IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イム、ジン ギュの特許一覧

特開2023-159976高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法
<>
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図1
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図2
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図3
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図4
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図5a
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図5b
  • 特開-高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159976
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20231026BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F04C18/356 N
F04C29/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069940
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】522161845
【氏名又は名称】イム、ジン ギュ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジン ギュ
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AB03
3H129BB31
3H129CC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータリー圧縮機において、精密性及び耐久性が強化し、製造が能率的な、ヒンジベーンの製造方法を提供する。
【解決手段】原素材を平面状に成形する平圧延工程S10と、ヒンジベーンの基本形状に成形するヒンジ圧延工程S20と、製品を長く引き抜く引抜工程S30と、製品の形状を仕上げる鍛造工程S40と、平圧延工程S10から鍛造工程S40までを完了した製品を切断してから仕上げる1次バレル工程S50と、ヒンジベーンの加工余裕分を残すための荒削り工程S60と、窒化法を用いて表面硬化を進行する熱処理工程S70と、荒削り工程S60及び熱処理工程S70までを完了した製品を仕上げる2次バレル工程S80と、ローリングピストンに連結される連結部を加工する連結部成形工程S90と、ヒンジベーンの定められた寸法公差に合わせて加工する仕上げ削り工程S100と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原素材を平面状に成形する平圧延工程(S10)と、
ヒンジベーンの基本形状に成形し、一側終端に不完全な形態の連結部を形成するヒンジ圧延工程(S20)(S20-1)と、
製品を長く引き抜く引抜工程(S30)と、
製品の形状を仕上げる鍛造工程(S40)と、
前記平圧延工程(S10)から鍛造工程(S40)までを完了した長さが長い製品を、一定の長さに切断してから仕上げる1次バレル工程(S50)と、
ヒンジベーンの加工余裕分を残すための荒削り工程(S60)と、
窒化法を用いて表面硬化を進行する熱処理工程(S70)と、
前記荒削り工程(S60)及び熱処理工程(S70)までを完了した製品を仕上げる2次バレル工程(S80)と、
ローリングピストンに連結される連結部を加工し、仕上げ削り工程において加工すべき寸法に近づくような連結部を仕上げる連結部成形工程(S90)と、
ヒンジベーンの定められた寸法公差に合わせて加工する仕上げ削り工程(S100)と、を含み、
一側終端に、ローリングピストン(20)の連結溝(21)に挿入されるように円形を有する連結部(11)が形成され、残りの部分には、シリンダ(30)に挿入されて摩擦作用をする一定の厚さの胴体部(12)が形成され、連結部(11)と胴体部(12)との間には、胴体部(12)の厚さ及び連結部(11)の直径よりも縮小したサイズの首部(13)が形成されるヒンジベーンを製造することを特徴とする、高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程により、一側終端に、ローリングピストン(20)の連結溝(21)に挿入されるように円形を有する連結部(11)が形成され、残りの部分には、シリンダ(30)に挿入されて摩擦作用をする一定の厚さの胴体部(12)が形成され、連結部(11)と胴体部(12)との間には、胴体部(12)の厚さ及び連結部(11)の直径よりも縮小したサイズの首部(13)が形成され、ローリングピストン(20)との結合時、連結溝(21)の入口の首支持部(22)により支持されることを特徴とする、高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気や水、オイル等の流体の圧縮のためのロータリー圧縮機用ヒンジベーンに係り、さらに詳しくは、シリンダ内で回転するローリングピストンに密着して内部空間を形成し、内部空間を吸引室と圧縮室に区切るヒンジベーンにおいて、ローリングピストンに密着している状態で、高速作用でも耐久性が向上し、生産効率が高く、高速回転時、離脱されることを効率的に防止するためのヒンジベーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮機は、シェル(Shell)の内部空間に駆動力を発生させる駆動モータと、該駆動モータに結合して作動しながら冷媒を圧縮する圧縮ユニットと、を含む。
【0003】
このような圧縮機は、冷媒を圧縮する方式により、様々な形態に分けられるが、例えば、ロータリー圧縮機の場合、前記圧縮ユニットは、圧縮空間を形成するシリンダと、該シリンダの圧縮空間を吸引室と吐出室に分離するベーンと、前記ベーンを支持するとともに、前記シリンダと一緒に圧縮空間を形成する複数個のベアリング部材と、前記シリンダ内で回転可能に装着されるローリングピストンと、からなっている。
【0004】
前記ベーンは、前記シリンダに形成されたベーンスロットの内部に挿入され、端部が前記ローリングピストンの外周部に連結され、前記圧縮空間を二つに分けるようになり、圧縮過程中で、前記ベーンスロットの内部で持続的にスライド移動するようになる。
【0005】
この過程で、冷媒が漏れないように、ローリングピストンと密着した状態を維持しなければならない。
【0006】
しかしながら、最近は、エコ冷媒の使用が義務化されており、これにより、圧縮機が性能を発揮するのには高速回転が必須条件になっているが、従来、ベーンは、耐久性がよくなく、極めて速い速度で往復作用を繰り返すことにより、シリンダの作動溝と摩擦する胴体部の摩耗が頻繁であり、寿命が短く、円形の連結部も、ローリングピストンの連結溝の内部で堅固に支持されず、動きが発生するので、摩耗が発生し、連結部を連結溝が堅固に保持されず、連結部が連結溝から離脱することが頻繁であるという問題があり、それを解決するためのヒンジベーンの開発が切望されている状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-0620041号(2006年08月28日登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであって、ロータリー圧縮機において、精密性及び耐久性が強化し、製造が能率的な、ヒンジベーンの製造方法を提供し、ローリングピストンの高速回転状態でも、摩耗を最小化して、破損や離脱を防止することができるヒンジベーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明による高速回転時の離脱を防止するロータリー圧縮機用ヒンジベーン及びその製造方法は、原素材を平面状に成形する平圧延工程(S10)と、一側終端に不完全な形態の連結部を形成するヒンジ圧延工程(S20)(S20-1)と、製品を長く引き抜く引抜工程(S30)と、製品の形状を仕上げる鍛造工程(S40)と、前記平圧延工程(S10)から鍛造工程(S40)までを完了した長さが長い製品を、一定の長さに切断してから仕上げる1次バレル工程(S50)と、ヒンジベーンの加工余裕分を残すための荒削り工程(S60)と、窒化法を用いて表面硬化を進行する熱処理工程(S70)と、前記荒削り工程(S60)及び熱処理工程(S70)までを完了した製品を仕上げる2次バレル工程(S80)と、ローリングピストンに連結される連結部を加工し、仕上げ削り工程において加工すべき寸法に近づくような連結部を仕上げる連結部成形工程(S90)と、ヒンジベーンの定められた寸法公差に合わせて加工する仕上げ削り工程(S100)と、を含んで製造され、これにより、一側終端に、ローリングピストン20の連結溝21に挿入されるように円形を有する連結部11が形成され、残りの部分には、シリンダ30に挿入されて摩擦作用をする一定の厚さの胴体部12が形成され、連結部11と胴体部12との間には、胴体部12の厚さ及び連結部11の直径よりも縮小したサイズの首部13が形成されるヒンジベーンを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産が効率的であるとともに、耐久性が高いヒンジベーンを提供するようになるので、寿命の延長と安定した圧縮作用を期待することができ、ローリングピストンの高速回転環境でも、ヒンジベーンが離脱される恐れがなく、ロータリー圧縮機の短時間または長時間駆動にかかわらず、ヒンジベーンの離脱による故障の負担が少ないので、作業の効率性を増加させる効果がある。
【0011】
特に、高速回転時の離脱を防止するヒンジベーンを圧縮機に適用することにより、圧縮機の冷媒としてエコ冷媒が使えるようになり、圧縮機の機能を向上させるとともに、冷媒による環境問題を解決する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のヒンジベーンの製造方法を示すブロック図である。
図2】本発明のヒンジベーンの工程別成形工程を示す例示図である。
図3】本発明によるヒンジベーンの斜視図である。
図4】本発明によるヒンジベーンとローリングピストンの結合部分の拡大図である。
図5a】本発明のヒンジベーンがローリングピストンに結合された状態及び回転する状態の断面図である。
図5b】本発明のヒンジベーンがローリングピストンに結合された状態及び回転する状態の断面図である。
図6】本発明の荒削り工程及び仕上げ削り工程に用いられる研磨ラッピングマシンの例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における、高速回転時の離脱を防止するヒンジベーン及びその製造方法を詳しく説明するにあたって、本発明による実施例に基づいて説明するが、本発明の技術を本文書の実施例に記載された実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の実施例の様々な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/または代替物(alternatives)を含むものと理解されなければならないであろう。
【0014】
併せて、本発明の実施例を説明しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明していなくても、当該構成により予測可能な効果も認められなければならないことは当然である。
【0015】
図1乃至図2を参考して、本発明の製造方法について説明する。
【0016】
本発明によるヒンジベーン10は、長さが長い円形断面の原素材を加工する前、平面の形状に成形する平圧延工程(S10)が行われ、必要に応じて、7回まで圧延成形を進行する。
【0017】
上記のように平圧延工程(S10)を経た素材を、ヒンジベーン10の形状に成形するために、ヒンジ圧延工程(S20)(S20-1)が行われ、これは、ヒンジベーン10の基本的な輪郭を取るための成形作業であって、一側終端に円形の連結部を完成するための不完全な形態に作るための工程である。
【0018】
ヒンジ圧延工程(S20)(S20-1)で、ヒンジベーン10を基本的な形状に成形し、引き続き、ヒンジ引抜工程(S30)及び鍛造工程(S40)が順次行われる、このような工程は、後加工を容易に行うためのヒンジベーンの成形工程である。
【0019】
上記のように引抜工程(S30)及び鍛造工程(S40)を通じて長く作られたヒンジベーン10は、図3のように、一定の長さになるように切断した後、1次バレル工程(S50)を通じて、素材が成形される過程で形成された鋭いバリ(Burr)の除去及び表面粗さの改善が行われる。
【0020】
これらの工程は、原素材をヒンジベーン10の形状に作るための基礎成形が進行される1次加工工程である。
【0021】
1次加工工程で作られたヒンジベーン10は、荒削り工程(S60)を通じて、ヒンジベーン10に加工するための加工余裕分を残す。
【0022】
荒削り工程(S60)を経たヒンジベーン10は、熱処理工程(S70)を通じて、表面硬度を高め、窒化法を用いた窒化熱処理を進行するが、状況に応じて異なる熱処理での進行が可能である。
【0023】
熱処理工程(S70)を経たヒンジベーン10は、2次バレル工程(S80)を通じて、先立って進行した1次バレル工程(S50)と同様に、鋭いバリの除去及び表面粗さの改善が行われ、これが2次加工工程である。
【0024】
2次加工工程を終えたヒンジベーン10は、連結部成形工程(S90)を通じて、ヒンジベーン10の連結部11を仕上げる加工を実施し、最終の仕上げ削り工程で加工すべき寸法に近づくようになる。
【0025】
連結部成形工程(S90)を経たヒンジベーン10は、仕上げ削り工程(S100)を通じて、ヒンジベーン10の寸法公差に合わせて加工を進行し、研削加工機の研磨石を用いて精密に加工される。
【0026】
これらの工程は、ヒンジベーン10の加工のための仕上げ過程として進行される3次加工工程である。
【0027】
このような製造方法で加工されたヒンジベーン10を、図3乃至図5を参考して説明すれば、一側終端に、ローリングピストン20の連結溝21に挿入されるように円形を有する連結部11が形成され、残りの部分には、シリンダ30に挿入されて摩擦作用をする一定の厚さの胴体部12が形成され、連結部11と胴体部12との間には、胴体部12の厚さ及び連結部11の直径よりも縮小したサイズの首部13が形成され、ローリングピストン20との結合時、連結溝21の入口の首支持部22により支持される。
【0028】
本発明のヒンジベーン10は、耐久性が強くて、シリンダとの摩擦でも摩耗が少ないという長所を有し、連結部11及び首部13が、ローリングピストン20の連結溝21及び首支持部22により堅固な支持力が得られるようになるものである。
【0029】
さらに具体的に、ロータリー圧縮機に用いられるヒンジベーン10は、ヒンジベーン10の一側終端部に形成された連結部11が、シリンダ30の内部で回転軸40により回転するローリングピストン20の外周面のある一ヶ所に形成された連結溝21に固定されるようになり、従来のヒンジベーンのように、ローリングピストン20と当接するものではなく、連結部11と連結溝21が嵌め合いのように固定され、一緒に動くことにより、ヒンジベーン10の離脱に対する負担がなく、これによる作業の効率性が大いに増加されるようになる。
【符号の説明】
【0030】
S10 平圧延工程
S20、S20-1 ヒンジ圧延工程
S30 引抜工程
S40 鍛造工程
S50 1次バレル工程
S60 荒削り工程
S70 熱処理工程
S80 2次バレル工程
S90 連結部成形工程
S100 仕上げ削り工程
10 ヒンジベーン
11 連結部
12 胴体部
13 首部
20 ローリングピストン
21 連結溝
22 首支持部
30 シリンダ
40 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6