(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159918
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】可搬式水電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20231026BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231026BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20231026BHJP
C25B 9/13 20210101ALI20231026BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/60
C25B9/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069847
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】520114203
【氏名又は名称】株式会社スーリヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】上猶 稔
(72)【発明者】
【氏名】石黒 光一
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC04
4K021CA01
4K021CA08
4K021CA10
4K021CA11
(57)【要約】
【課題】より利便性に優れる可搬式の水電解装置を提供すること。
【解決手段】可搬式の水電解装置であって、原水を貯留するタンク10と、水の電気分解機能を有する電解槽20と、タンク10から送られる原水と、電解槽20での電気分解によって発生した、酸素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスのうち、少なくとも何れかのガスから回収した電解液との混合水を貯留する。少なくとも1つの貯留槽30と、タンク10に貯留する原水を貯留槽30に供給する第1のポンプ40と、貯留槽30に貯留する混合水を電解槽20に供給する第2のポンプ50を少なくとも具備する。タンク10、電解槽20および貯留槽30を、同一平面上に設置しつつ、タンク10の上部に設けた取水口に第1のポンプ40を接続することで、装置全体の小型化を図ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式の水電解装置であって、
原水を貯留する、タンクと、
水の電気分解機能を有する、電解槽と、
前記タンクから送られる前記原水と、前記電解槽での電気分解によって発生した、酸素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスのうち、少なくとも何れかのガスから回収した電解液と、の混合水を貯留する、少なくとも1つの貯留槽と、
前記タンクに貯留する前記原水を、前記貯留槽に供給する、第1のポンプと、
前記貯留槽に貯留する前記混合水を、前記電解槽に供給する、第2のポンプと、
を少なくとも具備したことを特徴とする、
可搬式水電解装置。
【請求項2】
前記タンクの上部に取水口を設け、当該取水口に前記第1のポンプを接続してあることを特徴とする、
請求項1に記載の可搬式水電解装置。
【請求項3】
前記タンク、前記電解槽および前記貯留槽を、同一平面上に設置してあることを特徴とする、請求項2に記載の可搬式水電解装置。
【請求項4】
前記タンク、前記電解槽、前記貯留槽、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプを一体収容可能な、フレームと、
前記フレームを収容可能な、筐体と、をさらに具備することを特徴とする、
請求項3に記載の可搬式水電解装置。
【請求項5】
気液分離後の前記混合ガスを通すフィルターを更に具備し、
前記フィルターが、銀の微粒子を充填し、且つ加熱可能に構成した吹き込み管(キャピラリー)であることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の可搬式水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式の水電解装置であり、より詳細には、水の電気分解によって、酸素ガス、水素ガス、またはこれらの混合ガスを取り出すことが可能な水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可搬式の水電解装置として、以下の特許文献1に記載の発明が知られている。この発明は、水の電気分解によって発生した水素ガスを空気と混ぜて吐き出すことにより、人間に水素を吸引させることを可能とする、ポータブル式の水素吸引装置として使用することを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した先行文献に係る装置と比較して、より利便性に優れる可搬式の水電解装置を提供することを目的の1つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、可搬式の水電解装置であって、原水を貯留する、タンクと、水の電気分解機能を有する、電解槽と、前記タンクから送られる前記原水と、前記電解槽での電気分解によって発生した、酸素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスのうち、少なくとも何れかのガスから気液分離した電解液と、の混合水を貯留する、少なくとも1つの貯留槽と、前記タンクに貯留する前記原水を、前記貯留槽に供給する、第1のポンプと、前記貯留槽に貯留する前記混合水を、前記電解槽に供給する、第2のポンプと、を少なくとも具備したことを特徴とする。
また、本願発明は、前記タンクの上部に取水口を設け、当該取水口に前記第1のポンプを接続しておくことができる。
また、本願発明は、前記タンク、前記電解槽および前記貯留槽を、同一平面上に設置しておくこともできる。
また、本願発明は、前記タンク、前記電解槽、前記貯留槽、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプを一体収容可能な、フレームと、前記フレームを収容可能な、筐体と、をさらに具備することもできる。
また、本願発明は、気液分離後の前記混合ガスを通すフィルターを更に具備し、前記フィルターが、銀の微粒子を充填し、且つ加熱可能に構成した吹き込み管(キャピラリー)で構成することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下に記載する作用効果のうち、少なくとも何れか1つの作用効果を奏することによって、より利便性に優れる水電解装置を得ることができる。
(1)第1のポンプを具備することにより、装置のレイアウト上、タンクと貯留槽の位置関係に制約を受けない。
(2)タンク、電解槽および貯留槽を同一平面上に設置することで、装置の高さを極力小さくすることができる。
(3)貯留槽と電解槽との間で原水と電解水との混合水を循環させる第2のポンプを具備することにより、電解槽内の電解液の濃度を一定に保ちやすい。
(4)各部品を一体収容するフレームを、筐体に収容可能に構成することで、部品の交換やメンテナンスを行う際の作業効率性が高い。
(5)銀の微粒子を充填し且つ加熱可能に構成した吹き込み管(キャピラリー)で構成したフィルターを具備することにより、混合ガス中の酸素ガスとフィルター内の銀とを反応させることで、混合ガス中の水素濃度を調整することができる。また、銀と酸素が反応した後の化合物(酸化銀)を加熱することによって酸素ガスを再度取り出すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る可搬式水電解装置のイメージ図。
【
図2】本発明に係る可搬式水電解装置の各部品の接続イメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0009】
<1>全体構成(
図1,
図2)
図1に示すように、本発明に係る可搬式の水電解装置は、当該装置を構成する各部品を、立体枠状のフレームAに収容し、さらに当該フレームAを、可搬式の筐体Bに収容して構成する。
また、
図2に示すように、フレームAに収容する各部品には、タンク10、電解槽20、貯留槽30、第1のポンプ40、第2のポンプ50等がある。
以下、
図2を参照しながら、各部の詳細について説明する。
【0010】
<2>タンク(
図2)
タンク10は、水の電気分解に用いる原水を貯留しておく部品である。
タンク10には、第1のポンプ40を接続する取水口や、タンク10内に水を給水するための給水口などを設けておくことができる。
取水口および給水口はそれぞれ個別に設けても良いし、両者を兼用するものとしても良い。
また、取水口は、タンクの上部、例えばタンクの上部に着脱自在な蓋部分に設けておくことが好ましい。
当該構成することにより、タンク10からの原水供給を、重力を利用して自然流下する場合の構造と比較して、タンク10の構造や形状をシンプルにすることができるため、交換やメンテナンスなどの保守性が高まる。
【0011】
<3>電解槽(
図2)
電解槽20は、水を電気分解する機能を有する部品である。
電解槽20には、水の電気分解用の電極部(水素極、酸素極、セパレータ)を設けるほか、貯留槽30と接続して水の供給を受ける供給部、電解槽20内の電解液を貯留槽30に排出するための排出部を設けている。
また、電解槽20には、電気分解によって発生する、酸素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスのうち、少なくとも何れかのガスを吐き出すための吐出部を設けている。この吐出部は、単数でも複数であってもよく、吐き出すガスの種類によって適宜設けることができる。
吐出部から吐き出されるガスは、貯留槽30へと送られる。
【0012】
<4>貯留槽(
図2)
貯留槽30は、タンク10から送られる原水と、電解槽20での電気分解によって発生した、酸素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスのうち、少なくとも何れかのガスから気液分離によって回収した電解水との混合水を貯留する機能とを有する部品である。
貯留槽は、電解槽20によって取り出されるガスの種類毎に個別に設けても良いし、1つの槽を複数区画して、各ガスを分けて管理するよう構成してもよい。
【0013】
<4.1>第1のポンプ
タンク10と貯留槽30との間には、第1のポンプ40を設けておき、この第1のポンプの駆動によって、タンク10から原水を汲み上げて貯留部30へと供給する。第1のポンプ40は、電解槽20での電気分解の水の消費に応じて駆動するよう構成する。
当該構成とすることで、タンク10と貯留槽30との間のレイアウトに制限が無くなる。また、装置の中で比較的重量の大きいタンクを、装置の上部に配置することが無くなるため、装置全体の重量バランスが悪化することなく、安定性が向上する。
【0014】
<4.1.1>原水の消費イメージ
水の電気分解では、18gの水(H2O)から22.4[リットル」×2=44.8[リットル]の水素(H2)が発生するため、本発明に係る可搬式の水電解装置を、ポータブル水素発生器として使用する場合、水素ガスの発生を300ml/min→18リットル/h程度と想定すると、原水の消費量は、9g/1時間程度となる。
【0015】
<4.2>第2のポンプ
貯留槽30と電解槽20との間には、第2のポンプ50を設けておき、タンク10から汲み上げられた貯留槽30内の原水と電解槽20で発生したガスから回収した電解液とが含まれた混合水を電解槽20に供給するよう構成する。
当該構成とすることで、貯留槽30と電解槽20との間のレイアウトに制限が無くなるほか、貯留槽30内の水位を一定に保つ制御が可能となる。
また、電解槽20内の温度上昇を抑制することもできるほか、電解槽20内の電解液の濃度の安定性向上にも寄与する。
【0016】
<4.2.1>電解液と混合液との差について
なお、前記<4.1.1>の通り、本発明に係る可搬式の水電解装置において、電解槽20での電気分解に伴う原水の消費量は、9g/1時間程度であり電解槽20内の電解液に対して相対的に少ない量であることと、第2のポンプ50による循環が行われることからも、電解槽20内の電解液と、貯留槽30内の混合液との間では成分に実質的な差は無いことになる。
【0017】
<4.3>ガスの取りだし方法
電解槽20から吐き出された酸素ガス、水素ガス、またはこれらの混合ガスは、貯留槽30を経由したのち、別途設けたバブリング装置(図示せず)などを用いて取り出すことができる。
バブリング装置は、電解槽20によって取り出されるガスの種類毎に個別に設けても良い。
バブリング装置等によって取り出された各ガスは、人体への吸入用や、その他の用途へと使用することができる。
【0018】
<5>各部品のレイアウト
本発明では、タンク10、電解槽20および貯留槽30を、同一平面上に設置しておき、前記した各ポンプでもって水の供給や循環を行う構成とすることが好ましい。当該レイアウトとすることで、タンク10から電解槽20等への水の供給を自然流下とする必要がなく、当該自然流下を実現するために各部品の設置高さを変える必要もなくなり、フレームAや筐体Bのサイズをコンパクトにすることができる。
本発明に係る可搬式水電解装置は、電解槽20での電気分解によって発生した、酸素ガスと水素ガスの混合ガスを通すフィルターを更に具備しておくこともできる(図示せず)。
フィルターの一例としては、管路に銀の微粒子を充填し、且つ加熱可能に構成した吹き込み管(キャピラリー)を用いることができる。
この吹き込み管内の銀を酸素ガスと反応させることで、混合ガス内の酸素濃度を下げることができることから、混合ガス内の酸素:水素の濃度比率を調整することができる。
また、反応後の酸化銀は、当該酸化銀を加熱することによって酸素を取り出すこともできる。