IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荏原環境プラント株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図1
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図2
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図3
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図4
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図5
  • 特開-ストーカ式燃焼装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159917
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ストーカ式燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23H 3/02 20060101AFI20231026BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F23H3/02 B ZAB
F23G5/00 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069843
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】岡 武裕
(72)【発明者】
【氏名】香島 正実
(72)【発明者】
【氏名】仁田 祐輝
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261BA05
3K261BA11
(57)【要約】
【課題】極めて高温での運転にも対応できるサイド火格子の冷却構造を有するストーカ式燃焼装置を提供する。
【解決手段】ストーカ式燃焼装置は、炉側壁10の内面にそれぞれ配置された少なくとも一対のサイド火格子ユニット100を備える。サイド火格子ユニット100は、火格子12,14,16の端面に対向するサイド火格子30と、サイド火格子30の裏面側にこの長さ方向に沿って配置され、該サイド火格子30に連結された可動梁40と、炉側壁10の外部からの操作で装着位置の調整が可能な弾性部材60と、を備える。サイド火格子30は、可動梁40と弾性部材60とを介して内方に付勢されて、火格子12,14,16に向かって進退自在に構成されており、可動梁40は、冷却水供給配管75と連結される冷却水入口室76と、冷却水戻り配管77と連結される冷却水出口室78と、を備えている。冷却水出口室78は、冷却水入口室76に連通している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉側壁の内面にそれぞれ配置された少なくとも一対のサイド火格子ユニットと、該一対のサイド火格子ユニット間に跨って配列された複数の火格子と、を備えたストーカ式燃焼装置であって、
前記サイド火格子ユニットは、
前記火格子の端面に対向するサイド火格子と、
前記サイド火格子の裏面側にこの長さ方向に沿って配置され、該サイド火格子に連結された可動梁と、
炉側壁の外部からの操作で装着位置の調整が可能な弾性部材と、を備え、
前記サイド火格子は、前記可動梁と前記弾性部材とを介して内方に付勢されて、前記火格子に向かって進退自在に構成されており、
前記可動梁は、
冷却水供給配管と連結される冷却水入口室と、
冷却水戻り配管と連結される冷却水出口室と、を備えており、
前記冷却水出口室は、前記冷却水入口室に連通している、ストーカ式燃焼装置。
【請求項2】
前記サイド火格子ユニットは、前記可動梁と前記サイド火格子との間に配置された少なくとも1つの冷却水ブロックをさらに備え、
前記冷却水ブロックは、前記冷却水入口室に連通する入口と、前記冷却水出口室に連通する出口と、を備えた少なくとも1つの冷却水流路を有する、請求項1に記載のストーカ式燃焼装置。
【請求項3】
前記冷却水ブロックは、前記サイド火格子の裏面に、充填剤を用いて固定されており、
前記充填剤には、該充填剤の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する物質が混ぜられている、請求項2に記載のストーカ式燃焼装置。
【請求項4】
前記冷却水入口室および前記冷却水出口室は、前記可動梁の長手方向に沿って、前記可動梁の全長にわたって延びている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のストーカ式燃焼装置。
【請求項5】
前記冷却水入口室は、前記冷却水出口室の下方に配置されている、請求項1に記載のストーカ式燃焼装置。
【請求項6】
前記火格子ユニットを前記炉側壁のフレーム構造体に固定するフランジをさらに備える、請求項1に記載のストーカ式燃焼装置。
【請求項7】
前記冷却水入口配管および前記冷却水戻り配管は、前記フランジを貫通して延びており、
前記フランジと前記冷却水入口配管との間の隙間、および前記フランジと前記冷却水戻り配管との間の隙間は、それぞれ、シール部材によってシールされる、請求項6に記載のストーカ式燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の焼却などに使用されるストーカ式燃焼装置に係り、特に、ストーカの熱膨張を吸収して安定した燃焼が行えるようにした横列往復動ストーカ式燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の焼却などに使用されるストーカ式燃焼装置として、横列往復動ストーカ式燃焼装置が知られている。この横列往復動ストーカ式燃焼装置は、炉側壁間に跨って延びる可動火格子と固定火格子と、を有していて、これら可動火格子と固定火格子とは、交互かつ廃棄物の流れ方向に沿って階段状に配列される。そして、可動火格子が固定火格子に対して往復動することで、廃棄物を攪拌しつつ順次下方に送りながら燃焼させる。このようなストーカ式燃焼装置では、火格子の熱膨張を吸収して、火格子と炉側壁との間に隙間が生じないようにする必要がある。
【0003】
そこで、従来のストーカ式燃焼装置では、火格子端面に対向する炉側壁内面に、燃焼空気の吹き抜けと耐火物壁の摩耗防止を目的としたサイド火格子を配置し、このサイド火格子の内面に、弾性部材により付勢された可動梁を当接させている(例えば、特許文献1参照)。このような構成によれば、火格子の熱膨張に応じて、サイド火格子を火格子に対して進退させることができるので、火格子の熱膨張が吸収され、結果として、火格子と炉側壁との間に隙間が生じないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3871484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ダイオキシン低減と高効率熱回収を目的として、ストーカ式燃焼装置の運転では、1000℃以上の非常に高い温度が要求され、さらに、一次燃焼空気量を低減し、空気比を下げた運転が要求されている。そのため、燃焼炉内の温度が極めて高くなり、火格子温度およびサイド火格子などの鋳物製品に焼損(高温腐食と摩耗)が生ずるおそれがある。特に、火格子およびサイド火格子では、約500℃以上の温度で先端部分の急速な焼損が進行することがわかっている。
【0006】
しかしながら、火格子の冷却構造についての提案は従来からなされているが、サイド火格子の冷却構造については、効果的な提案が未だになされていない。
【0007】
そこで、本発明は、極めて高温での運転にも対応できるサイド火格子の冷却構造を有するストーカ式燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、炉側壁の内面にそれぞれ配置された少なくとも一対のサイド火格子ユニットと、該一対のサイド火格子ユニット間に跨って配列された複数の火格子と、を備えたストーカ式燃焼装置であって、前記サイド火格子ユニットは、前記火格子の端面に対向するサイド火格子と、前記サイド火格子の裏面側にこの長さ方向に沿って配置され、該サイド火格子に連結された可動梁と、炉側壁の外部からの操作で装着位置の調整が可能な弾性部材と、を備え、前記サイド火格子は、前記可動梁と前記弾性部材とを介して内方に付勢されて、前記火格子に向かって進退自在に構成されており、前記可動梁は、冷却水供給配管と連結される冷却水入口室と、冷却水戻り配管と連結される冷却水出口室と、を備えており、前記冷却水出口室は、前記冷却水入口室に連通している、ストーカ式燃焼装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記サイド火格子ユニットは、前記可動梁と前記サイド火格子との間に配置された少なくとも1つの冷却水ブロックをさらに備え、前記冷却水ブロックは、前記冷却水入口室に連通する入口と、前記冷却水出口室に連通する出口と、を備えた少なくとも1つの冷却水流路を有する。
一態様では、前記冷却水ブロックは、前記サイド火格子の裏面に、充填剤を用いて固定されており、前記充填剤には、該充填剤の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する物質が混ぜられている。
一態様では、前記冷却水入口室および前記冷却水出口室は、前記可動梁の長手方向に沿って、前記可動梁の全長にわたって延びている。
【0010】
一態様では、前記冷却水入口室は、前記冷却水出口室の下方に配置されている。
一態様では、前記ストーカ式燃焼装置は、前記火格子ユニットを前記炉側壁のフレーム構造体に固定するフランジをさらに備える。
一態様では、前記冷却水入口配管および前記冷却水戻り配管は、前記フランジを貫通して延びており、前記フランジと前記冷却水入口配管との間の隙間、および前記フランジと前記冷却水戻り配管との間の隙間は、それぞれ、シール部材によってシールされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炉幅方向における火格子の熱膨張は、サイド火格子を付勢する弾性部材の弾性力によって吸収され、さらに、火格子とサイド火格子との間のシールは、弾性部材の弾性力によって火格子の端面に圧接されるサイド火格子によって達成される。さらに、運転中のサイド火格子は、冷却水によって冷却される。その結果、サイド火格子は、極めて高温での運転にも対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るストーカ式燃焼装置の全体構成を概略で示す図である。
図2図2は、一実施形態に係るサイド火格子ユニットを模式的に示す透過上面図である。
図3図3は、図2に示すサイド火格子ユニットのA-A線断面図である。
図4図4は、図2に示すサイド火格子ユニットのB-B線断面図である。
図5図5は、図2に示すサイド火格子ユニットのC-C線断面図である。
図6図6は、他の実施形態に係るサイド火格子ユニットを模式的に示す透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係るストーカ式燃焼装置の全体構成を概略で示す図である。図1に示すように、焼却炉の内部には、炉側壁10の間に跨って、固定火格子12と可動火格子14とが、交互かつごみの流れ方向に沿って階段状に配列されている。なお、図1では、一方の炉側壁10のみが描かれている。これら火格子12,14の上流端には、エンド火格子16が配置されている。この固定火格子12は固定フレーム18に固着され、可動火格子14は油圧シリンダ20の作動に伴って車輪22とレール24を介して往復動する可動フレーム26に固着されている。更に、固定火格子12と可動火格子14には、下方に位置する固定火格子12または可動火格子14の上面を摺動するスクレーパ28が取付けられている。
【0014】
また、炉側壁10の固定火格子12、可動火格子14、およびエンド火格子16の端面のそれぞれに対向する位置には一対のサイド火格子30が配置され、各サイド火格子30の上方にシールブロック32が配置されている。図1では、一方のサイド火格子30と、この火格子の上方に配置された一方のシールブロック32のみが描かれている。
【0015】
これにより、可動火格子14の往復動に伴って、ごみホッパ(図示せず)から投入されたごみを攪拌しつつ順次下方に送りながら燃焼させる。この時、固定火格子12、可動火格子14、およびエンド火格子16の端面がサイド火格子30の表面に圧接してここをシールし、またサイド火格子30と炉側壁10との間の隙間をシールブロック32がシールするようになっている。サイド火格子30は、後述するサイド火格子ユニットに含まれる構成要素であり、火格子12,14の端面と対向している。
【0016】
図2は、一実施形態に係るサイド火格子ユニットを模式的に示す透過上面図であり、図3は、図2に示すサイド火格子ユニットのA-A線断面図である。さらに、図4は、図2に示すサイド火格子ユニットのB-B線断面図であり、図5は、図2に示すサイド火格子ユニットのC-C線断面図である。
【0017】
図2に示すサイド火格子ユニット100は、上記したサイド火格子30を有しており、炉側壁10(図1参照)の内面に配置されている。サイド火格子ユニット100は、火格子12,14に対するサイド火格子30の進退動作を可能としつつ、サイド火格子30を冷却するためのユニットである。
【0018】
図2及び図3に示すように、炉側壁10を支持する支持フレーム34の内面には、横断面L状のブラケット36が取付けられ、このブラケット36の上面に、サイド火格子30が摺動自在に支持されている。この構成によって、火格子12(14,16)は、その熱膨張に伴う移動が妨げられることなく、ブラケット36に支持される。
【0019】
サイド火格子30の裏面側には、該サイド火格子30の長手方向のほぼ全長に亘って延びる可動梁40が配置されており、可動梁40とサイド火格子30の間には、少なくとも1つの冷却ブロック70が配置されている。図示した例では、サイド火格子ユニット100は、4つの冷却ブロック70を有しており、可動梁40は、冷却ブロック70を介してサイド火格子30に連結されている。
【0020】
冷却ブロック70は、例えば、可動梁40とは溶接により固定され、サイド火格子30の裏面とは充填剤(例えば、耐熱性接着剤)により固定される。耐熱性接着剤などの充填剤は、鋳物製品であるサイド火格子30の裏面と冷却ブロック70の接着面との間の隙間を完全に塞ぎ、冷却ブロック70とサイド火格子30との間の効果的な熱交換を実現する。充填剤には、該充填剤の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する物質(例えば、銅粉)が均一に混ぜられているのが好ましい。このような物質を所定の割合で耐熱性接着剤に混入させることで、冷却ブロック70とサイド火格子30との間のより効果的な熱交換が達成される。
【0021】
冷却ブロック70をサイド火格子30に固定できる限り、充填剤の種類は任意である。例えば、充填剤は、耐熱性接着剤であってもよいし、耐熱モルタルであってもよい。
【0022】
可動梁40は、例えば横断面H状の本体42と、本体42の上下の開口をそれぞれ塞ぐ上下蓋部材43,44と、本体42の両端面を塞ぐ側蓋部材45,46とから構成される。本実施形態では、本体42は、所謂H鋼材である。上下蓋部材43,44は、本体42の長手方向に沿って、該本体42の全長にわたって延びており、本体42に溶接により固定される。側蓋部材45,46は、上下蓋部材43,44によって上下の開口が塞がれた本体42の両端面に溶接により固定される。蓋部材43,44,45,46で本体42の上下左右の開口を塞ぐことにより、可動梁40の内部に密閉された上空間と下空間とが形成される。可動梁40に形成された上下空間は、後述する冷却水入口室、冷却水出口室として機能する。
【0023】
可動梁40の下蓋部材44は、炉側壁10に脚部72を介して連結された支持プレート52に摺動自在に支持されている。一実施形態では、支持プレート52として、炉側壁10の支持とシールを兼ねた支持ボックス50の底板を利用してもよい。可動梁40は、支持プレート52上を炉幅方向に沿って容易に滑るように配置されている。
【0024】
さらに、サイド火格子ユニット100は、炉側壁10の内部を延びる少なくとも1つのガイド管54と、ガイド管54を炉側壁のフレーム構造体81,82に連結するためのフランジ74と、を有している。本実施形態では、サイド火格子ユニット100は、2つのガイド管54を有している。各ガイド管54は、フランジ74の貫通孔に固定されており、フランジ74は、炉側壁10のフレーム構造体81,82にボルトなどの締結具を介して固定されている。フランジ74がフレーム構造体81,82に固定されることにより、サイド火格子ユニット100が炉側壁10のフレーム構造体81,82に固定される。締結具を緩めると、サイド火格子ユニット100を炉外に引き抜くことができる。
【0025】
各ガイド管54の焼却炉側端部には、可動梁40の側面に固定された円柱状のピース部材56が遊嵌されている。また、各ガイド管54の内部には、四角柱状の頭部58aを外部に露出させた状態で、調整ボルト58が収容されている。調整ボルト58の先端には、ガイド管54に遊嵌された大径ガイド部58bが形成されている。さらに、この大径ガイド部58bとピース部材56との間に、弾性部材としてのコイルスプリング60が嵌め込まれている。
【0026】
炉側壁10の外面のケーシング62には、調整ボルト58と螺合するナット64がフランジ66を介して固定されている。これにより、例えばスパナ等を用いて調整ボルト58を炉側壁の外部から回転させることで、コイルスプリング60の取付位置を調整できるようになっている。
【0027】
ここで、可動梁40は、サイド火格子30の長手方向に沿って、該サイド火格子30のほぼ全長に設けられている。そのため、少なくとも1つのコイルスプリング60が可動梁40の長さ方向の任意の位置をサイド火格子30に向けて押圧することで、サイド火格子30を炉内の火格子12,14,16に向けて付勢する(押圧する)ことができる。したがって、ガイド管54および調整ボルト58などの押圧手段をサイド火格子30に対して任意の位置に配置することができ、これによって、炉側壁10の外部からのコイルスプリング60の取付位置の調整が可能となる。
【0028】
サイド火格子30の端面と炉側壁10の内面との間には、隙間Sが設けられている。この隙間Sは、火格子12(14,16)の熱膨張に伴うサイド火格子30の移動を吸収する膨張吸収代として機能する。さらに、この隙間Sの上部には、この隙間Sをシールするためのシールブロック32が設けられている。シールブロック32は、例えば、耐熱鋳物から形成される。
【0029】
シールブロック32によって、サイド火格子30と炉側壁10との間の隙間Sがシールされるので、この隙間Sからの焼却灰や不燃物の侵入が防止される。したがって、この隙間Sを長期間にわたって確保することが可能となり、さらに、サイド火格子30と火格子12(14,16)との間の異常摩耗の問題が解消される。結果として、サイド火格子30の交換周期を延長することができる。
【0030】
本実施形態では、最初に、調整ボルト58を介してコイルスプリング60を後退させ、この状態で、火格子12,14,16およびサイド火格子30を所定の位置にセットする。次いで、調整ボルト58を用いてコイルスプリング60を前進させて、サイド火格子30を火格子12,14,16に向けて移動させ、このコイルスプリング60の弾性力でサイド火格子30の表面を火格子12,14,16の端面に圧接させる。この作業により、初期段階でサイド火格子30の表面と火格子12,14,16の端面との間に隙間が生じることが防止される。さらに、シールブロック32を取付けて、サイド火格子30と炉側壁10との間の隙間Sの上方をシールブロック32でシールする。なお、一定時間運転後に炉内状況を見て、コイルスプリング60の弾性力を再調整することもできる。
【0031】
ストーカ式燃焼装置が稼働すると、火格子12,14,16の炉幅方向の熱膨張に伴ってサイド火格子30がコイルスプリング60の弾性力に抗して外方に後退する。この際、火格子12(14,16)の熱膨張は、コイルスプリング60の弾性力で吸収され、さらに、火格子12(14,16)とサイド火格子30との間のシールは、コイルスプリング60の弾性力によって火格子12(14,16)の端面に圧接されるサイド火格子30によって達成される。
【0032】
本実施形態では、サイド火格子30を冷却するために、サイド火格子ユニット100は、サイド火格子30と可動梁40の間に配置された冷却ブロック70を有する。さらに、サイド火格子ユニット100は、冷却水を可動梁40に形成された上述の下空間である冷却水入口室75に供給する冷却水供給配管76と、可動梁40に供給された冷却水が戻される冷却水戻り配管78と、をさらに備える。冷却水戻り配管78は、可動梁40に形成された上述の上空間である冷却水出口室77に接続される。
【0033】
さらに、冷却ブロック70は、その内部に形成された少なくとも1つの冷却水流路70aであって、冷却水入口室75に連通する入口と、冷却水出口室77に連通する出口と、を備えた少なくとも1つの冷却水流路70aを有する。冷却水供給配管76から冷却水入口室75に供給された冷却水は、該冷却水入口室75を満たして、冷却水流路70aに流入する。冷却水流路70aを通った冷却水は、冷却水出口室77に流入して、該冷却水出口室77を満たす。さらに、冷却水は、冷却室出口室77から冷却水戻り配管78を通ってサイド火格子ユニット100の外部に流出する。本実施形態では、冷却水入口室75は、冷却ブロック70に形成された冷却水流路70aを介して冷却水出口室77と連通している。
【0034】
冷却水流路70aを通る冷却水によって冷却された冷却ブロック70は、該冷却ブロック70と接触するサイド火格子30と熱交換し、これにより、サイド火格子30を冷却することができる。これにより、運転中のサイド火格子30の温度を、500℃以下、特に、350℃以下に維持することができる。その結果、サイド火格子30の損傷を防止して、高温によるサイド火格子30の寿命低下を防止することができる。
【0035】
本実施形態では、サイド火格子ユニット30は、4つの冷却ブロック70を有し、各冷却ユニット70は2つの冷却水流路70aを有している。しかしながら、サイド火格子30を所定温度以下(例えば、500℃以下、特に、350℃以下)まで冷却することができる限り、冷却ブロック70の数、および冷却水流路70aの数は任意に選択できる。
【0036】
さらに、本実施形態では、複数の冷却ブロック70に供給される冷却水を一旦冷却水入口室75に溜め、複数の冷却ブロック70から排出される冷却水を一旦冷却室出口室77に溜める。すなわち、冷却水入口室75は、冷却ブロック70に供給される冷却水の入口バッファとして機能し、冷却水出口室77は、冷却ブロック70から排出される冷却水の出口バッファとして機能する。これらバッファとして機能する冷却水入口室75および冷却水出口室77を設けることで、冷却水を均等な流量で各冷却水流路70aに供給し、均等な流量で各冷却水流路70aから回収することができる。その結果、サイド火格子30をその全体にわたって均一に冷却することができる。
【0037】
本実施形態では、冷却水入口室75は、冷却水出口室77の下方に配置されている。この構成によれば、サイド火格子30と熱交換することで高温となった冷却水が冷却水入口室75の上方に位置する冷却水出口室77に流入するので、冷却水入口室75内の冷却水が冷却水出口室77内の冷却水によって加熱されることが防止される。その結果、サイド火格子30の効果的な冷却を達成することができる。
【0038】
図4および図5に示すように、冷却水供給配管76および冷却水戻り配管78は、上記したフランジ74を貫通して延びている。そのため、サイド火格子ユニット100は、冷却水供給配管76とフランジ74との間の隙間をシールするシール部材(第1シール部材)88と、冷却水戻り配管78とフランジ74との間の隙間をシールするシール部材(第2シール部材)89と、をさらに備えている。シール部材88,89によって、炉内で発生した排ガスがサイド火格子ユニット100から漏洩することが防止される。
【0039】
冷却水供給配管76および冷却水戻り配管78は、サイド火格子30が火格子12(14,16)の熱膨張に応じて炉側壁10に対して進退すると、フランジ74に対して進退する。そこで、第1シール部材88は、例えば、冷却水供給配管76の摺動を許容しつつ、冷却水供給配管76とフランジ74との間の隙間をシールするグランドパッキンである。同様に、第2シール部材89は、例えば、冷却水戻り配管78の摺動を許容しつつ、冷却水戻り配管78とフランジ74との間の隙間をシールするグランドパッキンである。
【0040】
図4に示すように、サイド火格子ユニット100は、冷却水供給配管76内の冷却水の流量を調整可能な流量調整器(例えば、マスフローコントローラ)90を有していてもよい。流量調整器90は、例えば、サイド火格子30に取り付けられ、運転中のサイド火格子30の温度を測定する温度計93(図2参照)の測定値に基づいて制御される。より具体的には、流量調整器90は、温度計93によって測定されたサイド火格子30の温度が所定の設定温度に一致するように、冷却水供給配管76内の冷却水の流量を調整する。
【0041】
図示はしないが、サイド火格子ユニット100は、温度計93の代わりに、冷却水供給配管76内の冷却水の温度を測定する温度計と、冷却水戻り配管78内の冷却水の温度を測定する温度計と、を備えていてもよい。この場合、流量調整器90は、冷却水供給配管76内の冷却水の温度と、冷却水戻り配管78内の冷却水の温度との差に基づいて制御される。一実施形態では、サイド火格子ユニット100は、冷却水戻り配管78内の冷却水の温度を測定する温度計のみを備えていてもよい。この場合、流量調整器90は、冷却水戻り配管78内の冷却水の温度に基づいて制御される。
【0042】
図6は、他の実施形態に係るサイド火格子ユニットを模式的に示す透過上面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0043】
図6に示すストーカ式燃焼装置のサイド火格子ユニット100は、冷却ブロック70が省略されている点で、上述した実施形態と異なる。そのため、このサイド火格子ユニット100では、可動梁40が直接サイド火格子30に連結される。可動梁40の本体42には、冷却水入口室75を冷却水出口室77に連通させる少なくとも1つの(図6では、2つの)連通孔96が形成されている。
【0044】
冷却水入口室75に冷却水供給配管76から流入した冷却水は、連通孔96を介して冷却水出口室77に流入し、その後、冷却水戻り配管78を通ってサイド火格子ユニット100から排出される。
【0045】
冷却水が流れる可動梁40が直接サイド火格子30に連結されているので、サイド火格子30は、可動梁40と熱交換を行い、これにより、サイド火格子30が冷却される。可動梁40は、耐熱性接着剤によってサイド火格子30の裏面に固定される。上述したように、耐熱性接着剤には、銅粉が混ぜられていてもよい。一実施形態では、耐熱性接着剤は、耐熱モルタルであってもよい。
【0046】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0047】
10 炉側壁
12 固定火格子
14 可動火格子
16 エンド火格子
18 固定フレーム
20 油圧シリンダ
22 車輪
24 レール
26 可動フレーム
28 スクレーパ
30 サイド火格子
32 シールブロック
36 ブラケット
40 可動梁
42 本体
43,44,45,46 蓋部材
52 支持プレート
54 ガイド管
56 ピース部材
58 調整ボルト
60 コイルスプリング(弾性部材)
64 ナット
70 冷却ブロック
70a 冷却水流路
74 フランジ
75 冷却水入口室
76 冷却水供給配管
77 冷却水出口室
78 冷却水戻り配管
81,82 フレーム構造体
88,89 シール部材
90 流量調整器
93 温度計
96 連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6