IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイカ工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159921
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】反射防止ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20231026BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20231026BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069851
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平出 稜
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009AA15
2K009BB24
2K009CC09
2K009CC24
(57)【要約】
【課題】外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、スチールウールを用いて摩擦しても、十分な耐擦傷性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂と、中空シリカ微粒子と、アミン変性(メタ)アクリレートと、アルミナ微粒子と、を含み、アミン変性(メタ)アクリレートの配合量がバインダー樹脂100重量部に対し8~25重量部であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂(A)と、中空シリカ微粒子(B)と、アミン変性(メタ)アクリレート(C)と、アルミナ微粒子(D)と、を含み、前記(C)の配合量が前記(A)100重量部に対し8~25重量部であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記(C)がアミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート及び/又はアミノアクリレートであることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記(D)の配合量が、(A)100重量部に対し30~100部であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項4】
更に低屈折率層にレベリング剤(E)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部光源の反射が少なく視認性が良好であり、また耐擦傷性に優れる反射防止ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ハードコートフィルムは、蛍光灯などの外部光源の反射が少なく視認性が良好であるという特徴から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに代表される画像表示装置で広く使用されている。特にタッチパネルなどのように、画像表示面を指で触る場合や、タッチペンで入力する場合は、外部光源の反射率を低くすると共に、より高い耐摩耗性や耐擦傷性が要求されるようになってきている。
【0003】
反射防止ハードコートフィルムとしては、フィルム基材の表面にハードコート層を設け、その上層に低屈折率の反射防止層を配置する構成が一般的であり、屈折率を低くするためには、屈折率1.0の空気を内包する中空シリカなどを配合することがよく知られている。こうした低屈折率の樹脂として例えば、シリコーングラフトアクリルポリマーとメタアクリロイル基を有する化合物と中空のコロイダルシリカを含有する組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、空隙を形成している低屈折率層は耐摩耗性が低下しやすく、上記配合についても耐摩耗性に優れるとは言うものの、スチールウールを用いた耐擦傷性評価では500g/cm2の荷重で10往復させるレベルでの評価であり、耐擦傷性という点においては十分とは言えなかった。そのため、反射率が低く視認性が良好で、スチールウールを用いた摩擦でも十分な耐擦傷性を有する反射防止フィルムが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-306950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、スチールウールを用いて摩擦しても、十分な耐擦傷性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂(A)と、中空シリカ微粒子(B)と、アミン変性(メタ)アクリレート(C)と、アルミナ微粒子(D)と、を含み、前記(C)の配合量が前記(A)100重量部に対し8~25重量部であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記(C)がアミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート及び/又はアミノアクリレートであることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0009】
請求項3の発明は、前記(D)の配合量が、(A)100重量部に対し30~100部であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0010】
請求項4の発明は、更に低屈折率層にレベリング剤(E)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハードコートフィルムは、外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、スチールウールのような硬度の高い素材を用いて摩擦した場合でも、良好な耐擦傷性を有しているため、画像表示装置用の反射防止フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反射防止ハードコートフィルムは、ハードコート(以下HCという)層を形成するためのHC樹脂組成物と、低屈折率層を形成するための低屈折率樹脂組成物の2種類を用いて製造される。低屈折率樹脂組成物はバインダー樹脂(A)と、中空シリカ微粒子(B)と、アミン変性(メタ)アクリレート(C)と、アルミナ微粒子(D)と、を含む組成物である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0013】
本発明で使用するバインダー樹脂(A)は、前記(B)と(D)を分散させ低屈折率層を形成する主要樹脂であり、例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられ、また低分子量バインダーとしては、脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
前記(A)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し10~30重量%が好ましく、15~25重量%が更に好ましく、18~23重量%が特に好ましい。10重量%以上とすることで十分な皮膜硬化性が確保でき、30重量%以下とすることで反射率を低くし、十分な耐擦傷性を確保することができる。
【0015】
本発明で使用する中空シリカ微粒子(B)は、低屈折率層の屈折率を低下させる目的で配合する。(B)は低屈折率層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(B)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.15~1.40程度である。
【0016】
前記(B)の一次平均粒子径は5~100nmが好ましく、20~80nmが更に好ましく、40~70nmが特に好ましい。この範囲とすることで、低屈折率層の透明性を損なうことなく、良好な分散性を得られる。特に40~70nmであれば、強度不足とならない外殻の厚みを確保しつつ、空洞の占有率を上げて屈折率を下げることができる。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0017】
前記(B)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し30~50重量%が好ましく、35~45重量%が更に好ましい。30重量%以上とすることで屈折率を十分低くすることができ、50重量%以下とすることで十分な耐擦傷性を確保することができる。市販品としてはスルーリア2320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径50nm)が挙げられる。
【0018】
本発明で使用するアミン変性(メタ)アクリレート(C)は、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物で、紫外線硬化時の酸素による重合阻害を緩和し、硬化度を向上させる目的で配合する。酸素による硬化阻害を回避するためには、窒素等の不活性ガスによる環境下で露光する方法がよく知られているが、高速搬送されるような生産プロセスでは、被露光物に付着した酸素の影響を完全になくすことが難しいとされ、(C)の配合と組み合わせることで格段に硬化性が向上する。アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれでもよいが、硬化促進性の点で3級アミノ基が好ましい。
【0019】
前記(C)としては、例えば、アミノ(メタ)アクリレート、アミン変性脂肪族(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、アミン変性エポキシ(メタ)アクリレート、アミン変性ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、反応性が高い点でアミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートが、また重合促進効果が高い点でアミノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
前記(C)の官能基数は2~8官能が好ましく、2~6官能が更に好ましく、2~4官能が特に好ましい。この範囲とすることで、硬化収縮を大きくすることなく、表面硬度や耐擦傷性を向上させることができる。
【0021】
前記(C)の配合量は、(A)100重量部に対し8~25重量部であり、10~20重量部が好ましく、12~18重量部が更に好ましい。8重量部未満では耐擦傷性が低下する傾向があり、25重量部超でも同様に耐擦傷性が低下したり、経時的に黄変が発現したりする傾向がある。また樹脂組成物の固形分全量に対する配合量は、1.5~5.5重量%が好ましく、2.0~4.5重量%が更に好ましく、2.5~4.0重量%が特に好ましい。
【0022】
本発明で使用するアルミナ微粒子(D)は、低屈折率層の硬度を上げて耐擦傷性を向上させる目的で配合する。(D)の一次平均粒子径は1~100nmが好ましく、5~50nmが更に好ましく、10~30nmが特に好ましい。1nm以上とすることで耐擦傷性の向上が期待でき、100nm以下とすることでヘイズを高くすることなく十分な全光線透過率を確保することができる。
【0023】
前記(D)の配合量は、(A)100重量部に対し40~85重量部が好ましく、45~80重量部が更に好ましく、55~70重量部が特に好ましい。40重量部以上とすることで十分な耐摩耗性を確保することができ、85重量部以下とすることで十分に反射率を低く保つことができる。また樹脂組成物の固形分全量に対する配合量は、5~25重量%が好ましく、8~20重量%が更に好ましく、10~18重量%が特に好ましい。市販品としてはALMIBK-M47(商品名:CIKナノテック社製、固形分15%、平均粒子径20nm)が挙げられる。
【0024】
本発明では更にレベリング剤(E)を配合することが好ましい。(E)を配合することで、低屈折率層のスリップ性を向上させて耐摩耗性を向上させると共に、撥水撥由性を上げて防汚性を向上させることができる。例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系等が挙げられるが、硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。特にフッ素系シリコーン化合物が、低い表面自由エネルギーにより、塗工~乾燥後に塗膜表面に偏析しやすく、耐摩耗性及び防汚性を長期にわたり安定化させることができる点で好ましい。
【0025】
前記(E)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し30重量%以下が好ましく、10~28重量%が更に好ましく、15~25重量%が特に好ましい。特に10重量%以上とすることで耐摩耗性と防汚性を向上させることが期待でき、30重量%以下とすることで十分な硬化性を確保することができる。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物)が挙げられる。
【0026】
本発明の低屈折率層の下層に位置するHC層を形成するためのHC樹脂組成物としては、バインダーとして多官能ウレタン(メタ)アクリレート(以下多官能ウレアク)を含むことが好ましい。
【0027】
前記HC樹脂組成物に含むことが好ましい多官能ウレアクは、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により優れた耐擦傷性を有する。例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応で得ることができる。使用するポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、HDIイソシアヌレート体、IPDIイソシアヌレート体などがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中では耐候性が高く黄変しにくい脂肪族及び脂環族のジイソシアネートが好ましく、特にそれらの中では延伸性が高いHDIが好ましい。
【0028】
前記多官能ウレアクにおいて使用する水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2官能ではトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどが、3官能以上ではジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがある。これらの中では3官能で、硬化性の高いペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETA)が好ましい。
【0029】
本発明のHC樹脂組成物及び低屈折率樹脂組成物には、紫外線照射による硬化性向上のため光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
HC樹脂組成物の場合、光重合開始剤は黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127、Omnirad184、Omnirad2959(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。これらの中では、特に黄変が少なく耐擦傷性に優れるOmnirad2959が好ましい。光重合開始剤のHC樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~15重量部が好ましく、2~10重量部が更に好ましい。
【0031】
低屈折率樹脂組成物の場合、光重合開始剤はHC樹脂組成物の場合と同様にα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に酸素による重合阻害を受けにくい点でOmnirad127(2‐ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)が好ましい。光重合開始剤の低屈折率樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~10重量部が好ましく、2~8重量部が更に好ましい。
【0032】
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着促進剤、ブルーイング剤、シランカップリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、有機微粒子等を添加してもよい。
【0033】
HC樹脂組成物及び低屈折率樹脂組成物を塗工する際には、塗工特性を向上させるため溶剤にて希釈してもよい。希釈溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(以下IPA)、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、PGM,ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。希釈する場合の固形分としては1~70%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
【0034】
HC樹脂組成物が塗布される基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
【0035】
前記基材フィルムは、HC樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0036】
HC樹脂組成物及び低屈折率樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
【0037】
HC樹脂組成物の膜厚は乾燥時で1μm~10μmが例示できるが、これに限定されるものではない。ハードコート樹脂層上に塗布する低屈折率樹脂組成物の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。低屈折率層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
【0038】
HC樹脂組成物及び低屈折率樹脂組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあり、また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。照射条件としては照射強度500mW/cm~3000mW/cm、露光量50~400mJ/cmが例示されるが、これに限定されるものではない。紫外線照射はフィルム成型後に行うが、成形前に低露光量(例えば15~30mJ/cm)によるセミキュアをしても良い。
【0039】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は重量部を示す。
【実施例0040】
HC樹脂組成物
バインダーとしてHDIとPETAを反応させた6官能のウレアクを100部、光重合開始剤としてOmnirad2959(商品名:IGM Resins社製)を5部用い、固形分が40%になるよう酢酸エチルとPGMを用いて希釈し、均一に溶解・分散するまで撹拌してHC樹脂組成物を得た。
【0041】
低屈折率樹脂組成物
前記(A)としてDPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)を、(B)としてスルーリア2320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径50nm)を、(C)としてEBECRYL80(商品名:ダイセルオルネクス社製、アミン変性ポリエーテルアクリレート、固形分100%、4官能の3級アミノ基化合物)及びEBECRYL 7100(商品名:ダイセルオルネクス社製、固形分100%、アミノアクリレート、2官能の3級アミノ基化合物)を、(D)としてM47(商品名:CIKナノテック社製、固形分30%、平均粒子径20nm、MIBK希釈)を、(E)としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基含有フッ素系シリコーン化合物)を、光重合開始剤としてOmnirad127(商品名:IGM Resins社製)を表1及び表2記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して低屈折率樹脂組成物を得た。
【0042】
表1
【0043】
表2
【0044】
評価方法は以下の通りとした。
【0045】
HC層の作成
HC樹脂組成物を用い、PETフィルムU403(商品名:東レ社製、厚み100μm、易接着層有)に乾燥膜厚で3μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、100mW/cm,800mJ/cmの条件で硬化してHCフィルムを作成した。
【0046】
反射防止フィルムの作成
上記で作成したハードコート層上に、低屈折率樹脂組成物を乾燥膜厚で100nmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、100mW/cm,800mJ/cm, 窒素雰囲気下の条件で硬化させ反射防止フィルムを形成した。
【0047】
ヘイズ:上記反射防止フィルムを、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用いJIS K7361-1に準拠して測定し、1.0%以下を〇、1.0%超を×とした。
【0048】
最小反射率:上記反射防止フィルムを用い、塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて300nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットして最低の反射率を測定し、1.8%以下を〇、1.8%超を×とした。
【0049】
耐擦傷性:スチールウール#0000の上に1000g/cm2の荷重を載せて300往復させ、目視による観察で傷が付かない場合を○、わずかに傷が付く場合を△、多数の傷が付く場合を×とした。
【0050】
評価結果
表3
【0051】
評価結果
表4
【0052】
実施例は、ヘイズ、最小反射率、耐擦傷性の全ての面で問題はなく良好であった。
【0053】
一方、(C)が未配合の比較例1は耐擦傷性が劣り、(B)が未配合の比較例2は最小反射率が高く、(D)が未配合の比較例5は耐擦傷性が劣っていた。また(C)の配合量が下限未満の比較例3、上限を超えた比較例4は耐擦傷性が劣っており、いずれも本願発明に適さないものであった。