(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159989
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】方法、処理装置またはプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20231026BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20231026BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069962
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相賀 洋
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DJ01
(57)【要約】
【課題】透過体が用いられた建物の熱負荷を適切に計算する。
【解決手段】処理装置に実行させる、透過体で区画された室を持つ建物に対する熱負荷計算の方法であって、前記透過体を、光を透過する窓要素とする窓要素化処理と、前記透過体を、光を透過しない内壁要素とする内壁要素化処理と、前記窓要素及び前記内壁要素を用いて前記建物の熱負荷を計算する処理と、を含む方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置に実行させる、透過体で区画された室を持つ建物に対する熱負荷計算の方法であって、
前記透過体を、光を透過する窓要素とする窓要素化処理と、
前記透過体を、光を透過しない内壁要素とする内壁要素化処理と、
前記窓要素及び前記内壁要素を用いて前記建物の熱負荷を計算する処理と、
を含む方法。
【請求項2】
前記窓要素化処理は、
前記透過体よりも外側にある構造を、ひさしとしてモデル化する処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窓要素の熱貫流率はゼロである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内壁要素には、前記透過体と同じ熱伝導率、容積比熱、及び密度が設定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1または2の方法を実行する処理装置。
【請求項6】
請求項1または2の方法を処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法、処理装置またはプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、動的熱負荷計算を行う装置、プログラム等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術において、建物内部の間仕切などに光を透過する部材(以下、「透過体」とする)が用いられていた場合、建物の熱負荷計算を適切に実行することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は一態様として、処理装置に実行させる、透過体で区画された室を持つ建物に対する熱負荷計算の方法であって、前記透過体を、光を透過する窓要素とする窓要素化処理と、前記透過体を、光を透過しない内壁要素とする内壁要素化処理と、前記窓要素及び前記内壁要素を用いて前記建物の熱負荷を計算する処理と、を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内部に透過体が用いられた建物の熱負荷を適切に計算可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における透過体要素の設定フローである。
【
図2】実施形態における建物の(a)断面図及び(b)斜視図である。
【
図3】透過体要素とひさし要素の概要を示す図である。
【
図4】熱負荷計算用にモデル化した建物の説明図である。
【
図5】本実施形態に係るコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<計算方法>
以下に、本発明の実施形態の一つである透過体要素1について説明する。
【0009】
透過体要素1は、建物において外皮よりも内側に設置された透過体Gを、熱負荷計算に用いるための要素としたものである。透過体の具体例としては、ガラスやロールスクリーン、ブラインドなどが挙げられる。
【0010】
透過体要素1は、
図1のフローに基づいて設定される。以下に、設定方法の詳細を説明する。
【0011】
なお、以下においては、透過体Gを有する建物B(
図2)を熱負荷計算用のモデルMB(
図4)に変換する例を想定し、説明に用いることとする。建物Bは、透過体Gのほか、ガラスなどの透過体を少なくとも一部に有する外皮B1と、外皮B1に直交する2つの側壁B2と、天井B3と、床B6とを備える。また、これらの要素により建物B内の空間は仕切られており、2つの室B4、B5が形成される。
【0012】
ステップS1では、透過体要素1を、窓要素11と内壁要素12との2つの要素の複合体として設定する。すなわち、透過体要素1の性能は、内壁要素12と窓要素11という2つの要素の性能の複合として設定される。
【0013】
ステップS3では、窓要素11を日射取得のみを行う要素として設定し、特に窓要素11の熱貫流率を0(ゼロ)とする。窓要素11の日射の透過率及び反射率は、実際の透過体Gの物性にしたがって設定される。
【0014】
ステップS5において、窓要素11の外側(外皮、外壁のある方向)にひさし要素2を設定する。なお、窓要素11においては、室温変動に対する除去熱量重み係数WFの計算は行わない(S9)。
【0015】
ひさし要素2は、窓要素11に加えられる日射量を低減するための要素である。ひさし要素2は、側壁B2及び天井B3のうち、透過体Gの外側にある部分と同じ形状を備える要素として設定される(
図3)。窓要素11に与えられる日射量は、ひさし要素2の形状に基づいて低減される(詳細は後述)。
【0016】
次のステップS11では、内壁要素12の設定を行う。内壁要素12は、日射を透過しない要素、すなわち日射の透過率ゼロの要素である。一方、内壁要素12の熱伝導率、容積比熱、及び密度は、それぞれ、透過体Gの熱伝導率、容積比熱、及び密度と等しい値に設定される。
【0017】
さらにステップS19において、室B4、B5それぞれにおける室温変動に対する除去熱量重み係数WFに対する、内壁要素12の除去熱重み係数の算入を行う。具体的には、透過体Gの位置に内壁要素12を配置した室B4、B5の、室温変動に対する除去熱量重み係数WFIWを計算する。
【0018】
上記のような方法によってモデルMBを設定することにより、外皮を構成する窓のさらに内側に透過体Gを有する建物Bにおいても、動的熱負荷計算などの熱負荷計算を適切に実行することが可能となる(S21)。
【0019】
図4に示すモデルMBは、建物Bにおける、熱負荷計算用モデルの一部である。モデルMBは、外皮部MB1及び室部MB4、MB5を備え、これらはそれぞれ、外皮B1、室B4、B5に相当する。外皮部MB1、室部MB4、MB5は、図中黒丸で示すノード(節点)と、ノードを繋ぐエッジ(枝)で構成される。各エッジには、外皮B1や透過体G(透過体要素1)の物性に基づいて熱伝達率α
0、α
r1、α
r3、α
c1~α
c5が割り当てられる。各エッジは、割り当てられた熱伝達率にしたがってノード間の熱伝達を行う。なお、モデルMBは建物Bにおけるモデル化の一例を示すにすぎず、モデル化の方法は上記以外に様々なものが考えられる。
【0020】
<熱負荷計算>
熱負荷計算において、
図3に示す透過体要素1に対する日射は、窓要素11を通過する一方で、内壁要素12によって遮断される。上述の通り、窓要素11の日射の透過量は、実際の透過体Gの物性に基づいて設定されている。そのため、動的熱負荷計算の際、窓要素11を透過する日射量は、透過体Gの性能を適切に反映したものとなる。
【0021】
また、透過体要素1に到達する日射は、ひさし要素2によって、適切に計算される。ひさし要素2は、上述のとおり、側壁B2及び天井B3の形状に基づいて設定されている。そのため、
図3に示すように、側壁B2及び天井B3によって遮られる日射が適切に計算される。ひさし要素2の形状に基づき、ある日時における太陽高度及び方位と、透過体要素1に到達する日射量との関係が計算可能である。例えば、透過体要素1に入射する日射量は、外皮部MB1に入力される日射量に対して0以上1.0以下の範囲で係数が掛けられた、低減された量となる。このように透過体要素1(窓要素11)では、外皮部MB1における日射量よりも低減された日射量に基づいて、日射取得が計算される。
【0022】
熱貫流率ゼロの窓要素11では熱の貫流が行われない。一方、内壁要素12においては、透過体Gと等しい熱伝導率、容積比熱、及び密度が設定されている。そのため、透過体G周囲における貫流熱負荷は、内壁要素12を介して適切に計算される。
【0023】
このように、透過体要素1の熱負荷計算は、窓要素11と内壁要素12との組み合わせとして実行される。2要素による計算が複合される結果、モデルMBを用いた熱負荷計算が適切に実行され、建物Bにおける熱負荷を適切にシミュレートすることが可能となる。
【0024】
上記のようなモデルMBの設定方法は、処理装置上で機能可能なプログラムとして構成して、その処理装置上で機能させれば、自動的かつ簡便・迅速に実行されることとなる。
【0025】
例えば、
図5のブロック図に示す様に、プログラムを記憶する記憶装置30と処理装置40とを互いに通信可能に備えたコンピュータシステムCを構成し、処理装置40にモデルMBを用いた動的熱負荷計算を実行させることが可能である。
【0026】
プログラムを用いる場合、ステップS1-S19の一部または全部を予め手計算し、モデルMBの設定値として読み込ませた上で、プログラムに動的負荷計算を実行させてもよい。
【0027】
プログラムの具体例としては、建築設備技術者協会が提供するプログラムである、HASPやNew HASPを用いる方法などがある。HASP、New HASPを用いる場合、窓要素11におけるブラインド制御用限界日射量に対し、実際の日射量より十分大きな値(例えば1平方メートルあたり1000W)を入力することが好ましい。
【0028】
<効果>
(態様1)上記実施形態は、処理装置40に実行させる、透過体Gで区画された室B4、B5を持つ建物Bに対する熱負荷計算の方法であって、透過体Gを、光を透過する窓要素11とする窓要素化処理(S1-S5)と、透過体Gを、光を透過しない内壁要素12とする内壁要素化処理(S1、S19)と、建物Bの熱負荷を計算する処理(S21)と、を含む方法を態様1として示す。
【0029】
上記構成では、外皮を構成する窓のさらに内側に透過体Gを有する建物Bに対して、透過体Gをモデル化し、動的熱負荷計算などの熱負荷計算を適切に実行可能となる。そのため、例えばダブルスキンを設けた建物や、室内にブラインドやスクリーンを配置した建物などに対しても、適切な熱負荷計算が実行可能である。
【0030】
(態様2)態様1の方法において、窓要素化処理は、透過体Gよりも外側にある構造を、ひさしとしてモデル化する処理(S5)を含む。
【0031】
上記構成のようにひさし要素2を設定することにより、窓要素11における日射取得を適切にシミュレートして、熱負荷計算を実行することが可能となる。
【0032】
(態様3)態様1から2のいずれかの方法では、窓要素11の熱貫流率はゼロである。このような設定を行うことにより、窓要素11を介して日射熱負荷が計算される一方で、窓要素11では熱貫流が行われないものとされる。そのため、内壁要素12における熱貫流との重複が防止される。窓要素11を日射熱負荷計算のための要素とし、内壁要素12を日射以外の熱負荷計算のための要素として機能を分離させることにより、計算を容易に実施することが可能となる。
【0033】
(態様4)態様1から3のいずれかの方法において、内壁要素12には、透過体Gと同じ熱伝導率、容積比熱、及び密度が設定される。内壁要素12を日射以外の熱負荷計算要素として機能させることにより、計算を容易に実施することが可能となる。
【0034】
(態様5、態様6)上記実施形態は、態様1から4のいずれかの方法を実施する処理装置40、及び処理装置40に実行させるプログラムを提示している。
【0035】
<変形例>
上記実施形態において、透過体Gに対して、さらなる機能、性能を設定することが可能である。例えば、透過体Gがブラインドやスクリーンである場合、内壁要素12または窓要素11に空気を透過させる性能を持たせ、透気及びこれに伴う熱の移動による影響を熱負荷計算に加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
透過体要素1、窓要素11、内壁要素12
建物B、側壁B2、天井B3、室B4、B5、床B6
コンピュータシステムC、記憶装置30、処理装置40