(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159942
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】計測装置及び、計測方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231026BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G01L5/00 A
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069881
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】511264766
【氏名又は名称】株式会社エス・ケー・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】古川 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】中岡 健一
(72)【発明者】
【氏名】出口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】辻村 幸治
【テーマコード(参考)】
2D155
2F051
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA08
2D155KA00
2D155KB04
2D155LA13
2F051AA07
2F051AB09
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、施工方法を変更することなく、中空構造物の中空部内にセンサを容易に定置させる。
【解決手段】中空部に固化材が充填される中空構造物5の状態を計測する計測装置10であって、センサ40,50,60を保持する保持部材22,27,28,29と、保持部材(22,27,28,29を中空部の内周面に移動自在に支持する支持部材23,24,25,26と、中空部内に固化材が充填されるよりも前に、保持部材22,27,28,29及び支持部材23,24,25,26を中空部内の所定位置に押し入れる押し込み部材30と、中空部に固化材が充填されて保持部材22,27,28,29及び支持部材23,24,25,26が中空部内の所定位置に定置された後、センサ40,50,60の検出結果に基づいて中空構造物5の状態を取得する状態取得部80とを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部に固化材が充填される中空構造物の状態を計測する計測装置であって、
センサを保持するとともに、前記中空部内に挿入される保持部材と、
前記中空部内に挿入される前記保持部材を前記中空部の内周面に移動自在に支持する支持部材と、
前記中空部内に前記固化材が充填されるよりも前に、前記支持部材に支持された前記保持部材を前記中空部内の所定位置に押し入れる押し込み部材と、
前記中空部に前記固化材が充填されて前記保持部材及び前記支持部材が前記中空部内の前記所定位置に定置された後、前記センサの検出結果に基づいて前記中空構造物の状態を取得する状態取得部と、を備える
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記保持部材は、
前記中空部に充填される前記固化材を流通させる円環状に形成されるとともに、円環内部にセンサを保持可能な円環部材と、
前記円環部材から径方向外側に延びるとともに、先端部にセンサを保持可能なロッドと、を備える
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記保持部材から前記中空部の内周面に向けて延びる少なくとも一対の脚部と、
前記脚部の先端に設けられるとともに、前記中空部の内周面を転動可能な転動体と、を備える
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記押し込み部材は、弾性変形可能な長尺状の板材で形成される
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記センサは、一対のひずみ計を含み、
前記保持部材は、前記中空構造物に作用する曲げ荷重により前記中空部内の前記固化材が圧縮方向の応力を受ける部分に一方のひずみ計を保持するとともに、前記曲げ荷重により前記中空部内の前記固化材が引張方向の応力を受ける部分に他方のひずみ計を保持し、
前記状態取得部は、一対の前記ひずみ計の検出結果に基づき、前記中空構造物に作用する軸方向応力及び、又は曲げモーメントを演算する
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項6】
前記センサは、有効応力計を含み、
前記保持部材は、前記有効応力計の軸心が前記中空部の軸心と一致するように前記有効応力計を保持し、
前記状態取得部は、前記有効応力計の検出結果に基づき、前記中空部内の前記固化材に作用する軸方向応力を取得する
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項7】
前記中空構造物がトンネルの覆工コンクリートの下部地山に構築される鋼管複合インバートを構成する鋼管であり、
前記固化材が前記鋼管内に充填されるグラウト材である
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項8】
中空部に固化材が充填される中空構造物の状態を計測する計測方法であって、
センサを保持した保持部材を支持部材によって前記中空部の内周面に移動自在に支持するとともに、前記中空部内に前記固化材が充填されるよりも前に、前記支持部材に支持された前記保持部材を押し込み部材によって前記中空部内の所定位置に押し入れ、
前記中空部に前記固化材が充填されて前記保持部材及び前記支持部材が前記中空部内の前記所定位置に定置された後、前記センサの検出結果に基づいて前記中空構造物の状態を取得する
ことを特徴とする計測方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置及び、計測方法に関し、特に、中空部に固化材が充填される中空構造物(永久構造物)のモニタリングに好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの周辺地山や坑道支保工に作用する応力等を計測するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、計測パイプの外周面にひずみセンサを取り付けるとともに、該計測パイプ内に水を充填し、切羽前方地山に穿孔した計測孔に計測パイプを挿入した後、計測パイプの外周面と計測孔の内周面との隙間に裏込材を充填固化させることにより計測を行う技術が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、計測対象物の周辺岩盤や計測対象物の内部に走行管を設けるとともに、センサを搭載した移動式のモニタリング装置を走行管の内部に配置し、モニタリング装置を走行管内で移動させながら、あるいは走行管内の所定位置に定置させることにより計測を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-252370号公報
【特許文献2】特開2003-028991公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
山岳トンネルにおいては、トンネルの安定性や内空断面を確保するためのコンクリートインバートが設置される場合がある。コンクリートインバートの施工には、下部地山の掘削に伴い車両の通行止めが必要となる。このため、道路幅員方向の中央付近では掘削を行わず、側方に掘削した作業スペースから鋼管を打設することにより車線規制のみで施工が可能な鋼管複合インバートが提案されている。このような鋼管複合インバートの保守管理には、鋼管や鋼管内に充填したグラウト材に作用する応力の長期的なモニタリングが重要となる。
【0007】
上記特許文献1記載の技術では、ひずみセンサをパイプの外周面に取り付けている。このため、鋼管複合インバートのような、鋼管をロータリーパーカッション等によって地山に直接打設する構造物に適用すると、鋼管を打設する際に外周面のひずみセンサが破損してしまう課題がある。また、ひずみセンサの取り付け位置は、パイプの外周面に限られるため、センサの取り付け位置を計測目的等に応じてパイプ径方向(断面方向)に適宜に調整できない課題もある。
【0008】
上記特許文献2記載の技術では、計測対象物の周辺地山にモニタリング装置を走行させるための走行管を埋設している。このため、鋼管複合インバートに適用する場合は、鋼管の周辺地山に走行管を別途打設する必要があり、施工方法を変更しなければならない課題がある。また、モニタリング装置を鋼管内に直接挿入することも考えられるが、モニタリング装置の両端には、大径の移動安定装置が取り付けられている。このため、グラウト材を充填する際に、移動安定装置が充填の障害になる課題もある。
【0009】
本開示の技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、固化材が充填される中空構造物の中空部内に、施工方法を変更することなくセンサを容易に定置させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の計測装置は、
中空部に固化材が充填される中空構造物(5)の状態を計測する計測装置(10)であって、
センサ(40,50,60)を保持するとともに、前記中空部内に挿入される保持部材(22,27,28,29)と、
前記中空部内に挿入される前記保持部材(22,27,28,29)を前記中空部の内周面に移動自在に支持する支持部材(23,24,25,26)と、
前記中空部内に前記固化材が充填されるよりも前に、前記支持部材(23,24,25,26)に支持された前記保持部材(22,27,28,29)を前記中空部内の所定位置に押し入れる押し込み部材(30)と、
前記中空部に前記固化材が充填されて前記保持部材(22,27,28,29)及び前記支持部材(23,24,25,26)が前記中空部内の前記所定位置に定置された後、前記センサ(40,50,60)の検出結果に基づいて前記中空構造物(5)の状態を取得する状態取得部(80)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本開示の方法は、
中空部に固化材が充填される中空構造物(5)の状態を計測する計測方法であって、
センサ(40,50,60)を保持した保持部材(22,27,28,29)を支持部材(23,24,25,26)によって前記中空部の内周面に移動自在に支持するとともに、前記中空部内に前記固化材が充填されるよりも前に、前記支持部材(23,24,25,26)に支持された前記保持部材(22,27,28,29)を押し込み部材(30)によって前記中空部内の所定位置に押し入れ、
前記中空部に前記固化材が充填されて前記保持部材(22,27,28,29)及び前記支持部材(23,24,25,26)が前記中空部内の前記所定位置に定置された後、前記センサ(40,50,60)の検出結果に基づいて前記中空構造物(5)の状態を取得することを特徴とする。
【0012】
以上の構成によれば、簡素な構成で、固化材が充填される中空構造物(5)の中空部内に、施工方法を変更することなくセンサ(40,50,60)を容易に定置させることができる。また、施工方法を変更する必要がないことから、工期の遅延や工費の増加を招くことなく、中空構造物(5)の長期的なモニタリングを実現することが可能になる。
【0013】
本開示の他の態様において、
前記保持部材(22,27,28,29)は、
前記中空部に充填される前記固化材を流通させる円環状に形成されるとともに、円環内部にセンサ(40)を保持可能な円環部材(22)と、
前記円環部材(22)から径方向外側に延びるとともに、先端部にセンサ(50,60)を保持可能なロッド(28,29)と、を備えることが好ましい。
【0014】
本態様によれば、保持部材(22,27,28,29)が中空構造物(5)の内空断面積に与える影響を小さく抑えられることができ、固化材の充填が妨げられることを効果的に防止することが可能になる。
【0015】
本開示の他の態様において、
前記支持部材(23,24,25,26)は、
前記保持部材(22)から前記中空部の内周面に向けて延びる少なくとも一対の脚部(25)と、
前記脚部(25)の先端に設けられるとともに、前記中空部の内周面を転動可能な転動体(26)と、を備えることが好ましい。
【0016】
本態様によれば、センサ(40,50,60)を保持した保持部材(22,27,28,29)を、転動体(26)によって中空構造物(5)の中空部内の所望位置まで容易に移動させることが可能になる。
【0017】
本開示の他の態様において、
前記押し込み部材(30)は、弾性変形可能な長尺状の板材で形成されることが好ましい。
【0018】
本態様によれば、例えば、挿入作業を行うスペースが狭い場合であっても、押し込みプレート30を変形させることにより、スペース上の制約を受けることなく挿入作業を容易に行うことが可能になる。
【0019】
本開示の他の態様において、
前記センサ(40,50,60)は、一対のひずみ計(50,60)を含み、
前記保持部材(22,28,29)は、前記中空構造物(5)に作用する曲げ荷重により前記中空部内の前記固化材が圧縮方向の応力を受ける部分に一方のひずみ計(50)を保持するとともに、前記曲げ荷重により前記中空部内の前記固化材が引張方向の応力を受ける部分に他方のひずみ計(60)を保持し、
前記状態取得部(80,82)は、一対の前記ひずみ計(50,60)の検出結果に基づき、前記中空構造物(5)に作用する軸方向応力及び、又は曲げモーメントを演算することが好ましい。
【0020】
本態様によれば、中空構造物(5)に作用する軸方向応力及び、又は曲げモーメントを、中空構造物(5)の中空部内に定置した一対のひずみ計(50,60)の検出結果に基づいて効果的に演算することが可能になる。
【0021】
本開示の他の態様において、
前記センサ(40,50,60)は、有効応力計(40)を含み、
前記保持部材(22,27)は、前記有効応力計(40)の軸心が前記中空部の軸心と一致するように前記有効応力計(40)を保持し、
前記状態取得部(80,81)は、前記有効応力計(40)の検出結果に基づき、前記中空部内の前記固化材に作用する軸方向応力を取得することが好ましい。
【0022】
本態様によれば、中空構造物(5)の中空部に充填された固化材に作用する軸方向応力を、中空構造物(5)の中空部内に定置した有効応力計(40)の検出結果に基づいて高精度に取得することが可能になる。
【0023】
本開示の他の態様において、
前記中空構造物(5)がトンネル(T)の覆工コンクリート(LC)の下部地山に構築される鋼管複合インバート(1)を構成する鋼管(5)であり、
前記固化材が前記鋼管(5)内に充填されるグラウト材であることが好ましい。
【0024】
本態様によれば、簡素な構成で、鋼管複合インバート(1)の鋼管(5)及び、鋼管(5)内に充填されたグラウト材(M)に作用する応力の長期的なモニタリングを実現することが可能になる。
【0025】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0026】
本開示の計測装置及び、計測方法によれば、簡素な構成で、中空構造物の中空部内に、施工方法を変更することなくセンサを容易に定置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る計測装置を設置した鋼管複合インバートの模式的な断面図である。
【
図2】本実施形態に係る計測装置を示す模式的な全体構成図である。
【
図3】鋼管内に挿入された計測部を管軸方向から視た模式図である。
【
図4】鋼管内に挿入された計測部を管径方向から視た模式図である。
【
図5】計測部を鋼管内に定置する位置を説明する模式図である。
【
図6】第1係数及び、第2係数の設定に用いる試験装置の概略構成図である
【
図7】グラウト材の軸ひずみと、計算された鋼管の軸ひずみとの関係を示す図の一例である。
【
図8】グラウト材の曲げひずみと、計算された鋼管の曲げひずみとの関係を示す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係る計測装置及び計測方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0029】
[設置例]
図1は、本実施形態に係る計測装置10を設置する鋼管複合インバート1の模式的な断面図である。鋼管複合インバート自体は周知であるため、以下、簡単に説明する。
【0030】
図1に示すように、鋼管複合インバート1は、トンネルTの覆工コンクリートLCの下部地山Gに構築される。鋼管複合インバート1を施工する際は、まず、
図1(A)に示すように、覆工コンクリートLCの一方の側壁(図示例では左側壁)の下端に足付けコンクリートCLを打設するとともに、足付けコンクリートCL側の下部地山Gに作業スペース2Lを掘削する。作業スペース2Lを掘削したならば、該作業スペース2LからトンネルTの中央部に向けてトンネル軸方向と直交する方向に円筒状の鋼管5を不図示のロータリーパーカッション等で打設する。鋼管5は、複数本が上下に互い違い、且つ、トンネル軸方向に所定間隔を置いて略平行となるように打設される。鋼管5は、本開示の中空構造物の一例である。鋼管5を打設したならば、鋼管5の基端側から鋼管5内にグラウト材Mを充填する。グラウト材Mは、本開示の固化材の一例である。なお、図示の関係上、各鋼管5は、それぞれ1本の円筒管として描かれているが、実際には複数(例えば、5~6個)の円筒管を順次打設することにより、1本の鋼管5とされる。グラウト材Mは、1施工単位ごとに円筒管に充填することが望ましい。
【0031】
グラウト材Mを充填したならば、
図1(B)に示すように、足付けコンクリートCLと鋼管5の基端とをコンクリート製のインバート4Lで接続して埋め戻す。また、覆工コンクリートLCの他方の側壁(図示例では右側壁)の下端に足付けコンクリートCRを打設するとともに、足付けコンクリートCR側の下部地山Gに作業スペース2Rを掘削する。
【0032】
作業スペース2R内に鋼管5の先端を露出させたならば、
図1(C)に示すように、足付けコンクリートCRと鋼管5の先端とをコンクリート製のインバート4Rで接続して埋め戻すことにより、鋼管複合インバート1の施工が完了する。
【0033】
このようにして構築される鋼管複合インバート1において、鋼管5の両端はインバート4L,4Rに根入れされて固定され、その他の部分は周囲の地山Gに接している。地山Gによる後荷重が覆工コンクリートLCに作用すると、鋼管5には軸応力が発生する。また、盤膨れによる荷重が覆工コンクリートLCに作用すると、鋼管5には曲げモーメントが発生する。このため、鋼管複合インバート1の保守管理を適切に行うには、鋼管5に作用する応力や、鋼管5内に充填したグラウト材Mに作用する応力を長期的にモニタリングする必要がある。
【0034】
本実施形態の計測装置10は、計測部20を鋼管5内の所定位置(例えば、鋼管5の先端側と基端側の計2カ所)に埋設することにより、鋼管5及びグラウト材Mに作用する応力の長期的なモニタリングを実現するものである。計測部20は、鋼管5の基端が作業スペース2Lに露出する
図1(A)に示す状態で、鋼管5の基端側から挿入される。計測部20を鋼管5内に挿入した後、鋼管5内にグラウト材Mを充填することにより、計測部20は鋼管5内の所定位置に定置される。鋼管5やグラウト材Mに作用する応力の計測は、グラウト材Mの充填後から開始することができる。これにより、鋼管5の両端がインバート4L,4Rで固定されていない施工段階にあっても、地盤に変位が発生した場合には、応力を効果的に計測することが可能になる。以下、計測装置10の詳細構成について説明する。
【0035】
[計測装置]
図2は、本実施形態に係る計測装置10を示す模式的な全体構成図である。計測装置10は、計測部20と、押し込みプレート30と、演算処理装置80とを備えている。計測部20には、有効応力計40、上側ひずみ計50及び、下側ひずみ計60が設けられる。なお、以下では、有効応力計40、上側ひずみ計50及び、下側ひずみ計60は、これらを単に「センサ40,50,60」と称する場合もある。センサ40,50,60の各ケーブルは、演算処理装置80に接続されており、これらセンサ40,50,60の検出結果が所定の周期で演算処理装置80に送信されるようになっている。
【0036】
図3は、鋼管5内に挿入された計測部20を管軸方向から視た模式図であり、
図4は、鋼管5内に挿入された計測部20を管径方向から視た模式図である。
【0037】
図3及び、
図4に示すように、計測部20は、鋼管5内を管軸方向に移動自在な移動治具21を備えている。
【0038】
移動治具21は、鋼管5の内径よりも小径の円環部材22を有する。円環部材22の径は特に限定されないが、鋼管5内に充填されるグラウト材の流動性に影響を与えない範囲で設定すればよい。本実施形態において、鋼管5の管径は、例えば約165mmであり、円環部材22の外径は、例えば約60mmであり、円環部材22の内径は、例えば約57mmである。なお、以下では、説明の便宜上、円環部材22の軸心C(
図3参照)と直交する水平方向の仮想線を「横線HL」、円環部材22の軸心Cと直交する鉛直方向の仮想線を「縦線VL」と称する。
【0039】
円環部材22には、一対の長板部材23,24が取り付けられる。長板部材23,24は、長手方向が円環部材22の軸心Cと略平行となるように、円環部材22の外周面に溶接、或は、ボルト等の締結具で固定されている。長板部材23,24は、円環部材22の横線HLよりも下側の部分に、縦線VLを挟んで対称に配置される。長板部材23,24の長手方向の両端には、円環部材22の径方向外側に向けて突出するキャスタ支持脚25がそれぞれ設けられている。キャスタ支持脚25の先端部には、全方向に転動可能なボールキャスタ26が取り付けられている。すなわち、円環部材22が、長板部材23,24、キャスタ支持脚25及び、ボールキャスタ26を介して鋼管5の内周面に移動自在に支持されるようになっている。
【0040】
本実施形態では、
図3に示すように、ボールキャスタ26の長さをL1、キャスタ支持脚25の長さをL2、長板部材23,24の厚みをT1、円環部材22の外半径をR1としたとき、これらを加算した総長は、鋼管5の内半径RSと略等しくなるように設定されている(L1+L2+T1+R1≒RS)。すなわち、計測部20を鋼管5内に挿入すると、円環部材22の軸心Cが鋼管5の軸心と略一致すように構成されている。
【0041】
円環部材22の下側内周面には、板状の台座27が溶接等で固定されている。台座27の上面には有効応力計40が結束バンド等によって取り付けられる。有効応力計40は、鋼管5内に充填されるグラウト材に作用する軸方向の応力を計測する。
【0042】
具体的には、
図4に示すように、有効応力計40は、両端開放型の角筒状のケース41を有する。ケース41内には、鋼管5内に充填されるグラウト材と同質、且つ、同材齢のグラウト材が注入される。ケース41の一方の開放端には、鋼管5内に充填されるグラウト材と固着するフランジ付きの連結体42が設けられている。また、ケース41の他方の開放端には、鋼管5内に充填されるグラウト材と固着するフランジ付きのロードセル43が設けられている。
【0043】
連結体42には、鋼管5内に充填されるグラウト材と固着するためのアンカー状の付着体44が取り付けられている。ロードセル43には、ケース41内に充填されるグラウト材と固着するためのアンカー状の付着体45が取り付けられている。ロードセル43のケーブル46は、好ましくは、押し込みプレート30に結束バンド等で固定されている。
【0044】
本実施形態では、
図3に示すように、台座27の下面と円環部材22の下側内周面との距離をL3、台座27の厚みをT2、ケース41の半径をR3としたとき、これらを加算した総長は円環部材22の内半径R2と略等しくなるように設定されている(L3+T2+R3≒R2)。すなわち、計測部20を鋼管5内に挿入すると、有効応力計40のケース41の軸心が鋼管5の軸心と略一致すように構成されている。
【0045】
円環部材22の外周面には、上側ロッド28及び、下側ロッド29が溶接、或は、ボルト等の締結具によって固定されている。上側ロッド28は、円環部材22の上側外周面から縦線VLに沿って上方に突出する。下側ロッド29は、円環部材22の下側外周面から縦線VLに沿って下方に突出する。上側ロッド28の先端部には、断面半円弧状の上側支持板28Aが溶接、或は、ボルト等の締結具によって固定されている。下側ロッド29の先端部には、断面半円弧状の下側支持板29Aが溶接、或は、ボルト等の締結具によって固定されている。
【0046】
上側支持板28Aには、上側ひずみ計50が結束バンド等によって取り付けられる。下側支持板29Aには、下側ひずみ計60が結束バンド等によって取り付けられる。なお、以下では、上側ひずみ計50及び、下側ひずみ計60は、特に区別する必要がない場合、それらを単に「ひずみ計50,60」とも称する。
【0047】
図4に示すように、ひずみ計50,60は、円柱状の本体部51,61と、本体部51,61内に設けられたひずみゲージ52,62と、本体部51,61の両端に設けられたフランジ53,63とを備えている。フランジ53,63は、鋼管5内に充填されるグラウト材Mと固着する。ひずみゲージ52,62のケーブル54,64は、好ましくは、押し込みプレート30に結束バンド等で固定されている。
【0048】
本実施形態では、
図3に示すように、ひずみ計50,60の本体部51,61(又はフランジ53,63)の直径をD1、支持板28A,29Aの厚みをT3、ロッド28,29の長さをL4、円環部材22の外半径をR1としたとき、これらを加算した総長は、鋼管5の内半径RSよりも僅かに短くなるように設定されている(D1+T3+L4+R1<RS)。すなわち、計測部20を鋼管5内に挿入すると、ひずみ計50,60と鋼管5の内周面との間に所定のクリアランスが確保できるように構成されている。クリアランスの具体的な寸法は特に限定されないが、骨材を含有するグラウト材が容易に流れ込むことができる数値を基準に設定すればよい。
【0049】
図2及び、
図3に示すように、押し込みプレート30は、長尺状の板材であって、円環部材22(又は、台座27)に固定される。押し込みプレート30は、鋼管5内を走行可能な移動治具21を鋼管5内の所定位置に挿入する際に用いられる。押し込みプレート30は、好ましくは、弾性変形可能なアルミニウム等の金属プレートで形成される。押し込みプレート30を弾性変形可能とすることで、例えば、作業スペース2R(
図1参照)から鋼管5内に計測部20を挿入する際は、押し込みプレート30を変形させることで、スペース上の制約を受けることなく計測部20を鋼管5内の所望位置まで容易に挿入することが可能になる。
【0050】
本実施形態において、計測部20は、
図5に示されるように、鋼管5の先端側と基端側の2カ所に定置される。先端側に定置される計測部20と、基端側に定置される計測部20とは、鋼管5内にグラウト材を充填する際に移動しないよう、押し込みプレート30によって互いに連結される。なお、計測部20を設置する箇所は、図示例の2カ所に限定されず、1カ所でもよく、或は、3カ所以上であってもよい。
【0051】
以上詳述した本実施形態の計測部20によれば、鋼管5内を移動自在な移動治具21にセンサ40,50,60を取り付けるとともに、移動治具21を押し込みプレート30によって鋼管5内に挿入し、鋼管5内にグラウト材を充填することにより、計測部20を鋼管5内の所望位置に容易に定置できるように構成されている。これにより、簡素な構成で、鋼管5やグラウト材に作用する応力の長期的なモニタリングを実現することができ、鋼管複合インバート1の保守管理を効果的に行うことが可能になる。
【0052】
また、計測部20は、鋼管複合インバート1の施工方法を変更することなく容易に設置できることから、計測部20の設置に伴う工期の遅延や工費の増加を効果的に抑えることも可能になる。
【0053】
また、移動治具21は、円環部材22、長板部材23,24、キャスタ支持脚25、ロッド28,29等で構成される簡素な構造とされており、鋼管5の内空断面積に与える影響を小さく抑えられるように構成されている。これにより、計測部20を鋼管5内に挿入した後も、グラウト材の流路を確実に確保できるようになり、グラウト材の充填が計測部20によって妨げられることを効果的に防止することも可能になる。
【0054】
また、センサ40,50,60の鋼管断面(径方向)に対する位置は、キャスタ支持脚25やロッド28,29を適宜の長さとすることにより調整することができる。すなわち、グラウト材に作用する軸方向応力を直接的に計測する有効応力計40は、鋼管5の軸心と略一致するように正確に配置でき、鋼管5に作用する軸方向応力や曲げモーメントを間接的に計測するひずみ計50,60は、鋼管5の内周面近傍に正確に配置できるように構成されている。これにより、センサ40,50,60の検出結果に基づいた応力の演算精度を効果的に担保することが可能になる。
【0055】
また、パイプの外周面にセンサを直接取り付ける特許文献1記載の構造では、パイプの挿入時にセンサが破損しないよう、パイプよりも大径の計測孔を先行削孔しなければならないが、ロータリーパーカッションで削孔できる孔径には限界がある。このため、従来技術では、管径が比較的に大きい鋼管に対応するには、推進機等の大型の削孔装置を用いて大きな計測孔を先行削孔しなければならず、工費が嵩む課題がある。これに対し、本実施形態では、センサ40,50,60を鋼管5の外周面に取り付ける必要がないため、鋼管5をロータリーパーカッションの削孔ロッドとして直接打設することができ、設置工程数の増加を確実に抑えることが可能になる。また、管径が比較的大きい鋼管に対しても、推進機等の大型の削孔装置を用いることなく効果的に対応することも可能になる。
【0056】
[演算処理]
再び
図2を参照し、本実施形態に係る計測装置10が備える演算処理装置80の詳細について説明する。
【0057】
演算処理装置80は、CPUなどの処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力用のインターフェイス、補助記憶装置などを備えており、パーソナルコンピュータやサーバ等の情報処理装置によって構成されている。演算処理装置80は、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することにより、グラウト材応力取得部81及び、鋼管応力演算部82を備える装置として機能する。また、演算処理装置80には、ディスプレイなどの表示部90、キーボードやマウスなどの入力部95がそれぞれ接続されている。なお、演算処理装置80は、タブレット端末やスマートフォンなどの情報処理装置によって構成することもできる。
【0058】
グラウト材応力取得部81は、有効応力計40の検出結果に基づき、鋼管5内に充填されたグラウト材に作用する軸方向応力(以下、グラウト軸力Ngと称する)を所定の周期で取得する。グラウト材応力取得部81は、取得したグラウト軸力Ngを入力部95の操作に応じて表示部90に表示、あるいは、不図示の印刷機などからレポートとして出力する。
【0059】
鋼管応力演算部82は、上側ひずみ計50及び、下側ひずみ計60の検出結果に基づき、鋼管5に作用する軸方向応力(以下、鋼管軸力Nsと称する)及び、鋼管5に作用する曲げモーメント(以下、鋼管曲げモーメントMsと称する)を所定の周期で演算する。具体的には、鋼管応力演算部82は、以下の数式(1)、(2)に従って鋼管軸力Ns及び、鋼管曲げモーメントMsを演算する。
Ns=a1・εnc(AS・ES+AC・EC)・・・・・・(1)
Ms=a2・εmc/yS(ES・IS+EC・IC)・・・・(2)
【0060】
数式(1)及び(2)において、ESは、鋼管5の弾性係数、ECは、鋼管5内に充填されたグラウト材の弾性係数である。また、数式(1)において、ASは、鋼管5の断面積、ACは、鋼管5内に充填されたグラウト材の断面積、εncは、鋼管5内に充填されたグラウト材の軸ひずみ、a1は、第1係数である。また。数式(2)において、ISは、鋼管5の断面2次モーメント、ICは、鋼管5内に充填されたグラウト材の断面2次モーメント、ySは、鋼管5の半径、εmcは、鋼管5内に充填されたグラウト材の曲げひずみ、a2は、第2係数である。
【0061】
グラウト材の軸ひずみεnc及び、曲げひずみεmcは、以下の数式(3),(4)に基づいて演算することができる。
εnc=1/2(εuc+εdc)・・・・・(3)
εmc=1/2(εuc-εdc)・・・・・(4)
【0062】
数式(3)及び(4)において、εucは、上側ひずみ計50の検出結果(計測値)、εdcは、下側ひずみ計60の検出結果(計測値)である。鋼管応力演算部82は、上記数式(1)~(4)に基づいて演算した鋼管軸力Ns及び鋼管曲げモーメントMsを入力部95の操作に応じて表示部90に表示、あるいは、不図示の印刷機などからレポートとして出力する。
【0063】
[係数の設定]
次に、上記数式(1)に用いる第1係数a1及び、上記数式(2)に用いる第2係数a2の設定手順について説明する。
【0064】
図6は、第1係数a
1及び、第2係数a
2の設定に用いる試験装置100の概略構成図である。鋼管5(試験体)は、両端を固定用モルタルMFによって固定する。鋼管5内には、本実施形態に係る計測装置10の計測部20を挿入し、現場で用いるグラウト材と同質のグラウト材Mを充填する。
【0065】
計測部20は、鋼管5内の所定位置(図示例では左端側)に定置する。ここで、計測部20を定置する位置は、実際の現場で鋼管5内に計測部20を定置する位置と略同じ位置にすることが望ましい。
【0066】
鋼管5の外周面のうち、上側ひずみ計50の直上に位置する部分には、上側ひずみゲージ150を貼り付ける。また、鋼管5の外周面のうち、下側ひずみ計60の直下に位置する部分には、下側ひずみゲージ160を貼り付ける。鋼管5の長手方向の中間位置には、鋼管5に上方から曲げ荷重を付与するための曲げ荷重用ジャッキ120を配置する。また、固定用モルタルMFには、鋼管5に軸荷重を付与するための軸荷重用ジャッキ130を配置する。ロードセル121,131は、各ジャック120,130から付与する荷重をそれぞれ検出する。
【0067】
以上のように構成された試験装置100を用い、鋼管5及び内部のグラウト材に対して各ジャッキ120,130から曲げ荷重及び軸荷重を付与し、上側ひずみ計50、下側ひずみ計60、上側ひずみゲージ150、下側ひずみゲージ160によって曲げひずみや軸ひずみを計測することにより係数a1,a2を設定する。以下、係数a1,a2の具体的な設定手順を説明する。
【0068】
鋼管5の軸ひずみεns及び、鋼管5内のグラウト材の軸ひずみεncは、以下の数式(5),(6)で表すことができる。
εns=1/2(εus+εds)・・・・・(5)
εnc=1/2(εuc+εdc)・・・・・(6)
数式(5)において、εusは、上側ひずみゲージ150の検出結果(計測値)であり、εdsは、下側ひずみゲージ160の検出結果(計測値)である。
【0069】
また、鋼管5の曲げひずみεms及び、鋼管5内のグラウト材の曲げひずみεmcは、以下の数式(7),(8)で表すことができる。
εms=1/2(εus-εds)・・・・・(7)
εmc=1/2(εuc-εdc)・・・・・(8)
【0070】
鋼管5の軸ひずみεns及び、鋼管5内のグラウト材の軸ひずみεncは、軸ひずみεncに第1係数a1を乗算する以下の数式(9)によって近似することができる。また、鋼管5の曲げひずみεms及び、鋼管5内のグラウト材の曲げひずみεmcは、曲げひずみεmcに第2係数a2を乗算する以下の数式(10)によって近似することができる。
εns≒a1・εnc・・・・・(9)
εms≒a2・εmc・・・・・(10)
【0071】
鋼管5の上側ひずみε’us及び、下側ひずみε’dsは、上記数式(5)~(10)から、グラウト材の軸ひずみεnc及び、曲げひずみεmcに基づく以下の数式(11),(12)で表される。
ε’us=a1・εnc+a2・εmc・・・・・(11)
ε’ds=a1・εnc-a2・εmc・・・・・(12)
【0072】
図7は、グラウト材の軸ひずみと、計算された鋼管5の軸ひずみとの関係を示す図の一例であり、
図8は、グラウト材の曲げひずみと、計算された鋼管5の曲げひずみとの関係を示す図の一例である。第1係数a
1は、
図7のプロットの線形近似線S1の傾きから求めることができる。第2係数a
2は、
図8のプロットの線形近似線S2の傾きから求めることができる。
【0073】
以上のようにして、線形近似線S1,S2の傾きから第1係数a1及び、第2係数a2をそれぞれ求め、計測装置10を実際の現場に設置した後は、上記数式(1),(3)に基づいて鋼管軸力Nsを演算し、上記数式(2),(4)に基づいて鋼管曲げモーメントMsを演算することにより、鋼管5の内部に定置したひずみ計50,60の計測値(内部ひずみ)から、鋼管5に作用する応力を精度よく演算することが可能になる。
【0074】
すなわち、鋼管複合インバート1の鋼管5のように、外周面にセンサを直接取り付けられない永久構造物においても、永久構造物に作用する応力を構造物の内部で取得した計測値に基づいて効果的に演算することが可能になる。これにより、施工方法を変更することなく、簡素な構成で永久構造物に作用する応力を効果的に計測できるようになり、工期の遅延や工費の増大を招くことなく、応力の長期的なモニタリングを実現することが可能になる。
【0075】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0076】
例えば、上記実施形態において、鋼管5は直線状の円筒管を一例に説明したが、鋼管5は円弧状に湾曲する湾曲管であってもよい。この場合も、ボールキャスタ26を備える移動治具21は湾曲管内を移動自在であり、押し込みプレート30は湾曲管の形状に沿うように弾性変形することから、計測部20を湾曲管内の所望位置に容易に設置することができる。
【0077】
また、鋼管5は、円筒管に限定されず、
図9に示すような角筒管であってもよい。角筒管の場合、ボールキャスタ26及び、キャスタ支持脚25を左右方向及び下方の少なくとも三方向に設ければよい。
【0078】
また、ひずみ計50,60の配置位置は、鋼管5に作用する曲げモーメントにより圧縮方向の応力が加わる部分と引張方向の応力が加わる部分であればよく、上下の2カ所に限定されない。例えば、圧縮応力や引張応力が左右の2カ所に加わるような構造物であれば、ひずみ計50,60を左右の2カ所に配置すれればよい。また、ひずみ計50,60の個数は2個に限定されず、3個以上を周方向に等ピッチで配置することも可能である。
【0079】
また、移動治具を鋼管5の内周面に移動自在に支持する支持機構は、全方向に転動可能なボールキャスタ26に限定されず、鋼管5の内周面を少なくとも管軸方向に転動可能な車輪等の転動体、或は、管内周面に弾接する半円弧状の板材等であってもよい。
【0080】
また、本開示の適用は、鋼管複合インバート1の鋼管5に限定されず、計測部20を埋設して定置することができる他の永久構造物にも広く適用すること可能である。また、計測部20に設けるセンサは、ひずみ計や有効応力計に限定されず、振動計や温度計等、計測目的に応じた他のセンサを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…鋼管複合インバート,5…鋼管,10…計測装置,20…計測部,21…移動治具,22…円環部材,23,24…長板部材,25…キャスタ支持脚,26…ボールキャスタ,27…台座,28…上側ロッド,29…下側ロッド,30…押し込みプレート,40…有効応力計,50…上側ひずみ計,60…下側ひずみ計,80…演算処理装置,81…グラウト材応力取得部,82…鋼管応力演算部,90…表示部,95…入力部