることができる。また、このような充填剤34としては、例えば、ガスケット用の公知のペースト剤(ガスケットペースト)等を好適に用いることができる。また、より具体的に、このような充填剤34としては、例えばニチアスナフロンペースト(登録商標)のような、フッ素樹脂系のペースト剤を好適に用いることができる。
【0087】
また、充填剤34については、治具フレーム12における電子タグ16の周辺において、電子タグ16が取り付けられる面に限らず、その裏面や側面に対しても塗布することが好ましい。この場合、側面については、例えば、電子タグ16が取り付けられる面とその裏面とをつなぐ面等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、熱収縮チューブ32と治具フレーム12との間に余計な隙間が生じることをより適切に防止することができる。また、例えば金属対応の電子タグ16等を用いる場合、電子タグ16と治具フレーム12との間には、充填剤34を塗布しないことが考えられる。このように構成すれば、例えば、電子タグ16と治具フレーム12との間の電気的な接続を充填剤34が弱めることを適切に防止することができる。また、金属対応の電子タグ16等を用いる場合でも、例えば導電性の充填剤34を用いることで、電子タグ16と治具フレーム12との間にもあえて充填剤34を塗布すること等も考えられる。また、この場合、充填剤34について、例えば、治具フレーム12に対して電子タグ16を仮止めするための接着剤として機能させること等も考えられる。また、例えば金属対応ではない電子タグ16を用いる場合には、充填剤34の導電性にかかわらず、電子タグ16と治具フレーム12との間に充填剤34を塗布してもよい。また、治具フレーム12に対する電子タグ16の固定の仕方等に応じて、電子タグ16と治具フレーム12との間に充填剤34を塗布しないことも考えられる。また、図中に示すように、電子タグ16の上面に対しては、充填剤34を塗布しないことが考えられる。また、必要に応じて、電子タグ16の上面に充填剤34を塗布してもよい。
【0088】
また、上記においても説明をしたように、
図3において、ステップS104は、電子部品取付工程の一例である。そのため、本変形例において行う充填剤34の塗布については、例えば、電子部品取付工程に対応する工程で行うと考えることができる。この場合、電子部品取付工程に対応する工程で充填剤34を塗布する動作について、例えば、熱収縮チューブ32によって覆われる部分の少なくとも一部に対して充填剤34を塗布する動作等と考えることができる。また、この場合、その後に行う被覆工程に対応する工程については、例えば、電子部品取付工程で塗布された充填剤を用いて被覆の動作を行うと考えることができる。また、工程の区別の仕方によっては、充填剤34を塗布する動作について、例えば、被覆工程に対応する工程で行うと考えることもできる。
【0089】
また、治具フレーム12に対する電子タグ16の取り付け等を行った後には、
図3におけるステップS106に対応する工程で、電子タグ16を覆う被覆を形成する。また、本変形例において、この工程では、コーティングではなく、熱収縮チューブ32を用いて、電子タグ16を覆う被覆を形成する。この場合も、この工程について、被覆工程の一例と考えることができる。また、この場合、本変形例で行う被覆工程について、例えば、熱収縮チューブ32を用いて治具フレーム12に対して電子タグ16を固定する工程等と考えることができる。また、より具体的に、本変形例において、この工程では、例えば
図6(c)に示すように、治具フレーム12に対して熱収縮チューブ32を通し、更に、電子タグ16を覆う位置まで熱収縮チューブ32を移動させる。また、これにより、例えば、電子タグ16と共に治具フレーム12の一部を覆うように、治具フレーム12及び電子タグ16に対して熱収縮チューブ32を被せる。そして、例えばヒートエアーを用いる方法等の公知の方法で熱収縮チューブ32を加熱することで、熱収縮チューブ32を収縮させる。また、これにより、治具フレーム12との間に電子タグ16を挟んだ状態で、治具フレーム12に対して熱収縮チューブ32を収縮密着させる。このように構成すれば、例えば、熱収縮チューブ32によって適切に電子タグ16を被覆することができる。また、この場合、熱収縮チューブ32を加熱することで、例えば、収縮した熱収縮チューブ32の少なくとも一部が電子タグ16を覆う被膜になると考えることができる。また、上記のように、本変形例においては、治具フレーム12に対して充填剤34を塗布した後に、熱収縮チューブ32によって電子タグ16を覆っている。そのため、本変形例で行う被覆工程の動作については、例えば、充填剤34が塗布されている治具フレーム12及び電子タグ16に対して熱収縮チューブ32を被せて、熱収縮チューブ32を加熱する動作等と考えることができる。
【0090】
また、本変形例においては、例えば
図7(a)、(b)に示すように、収縮後の熱収縮チューブ32の端から充填剤34がはみ出すように、充填剤34の塗布を行うことが考えられる。より具体的に、
図7(a)は、
図6(a)~(c)に示した治具フレーム12に関し、熱収縮チューブ32を収縮させた後の状態を示す。
図7(b)は、
図6(a)~(c)に示した治具フレーム12とは別の治具フレーム12を用いて作成した試作品について、収縮後の熱収縮チューブ32の付近を拡大して示す。図中に示すように、本変形例では、収縮後の熱収縮チューブ32の端から少し充填剤34がはみ出す量の充填剤34を塗布する。このように構成すれば、例えば、熱収縮チューブ32と治具フレーム12との間に余計な隙間が生じることを適切に防止することができる。また、この場合、治具フレーム12の表面において充填剤34によって覆われる沿面距離が長くなることで、例えば熱収縮チューブ32の中にメッキ液等が侵入した場合にも、より確実に電子タグ16を保護することができる。そのため、本変形例によれば、例えば、電子タグ16を保護するための被覆をより適切に形成することができる。また、この場合、例えば、熱収縮チューブ32の端から1~5mm程度の範囲に充填剤34のはみ出しが生じるように、充填剤34を塗布することが考えられる。
【0091】
以上のようにして、本変形例では、メッキ液に対して耐性のある熱収縮チューブ32により、電子タグ16を覆う被覆を形成する。本変形例においても、例えば、電子タグ16を取り付けたメッキ用治具を適切に製造することができる。また、この場合において、例えば、メッキ液によって電子タグ16が故障することを適切に防止することができる。また、例えば、電子タグ16に格納されている情報等を利用して、メッキ用治具の管理等を適切に行うことができる。
【0092】
ここで、上記のように、本変形例では、電子タグ16を覆う被膜について、コーティング以外の方法で形成する。これに対し、メッキ用治具の製造時には、通常、メッキ液等から治具フレーム12を保護するために、熱収縮チューブ32によって形成される被膜とは別に、治具フレーム12の少なくとも一部に対し、治具フレーム12を保護する被膜である絶縁耐食膜を形成することになる。そして、この場合、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32によって形成する工程とは別に、治具フレーム12の少なくとも一部に絶縁耐食膜を形成する工程を行うことが考えられる。また、この絶縁耐食膜として、例えば、コーティングで形成する被膜を形成することが考えられる。また、より具体的に、この場合、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32によって形成する工程とは別に、治具フレーム12の少なくとも一部に対してコーティングを行う工程を行うことが考えられる。また、このコーティングの工程については、例えば、コーティングで形成される絶縁耐食膜で電子タグ16を覆わないこと以外は
図1~5を用いて説明をしたコーティング工程と同一又は同様にして行うことが考えられる。この場合、コーティングで形成される絶縁耐食膜について、例えば、
図1~5を用いて説明をしたメッキ用治具の製造時にコーティングで形成する被膜14(
図1参照)と同一又は同様の被膜等と考えることができる。また、この絶縁耐食膜について、例えば、電子タグ16が取り付けられる範囲とは別の位置で治具フレーム12の表面の少なくとも一部を覆う被膜等と考えることもできる。
【0093】
また、本変形例において、熱収縮チューブ32により形成される被膜について、例えば、このような絶縁耐食膜とは別の被膜等と考えることができる。また、この場合、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32によって形成する工程については、例えば、コーティング等で絶縁耐食膜を形成する工程よりも後で行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、コーティング工程での加熱の影響を熱収縮チューブ32や充填剤34等が受けることを適切に防止することができる。また、絶縁耐食膜を形成する工程の条件や、熱収縮チューブ32及び充填剤34の特性等によっては、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32によって形成した後に、絶縁耐食膜を形成してもよい。また、本変形例のように、熱収縮チューブ32を用いて電子タグ16を治具フレーム12に取り付ける場合、例えば、このような絶縁耐食膜が既に形成されているメッキ用治具(既存のメッキ用治具)に対して電子タグ16を後付けすることで、電子タグ付きのメッキ用治具を製造すること等も考えられる。また、この場合、例えば、必要に応じて絶縁耐食膜の一部を剥離して、その位置に電子タグ16を取り付けること等も考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、
図8に示す動作により、電子タグ付きのメッキ用治具を製造することが考えられる。
【0094】
図8は、電子タグ付きのメッキ用治具を製造する製造方法の変形例を示すフローチャートであり、電子タグが取り付けられていない既存のメッキ用治具を用いて電子部品付きのメッキ用治具を製造する動作の一例を示す。
【0095】
本変形例で電子部品付きのメッキ用治具を製造する動作では、先ず、必要な部品を準備する工程において、絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているメッキ用治具を準備する(S112)。この場合、この絶縁耐食膜については、例えば、そのメッキ用治具の製造時にコーティング等で形成された被膜等と考えることができる。また、このメッキ用治具については、例えば、フレーム部材の一例と考えることができる。絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているメッキ用治具については、例えば、絶縁耐食膜が既に形成されているフレーム部材の一例等と考えることができる。ステップS112については、例えば、準備工程に対応する工程等と考えることができる。また、本変形例において、ステップS112では、メッキ用治具の他に、電子タグ16、熱収縮チューブ32、充填剤34等を更に準備する。
【0096】
また、ステップS112の動作に続いて、本変形例では、メッキ用治具の表面の一部における絶縁耐食膜を剥離して(S114)、絶縁耐食膜を剥離した位置に、電子タグ16を取り付ける(S116)。本変形例において、ステップS114及びステップS116については、例えば、電子部品取付工程に対応する工程等と考えることができる。また、ステップS114では、例えば硝酸等を用いて、電子タグ16を取り付ける位置における絶縁耐食膜を剥離する。また、ステップS116では、例えば
図6(b)、(c)を用いて上記において説明をした動作と同一又は同様にして、メッキ用治具に対して電子タグ16を取り付け、電子タグ16の周囲に充填剤34を塗布する。また、ステップS116の動作に続いて、本変形例では、ステップS114で絶縁耐食膜を剥離した範囲の少なくとも一部が熱収縮チューブ32に覆われるように、メッキ用治具及び電子タグ16に対して熱収縮チューブ32を被せる。そして、加熱によって熱収縮チューブ32を収縮させて、熱収縮チューブ32により、電子タグ16を覆う被膜を形成する(S118)。
【0097】
本変形例によれば、例えば、絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているメッキ用治具に対して、電子タグ16を適切に取り付けることができる。また、この場合、上記のように、絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているメッキ用治具としては、既存のメッキ用治具を用いることができる。また、既存のメッキ用治具として、例えば、既にメッキ工程での使用がされているメッキ用治具を用いること等も可能である。
【0098】
尚、電子タグ16を取り付ける位置によっては、メッキ用治具において既に形成されている絶縁耐食膜を剥離することなく、電子タグ16を取り付けること等も考えられる。この場合、例えば、ステップS114の動作を省略して、ステップS116の動作を行うことになる。また、この場合、ステップS116では、例えばメッキ用治具における上端部等における絶縁耐食膜が形成されていない箇所に対し、電子タグ16を取り付ける。このように構成した場合も、例えば、絶縁耐食膜で表面の少なくとも一部が覆われているメッキ用治具に対して、電子タグ16を適切に取り付けることができる。また、使用する電子タグ16の性能等によっては、メッキ用治具における絶縁耐食膜の上に電子タグ16を取り付けること等も考えられる。この場合も、例えば、ステップS114の動作を省略して、ステップS116の動作を行うことになる。また、この場合、ステップS116では、例えばメッキ用治具における絶縁耐食膜の上に、電子タグ16を取り付ける。
【0099】
続いて、上記において説明をした事項に関連する更なる補足説明等を行う。上記において説明をした事項や、各種の被膜に関する一般的な特性等から理解できるように、電子タグ16をより確実に覆うという観点等で考えた場合、熱収縮チューブ32を用いる方法等と比べて、例えば
図1~5を用いて説明をした方法のように、コーティングによって電子タグ16を覆うことがより好ましいと考えることもできる。この場合、電子タグ16を覆う被膜について、コーティングで形成することで、例えば、被膜の厚さを様々に調整することができる。また、例えば、メッキ用治具の表面に不要な段差等が生じること等をより適切に防止することもできる。また、これにより、例えば、電子タグ16を取り付けた位置等が次の工程への薬液の持ち込みの原因になること等をより確実に防止することができる。これに対し、熱収縮チューブ32を用いてメッキ用治具に対して電子タグ16を取り付ける場合、例えば、簡単で短時間な施工によって電子タグ16の取り付けを行うことができる。また、特に、既存のメッキ用治具に対して後付けで電子タグ16を取り付ける場合、このような効果が顕著になると考えることができる。そのため、このような場合には、電子タグ16を覆う被膜について、コーティングではなく、熱収縮チューブ32を用いて形成することが特に好ましいと考えることができる。
【0100】
より具体的に、電子タグ16を覆う被膜をコーティング工程で形成する場合、被膜を形成するための工程において、例えば、60分程度以上の時間がかかることが考えられる。これに対し、熱収縮チューブ32を用いる方法の場合、電子タグ16を覆う被膜について、例えば、10分程度の作業で容易かつ適切に被膜を形成することができる。そのため、熱収縮チューブ32を用いることで、例えば、既存のメッキ用治具に対し、低コストで適切に電子タグ16を取り付けることができる。また、この場合、例えば、メッキ用治具における任意の位置に対し、電子タグ16を容易かつ適切に取り付けることもできる。また、例えば、電子タグ16を設置する位置を変更する場合等にも、電子タグ16の付け直しを容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、上記においても説明をしたように、既存のメッキ用治具に対し、コーティング等で形成されている絶縁耐食膜を剥離しないで電子タグ16を後付けすること等も可能である。そのため、絶縁耐食膜を部分的に剥離することが難しい場合等にも、所望の位置に適切に電子タグ16を取り付けることができる。また、熱収縮チューブ32を用いる方法の場合、例えば、他社によって製造されたメッキ用治具等に対しても、容易かつ適切に電子タグ16を取り付けることができる。更に、熱収縮チューブ32を用いて電子タグ16を覆う工程等については、大規模な設備等を必要としない工程等と考えることができる。そのため、この工程については、例えば、施工場所を選ばず、自社工場等以外の様々な場所(例えば、顧客の拠点等)でも施工が可能な工程等と考えることもできる。
【0101】
また、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32で形成した場合にも、例えばコーティングで電子タグ16を覆う場合と同様に、電子タグ16を利用して、メッキ用治具の管理等を適切に行うことができる。より具体的に、例えば、
図4を用いて説明をしたメッキ用治具の管理等について、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32で形成した場合にも、同一又は同様に行うことができる。また、この場合、メッキ用治具に対するメンテナンスで剥離及び再形成を行う被膜(被膜14)については、例えば、上記において説明をした絶縁耐食膜に対応する被膜等と考えることができる。また、メンテナンスの対象のメッキ用治具について、例えば、治具フレームの表面の少なくとも一部に絶縁耐食膜が形成されていると考えることができる。
【0102】
また、メッキ用治具に取り付ける電子タグ16を覆う被膜を形成する方法については、上記において説明をした方法以外の方法を用いること等も考えられる。この場合も、電子タグ16を利用して、例えば、メッキ用治具の管理等を行うことができる。また、この場合、例えば、メッキ用治具の使用環境等で求められる様々な条件に応じて、被膜の形成の仕方を決定することが考えられる。また、この点に関し、電子タグ16を覆う被膜を熱収縮チューブ32で形成する方法については、例えば、電子タグ16を覆う前から膜状になっている膜状体によって電子タグ16を覆う被膜を形成する方法の一例等と考えることができる。そして、被膜の形成の仕方の変形例においては、例えば、熱収縮チューブ32以外の膜状体を用いて、電子タグ16を覆う被膜を形成すること等も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、例えばメッキ用治具の製造方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
10・・・メッキ用治具、102・・・ワーク保持部、104・・・上端部、112・・・穴部、12・・・治具フレーム、14・・・被膜、16・・・電子タグ、22・・・傾斜部材、32・・・熱収縮チューブ、34・・・充填剤