(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159953
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20231026BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069900
(22)【出願日】2022-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】521082008
【氏名又は名称】株式会社日本選別化工
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾野 彰則
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001KA05
2G001LA02
2G001LA03
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】既設ベルトコンベアへの組み込みが容易で、既設ベルトコンベアを有効に利用できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線検査装置は、検査対象物にX線を照射するX線発生器を備えた箱体と、下端にキャスターを有し、既設ベルトコンベアが差し込み可能な開口部が形成され、前記箱体を支持する架台と、架台に着脱可能に架け渡され、既設ベルトコンベアのX線発生器に対応する位置に設けられるX線検出器と、既設ベルトコンベアの上ベルトと下ベルトとの間にX線検出器が設けられた状態に対し、既設ベルトコンベアの走行領域を覆うカバー部材と、を備え、既設ベルトコンベアにスライドして組み込まれる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物にX線を照射するX線発生器を備えた箱体と、
下端にキャスターを有し、既設ベルトコンベアが差し込み可能な開口部が形成され、前記箱体を支持する架台と、
前記架台に着脱可能に架け渡され、前記既設ベルトコンベアの前記X線発生器に対応する位置に設けられるX線検出器と、
前記既設ベルトコンベアに前記X線検出器が設けられた状態に対し、前記既設ベルトコンベアの走行領域を覆うカバー部材と、を備え、
既設ベルトコンベアにスライドして組み込まれることを特徴するX線検査装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面と、上流側及び下流側と直交する一側面とに位置するように前記架台に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面に位置するように前記架台に形成されていることを特徴する請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記架台の他の二側面に、前記既設ベルトコンベア上に載置されている前記検査対象物に干渉して荷崩れさせることにより前記検査対象物を前記X線発生器のX線照射領域に収める干渉部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記干渉部材は、前記架台の他の二側面に斜め方向を向いて取り付けられた干渉ローラと、干渉ローラを回転させるモータとを備え、前記干渉ローラの表面が凹凸面となっていることを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記架台には、前記既設ベルトコンベアに対する前記X線検出器の高さ位置を調整する高さ調整部材が設けられていることを特徴する請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記架台には、前記X線検出器と前記既設ベルトコンベアとの干渉を回避する迂回ローラが設けられることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線検出器は、前記既設ベルトコンベアの上ベルトと下ベルトとの間に設けられることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記X線検出器は、前記上ベルトの上方位置にあって、前記検査対象物の方向に傾いた斜めとなるように前記架台に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設ベルトコンベアに対して設置が容易なX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は、ベルトコンベアで搬送される検査対象に対してX線発生器からX線を照射し、検査対象を透過したX線をX線検出器で検出することにより検査対象の異物の有無や欠陥を検査する検査装置である。このようなX線検査装置は、検査ラインに設けた既設ベルトコンベアに組み込まれて使用される。
【0003】
特許文献1に記載されている従来のX線検査装置は、X線発生器が上側に、X線検出器が下側に配置された箱体と、この箱体内に設けた送りベルトとを備えた構造となっている(特許文献1の
図2参照)。このX線検査装置を、既設ベルトコンベアに組み込むには、既設ベルトコンベアを上流側のベルトと、下流側のベルトとに区切る構造の変更を行い、上流側のベルトと下流側のベルトとの間にX線検査装置を配置する。検査対象物は上流側のベルトからX線検査装置の箱体内の送りベルトに乗り移ってX線による検査が行われ、その後、下流側のベルトに乗り移って排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構造では、X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込むために、既設ベルトコンベアを上流側と下流側とに区切る必要があるため、既設ベルトコンベアの構造を変更する必要があり、X線検査装置の組み込み作業が面倒となっている。また、X線検査装置が備える送りベルトを既設ベルトコンベアの上流側のベルトと下流側のベルトとの間に位置させる必要があり、この位置調整も面倒となっている。
【0006】
本発明は、従来の問題点を考慮してなされたものであり、既設ベルトコンベアの構造の大幅に変更することなく、既設ベルトコンベアに組み込むことが可能であり、かつ既設ベルトコンベアを有効に利用することが可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のX線検査装置は、X線発生器を備えた箱体と、下端にキャスターを有し、既設ベルトコンベアが差し込み可能な開口部が形成され、前記箱体を支持する架台と、前記架台に着脱可能に架け渡され、前記既設ベルトコンベアの上ベルトと下ベルトとの間の前記X線発生器に対応する位置に設けられるX線検出器と、前記既設ベルトコンベアに前記X線検出器が設けられた状態に対し、前記既設ベルトコンベアの走行領域を覆うカバー部材と、を備え、既設ベルトコンベアにスライドして組み込まれることを特徴する。
【0008】
前記開口部は、前記既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面と、上流側及び下流側と直交する一側面とに位置するように前記架台に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記開口部は、前記既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面に位置するように前記架台に形成されていることを特徴する。
【0010】
前記架台の他の二側面に、前記既設ベルトコンベア上に載置されている検査対象物に干渉して荷崩れさせることにより検査対象物を前記X線発生器のX線照射領域に収める干渉部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
前記干渉部材は、前記架台の他の二側面に斜め方向を向いて取り付けられた干渉ローラと、干渉ローラを回転させるモータとを備え、前記干渉ローラの表面が凹凸面となっていることを特徴とする。
【0012】
前記架台には、前記既設ベルトコンベアに対する前記X線検出器の高さ位置を調整する高さ調整部材が設けられていることを特徴する。
【0013】
前記架台には、前記X線検出器と前記既設ベルトコンベアとの干渉を回避する迂回ローラが設けられることを特徴とする。
【0014】
前記X線検出器は、前記既設ベルトコンベアの上ベルトと下ベルトとの間に設けられることを特徴とする。
【0015】
前記X線検出器は、前記上ベルトの上方位置にあって、前記検査対象物の方向に傾いた斜めとなるように前記架台に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるX線検査装置によれば、キャスター付きの架台をスライドさせるだけで、既設ベルトコンベアへの組み込みができる。架台を吊り上ることや、組み立てる必要がないため、設置の作業が簡単で作業性が向上する。既設ベルトコンベアを大幅に変更することなく組み込むことができる。カバー部材は、左右側の既設ベルトコンベアからの入口と出口部分を覆うので、X線の漏洩を抑制でき、安全な使用が可能となる。
【0017】
架台の開口部は、既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面と、上流側及び下流側と直交する一側面とに位置するように形成したので、架台をスライドするだけで、既設ベルトコンベアへの組み込みを容易に行うことができる。すなわち、架台の背面と左右側面を開口できるので、既設ベルトコンベアの搬送方向と直交する方向から、X線検査装置を組み込むことができる。
【0018】
架台の開口部は、既設ベルトコンベアの搬送方向の上流側及び下流側の二側面に位置するように形成したので、架台をスライドして、既設ベルトコンベアへの組み込みを容易に行うことができる。すなわち、架台の左右側面を開口させたので、既設ベルトコンベアの一端部からX線検査装置をベルトコンベアの搬送方向にスライドし、組み込める。
【0019】
干渉部材を架台に設けたので、検査対象物に干渉して、検査対象物をX線発生器のX線照射領域に寄せることができる。検査対象物の量が多くてもX線照射領域から外れないようにして検査対象物の撮像ができる。
【0020】
干渉部材は、表面に凹凸面を有するモータ駆動の干渉ローラとしたので、検査対象物の詰まりを発生させることなく、検査対象物をベルトコンベアの中央に寄せることができる。
【0021】
架台に、X線検出器の高さ位置を調整する高さ調整部材を設けたので、既設ベルトコンベアのベルトの位置に合わせて、X線検出器の高さを調節できる。
【0022】
架台に、迂回ローラを設けたので、X線検出器と既設ベルトコンベアが干渉しないようベルトの走行位置を変更して、上ベルトと下ベルトの間隔を広くできる。
【0023】
X線検出器を上ベルト及び下ベルトの間に位置させることにより、検出の際のベルトによるX線の吸収がそれほど大きくないため、精度の良い検出が可能となる。
【0024】
X線検出器を上ベルトの上方の位置で、検査対象物の方向に傾いた斜めとなるように配置したので、金属ベルトなどのX線を透過しづらいベルトコンベアであっても、X線検査装置を組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるX線検査装置を背面側から見た斜視図である。実施例1
【
図3】X線検査装置を既設ベルトコンベアに差し込む際の右側面図である。
【
図4】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ後、X線検出器を装着した状態の右側面図である。
【
図5】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ後、カバー部材を閉じた状態の右側面図である。
【
図6】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の斜視図である。
【
図8】迂回ローラの配置を示す
図6のA-A線断面図である。
【
図9】迂回ローラの別の形態を示す
図6のA-A線断面図である。
【
図10】X線検出器の高さ調整部材と、迂回ローラの高さ調整部材を示す図である。
【
図11】本発明によるX線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の右側面図である。実施例2
【
図12】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込む前の右側面図である。
【
図13】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の平面図である。
【
図14】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の正面図である。
【
図15】干渉部材をを設けたX線検査装置の右側面図である。
【
図16】他の干渉部材を示すためのX線検査装置の右側面図である。
【
図17】本発明によるX線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の右側面図である。実施例3
【
図18】本発明によるX線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込んだ状態の右側面図である。実施例4
【
図19】X線検査装置を既設ベルトコンベアに組み込む前の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明によるX線検査装置を説明する。
【実施例0027】
図1は、本発明の実施例1によるX線検査装置100を背面側から見た斜視図である。X線検査装置100は、X線発生器2を含む箱体12と、架台13からなる。架台13は、箱体12の下部にあって、正面板13aと背面板13bを備え、下部は画像処理PC30が収納される収納箱23となっている。架台13の底面には移動を容易にするキャスター27とキャスター27を浮かして架台13を床に固定するレベルフット28を備える。
図1では、架台13の背面側を覆う背面板13bと、カバー部材9としての右側面を覆う右側面カバー9aと、左側面を覆う左側面カバー9bを開いた状態で示す。この状態では、架台13の開口部4が形成され開口する。開口部4は、上流側側面4aと、下流側側面4bと、ベルトコンベアの搬送方向と直交する正面側の側面4cとによって開口されることで形成される。右側面カバー9aと左側面カバー9bの凹部には、X線を遮るカーテン(図示せず)が設けられ、全体としてX線が外部に漏れ出ないようにしている。X線発生器2は、フィラメント(陰極)とターゲット(陽極)からなりX線が発生される。X線により、ベルトコンベア上の検査対象物に混入した鉄やステンレスの金属類、石、ガラスなどの異物を検知する。
【0028】
図2は、X線検査装置100の正面図である。箱体12の正面には、タッチディスプレィ24と操作パネル25が設けられ、屋根には装置の異常状態を知らせるパトランプ26とブザー(図示省略)が設けられる。カバー部材9を構成する右側面カバー9aと左側面カバー9bは、一点鎖線で示すようにヒンジ10(
図3参照)で開閉できる。背面板13bもヒンジで開閉できる。
【0029】
図3は、X線検査装置100を既設ベルトコンベア1に差し込む際の右側面図である。この状態では、右側面カバー9aと、左側面カバー9bと、背面板13bとを開いて開口部4を形成する。X線検出器3は、検査対象物を撮像するカメラで、着脱可能に架台13に設けられるので、外してある。これによれば、X線検査装置100をスライドして既設ベルトコンベア1に前後方向から、つまり既設ベルトコンベア1の搬送方向と直交する方向から差し込む。開口部4に既設ベルトコンベア1が差し込まれるものとなる。
【0030】
図4は、X線検査装置100を既設ベルトコンベア1に組み込んだ後、X線検出器3を装着した状態の右側面図である。取り外しておいたX線検出器3が、架台13の正面板13aと背面板13bを架け渡すように装着される。X線検出器3は、既設ベルトコンベア1の上ベルト1aと下ベルト1bの間に設置される。
【0031】
図5は、X線検査装置100を既設ベルトコンベア1に組み込んだ後、カバー部材9である右側面カバー9aを閉じた状態の右側面図である。X線検出器3は、既設ベルトコンベア1の上ベルト1aと下ベルト1bの間に設置される。
【0032】
図6は、X線検査装置100を既設ベルトコンベア1に組み込んだ状態を示す斜視図である。右側面カバー9aと左側面カバー9bと背面板13bは閉じた状態にある。例として、上ベルト1aに載った検査対象物が図面左方向に搬送され、X線発生器2でチェックされる。下ベルト1bは、図面右方向に戻る。既設ベルトコンベア1は、行きの上ベルト1aと戻りの下ベルト1bからなり、上流がX線検査装置100の右側で、下流がX線検査装置100の左側となる。右側面カバー9aと左側面カバー9bの入口と出口部分32には、X線が漏れ出ないようにカーテン31が設けられる。
【0033】
図7は、
図6のA-A線断面図である。
図7に示すように、X線源5は、X線発生器2の内部にあって、箱体12の内部を通過して下方に向かって照射される。既設ベルトコンベア1の幅をカバーするように照射される。X線検出器3で検査対象物を撮像する。撮像データは、架台13の収納箱23内に設置された画像処理PC30に送られ、X線撮像画像が解析される。例として、金属や石などの異物が検出された場合、パトランプ26を点灯させ、ブザーを鳴動させる。既設ベルトコンベア1の走行を停止させるため異物検出信号を設け、既設ベルトコンベア1の制御部に送ることができる。これによれば、既設ベルトコンベア1を直ちに停止できる。本実施例では、画像処理PC30を架台13の下部に設置したが、箱体12に設置してもよい。その場合、架台13の下部が広く空くので、開口部4の間口(高さ)をより広くできる。これによりトラフ型コンベアなど、既設ベルトコンベア1の上ベルト1aと下ベルト1bの間隔が大きい場合に有利になる。
【0034】
図8は、迂回ローラの配置を示す
図6のA-A線断面図である。迂回ローラ7は架台13の正面板13aと背面板13bに着脱可能に設けられる。上ベルト1aと下ベルト1bの間が迂回ローラ7で拡げられた状態になっており、上ベルト1aと下ベルト1bの間にX線検出器3が設置される。迂回ローラ7で下ベルト1bを押し下げて上ベルト1aとの間の空間を拡張したので、箱体12を移動してのX線検出器3の設置が容易になる。
【0035】
図9は、迂回ローラ7の別の形態を示す
図6のA-A線断面図である。迂回ローラ7で上ベルト1aを押し上げ、下ベルト1bとの間の空間を拡張したので、X線検出器3の設置が容易になる。
【0036】
図10は、X線検出器3の高さ調整部材40と、迂回ローラ7の高さ調整部材41を示す図である。これらの高さ調節部材40、41は、L字形支柱にスリット11を設け、X線検出器3及び迂回ローラ7の一端を上下移動可能にスリット11に通し、高さ調整ネジ8で固定したものである。迂回ローラ7は回転可能に支持される。
本実施例では、干渉部材21、21は、表面が凹凸状となったロールを用いている。ロールの凹凸としては表面が粗面となっていれば良く、複数の針を突出させた構造、表面をザラザラ状とした構造等、適宜、変更することができる。ロールの表面を凹凸状とすることにより検査対象物15を荷崩れさせることができる。ロールは、モータ29によって回転させても良く、検査対象物15の運搬移動力によって追随回転するようにしても良い。