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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159959
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】食鳥セセリ肉取り出し装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069909
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】504225356
【氏名又は名称】プライフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】市来 清臣
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA01
4B011FA03
(57)【要約】
【課題】 自動的にセセリ肉を取り出す装置であって、首付き胴ガラの台盤への手動載置の作業効率が高く、セセリ肉への胸椎破片の混入が無い食鳥セセリ肉取り出し装置を提供する。
【解決手段】 首付き胴ガラの胴部を係止して連続的に移動する係止具と、係止具の移動経路の上流側から下流側へ向けて順次配設された胴部セセリ肉に側方から胸椎近傍まで筋入する第1刃物と、首部セセリ肉に筋入する第2刃物と、筋入れされた首部セセリ肉を挟持する挟持具とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
首付き胴ガラの胴部を係止して連続的に移動する係止具と、係止具の移動経路の上流側から下流側へ向けて順次配設された胴部セセリ肉に側方から胸椎近傍まで筋入する第1刃物と、首部セセリ肉に筋入する第2刃物と、筋入れされた首部セセリ肉を挟持する挟持具とを備えることを特徴とする食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項2】
第1刃物と第2刃物はバネ鋼の薄板で形成されたナイフであり且つ刃引きされていることを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項3】
係止具は上側走行部と下側走行部とを有する無端コンベアに取り付けられて連続的に移動し、第1刃物と、第2刃物とは無端コンベアの上側走行部に対峙して配設され、挟持具は無端コンベアの下側走行部に対峙して配設されており、無端コンベアの上側走行部において係止具は首付き胴ガラの首部を下方から支持することを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項4】
一対の第1刃物が胴部を前方へ差し向けた首付き胴ガラの移動方向に対して両側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入れし、又は単一の第1刃物が首付き胴ガラの移動方向に対して一側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入れすることを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項5】
単一の第2刃物が胴部を前方へ差し向けた首付き胴ガラの移動方向に対して一側方から頸椎を越えて反対側まで首部セセリ肉に筋入れすることを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項6】
係止具と協働して首部を把持する把持具が第2刃物に隣接して配設されていることを特徴とする請求項5に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項7】
係止具の移動経路に関して第1刃物の上流側に配設されて、胸椎と頸椎の高さを計測する高さ計測装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【請求項8】
係止具の向きを変える係止具回転機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の食鳥セセリ肉取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食鳥セセリ肉取り出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食鳥セセリ肉は首の後ろ側の首部セセリ肉と首近傍の背中中央部の胴部セセリ肉の総称である。セセリ肉は食感が良く且つ美味なので商品価値が高い。従来、セセリ肉は、作業者がナイフを用いて首付き胴ガラから切除することにより、取り出していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のナイフを用いた人手による切除作業には、作業効率が低いという問題があり、胴部セセリ肉の切除の際に胸椎の一部が肉と共に切除されセセリ肉に混入するという問題もある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、作業効率が高く、セセリ肉への胸椎破片の混入が無い食鳥セセリ肉取り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、首付き胴ガラの胴部を係止し連続的に移動する係止具と、係止具の移動経路の上流側から下流側へ向けて順次配設された胴部セセリ肉に側方から胸椎近傍まで筋入する第1刃物と、首部セセリ肉に筋入する第2刃物と、筋入れされた首部セセリ肉を挟持する挟持具とを備えることを特徴とする食鳥セセリ肉取り出し装置を提供する。
人手による作業は係止具への首付き胴ガラの係止作業のみであり、作業効率が高い。また、連続的に移動する係止具への首付き胴ガラの手動係止作業は、接近する係止具を視認して予め作業準備できるので、作業者に与える心理的負担が少なく、作業効率が高い。胴部セセリ肉は切除するのではなく側方から胸椎近傍まで筋入れした後、筋入した首部セセリ肉を挟持して引き剥がすので、セセリ肉に胸椎の破片は混入しない。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、第1刃物と第2刃物はバネ鋼の薄板で形成されたナイフであり且つ刃引きされている。
バネ鋼の薄板で形成され且つ刃引きされた第1ナイフと第2ナイフは、筋入の際に肋骨や頸椎に接触しても柔軟に変形して骨に食い込まず、骨を削らない。
本発明の好ましい態様においては、係止具は上側走行部と下側走行部とを有する無端コンベアに取り付けられて連続的に移動し、第1刃物と、第2刃物とは無端コンベアの上側走行部に対峙して配設され、挟持具は無端コンベアの下側走行部に対峙して配設されており、無端コンベアの上側走行部において係止具は首付き胴ガラの首部を下方から支持する。
無端ベルトの上側走行部で筋入を行い、下側走行部で下方へ垂れ下がった筋入後の首部セセリ肉を把持することにより、胴部セセリ肉を効果的に胴ガラから引き剥がすことができる。
本発明の好ましい態様においては、一対の第1刃物が胴部を前方へ差し向けた首付き胴ガラの移動方向に対して両側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入れし、又は単一の第1刃物が首付き胴ガラの移動方向に対して一側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入れする。
一対の第1刃物で両側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入れしておけば、胴部セセリ肉を容易に胴ガラから引き剥がすことができる。単一の第1刃物で一側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉に筋入した場合でも胴部セセリ肉を胴ガラから引き剥がすことができる。
本発明の好ましい態様においては、単一の第2刃物が胴部を前方へ差し向けた首付き胴ガラの移動方向に対して一側方から頸椎を越えて反対側まで首部セセリ肉に筋入れする。
首付き胴ガラの移動方向に対して一側方から頸椎を越えて反対側まで首部セセリ肉に筋入れすることにより、頸椎を削り取ることなく、首部からセセリ肉を分離することができる。
本発明の好ましい態様においては、係止具と協働して首部を把持する把持具が第2刃物に隣接して配設されている。
係止具と協働して首部を把持することにより、首部に筋入れする際に首部の伸直状態を維持することができる。
本発明の好ましい態様においては、セセリ肉取り出し装置は、係止具の移動経路に関して第1刃物の上流側に配設されて、胸椎と頸椎の高さを計測する高さ計測装置を備える。
胸椎と頸椎の高さを計測して、胸椎の高さよりも僅かに低い高さで胴部セセリ肉に筋入れすることにより胴部セセリ肉の収量が増加し、頸椎の高さよりも僅かに高い位置で首部に筋入することにより頸椎を削り取ることなく首部セセリ肉の収量を増加させることができる。
本発明の好ましい態様においては、セセリ肉取り出し装置は、係止具の向きを変える係止具回転機構を備える。
作業者が係止具の移動方向に直交する方向に向き、首付き胴ガラを手前側に引いて胴部を係止具に係止する作業形態が好適である。この場合、係止時には胴部は係止具の移動方向に直交する方向に差し向けられている。一方筋入作業は胴部から首部へ向けて行われるので、係止作業から筋入作業までの間に、胴部の向きを係止具移動方向側方から前方へ90°回転させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の全体斜視図である。
図2】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える胸椎頸椎高さ計測装置と第1ナイフの斜視図である。
図3】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える挟持具の斜視図である。
図4】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の部分斜視図である。
図5】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える胸椎頸椎高さ計測装置の斜視図である。
図6】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える第1ナイフの斜視図である。
図7】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える第2ナイフの斜視図である。
図8】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の斜視図である。
図9】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の斜視図である。
図10】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の斜視図である。
図11】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の部分斜視図である。
図12】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の側面図である。
図13】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える係止具の側面図である。
図14】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置が備える第2ナイフと固定ローラーの斜視図である。
図15】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の斜視図である。
図16】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の斜視図である。
図17】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の斜視図である。
図18】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の斜視図である。
図19】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の側面図である。
図20】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す係止具の側面図である。
図21】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す第2ナイフと固定ローラーの斜視図である。
図22】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す第2ナイフと固定ローラーの斜視図である。
図23】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す挟持具の斜視図である。
図24】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す挟持具の斜視図である。
図25】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す挟持具の斜視図である。
図26】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す挟持具の斜視図である。
図27】本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置の作動を示す残余部除去装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る食鳥セセリ肉取り出し装置を説明する。以下の説明において各図の矢印I、II、III、IV、V、VI の方向を前方、後方、右方、左方、上方、下方と呼ぶ。
図1に示すように、食鳥セセリ肉取り出し装置1は、首付き胴ガラ100の胴部100aを係止する複数の係止具2と、係止具2が取り付けられて前後に延在する無端コンベア3とを備えている。
無端コンベア3の上側走行部に対峙して、図1に白抜き矢印で示す上側走行部の走行方向に関して上流側から下流側へ向けて、図2に示す胸椎頸椎高さ計測装置4、図1、2に示す胴部セセリ肉に筋入する第1ナイフ5、図1に示す首部セセリ肉に筋入する第2ナイフ6が順次配設されている。
無端コンベア3の下側走行部に対峙して、図3に示す挟持具7が配設されている。
図4に示すように、無端コンベア3には、個々の係止具2に対峙してセンサドグ8が取り付けられている。特定の一つの係止具2を間に挟んで一対のセンサドグ8が配設され、他の係止具2に対峙して単一のセンサドグ8が配設されている。
図5、6、7に示すように、胸椎頸椎高さ計測装置4、第1ナイフ5、第2ナイフ6に対峙して且つ無端コンベア3を間に挟んで一対の近接センサ9が配設され、挟持具7に図示しない近接センサ9が配設されている。
【0008】
図8~13に示す上側走行部にある係止具2に着目して係止具2を説明する。係止具2は、略直方体の台盤2aを備えている。台盤2aの上面の長手方向一端部に一対の長手方向深溝2aが形成されている。一対の長手方向深溝2aに挟まれて台盤2aの上面に単一の長手方向浅溝2aが形成されている。一対の長手方向深溝2aの終端部から台盤2aの上面に一対の長手方向浅狭溝2aが形成されて台盤2aの長手方向他端まで延在している。
係止具2は、一対の長手方向深溝2aに対峙して、図示しないカム機構によって駆動される一対の可動腕2bを備えている。可動腕2bの長手方向深溝2a終端部に対峙する端部が折り曲げられてストッパー2bを形成している。前記一対の可動腕2bは、図8、12に示す長手方向深溝2aに対峙する縁部が互いに離隔した退避位置と、図9、10、13に示す長手方向深溝2aに対峙する縁部が互いに接近した稼働位置との間で開閉動作する
図8から分かるように長手方向深溝2aの入口に対峙する可動腕2bと長手方向浅溝2aの入口には傾斜面2b、2a’が設けられている。
【0009】
図5に示すうように、胸椎頸椎高さ計測装置4はアーム4aと、アーム4aの下端に取り付けられた鋭利な歯を有する回転歯4bと、アーム4の上端を左右に貫通する軸の左端に取り付けられたエンコーダ4cとを備えている。前記の軸を支持する軸受けは図示しない所定の構造体に固定されている。
図6に示すように、第1ナイフ5は図示しないサーボモータによって上下に駆動されると共にエアシリンダ10によって左右に駆動される。一対の第1ナイフ5が、無端コンベア3の左右両側に配設されている。第1ナイフ5はバネ鋼の薄板で形成されており、刃部は刃引きされている。
図7に示すように、第2ナイフ6はサーボモータ11によって上下に駆動されると共にエアシリンダ12によって左右に駆動される。単一の第2ナイフ6が、無端コンベア3の左側に配設されている。第2ナイフ6はバネ鋼の薄板で形成されており、刃部は適度に刃引きされている。
図14に示すように、図示しないサーボモータによって上下に駆動される鼓形状の首固定ローラー13が、第2ナイフ6の僅かに後方に且つ係止具2の上方に配設されている。
図3に示すように、挟持具7は、サーボモータ14によって上下に駆動されると共に駆動機構15によって左右に接近離隔駆動される一対の爪16を備えている。
図4から分かるように、走行中の係止具2の向きを変える図示しないカム機構が配設されている。
図27に示すように、挟持具7の下流側に複数のフィンガー17が周側面に放射状に固定された円板17aと駆動モータとが配設されている。
胸椎頸椎高さ計測装置4の出力信号と近接サンサー9の検知信号に基づいてサーボモータ11、14、第1ナイフ5駆動用サーボモータ、首固定ローラー13駆動用サーボモータ、エアシリンダ10、12、駆動機構15の作動を制御する図示しない制御装置が配設されている。
【0010】
食鳥セセリ肉取り出し装置1の作動を説明する。
図1、4に示すように、無端コンベア3の上側走行部の始端部近傍で作業者200により係止具2に首付き胴ガラ100の胴部100aが係止される。この時、溝2a、2a、2aが左右方向に延在するように且つ溝2aが溝2aの右側に位置するように係止具2は差し向けられている。作業者200は無端コンベア3の左側に位置している。
作業者200は、首付き胴ガラ100の背中側を上方へ差し向けて首部100bを掴み、胴部100aの両側部(肋骨)を、可動腕2bが図8、12に示す退避位置にあり且つ前方へ移動しつつある台盤2の一対の深溝2aに差し入れ、首付き胴ガラ100を手前に引く。
図15~17、19に示すように、胴部100aの両側部が一対の深溝2aに案内され、胴部100aの胸椎端部100aが浅溝2aに案内されて、首付き胴ガラ100が手前に引き込まれ、胴部100aの首部100bとの接続部が深溝2aの終端部に当接する。胴部100a両側部の深溝2aへ進入は、図16から分かるように、可動腕2bの斜面2bと浅溝2aの斜面2a'とにより案内されてスムーズに行われる。
図示しないカム機構が作動して可動腕2bが図9、10、13に示す稼働位置へ移動し、図18、20に示すように、可動腕2bの深溝2aに対峙する縁部が互いに接近して胴部100aの背中側の胸椎近傍部を挟持すると共に、ストッパー2bが胴部100aの首部との接続部近傍に当接して、胴部100aの手前側への移動、ひいては首付き胴ガラ100の手前側への移動を停止させる。この結果、胴部100aひいては首付き胴ガラ100が係止具2に係止される。この時、図18から分かるように、首部100bは一対の浅溝2aの間で台盤2aの上面に載置されて下方から支持されている。
首付き胴ガラ100を係止した係止具2が前方へ移動すると、図示しないカム機構が作動して、図4に示すように、係止具2を上下軸回りに90度回転させて、首付き胴ガラ100の胴部100aを進行方向前方へ差し向ける。
【0011】
無端コンベア3の上側走行部の走行に伴って、一対のセンサドグ8に挟まれた前記特定の係止具2が図5に示すように胸椎頸椎高さ計測装置4に接近すると、前記一対の近接センサ9が前記一対のセンサドグ8の接近を検知し、図示しない前記制御装置に検知信号を送信する。
胸椎頸椎高さ計測装置4の回転歯4bの鋭利な歯がセセリ肉を貫通して胸椎に当接し、係止具2の移動に伴って頸椎に当接し、胸椎と頸椎の高さに応じてアーム4aの回転角が変動する。当該角度変動がエンコーダ4cを介して図示しない制御装置に送信され、制御装置は所定の基準点からの胸椎と頸椎の高さを認識すると共に当該特定の係止具2に識別番号1を付し、当該識別番号と胸椎と頸椎の高さとをセットにして記憶する。
前記特定の係止具2に後続する係止具2が胸椎頸椎高さ計測装置4に順次接近し、前記一対の近接センサ9の中の一方が単独のセンサドグ8の接近を順次検知し、前述と同様に胸椎と頸椎の高さが胸椎頸椎高さ計測装置4によって順次計測される。図示しない制御装置が後続の係止具2に2以降の連続した識別番号を順次付すと共に、当該係止具2に係止された首付き胴ガラ100の胸椎と頸椎の前記基準点からの高さと前記係止具2の識別番号とをセットにして順次記憶する。
この結果、個々の係止具2と当該係止具2に係止された胴ガラ100の胸椎と頸椎の前記基準点からの高さとが一対一対応に関係付けられて制御装置に記憶される。
【0012】
無端コンベア3の上側走行部の走行に伴って、識別番号1の係止具2が図6に示すように第1ナイフ5に接近すると、前記一対の近接センサ9が前記一対のセンサドグ8の接近を検知し、図示しない前記制御装置に検知信号を送信する。
制御装置は、一対の近接センサ9から同時にセンサドグ8の接近検知信号を受信したことにより、識別番号1の係止具2が第1ナイフ5に接近したことを認識する。
制御装置は識別番号1の係止具2に係止された首付き胴ガラ100の胸椎の高さ情報を記憶部から読み出し、図示しないサーボモータを駆動して第1ナイフ5の刃先を胸椎の基準点からの高さよりも僅かに低く位置決めし、次いでエアシリンダ10を駆動して第1ナイフ5の刃先を側方から胴部100aのセセリ肉100cに胸椎近傍まで差し込み、係止具2の移動に伴って首部近傍まで胴部セセリ肉100cに筋入する。胴部100aの通過後、第1ナイフ5は胴部100aから側方へ離れる。
次いで、識別番号2以降の係止具2が第1ナイフ5に順次接近し、前記一対の近接センサ9の中の一方が単独のセンサドグ8の接近を順次検知し、制御装置は識別番号2以降の係止具2の第1ナイフ5への接近を順次認識し、識別番号とセットで記憶した胸椎の高さ情報を記憶部から順次読み出し、図示しないサーボモータとエアシリンダ10とを駆動して、識別番号2以降の係止具2に係止された首付き胴ガラ100の胴部セセリ肉100cに、胸椎の高さよりも僅かに低い高さ位置で、胸椎近傍まで且つ首部近傍まで順次筋入れする。
図6の例では一対の第1ナイフ5が両側方から胴部100aに差し込まれて胴部セセリ肉100cに筋入れしているが、左右何れか一方の第1ナイフ5を胴部100aに差し込んで、胸椎を挟む左右何れかの胴部セセリ肉100cに筋入れしても良い。
【0013】
無端コンベア3の上側走行部の走行に伴って、識別番号1の係止具2が図7に示すように第2ナイフ6に接近すると、前記一対の近接センサ9が前記一対のセンサドグ8の接近を検知し、図示しない前記制御装置に検知信号を送信する。
制御装置は、一対の近接センサ9から同時にセンサドグ8の接近検知信号を受信したことにより、識別番号1の係止具2が第2ナイフ6に接近したことを認識する。
制御装置は、図示しないサーボモータを駆動して、図21、22から分かるように首固定ローラー13を下降させる。図22に示すように、鼓形状の首固定ローラー13の円板状両端部が台盤2aの一対の浅溝2aに係合して首固定ローラー13が左右方向に位置決めされる。首固定ローラー13の湾曲した中央部が首付き胴ガラ100の首部100bに当接し、台盤2aの上面と協働して首部100bを把持する。
制御装置は識別番号1の係止具2に係止された首付き胴ガラ100の頸椎の高さ情報を記憶部から読み出し、サーボモータ11を駆動して第2ナイフ6の刃先を頸椎の基準点からの高さよりも僅かに高く位置決めし、次いでエアシリンダ12を駆動して図22に示すように第2ナイフ6の刃先を側方から首部100bのセセリ肉100dに差し込み、頸椎上方を通過して首部セセリ肉100dを貫通させ、係止具2の移動に伴って首部セセリ肉100dに首部先端まで筋入する。第2ナイフ6は首部先端直前で上昇し首部先端の小骨との干渉を回避する。
首部100bの通過後、第2ナイフ6は首部100bから側方へ離れる。
次いで、識別番号2以降の係止具2が第2ナイフ6に順次接近し、前記一対の近接センサ9の中の一方が単独のセンサドグ8の接近を順次検知し、制御装置は識別番号2以降の係止具2の第2ナイフ6への接近を順次認識し、識別番号とセットで記憶した頸椎の高さ情報を記憶部から順次読み出し、固定ローラー13と第2ナイフ6とを駆動して、識別番号2以降の係止具2に係止された首付き胴ガラ100の首部セセリ肉100dに、頸椎の高さよりも僅かに高い位置で、首部先端まで順次筋入れする。
【0014】
無端コンベア3の上側走行部の終端近傍で、図示しないカム機構が作動して、係止具2が垂直軸回りに回転し、係止具2は首付き胴ガラ100の首部100bを進行方向前方へ差し向けた状態で、下側走行部へ進行する。
係止具2が下側走行部へ進行すると、筋入された首部セセリ肉100dが首部100bの残余部から離れて下方へ垂れ下がる。首部100bの残余部も首部セセリ肉100dの上方で下方へ垂れ下がる。
図3に示すように、係止具2が挟持具7に接近すると、挟持具7に取り付けられた図示しない近接センサ9がセンサドグ8の接近を検知し、図示しない制御装置に検知信号を送信する。
図23~26に示すように、一対の爪16の後方へ湾曲した先端部を首部100bの先端が通過した直後のタイミングで、制御装置がサーボモータ14と駆動機構15とを駆動して、一対の爪16を下方の退避位置から首付き胴ガラ100へ向けて上昇させると共に一対の爪16を互いに接近させる。下方へ垂れ下がった首部セセリ肉100dが互いに接近した一対の爪16の間に進入し、首付き胴ガラ100が後方へ移動し、一対の爪16が更に接近して互いに密着し、首部セセリ肉100dの胴部側基部を確りと挟持する。首付き胴ガラ100が更に後方へ移動し、側方から胸椎近傍まで筋入された胴部セセリ肉100cが、胴部100aの残余部から引き剥がされる。
【0015】
首付き胴ガラ100を係止した係止具2が挟持具7を通過すると、一対の爪16が互いに離隔すると共に下方の退避位置へ移動する。胴部セセリ肉100cを含む首部セセリ肉100dが下方へ落下して回収される。
図27に示す複数のフィンガー17が周側面に放射状に固定された円板17aが図中右回転し、フィンガー17が胴部100aを押して長手深溝2aから前方へ離脱させる。首付き胴ガラ100の残余部が下方へ落下して回収される。
下側走行部の終端近傍で、図示しないカム機構が作動して、係止具2が垂直軸回りに回転し、当該係止具2が上側走行部の始端に到達した時には、図4に示す方向に差し向けられている。
【0016】
人手による作業は係止具への首付き胴ガラの係止作業のみであり、作業効率が高い。また、連続的に移動する係止具への首付き胴ガラの手動係止作業は、接近する係止具を視認して予め作業準備できるので、作業者に与える心理的負担が少なく、作業効率が高い。
胴部セセリ肉100cは切除するのではなく側方から胸椎近傍まで筋入れした後、筋入した首部セセリ肉100dを挟持して引き剥がすので、セセリ肉に胸椎の破片は混入しない。
第1ナイフ5はバネ鋼の薄板で形成されており、刃部は刃引きされているので、肋骨に接触しても柔軟に変形して骨に食い込まず、骨を削らない。
第2ナイフ6はバネ鋼の薄板で形成されており、刃部は適度に刃引きされているので、頸椎に接触しても柔軟に変形して骨に食い込まず、骨を削らない。
尚、刃引きしないナイフや剛性の大きなナイフを用いて筋入する場合は、ナイフの高さを調整して肋骨や頸椎との干渉を確実に回避する必要がある。
第1ナイフ5、第2ナイフ6に代えて、第1回転刃、第2回転刃を配設しても良い。この場合、ナイフに比べて剛性が高くなるので、回転刃の高さ調整を正確に行って肋骨や頸椎との干渉を確実に回避する必要がある。
無端ベルト3の上側走行部で筋入を行い、下側走行部で下方へ垂れ下がった筋入後の首部セセリ肉100dを挟持することにより、胴部セセリ肉100cを効果的に首付き胴ガラ100から引き剥がすことができる。
一対の第1ナイフ5で両側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉100cに筋入れしているので胴部セセリ肉100cを容易に胴ガラから引き剥がすことができる。単一の第1ナイフ5で一側方から胸椎近傍まで胴部セセリ肉100cに筋入れした場合でも胴部セセリ肉100cを引き剥がすことができる。
首付き胴ガラ100の移動方向に対して一側方から頸椎を越えて反対側まで首部セセリ肉100dに筋入れすることにより、頸椎を削り取ることなく、首部からセセリ肉100dを分離することができる。
首付き胴ガラの胴部100aが係止具2の一対の可動腕2bによって確りと挟持され、首部100bが台盤2aの上面と首固定ローラー13の湾曲した中央部とによって把持されることにより、首部100bが伸直状態に維持されるので、第2ナイフ6の刃先は支障なく首部セセリ肉100dを貫通でき、首部先端まで筋入することができる。首部先端直前で第2ナイフ6が上昇することにより、第2ナイフ6と首部先端の小骨との干渉を回避することができる。
胸椎と頸椎の高さを計測して、胸椎の高さよりも低い高さで胴部セセリ肉100cに筋入れすることにより胴部セセリ肉100cの収量が増加し、頸椎の高さよりも僅かに高い位置で首部に筋入することにより首部セセリ肉100dの収量が増加する。
作業者200が係止具2の移動方向に直交する方向に向き、首付き胴ガラ100を手前側に引いて胴部100aを係止具2に係止する作業形態が好適である。この場合、係止時には胴部100aは係止具2の移動方向に直交する方向に差し向けられている。一方筋入作業は胴部100aから首部100bへ向けて行われるので、係止作業から筋入作業までの間に、胴部100aの向きを係止具移動方向側方から前方へ90°回転させる必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、食鳥セセリ肉の取り出しに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 食鳥セセリ肉引取り出し装置
2 係止具
3 無端コンベア
4 胸椎頸椎高さ計測装置
5 第1ナイフ
6 第2ナイフ
7 挟持具
100 食鳥の首付き胴ガラ
200 作業者
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