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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159985
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】皮膚用又は筆記用マーカー組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20231026BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231026BHJP
   C09D 11/17 20140101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q1/02
A61K8/34
C09D11/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069957
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢亮
【テーマコード(参考)】
4C083
4J039
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC792
4C083AC842
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB21
4C083CC11
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE03
4J039AD09
4J039BC07
4J039BE02
4J039CA03
4J039EA36
4J039EA42
4J039FA07
4J039GA26
(57)【要約】
【課題】発色の良好な染料を用いて色別れを防止しつつ、容易に描線を除去でき、皮膚用であれば、染料の皮膚等への吸収・染着も防止することができ、筆記用であれば、子供用などのお絵かきペンとして有用となる、皮膚用又は筆記用マーカー組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、酸性染料1~5質量%と、下記A群のアミノアルキルホモポリマー又は下記A群、B群の各モノマーから重合されたアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水とを含み、pHが9.0未満であり、かつ、下記A群、B群から重合された共重合体は、A群のモノマーの比率が共重合体中30質量%超である皮膚用又は筆記用マーカー組成物。
A群:(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルなど
B群:(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなど
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸性染料1~5質量%と、アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水とを含み、pHが9.0未満であり、かつ、上記アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、下記A群から選ばれるモノマーから重合されたホモポリマー、又は、下記A群、B群のそれぞれから選ばれる各モノマーから重合された共重合体であると共に、A群のモノマーの比率が共重合体中30質量%超であることを特徴とする皮膚用又は筆記用マーカー組成物。
A群:
(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)t-ブチル
B群:
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル
【請求項2】
前記酸性染料が化粧品法定色素であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚用又は筆記用マーカー組成物。
【請求項3】
前記水溶性有機溶剤が炭素数3以下の低級アルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用又は筆記用マーカー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色の良好な染料を用いて色別れを防止しつつ、容易に描線を除去することが可能で、皮膚用では染料の皮膚等への吸収・染着も防止することができる皮膚用又は筆記用マーカー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の皮膚用マーカー組成物などとしては、例えば、
(1) エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール及び水等の内少なくとも一つの成分を溶剤とし、グリセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン又はその誘導体、ポリオキシプロピレン又はその誘導体の内少なくとも一つの成分を調整剤として、毒性の低い食用色素等を添加したことを特徴とする人体の皮膚に直接マークをするスキンマーク用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)、
(2) エチルアルコール、イノプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール及び水等の内、少なくとも一つ又は二つ以上の成分を溶剤とし、グリセリン、プロピレンゲリシール、ポリオキシエチレン又はその誘導体、ポリオキンプロピレン又はその誘導体の内、少なくとも一つ又は二つ以上の成分を調整剤として、塩基性染料の一種又は二種以上の色素を添加したことを特徴とする人体の皮膚に直接マークをするスキンマーク用インキ組成物(例えば、特許文献2参照)、
(3)無乳化剤重合樹脂エマルジョンを配合したことを特徴とするメイクアップ化粧料(例えば、特許文献3参照)、
(4)エステル部の炭素数が4~18のアクリル酸エステルモノマーの1種または2種以上と、メタクリル酸エステルモノマーの1種または2種以上とから得られる共重合ポリマーエマルジョンを配合したことを特徴とするメイクアップ化粧料(例えば、特許文献4参照)、
(5)イソプレンゴム成分を有する水性イソプレンゴムラテックスと、着色剤と、を含有することを特徴とするフェイスペイントやボディペイント等として使用する水性塗料組成物(例えば、特許文献5参照)、
(6)特定の非会合性ポリマー(アミノアルキルホモポリマー等)の存在下で、蛍光染料、特にオレンジの領域を有するもの等を含みケラチン物質に対する良好な染色親和性を有する化粧料(特許文献6参照)、
などが知られている。
【0003】
上記特許文献1、2のスキンマーク用インキ組成物においては、外科手術時のマーキング、食品へのマーキング等に使用できる「毒性の低い食用色素(局方色素)」又は「塩基性染料」を添加しているものであり、これらは、使用時に確実に皮膚等に固着されると同時に、簡単に落とすことができ、皮膚からの吸収等により体内に入ったとしても無害であることとしたものである。しかしながら、これらのインキ組成物は皮膚からの吸収等により体内に入った場合でも無毒であるが、体内に入らないように工夫したものではなく、所謂染色により皮膚の色を変えてしまうものであり、更なる改良が望まれていた。
また、上記特許文献3、4は、ボディペイント用にも使用できる組成物であり、皮膚への吸収を行わせないアプローチとしては顔料を用いるものがあるが、これらの文献では皮膜形成用のエマルジョン樹脂、特にアクリル系のエマルジョン樹脂を用いて、被膜形成性が良好で、これら皮膜の耐擦過性、耐水性などが良好であるので「化粧持ち」に優れたものとなっている。しかしながら、これらの組成物は、主に酸化鉄顔料を用いているので、エマルジョンとの比重差が大きいため、いわゆる色分れが起きやすく、安定性に難があるなどの課題があるものである。更には、化粧(描線)を落とす際にクレンジングオイル等のクレンジング用品を必要とするものであり、簡単に除去できないものである。
【0004】
上記特許文献5では、皮膜形成性の合成イソプレンゴムラテックスを用いて皮膚の「つっぱり感」等の不快な感覚を解消しようとしたものがあり、ここでは色材として染料も例示もなされている。しかしながら、当該文献5では、合成イソプレンゴムラテックスを用いているので優れた伸縮性、柔軟性を示すとしているが、ゴムの皮膜が縮もうとするため「引っ張られる感」がでるものと考えられ、直射日光などに対する耐候性にも劣るものと推測される。上記特許文献3、4同様にクレンジングオイル等のクレンジング用品を必要とするものであり、簡単に除去できないものである。
上記特許文献6では、アミノアルキルホモポリマー等と特定の蛍光染料を用いて、良好な染色親和性とシャンプー等に対する良好な耐性を有する組成物を開示している。しかしながらシャンプー等に対する良好な耐性を有するものであるので、耐水性等も堅牢なものである。
【0005】
一方、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどの筆記用マーカー組成物では、特に安全性を考慮することなどが求められており、また、容易に描線を除去することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55-137175号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明等)
【特許文献2】特開昭58-154772号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明等)
【特許文献3】特開昭54-49338号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明等)
【特許文献4】特開昭54-151139号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明等)
【特許文献5】特開2019-2002号公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明等)
【特許文献6】特開2004-307495号(特許第4239002号)公報(要約文、特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題、現状等に鑑み、これらを解消しようとするものであり、発色の良好な染料を用いて色別れを防止しつつ、容易に描線を除去することが可能で、皮膚用では更に染料の皮膚等への吸収・染着も防止することができ、また、筆記用では、更に幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサインペンとして有用となる、皮膚用又は筆記用マーカー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、少なくとも、所定量の酸性染料と、特定のコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水を含み、pHを特定値未満とすることにより、上記目的の皮膚用又は筆記用マーカー組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、少なくとも、酸性染料1~5質量%と、アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水とを含み、pHが9.0未満であり、かつ、上記アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、下記A群から選ばれるモノマーから重合されたホモポリマー、又は、下記A群、B群のそれぞれから選ばれる各モノマーから重合された共重合体であると共に、A群のモノマーの比率が共重合体中20質量%超であることを特徴とする。
A群:
(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)t-ブチル
B群:
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル
前記酸性染料が化粧品法定色素であることが好ましい。ここで、「化粧品法定色素」とは、厚生労働省が1996年に定めた医薬品、医薬部外品および化粧品に使用できる有機合成色素をいい、グループI、II、IIIに分類され、全部で83種類となっている。
前記水溶性有機溶剤が炭素数3以下の低級アルコールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発色の良好な染料を用いて色別れを防止しつつ、容易に描線を除去することが可能で、皮膚用では更に染料の皮膚等への吸収・染着も防止することができ、また、筆記用では、更に幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサイペンとして有用となる、皮膚用又は筆記用マーカー組成物が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0012】
本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、少なくとも、酸性染料1~5質量%と、アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水とを含み、pHが9.0未満であり、かつ、上記アミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、下記A群から選ばれるモノマーから重合された重合体、又は、下記A群、B群のそれぞれから選ばれる各モノマーから重合された共重合体であると共に、A群のモノマーの比率が共重合体中30質量%超であることを特徴とするものである。
A群:
(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)t-ブチル
B群:
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル
【0013】
本発明に用いる酸性染料としては、一般的に酸性染料が挙げられ、好ましくは、化粧品法定色素中の酸性染料のうち、少なくとも1種を用いることができる。
酸性染料の具体例としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色 106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色 201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下、同様)が挙げられる。
これらの酸性染料のうち、例えば、赤色系染料、黄色系染料、青色系染料などとを組み合わせることにより、黄色~茶色~黒色系への調色も可能となり、任意の色を調製することができる。
【0014】
これらの酸性染料の(合計)含有量は、皮膚用又は筆記用マーカー組成物全量に対して、1~5質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)、好ましくは、1~3%が望ましい。
この酸性染料の含有量が1%未満の場合、発色性が十分ではなくなり、一方、5%を超えると、重合体と染料の造塩効果が少なくなり、十分な造塩ができなかった染料の皮膚等への吸収に影響を与えるため、好ましくない。
【0015】
本発明に用いるアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、発色の良好な酸性染料を用いても色別れを防止しつつ、容易に描線を除去することが可能で、染料の皮膚等への吸収も防止するために含有する成分であり、また、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサイペンとして使用しても安全な成分であり、例えば、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸エチル・コポリマー、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸n-ブチル・コポリマーなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0016】
本発明のアミノアルキルホモポリマーは、上記アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー同様発色の良好な酸性染料を用いても色別れを防止しつつ、容易に描線を除去することが可能で、染料の皮膚等への吸収も防止するために含有する成分であり、また、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサイペンとして使用しても安全な成分であり、例えば、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルホモポリマー、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルホモポリマー、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)t-ブチルホモポリマーなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
本発明のアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、下記A群、B群のそれぞれから選ばれる少なくとも1種の各モノマーから重合されたコポリマー(共重合体)であり、水洗浄性の点、染料の皮膚等への吸収の点などから、下記A群のアミンモノマーの比率が、共重合体中(A群のモノマー+B群のモノマー+後述する重合開始剤等)に、30%超であることが必要であり、好ましくは、40%以上含まれることが望ましい。このアミンモノマーが30%以下で少なすぎると、水で流れなくなる傾向となり、水洗性という点から、染料が皮膚等へ残存するため、好ましくない。
A群:
(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)t-ブチル
B群:
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル
【0018】
上記B群等において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。特に好ましくは、皮膚等への描線の固着性を更に向上させる(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルの使用が望ましい。
上記A群において、特に好ましくは、水洗性を向上させるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの使用が望ましい。
【0019】
本発明に用いるアミノアルキルホモポリマーは、市販品があればそれを使用することができ、好ましくは、下記製造法により得られるアミノアルキルホモポリマーが望ましい。
本発明に用いるアミノアルキルホモポリマーは、少なくとも、上記A群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを、n-プロパノール等の溶媒に溶解し、アゾビスイソブチロニトリルなどを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更に必要に応じて重合性界面活性剤を用いて溶液重合することなどにより製造することができる。
【0020】
本発明に用いるアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、市販品があればそれを使用することができ、好ましくは、下記製造法により得られるアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが望ましい。
本発明に用いるアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、少なくとも、上記A群から選ばれる少なくとも1種のモノマーと、上記B群から選ばれる少なくとも1種のモノマーとを含む混合モノマーを、n-プロパノール等の溶媒に溶解し、アゾビスイソブチロニトリルなどを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更に必要に応じて重合性界面活性剤を用いて溶液重合することなどにより製造することができる。
【0021】
本発明において、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー成分のうち、上記A群のモノマーの含有量は、上記好ましい含有量の比率が、発色性、耐候性、安定性など点から望ましく、また、水洗性、染料の皮膚等への吸収などの点から上記含有量(30%超)とするものである。
【0022】
本発明において、上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記A群のモノマーのみ、又は、上記A群のモノマーと、上記B群のモノマーとを含む混合モノマーを、n-プロパノール等に溶解し、溶液重合することにより、樹脂固形分として10~50%の本発明に用いるアミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが得られることとなる。
得られる上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、固着性、水洗性として有用となるものである。
【0023】
本発明に用いる水溶性有機溶剤は、炭素数5以下の低級アルコールが挙げられ、特に酸性染料や得られる上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの溶解性、これらを含む組成物の粘度を低くすることができ、塗布具に充填して使用するとき、流出に好ましい。また、塗布後の塗膜の乾燥性にも好ましい。具体的には、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。好ましくは、炭素数3以下の低級アルコール、特に、安全性、取り扱い性などの点から、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールの使用が望ましい。
【0024】
用いる水溶性有機溶剤の含有量は、得られる上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの溶解性の点、酸性染料の溶解性の点から、皮膚用又は筆記用マーカー組成物全量に対して、好ましくは、40~80%(固形分量12~24%)、更に好ましくは、50~70%(固形分量15~21%)とすることが望ましい。
この水溶性有機溶剤の含有量を40%以上とすることにより、得られる上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの溶解性を向上させ安定な溶液とすることができ、また、僅かではあるが防腐効果が発揮されることとなり、一方、80%以下とすることにより、酸性染料の溶解性が更に良好となり、発色性の点において効果を発揮できる。
【0025】
本発明に用いる溶媒となる水としては、蒸溜水、イオン交換水、精製水、純水、超純水などを用いることができ、上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの溶解性の点、酸性染料の溶解性の点から、皮膚用又は筆記用マーカー組成物全量に対して、好ましくは、10~35%、更に好ましくは、15~30%とすることが望ましい。
【0026】
本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、少なくとも、酸性染料と、アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水を含有するものであるが、更なる溶解性の向上、各成分の溶存安定性の点から、必要に応じて、pH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤などを適宜用いることができ、また、皮膚用マーカー組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、香料などの任意成分を含有することができ、また、筆記用マーカー組成物においても、本発明の効果を損なわない範囲で、香料、防腐剤などの任意成分を含有することができる。
【0027】
本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、安定性、塗布性の点から、コーンプレート型粘度計標準コーンロータ コーン角度1°34′ コーン半径24mm、ずり速度38.3s-1東機産業社製 TVE―25Lによる温度25℃での粘度が10~30mPa・sとすることが好ましい。
上記粘度範囲における更に好ましい範囲は、皮膚用又は筆記用マーカー組成物の配合成分の種類により変動するものであるが、更に好ましくは、15~25mPa・sとすることが望ましい。
この粘度値を10mPa・s以上とすることにより、液ダレの起こさず、皮膚等塗布をすることができ、一方、30mPa・s以下とすることにより、皮膚へスムーズに塗布することができることとなる。
また、上記粘度範囲にするためには、酸性染料、アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、水、必要に応じて粘性調整剤などの各成分の量を好適に組み合わせるにより行うことができる。
【0028】
本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、着色性向上、皮膚刺激防止、溶解安定性のため、pHを9.0未満に調整するものであり、好ましくは、pHを4以上~8未満とすることが望ましい。
この皮膚用又は筆記用マーカー組成物のpHが9以上では、皮膚への染着性が低下し、pH4未満の場合、皮膚刺激を起こすことがある。
本発明において、pHの調整は、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸等の有機酸や5M塩酸などの無機酸又はその塩などのpH調整剤を用いて行うことができる。
【0029】
本発明において、pH調整剤を用いる場合、更に好ましくは、上記アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーとpH調整剤との配合比率は、質量比率で、15:10~15:1とすることが望ましく、特に好ましくは、15:8~15:3とすることが望ましい。
この比率を15:8~15:3とすることにより、pHを9.0未満とする弱酸性域等での皮膚への刺激が少ない皮膚用又は筆記用マーカー組成物となる。
【0030】
本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、常法により調製することができ、上記酸性染料の少なくとも1種、アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、水、水溶性有機溶剤などの各成分を上記各含有量の範囲で配合し均一に撹拌・混合することにより、製造することができる。
例えば、酸性染料と水などの溶媒を汎用のディスパーなどにて均一になるまで撹拌後、アミノアルキルホモポリマー、又は、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを混合した後、更に必要に応じて、pH調整剤、粘性調整剤などを加え、ディスパーなどにて均一になるまで、ホモミキサーなどにて撹拌して、皮膚用又は筆記用マーカー組成物を調製することができる。
【0031】
このように構成される本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物を使用に供するにあたっては、酸性染料、フェイス面、ボディ面などの皮膚部分(肌)に塗布することで肌を染めて皮膚部位に簡単に描画などを形成できる塗布具、または、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサイペンとして使用できる塗布具(筆記具含む)であれば、特に限定されず、例えば、皮膚用であれば、筆付き容器タイプ、へら付き容器タイプ、ボトルタイプ、チューブタイプ等の皮膚用塗布具、また、筆記用であれば、繊維束芯、筆毛、焼結芯などのペン先を有する筆記具を用いることができる。用いる皮膚用塗布具又は筆記用の塗布具の形状、構造等は特に限定されるものでない。
【0032】
このように構成される本発明の皮膚用又は筆記用マーカー組成物は、少なくとも、酸性染料1~5質量%と、特定のモノマーの組み合わせから重合されると共に、そのモノマーの比率が所定範囲となるアミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと、水溶性有機溶剤と、水を含み、pHが9.0未満とし、この皮膚用又は筆記用マーカー組成物を、上記塗布具等を用いて塗布したい所望の皮膚部位や筆記したい紙面や、被筆記面などに塗布又は筆記すれば、色別れもなく発色が良好であり、皮膚用であれば、更に染料の皮膚等への吸収も防止することができ、美麗な仕上がりを施すことができ、また、筆記用であれば、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサイペンとして使用しても安全であり、美麗な仕上がりを施すことができ、また、これらは簡単に水拭きなどで消去できるものである。
【実施例0033】
次に、製造例、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により制限されるものではない。
【0034】
〔製造例1~6:実施例1~6及び比較例1、2;皮膚用マーカー組成物等の調製〕
下記製造例1~6により、実施例1~6及び比較例1、2に用いるアミノアルキルホモポリマー又はアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを得た。以下において、「部」は質量部を示す。
【0035】
(製造例1)
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル31.6部、アゾビスイソブチロニトリル(V-601、富士フイルム和光純薬社製)1部、n-プロピルアルコール67.4部を用いて、下記手順で製造した。
次に、500ミリリットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付け、温水槽にセットし、上記材料を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を80℃まで昇温し、溶液重合を行った。6時間熟成して重合を終了し、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルポリマーを得た。
【0036】
(製造例2)
上記製造例1において、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル31.6部をメタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル31.6部に代えて、上記製造例1と同様にして、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチルポリマーを得た。
【0037】
(製造例3)
メタクリル酸エチル7.7部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル20部、アクリル酸2―エチルヘキシル3.9部、アゾビスイソブチロニトリル(V-601、富士フイルム和光純薬社製)1部、n-プロピルアルコール67.4部を用いて、下記手順で製造した。
次に、500ミリリットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付け、温水槽にセットし、上記材料を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を80℃まで昇温し、溶液重合を行った。6時間熟成して重合を終了し、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー〔メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル・アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸エチル・コポリマー〕を得た。
【0038】
(製造例4)
上記製造例4のメタクリル酸エチルを11部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを15部、アクリル酸2―エチルヘキシルを5.6部(全量100部)とした以外は、上記製造例1と同様にして、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを得た。
【0039】
(製造例5)
上記製造例4のメタクリル酸エチルを15.6部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを8部、アクリル酸2―エチルヘキシルを8部(全量100部)とした以外は、上記製造例4と同様にして、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを得た。
【0040】
(製造例6)
上記製造例4のメタクリル酸エチルを18.3部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルを4部、アクリル酸2―エチルヘキシルを9.3部(全量100部)とした以外は、上記製造例4と同様にして、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを得た。
【0041】
得られたアミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを用いて下記表1に示す配合組成により常法により皮膚用マーカー組成物および筆記用マーカー組成物を得た。
得られた皮膚用マーカー組成物および筆記用マーカー組成物について、下記各方法により、粘度値、pH値を測定した。
また、得られた各皮膚用マーカー組成物について、三菱鉛筆社製アイライナー・アイブロウ容器(UC-75、塗布部:ナイロン製ペン芯)を備えた塗布具に充填して、手の甲に塗布(筆記)して、下記評価基準で発色性、水洗性、耐擦過性について評価した。
一方、筆記用マーカー組成物について、充填容器は、皮膚用マーカー組成物と同様のものを使用し、筆記面A(ポリエステルフィルム面:パナック社製ルミラー100T60)、筆記面B(ポリプロピレンフィルム面:パナック社製トレファンB060-2500)に筆記して、下記評価基準で発色性、水洗性、耐擦過性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0042】
(粘度の測定方法)
上記方法で得られた各皮膚用マーカー組成物等について、コーンプレート型粘度計 標準コーンロータ コーン角度1°34′ コーン半径24mm、ずり速度38.3s-1 東機産業社製 TVE―25L による温度25℃の条件で粘度を測定した。
【0043】
(pHの測定方法)
上記方法で得られた各皮膚用マーカー組成物等をガラス電極pH計にて、25℃におけるpHを測定した。
【0044】
(発色性の評価基準)
評価基準:
〇:鮮やかな発色が認められる。
△:発色にわずかな薄さが認められる。
×:発色に著しい薄さが認められる。
【0045】
(耐擦過性の評価基準)
評価基準:
◎:乾燥後の指の腹での擦過による描線に変化なし。
〇:乾燥後の指の腹での擦過により描線にわずかな変化が認められた。
△:乾燥後の指の腹での擦過により描線に変化が認められた。
×:乾燥後の指の腹での擦過により描線は消去された。
【0046】
(水洗性の評価基準)
◎:流水で描線が完全に消去された。
〇:流水で描線に著しい変化が認められた。
△:流水で描線にわずかな変化が認められた。
×:流水での描線に変化なし。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1の結果をみると、本発明範囲となる実施例1~6の皮膚用マーカー組成物および筆記用マーカー組成物は、本発明の範囲外となる比較例1、2に較べ、皮膚面、各筆記面A、Bに対して、発色性、水洗性、耐擦過性について優れていることが判明した。また、驚くべきことに、ナイロン製ペン芯を使用後に観察したところ、ナイロン製ペン芯への染着が見られず、描線濃度・色調も安定していることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
フェイス面、ボディなどの塗布したい皮膚部位に簡単に塗布でき、容易に描線を除去することが可能で、色別れもなく発色が良好であり、皮膚用であれば、更に染料の皮膚等への吸収・染着も防止することができ、美麗な仕上がりを施すことができ、また、筆記用であれば、更に、幼児を含む子供用などのお絵かきペンなどを含むサインペンとして使用しても安全である皮膚用又は筆記用マーカー組成物が得られる。また、皮膚用であれば、アイブロウ化粧料、一時染毛料とすることもできる。