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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159978
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/429 20220101AFI20231026BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20231026BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20231026BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20231026BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20231026BHJP
   F24H 15/262 20220101ALI20231026BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231026BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F24H15/429
F24H4/02 C
F24H1/18 G
F24H15/10
F24H15/296
F24H15/262
H02J3/38 130
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069947
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】須本 彩月
(72)【発明者】
【氏名】中野 智也
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晴
(72)【発明者】
【氏名】梅原 淳
【テーマコード(参考)】
3L122
5G066
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA12
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA63
3L122AA64
3L122AA65
3L122AA73
3L122AB24
3L122AB44
3L122BA02
3L122BA12
3L122BA13
3L122BA32
3L122BA37
3L122BA41
3L122BA42
3L122BA44
3L122BB03
3L122BB13
3L122BB14
3L122BD11
3L122CA05
3L122CA16
3L122EA45
3L122EA46
3L122EA50
3L122FA02
3L122FA04
3L122FA05
3L122FA09
3L122GA08
5G066AA03
5G066AA05
5G066HA17
5G066HB06
5G066HB08
5G066JA02
5G066JB06
(57)【要約】
【課題】太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯した湯水を安全且つ容易に使用することができる貯湯給湯システムを提供すること。
【解決手段】ヒートポンプ熱源機(30)と、貯湯タンク(12)と、ヒートポンプ熱源機(30)によって加熱した湯水を貯湯タンク(12)に貯湯する貯湯運転及び貯湯タンク(12)の湯水を給湯設定温度に調整して給湯する給湯運転を制御する制御手段(15)を有し、商用電力の停電時に太陽光発電システム(1)の自立給電を受けて貯湯運転及び給湯運転を行う自立運転モードを備えた貯湯給湯システム(10)において、自立運転モードの貯湯運転を行う貯湯時間帯を設定する貯湯時間帯設定手段(25)をさらに備え、自立運転モードでは、制御手段(15)が貯湯時間帯に貯湯運転によって貯湯した貯湯タンク(12)の湯水を、貯湯時間帯に温度調整して浴槽(7)に湯張りする湯張り運転を行うように構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ熱源機と、貯湯タンクと、前記ヒートポンプ熱源機によって加熱した湯水を前記貯湯タンクに貯湯する貯湯運転及び前記貯湯タンクの湯水を給湯設定温度に調整して給湯する給湯運転を制御する制御手段を有し、商用電力の停電時に太陽光発電システムの自立給電を受けて前記貯湯運転及び前記給湯運転を行う自立運転モードを備えた貯湯給湯システムにおいて、
前記自立運転モードの前記貯湯運転を行う貯湯時間帯を設定する貯湯時間帯設定手段をさらに備え、
前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記貯湯時間帯に前記貯湯運転によって貯湯した前記貯湯タンクの湯水を、前記貯湯時間帯に温度調整して浴槽に湯張りする湯張り運転を行うことを特徴とする貯湯給湯システム。
【請求項2】
前記浴槽の自動排水栓を開閉する排水栓開閉手段を備え、
前記自立運転モードでは、前記浴槽に湯張りする前に前記排水栓開閉手段によって前記自動排水栓を閉止することを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯システム。
【請求項3】
電力供給が遮断されても記憶情報を保持する書き換え可能な記憶手段を備え、
前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記湯張り運転を行う場合に前記記憶手段に前記湯張り運転に関する情報を記憶させ、前記貯湯時間帯で前記自立給電が遮断された後に再開された場合に、前記記憶手段に記憶されている前記湯張り運転に関する情報に基づいて前記湯張り運転を再開することを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯システム。
【請求項4】
当日及び翌日の気象情報の取得のために外部通信網に接続される外部通信手段を備え、
前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記外部通信手段を介して取得した前記気象情報に基づいて当日と翌日の前記太陽光発電システムの発電量を予測し、予測した発電量に対応する前記太陽光発電システムの自立給電量が、前記貯湯運転の目標貯湯熱量に応じて設定される基準値よりも当日は大きく且つ翌日は小さい場合に、当日の前記貯湯時間帯に前記貯湯運転の目標貯湯熱量に加えて翌日の前記貯湯運転の目標貯湯熱量の一部を貯湯することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の貯湯給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力及び太陽光発電システムの発電電力を単独使用又は併用する貯湯給湯システムに関し、特に商用電力の停電時に太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯と給湯を行う貯湯給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプ熱源機によって加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を行い、貯湯された湯水を温度調整して給湯及び浴槽の湯張りを行う貯湯給湯システムが広く利用されている。電力供給を受けて作動するヒートポンプ熱源機は湯水の加熱に外気の熱を利用するので、貯湯給湯システムは屋外に設置される。また、給湯及び湯張りの温度調整には、貯湯された湯水と上水を混合する例えば混合弁を作動させるために電力が必要である。
【0003】
一方、環境負荷低減のために太陽光発電システムを備えた家庭が増加している。このような家庭では、例えば特許文献1~3のように、商用電力と太陽光発電システムの発電電力を併用して貯湯運転を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6846863号公報
【特許文献2】特許第6221933号公報
【特許文献3】特許第6454922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば災害発生によって、燃料ガスの供給遮断、商用電力の停電が長期間続くことがある。このような場合に、太陽光発電システムを備えた家庭では、太陽光発電システムの自立給電によって、日中に電力を確保することができる。そして、上水の供給が遮断されていなければ、日中に太陽光発電システムの自立給電を受けて作動する貯湯給湯システムの自立運転によって、ヒートポンプ熱源機で上水を加熱して貯湯槽に貯湯し、貯湯した湯水の温度を調整して給湯することが可能である。
【0006】
このとき、太陽光発電システムの自立給電は、例えば冷蔵庫のような他の機器においても使用される場合があり、有効に利用することが求められる。特許文献1~3には、商用電力の供給を受けながら発電した電力を有効に利用して貯湯することが記載されているが、商用電力との併用が必要なので、太陽光発電システムの自立給電のみ使用できる緊急時に適用することは困難である。
【0007】
また、発電可能な日中は、ユーザが不在のため、給湯機会がない場合がある。そして、発電していない時間帯にユーザが貯湯タンクに貯湯されている湯水を使用する場合、貯湯給湯システムでの温度調整ができないので、貯湯された高温の湯水による火傷の虞がある。また、上水の供給圧では貯湯タンクの湯水を給湯栓に供給することが困難な場合には、貯湯タンクから手動で湯水を取り出して運搬することになるが、高温の湯水による火傷の虞があると共に手間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、停電時に太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯した湯水を、安全且つ容易に使用することができる貯湯給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の貯湯給湯システムは、ヒートポンプ熱源機と、貯湯タンクと、前記ヒートポンプ熱源機によって加熱した湯水を前記貯湯タンクに貯湯する貯湯運転及び前記貯湯タンクの湯水を給湯設定温度に調整して給湯する給湯運転を制御する制御手段を有し、商用電力の停電時に太陽光発電システムの自立給電を受けて前記貯湯運転及び前記給湯運転を行う自立運転モードを備えた貯湯給湯システムにおいて、前記自立運転モードの前記貯湯運転を行う貯湯時間帯を設定する貯湯時間帯設定手段をさらに備え、前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記貯湯時間帯に前記貯湯運転によって貯湯した前記貯湯タンクの湯水を、前記貯湯時間帯に温度調整して浴槽に湯張りする湯張り運転を行うことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、貯湯給湯システムは、ヒートポンプ熱源機によって加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を行う。この貯湯給湯システムは、商用電力の停電時には太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯運転及び給湯運転を行う自立運転モードを有する。この自立運転モードでは、貯湯時間帯設定手段によって貯湯時間帯を設定し、設定した貯湯時間帯に貯湯タンクに貯湯された湯水を、貯湯時間帯に温度調整して浴槽に湯張りする。従って、太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯と浴槽への湯張りを行うので停電時でも入浴可能であり、太陽光発電システムが発電できない夜間でも、浴槽に湯張りされた湯水を入浴及び入浴以外の用途に安全且つ容易に使用することができる。
【0011】
請求項2の発明の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、前記浴槽の自動排水栓を開閉する排水栓開閉手段を備え、前記自立運転モードでは、前記浴槽に湯張りする前に前記排水栓開閉手段によって前記自動排水栓を閉止することを特徴としている。
上記構成によれば、貯湯時間帯に貯湯タンクに貯湯された湯水を浴槽に湯張りする前に、浴槽の自動排水栓を閉止する。従って、貯湯時間帯にユーザが不在でも浴槽から排水されないようにして、浴槽に湯張りすることができる。
【0012】
請求項3の発明の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、電力供給が遮断されても記憶情報を保持する書き換え可能な記憶手段を備え、前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記湯張り運転を行う場合に前記記憶手段に前記湯張り運転に関する情報を記憶させ、前記貯湯時間帯で前記自立給電が遮断された後に再開された場合に、前記記憶手段に記憶されている前記湯張り運転に関する情報に基づいて前記湯張り運転を再開することを特徴としている。
上記構成によれば、自立運転モードでは、湯張り運転中に太陽光発電システムの自立給電が遮断されて湯張り運転が中断された後で自立給電が再開された場合に、記憶手段に記憶された湯張り運転に関する情報に基づいて中断された湯張り運転を再開することができる。従って、太陽光発電システムの自立給電の電力変動又は他の機器の消費電力の変動によって湯張り運転が中断した場合でも、湯張り運転を再開して浴槽に湯張りすることができる。
【0013】
請求項4の発明の貯湯給湯システムは、請求項1~3の何れか1項の発明において、当日及び翌日の気象情報の取得のために外部通信網に接続される外部通信手段を備え、前記自立運転モードでは、前記制御手段は、前記外部通信手段を介して取得した前記気象情報に基づいて当日と翌日の前記太陽光発電システムの発電量を予測し、予測した発電量に対応する前記太陽光発電システムの自立給電量が、前記貯湯運転の目標貯湯熱量に応じて設定される基準値よりも当日は大きく且つ翌日は小さい場合に、当日の前記貯湯時間帯に前記貯湯運転の目標貯湯熱量に加えて翌日の前記貯湯運転の目標貯湯熱量の一部を貯湯することを特徴としている。
上記構成によれば、制御手段が気象情報に基づいて太陽光発電システムの当日と翌日の発電量を予測する。そして、自立運転モードの貯湯運転の目標貯湯熱量に応じて設定される基準値に対して、予測した当日の発電量に対応する自立給電量が大きく、且つ予測した翌日の発電量に対応する自立給電量が小さい場合に、当日に前もって翌日の目標貯湯熱量の一部を貯湯する。従って、当日は十分に発電可能で且つ翌日に十分に発電できないことが予測される場合に、前もって貯湯して翌日にも使用可能な湯水を増加させておくことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貯湯給湯システムによれば、停電時に太陽光発電システムの自立給電を受けて貯湯した湯水を、安全且つ容易に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯システムの全体構成を示す図である。
図2図1のヒートポンプ熱源機と貯湯給湯ユニットの説明図である。
図3】貯湯給湯システムの制御部の説明図である。
図4】本発明の実施例に係る貯湯給湯システムの自立運転モードのフローチャートである。
図5】実施例に係る自立運転モードの貯湯運転のフローチャートである。
図6】実施例に係る自立運転モードの目標貯湯熱量設定のフローチャートである。
図7】実施例に係る自立運転モードの湯張り運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0017】
最初に図1に基づいて、家庭用の太陽光発電システム1について説明する。
太陽光発電システム1は、複数のソーラーパネル2が発電した直流電力を接続ボックス3でまとめてパワーコンディショナ4に入力し、パワーコンディショナ4が発電電力として交流の電力に変換する。分電盤5は、太陽光発電システム1の発電電力を家庭内の複数の電源系統に分配し、使用されない余剰電力は電線6を介して外部に売電される。家庭内の消費電力に対して発電電力が不足する場合には、電線6から供給される交流の商用電力も併せて分配される。
【0018】
パワーコンディショナ4は、商用電力の停電時に発電電力がある場合に、分電盤5への給電を停止して非常用の電源系統にのみ電力供給するように手動で自立給電モードに切替えられる。自立給電モードの電力供給(自立給電)は、安全のために、家庭用の太陽光発電システム1では1500W以下に制限されている場合が多い。商用電力の停電時には、機器の電源線を非常用の電源系統に接続することによって、太陽光発電システム1の自立給電を受ける機器が作動する。機器の消費電力に対して自立給電が不足する場合には自立給電が停止され、一定時間経過後に自立給電が再開される。
【0019】
次に図1図2に基づいて貯湯給湯システム10について説明する。
貯湯給湯システム10は、貯湯給湯ユニット11とヒートポンプ熱源機30を有する。通常は、分電盤5から延びる複数の電力系統のうちの1つに貯湯給湯ユニット11の電源線11aが2点鎖線で示すように接続され、ヒートポンプ熱源機30から延びる電源線30aが貯湯給湯ユニット11に接続されている。この貯湯給湯システム10は、電線6から供給される商用電力と太陽光発電システム1の発電電力のうちの一方を単独で使用して、若しくはこれらを併用して、例えば貯湯運転、給湯運転等を行う。
【0020】
貯湯給湯ユニット11は、貯湯タンク12と燃焼式の補助熱源機13と湯水混合弁14を有し、貯湯運転においてヒートポンプ熱源機30で加熱した湯水を貯湯タンク12に貯湯する。また、貯湯給湯ユニット11は、給湯運転において、貯湯タンク12から出湯された湯水又は補助熱源機13によって加熱された湯水に、湯水混合弁14によって上水を混合して、設定された温度(給湯設定温度)に調整した湯水を給湯する。
【0021】
また、貯湯給湯ユニット11は、貯湯運転、給湯運転等を制御する制御部15(制御手段)を備えている。制御部15は、学習記憶した給湯使用状況に基づいて将来の給湯使用を予測し、この予測に基づいて設定した目標貯湯熱量に相当する湯水を給湯使用前に貯湯タンク12に貯湯するように貯湯運転を制御する。ヒートポンプ熱源機30は、制御部15からの貯湯運転の指令に基づいて、外気の熱を利用して貯湯タンク12から導入される湯水を加熱し、この加熱した湯水を貯湯タンク12に戻して貯湯する。
【0022】
貯湯運転によって貯湯タンク12に貯湯された湯水は、例えば給湯栓からの給湯、浴槽7の湯張りに使用される。また、例えば貯湯タンク12の湯水よりも高温の給湯の場合、補助熱源機13において燃焼熱を利用して加熱された湯水が給湯に使用される。浴槽7の追焚運転の場合には、追焚きポンプ21aを駆動して追焚き回路21を流れる湯水を、補助熱源機13で加熱した湯水と熱交換させて加熱する。
【0023】
貯湯タンク12の上部には、貯湯タンク12と湯水混合弁14を接続する出湯通路16が接続されている。出湯通路16は、湯水混合弁14に供給される湯水の温度を検知するための出湯温度センサ16aを備えている。また、貯湯タンク12の下部には、上水源から貯湯タンク12に上水を供給するための給水通路17が接続されている。給水通路17には、上水の温度を検知するための給水温度センサ17aが配設されている。
【0024】
湯水混合弁14は、出湯通路16から供給される湯水と、給水通路17から分岐して湯水混合弁14に接続されたバイパス通路18から供給される上水を混合する。給湯時には、湯水混合弁14の混合比率を調整することによって給湯設定温度に温度調整された湯水が、湯水混合弁14に接続された給湯通路19を介して給湯栓等に給湯される。給湯通路19には、温度調整された湯水の温度を検知するための給湯温度センサ19aが配設されている。
【0025】
浴槽7は、電動の自動排水栓7aを有する。給湯通路19から分岐して追焚き回路21に接続された湯張り通路20は、ノーマルクローズタイプの湯張り電磁弁20aを有する。制御部15は、浴槽7の湯張り時に自動排水栓7aを開閉する排水栓開閉手段として自動排水栓7aを閉止し、湯張り電磁弁20aに通電して湯張り電磁弁20aを開け、湯水混合弁14で湯張り設定温度に温度調整した湯水を給湯通路19から湯張り通路20と追焚き回路21を介して浴槽7に湯張りする。
【0026】
貯湯タンク12の下部にはヒートポンプ熱源機30に湯水を供給する往き通路22が接続され、このヒートポンプ熱源機30で加熱された湯水を貯湯タンク12に戻すための戻り通路23が貯湯タンク12の上部に接続されている。往き通路22に装備された貯湯ポンプ24の駆動によって、貯湯タンク12とヒートポンプ熱源機30の間で湯水が循環する。
【0027】
貯湯運転では、貯湯タンク12の下部からヒートポンプ熱源機30に導入された湯水が、設定された貯湯温度に加熱されて貯湯タンク12の上部に貯湯される。往き通路22には温度センサ22aが配設され、戻り通路23には温度センサ23aが配設されている。温度センサ22aで検知された温度の湯水が加熱されて温度センサ23aの検知温度が設定された貯湯温度になるように、制御部15が貯湯ポンプ24及びヒートポンプ熱源機30の駆動を制御する。
【0028】
貯湯タンク12の外周には、複数の貯湯温度センサ12a~12dが上下方向に所定の間隔を空けて配設され、貯湯タンク12内の湯水の温度及びその温度の湯水量、即ち貯湯熱量の検知が可能である。これら貯湯温度センサ12a~12dを含めて貯湯タンク12を覆う図示外の保温材によって、貯湯タンク12内の湯水の温度低下が抑制されている。
【0029】
ヒートポンプ熱源機30は、圧縮機31と凝縮熱交換器32と膨張弁33と蒸発熱交換器34を冷媒配管によって接続したヒートポンプ回路35を備えている。ヒートポンプ回路35に封入されている冷媒は、圧縮機31で圧縮されて高温になり、凝縮熱交換器32に送られる。そして凝縮熱交換器32において、高温の冷媒と貯湯タンク12から導入される湯水とを熱交換させ、熱交換により加熱された湯水が貯湯タンク12に貯湯される。凝縮熱交換器32から膨張弁33に送られた冷媒は、膨張弁33で膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器34で外気から吸熱してから再び圧縮機31に導入される。
【0030】
蒸発熱交換器34は、外気温度を検知する外気温度センサ34aと送風機34bを備えている。また、ヒートポンプ熱源機30は、圧縮機31、膨張弁33、送風機34b等を制御するヒートポンプ制御部36を備えている。ヒートポンプ制御部36は、貯湯給湯ユニット11の制御部15に通信可能に接続され、制御部15の指令に基づいてヒートポンプ熱源機30を制御する。
【0031】
制御部15には、ユーザが、例えば湯張り運転の開始操作、給湯設定温度と湯張り設定温度と設定湯張り量の設定操作を含む各種設定操作を行うための操作端末25が接続されている。図3に示すように、制御部15は演算処理装置15aとメモリー15bと通信部15cと記憶装置15dとインターフェース回路部15eを備えたマイクロコンピュータであり、カレンダー及び時計の機能を備えている。制御部15は、通信部15cを介して浴槽7の自動排水栓7a、操作端末25、ヒートポンプ制御部36と通信可能であり、インターフェース回路部15eを介して内蔵機器を駆動し、記憶装置15dに格納された制御プログラムに基づいて貯湯給湯システム10の貯湯運転、給湯運転等を制御する。
【0032】
例えば災害発生によって燃料ガスの供給遮断及び商用電力の停電が発生した場合に、貯湯給湯システム10のユーザは、太陽光発電システム1の自立給電を受けるために、図1のように貯湯給湯ユニット11の電源線11aをパワーコンディショナ4の非常用の電源系統に接続する。そしてユーザの操作端末25の操作によって、貯湯給湯システム10の動作モードが、通常モードから太陽光発電システム1の自立給電を受けて作動する自立運転モードに切り替えられる。
【0033】
操作端末25は貯湯時間帯設定手段であり、ユーザの操作端末25の操作によって、自立運転モードにおける貯湯運転を許可する時間帯が、貯湯時間帯として設定される。例えば環境によって日照量が多い時間帯が異なり、非常用の電源系統に接続される他の機器もあるので、自立給電が遮断され難い時間帯をユーザが設定する。尚、自立運転モードに切り替えられたときに、制御部15が、一般的に日射量が多い時間帯を貯湯時間帯として自動的に設定する機能(貯湯時間帯設定手段としての機能)を備えていてもよい。
【0034】
記憶装置15dは、メモリー15bと異なり、例えば不揮発性メモリーのように電力供給が遮断されても記憶情報を保持することができる書き換え可能な記憶手段である。制御部15は、自立運転モードでは、貯湯運転及び湯張り運転を行う場合に、これらの運転に関する情報を記憶装置15dに記憶させる。そして、自立給電が遮断されて貯湯運転及び湯張り運転が中断した後、自立給電が再開された場合に、記憶装置15dに記憶されているこれらの運転に関する情報(記憶情報)に基づいて中断時点から再開する。尚、記憶手段は、記憶装置15dとは別に設けられて、通信部15cを介して制御部15に接続されていてもよい。
【0035】
貯湯給湯システム10は、例えば携帯電話回線を使用して外部通信網8(インターネット)に接続可能な通信端末26(外部通信手段)を備えている。自立運転モードにおいて制御部15は、この通信端末26を介して、外部通信網8に接続されている気象情報を提供する外部気象サーバ9から当日及び翌日の気象情報を取得する。そして、取得した気象情報に基づいて、制御部15は太陽光発電システム1の当日と翌日の自立給電の電力量(自立給電量)を予測する。
【0036】
太陽光発電システム1の自立給電の上限が定まっているので、例えば晴れの場合に1500Wh、雨の場合に0Whのように、制御部15は例えば1時間毎の天気によって自立給電量を予測することができる。尚、制御部15が、通常時に操作端末25と家庭用の通信ゲートウェイ40を介して外部通信網8に接続されている場合には、商用電力の停電時に自立給電を受けて作動する通信ゲートウェイ40を介して外部通信網8に接続されてもよい。
【0037】
自立運転モードにおいて、制御部15は、設定された貯湯時間帯に、ヒートポンプ熱源機30によって加熱した湯水を貯湯タンク12に貯湯する貯湯運転を行う。そして貯湯時間帯に制御部15は、貯湯タンク12に貯湯された湯水を、設定されている湯張り温度に湯水混合弁14で調整して浴槽7に湯張りする湯張り運転を行う。この自立運転モードについて、図4図7のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0038】
太陽光発電システム1の自立給電を受けて自立運転モードが開始されると、図4のS1において現在が貯湯時間帯か否か判定する。このとき、例えば通信端末26を介して外部通信網8に接続されて、正しい日時が制御部15のカレンダー及び時計の機能に反映されるようにしてもよい。S1の判定がYesの場合はS2に進む。S1の判定がNoの場合はS1に戻る。
【0039】
次にS2において、記憶装置15d(記憶手段)に記憶されている記憶情報を読み込んでS3に進む。そしてS3において、記憶情報に基づき自立運転モードの貯湯が既に完了しているか否か判定する。S3の判定がNoの場合はS4に進み、S4において貯湯運転を開始してS5に進む。S3の判定がYesの場合は、貯湯運転を開始せずにS5に進む。
【0040】
S4で貯湯運転を開始した場合に、図5のS11において記憶情報に基づき貯湯が中断したか否か判定する。S11の判定がNoの場合はS12に進み、S12において貯湯運転の目標貯湯熱量を設定してS13に進む。そしてS13において、目標貯湯熱量の貯湯を開始してS15に進む。一方、S11の判定がYesの場合はS14に進み、S14において中断した目標貯湯熱量の貯湯を再開してS15に進む。
【0041】
次にS15において、目標貯湯熱量の貯湯が完了したか否か判定する。S15の判定がNoの場合はS16に進み、S16において貯湯運転に関する情報として貯湯途中情報を記憶装置15dに記憶させてS15に戻る。貯湯途中情報には、例えば日時と目標貯湯熱量と貯湯温度の情報が含まれている。
【0042】
S15の判定がYesの場合はS17に進み、S17において貯湯完了情報を記憶装置15dに記憶させて貯湯運転を終了する。貯湯完了情報には、例えば目標貯湯熱量の貯湯の完了日時の情報が含まれている。
【0043】
S12の目標貯湯熱量の設定は、図6のように、S21において現在の貯湯熱量を確認してS22に進み、S22において本日(当日)と翌日の目標貯湯熱量(貯湯温度及び貯湯量)を設定してS23に進む。自立運転モードの目標貯湯熱量は、例えば60℃の湯水で貯湯タンク12の容量を満たす初期目標熱量に予め設定されている。この初期目標熱量から現在の貯湯熱量を差し引いて目標貯湯熱量を設定することにより、本日貯湯する熱量を少なくして自立給電を他の機器で有効に使用することができる。
【0044】
次にS23において本日と翌日の気象情報を取得してS24に進み、S24において気象情報に基づき本日と翌日の自立給電量を予測してS25に進む。そしてS25において、本日と翌日の目標貯湯熱量に夫々対応する本日と翌日の基準値を設定してS26に進む。基準値は、目標貯湯熱量の貯湯に必要な電力量に相当する。尚、同じ目標貯湯熱量を貯湯する場合でも、例えば気象情報に含まれている外気温が高いほど基準値が小さくなるように設定することも可能である。
【0045】
S26において、予測された本日の自立給電量が本日の基準値より大きいか否か判定する。本日の自立給電量が足りるか否か判定するステップである。S26の判定がYesの場合はS27に進む。S26の判定がNoの場合は、S22で本日の目標貯湯熱量が設定されたのでリターンする。
【0046】
S27において、予測された翌日の自立給電量が翌日の基準値より小さいか否か判定する。翌日の自立給電量が不足するか否か判定するステップである。S27の判定がYesの場合はS28に進む。S27の判定がNoの場合は、S22で本日の目標貯湯熱量が設定されたのでリターンする。
【0047】
次にS28において、翌日の目標貯湯熱量の一部を加えるように本日の目標貯湯熱量を増加設定してリターンする。本日の自立給電量が本日の基準値より大きいため余裕があり且つ翌日の自立給電量が翌日の基準値より小さいため不足する場合に、本日に前もって翌日の目標貯湯熱量の一部を貯湯しておくためである。例えば貯湯運転の貯湯温度を上昇させることによって、増加設定した本日の目標貯湯熱量を貯湯することができる。
【0048】
次に図4のS5において、記憶情報に基づいて浴槽7への湯張りが完了しているか否か判定する。S5の判定がNoの場合はS6に進み、S6において湯張り運転を開始してS7に進む。S5の判定がYesの場合は、湯張り運転を開始せずにS7に進む。
【0049】
S6において湯張り運転が開始されると、図7のS31において記憶情報に基づき湯張りが中断したか否か判定する。S31の判定がNoの場合はS32に進み、S32において湯張り開始条件が成立したか否か判定する。湯張り開始条件は、例えば湯張り開始時刻が到来したことである。浴槽7の湯水は貯湯タンク12の湯水よりも速く降温するので、例えば貯湯時間帯終了の1時間前に湯張りを開始することによって温度の低下を抑制する。また、湯張り開始条件を、例えば湯張り設定温度で設定湯張り量の湯張りを行うことができる熱量が貯湯されたこととし、浴槽7への湯張り後の貯湯タンク12に貯湯を続けることによって貯湯可能な熱量を大きくすることもできる。
【0050】
S32の判定がNoの場合はS32に戻り、S32の判定がYesの場合にS33に進む。そしてS33において浴槽7の自動排水栓7aを閉止してS34に進み、S34において湯張り電磁弁20aを開けて湯張り設定温度で設定湯張り量の湯張りを開始してS36に進む。一方、S31の判定がYesの場合はS35に進み、S35において湯張り電磁弁20aを開けて中断した湯張りを再開してS36に進む。
【0051】
次にS36において、設定湯張り量の湯張りが完了したか否か判定する。S36の判定がNoの場合はS37に進み、S37において湯張り運転に関する情報として湯張り途中情報を記憶装置15dに記憶させてS36に戻る。湯張り途中情報には、例えば日時と湯張り設定温度と設定湯張り量と貯湯タンク12から湯張りに使用された熱量の情報が含まれている。
【0052】
S36の判定がYesの場合はS38に進み、S38において湯張り電磁弁20aを閉止すると共に、湯張り運転に関する情報として湯張り完了情報を記憶手段に記憶させて湯張り運転を終了する。湯張り完了情報には、例えば湯張り完了日時の情報が含まれている。
【0053】
次に図4のS7において、貯湯時間帯が終了したか否か判定する。S7の判定がNoの場合はS7に戻り、S7の判定がYesの場合にS8に進む。そしてS8において、貯湯運転が継続されている場合にはこの貯湯運転を終了させてS9に進む。貯湯時間帯の終了後は、貯湯給湯システム10の消費電力を抑制して、発電量の低下又は他の機器の消費電力の増加によって自立給電が遮断されないようにしている。湯張り運転が実行されている場合には、湯張り運転に必要な電力は貯湯運転と比べて小さいのでそのまま継続させるが、湯張り運転を終了させることもできる。
【0054】
次にS9において、給湯運転に備えて待機し、例えば日没により自立給電が遮断されると自立運転モードが終了する。翌日に太陽光発電システム1の自立給電が開始されると、自立運転モードで貯湯給湯システム10が起動する。
【0055】
日中でも例えば天気の悪化によって発電できなくなった場合、又は非常用の電源系統に接続されている機器の消費電力に対して自立給電が不足した場合に、自立給電が遮断され、自立運転モードが終了する。自立給電が再開されると貯湯給湯システム10が自立運転モードで起動し、記憶手段の記憶情報に基づいて、貯湯時間帯に貯湯運転と湯張り運転を開始する、又は中断した貯湯運転、湯張り運転を再開する。
【0056】
上記の貯湯給湯システム10の作用、効果について説明する。
貯湯給湯システム10は、ヒートポンプ熱源機30によって加熱した湯水を貯湯タンク12に貯湯する貯湯運転を行う。この貯湯給湯システム10は、商用電力の停電時に太陽光発電システム1の自立給電を受けて貯湯運転及び給湯運転を行う自立運転モードを有する。この自立運転モードでは、操作端末25(貯湯時間帯設定手段)によって貯湯時間帯を設定し、設定した貯湯時間帯に貯湯タンク12に貯湯された湯水を、貯湯時間帯に温度調整して浴槽7に湯張りする。従って、太陽光発電システム1の自立給電を受けて貯湯と浴槽7への湯張りを行うので停電時でも入浴可能であり、太陽光発電システム1が発電できない夜間でも、浴槽7に湯張りされた湯水を入浴及び入浴以外の用途に安全且つ容易に使用することができる。
【0057】
貯湯時間帯に貯湯タンク12に貯湯された湯水を浴槽7に湯張りする前に、制御部15(排水栓開閉手段)が浴槽7の自動排水栓7aを閉止するので、貯湯時間帯にユーザが不在でも浴槽7から排水されないようにして湯張りすることができる。
【0058】
自立運転モードで貯湯した湯水の湯張り中に太陽光発電システム1の自立給電が遮断されて湯張り運転が中断された後で自立給電が再開された場合に、記憶装置15d(記憶手段)に記憶された湯張り運転に関する情報に基づいて自立給電の遮断前に行っていた湯張り運転を再開することができる。従って、太陽光発電システム1の自立給電の電力変動又は他の機器の消費電力の変動によって湯張り運転が中断した場合でも、湯張り運転を再開して浴槽7に湯張りすることができる。同様に、自立運転モードの貯湯運転が中断した場合にも、記憶装置15dに記憶された貯湯運転に関する情報に基づいて中断した貯湯運転を再開することができる。
【0059】
制御部15は、取得した気象情報に基づいて太陽光発電システム1の当日と翌日の発電量を予測する。そして、自立運転モードの貯湯運転の目標貯湯熱量に応じて設定される基準値に対して、予測した当日の発電量に対応する自立給電量が大きいため余裕があり且つ予測した翌日の発電量に対応する自立給電量が小さいため不足する場合に、当日に前もって翌日の目標貯湯熱量の一部を貯湯する。従って、当日は十分に発電可能で且つ翌日に十分に発電できないことが予測される場合に、前もって貯湯して翌日にも使用可能な湯水を増加させておくことができる。
【0060】
太陽光発電システム1に蓄電システムが装備され、商用電力の停電時に自立給電可能なように自動的に切り替えられると共に、自立給電を受ける貯湯給湯システムが自動的に自立運転モードに切り替えられるようにしてもよい。自動排水栓7aではなく手動で閉止する排水栓の場合には、ユーザが排水栓を閉止することが必要だが、上記と同様に自立運転モードで湯張りすることが可能である。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0061】
1 :太陽光発電システム
2 :ソーラーパネル
3 :接続ボックス
4 :パワーコンディショナ
5 :分電盤
6 :電線
7 :浴槽
7a :自動排水栓
8 :外部通信網
9 :外部気象サーバ
10 :貯湯給湯システム
11 :貯湯給湯ユニット
12 :貯湯タンク
12a~12d:貯湯温度センサ
13 :補助熱源機
14 :湯水混合弁
15 :制御部(制御手段、自動排水栓開閉手段)
15d:記憶装置(記憶手段)
16 :出湯通路
17 :給水通路
18 :バイパス通路
19 :給湯通路
20 :湯張り通路
20a:湯張り電磁弁
21 :追焚き回路
22 :往き通路
23 :戻り通路
24 :貯湯ポンプ
25 :操作端末(貯湯時間帯設定手段)
26 :通信端末(外部通信手段)
30 :ヒートポンプ熱源機
31 :圧縮機
32 :凝縮熱交換器
33 :膨張弁
34 :蒸発熱交換器
35 :ヒートポンプ回路
36 :ヒートポンプ制御部
40 :通信ゲートウェイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7