(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159992
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20231026BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 N
H01F7/16 R
F16K31/06 305J
F16K31/06 305E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069965
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘紀
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA02
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE07
3H106GA13
3H106GA15
3H106GA20
5E048AA08
5E048AD01
(57)【要約】
【課題】コイルの磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引する電磁弁につき、可動鉄心が軸方向へ移動しても固定鉄心のフラットな吸引特性を広範囲に確保すること。
【解決手段】電磁弁1は、コイル2と、外側にコイル2が配置されるコア本体11と、コア本体11と同軸上で往復動可能に対向するバルブ4とを備える。電磁弁1は、バルブ4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力によりコア本体11がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成される。コア本体11は、その内部にボア11bを有し、バルブ4は、その少なくとも一部がボア11bに出入りするように軸方向へ移動可能に配置される。バルブ4の軸方向への移動に伴いボア11bの内周とバルブ4の外周とが対向するとき、ボア11bの内周とバルブ4の外周とが近接して対向する近接対向面積を一定に保つための保持手段が設けられる。保持手段は、バルブ4の外周に設けられた凹部4cである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁力を発生するコイルと、
外側に前記コイルが配置される固定鉄心と、
前記固定鉄心と同軸上で往復動可能に対向する可動鉄心と
を備え、前記可動鉄心を往復動させるために、前記コイルの発生する磁力により前記固定鉄心が前記可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、
前記固定鉄心は、その内部にボアを有し、前記可動鉄心は、その少なくとも一部が前記ボアに出入りするように軸方向へ移動可能に配置され、
前記可動鉄心の前記軸方向への移動に伴い前記ボアの内周に前記可動鉄心の外周が対向するとき、前記ボアの内周と前記可動鉄心の外周とが近接して対向する近接対向面積を一定に保つための保持手段が設けられる
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記保持手段は、前記可動鉄心の外周に設けられた凹部である
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁弁において、
前記保持手段は、前記固定鉄心の前記ボアの内周に設けられた凹部である
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁弁において、
前記保持手段は、前記可動鉄心の前記外周が前記ボアの前記内周と対向するよう露出する面積を一定とするように前記可動鉄心の前記外周に設けられた非磁性体である
ことを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、可動鉄心を往復動させるためにコイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「リニアソレノイド」が知られている。このリニアソレノイドは、コイルと、コイル内に設けられる固定鉄心と、固定鉄心と同軸上で対向する可動鉄心とを備える。ここで、固定鉄心は、可動鉄心と対向する端部に可動鉄心側に向かって広がるテーパ状の凹部が形成される第1吸引部と、第1吸引部より可動鉄心側に設けられる環状の第2吸引部とを有する。第2吸引部には、凹部のテーパ面に連続する筒状の内周面が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のリニアソレノイドは、可動鉄心が固定鉄心の凹部内に入ると、可動鉄心が受ける軸方向の吸引力が増加し、可動鉄心の径方向へ奪われる磁力の影響を補うようになっている。すなわち、可動鉄心が固定鉄心の凹部内に入ると、可動鉄心の径方向に奪われる磁力が増加する一方、可動鉄心の軸方向から受ける磁力も増加する。この二つの磁力のバランスにより、固定鉄心が可動鉄心に対しフラットな吸引力特性を持つ領域が生まれるようになっている。ところが、上記リニアソレノイドでは、固定鉄心の吸引力は、可動鉄心が固定鉄心に近付き過ぎると増加し、離れ過ぎると低下する。すなわち、固定鉄心の吸引力は、可動鉄心の変位の影響を受ける。そのため、固定鉄心のフラットな吸引特性が狭い範囲に限られていた。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁につき、可動鉄心の軸方向への移動(変位)にかかわらず固定鉄心のフラットな吸引特性を広範囲に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、通電により磁力を発生するコイルと、外側にコイルが配置される固定鉄心と、固定鉄心と同軸上で往復動可能に対向する可動鉄心とを備え、可動鉄心を往復動させるために、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、固定鉄心は、その内部にボアを有し、可動鉄心は、その少なくとも一部がボアに出入りするように軸方向へ移動可能に配置され、可動鉄心の軸方向への移動に伴いボアの内周と可動鉄心の外周とが対向するとき、ボアの内周と可動鉄心の外周とが近接して対向する近接対向面積を一定に保つための保持手段が設けられることを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、可動鉄心が固定鉄心と同軸上で往復動可能に対向しており、可動鉄心を往復動させるために、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成される。ここで、可動鉄心は、その少なくとも一部が固定鉄心のボアに出入りするように軸方向へ移動可能に配置され、可動鉄心の外周の一部が固定鉄心との間で磁気回路を形成する。そして、可動鉄心の軸方向への移動に伴いボアの内周に可動鉄心の外周が対向するとき、その対向箇所では、保持手段により、ボアの内周と可動鉄心の外周との近接対向面積が可動鉄心の移動にかかわらず一定に保たれる。従って、可動鉄心から固定鉄心へ流れる磁力は可動鉄心の軸方向への移動(変位)にかかわらず一定に保たれる。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、保持手段は、可動鉄心の外周に設けられた凹部であることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、可動鉄心の外周に凹部を設けるだけで保持手段が構成される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、保持手段は、固定鉄心のボアの内周に設けられた凹部であることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、固定鉄心のボアの内周に凹部を設けるだけで保持手段が構成される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術において、保持手段は、可動鉄心の外周がボアの内周と対向するよう露出する面積を一定とするように可動鉄心の外周に設けられた非磁性体であることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術の作用に加え、可動鉄心の移動にかかわらず、可動鉄心の外周がボアの内周と対向するよう露出する面積が非磁性体により一定に保たれる。従って、可動鉄心から固定鉄心への磁力の流れが非磁性体により遮断される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の技術によれば、コイルの発生する磁力により固定鉄心が可動鉄心を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁につき、可動鉄心の軸方向への移動(変位)にかかわらず固定鉄心のフラットな吸引特性を広範囲に確保することができる。
【0015】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、保持手段を構成するための可動鉄心の加工を簡素なものにすることができる。
【0016】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、保持手段を構成するための固定鉄心の加工を簡素なものにすることができる。
【0017】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の技術の効果に加え、固定鉄心の安定した吸引特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1実施形態に係り、
図1の電磁弁につきリングの近傍を拡大して示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、
図2のバルブの上端部近傍を更に拡大して示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図6】第1実施形態に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図7】第1実施形態の対比例に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図8】第1実施形態の対比例に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図9】第1実施形態の対比例に係り、バルブの移動過程を段階的に示す断面図。
【
図10】第1実施形態に係り、コア本体によるバルブの吸引力特性イメージを示すグラフ。
【
図11】第1実施形態に係り、コア本体によるバルブの吸引力特性イメージを示すグラフ。
【
図12】第1実施形態の対比例に係り、コア本体によるバルブの吸引力特性イメージを示すグラフ。
【
図13】第1実施形態の対比例に係り、コア本体によるバルブの吸引力特性イメージを示すグラフ。
【
図14】第1実施形態の変形例に係り、電磁弁につきバルブの上端部近傍を示す
図3に準ずる断面図。
【
図15】第2実施形態に係り、電磁弁につきバルブの上端部近傍を示す
図3に準ずる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、電磁弁を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[電磁弁の構成について]
図1に、この実施形態の電磁弁1を断面図により示す。この電磁弁1は、通電により磁力を発生するコイル2と、外側にコイル2が配置され、内側にボア11b,12aを有する略筒状のステータコア3と、ステータコア3と同軸上にて往復動可能に配置される略筒状のバルブ4とを備える。コイル2は、樹脂製のケーシング5により覆われ、そのケーシング5の外側が磁性材より形成されるヨーク6により覆われる。ケーシング5の一部には、給電用のコネクタ7が形成される。
【0021】
ステータコア3は、磁性材より形成され、
図1の上側に位置するコア本体11と、コア本体11から下方へ同軸に伸びる筒状のボディ12とから構成される。コア本体11は、その軸方向に伸びる中孔11a及び中孔11aに連続するボア11bを有し、ボディ12は、その軸方向に伸びるボア12aを有する。バルブ4は磁性材である鉄より形成され、中孔4aと中孔4aから弁座14へ向けて貫通する先孔4bを有する。コア本体11とボディ12との間には、非磁性材より形成されるリング13が配置される。コア本体11とボディ12は、リング13により接続され、それらの隣接する内周は同一の内径に設定されるが、リング13の部分で分断され凹みとなっている。バルブ4は、コア本体11と同軸上にて往復動可能に対向する。この実施形態で、コア本体11は鉄より形成され、この開示技術の固定鉄心の一例に相当し、バルブ4は、この開示技術の可動鉄心の一例に相当する。ボディ12の下端部には、バルブ4の下端部と対向する位置にてバルブ4が着座可能な弁座14が配置される。弁座14は、弁孔14aを有し、非磁性材より形成される。バルブ4の上端部とコア本体11の下端部との間には、バルブ4を弁座14に着座する方向(閉弁方向)へ付勢するスプリング15が設けられる。この電磁弁1は、コイル2への通電時に、各部材4,6,11,12の間で、
図1に破線で示すように磁気回路16が形成される。
【0022】
この電磁弁1は、バルブ4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力によりステータコア3(コア本体11)がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成される。すなわち、電磁弁1を開弁させるときは、コイル2の発生する磁力によりステータコア3(コア本体11)がバルブ4をスプリング15の付勢力に抗して軸方向へ吸引する。これにより、バルブ4が弁座14から離間(開弁)し、弁孔14aが開放される。この開弁状態では、弁孔14aと、バルブ4の中孔4a及びコア本体11のボア11b及び中孔11aが互いに連通し、その流路を流体が流れる。電磁弁1を閉弁させるときは、コイル2の磁力発生を停止し、ステータコア3(コア本体11)によるバルブ4の吸引を停止する。これにより、スプリング15の付勢力によりバルブ4が弁座14に着座(閉弁)し、弁孔14aが閉塞する。この電磁弁1は、ステータコア3(コア本体11)に対しバルブ4を往復動させる点でリニアソレノイドバルブを構成する。
【0023】
この実施形態では、コア本体11のボア11bは、その内径が大小二段に形成される。バルブ4は、その
図1における上端部がボア11bに出入りするように軸方向へ移動可能に配置される。そして、この電磁弁1は、バルブ4の軸方向への移動に伴いボア11bの内周にバルブ4の上端部の外周が対向するとき、ボア11bの内周とバルブ4の外周とが近接して対向する近接対向面積をバルブ4が移動する範囲内で一定に保つための保持手段が設けられる。
【0024】
[保持手段について]
リニアソレノイドバルブであるこの実施形態の電磁弁1は、シリンダ型(コア本体11にバルブ4が収まるタイプ)と対向磁極型(コア本体11にバルブ4が軸方向に対向するタイプ)の合成型により構成される。この合成型により得られる比例領域(バルブ4の変位に対しフラットな吸引力特性を有する領域)は、本来限定的となる。そこで、この実施形態では、バルブ4の変位に対しフラットな吸引力特性を持つ領域を拡張できるようにするために上記保持手段を次のように規定した。
【0025】
図2に、
図1の電磁弁1につきリング13の近傍を拡大した断面図により示す。
図3に、
図2のバルブ4の上端部近傍を更に拡大した断面図により示す。この実施形態では、
図2、
図3に示すように、保持手段は、バルブ4の先端部の外周に設けられた凹部4cにより構成される。すなわち、バルブ4の先端部の外周には、
図3に示すように、その端縁に隣接して、コア本体11のボア11bの内周と対向可能な縁面4dと、その縁面4dに続く凹部4cとが形成される。この縁面4dは、ボア11bの内周とバルブ4の外周とが近接して対向する近接対向面を構成する。これに対し、凹部4cでは、バルブ4の外周は、ボア11bの内周に対向可能ではあるが、ボア11bの内周に対し凹部4cの深さD1(
図3参照)の分だけ離れ、磁気ギャップとなっており、近接していない。この実施形態では、バルブ4の軸方向における凹部4cの長さL1(
図3参照)は、バルブ4がその軸方向へ移動(変位)する長さに近似するように設定される。
【0026】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、バルブ4がコア本体11と同軸上で往復動可能に対向しており、バルブ4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力によりコア本体11がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成される。ここで、バルブ4は、
図1の上端部がコア本体11のボア11bに出入りするように軸方向へ移動可能に配置され、バルブ4の上端部の外周の一部がコア本体11との間で磁気回路16を形成する。そして、バルブ4の軸方向への移動に伴いボア11bの内周にバルブ4の外周が対向するとき、その対向箇所では、凹部4c(保持手段)により、ボア11bの内周とバルブ4の外周との近接対向面積がバルブ4の移動にかかわらず一定に保たれる。
【0027】
図1~
図3において、バルブ4は、コア本体11の吸引により上方へ移動する。
図4~
図6に、このバルブ4の移動過程を段階的に断面図により示し、
図4は、
図1~
図3に示すバルブ4の閉弁状態を、
図5は、バルブ4が閉弁状態から「X(Xは所定値)(mm)」上方へ移動した状態を、
図6は、バルブ4が閉弁状態から「X+α(αはXより小さい所定値)(mm)」上方へ移動した状態をそれぞれ示す。
図4~
図6に示すように、バルブ4の先端部(上端部)の外周は、バルブ4の移動に伴いコア本体11のボア11bの内周と対向するが、その外周がボア11bの内周と近接して対向する面は、上記した縁面4dのみである。すなわち、バルブ4が上方へ移動しても、凹部4cの部分がボア11bの内周と近接して対向することはない。そして、バルブ4の縁面4dとボア11bの内周とが対向する近接対向面積は、バルブ4の軸方向への移動(変位)にかかわらず一定となる。従って、
図4~
図6に破線矢印で示すように、バルブ4からコア本体11へ流れる磁力はバルブ4の軸方向への移動(変位)にかかわらず一定に保たれる。このため、この実施形態では、コイル2の発生する磁力によりコア本体11がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁1につき、バルブ4の軸方向への移動(変位)にかかわらずコア本体11のフラットな吸引特性を広範囲に確保することができる。
【0028】
図7~
図9に、この実施形態の保持手段(凹部4c)を持たない対比例に係り、そのバルブ4の移動過程を段階的に断面図により示す。
図7は、バルブ4の閉弁状態を、
図8は、バルブ4が閉弁状態から「X(mm)」上方へ移動した状態を、
図9は、バルブ4が閉弁状態から「X+α(mm)」上方へ移動した状態をそれぞれ示す。
図7~
図9に示すように、バルブ4の先端部(上端部)の外周は、バルブ4の移動に伴いバルブ4がボア11bに没入する部分の全部がボア11bの内周と近接して対向することになる。そして、バルブ4の外周とボア11bの内周とが対向する近接対向面積は、バルブ4の軸方向への移動(変位)に伴い増加する。従って、
図7~
図9に破線矢印で示すように、バルブ4からコア本体11へ流れる磁力はバルブ4の軸方向への移動(変位)に伴い増加する。このため、この対比例では、バルブ4の軸方向への移動(変位)によってコア本体11の吸引力が変化し、コア本体11のフラットな吸引特性を確保することができない。
【0029】
ここで、
図10、
図11に、この実施形態のコア本体11によるバルブ4の吸引力特性イメージをグラフにより示す。一方、
図12、
図13に、対比例のコア本体11によるバルブ4の吸引力特性イメージをグラフにより示す。
図10、
図12は、横軸にバルブストロークを、縦軸に吸引力(コア本体11の)及び電流値(コイル2の)をそれぞれ示す。
図11、
図13に、横軸に電流値(コイル2の)を、縦軸にバルブストローク(流体の流量)をそれぞれ示す。
図10~
図13において、コア本体11による吸引力と、バルブ4の移動に要する必要吸引力との関係を黒丸でプロットした。
【0030】
図12、
図13に示すように、対比例では、電流値の増大に伴いバルブストローク(流量)の傾きが小さくなることがわかる。これに対し、
図10、
図11に示すように、本実施形態では、バルブストロークの増大による吸引力の低下が抑制され、これにより電流値の増大に伴うバルブストローク(流量)の傾きの低下が抑制されていることがわかる。
【0031】
また、この実施形態の構成によれば、バルブ4の外周に凹部4cを設けるだけで保持手段が構成される。この結果、保持手段を構成するためのバルブ4の加工を簡素なものにすることができる。
【0032】
[第1実施形態の変形例]
ここで、第1実施形態の変形例について説明する。
図14には、この変形例に係り、電磁弁1につきバルブ4の上端部近傍を
図3に準ずる断面図により示す。第1実施形態では、保持手段として、バルブ4の先端部の外周に凹部4cを設けた。これに対し、その変形例として、
図14に示すように、凹部4cに非磁性体21を設けることもできる。すなわち、バルブ4の先端部の外周がコア本体11のボア11bの内周と対向するよう露出する面積を一定とするようにバルブ4の外周に非磁性体21を設けるのである。非磁性体21として、鋼、鋳鉄、銅及びアルミニュウム、又はそれらの合金を使用することができる。
【0033】
[変形例の電磁弁の作用及び効果について]
この変形例の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に加え、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、この変形例では、バルブ4の軸方向への移動にかかわらず、バルブ4の外周がコア本体11のボア11bの内周と対向するよう露出する面積が非磁性体21により一定に保たれる。従って、バルブ4からコア本体11への磁力の流れが非磁性体21により遮断される。このため、コア本体11の安定した吸引特性を確保することができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0035】
[保持手段について]
この実施形態では、保持手段の構成の点で第1実施形態と異なる。
図15に、この実施形態の電磁弁1につきバルブ4の上端部近傍を
図3に準ずる断面図により示す。
図15に示すように、この実施形態では、保持手段は、コア本体11のボア11bの内周に設けられた凹部11cにより構成される。すなわち、
図15に示すように、バルブ4の外周には凹部4cは設けられておらず、コア本体11のボア11bの内周に、その開口端に隣接して、バルブ4の先端部の外周と対向可能な縁面11dと、その縁面11dに続く凹部11cとが形成される。この縁面11dは、バルブ4の外周とボア11bの内周とが近接して対向する近接対向面を構成する。これに対し、凹部11cでは、ボア11bの内周は、バルブ4の外周に対向可能ではあるが、バルブ4の外周に対し凹部11cの深さの分だけ離れ、磁気ギャップとなっており、近接していない。この実施形態では、ボア11bの軸方向における凹部11cの長さは、バルブ4がその軸方向へ移動(変位)する長さに近似するように設定される。
【0036】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第1実施形態とは異なり、コア本体11のボア11bの内周に凹部11cを設けるだけで保持手段が構成される。このため、保持手段の構成するためのコア本体11の加工を簡素なものにすることができる。
【0037】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0038】
(1)前記第1実施形態の変形例では、非磁性体21をバルブ4の外周に設けた凹部4cに設けたが、バルブの外周に凹部を形成することなく、バルブの外周に非磁性体の膜をコーティングしたり、バルブの外周を非磁性化処理したりすることもできる。
【0039】
(2)前記第2実施形態では、保持手段としてコア本体11のボア11bの内周に凹部11cを設けたが、この凹部11cに非磁性体を設けたり、コア本体のボアの内周に凹部を設けることなく、そのボアの内周に非磁性体の膜をコーティングしたり、ボアの内周を非磁性化処理したりすることもできる。
【0040】
(3)前記各実施形態では、ステータコア3を、複数部品、すなわちコア本体11、ボディ12及びリング13より構成したが、ステータコアを一つの部品で構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この開示技術は、流体流量を制御するために使用されるリニアソレノイドタイプの電磁弁に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 電磁弁
2 コイル
4 バルブ(可動鉄心)
4c 凹部(保持手段)
4d 縁面
11 コア本体(固定鉄心)
11b ボア
11c 凹部(保持手段)
11d 縁面
21 非磁性体