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  • 特開-回転電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159951
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/20 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H02K7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069897
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 梓
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA14
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607BB18
5H607CC01
5H607DD03
5H607FF33
(57)【要約】
【課題】それぞれ回転可能なステータ及びロータを有する回転電機において、ステータのトルクをコントロール可能とする。
【解決手段】電動モータ1(回転電機)は、それぞれ回転可能に設けられたロータ12及びステータ13を有する主モータ10と、補助ステータ23及びこれに対して相対回転可能な補助ロータ22を有する補助モータ20とを備える。補助モータ20の補助ロータ22と主モータ10のステータ13とが一体回転可能に連結される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ回転可能に設けられたロータ及びステータを有する主回転電機と、補助ステータ及びこれに対して相対回転可能な補助ロータを有する補助回転電機とを備え、
前記補助回転電機の補助ロータと前記主回転電機のステータとが一体回転可能に連結された回転電機。
【請求項2】
前記主回転電機及び前記補助回転電機を収容する筒状のハウジングを有する請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機として用いられる回転電機は、ステータを固定側となるハウジング等に固定し、ロータを回転軸に固定することが一般的である。
【0003】
下記の特許文献1には、ステータ及びロータをそれぞれ回転可能とし、ステータの回転力をロータの回転に用いることで、高出力が可能な回転電機(電動機)が示されている。具体的には、ロータの回転を減速する際にロータの回転力でステータを回転させ、再びロータの回転を加速する際に、駆動電流による回転力にステータの回転力を加えてロータを回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6729888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の回転電機において、ステータは、ロータと磁気結合することにより加速あるいは減速されるが、トルクをコントロールすることはできず、成り行きで回転している。そのため、ロータを再始動する際にステータのトルクが過大であることがあり、この場合、ステータとロータとの磁気結合によりロータに過大なトルクが入力され、誘起電圧によるロータのトルクロスが大きくなる。
【0006】
そこで、本発明が解決すべき課題は、ステータ及びロータをそれぞれ回転可能とした回転電機において、ステータのトルクをコントロール可能とすることで、ロータのトルクロスの増大等の不具合を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、それぞれ回転可能に設けられたロータ及びステータを有する主回転電機と、補助ステータ及びこれに対して相対回転可能な補助ロータを有する補助回転電機とを備え、
前記補助回転電機の補助ロータと前記主回転電機のステータとが一体回転可能に連結された回転電機を提供する。
【0008】
この回転電機によれば、従来は成り行きで回転していた主回転電機のステータのトルクを、補助回転電機でコントロールすることができる。すなわち、補助回転電機を駆動することにより、ロータの回転に関わらず、ステータの回転を減速してトルクを小さくしたり、ステータの回転を加速してトルクを大きくしたりすることができる。
【0009】
上記の回転電機は、主回転電機及び補助回転電機を収容する筒状のハウジングを有することができる。このように、主回転電機及び補助回転電機を共通のハウジングに収容することにより、回転電機全体をコンパクト化することが可能となる
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、それぞれ回転可能なステータ及びロータを有する回転電機において、ステータのトルクをコントロールすることができるため、ロータのトルクロスの増大等の不具合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電動モータを模式的に示す断面図である。
図2】主モータのロータの回転速度(実線)及びステータの回転速度(一点鎖線)の時間変化を示すグラフである。
図3】本発明の他の実施形態に係る電動モータを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係る回転電機としての電動モータ1を示す。この電動モータ1は、主回転電機としての主モータ10と、補助回転電機としての補助モータ20と、これらを制御する制御部30とを主に備える。
【0014】
主モータ10は、出力軸11と、ロータ12と、ステータ13と、ハウジング14とを有する。ロータ12は、出力軸11の外周に固定され、円周方向等間隔に配された複数のマグネット12aを有する。ステータ13は、筒状(例えば円筒状)のハウジング14の内周に固定されたステータコアと、ステータコアに巻回されたコイルとを有する。本実施形態の主モータ10は、ロータ12とステータ13とが微小な半径方向隙間を介して対向した、いわゆるラジアルギャップ型である。この他、主モータ10を、ロータとステータとが微小な軸方向隙間を介して対向した、いわゆるアキシャルギャップ型としてもよい。
【0015】
ロータ12及びステータ13は、それぞれ独立して回転可能とされる。本実施形態では、出力軸11が、軸受15,16を介してハウジング14に取り付けられる。出力軸11は、ハウジング14から軸方向一方側(図1の右側)に突出し、このハウジング14から突出した部分が軸受41を介して固定体42に取り付けられる。すなわち、出力軸11及びロータ12が固定体42に対して回転自在とされ、ハウジング14及びステータ13が出力軸11に対して回転自在とされる。
【0016】
ステータ13のコイルは、ブラシ等の公知の電力伝達手段を介して制御部30に電気的に接続される。主モータ10には、ハウジング14及びステータ13の正方向への回転は許容し、逆方向への回転は規制する、逆回転防止手段が設けられる。
【0017】
補助モータ20は、回転軸21と、補助ロータ22と、補助ステータ23と、ハウジング24とを有する。補助ロータ22は、回転軸21の外周に固定され、円周方向等間隔に配された複数のマグネット22aを有する。補助ステータ23は、筒状(例えば円筒状)ハウジング24の内周に固定されたステータコアと、ステータコアに巻回されたコイルとを有する。補助ステータ23のコイルは、制御部30と電気的に接続される。本実施形態の補助モータ20は、補助ロータ22と補助ステータ23とが微小な半径方向隙間を介して対向した、いわゆるラジアルギャップ型である。この他、補助モータ20を、ロータとステータとが微小な軸方向隙間を介して対向した、いわゆるアキシャルギャップ型としてもよい。
【0018】
補助ロータ22は、補助ステータ23に対して回転可能とされる。本実施形態では、ハウジング24及び補助ステータ23が固定体43に固定され、回転軸21が、軸受25,26を介してハウジング24に取り付けられる。回転軸21は、ハウジング24から軸方向一方側に突出し、その先端が主モータ10のハウジング14に固定される。すなわち、補助ステータ23及びハウジング24が固定側となり、これに対して、補助ロータ22、回転軸21、及び主モータ10のハウジング14が一体に回転可能とされる。
【0019】
電動モータ1は、主モータ10のロータ12の回転を検知する回転センサ51と、主モータ10のステータ13の回転を検知する回転センサ52とを有する。回転センサ51,52は、検知対象(ロータ12、ステータ13)の回転速度又は回転角あるいはこれらの双方を検知するものである。回転センサ51,52としては、接触式や、光学式や磁気式等の非接触式の公知のセンサが用いられる。本実施形態の回転センサ51,52は、出力軸11あるいはハウジング14の外周面に設けられた複数のセンサターゲットを非接触で検知することにより、出力軸11及びハウジング14の回転を検知するものである。回転センサ51,52は、制御部30に電気的に接続され、回転センサ51,52による検知信号が制御部30に送られる。
【0020】
尚、ステータ13の回転を検知する回転センサ52の代わりに、ステータ13とロータ12との間の相対回転速度を検知する回転センサ(例えば、電磁誘導式センサ)を設けてもよい。この回転センサで検知したステータ13とロータ12との間の相対的な回転角及び回転速度と、回転センサ51で検知したロータ12の回転角及び回転速度とから、ステータ13の回転角及び回転速度を算出することができる。
【0021】
以下、電動モータ1の駆動方法について説明する。尚、図2の実線は、ロータ12及び出力軸11の回転速度の時間変化を示し、図2の一点鎖線は、ステータ13及びハウジング14の回転速度の時間変化を示している。
【0022】
まず、制御部30から主モータ10のステータ13のコイルに通電することにより、ロータ12及び出力軸11を一体に正方向に回転させる。このとき、ステータ13及びハウジング14には逆方向に回転させる力が働くが、逆回転防止手段によりこれらの逆方向への回転が規制される。こうして、ステータ13及びハウジング14が停止した状態で、ロータ12及び出力軸11が正方向に加速され(時刻t0~t1)、所定の速度になったら定速で回転される(時刻t1~t2)。
【0023】
そして、出力軸11を減速する際に、出力軸11の回転エネルギーをステータ13に伝達して、ステータ13及びハウジング14を正方向に回転させる。具体的には、ステータ13のコイルに通電して、ロータ12をステータ13に対して逆方向に回転させようとする励磁力を発生させる。これにより、ロータ12及び出力軸11が減速されると共に、これらを減速する力の反作用によりステータ13が正方向に回転する(時刻t2~t3)。このとき、ハウジング14と、これに固定された補助モータ20の回転軸21及び補助ロータ22とが、ステータ13と一体に回転する。尚、このとき、補助モータ20の補助ステータ23には通電されていない。
【0024】
出力軸11が停止すると、ステータ13のコイルへの通電を停止し、これによりステータ13は、慣性により正方向に略定速で回転し続ける(時刻t3~t4)。尚、出力軸11が停止した後も、ステータ13のコイルに通電し続けて、ステータ13をさらに加速してもよい。この場合、ステータ13を回転させる力の反作用により出力軸11が逆方向に回転しないように、出力軸11の逆方向への回転を規制することが好ましい。この他、出力軸11が停止する前にステータ13への通電を停止してもよい。
【0025】
こうしてステータ13を慣性により回転させている間、補助モータ20により、ステータ13及びハウジング14の回転速度が予め設定した所定値ω1となるように調整する。具体的には、回転センサ52によりステータ13及びハウジング14の回転速度を検知し、この回転速度が所定値ω1よりも大きい場合、すなわち、ステータ13及びハウジング14のトルクが過大である場合は、補助モータ20の補助ステータ23に通電し、補助ロータ22を減速する励磁力を発生させ、補助ロータ22及びこれに連結された回転軸21、ハウジング14、及びステータ13を、回転速度がω1となるまで減速する(図2のP参照)。このとき、補助ロータ22の回転により補助ステータ23で発電し、この電力を蓄電池に蓄積してもよい。
【0026】
一方、ステータ13及びハウジング14の回転速度がω1よりも小さい場合は、補助モータ20の補助ステータ23に通電し、補助ロータ22を加速する励磁力を発生させ、補助ロータ22及びこれに連結された回転軸21、ハウジング14、及びステータ13を、回転速度がω1となるまで加速する(図2のQ参照)。以上ように、補助モータ20で主モータ10のステータ13及びハウジング14を加減速することで、ステータ13及びハウジング14の回転速度が所定値ω1で維持される。
【0027】
その後、出力軸11を再び回転させる際には、ステータ13に再び通電して、ロータ12をステータ13に対して正方向に回転させる(時刻t4~t5)。これにより、ステータ13とロータ12との間の励磁力に加えて、ステータ13及びハウジング14の回転力(慣性力)もロータ12に加わるため、ロータ12及び出力軸11を回転させるエネルギーが増大する。換言すると、ロータ12及び出力軸11に入力されるトルクを維持しながら、ステータ13に通電する電気量を低減することができるため、省エネルギー化が図られる。
【0028】
上記のようにロータ12をステータ13と磁気結合して再始動する際に、ステータ13の回転速度(トルク)が過大であると、ロータ12に過大なトルクが一気に入力されて大きな誘導電圧が発生するため、ロータ12のトルクロスが大きくなる。本実施形態では、上記のように、補助モータ20によりステータ13の回転速度を適度な値(ω1)に調整することで、ロータ12に適度な大きさのトルクが入力されるため、ロータ12のトルクロスの増大を防止できる。
【0029】
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0030】
図3に示す電動モータ1は、共通のハウジング60に主モータ10及び補助モータ20が収容されている点で、上記の実施形態と異なる。図示例では、筒状(例えば円筒状)のハウジング60のうち、軸方向一方側(図中右側)が主モータ10を収容するの第1部分61であり、軸方向他方側(図中左側)が補助モータ20を収容する第2部分62である。このように、主モータ10及び補助モータ20を共通のハウジング60に収容することにより、電動モータ1全体をコンパクト化することが可能となる。
【0031】
具体的に、図3に示す電動モータ1では、ハウジング60の第1部分61の内周面に主モータ10のステータ13が固定され、その内周にロータ12が配される。ハウジング60の第2部分62には、補助ロータ22が設けられる。図示例では、ハウジング60の第2部分62にマグネット22aが埋め込まれ、この部分が補助ロータ22として機能する。この他、ハウジング60の第2部分62の内周に、マグネット22aを有する補助ロータ22を固定してもよい。補助ロータ22の内周には補助ステータ23が配され、補助ステータ23は固定体43に固定されている。図示例では、主モータ10の出力軸11の軸方向他方側(図中左側)の端部が固定体43の内周に挿入され、軸受44,45を介して回転自在に支持される。
【0032】
図3に示す実施形態では、主モータ10と補助モータ20とが軸方向で近接して配置されるため、これらの軸方向間に磁気遮断手段63を設けることが好ましい。磁気遮断手段63としては、例えば磁気を通さない材質からなる板や膜を使用することができる。このように、磁気遮断手段63を設けることにより、主モータ10の磁気が補助モータ20に影響を与えたり、これとは逆に、補助モータ20の磁気が主モータ10に影響を与えたりすることを防止できる。
【0033】
以上の実施形態では、電動モータ1を、電力により出力軸11を回転させる電動機として使用する場合を示したが、これに限らず、出力軸11を入力軸として使用し、この入力軸に入力される回転力により発電する発電機として使用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 電動モータ(回転電機)
10 主モータ(主回転電機)
11 出力軸
12 ロータ
13 ステータ
14 ハウジング
20 補助モータ(補助回転電機)
21 回転軸
22 補助ロータ
23 補助ステータ
24 ハウジング
30 制御部
42,43 固定体
51,52 回転センサ
60 ハウジング
図1
図2
図3