(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159938
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】拡散燃焼式二元燃料バーナ及びその火炎長制御方法
(51)【国際特許分類】
F23D 17/00 20060101AFI20231026BHJP
F23N 5/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F23D17/00 101
F23N5/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069876
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貞行
(72)【発明者】
【氏名】深井 宏一
【テーマコード(参考)】
3K005
3K065
【Fターム(参考)】
3K005QA02
3K005QA03
3K005QA06
3K005QB03
3K005QC07
3K005QC10
3K065QB09
3K065QC04
3K065RA02
3K065RB02
(57)【要約】
【課題】液体燃料と水素ガス燃料の二元燃料バーナであって、火炎長を制御できるものを提供する。
【解決手段】拡散燃焼式二元燃料バーナは、液体燃料噴出流量の液体燃料を噴出する液体燃料ノズルと、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料を噴出する水素ガス燃料ノズルと、支燃性ガスを供給する支燃性ガスノズルと、ガス燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置と、液体燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置と、コントローラと、火炎長を計測する火炎長計測器とを、備える。コントローラは、火炎長計測器で計測された火炎長を取得し、火炎長が所与の火炎長適性範囲から外れる場合は、火炎長が火炎長適性範囲に収まるように現在の液体燃料と水素ガス燃料の混焼率を修正し、修正された混焼率で液体燃料及び水素ガス燃料の燃焼が行われるように液体燃料調整装置及びガス燃料調整装置を動作させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料噴出流量の液体燃料を噴出する少なくとも1本の液体燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルの周囲に設けられて、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料を噴出する少なくとも1本の水素ガス燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルから噴出した前記液体燃料及び前記水素ガス燃料ノズルから噴出した前記水素ガス燃料へ支燃性ガスを供給する少なくとも1本の支燃性ガスノズルと、
前記ガス燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置と、
前記液体燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置と、
前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置の動作を制御するコントローラと、
前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼により生じる火炎の火炎長を計測する火炎長計測器とを、備え、
前記コントローラは、前記火炎長計測器で計測された火炎長を取得し、前記火炎長が所与の火炎長適性範囲から外れる場合は、前記火炎長が前記火炎長適性範囲に収まるように現在の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率を修正し、修正された混焼率で前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼が行われるように前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置を動作させる、
拡散燃焼式二元燃料バーナ。
【請求項2】
前記コントローラは、前記火炎長が前記火炎長適性範囲を下回る場合は、前記水素ガス燃料の割合が小さくなるように前記混焼率を修正する、
請求項1に記載の拡散燃焼式二元燃料バーナ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記火炎長が前記火炎長適性範囲を上回る場合は、前記水素ガス燃料の割合が大きくなるように前記混焼率を修正する、
請求項1又は2に記載の拡散燃焼式二元燃料バーナ。
【請求項4】
噴出した前記液体燃料の持つ熱量と噴出した前記水素ガス燃料の持つ熱量との和を入熱量とし、
前記コントローラは、前記混焼率が修正される前後で入熱量が一定となるように前記修正された混焼率に基づいて前記液体燃料噴出流量及び前記ガス燃料噴出流量を修正し、修正された前記液体燃料噴出流量の前記液体燃料が噴出するように前記液体燃料調整装置を動作させ、修正された前記ガス燃料噴出流量の前記水素ガス燃料が噴出するように前記ガス燃料調整装置を動作させる、
請求項1又は2に記載の拡散燃焼式二元燃料バーナ。
【請求項5】
液体燃料噴出流量の液体燃料を噴出する少なくとも1本の液体燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルの周囲に設けられて、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料を噴出する少なくとも1本の水素ガス燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルから噴出した前記液体燃料及び前記水素ガス燃料ノズルから噴出した前記水素ガス燃料へ支燃性ガスを供給する少なくとも1本の支燃性ガスノズルと、
前記ガス燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置と、
前記液体燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置と、
前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置の動作を制御するコントローラとを、備え、
前記コントローラは、入熱量目標値及び火炎長指令値を取得し、所与の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率と火炎長の関係を取得し、当該関係を用いて前記火炎長指令値と対応する混焼率を求め、当該混焼率と前記入熱量目標値に基づいて前記液体燃料噴出流量及び前記ガス燃料噴出流量を求め、前記液体燃料噴出流量の前記液体燃料が噴出するように前記液体燃料調整装置を動作させ、前記ガス燃料噴出流量の前記水素ガス燃料が噴出するように前記ガス燃料調整装置を動作させる、
拡散燃焼式二元燃料バーナ。
【請求項6】
液体燃料及び水素ガス燃料の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法であって、
前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼により生じる火炎の火炎長を取得すること、
所与の火炎長適性範囲を取得すること、及び、
前記火炎長が前記火炎長適性範囲から外れる場合は、前記火炎長が前記火炎長適性範囲に収まるように現在の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率を修正すること、及び、
修正された混焼率で前記液体燃料及び前記水素ガス燃料を燃焼させること、を含む、
拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法。
【請求項7】
液体燃料及び水素ガス燃料の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法であって、
入熱量目標値及び火炎長指令値を取得すること、
所与の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率と火炎長の関係を取得すること、
前記関係を用いて前記火炎長指令値と対応する混焼率を求めること、
噴出した前記液体燃料の持つ熱量と噴出した前記水素ガス燃料の持つ熱量との和を入熱量とし、前記混焼率と前記入熱量目標値に基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めること、及び、
前記液体燃料噴出流量の前記液体燃料を噴出させ、前記ガス燃料噴出流量の前記水素ガス燃料を噴出させること、を含む、
拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体燃料と水素ガス燃料の二元燃料を用い、拡散燃焼方式で燃料を燃焼させるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉のガス燃料は主に天然ガスであるが、近年の低環境負荷への関心の高まりから、燃焼時に二酸化炭素を排出しないガス燃料としての水素が注目されている。例えば、特許文献1では、エマルジョン燃料油と水素ガスの二元燃料を用い、拡散燃焼方式で燃料を燃焼させるバーナが開示されている。拡散燃焼方式とは、ガス燃料と支燃性ガスとが火口へ別々に供給され、ガス燃料と空気との界面に生じる火炎へ拡散によってガス燃料及び空気が供給されて火炎が維持される燃焼方式をいう。
【0003】
特許文献1のバーナは、噴射ノズルの中央からエマルジョン燃料油が噴射され、燃料油の周囲から酸素ガスが噴射され、酸素ガスの周囲から水素ガスが噴射される、同軸の3重管構造を備える。このバーナでは、水を電気分解して得られた水素ガスと酸素ガスを利用することから、エマルジョン燃料油0.010-0.050m3/hに対し、水素ガスが2-5m3/h、酸素ガスは水素ガスの半分が供給される。水素ガスと酸素ガスが効率よく燃焼して高熱が得られるので、エマルジョン燃料油を完全燃焼できる効果がうたわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体燃料(即ち、燃料油)と水素ガス燃料を燃料として用いる拡散燃焼方式の二元燃料バーナでは、燃料の噴出速度だけではなく、液体燃料及び水素ガス燃料の混焼率に応じて火炎長が変動するものと推測される。その理由は、液体燃料及び水素ガス燃料の燃焼特性の違いによって混焼率に応じて各燃料への支燃性ガス量の配分が変化し、燃料が完全燃焼するまでにかかる時間が変動するために火炎長も変動すると考えられるからである。
【0006】
液体燃料と水素ガス燃料の二元燃料バーナは、ボイラ火炉や焼却炉などの燃焼炉に備えられ得る。燃焼炉には、炉のサイズに応じた適正な火炎長が定まるものがある。このような燃焼炉では、バーナで生じた火炎の火炎長が適正な火炎長を超えると、火炎が炉壁と干渉して燃焼炉が損傷するおそれがある。また、燃焼炉には、火炎長を長くしたり短くしたりすることが求められるものがある。
【0007】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、液体燃料と水素ガス燃料の二元燃料バーナ及びその火炎長制御方法であって、火炎長を制御できるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る拡散燃焼式二元燃料バーナは、
液体燃料噴出流量の液体燃料を噴出する少なくとも1本の液体燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルの周囲に設けられて、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料を噴出する少なくとも1本の水素ガス燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルから噴出した前記液体燃料及び前記水素ガス燃料ノズルから噴出し前記水素ガス燃料へ支燃性ガスを供給する少なくとも1本の支燃性ガスノズルと、
前記ガス燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置と、
前記液体燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置と、
前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置の動作を制御するコントローラと、
前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼により生じる火炎の火炎長を計測する火炎長計測器とを、備え、
前記コントローラは、前記火炎長計測器で計測された火炎長を取得し、前記火炎長が所与の火炎長適性範囲から外れる場合は、前記火炎長が前記火炎長適性範囲に収まるように現在の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率を修正し、修正された混焼率で前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼が行われるように前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置を動作させることを特徴としている。
【0009】
また、本開示の別の一態様に係る拡散燃焼式二元燃料バーナは、
液体燃料噴出流量の液体燃料を噴出する少なくとも1本の液体燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルの周囲に設けられて、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料を噴出する少なくとも1本の水素ガス燃料ノズルと、
前記液体燃料ノズルから噴出した前記液体燃料及び前記水素ガス燃料ノズルから噴出した前記水素ガス燃料へ支燃性ガスを供給する少なくとも1本の支燃性ガスノズルと、
前記ガス燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置と、
前記液体燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置と、
前記液体燃料調整装置及び前記ガス燃料調整装置の動作を制御するコントローラとを、備え、
前記コントローラは、入熱量目標値及び火炎長指令値を取得し、所与の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率と火炎長の関係を取得し、当該関係を用いて前記火炎長指令値と対応する混焼率を求め、当該混焼率と前記入熱量目標値に基づいて前記液体燃料噴出流量及び前記ガス燃料噴出流量を求め、前記液体燃料噴出流量の前記液体燃料が噴出するように前記液体燃料調整装置を動作させ、前記ガス燃料噴出流量の前記水素ガス燃料が噴出するように前記ガス燃料調整装置を動作させることを特徴としている。
【0010】
また、本開示の別の一態様に係る拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法は、液体燃料及び水素ガス燃料の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法であって、
前記液体燃料及び前記水素ガス燃料の燃焼により生じる火炎の火炎長を取得すること、
所与の火炎長適性範囲を取得すること、及び、
前記火炎長が前記火炎長適性範囲から外れる場合は、前記火炎長が前記火炎長適性範囲に収まるように現在の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率を修正すること、及び、
修正された混焼率で前記液体燃料及び前記水素ガス燃料を燃焼させること、を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本開示の別の一態様に係る拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法は、液体燃料及び水素ガス燃料の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナの火炎長制御方法であって、
入熱量目標値及び火炎長指令値を取得すること、
所与の前記液体燃料と前記水素ガス燃料の混焼率と火炎長の関係を取得すること、
前記関係を用いて前記火炎長指令値と対応する混焼率を求めること、
噴出した前記液体燃料の持つ熱量と噴出した前記水素ガス燃料の持つ熱量との和を入熱量とし、前記混焼率と前記入熱量目標値に基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めること、及び、
前記液体燃料噴出流量の前記液体燃料を噴出させ、前記ガス燃料噴出流量の前記水素ガス燃料を噴出させること、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、液体燃料と水素ガス燃料の二元燃料バーナ及びその火炎長制御方法であって、火炎長を制御できるものを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、バーナの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すバーナの火口をバーナ軸線と平行に見た図である。
【
図3】
図3は、バーナの制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、水素ガス燃料と液体燃料の混焼率と火炎長の関係の一例を表す図表である。
【
図5】
図5は、バーナの適用例1に係る燃焼炉の概略図である。
【
図6】
図6は、適用例1に係るバーナの火炎長制御処理の流れを示す図である。
【
図7】
図7は、バーナの適用例2に係る燃焼炉の概略図である。
【
図8】
図8は、適用例2に係るバーナの火炎長制御処理の流れを示す図である。
【
図9】
図9は、適用例2に係るバーナの火炎長制御処理の流れを示す図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るバーナの火口をバーナ軸線と平行に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
図1は拡散燃焼式二元燃料バーナ(以下、単に「バーナ10」と称する)の概略構成を示す断面図であり、
図2はバーナ10の火口をバーナ軸Xと平行に見た図である。
図1及び
図2に示すように、本開示に係るバーナ10は、液体燃料21と水素ガス燃料22とを燃料として用いる拡散燃焼方式の二元燃料バーナである。バーナ10は、液体燃料21及び水素ガス燃料22の混焼のみならず、液体燃料21又は水素ガス燃料22の専焼が可能であってもよい。
【0015】
バーナ10は、燃焼炉1の炉壁に配置され、燃焼炉1の炉内へ向けてバーナ軸Xと略平行に燃料を吹き出すように構成されている。本開示では、液体燃料21の噴射口である液体燃料出口61から火炎の先までのバーナ軸Xと平行な距離を火炎長Lと規定する。但し、火炎長Lの規定方法はこれに限定されず、従来採用されている一般的な方法で火炎長が規定されてよい。
【0016】
バーナ10は、少なくとも1本の液体燃料ノズル31と、少なくとも1本の水素ガス燃料ノズル32と、少なくとも1本の支燃性ガスノズル33とを備える。本実施形態に係るバーナ10は、バーナ軸Xと重複する中心部に液体燃料ノズル31が配置され、液体燃料ノズル31の外側に第1支燃性ガスノズル33aが配置され、第1支燃性ガスノズル33aの外側に第2支燃性ガスノズル33bが配置されている。液体燃料ノズル31、第1支燃性ガスノズル33a、及び第2支燃性ガスノズル33bは、バーナ軸Xを中心として略同軸に配置された多重管を形成している。第1支燃性ガスノズル33aと第2支燃性ガスノズル33bの間であって、第1支燃性ガスノズル33aの直ぐ外側には、6本の水素ガス燃料ノズル32が配置されている。これら複数の水素ガス燃料ノズル32は、バーナ軸Xを中心とする円周上に分散して配置されている。
【0017】
液体燃料ノズル31は、液体燃料供給管41と接続されている。液体燃料供給源から液体燃料供給管41を通じて液体燃料ノズル31へ液体燃料21が供給される。液体燃料21は、灯油、軽油、及び重油などの燃料油のうちいずれかであってよい。液体燃料ノズル31の先端である液体燃料出口61からは、加圧された霧状の液体燃料21が炉内へ向けてバーナ軸Xと略平行に噴出する。液体燃料供給管41には、液体燃料出口61から噴射する液体燃料21の単位時間当たりの量(以下、液体燃料噴出流量)を調整するための液体燃料調整装置51が設けられている。液体燃料調整装置51は、例えば、流量調整弁とその駆動装置とを含んでいてよい。
【0018】
水素ガス燃料ノズル32の各々はガス燃料供給管42と接続されている。水素ガス燃料供給源からガス燃料供給管42を通じて水素ガス燃料ノズル32へ水素ガス燃料22が供給される。水素ガス燃料22は、水素ガスを含むガス燃料である。水素ガス燃料22は、水素ガス以外の成分を含んでいてもよい。特に限定されないが、燃焼効率の観点から、10質量%以上の水素を含むガスであれば水素ガス燃料22として好適である。水素ガス燃料22に含まれる水素は、水を電気分解して得られる水素、各種プラントの副生ガスに含まれる水素、液体水素を気化して得られる水素などであってよく、特に限定されない。
【0019】
水素ガス燃料ノズル32の先端であるガス燃料出口62からは、水素ガス燃料22が炉内へ向けてバーナ軸Xと略平行に噴出する。ガス燃料供給管42には、ガス燃料出口62から噴出する水素ガス燃料22の単位時間当たりの量(以下、ガス燃料噴出流量)を調整するためのガス燃料調整装置52が設けられている。ガス燃料噴出流量は、バーナ10が備える全水素ガス燃料ノズル32から噴出する水素ガス燃料22の流量の合計である。ガス燃料調整装置52は、例えば、流量調整弁とその駆動装置とを含んでいてよい。
【0020】
第1支燃性ガスノズル33aは、支燃性ガス供給管43と接続されている。支燃性ガス源から支燃性ガス供給管43を通じて第1支燃性ガスノズル33aへの支燃性ガス23が供給される。支燃性ガス23は、空気又は酸素ガスである。液体燃料ノズル31と第1支燃性ガスノズル33aとの間には第1支燃性ガス流路36が形成されている。第1支燃性ガス流路36には、第1スワラ37が配置されている。第1支燃性ガス流路36へ導入された支燃性ガス23は、第1スワラ37に当たって旋回し、第1支燃性ガスノズル33aの先端である第1支燃性ガス出口63から旋回流となって噴出する。第1支燃性ガス出口63から噴出する支燃性ガス23の単位時間当たりの量(以下、第1支燃性ガス供給量)は、第1支燃性ガス調整装置53によって調整される。支燃性ガス23が酸素の場合は、第1支燃性ガス調整装置53は、例えば、流量調整弁とその駆動装置とを含んでいてよい。また、支燃性ガス23が空気の場合は、第1支燃性ガス調整装置53は、例えば、ブロワを含んでいてよい。
【0021】
第2支燃性ガスノズル33bは、支燃性ガス供給管43と接続されており、支燃性ガス供給源から支燃性ガス供給管43を通じて第2支燃性ガスノズル33bへ高圧高温の支燃性ガス23が供給される。第2支燃性ガスノズル33bと水素ガス燃料ノズル32との間には第2支燃性ガス流路38が形成されている。第2支燃性ガス流路38には第2スワラ39が配置されている。第2支燃性ガス流路38へ導入された支燃性ガス23は、第2スワラ39に当たって旋回し、第2支燃性ガスノズル33bの先端である第2支燃性ガス出口64から旋回流となって噴出する。第2支燃性ガス出口64から噴出する支燃性ガス23の単位時間当たりの量(以下、第2支燃性ガス供給量)は、第2支燃性ガス調整装置54によって調整される。支燃性ガス23が酸素の場合は、第2支燃性ガス調整装置54は、例えば、流量調整弁とその駆動装置とを含んでいてよい。また、支燃性ガス23が空気の場合は、第2支燃性ガス調整装置54は、例えば、ブロワを含んでいてよい。本実施形態では、第1支燃性ガスノズル33a及び第2支燃性ガスノズル33bへ同種の支燃性ガス23が供給されるが、第1支燃性ガスノズル33a及び第2支燃性ガスノズル33bへ供給される支燃性ガス23の種類が互いに異なっていてもよい。
【0022】
上記構成のバーナ10では、液体燃料出口61の周囲に環状の第1支燃性ガス出口63が配置され、第1支燃性ガス出口63の周囲にバーナ軸Xを中心として周方向に並ぶ複数のガス燃料出口62が配置され、複数のガス燃料出口62の周囲に環状の第2支燃性ガス出口64が配置されている。これにより、液体燃料出口61から噴出する液体燃料21を包囲するように第1支燃性ガス出口63から支燃性ガス23(第1支燃性ガス)が噴出し、第1支燃性ガス出口63から噴出する支燃性ガス23を包囲するように複数のガス燃料出口62から水素ガス燃料22が噴出し、複数のガス燃料出口62から噴出する水素ガス燃料22を包囲するように第2支燃性ガス出口64から支燃性ガス23(第2支燃性ガス)が噴出する。
【0023】
上記バーナ10では、複数の水素ガス燃料ノズル32を備えるが、バーナ10は単一の水素ガス燃料ノズル32を備えてもよい。この場合、
図10に示すように、液体燃料ノズル31、第1支燃性ガスノズル33a、水素ガス燃料ノズル32、及び第2支燃性ガスノズル33bが内側から順に同軸状に配置された四重管構造を有していてよい。
【0024】
図1及び
図2に戻って、バーナ10(又は、燃焼炉1)は、火炎長Lを計測する火炎長計測器71を備える。火炎長計測器71は、液体燃料21の火炎長、及び、水素ガス燃料22の火炎長を計測するものである。液体燃料21の火炎と水素ガス燃料22の火炎とを区別して各々の火炎長が計測されてもよい。或いは、液体燃料21の火炎と水素ガス燃料22の火炎とを区別せずに火炎長が計測されてもよい。液体燃料21の火炎長及び水素ガス燃料22の火炎長が1つの火炎長計測器71で計測されてもよい。或いは、液体燃料21の火炎長を計測する火炎長計測器71と水素ガス燃料22の火炎長を計測する火炎長計測器71とが別々に設けられていてもよい。火炎長計測器71で計測される火炎長は、具体的な数値、概数、又は、所定の指標に基づく指標値(例えば、短・中・長、1・2・3など)であってよい。また、火炎長計測器71は、火炎長が所定の閾値を超えたかどうかを検出するものであってもよい。火炎長計測器71による火炎長の計測方法は特に限定されず、公知の火炎長計測方法が採用されてよい。
【0025】
例えば、光学バンドパスフィルターを用いて水素火炎(又は、燃料油火炎)の発光スペクトルの中からスペクトル強度の大きい光(例えば、紫外光)を取り出し、これを増幅してCCDカメラで電気信号に変換することにより、水素火炎(又は、燃料油火炎)を可視画像化することができる。そして、画像化された火炎の先端とバーナ10の火口(ここでは、液体燃料出口61)とのバーナ軸Xと平行な距離を「火炎長L」として計測することができる。
【0026】
また、例えば、火炎の周囲の配管や壁から発される黒体輻射の赤外光をサーモカメラで集光することにより、火炎周囲の高温領域を赤外画像(即ち、熱画像)として可視化することができる。この可視化画像を画像処理することにより、火炎の外郭を抽出し、当該火炎の先端とバーナ10の火口とのバーナ軸Xと平行な距離を「火炎長L」として計測することができる。
【0027】
また、例えば、火炎の周囲の壁に複数の温度センサをバーナ軸Xと平行に分散して配置し、複数の温度センサで検出された温度に基づいて火炎の先端を推定することができる。そして、当該火炎の先端とバーナ10の火口とのバーナ軸Xと平行な距離を「火炎長L」として計測することができる。
【0028】
図3は、バーナ10の制御系統の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、バーナ10(又は、燃焼炉1)は、コントローラ70を備える。コントローラ70は、プロセッサ75、プロセッサ75が読み出し可能なメモリ76、及び、I/O77を備える。メモリ76には、プロセッサ75が実行する基本プログラムやアプリケーションプログラム等が格納されている。コントローラ70は、I/O77を介して外部記憶装置と接続されている。また、コントローラ70は、I/O77を介して液体燃料調整装置51、ガス燃料調整装置52、第1支燃性ガス調整装置53、及び、第2支燃性ガス調整装置54と電気的に接続されている。コントローラ70は、液体燃料噴出流量、ガス燃料噴出流量、第1支燃性ガス供給量、及び第2支燃性ガス供給量を調整するために液体燃料調整装置51、ガス燃料調整装置52、第1支燃性ガス調整装置53、及び、第2支燃性ガス調整装置54を動作させる。コントローラ70は、I/O77を介して火炎長計測器71と電気的に接続されており、火炎長計測器71で計測された火炎長Lを取得することができる。
【0029】
コントローラ70は、プロセッサ75がメモリ76に記憶された所定のプログラムを読み出して実行することにより火炎長制御部70aとして機能する。火炎長制御部70aは、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率を調整することにより火炎長Lを制御する火炎長制御処理を行う。
【0030】
図4は、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率と火炎長Lとの関係の一例を表す図表1である。図表1の横軸は混焼率[%]を表し、縦軸は水素ガス燃料22の専焼時の火炎長Lを1.0としたときの火炎長比を表す。ここで混焼率[%]は、入熱量に占める水素ガス燃料22の熱量比であって、水素ガス燃料22の熱量/入熱量×100で表される。入熱量は、液体燃料21の熱量と水素ガス燃料22の熱量の和(=液体燃料21の熱量+水素ガス燃料22の熱量)である。図表1では、入熱量、支燃性ガス供給量、及び各燃料の燃焼速度を固定値(一定値)とし、連続最大出力MCRを条件としてバーナ10を運転した場合の、混焼率と火炎長比との関係を表している。水素ガス燃料22は100%水素ガス、液体燃料21は軽油である。
【0031】
混焼率と火炎長比との関係は、混焼率の増加に伴い火炎長比の最大値と最小値とが順に現れるほぼ1周期の波形として表される。混焼率が0%、即ち、液体燃料21の専焼時の火炎長比は、水素ガス燃料22の専焼時の火炎長比よりも大きい。混焼率が0%から火炎長比が最大となる混焼率(本例では約20%)までの領域Aでは、混焼率の増加に伴って火炎長比が約1.2から約1.7まで連続的に増加する。火炎長比が最大となる混焼率(本例では約20%)から火炎長比が最小となる混焼率(本例では約80%)までの領域Bでは、混焼率の増加に伴って火炎長比が約1.7から約0.5まで連続的に減少する。領域Bの中間付近の混焼率(本例では約55%)で火炎長比は1.0となる。火炎長比が最小となる混焼率(本例では約80%)から混焼率が100%までの領域Cでは、混焼率の増加に伴って火炎長比が約0.5から1.0まで連続的に増加する。なお、図表1は混焼率の増加(又は減少)に伴う火炎長比の変化の傾向を表しているが、数値は例示に過ぎずこれに限定されるものではない。
【0032】
専焼時の火炎長Lは、燃料流速とバーナ口径と燃料の拡散係数に基づいて推定し得る。しかし、混焼時は液体燃料21と水素ガス燃料22との燃焼速度の違いから混焼率に応じて支燃性ガス23の反応割合が変化することに伴い、各々の燃料が完全燃焼して火炎が形成されるまでの時間が変化するために、火炎長Lが複雑に変化すると考えられる。
【0033】
混焼率0%では、水素ガス燃料22と比較して燃焼速度の遅い液体燃料21が燃焼するため、火炎長比が1.0よりも長くなると考えられる。領域Aでは、混焼率の増加に伴って液体燃料21へ供給される支燃性ガス23が不足し、その結果、燃料が完全燃焼するまでの時間が長くなるために火炎長比が増加すると考えられる。領域Bでは、混焼率の増加に伴って燃焼速度の速い水素ガス燃料22が多くなり燃焼速度の遅い液体燃料21が少なくなることから、燃料が完全燃焼するまでの時間が短縮されるために火炎長比が減少すると考えられる。領域Cでは、燃料のうち大部分を占める水素ガス燃料22に供給された支燃性ガス23の大部分が配分され、水素ガス燃料22が燃焼してから液体燃料21へ支燃性ガス23が供給されることから、燃料が完全燃焼するまでに時間がかかるために火炎長比が増加すると考えられる。
【0034】
上記のような混焼率と火炎長Lとの関係は、液体燃料21の成分や濃度、水素ガス燃料22の水素濃度、液体燃料噴出流量、ガス燃料噴出流量、圧力、温度などの各種の変数によって厳密には異なるが、実質的に同様の傾向を示すものと考えられる。そこで、火炎長制御部70aとして機能するコントローラ70は、火炎長計測器71で計測された火炎長Lが所望の火炎長となるように、予め記憶された混焼率と火炎長Lとの関係に基づいて液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率を調整する。なお、混焼率の調整は、液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52によって液体燃料噴出流量とガス燃料噴出流量とを変化させることによって行われる。
【0035】
〔バーナ10の適用例1〕
図5は、バーナ10の適用例1に係る燃焼炉1(1A)の概略図である。
図5に示すように、適用例1では、ボイラの燃焼炉1(1A)、即ち、ボイラ火炉にバーナ10が適用されている。なお、
図5では1機のバーナ10が図示されているが、燃焼炉1は複数のバーナ10を備えていてよい。バーナ10は、バーナ軸Xが略水平となるように燃焼炉1の炉壁に設置されている。燃焼炉1には、炉サイズに応じた適正な火炎長の数値範囲(以下、火炎長適性範囲Lp)が予め決められて、コントローラ70に設定されている。また、燃焼炉1で使用される液体燃料21及び水素ガス燃料22について、混焼率と火炎長Lとの関係が予め実験又はシミュレーションで求められ、コントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。
【0036】
コントローラ70は、入力された要求に基づいて入熱量目標値Htを求めることができる。要求に基づいて入熱量目標値Htを求める演算式は予めコントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。要求は、例えば、ボイラの生成蒸気量や、入熱量の指令値であってよい。また、コントローラ70は、入熱量目標値Htを取得できる。コントローラ70が取得する入熱量目標値Htは、コントローラ70が自身で算出したものであってもよいし、コントローラ70に無線又は有線で接続された入力装置や他のデバイスから取得したものであってもよい。
【0037】
コントローラ70は、入熱量目標値Htに基づいて支燃性ガス供給量を求めることができる。支燃性ガス供給量は入熱量目標値Htと概ね比例の関係にある。入熱量目標値Htに基づいて支燃性ガス供給量を求める演算式は、予めコントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。
【0038】
コントローラ70は、入熱量目標値Htと混焼率に基づいて、液体燃料噴出流量の液体燃料21の持つ熱量とガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が持つ熱量との和が入熱量目標値Htとなるように、液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めることができる。入熱量目標値Htと混焼率に基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求める演算式は、予めコントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。ここで、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率は、混焼率と火炎長Lとの関係において、火炎長比の最大値から最小値までの範囲(
図4に示す領域B)に対応する値であることが望ましい。
【0039】
図6は、コントローラ70による火炎長制御処理の流れ図である。
図6に示すように、コントローラ70は、新たな入熱量目標値Htを取得すると、新たな入熱量目標値Htで入熱量目標値Htを更新する。新たな入熱量目標値Htは、現在の入熱量目標値Htと異なる入熱量目標値Htである。コントローラ70は、入熱量目標値Htが更新されると(ステップS01でYES)、更新された入熱量目標値Htに基づいて液体燃料噴出流量、ガス燃料噴出流量、及び支燃性ガス供給量を求める(ステップS02)。ここで、液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めるために、現在の液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率、予め設定された基準の混焼率、又は、コントローラ70が新たに取得した混焼率が使用されてよい。
【0040】
コントローラ70は、求めた液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量で燃料噴射が行われるように液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52を動作させるとともに、求めた支燃性ガス供給量の液体燃料21が供給されるように第1支燃性ガス調整装置53及び第2支燃性ガス調整装置54を動作させる。
【0041】
コントローラ70は、燃焼炉1の運転中、火炎長計測器71で測定された火炎長Lを監視する。ここで、コントローラ70は、火炎長計測器71で計測された火炎長Lを取得し(ステップS04)、計測された火炎長Lと火炎長適性範囲Lpとを比較する。計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lp内である場合には(ステップS05でYES)、コントローラ70は火炎長Lの監視を継続する。
【0042】
計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを外れる場合は(ステップS05でNO)、コントローラ70は現在の混焼率を修正する(ステップS06)。計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを下回る場合には、コントローラ70は、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率において水素ガス燃料22の割合が減少するように混焼率を修正する。また、計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを上回る場合には、コントローラ70は、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率において水素ガス燃料22の割合が増加するように混焼率を修正する。なお、混焼率の修正量は、例えば、1%ずつというように予め与えられた値であってもよいし、火炎長Lの火炎長適性範囲Lpからの乖離度合いによって修正量が調整されてもよい。
【0043】
コントローラ70は入熱量目標値Htと修正された混焼率とに基づいて、修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求める。修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量についても、液体燃料噴出流量の液体燃料21の持つ熱量とガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が持つ熱量との和が入熱量目標値Htとなる。
【0044】
コントローラ70は、修正された混焼率で混焼率を更新し、修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量で燃料噴射が行われるように液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52を動作させる。つまり、コントローラ70は、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを下回る場合には水素ガス燃料22の混焼率を下げるための操作を行い、計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを上回る場合には水素ガス燃料22の混焼率を上げるための操作を行う。このように、コントローラ70が火炎長制御を行うことによって、入熱量が変化しても火炎長Lを火炎長適性範囲Lpに維持できる。これにより、火炉の炉壁の焼損を回避できる。
【0045】
〔バーナ10の適用例2〕
図7は、バーナ10の適用例2に係る燃焼炉1(1B)の概略図である。
図7に示すように、適用例2では、ロータリキルンなどの横型の燃焼炉1(1B)にバーナ10が適用されている。この燃焼炉1では、炉体の長手方向の一方の端である始端から原料が供給され、炉体の長手方向の他方の端である終端から燃焼後の原料が排出される。バーナ10は、炉体の終端の炉壁に、バーナ軸Xが略水平となるように設置されている。このバーナ10では、火炎長Lを任意に調整することができる。
【0046】
燃焼炉1で使用される液体燃料21及び水素ガス燃料22について、混焼率と火炎長Lとの関係が予め実験又はシミュレーションで求められ、コントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。
【0047】
コントローラ70は、入熱量目標値Htを取得できる。コントローラ70が取得する入熱量目標値Htは、コントローラ70が自身で算出したものであってもよいし、コントローラ70に有線又は無線で接続された入力装置や他のデバイスから取得したものであってもよい。
【0048】
コントローラ70は、入熱量目標値Htに基づいて支燃性ガス供給量を求めることができる。支燃性ガス供給量は入熱量目標値Htと比例の関係にある。入熱量目標値Htに基づいて支燃性ガス供給量を求める演算式は、予めコントローラ70のメモリ76又は記憶装置に記憶されている。
【0049】
コントローラ70は、火炎長指令値Lcを取得できる。火炎長指令値Lcは、具体的な数値であってもよいし、「短・中・長」や「1・2・3」などの長さを所定の指標で表した概数であってもよい。火炎長指令値Lcは、コントローラ70に接続された入力装置からコントローラ70へ入力されてもよい。或いは、火炎長指令値Lcは、コントローラ70に設定された燃焼プログラムに従って適宜のタイミングで与えられてもよい。
【0050】
コントローラ70は、火炎長指令値Lcと入熱量目標値Htに基づいて、液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めることができる。コントローラ70は、混焼率と火炎長Lとの関係を参照して、火炎長指令値Lcと対応する火炎長Lが得られる混焼率を求める。ここで、混焼率は、混焼率と火炎長Lとの関係において火炎長Lの最大値から最小値までの範囲(
図4に示す領域B)に対応する値であることが望ましい。コントローラ70は、求めた混焼率に基づいて、液体燃料噴出流量の液体燃料21の持つ熱量とガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が持つ熱量との和が入熱量目標値Htとなるように、液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を算出する。なお、液体燃料21及び水素ガス燃料22の噴出圧力は噴出流量に比例し、予め噴出流量に対応する噴出圧力が定められていてよい。また、液体燃料21、水素ガス燃料22、及び支燃性ガス23の温度は予め与えられた値であってよい。
【0051】
図8は、コントローラ70による火炎長制御処理の流れ図である。
図8に示すように、コントローラ70は、新たな入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcの組み合わせを取得すると、新たな値で入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcを更新する。ここで、新たな入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcの組み合わせは、入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcのうち少なくとも一方が現在の値と異なっていればよい。コントローラ70は入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcの組み合わせが更新されると(ステップS11でYES)、更新された入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcに基づいて、液体燃料噴出流量、ガス燃料噴出流量、及び支燃性ガス供給量を求める(ステップS12)。液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量の演算過程で求めた液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率は、現在の混焼率とされる。
【0052】
コントローラ70は、求めた液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量で燃料噴射が行われるように液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52を動作させるとともに、求めた支燃性ガス供給量の支燃性ガス23が供給されるように第1支燃性ガス調整装置53及び第2支燃性ガス調整装置54を動作させる(ステップS13)。
【0053】
このように、コントローラ70が火炎長制御を行うことによって、任意に火炎長Lを変化させることができる。
【0054】
更に、この適用例2においても、コントローラ70は、火炉の運転中に火炎長Lを監視するように構成されていてもよい。この場合、
図9に示すように、コントローラ70は、火炎長計測器71で計測された火炎長Lを取得し(ステップS14)、計測された火炎長Lと火炎長適性範囲Lpとを比較する。ここで、火炎長適性範囲Lpは、火炎長指令値Lcと対応する適正な火炎長Lの数値範囲であり、コントローラ70には、火炎長指令値Lcと対応づけて火炎長適性範囲Lpが記憶されている。或いは、コントローラ70は、火炎長指令値Lcから所定の演算式を用いて火炎長適性範囲Lpを求めてもよい。例えば、火炎長指令値Lcが具体的な数値である場合は、火炎長指令値Lcにプラス側及びマイナス側の許容値を加えた値が火炎長適性範囲Lpとされてよい。また、火炎長指令値Lcが長さを所定の指標で表した概数である場合には、火炎長指令値Lcの各々に火炎長適性範囲Lpが定められていてよい。
【0055】
計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lp内である場合には(ステップS15でYES)、コントローラ70は火炎長Lの監視を継続する。計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpから外れる場合は(ステップS15でNO)、コントローラ70は現在の混焼率を修正する(ステップS16)。ここで、計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを下回る場合には、コントローラ70は、液体燃料21及び水素ガス燃料22の混焼率において水素ガス燃料22の割合が減少するように混焼率を修正する。また、計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを上回る場合には、コントローラ70は、液体燃料21及び水素ガス燃料22の混焼率において水素ガス燃料22の割合が増加するように混焼率を修正する。なお、混焼率の修正量は、例えば、1%ずつというように予め与えられた値であってもよいし、火炎長Lの火炎長適性範囲Lpからの乖離度合いによって修正量が調整されてもよい。
【0056】
コントローラ70は入熱量目標値Htと修正された混焼率とに基づいて、修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求める。修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量についても、液体燃料噴出流量の液体燃料21の持つ熱量とガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が持つ熱量との和が入熱量目標値Htとなる。
【0057】
コントローラ70は、修正された混焼率で混焼率を更新し、修正された液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量で燃料噴射が行われるように液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52を動作させる。つまり、コントローラ70、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを下回る場合には水素ガス燃料22の混焼率を下げるための操作を行い、計測された火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを上回る場合には水素ガス燃料22の混焼率を上げるための操作を行う。このようにして、コントローラ70が火炎長制御を行うことによって、火炎長Lを火炎長指令値Lcと対応する値に維持できる。
【0058】
〔総括〕
以上に説明したように、本開示に係る拡散燃焼式二元燃料バーナ10は、
液体燃料噴出流量の液体燃料21を噴出する少なくとも1本の液体燃料ノズル31と、
液体燃料ノズル31の周囲に設けられて、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22を噴出する少なくとも1本の水素ガス燃料ノズル32と、
液体燃料ノズル31から噴出した液体燃料21及び水素ガス燃料ノズル32から噴出した水素ガス燃料22へ支燃性ガス23を供給する少なくとも1本の支燃性ガスノズル33と、
液体燃料噴出流量を調整する液体燃料調整装置51と、
ガス燃料噴出流量を調整するガス燃料調整装置52と、
液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52の動作を制御するコントローラ70と、
液体燃料21及び水素ガス燃料22の燃焼により生じる火炎の火炎長Lを計測する火炎長計測器71とを備える。
【0059】
上記構成のバーナ10において、コントローラ70は、火炎長計測器71で計測された火炎長Lを取得し、火炎長Lが予め記憶された火炎長適性範囲Lpから外れる場合は、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpに収まるように現在の液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率を修正し、修正された混焼率で液体燃料21と水素ガス燃料22の燃焼が行われるように液体燃料調整装置51及びガス燃料調整装置52を動作させるように構成されている。
【0060】
同様に、本開示に係る拡散燃焼式二元燃料バーナ10の火炎長制御方法は、
液体燃料21及び水素ガス燃料22の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナ10の火炎長制御方法であって、
液体燃料21及び水素ガス燃料22の燃焼により生じる火炎の火炎長Lを取得すること、
所与の火炎長適性範囲Lpを取得すること、及び、
火炎長Lが火炎長適性範囲Lpから外れる場合は、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpに収まるように現在の液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率を修正すること、及び、
修正された混焼率で液体燃料21及び水素ガス燃料22を燃焼させること、を含む。
【0061】
上記構成のバーナ10において、コントローラ70は、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを下回る場合は、水素ガス燃料22の割合が小さくなるように混焼率を修正するように構成されていてよい。
【0062】
上記構成のバーナ10において、コントローラ70は、火炎長Lが火炎長適性範囲Lpを上回る場合は、水素ガス燃料22の割合が大きくなるように混焼率を修正するように構成されていてよい。
【0063】
上記のバーナ10及びその火炎長制御方法によれば、液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率を調整することにより、火炎長Lを火炎長適性範囲Lpに制御することができる。火炎長適性範囲Lpは任意に設定できるので、燃焼炉1の炉のサイズに応じた任意の火炎長Lを形成することができる。同一構造のバーナ10を火炎長適性範囲Lpの異なる複数の炉に適用することも可能となる。
【0064】
上記構成のバーナ10において、噴出した液体燃料21の持つ熱量と噴出した水素ガス燃料22の持つ熱量との和を入熱量とし、コントローラ70は混焼率が修正される前後で入熱量が一定となるように修正された混焼率に基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を修正し、液体燃料噴出流量の液体燃料21が噴出するように液体燃料調整装置51を動作させ、修正されたガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が噴出するようにガス燃料調整装置52を動作させるように構成されていてよい。
【0065】
上記のバーナ10によれば、入熱量を略一定に保持しつつ、火炎長を変化させることができる。
【0066】
また、上記構成のバーナ10において、コントローラ70は、入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcを取得し、所与の液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率と火炎長Lの関係を取得し、当該関係を用いて火炎長指令値Lcの火炎長と対応する混焼率を求め、当該混焼率と入熱量目標値Htに基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求め、液体燃料噴出流量の液体燃料21が噴出するように液体燃料調整装置51を動作させ、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22が噴出するようにガス燃料調整装置52を動作させるように構成されててよい。
【0067】
同様に、本開示に係る拡散燃焼式二元燃料バーナ10の火炎長制御方法は、液体燃料21及び水素ガス燃料22の二元燃料を拡散燃焼する拡散燃焼式二元燃料バーナ10の火炎長制御方法であって、
入熱量目標値Ht及び火炎長指令値Lcを取得すること、
所与の液体燃料21と水素ガス燃料22の混焼率と火炎長Lの関係を取得すること、
当該関係を用いて火炎長指令値Lcと対応する混焼率を求めること、
噴出した液体燃料21の持つ熱量と噴出した水素ガス燃料22の持つ熱量との和を入熱量とし、混焼率と入熱量目標値Htに基づいて液体燃料噴出流量及びガス燃料噴出流量を求めること、及び、
液体燃料噴出流量の液体燃料21を噴出させ、ガス燃料噴出流量の水素ガス燃料22を噴出させること、を含む。
【0068】
上記のバーナ10及びその火炎長制御方法によれば、火炎長Lを火炎長指令値Lcに制御することができる。火炎長指令値Lcは任意の値であるので、燃焼炉1の炉のサイズに応じた任意の火炎長Lを形成することができる。また、一つの炉においてバーナ10の火炎長Lを任意に変化させることも可能となる。
【0069】
本明細書で開示するコントローラ70の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせを含む回路、又は、処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見做される。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、或いは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0070】
本開示の前述の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態にまとめられている。但し、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 :燃焼炉
10 :バーナ
21 :液体燃料
22 :水素ガス燃料
23 :支燃性ガス
31 :液体燃料ノズル
32 :水素ガス燃料ノズル
33 :支燃性ガスノズル
51 :液体燃料調整装置
52 :ガス燃料調整装置
70 :コントローラ
70a :火炎長制御部
71 :火炎長計測器