(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159947
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】トンネル監視用無人飛行装置およびトンネル監視装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231026BHJP
H04N 5/77 20060101ALI20231026BHJP
H04N 5/765 20060101ALI20231026BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20231026BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20231026BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231026BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20231026BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N5/77 200
H04N5/765
G05D1/10
B64C27/08
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D47/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069889
(22)【出願日】2022-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 会見日 令和4年4月14日 会見場所 修養団SYDビル 1階 第6応接室(東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目25番2号) 公開者 株式会社フジタ 公開内容 株式会社フジタが、修養団SYDビル1階第6応接室にて、建設工業新聞社、建設通信新聞社に向けてトンネル坑内自動巡視ドローンシステムについてのプレス発表を行った。
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐仁
【テーマコード(参考)】
5C054
5H301
【Fターム(参考)】
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA03
5C054EA05
5C054EA07
5C054FF03
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA19
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB02
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】トンネル内において自律飛行が可能な無人飛行体を用いてトンネル内の監視作業、点検作業を安価にかつ効率的に行なう。
【解決手段】無人飛行体14は、LIDARセンサ14Bによって検出されたトンネル12内の形状を示す点群データに基づいて飛行制御部14Dにより自律飛行するように制御される。無人飛行体14に搭載された360度カメラ14Cによって生成されたトンネル12内の画像データに基づいて監視用データ生成部20BによってVR画像データを含む監視用データを生成し、この監視用データを端末装置22で表示するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を飛行する無人飛行体と、
前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内の形状を示す点群データを検出するLIDARセンサと、
前記点群データに基づいて自律飛行するように前記無人飛行体を制御する飛行制御部と、
を備えることを特徴とするトンネル監視用無人飛行装置。
【請求項2】
前記飛行制御部による前記無人飛行体の制御は、前記点群データに基づいて前記無人飛行体が前記トンネルの内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつ前記トンネルの長手方向に沿って移動するようになされる、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル監視用無人飛行装置。
【請求項3】
前記飛行制御部による前記無人飛行体の制御は、前記トンネルの坑口近傍から前記トンネルの切羽近傍に向かって前記無人飛行体が飛行すると共に、前記点群データに基づいて前記無人飛行体が前記切羽の近傍に到達したと判断した場合に前記無人飛行体が前記坑口に向かって飛行するようになされる、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル監視用無人飛行装置。
【請求項4】
トンネル内を飛行する無人飛行体と、
前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内の形状を示す点群データを検出するLIDARセンサと、
前記点群データに基づいて自律飛行するように前記無人飛行体を制御する飛行制御部と、
前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内を撮像して画像データを生成する360度カメラと、
前記画像データを記録する画像記憶部と、
前記画像記憶部から読み出された前記画像データに基づいてVR画像データを含む監視用データを生成する監視用データ生成部と、
前記監視用データ生成部で生成された前記監視用データを表示する端末装置と、
を備えることを特徴とするトンネル監視装置。
【請求項5】
前記VR画像データは、該VR画像データの元となる前記画像データが生成された年月日および時刻を含む時刻データを含み、
前記端末装置による前記監視用データの表示は、前記時刻データが異なる複数の前記VR画像データを同時に並べて表示することでなされる、
ことを特徴とする請求項4記載のトンネル監視装置。
【請求項6】
前記監視用データは、前記VR画像データと、前記トンネルのBIM/CIMデータとを含み、
前記端末装置による前記監視用データの表示は、前記VR画像データと前記BIM/CIMデータとを同時に並べて表示することによってなされる、
ことを特徴とする請求項4記載のトンネル監視装置。
【請求項7】
前記監視用データ生成部は、前記端末装置と通信可能に構成されたクラウドサーバーに設けられている、
ことを特徴とする請求項4から6の何れか1項記載のトンネル監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル監視用無人飛行装置およびトンネル監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事中のトンネルにおける工事の進捗状況の確認や工事設備の点検などを行なうにあたっては、作業員がトンネルの全長にわたってトンネル内(トンネル坑内)を毎日定期的に巡回する必要がある。
このようにトンネルを巡回してトンネル内を監視するためには例えば1時間以上かかっており、このようなトンネル内の監視作業、点検作業の効率化が求められている。
そこで、カメラを搭載した無人飛行体(ドローン)をオペレータが遠隔操作することによってトンネル内の画像を取得することで監視作業、点検作業の効率化を図ることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工事中のトンネル内は狭いだけでなく、暗所で機械設備などの障害物が存在することから無人飛行体の遠隔操作を行なうためには熟練したオペレータが必要となり、人的コストの増大が懸念される。
そこで、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の測位信号を利用して3次元地図データ上における自己位置を推定し、予め定められたルートに沿ってトンネル内で自律飛行を行なう無人飛行体を使用することが考えられる。しかしながら、測位信号が届かないトンネル内では全球測位衛星システムを利用した自律飛行は困難である。
本発明者は、鋭意研究の結果、無人飛行体によるトンネル内の監視作業、点検作業は、無人飛行体を屋外で飛行させる場合や建物内で飛行させる場合に比べ、飛行させる箇所が内周面で区画され先端には切羽が存在しているトンネル特有の有底筒状の細長い空間であることから、LIDARセンサで検出される点群データを用いることで無人飛行体を自律飛行させることができ、GNSSによる測位信号の受信や、高価なSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて生成されるトンネルの詳細な3次元地図データを省略できることが判明するに至った。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、トンネル内において自律飛行が可能な無人飛行装置を提供すると共に、このような無人飛行体を用いてトンネル内の監視作業、点検作業を安価にかつ効率的に行なう上で有利なトンネル監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施の形態は、トンネル内を飛行する無人飛行体と、前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内の形状を示す点群データを検出するLIDARセンサと、前記点群データに基づいて自律飛行するように前記無人飛行体を制御する飛行制御部とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部による前記無人飛行体の制御は、前記点群データに基づいて前記無人飛行体が前記トンネルの内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつ前記トンネルの長手方向に沿って移動するようになされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記飛行制御部による前記無人飛行体の制御は、前記トンネルの坑口近傍から前記トンネルの切羽近傍に向かって前記無人飛行体が飛行すると共に、前記点群データに基づいて前記無人飛行体が前記切羽の近傍に到達したと判断した場合に前記無人飛行体が前記坑口に向かって飛行するようになされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、トンネル内を飛行する無人飛行体と、前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内の形状を示す点群データを検出するLIDARセンサと、前記点群データに基づいて自律飛行するように前記無人飛行体を制御する飛行制御部と、前記無人飛行体に搭載され前記トンネル内を撮像して画像データを生成する360度カメラと、前記画像データを記録する画像記憶部と、前記画像記憶部から読み出された前記画像データに基づいてVR画像データを含む監視用データを生成する監視用データ生成部と、前記監視用データ生成部で生成された前記監視用データを表示する端末装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記VR画像データは、該VR画像データの元となる前記画像データが生成された年月日および時刻を含む時刻データを含み、前記端末装置による前記監視用データの表示は、前記時刻データが異なる複数の前記VR画像データを同時に並べて表示することでなされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記監視用データは、前記VR画像データと、前記トンネルのBIM/CIMデータとを含み、前記端末装置による前記監視用データの表示は、前記VR画像データと前記BIM/CIMデータとを同時に並べて表示することによってなされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記監視用データ生成部は、前記端末装置と通信可能に構成されたクラウドサーバーに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、無人飛行体は、内周面で区画され先端には切羽が存在しているトンネル特有の有底筒状の細長い空間を飛行することから、無人飛行体は、LIDARセンサによって検出されたトンネル内の形状を示す点群データに基づいて自律飛行するので、測位信号の受信が困難なトンネルにおいて自律飛行することができ無人飛行体の運用にあたって熟練したオペレータによる遠隔操作が不要となり、人的コストの低減を図る上で有利となる。また、高価なSLAMを用いてトンネルの詳細な3次元地図データを生成する必要がなく、無人飛行体の運用に要するコストを大幅に低減する上で有利となる。
また、無人飛行体の制御を、点群データに基づいて無人飛行体がトンネルの内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつトンネルの長手方向に沿って移動するようにすると、無人飛行体がトンネルの内周面に干渉することがなく、安定した自律飛行を行う上で有利となる。
また、無人飛行体の制御を、坑口近傍か切羽近傍に向かって無人飛行体が飛行すると共に、点群データに基づいて無人飛行体が切羽の近傍に到達したと判断した場合に無人飛行体が坑口に向かって飛行するようにすると、トンネルの全長にわたって確実に無人飛行体を自律飛行させる上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、無人飛行体に搭載された360度カメラによって生成されたトンネル内の画像データに基づいて監視用データ生成部によってVR画像データを含む監視用データを生成し、この監視用データを端末装置で表示するようにした。
したがって、端末装置に表示される監視用データを確認することによって、工事中のトンネルにおける工事の進捗状況の確認や工事設備の点検などを短時間に効率的に行うことができるため、トンネル内の監視作業、点検作業を安価にかつ効率的に行なう上で有利となる。
また、端末装置によって、VR画像データの元となる画像データの時刻データが異なる複数のVR画像データを同時に並べて表示するようにすると、過去と現在のVR画像データを比較することによって工事中のトンネルにおける工事の進捗状況の確認や工事設備の点検などを短時間に効率的に行う上で有利となる。
また、端末装置によって、VR画像データとBIM/CIMデータとを同時に並べて表示するようにすると、工事中のトンネルにおける工事の進捗状況の確認や今後の作業予定の確認などを短時間に効率的に行う上で有利となる。
また、監視用データ生成部を端末装置と通信可能に構成されたクラウドサーバーに設けると、クラウドサーバーと通信可能な端末装置を準備すれば足り、設備コストの低減を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係るトンネル監視用無人飛行装置がトンネル内を飛行している状態を示す説明図であり、(A)はトンネルの正面断面図、(B)はトンネルの側面断面図である。
【
図2】実施の形態に係るトンネル監視用無人飛行装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態に係るトンネル監視装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係るトンネル監視用無人飛行装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係るトンネル監視装置を構成するクラウドサーバーおよび端末装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態に係るトンネル監視用無人飛行装置およびトンネル監視装置について図面を参照して説明する。
まず、トンネル監視用無人飛行装置について説明する。
図1(A)、(B)に示すように、トンネル監視用無人飛行装置は、無人飛行体14を含んで構成され、地山10に掘削されたトンネル12内を自律飛行するものであり、コントローラ16(
図2参照)から与えられる制御指令によって制御される。
コントローラ16は、通信部16Aと、操作部16Bと、表示部16Cとを含んで構成されている。
通信部16Aは、無人飛行体14の通信部16Aと無線回線を介して通信を行なうものであり、飛行開始の指令や飛行終了の指令を無人飛行体14の通信部16Aに送信し、また、無人飛行体14の通信部16Aから画像情報を受信するものである。
操作部16Bは、操作スイッチや操作レバーによって構成され、飛行開始や飛行終了の操作を受け付けることにより、通信部16Aに上記指令を送信させるものである。
表示部16Cは、通信部16Aで受信した後述する画像データを表示するものである。
したがって、本実施の形態におけるコントローラ16を用いた無人飛行体14の制御とは、無人飛行体14の飛行開始や飛行終了といった限られた動作を制御するものであり、オペレータがコントローラ16を操作することによって無人飛行体14の飛行動作を遠隔制御するものではない。
【0009】
無人飛行体14は、飛行体本体1402と、飛行体本体1402に設けられた複数のロータ14Hと、ロータ14H毎に設けられロータ14Hを回転駆動する複数のモータ14G(
図2参照)と、モータ14Gに電力を供給するバッテリー14F(
図2参照)とを含んで構成されている。図中符号1404は飛行体本体1402の下部に設けられた脚部を示す。
また、
図2に示すように、無人飛行体14は、通信部14Aと、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)センサ14Bと、360度カメラ14Cと、飛行制御部14Dと、記憶部14Eなどを含んで構成されている。
言い換えると、トンネル監視用無人飛行装置は、無人飛行体14と、LIDARセンサ14Bと、飛行制御部14Dとを含んで構成されている。
【0010】
通信部14Aは、コントローラ16の通信部16Aと無線回線を介して通信を行なうものであり、上記の指令を受信し、また、後述する360度カメラ14Cで撮像された画像データを送信する。
LIDARセンサ14Bは、飛行体本体1402に設けられ、無人飛行体14の周囲全域にわたって検出光(例えばレーザー光)を照射すると共に、トンネル12の内周面、すなわち、トンネル12の互いに対向する側面1202、側面1202の下端を接続する床面1204、側面1202の上端を接続する天端面1206で反射された反射光を検出することによってトンネル12内の3次元形状を示す点群データを検出するものである。このようなLIDARセンサ14Bとして市販品が使用可能である。
無人飛行体14がトンネル12の長手方向に沿って飛行しつつLIDARセンサ14Bで点群データを検出することによってトンネル12内の3次元形状を示す点群データがトンネル12の長手方向に沿って得られることになる。
なお、工事中のトンネル12内には、機械設備などの障害物が存在していることから、これらの機械設備の表面でLIDARセンサ14Bの検出光が反射して反射光が検出される。したがって、LIDARセンサ14Bによって検出されるトンネル12の内周面の点群データは、それら障害物部分の3次元形状を示す点群データも含まれる。
【0011】
360度カメラ14Cは飛行体本体1402に設けられている。
360度カメラ14Cは、いわゆる全天球カメラと呼ばれ、上下左右全方位を撮像するものであり、言い換えると、無人飛行体14の周囲全域にわたってトンネル12内を撮像して画像データ(360度画像データ)を生成するものである。画像データは動画データあるいは所定の時間間隔で撮影された静止画データである。このような360度カメラ14Cとして市販品が使用可能である。
【0012】
飛行制御部14Dは、LIDARセンサ14Bによって検出された点群データに基づいて自律飛行するように無人飛行体14を制御するものであり、具体的には、各ロータ14Hの回転を制御する。
なお、無人飛行体14が、内周面で区画され先端には切羽1210が存在しているトンネル12特有の有底筒状の細長い空間を飛行することから、LIDARセンサ14Bによって検出された点群データに基づいて無人飛行体14を自律飛行するように制御することが可能となる。
図1(A)、(B)に示すように、飛行制御部14Dによる無人飛行体14の制御は、点群データに基づいて無人飛行体14がトンネル12の内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつトンネル12の長手方向に沿って移動するようになされる。
具体的に説明すると、飛行制御部14Dによる無人飛行体14の制御は、トンネル12の坑口1212近傍からトンネル12の切羽1210近傍に向かって無人飛行体14が飛行すると共に、点群データに基づいて無人飛行体14が切羽1210の近傍に到達したと判断した場合に無人飛行体14が坑口1212に向かって飛行するようになされる。
なお、飛行制御部14Dは、飛行体本体1402が坑口1212近傍の床面1204に着陸した状態で、前述したコントローラ16から送信された飛行開始の指令を受け付けると、切羽1210近傍に向かって飛行を開始し、切羽1210近傍に到達したと判断した場合に坑口1212に向かって飛行を開始し、点群データに基づいて坑口1212近傍に到達したと判断した場合に坑口1212近傍の床面1204に着陸する。
また、飛行制御部14Dは、無人飛行体14が切羽1210に向かって飛行中に、コントローラ16から送信された飛行終了の指令を受け付けると、無人飛行体14の飛行方向を坑口1212方向に変更し、点群データに基づいて坑口1212近傍に到達したと判断した場合に坑口1212近傍の床面1204に着陸する。
【0013】
記憶部14Eは、360度カメラ14Cで撮像された画像データを記録するものであり、言い換えると、画像データを記録する画像記憶部を構成している。画像データには、その画像データが生成された年月日および時刻を含む時刻データが含まれている。
記憶部14Eに記録された画像データは、例えば、通信部14Aを介して後述するネットワーク24を経由してクラウドサーバー20に転送することができる。
あるいは、記憶部14Eがカード型記録媒体で構成されていれば、不図示のパソコンなどによって記憶部14Eから読み出した画像データを後述するネットワーク24を経由してクラウドサーバー20に転送することができる。
また、本実施の形態では、記憶部14Eは、LIDARセンサ14Bで検出された点群データを時系列で記録する機能を有しており、言い換えると、記憶部14Eは点群データを記録する点群データ記憶部を構成している。点群データにはそれが生成された年月日および時刻を含む時刻データが含まれている。
なお、後述するように点群データを利用してトンネル12内の3次元形状データを生成する必要がなければ、点群データを記憶部14Eに記録しなくてもよい。
【0014】
次に、
図3を参照して本実施の形態のトンネル監視装置18について説明する。
トンネル監視装置18は、上述した無人飛行体14と、クラウドサーバー20と、端末装置22とを含んで構成されている。
クラウドサーバー20は、通信部20Aと、監視用データ生成部20Bと、データベース20Cとを含んで構成されている。
通信部20Aは、ネットワーク24を介して無人飛行体14および端末装置22と通信を行なうものである。ネットワーク24は、インターネット、専用回線、公衆回線、無線LAN、有線LANなど従来公知の様々な通信回線を含んで構成されている。
監視用データ生成部20Bは、360度カメラ14Cで撮像された画像データに基づいてVR画像データを含む監視用データを生成するものである。
VR画像データとは、後述する端末装置22の表示部22B(ディスプレイパネル)に360度のパノラマ画像、言い換えると、仮想空間の画像を表示する画像データである。
なお、前述したように、画像データには、その画像データが生成された年月日および時刻を含む時刻データが含まれており、したがって、VR画像データは、該VR画像データの元となる画像データが生成された年月日および時刻を含む時刻データを含んで構成されている。
本実施の形態では、監視用データは、VR画像データに加え、トンネル12のBIM/CIMデータを含んでいる。
トンネル12のBIM/CIMデータとは、トンネル12の3次元モデルおよびその3次元モデルに関連付けられたトンネル12の施工や設計に関する属性情報を含むものである。
データベース20Cは、監視用データを生成するために使用されるデータを格納しており、このようなデータとして上記のトンネル12のBIM/CIMデータが含まれている。
なお、上記BIM/CIMデータは、監視用データを生成する前に、予め、端末装置22あるいは不図示の端末装置からネットワーク24を介して転送されデータベース20Cに登録しておく。
また、360度カメラ14Cで撮像された画像データに基づいてVR画像データを含む監視用データを生成する監視用データ生成部20Bは、例えば、米国のOpenSpace社によって提供されている建設現場管理ソフトウェア(OpenSpace(登録商標))を利用して実現することができる。上記建設現場管理ソフトウェアはOpenSpace社が管理するクラウドサーバー20によって提供されており、具体的には、360度カメラ14Cで撮像された画像データに基づいてAIを利用してVR画像データを含む監視用データを生成するものである。
【0015】
端末装置22は、ノートパソコンやタブレットなどによって構成されている。
端末装置22は、通信部22Aと、制御部22Bと、操作部22Cと、表示部22Dと、記憶部22Eとを含んで構成されている。
通信部22Aは、ネットワーク24を介してクラウドサーバー20の通信部22Aあるいは無人飛行体14の通信部14Aと通信を行なう。
制御部22Bは、通信部22A、操作部22C、表示部22D、記憶部22Eの制御を行なう。
操作部22Cは、マウスやキーボードあるいはタッチパネルなどの入力装置で構成されている。
表示部22Dは、画像を表示するディスプレイパネルで構成されている。
記憶部22Eは、クラウドサーバー20からネットワーク24を介して受信した監視用データ、あるいは、無人飛行体14から受信した点群データを記録する。
【0016】
次に、
図4を参照してトンネル監視用無人飛行装置の動作について説明する。
まず、無人飛行体14をトンネル12内で自律飛行させることによりトンネル12内の画像データを360度カメラ14Cで撮像する。
すなわち、作業員は、無人飛行体14をトンネル12の坑口1212近傍に着陸させた状態とし、コントローラ16の操作部16Bを操作することによって無人飛行体14に飛行開始の指令を与える(ステップS10)。
無人飛行体14の通信部14Aが飛行開始の指令を受信すると、飛行制御部14Dは、LIDARセンサ14Bによる点群データの検出を開始すると共に、各ロータ14Hの回転制御を行ない、無人飛行体14の飛行を開始する(ステップS12)。
飛行制御部14Dは、LIDARセンサ14Bによって検出された点群データに基づいて無人飛行体14がトンネル12の内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつトンネル12の長手方向に沿って移動するように、かつ、トンネル12の坑口1212近傍からトンネル12の切羽1210近傍に向かって無人飛行体14を自律飛行させる(ステップS14)。
したがって、無人飛行体14はトンネル12の内周面や障害物に干渉することなくトンネル12の長手方向に沿って坑口1212近傍から切羽1210近傍まで飛行する。
この飛行中において、360度カメラ14Cによって撮像されたトンネル12内の画像データは、記憶部14Eに格納される(ステップS16)。
また、360度カメラ14Cによって撮像されたトンネル12内の画像データは、通信部14Aを介してコントローラ16の通信部16Aに送信され、コントローラ16の表示部16Cによってリアルタイムに表示される(ステップS18)。
また、LIDARセンサ14Bによって検出された点群データは記憶部14Eに格納される(ステップS20)。
【0017】
飛行制御部14Dは、点群データに基づいて無人飛行体14が切羽1210の近傍に到達したか否かを判定し(ステップS22)、この判定結果が否定ならばステップS14に戻り、この判定結果が肯定ならば、飛行方向(進行方向)を反転させ、無人飛行体14を坑口1212に向かって自律飛行させる(ステップS24)。
また、飛行制御部14Dは、点群データに基づいて坑口1212近傍に到達したか否かを判定し(ステップS26)、この判定結果が否定ならばステップS24に戻り、判定結果が肯定ならば、坑口1212近傍の床面1204に着陸させ(ステップS28)、一連の動作を終了する。
なお、コントローラ16の表示部16Cに画像データを表示することは省略してもよいが、本実施の形態のように表示部16Cに画像データを表示させると、無人飛行体14が正常に自律飛行を行っていることを容易に確認する上で有利となる。
このような無人飛行体14の飛行によってトンネル12の長手方向の全長にわたってトンネル12内の360度にわたる画像データが取得され記憶部14Eに格納される。
なお、360度カメラ14Cによる撮像動作は、坑口1212近傍から切羽1210近傍までの飛行中に行っても、切羽1210近傍から坑口1212近傍までの飛行中に行っても、それら往復の飛行中の双方で行ってもよい。
【0018】
次に、
図5を参照してクラウドサーバー20および端末装置22の動作について説明する。
無人飛行体14の記憶部14Eに格納されている画像データをネットワーク24を介してクラウドサーバー20の監視用データ生成部20Bに送信する(ステップS100)。
監視用データ生成部20Bは、画像データに基づいてVR画像データを含む監視用データを生成する(ステップS102)。
生成された監視用データは、ネットワーク24を介して端末装置22に転送される(ステップS104)。
これにより、端末装置22は、受信した監視用データを表示部22Dに表示させる(ステップS106)。
なお、VR画像データは、端末装置22の操作部22Cの操作、例えば、マウスやタッチパネルの操作によって視点を移動させて表示可能であり、トンネル12の長手方向に沿って視点を移動させつつVR画像データを表示させることができる。
トンネル12の全長にわたって監視用データを確認(視認)することでトンネル12の監視作業、点検作業が終了する(ステップS108)。
【0019】
また、本実施の形態では、VR画像データは、該VR画像データの元となる画像データの時刻データを含んで構成され、監視用データ生成部20Bは、端末装置22の表示部22Dによって元となる画像データの時刻データが異なる複数のVR画像データ(すなわち同じ視点から見た複数のVR画像データ)を同時に並べて表示させるように監視用データを生成することができ、例えば、端末装置22の表示部22Dの画面上に最新のVR画像データと、過去のVR画像データとを同時に並べて表示させる。
【0020】
また、本実施の形態では、監視用データ生成部20Bは、データベース20Cからトンネル12のBIM/CIMデータを読み出すと共に、端末装置22の表示部22DによってVR画像データとBIM/CIMデータと(すなわち同じ視点から見たVR画像データとBIM/CIMデータと)を同時に並べて表示させるように監視用データを生成することができる。
【0021】
以上説明したように本実施の形態によれば、無人飛行体14は、内周面で区画され先端には切羽が存在しているトンネル12特有の有底筒状の細長い空間を飛行することから、無人飛行体14は、LIDARセンサ14Bによって検出されたトンネル12内の形状を示す点群データに基づいて飛行制御部14Dにより自律飛行するように制御される。
したがって、測位信号の受信が困難なトンネル12内において自律飛行することができ無人飛行体14の運用にあたって熟練したオペレータによる遠隔操作が不要となり、人的コストの低減を図る上で有利となる。
また、LIDARセンサ14Bによって検出されたトンネル12内の形状を示す点群データに基づいて、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて、詳細な3次元地図データを生成し、3次元地図データに基づいて自律飛行させることも考えられる。しかしながら、一般的にSLAMの運用に際しては、LIDARセンサ14Bの約10倍程度のコストがかかっているのが現状である。
そのため、本実施の形態のように、上記3次元地図データを使用することなくLIDARセンサ14Bで検出された点群データに基づいて自律飛行させるようにすれば、無人飛行体14の運用コストを大幅に低減する上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態によれば、飛行制御部14Dによる無人飛行体14の制御は、点群データに基づいて無人飛行体14がトンネル12の内周面に対して所定間隔を確保した状態を維持しつつトンネル12の長手方向に沿って移動するようになされるため、無人飛行体14がトンネル12の内周面に干渉することがなく、安定した自律飛行を行う上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、飛行制御部14Dによる無人飛行体14の制御は、トンネル12の坑口1212近傍からトンネル12の切羽1210近傍に向かって無人飛行体14が飛行すると共に、点群データに基づいて無人飛行体14が切羽1210の近傍に到達したと判断した場合に無人飛行体14が坑口1212に向かって飛行するようになされるので、トンネル12の全長にわたって確実に無人飛行体14を自律飛行させる上で有利となる。
【0024】
また、本実施の形態によれば、無人飛行体14に搭載された360度カメラ14Cによって生成されたトンネル12内の画像データに基づいて監視用データ生成部20BによってVR画像データを含む監視用データを生成し、この監視用データを端末装置22で表示するようにした。
したがって、端末装置22に表示される監視用データを確認することによって、工事中のトンネル12における工事の進捗状況の確認や工事設備の点検などを短時間に効率的に行うことができるため、作業員が実際にトンネル12内を巡回する必要がない。
そのため、無人飛行体14を用いてトンネル12内の監視作業、点検作業を安価にかつ効率的に行なう上で有利となる。
【0025】
具体的に説明すると、一般的にトンネル12の工事は昼夜を通して行われ、また、大型重機がトンネル12内で稼働することから、従来、作業員がトンネル12内を巡回して行なう監視作業、点検作業は、例えば、朝および夕にそれぞれ1時間程度の時間で行わなくてはならない。そのため、監視作業、点検作業は、より重要な部分、具体的には、切羽1210を中心とした部分の監視作業、点検作業に絞り込まざるを得ず、トンネル12の全長にわたる監視作業、点検作業をきめ細かく行なう上で限界がある。
本発明者の実験によれば、トンネル12内を自律飛行する無人飛行体14を用いた場合、全長約400mのトンネル12であれば7分弱の飛行時間でトンネル12の全長にわたって画像データを収集することができた。
したがって、本実施の形態によれば、従来のようにトンネル12内を作業員が巡回する場合に比較して、トンネル12内の全長について短時間でもれなく画像データを収集でき、トンネル12の全長にわたる監視作業、点検作業をきめ細かく効率的に行なう上で有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、端末装置22は、VR画像データの元となる画像データの時刻データが異なる複数のVR画像データを同時に並べて表示するようにしたので、過去と現在のVR画像データを比較することによって工事中のトンネル12における工事の進捗状況の確認や工事設備の点検などを短時間に効率的に行う上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、端末装置22は、VR画像データとBIM/CIMデータとを同時に並べて表示するようにしたので、VR画像データとBIM/CIMデータを比較することによって工事中のトンネル12における工事の進捗状況の確認や今後の作業予定の確認などを短時間に効率的に行う上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、監視用データ生成部20Bは、端末装置22と通信可能に構成されたクラウドサーバー20に設けられているので、トンネル12内の監視作業、点検作業に際しては、クラウドサーバー20と通信可能な端末装置22を準備すれば足り、設備コストの低減を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、1台の端末装置22を用いて監視用データを表示させる場合について説明したが、複数台の端末装置を用いることができる。
すなわち、受注者、発注者、官庁など複数の関係者が管理する複数台の端末装置がネットワーク24を介してクラウドサーバー20と通信できるようにすれば、各関係者が監視用データを確認することにより、トンネル12に足を運ぶこと無く、工事の進捗状況の確認、今後の作業予定の確認、各種検査などの業務を短時間に効率的に行う上で有利となり、また、関係者間で迅速な情報共有、分析を行なう上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、無人飛行体14に点群データを記憶する記憶部14E(点群データ記憶部)を設けたので、例えば、端末装置22に、記憶部14E(点群データ記憶部)から読み出された点群データに基づいてトンネル12の3次元形状データを生成する3次元形状データ生成部を設ければ、トンネル12の3次元形状データを効率的に得る上で有利となる。
また、端末装置22に、上記3次元形状データに基づいてトンネル12の出来高評価を行なうための出来高評価データを生成する出来高評価データ生成部を設けるようにすれば、トンネル12の出来高評価を効率的に行なう上で有利となる。
また、端末装置22に、上記3次元形状データと、トンネル12のBIM/CIMデータとに基づいてトンネル12の進捗管理を行なうための進捗管理データを生成する進捗管理データ生成部を設けるようにすれば、トンネル12の進捗管理を効率的に行なう上で有利となる。
【0030】
10 地山
12 トンネル
1202 側面
1204 床面
1206 天端面
1210 切羽
1212 坑口
14 無人飛行体
1402 飛行体本体
1404 脚部
14A 通信部
14B LIDARセンサ
14C 360度カメラ
14D 飛行制御部
14E 記憶部(画像記憶部)
14F バッテリー
14G モータ
14H ロータ
16 コントローラ
16A 通信部
16B 操作部
16C 表示部
18 トンネル監視装置
20 クラウドサーバー
20A 通信部
20B 監視用データ生成部
20C データベース
22 端末装置
22A 通信部
22B 制御部
22C 操作部
22D 表示部
22E 記憶部
24 ネットワーク