IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井三池製作所の特許一覧 ▶ 前田建設工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図1
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図2
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図3
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図4
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図5
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図6
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図7
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図8
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図9
  • 特開-トンネル内壁面の覆工切削装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159939
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】トンネル内壁面の覆工切削装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/01 20060101AFI20231026BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E21D9/01
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069877
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100226713
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉俊
(72)【発明者】
【氏名】松藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 周作
(72)【発明者】
【氏名】賀川 昌純
(72)【発明者】
【氏名】坂下 誠
(72)【発明者】
【氏名】浅井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】水谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福井 康仁
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB01
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能であることは言うまでもなく、所定の深さと幅に確実に且つ迅速に切削することができ、耐久性にも優れており、部品点数が少なくて良いばかりか操作も簡単であるトンネル覆工の切削装置を提供する。
【解決手段】切削ドラム73における回転軸74,74の両端を切削フレーム6に支持されて前記切削ドラム73の切削面が前記切削フレーム6から所定の高さ位置に備えられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されたアーチ状の横行フレームと、前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを有する回転式切削機と、からなり、
前記回転式切削機が、前記切削ドラムの両端を前記切削フレームに支持されて前記切削ドラムの切削面が前記切削フレームに平行に且つ所定の高さ位置に配置されるように備えられていることを特徴とするトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項2】
前記横行フレームが前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて所定の間隔を有して少なくとも2本配置されているとともに、前記横行フレームに沿って走行可能な前記切削フレームを前記横行フレーム間に懸架させて前記横行フレームに沿って横行可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項3】
前記回転式切削機が、前記切削ドラムの軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項4】
前記回転式切削機の前記切削ドラムが前記切削フレームに対して垂直方向の距離を伸縮可能または回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項5】
前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径の異なる切削ドラムに交換可能であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項6】
前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項7】
前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に防塵飛散防止機構が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項8】
前記ガントリーの内側に切削ズリ落下防止板が付設されているとともに、前記切削フレームに前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパが設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項9】
前記横行フレームのアーチ形状を、前記切削するトンネルの内面形状に沿って変形可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項10】
前記切削フレームまたは前記回転式切削機に前記切削するトンネル内壁面との距離を測る測定器が設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル内壁面の覆工切削装置。
【請求項11】
車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されて前記トンネルの内面形状に沿って変形可能であり所定の間隔を有して配置される少なくとも一対からなるアーチ状の横行フレームと、前記横行フレーム間に懸架させて前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを有し、前記切削ドラムが軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されているとともに前記切削フレームに対して少なくとも垂直方向の距離を伸縮可能または前記切削フレームに対して回転可能に取り付けられている回転式切削機と、からなり、
前記回転式切削機が、前記切削ドラムの両端を前記切削フレームに支持されて前記切削ドラムの切削面が前記切削フレームに平行に且つ所定の高さ位置に配置されるように備えられており、
前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径の異なる切削ドラムに交換可能であり、
前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能であり、
加えて、前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に配置されたアーチ形の防塵飛散防止機構と、
前記ガントリーの内側に付設された切削ズリ落下防止板と、
前記切削フレームに設置されて前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパと、
前記切削フレームまたは前記回転式切削機に設置されて前記切削するトンネル内壁面との距離を測る測定器と、を有することを特徴とするトンネル内壁面の覆工切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路などに設置された既存のトンネルにおける内壁面の覆工切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路などに設置されているトンネルの内壁面は表面の保護のためにコンクリートにより覆われているが、経年使用により老朽化することでひび割れ、剥離などが生じて強度が低下して、水漏れや剥落などが生じる恐れがある。
【0003】
そこで、これらを未然に対処する目的で、古くなったトンネル内壁面の覆工を一定の深さで切削し、新たなトンネル内壁面を覆工する補修工事が行われている。
【0004】
ところで、前記トンネルにおける内壁面の覆工部分についての補修工事が行われる期間中は長期間に渡ってトンネル内の交通が遮られるが、長年にわたって使用されて補修が必要な道路などに設置されているトンネルは多くの場合に日常の交通になくてはならないものであり、前記内壁面の補修工事が行われる期間中は長期間に渡ってトンネル内の交通が遮られて交通障害が生じるという問題点があった。
【0005】
この問題を解決するため、例えば図9に示したように、既設のトンネル1a内に、その長さ方向に沿って間欠的に移動可能なシェルター(防護工)2aを設けることにより壁面の作業空間3aと車両の通行空間4aとを遮断して形成し、壁面の作業空間3a内でトンネル1aの内壁面5aを剥がす作業を連続して行う補修方法が知られており、例えば特開平11-173088号公報(特許文献1)などに提示されている。
【0006】
この補修方法によると、補修中においてもトンネル内における車両の通行を確保できるばかりかシェルター(防護工)2aにより通行空間4aと作業空間3aとが区分けされるので交通安全が図れ、特に、シェルター(防護工)2aの幅を広くして従来の車線を確保する場合には交互通行などの処置も必要でなく、交通渋滞を回避できるとともに、交互通行に必要な機材や人手を削減することが可能である。
【0007】
ところで、前記図9に示したトンネル1a内にシェルター(防護工)2aを設けることによりトンネル1aの内壁面5aと車両の通行空間4aとを遮断して形成した壁面の作業空間3a内で既設トンネル1aに覆工されている内壁面5aを剥がす作業をトンネルの進行方向に順次、連続して行う補修工法は、交通への支障がなく極めて便利であるが、反面、作業域がトンネル1aの内壁面5aとシェルター(防護工)2aとの間に形成されるアーチ形壁面の作業空間3aに限られており、前記特許文献1に開示されたはつり部材はこの作業空間内でトンネル進行方向とトンネル周方向にのみ移動できる構造であり、切削量の細かい調整をすることができず、深さ一定の切削しか行えなかった。
【0008】
そこで、例えば図10に示すように、前記従来のシェルター(防護工)2aの外側に車両の走行方向に直交する方向に向けてトンネル1aの内壁面5aに沿って配置されたアーチ状の横行フレーム6aを備え、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラム71aを有する例えば電動式の切削機7aを前記横行フレームの外側に沿って移動させることで前記トンネル1aの内面に覆工されている内壁面5aを切削するトンネル面を所定の厚さに切削する覆工切削装置が、例えば、特開2002-81298号公報(特許文献2)、特開2017-193885号公報(特許文献3)、特開2017-179853号公報(特許文献4)などに提示されている。
【0009】
このようなトンネル内壁面5aの覆工切削装置は、切削ドラム71aを有する回転式切削機7aをトンネル1aの内壁面5aに沿って配置されたアーチ状の横行フレーム6aに沿って移動させることにより、切削ドラム71aをトンネル1aの内壁面5aに沿った軌跡を有して切削することが可能であり、交通を遮断することなく狭い作業空間3aにおいても極めて効率よく切削作業を行うことができるものである。
【0010】
また、前記従来のトンネル覆工の切削装置は、前記切削ドラム71aを、横行フレーム6aに沿って移動させる切削フレーム8aに対して水平および垂直方向に移動可能に搭載することで、切削ドラム71aを即座にトンネル1aの内壁面5aの切削箇所に移動し、切削ドラム71aの回転軸72aをトンネル1aの内壁面5aの切削面に対して平行に押し当てて正確な切削を行うことができるなどの優れた作用・効果を発揮させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-173088号公報
【特許文献2】特開2002-81298号公報
【特許文献3】特開2017-193885号公報
【特許文献4】特開2017-179853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来のトンネル覆工の切削装置は、前記図9に示したように、トンネル1aの内壁面5aを切削する切削ドラム71aが、アーチ状の横行フレーム6aに沿って移動させる切削フレーム(架台)8aの移動方向に直交する端縁から例えば平行リンク機構9aなどを介して突出させた、所謂片持ち式に配置されたものである。
【0013】
そのため、切削ドラム71aの回転軸72aをトンネル1aの内壁面5aにおける切削面51aに沿って正確に保持させるのが困難であり、殊に、回転軸72には切削ドラム71aをトンネル1aの切削面51aへの押圧力とその反作用とが作用することになり、切削ドラム71aの回転軸72aをトンネル1aにおける内壁面5aの走行方向に並行に支持しておくことが困難で、殊に、切削機7aには例えば重量がある電動機10aも含まれており回転軸72aへの荷重を増しており、また、経時的な使用により不均一な応力が重ねて加えられる結果、回転軸72aや平行リンク機構9aなどが変形することで、精度を保つ切削作業を実施することが困難になる、という課題がある。
【0014】
加えて、前記従来例では、切削ドラム71aを切削フレーム(架台)8aから突出させているので、切削位置が横行フレーム6aから離れており、その分だけシェルター(防護工)2aの長さも進行方向に長くする必要があり、全体として装置が大型化するという問題もある。
【0015】
そこで、トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能であることは言うまでもなく、所定の深さと幅に確実に且つ迅速に切削することができ、耐久性にも優れており、部品点数が少なくて良いばかりか操作も簡単であるトンネル覆工の切削装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、従来のトンネル覆工の切削装置における前記課題を解決するためになされたものであり、車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削するトンネル内壁面の覆工切削装置であって、
前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて前記内壁面に沿って配置されたアーチ状の横行フレームと、前記横行フレームの外側に沿って横行可能に配置した切削フレームとを備え、前記トンネルの進行方向に移動および停止可能に配置されるガントリーと、
前記横行フレームに沿って移動可能であり、外周面に切削爪を備えた円筒状の切削ドラムを有して前記切削ドラムの回転軸を前記トンネルの進行方向に向けて配置される回転式切削機と、からなり、
前記回転式切削機が、前記切削ドラムにおける回転軸の両端を前記切削フレームに支持されて前記切削ドラムの切削面が前記切削フレームに平行に且つ所定の高さ位置に配置されるように備えられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によると、車両の通行を可能にする通行空間を有し、前記通行空間の外側の作業空間においてトンネルの内面に覆工された内壁面を切削する構造であることにより、トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能なことは従来と同様である。
【0018】
そして、殊に、切削ドラムにおける回転軸の両端が、横行フレームに沿って横行する切削フレームに支持されているので、前記切削ドラムでトンネルの内壁面を切削する際に切削ドラムに前記切削フレーム方向の荷重が掛かっても、回転軸が歪むことが無いので所定の深さと幅に確実に且つ迅速に切削することができ、また、従来の片持ち式の切削ドラムに比べて回転軸への切削荷重による負担が少ないので耐久性にも優れており、切削ドラムの回転軸がトンネルにおける内壁面の進行方向に平行となるように回転式切削機を切削フレームに設置することにより切削ドラムについての水平方向の調整が不要で、所望の切削深さに応じて切削フレームからの高さを調節するだけで切削が可能であって、部品点数が少なくて良いばかりか操作も簡単である。
【0019】
また、本発明において、前記横行フレームがトンネルの進行方向に対し略直交方向に向けて所定の間隔を有して少なくとも2本配置されているとともに、前記横行フレームに沿って走行可能な前記切削フレームを前記横行フレーム間に懸架させて前記横行フレームに沿って横行可能に支持されていることにより、回転式切削機を設置した切削フレームを横行フレームに確実に安定した状態で走行可能に支持が可能である。
【0020】
加えて、本発明において、前記回転式切削機が、前記切削ドラムの軸線方向の中央位置を前記切削フレームの架設方向の中央位置に合致させて配置されている場合には、切削ドラムの位置をトンネルの内壁面における所定の切削位置に容易に調整可能である。
【0021】
また、本発明において、前記回転式切削機の前記切削ドラムが前記切削フレームに対して少なくとも垂直方向の距離を伸縮可能または前記切削フレームに対して回転可能に取り付けられている場合には、垂直方向の伸縮により切削速度や切削深さ(切削量)の調整が可能となるほか、回転によりトンネルの内壁面における両下端部から路面に掛けても切削することが可能である。
【0022】
更に、本発明において、前記切削フレームに取り付けられる前記切削ドラムが少なくとも幅または径の異なる切削ドラムに交換可能とすることで1サイクルの切削量を変更することができる。
【0023】
また、前記横行フレームと前記切削フレームの間にスペーサーを介しており、前記スペーサーに対する前記切削フレームの取り付け位置が調整可能である場合、異なる断面を有するトンネルの内壁面の断面形状に対しても横行フレームを変更することなく対応可能としている。
【0024】
更に、前記ガントリーの正面または背面のうち少なくとも一方に防塵飛散防止機構が配置されている場合には、切削作業時に切削ドラムから生じる切削屑などの粉塵を飛散させずにガントリー付近に集塵することができる。
【0025】
また、前記横行フレームの内側に切削ズリ落下防止板が付設されているとともに、前記切削フレームに前記切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパが設置されている場合には、切削ドラムにより生じる切削ズリが横行フレームの下方にあたるトンネルの路面に飛散することが無く、更に、切削ズリ落下防止板に落下した切削ズリをスクレーパにより掻き落とすことで切削ズリが切削ズリ落下防止板上に堆積することを防止する。
【0026】
更に、本発明において、前記横行フレームのアーチ形状を、前記切削するトンネルの内面形状に沿って変形可能とすることで、トンネルの内壁面の覆工面が変形していても均一深さに切削することが可能である。
【0027】
また、本発明において、前記切削フレームまたは前記回転式切削機に前記切削するトンネル内壁面との距離を測る測定器が設置されている場合には測定器により測定したトンネルの内壁面との距離を保つように切削ドラムの位置を調節して所定の深さに均一な切削を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明は、トンネル内への車両の通行を遮断することなしにトンネル覆工の切削作業を行うことが可能であることは言うまでもなく、切削ドラムでトンネルの内壁面を切削する際に切削ドラムに切削フレーム方向の荷重が掛かっても、回転軸が歪むことが無いので所定の深さと幅に確実に且つ迅速に切削することができ、また、従来の片持ち式の切削ドラムに比べて回転軸への切削荷重による負担が少ないので耐久性にも優れており、切削ドラムの回転軸がトンネルにおける内壁面の進行方向に平行となるように回転式切削機を切削フレームに設置することにより切削ドラムについての水平方向の調整が不要で、所望の切削深さに応じて切削フレームからの高さを調節するだけで所定の深さの切削が可能であって、部品点数が少なくて良いばかりか操作も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の好ましい実施の形態を示す正面図。
図2図1に示した実施の形態の側面図。
図3図1に示した実施の形態の平面図。
図4図1に示した実施の形態の要部を示す側面図。
図5図4に示したA-A線の一部簡略化した拡大断面図。
図6図3の一部を拡大した平面図。
図7図1に示した実施の形態の一部を拡大した縦断面図。
図8図1に示した実施の形態において回転式切削機を切削フレームに対して回転させた状態を示す拡大した縦断面図。
図9】従来例を示す正面図。
図10】従来例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1乃至図8は本発明の好ましい実施の形態の概略を示すものであり、トンネル内壁面の覆工切削装置1は、ガントリー3と、回転式切削機7と、からなり、前記ガントリー3の内側に車両の通行を可能にする車両の通行空間23を設けるとともに前記ガントリー3の外側における前記トンネル2の内壁面24との間に所定の切削作業の作業空間25を有している。
【0032】
前記ガントリー3は、対象となるトンネル2の路面21上に互いに所定間隔を有する一対が進行方向に所定長さを有して敷設されている走行レール22,22上を駆動車輪41および受動車輪42により移動および停止可能な一対の走行フレーム4,4と、前記走行フレーム4,4から立設し前記トンネル2の進行方向に対し略直行方向に向けて配置された一対のアーチ状の横行フレーム5,5と、前記横行フレーム5,5の外側に沿って横行可能に配置した切削フレーム6とを備え、前記トンネル2の進行方向に移動および停止可能に配置される。
【0033】
前記回転式切削機7は、前記横行フレーム5,5に沿って移動可能であり、外周面71に切削爪72を備えた円筒状の切削ドラム73を有して前記切削ドラム73の回転軸74を前記トンネル2の進行方向に向けて配置される。
【0034】
前記横行フレーム5,5を立設した走行フレーム4,4には、例えば、発電機43,油圧ユニット44,動力および通信に使用される各種の制御盤45,前記駆動車輪41を駆動するための走行駆動装置46などの本実施の形態である覆工切削装置1に使用される各種の動力機器および制御機器の動力源および制御装置が搭載されており、覆工切削装置1は外部の電源などの駆動源を確保しなくても自力で作動可能とされている。
【0035】
そして、前記走行フレーム4,4は、前記走行駆動装置46により駆動車輪41を駆動させることで前記走行レール22,22上を前進または後退して間欠的に移動可能であり、加えて、走行フレーム4,4に備えた各アウトリガ47により停車時および作業時には走行フレーム4,4の位置を固定して安全を図ることができる。
【0036】
本実施の形態における横行フレーム5,5は、正面がアーチ状であり前記トンネルの進行方向に対し略直交方向に向けてトンネル2の内壁面24に沿って所定の間隔を隔てて前記一対の走行フレーム4,4に掛けて立設された一対の横行フレーム5,5である。
【0037】
尚、本実施の形態では、正面がアーチ状の横行フレーム5,5の径の曲率はトンネル2の内壁面24の正面形状に沿わせた形状であると好ましい。
【0038】
更にまた、前記横行フレーム5,5間には、その外側に沿って切削フレーム6が横行可能に架設されている。
【0039】
より詳細に説明すると、各横行フレーム5,5の内側面に沿って備えられて各横行フレーム5,5の下面に突出しているガイド部材51,51と前記切削フレーム6の両端に備えられたガイド部材61,61に形成したガイド溝62とがオイルレスブッシュを介して嵌装されており横行フレーム5,5に沿って前記切削フレーム6が横行可能に保持されているとともに、各横行フレーム5,5の外側面に沿って形成したラック52,52に横行駆動装置63・・63の各駆動軸に軸着したピニオンギヤ64を噛合させて各横行フレーム5,5の両下端部にわたって横行可能に設置されている。
【0040】
殊に、本実施の形態では、切削フレーム6は両端に配置した横行フレーム5,5をガイドするための前記ガイド部材61,61との間にスペーサー65,65が配置されており、このスペーサー65,65により横行フレーム5,5に対する切削フレームの高さ位置を変更して取り付けることにより多少異なる断面形状を有するトンネルの内壁面に対しても横行フレーム5,5を変更することなく対応可能としている。
【0041】
そして、本実施の形態は、前記横行フレーム5,5を横行する切削フレーム6に、外周面71に多数の切削爪72を備えた円筒状の切削ドラム73を有する回転式切削機7が、前記切削ドラム73の両端を支持されて備えられている。
【0042】
この回転式切削機7は基本的に切削ドラム73の回転軸74,74を切削フレーム6に対して平行に且つトンネルの進行方向に向けて配置されており、前記回転軸74,74を例えば油圧モータ76と減速機77により駆動し、特に、伸縮装置66,66が備えられていて、切削ドラム73の回転軸74,74がトンネル2における内壁面24の進行方向に平行に切削フレーム6に設置することにより切削ドラム73についての水平方向の調整が不要で、所望の切削深さに応じて切削フレーム6からの高さを調節可能とされている。
【0043】
また、本実施の形態は、回転式切削機7の切削ドラム73の軸線方向の中央位置が前記切削フレーム6の架設方向の中央位置に合致させて配置されており、この場合には切削ドラムの切削爪72の外周面位置(切削面位置)をトンネルの内壁面における所定の切削位置に容易に調整可能である。
【0044】
更に、本実施の形態は、前記ガントリー3の正面および背面にアーチ形のスクリーンを有する防塵飛散防止機構33,33が配置されており、切削作業時に切削ドラムから生じる切削屑などの粉塵を飛散させずに前記ガントリー3付近に集塵することができる。
【0045】
また、図7に示すように、前記ガントリー3の内側(前記横行フレーム5,5の内側)には切削ズリ落下防止板34が付設されているとともに、前記切削フレーム6に前記切削ズリ落下防止板34に落下した切削ズリを掻き落とすスクレーパ35,35が設置されており、前記切削ドラム7により生じる切削ズリが前記横行フレーム5,5の下方にあたる前記トンネル2の路面21に飛散することが無く、更に、切削ズリ落下防止板34に落下した切削ズリを前記スクレーパ35,35により掻き落とすことで切削ズリが切削ズリ落下防止板34上に堆積することを防止する。
【0046】
更にまた、本実施の形態では、前記切削フレーム6(または回転式切削機7)に前記切削するトンネル2の内壁面24との距離を測る例えば赤外線やレーザー光線などの光学式の測定器(図示せず)が設置されている。
【0047】
以上の構成を有する本実施の形態であるトンネル内壁面の覆工切削装置1は、対象となるトンネル2の入口から路面21上に敷設した走行レール22を走行するガントリー3を切削作業を行う所定の内壁面24に近接させて回転式切削機7の切削ドラム73が合致する位置に停止させ、アウトリガ47を作動させてガントリー3を所定位置に固定することにより、ガントリー3の内側に車両の通行を可能にする車両の通行空間23を設けるとともに外側におけるトンネル2の内壁面24との間に所定の切削作業の作業空間25を有しており、前述のように車両の通行を遮断することなく切削作業を行うことができる。
【0048】
尚、本実施の形態において、前記車両の通行空間23に従来のシェルター(防護工)32を設けてもよく、この場合にはより安全に車両の通行を確保することができるが、必ずしも必要とはしない。
【0049】
殊に、本実施の形態である覆工切削装置1は、前述のようにガントリー3の正面および背面にアーチ形のスクリーンを有する防塵飛散防止機構33,33が配置されているとともに、ガントリー3の内側には切削ズリ落下防止板34が付設されていることで、作業空間25と通行空間23とを確実に分断できるので従来の重量を有するシェルター(防護工)を設ける必要がないので、装置全体として部品の削減と軽量化が図れるとともに廉価に提供可能である。
【0050】
尚、前記防塵飛散防止機構33はスクリーン(布状のもの)に限らず、板状のものであっても適用可能であるが、本実施の形態のようにスクリーンを用いることによって柔軟に変形可能であり防塵飛散防止の効果が高まるため特に望ましい。
【0051】
そして、次に、前記トンネル2の内壁面24における覆工箇所に配置した回転式切削機7の油圧モータ76および減速機77により切削ドラム73を所望の回転速度で回転させるとともに、切削フレーム6に設置した切削ドラム73に取付られた伸縮装置66,66により切削ドラム73を切削フレーム6に対して平行状態で且つ垂直方向に上昇させて前記トンネル2の内壁面24に押し付けることで覆工部分を切削するものである。
【0052】
前記伸縮装置66は、本実施の形態においてはプレート67と、シリンダ68と、ガイド69とを用いており(図5参照)、前記シリンダ68および前記ガイド69は、前記プレート67と前記切削フレーム6の間にそれぞれ介装されている。尚、シリンダとしては例えば油圧式や電動式のシリンダを用いることができる。
【0053】
この時、本実施の形態では、前記伸縮装置66に内蔵されたセンサ(図示せず)によって伸縮量を調整可能であるとともに、切削フレーム6または回転式切削機7に前記切削するトンネル2の内壁面24との距離を測る測定器(図示せず)が設置されているので測定器により測定した切削フレーム6または回転式切削機7とトンネル2の内壁面24との距離を保つように切削ドラム73の垂直位置を調節して所定の深さに均一な切削を行うことが可能である。
【0054】
また、本実施の形態では、横行フレーム5,5上を横行する切削フレーム6を駆動させるための電動モータである各横行駆動装置63をインバータ制御によって駆動することでトンネル2の内壁面24の硬さに合わせて切削速度を調整可能であり、汎用性を向上させることができる。
【0055】
尚、前記切削ドラム73により切削された切削ズリは前記切削ズリ落下防止板34に落下したあとに前記スクレーパ35,35によって掻き落されて前記ガントリー3の両側下端に堆積するので纏めて破棄することができるので路面21に飛散して交通に影響を与える心配がない。
【0056】
加えて、前記ガントリー3の正面および背面の少なくとも外周から所定の幅を有してアーチ形の防塵飛散防止機構33が配置されているので切削作業時に切削ドラム73の切削時に生じる切削屑などの粉塵はガントリー3を超えてその内部に位置する路面21上に飛散せずにトンネル2の内壁面24とガントリー3の間の封鎖された路面21上に集塵させることができる。
【0057】
このように、本実施の形態は、切削ドラム73における回転軸74,74の両端が、横行フレーム5,5に沿って走行する切削フレーム6に両持ち式に軸支されているので、切削ドラム73でトンネル2の内壁面24を切削する際に切削ドラム73に切削フレーム6方向の荷重が掛かっても、従来の図10に示した片持ち式の切削ドラム71aのように回転軸が歪むことが無いので所定の深さと幅に正確に且つ迅速に切削することができ、また、従来の片持ち式の切削ドラムに比べて回転軸74,74への切削荷重による負担が少ないので耐久性にも優れており、回転式切削機7を切削ドラム73の回転軸74,74がトンネル2における内壁面24の進行方向に平行に切削フレーム6に設置することにより切削ドラム73についての水平方向の調整が不要で、殊に、伸縮装置66,66により予め切削ドラム73による切削深さを調整することが可能である。また、切削深さを調整することで一度に切削する切削量を変更することが可能であり、更にトンネル2の内壁面24の硬さに合わせた調整も容易である。
【0058】
更にまた、本実施の形態は、切削ドラム73の長さ方向の中心が切削フレーム6の長さ方向の中心に合わせて設置されているので均一の厚さに切削が可能であり、切削ドラム73が切削フレーム6から突出しないのでガントリー3の長さも少なくて済む。
【0059】
そして、本実施の形態は、前記回転駆動させた切削ドラム73を設置した切削フレーム6を従来例と同様に横行駆動装置63によりラック52とピニオンギヤ64とにより横行フレーム5,5に沿って路面21に接する両端迄移動させることによりトンネル2の内周にわたって所定深さおよび所定幅の切削帯を形成し、順次、切削装置1を走行レール22,22に沿って切削ドラム73の長さ分だけ移動させて切削作業を繰り返すことでトンネル2の内壁面24に形成されている古くなった覆工部分を切削して従来の工法により新たに内壁面を施工する(図示せず)。
【0060】
尚、本実施の形態における切削幅は切削ドラム73の幅に依存するので幅の異なる切削ドラムに換装することで切削幅を変更可能であり、1サイクルの切削量を変更することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、切削フレーム6は両端に配置した横行フレーム5,5をガイドするための前記ガイド部材61,61との間にスペーサー65,65が配置されており、前記スペーサー65,65は交換可能である。
【0062】
そして、前記スペーサー65,65と前記切削フレーム6との取付手段は円形の部品とボルト留めによるものであって(図4,5参照)、取り付け角度および取り付け位置が調整可能であることで、多少異なる断面を有するトンネル1の内壁面24の断面形状に対しても横行フレーム5,5を変更することなく対応可能としている。
【0063】
図8は回転式切削機7を切削フレーム6に対して回転させた状態を示すものであり、本実施の形態において回転式切削機7の切削ドラム73は切削フレーム6に対して回転可能であり取り付け角度の調整が可能であるため、この図に示すように前記横行フレーム5,5の下端よりもさらに下方に前記回転式切削機7の切削ドラム73を位置させることができる。
【0064】
このように、前記スペーサー65および前記伸縮装置66により切削ドラム73の切削フレーム6に対する垂直方向の距離が伸縮可能であることと、切削ドラム73の向きが変更可能であることの組み合わせによって、対応できる切削面が増加して汎用性が向上するが、殊に、本実施の形態では前記図8に示すように、トンネル2の内壁面24における両下端部から側溝(水路)を撤去した路面21に掛けても切削することが可能である点で優れている。
【0065】
尚、本発明における切削ドラム73の回転軸の向きは前記図1乃至図8に示した実施の形態のようにトンネル2の進行方向に向けられることが望ましいが、切削ドラムの回転軸の向きをトンネルの進行方向と直交する方向に向けられるものとしてもよい(図示せず)。
【符号の説明】
【0066】
1 覆工切削装置、2 トンネル、3 ガントリー、4 走行フレーム、5 横行フレーム、6 切削フレーム、7 回転式切削機、21 路面、22 走行レール、23 通行空間、24 内壁面、25 作業空間、32 シェルター(防護工)、33 防塵飛散防止機構、34 切削ズリ落下防止板、35 スクレーパ、41 駆動車輪、42 受動車輪、43 発電機、44 油圧ユニット、45 制御盤、46 走行駆動装置、47 アウトリガ、51 ガイド部材、52 ラック、61 ガイド部材、62 ガイド溝、63 横行駆動装置、64 ピニオンギヤ、65 スペーサー、66 伸縮装置、67 プレート、68 シリンダ、69 ガイド、71 外周面、72 切削爪、73 切削ドラム、74 回転軸、75 油圧モータ、76 減速機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10