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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159994
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069969
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085CC03
5E085DD07
5E085EE02
5E085JJ38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コネクタハウジングに収容された端子の内部への芯線の挿入を案内することができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、第1芯線12Aを有し、第1電線11Aに接続されるコネクタ10であって、第1端子20と、第1端子20を収容するとともに、第1電線11Aが挿通されるコネクタハウジングと、を備え、第1端子20は、第1端子本体21と、前後方向にスライド移動可能とされる第1スライド部22と、を備え、第1端子本体21は、挟持部25を備え、第1スライド部22は、芯線挿入口と、第1芯線12Aに対して挟持部25を押圧する押圧部32と、第1スライド部22の後端部に配されて前方に向かうほど第1スライド部22の内方へと傾斜するガイド部34と、押圧部32とガイド部34とを前後方向に連続的につなぐ連結部35と、を有し、ガイド部34は押圧部32よりも第1スライド部22の外方に配されている。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯線を有し、前後方向にのびる第1電線に接続されるコネクタであって、
前記第1芯線に接続される第1端子と、
前記第1端子を収容するとともに、前記第1電線が挿通されるコネクタハウジングと、を備え、
前記第1端子は、第1端子本体と、前記第1端子本体に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第1スライド部と、を備え、
前記第1端子本体は、前記第1芯線を挟持する挟持部を備え、
前記第1スライド部は、
前記第1芯線が後方から挿入される芯線挿入口と、
前記芯線挿入口から挿入された前記第1芯線に対して前記挟持部を押圧する押圧部と、
前記第1スライド部の後端部に配されて前方に向かうほど前記第1スライド部の内方へと傾斜するガイド部と、
前記押圧部と前記ガイド部とを前後方向に連続的につなぐ連結部と、を有し、
前記ガイド部は前記押圧部よりも前記第1スライド部の外方に配されている、コネクタ。
【請求項2】
第2芯線を有し、前後方向にのびる第2電線に接続されるコネクタであって、
前記第2芯線に接続される第2端子を備え、
前記第2芯線の直径は前記第1芯線の直径より大きく、
前記第2端子は前記コネクタハウジングに収容され、
前記第2電線は前記コネクタハウジングに挿通され、
前記第2端子は、第2端子本体と、前記第2端子本体に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第2スライド部と、を備え、
前記第2端子本体は、前記第2芯線を挟持する挟持部を備え、
前記第2スライド部は、
前記第2芯線が後方から挿入される芯線挿入口と、
前記芯線挿入口から挿入されて前後方向における前記挟持部の位置に配された前記第2芯線を前記挟持部に押圧する押圧部と、を備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2端子本体は前記第1端子本体である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1スライド部は、前記ガイド部よりも前記第1スライド部の外方に配されるとともに、前後方向に延びる外壁部を備え、
前記ガイド部の後端部と前記外壁部の後端部とは接触しており、
前記コネクタハウジングは、前記外壁部の後端部と前後方向に対向する係止部を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1スライド部は、前記外壁部と前記連結部とによって挟まれる中間壁部と、前記外壁部と前記中間壁部とを連続的に接続するとともに、U字状に折り曲げられた折り曲げ部と、を備え、
前記中間壁部は前記外壁部に対して折り重ねられている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1スライド部は、前記押圧部の前側に連続的に形成される傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前方に向かうほど前記第1スライド部の外方へと傾斜し、前記押圧部よりも前記第1スライド部の外方に配されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングは、前記第1端子を収容するインナーハウジングと、前記インナーハウジングの後側部分に組み付けられるとともに、前記第1電線が挿通されるリアホルダと、を備え、
前記リアホルダは、仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、のいずれかの位置で前記インナーハウジングに係止されるようになっており、
前記押圧部が前記第1芯線を前記挟持部に押圧している状態では、前記リアホルダは本係止位置に係止可能とされている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2019-145208号公報(下記特許文献1)に記載の雌端子が知られている。この雌端子は、延び方向に延びる変形可能な上側接続片及び下側接続片を備えた端子本体と、端子本体に対して延び方向に移動可能なスライド部と、を備える。上側接続片及び下側接続片の間に電線の芯線が配された状態で、スライド部を移動させることにより、スライド部に設けられた上側当接部及び下側当接部が上側接続片及び下側接続片を芯線に押圧して、端子本体と電線とを電気的に接続できるようになっている。また、下記特許文献1には、この雌端子を備えたコネクタとして、雌端子を収容するコネクタハウジングと、コネクタハウジングの延び方向の後端部に取り付けられるリアホルダと、を備えるコネクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-145208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタは、以下のように製造される。まず、コネクタハウジング内に雌端子を収容し、コネクタハウジングの後端部にリアホルダを組み付ける。この状態では、リアホルダはコネクタハウジングに対して仮係止位置に保持されている。次に、リアホルダの挿通孔に電線を挿通し、雌端子の内部に電線の芯線を挿入する。このとき、芯線は上側接続片と下側接続片との間に配される。続いて、端子本体に対してスライド部を前方に移動させることで、上側当接部及び下側当接部が上側接続片及び下側接続片を芯線に押圧し、雌端子と電線との接続が行われる。最後に、リアホルダを仮係止位置より前方の本係止位置に移動させ、雌端子をコネクタハウジング内に抜け止めすることで、コネクタの製造が完了する。
【0005】
上記の構成において、コネクタハウジング及びリアホルダは変更せず、電線の直径を小さくして、上記と同様のコネクタを製造することを考える。電線の直径が小さくなると、電線の芯線を挟む上側接続片及び下側接続片を押圧するための上側当接部及び下側当接部の上下方向の間隔を小さくする必要がある。このため、上記の構成に比べて、スライド部の内径が上下方向に小さくなる。したがって、スライド部の構成を変えずにスライド部のサイズを単純に小さくした場合、芯線がスライド部の後端部に当たって、雌端子の内部に芯線を挿入することができない場合がありうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、第1芯線を有し、前後方向にのびる第1電線に接続されるコネクタであって、前記第1芯線に接続される第1端子と、前記第1端子を収容するとともに、前記第1電線が挿通されるコネクタハウジングと、を備え、前記第1端子は、第1端子本体と、前記第1端子本体に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第1スライド部と、を備え、前記第1端子本体は、前記第1芯線を挟持する挟持部を備え、前記第1スライド部は、前記第1芯線が後方から挿入される芯線挿入口と、前記芯線挿入口から挿入された前記第1芯線に対して前記挟持部を押圧する押圧部と、前記第1スライド部の後端部に配されて前方に向かうほど前記第1スライド部の内方へと傾斜するガイド部と、前記押圧部と前記ガイド部とを前後方向に連続的につなぐ連結部と、を有し、前記ガイド部は前記押圧部よりも前記第1スライド部の外方に配されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタハウジングに収容された端子の内部への芯線の挿入を案内することができるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかるコネクタの分解斜視図である。
図2図2は、コネクタの斜視図である。
図3図3は、第1スライド部の斜視図である。
図4図4は、第2スライド部の斜視図である。
図5図5は、第1スライド部及び第2スライド部の背面図である。
図6図6は、第1スライド部の断面図である。
図7図7は、図6のA-A断面図である。
図8図8は、第2スライド部の断面図である。
図9図9は、第1端子本体の斜視図である。
図10図10は、第1スライド部が第1端子本体に対して離間位置に配された第1端子の側面図である。
図11図11は、図10のB-B断面図である。
図12図12は、第1スライド部が第1端子本体に対して押圧位置に配された第1端子の側面図である。
図13図13は、第1端子をリアホルダの後方から見た図である。
図14図14は、第2端子をリアホルダの後方から見た図である。
図15図15は、第1スライド部が第1端子本体に対して離間位置に配された第1端子がコネクタハウジングに収容された状態を示す断面図である。
図16図16は、図15の状態から第1芯線が第1端子の内部に挿通された状態を示す断面図である。
図17図17は、図16の状態から第1スライド部を第1端子本体に対して押圧位置に移動させ、リアホルダを本係止位置に移動させた状態を示す断面図である。
図18図18は、第2スライド部が第2端子本体に対して離間位置に配された第2端子がコネクタハウジングに収容された状態を示す断面図である。
図19図19は、図18の状態から第2芯線が第2端子の内部に挿通された状態を示す断面図である。
図20図20は、図19の状態から第2スライド部を第2端子本体に対して押圧位置に移動させ、リアホルダを本係止位置に移動させた状態を示す断面図である。
図21図21は、図15の拡大図であって、リアホルダの案内部と第1端子のガイド部との位置関係を示す図である。
図22図22は、図18の拡大図であって、リアホルダの案内部と第2端子の後端部との位置関係を示す図である。
図23図23は、比較例にかかるコネクタの断面図であって、リアホルダの案内部と第3端子の後端部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示のコネクタは、第1芯線を有し、前後方向にのびる第1電線に接続されるコネクタであって、前記第1芯線に接続される第1端子と、前記第1端子を収容するとともに、前記第1電線が挿通されるコネクタハウジングと、を備え、前記第1端子は、第1端子本体と、前記第1端子本体に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第1スライド部と、を備え、前記第1端子本体は、前記第1芯線を挟持する挟持部を備え、前記第1スライド部は、前記第1芯線が後方から挿入される芯線挿入口と、前記芯線挿入口から挿入された前記第1芯線に対して前記挟持部を押圧する押圧部と、前記第1スライド部の後端部に配されて前方に向かうほど前記第1スライド部の内方へと傾斜するガイド部と、前記押圧部と前記ガイド部とを前後方向に連続的につなぐ連結部と、を有し、前記ガイド部は前記押圧部よりも前記第1スライド部の外方に配されている、コネクタである。
【0011】
第1芯線の直径が小さくなると、第1芯線を挟持部に押圧する押圧部を備える第1スライド部が前後方向に直交する方向に小さくなりやすい。よって、第1スライド部の内部に第1芯線を挿入することが困難になる場合がありうる。
【0012】
上記の構成によると、連結部を介して押圧部の後方にガイド部が設けられる。このガイド部は前方に向かうほど第1スライド部の内方へと傾斜している。したがって、第1芯線の第1スライド部の内部への挿入が案内される。また、ガイド部は押圧部よりも第1スライド部の外方に配されている。これにより、芯線挿入口を前後方向に直交する方向に大きくしやすいから、第1芯線を第1スライド部内へと挿入しやすくなる。
【0013】
(2)上記のコネクタは、第2芯線を有し、前後方向にのびる第2電線に接続されるコネクタであって、前記第2芯線に接続される第2端子を備え、前記第2芯線の直径は前記第1芯線の直径より大きく、前記第2端子は前記コネクタハウジングに収容され、前記第2電線は前記コネクタハウジングに挿通され、前記第2端子は、第2端子本体と、前記第2端子本体に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第2スライド部と、を備え、前記第2端子本体は、前記第2芯線を挟持する挟持部を備え、前記第2スライド部は、前記第2芯線が後方から挿入される芯線挿入口と、前記芯線挿入口から挿入されて前後方向における前記挟持部の位置に配された前記第2芯線を前記挟持部に押圧する押圧部と、を備えることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、第2芯線の直径が第1芯線の直径よりも大きい場合でも、コネクタハウジングを変更することなく、第1芯線を有する第1電線、及び第2芯線を有する第2電線の双方に接続されたコネクタを構成することができる。
【0015】
(3)前記第2端子本体は前記第1端子本体であることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、第2端子本体として第1端子本体を使用することができるから、第2端子本体を新たに製造しなくてよい。よって、コネクタの製造コストを低減することができる。
【0017】
(4)前記第1スライド部は、前記ガイド部よりも前記第1スライド部の外方に配されるとともに、前後方向に延びる外壁部を備え、前記ガイド部の後端部と前記外壁部の後端部とは接触しており、前記コネクタハウジングは、前記外壁部の後端部と前後方向に対向する係止部を備えることが好ましい。
【0018】
このような構成によると、外壁部を設けることで、第1スライド部の後端部とコネクタハウジングとの係止代を大きくすることができる。また、ガイド部の後端部と外壁部の後端部とが接触しているから、外力等によるガイド部の変形を抑制することができる。
【0019】
(5)前記第1スライド部は、前記外壁部と前記連結部とによって挟まれる中間壁部と、前記外壁部と前記中間壁部とを連続的に接続するとともに、U字状に折り曲げられた折り曲げ部と、を備え、前記中間壁部は前記外壁部に対して折り重ねられていることが好ましい。
【0020】
このような構成によると、中間壁部を設けることにより、第1スライド部を前後方向に直交する方向に大きくすることができる。これにより、第1芯線の直径が小さい場合でも、第1端子を収容するコネクタハウジングの収容部の大きさに合わせて第1スライド部を構成しやすい。よって、収容部における第1端子のガタつきを抑制することができる。
【0021】
(6)前記第1スライド部は、前記押圧部の前側に連続的に形成される傾斜部を備え、前記傾斜部は、前方に向かうほど前記第1スライド部の外方へと傾斜し、前記押圧部よりも前記第1スライド部の外方に配されていることが好ましい。
【0022】
このような構成によると、第1端子本体に対して第1スライド部を前方にスライドさせる際、挟持部が傾斜部に摺接することにより、押圧部に対して挟持部を第1スライド部の内方へと導きやすい。よって、押圧部によって第1芯線を挟持部に押圧しやすくなる。
【0023】
(7)前記コネクタハウジングは、前記第1端子を収容するインナーハウジングと、前記インナーハウジングの後側部分に組み付けられるとともに、前記第1電線が挿通されるリアホルダと、を備え、前記リアホルダは、仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、のいずれかの位置で前記インナーハウジングに係止されるようになっており、前記押圧部が前記第1芯線を前記挟持部に押圧している状態では、前記リアホルダは本係止位置に係止可能とされていることが好ましい。
【0024】
このような構成によると、押圧部が第1芯線を挟持部に押圧している状態で、コネクタを前後方向に小さくすることができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<実施形態>
本開示の実施形態について、図1から図22を参照しつつ説明する。以下の説明においては、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0027】
[コネクタ]
図1及び図2に示すように、本実施形態にかかるコネクタ10は、第1電線11Aの端末に接続される第1端子20と、第2電線11Bの端末に接続される第2端子40と、第1端子20と第2端子40とを収容するとともに、第1電線11A及び第2電線11Bが挿通されるコネクタハウジング60と、を備える。
【0028】
[第1電線]
図16及び図17に示すように、第1電線11Aは、前後方向にのびて配されている。第1電線11Aは、第1芯線12Aと、第1芯線12Aの外周面を覆う第1絶縁被覆13Aと、を備える。第1芯線12Aは、導電性の金属からなり、複数の金属線を撚り合わせた撚線、または1本の金属線からなる単芯線である。第1絶縁被覆13Aは絶縁性の合成樹脂からなる。第1電線11Aの前端部では、第1芯線12Aが露出している。
【0029】
[第2電線]
図19及び図20に示すように、第2電線11Bは、前後方向にのびて配されている。第2電線11Bは、第2芯線12Bと、第2芯線12Bの外周面を覆う第2絶縁被覆13Bと、を備える。第2芯線12Bは、導電性の金属からなり、複数の金属線を撚り合わせた撚線、または1本の金属線からなる単芯線である。第2絶縁被覆13Bは絶縁性の合成樹脂からなる。第2電線11Bの前端部では、第2芯線12Bが露出している。図1に示すように、第2芯線12Bの直径は第1芯線12Aの直径よりも大きくなっている。第2絶縁被覆13Bの外径は第1絶縁被覆13Aの外径より大きくなっている。なお、第2絶縁被覆13Bの外径は第1絶縁被覆13Aの外径と同一であってもよい。
【0030】
[第1端子]
第1端子20は、導電性の金属から構成されている。第1端子20は、図1に示すように、第1端子本体21と、第1端子本体21に対して前後方向に移動可能な第1スライド部22と、を備える。第1端子本体21及び第1スライド部22は、導電性の金属板材にプレス加工等を施すことで形成されている。第1端子本体21及び第1スライド部22を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。第1端子本体21及び第1スライド部22の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0031】
[第1端子本体]
図9に示すように、第1端子本体21の前側部分は、前後方向に延びる角筒状の接続筒部23となっている。接続筒部23の上壁の前側には、ランス23Aが上方に山形状に突出して形成されている。図11に示すように、接続筒部23の内部には、弾性接触片23Bが設けられている。接続筒部23の内部には、板状をなす相手方端子(図示せず)が前方から挿入されるようになっている。接続筒部23内に挿入された相手方端子は、弾性接触片23Bと接触するようになっている。
【0032】
図9に示すように、接続筒部23の後方には角筒状をなす基部24が設けられている。基部24の側壁には、外方に突出する係止突起24Aが形成されている。基部24の後端部には、挟持部25が設けられている。
【0033】
[挟持部]
挟持部25は、基部24の上壁の後端部から後方に延出される上側接続片25Aと、基部24の下壁の後端部から後方に延出される下側接続片25Bと、を備える。上側接続片25Aと下側接続片25Bとは前後方向に細長い形状をなし、それらの前後方向の長さは同程度となっている。上側接続片25A及び下側接続片25Bは、基部24の後端部を支点として、上下方向に弾性変形可能に形成されている。図17に示すように、上側接続片25Aの下面、及び下側接続片25Bの上面は、第1芯線12Aを挟み付け、第1電線11Aと第1端子本体21とを電気的に接続できるようになっている。
【0034】
図9に示すように、上側接続片25Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部26Aが設けられている。下側接続片25Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部26Bが設けられている。上側保持突部26Aと、下側保持突部26Bとは、前後方向にずれた位置に設けられている。
【0035】
[第1スライド部]
図3に示すように、第1スライド部22は、前後方向にのびる角筒状をなしている。第1スライド部22は、前側筒部22Aと、前側筒部22Aの後側に連なる後側筒部22Bと、を備える。後側筒部22Bは前側筒部22Aよりも上下方向に小さくなっている。
【0036】
図3に示すように、後側筒部22Bは、底壁部27と、底壁部27に対向する第1天壁部28と、底壁部27の左端縁と第1天壁部28の左端縁とを接続する第1側壁部29Aと、底壁部27の右端縁と第1天壁部28の右端縁とを接続する第2側壁部29Bと、を備える。第1側壁部29A及び第2側壁部29Bについて、特に区別しない場合には側壁部29と呼称する。図6に示すように、第1天壁部28は、金属板材を3枚重ね合わせた部分を備える。詳細には、第1天壁部28は、後側筒部22Bの内側に配される内壁部28Aと、後側筒部22Bの外側に配される外壁部28Bと、内壁部28Aと外壁部28Bとによって挟まれた中間壁部28Cと、を備える。中間壁部28Cは、後側筒部22Bの前側と後側とに配されている。図7に示すように、中間壁部28Cは、外壁部28Bを構成する金属板材を密着曲げすることにより形成されている。換言すると、外壁部28Bの左端縁と中間壁部28Cの左端縁とは、折り曲げ部28Dによって連続的に接続されている。折り曲げ部28Dは、金属板材を180°折り曲げて構成されており、前後方向から見てU字状をなしている。
【0037】
図3に示すように、後側筒部22Bは、外壁部28Bと連続的に形成される係止凸部30Aと、係止凸部30Aと係止する係止凹部30Bと、を備える。係止凸部30Aは、外壁部28Bを構成する金属板材を90°屈曲して形成されている。換言すると、外壁部28Bの左端縁と係止凸部30Aの上端縁とは、屈曲部30Cによって連続的に接続されている。屈曲部30Cは前後方向から見てL字状をなしている。係止凸部30Aは、左方から見て逆T字状をなしている。係止凹部30Bは、第1側壁部29Aに形成され、係止凸部30Aを収容可能な形状をなしている。屈曲部30Cは折り曲げ部28Dと前後方向に並んで配されている。より詳細には、屈曲部30Cは、前側の折り曲げ部28Dと後側の折り曲げ部28Dとの間に配されている。
【0038】
係止凸部30Aと係止凹部30Bとが係止することにより、後側筒部22Bの形状が保持されている。屈曲部30Cは折り曲げ部28Dと前後方向に並んで配されているから、外壁部28Bを構成する金属板材にスリットを入れて曲げ加工することにより、中間壁部28Cと係止凸部30Aとを形成することができる。したがって、金属板材を無駄なく利用して、中間壁部28Cを形成することができる。
【0039】
[芯線挿入口]
図3に示すように、第1スライド部22の後側筒部22Bの後端部には、第1芯線12Aを第1スライド部22の内部に挿入するための芯線挿入口31が形成されている。図16に示すように、芯線挿入口31から挿入された第1芯線12Aは、挟持部25の間に前後方向に延びて配される。
【0040】
[押圧部]
図6に示すように、第1スライド部22の後側筒部22Bは、押圧部32を備える。押圧部32は、内壁部28Aの下面から下方に突出する上側押圧部32Aと、底壁部27の上面から上方に突出する下側押圧部32Bと、を備える。図17に示すように、押圧部32が挟持部25を押圧することにより、第1芯線12Aが挟持部25に挟み付けられる。これにより、第1電線11Aと第1スライド部22(第1端子20)とが電気的に接続されるようになっている。
【0041】
図10から図12に示すように、第1スライド部22の前側筒部22Aの側壁には、前端部寄りの位置に、仮係止受け部33Aが開口されている。また、第1スライド部22の前側筒部22Aの側壁には、仮係止受け部33Aよりも後方の位置に、本係止受け部33Bが開口されている。仮係止受け部33Aと本係止受け部33Bは、第1端子本体21の係止突起24Aと弾性的に係止可能になっている。
【0042】
図10及び図11に示すように、第1端子本体21の係止突起24Aと第1スライド部22の仮係止受け部33Aとが係止した状態は、第1端子本体21に対して第1スライド部22が離間位置に保持された状態となっている。この状態においては、図16に示すように、第1スライド部22の押圧部32は、第1端子本体21の挟持部25の後端縁より後方に配されている。また、この状態においては、上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間隔は、第1芯線12Aの直径よりも大きく設定されている。
【0043】
図12に示すように、第1端子本体21の係止突起24Aと第1スライド部22の本係止受け部33Bとが係止した状態は、第1端子本体21に対して第1スライド部22が押圧位置に係止された状態となっている。この状態においては、図17に示すように、第1スライド部22の上側押圧部32Aは、第1端子本体21の上側接続片25Aの上面に対して上方から当接している。また、第1スライド部22の下側押圧部32Bは、第1端子本体21の下側接続片25Bの下面に対して下方から当接している。
【0044】
第1スライド部22が第1端子本体21に対して押圧位置で保持された状態では、上側押圧部32Aが上方から上側接続片25Aを押圧することによって上側接続片25Aが下方に弾性変形するようになっている。また、下側押圧部32Bが下方から下側接続片25Bを押圧することによって下側接続片25Bが上方に弾性変形するようになっている。これにより、上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間の空間に、第1芯線12Aが前後方向にのびた状態で配され、かつ、第1スライド部22が第1端子本体21に対して押圧位置で保持された状態では、第1芯線12Aは、弾性変形した上側接続片25Aと下側接続片25Bによって上下方向から挟持されるようになっている。
【0045】
第1スライド部22が第1端子本体21に対して押圧位置で保持された状態では、上側接続片25Aの上側保持突部26Aが第1芯線12Aを上方から押圧し、下側接続片25Bの下側保持突部26Bが第1芯線12Aを下方から押圧する。このように第1芯線12Aは、上側保持突部26Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部26Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部26Bによって下方から押圧されることにより、上下方向について屈曲した状態に保持される。これにより、第1端子本体21における第1芯線12Aの保持力を向上させることができる。
【0046】
[ガイド部]
図6に示すように、第1スライド部22の後側筒部22Bは、ガイド部34を備える。ガイド部34は、本実施形態では、内壁部28Aの後端部に設けられている。ガイド部34は、前方に向かうほど第1スライド部22の内方(本実施形態では下方)へと傾斜している。ガイド部34の後端部は外壁部28Bの後端部に接触している。ガイド部34の前端部は、連結部35を介して押圧部32(本実施形態では上側押圧部32A)の後端部に接続されている。連結部35は内壁部28Aの一部であって、ガイド部34と上側押圧部32Aとを前後方向に連続的に接続している。ガイド部34は上側押圧部32Aよりも第1スライド部22の外方(本実施形態では上方)に配されている。第1芯線12Aがガイド部34に摺接することにより、第1芯線12Aは第1スライド部22の内部へと案内される。
【0047】
図11に示すように、後側筒部22Bの後端部寄りの位置には、側壁部29に、第1スライド部22の内方に突出する一対の誘い込み部36が設けられている。誘い込み部36は、前方に向かうにつれて第1スライド部22の内方に位置するように傾斜している。第1芯線12Aが誘い込み部36に摺接することにより、第1芯線12Aは第1スライド部22の内部へと案内される。
【0048】
[傾斜部]
図6に示すように、第1スライド部22は、押圧部32(本実施形態では上側押圧部32A)の前側に配される傾斜部37を備える。傾斜部37は内壁部28Aの前端部に配されている。傾斜部37は、前方に向かうほど第1スライド部22の外方(本実施形態では上方)に傾斜している。傾斜部37は上側押圧部32Aと前後方向に連続的に形成されている。傾斜部37は上側押圧部32Aよりも上方に配されている。第1スライド部22が第1端子本体21に対して離間位置から押圧位置へと移動する際、傾斜部37は、第1端子本体21の上側接続片25Aの後端部に摺接して、上側接続片25Aを上側押圧部32Aの下方へと案内する。
【0049】
図3に示すように、第1スライド部22の前側筒部22Aには、上壁から上方に突出する治具当接部38が設けられている。図示しないものの、治具当接部38に後方から治具を当接させ、前方に押し当てることにより、第1スライド部22が前方に移動可能になっている。
【0050】
[第2端子、第2端子本体]
第2端子40は、導電性の金属から構成されている。図1に示すように、第2端子40は、第1端子20と同様に、第2端子本体41と、第2端子本体41に対して前後方向に移動可能な第2スライド部42と、を備える。本実施形態では、第2端子本体41は第1端子本体21とされている。
【0051】
[第2スライド部]
第2スライド部42は、第1スライド部22と略同様に構成されているため、第1スライド部22と同一の部材については同一の名称を用い、詳細な説明を省略する。図4に示すように、第2スライド部42は、前側筒部42Aと、後側筒部42Bと、を備える。第2スライド部42の前側筒部42Aには、第1スライド部22の前側筒部22Aと同様に、仮係止受け部53A、本係止受け部53B、及び治具当接部58が設けられている。
【0052】
第2スライド部42の後側筒部42Bは、底壁部47と、底壁部47に対向する第2天壁部48と、底壁部47の左端縁と第2天壁部48の左端縁とを接続する第1側壁部49A(側壁部49)と、底壁部47の右端縁と第2天壁部48の右端縁とを接続する第2側壁部49B(側壁部49)と、を備える。図8に示すように、第2天壁部48は、金属板材を2枚重ね合わせて構成されている。詳細には、第2天壁部48は、後側筒部42Bの内側に配される内壁部48Aと、内壁部48Aに重ねられて後側筒部42Bの外側に配される外壁部48Bと、を備える。すなわち、第2天壁部48は、第1スライド部22の第1天壁部28が備える中間壁部28Cを備えていない。
【0053】
図4に示すように、第2スライド部42の後側筒部42Bは、外壁部48Bと連続的に形成される係止凸部50Aと、係止凸部50Aと係止する係止凹部50Bと、を備える。外壁部48Bの左端縁と係止凸部50Aの上端縁とは、屈曲部50Cによって連続的に接続されている。係止凸部50Aと係止凹部50Bとが係止することにより、後側筒部42Bの形状が保持されている。
【0054】
第2スライド部42の後側筒部42Bの後端部には、第2芯線12Bを第2スライド部42の内部に挿入するための芯線挿入口51が形成されている。
【0055】
図8に示すように、第2スライド部42の後側筒部42Bは、押圧部52を備える。押圧部52は、上側押圧部52Aと、下側押圧部52Bと、を備える。第2スライド部42は、上側押圧部52Aの前側に連続的に形成される傾斜部57を備える。
【0056】
[第1スライド部と第2スライド部との大きさの比較]
図1に示すように、第2芯線12Bの直径は第1芯線12Aの直径より大きい。よって、図5に示すように、第2スライド部42の上側押圧部52Aと下側押圧部52Bとの上下方向の間隔は、第1スライド部22の上側押圧部32Aと下側押圧部32Bとの上下方向の間隔よりも大きくなっている。これに伴い、第2端子40の芯線挿入口51は、第1端子20の芯線挿入口31よりも上下方向に大きくなっている。
【0057】
[コネクタハウジング、インナーハウジング]
本実施形態では、図2に示すように、コネクタハウジング60は、インナーハウジング61と、インナーハウジング61の後側部分に取り付けられるリアホルダ62と、を備える。図1に示すように、インナーハウジング61は上下方向に短く左右方向に長い直方体状をなしている。インナーハウジング61は絶縁性の合成樹脂から構成されている。インナーハウジング61は、前後方向に延びて、第1端子20または第2端子40を収容する収容部63を複数備える。収容部63は、左右方向に間隔を空けて整列されるとともに、上下に2段に重ねられている。上段に形成された各収容部63と、下段に形成された各収容部63とは、左右にずれた位置に配されている。なお、収容部63の個数や相対的な配置は適宜変更することができる。
【0058】
収容部63の前端は前方に開口しており、相手方端子が挿入可能になっている。収容部63の後端は後方に開口しており、第1端子20または第2端子40を後方から収容可能になっている。
【0059】
図15及び図18に示すように、インナーハウジング61は、第1端子20または第2端子40が収容部63に収容された状態で、ランス23Aに係止するランス受け部64を備える。ランス23Aとランス受け部64とが係止することによって、第1端子20または第2端子40が収容部63において後方に抜け止めされている。
【0060】
インナーハウジング61の前端部には、前止め部65が形成されている。前止め部65は、第1端子20または第2端子40を収容部63の内部に挿入する際に、第1端子20または第2端子40がインナーハウジング61の前方に抜けないように当接する。
【0061】
インナーハウジング61は、上段に形成された収容部63と、下段に形成された収容部63との間を仕切る隔壁66を有する。図1に示すように、インナーハウジング61は、各収容部63を左右方向に仕切る仕切り壁67を備える。この仕切り壁67によって、各収容部63に収容された第1端子20または第2端子40が左右方向に隣り合う第1端子20または第2端子40と電気的に絶縁されるようになっている。
【0062】
インナーハウジング61の左右両側壁の後端部寄りの位置には、外方に突出する仮係止ロック部68Aが設けられている。インナーハウジング61の左右両側壁の仮係止ロック部68Aよりも前方の位置には、本係止ロック部68Bが外方に突出して設けられている。
【0063】
[リアホルダ]
リアホルダ62は、前方に開口する箱状をなしている。リアホルダ62は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。図2に示すように、リアホルダ62は、インナーハウジング61の後半部分に外側から嵌合するようになっている。リアホルダ62の左右両側壁の前端部寄りの位置には、ロック受け部69が設けられている。ロック受け部69は、概ね門形状をなしている。
【0064】
インナーハウジング61の仮係止ロック部68Aと、リアホルダ62のロック受け部69とが係止することにより、リアホルダ62はインナーハウジング61に対して仮係止位置に保持される。また、インナーハウジング61の本係止ロック部68Bと、リアホルダ62のロック受け部69とが係止することにより、リアホルダ62はインナーハウジング61に対して本係止位置に保持される。
【0065】
図16及び図19に示すように、リアホルダ62には、挿通孔70が、インナーハウジング61の各収容部63に対応する位置に設けられている。すなわち、複数の挿通孔70は、左右方向に整列すると共に、上下に2段に並んで設けられている。挿通孔70の内径寸法は、第2電線11Bの第2絶縁被覆13Bの外径寸法と同じか、やや大きく設定されている。挿通孔70には第1電線11Aまたは第2電線11Bが挿通されるようになっている。
【0066】
図21及び図22に示すように、リアホルダ62は、挿通孔70の内壁に案内部71を備える。案内部71は、挿通孔70の前端の上側に配されている。案内部71は、前方に向かうほど挿通孔70の内方に位置する曲面とされている。第1芯線12Aが案内部71に摺接することで、第1芯線12Aは第1スライド部22の内部に進入しやすくなる。第2芯線12Bが案内部71に摺接することで、第2芯線12Bは第2スライド部42の内部に進入しやすくなる。
【0067】
[係止部]
図17及び図20に示すように、リアホルダ62には、インナーハウジング61が嵌入されるフード部72が、前方に開口して設けられている。リアホルダ62は、フード部72の後端部に係止部73を備える。係止部73は、第1端子20の外壁部28Bまたは第2端子40の外壁部48Bの後端部と前後方向に対向している。係止部73は第1端子20の外壁部28Bまたは第2端子40の外壁部48Bの後端部と前後方向に係止することで、第1端子20または第2端子40を収容部63内において後方に抜け止めする。
【0068】
リアホルダ62の上下方向の中央付近には、隔壁受け部74が設けられている。この隔壁受け部74は前方に開口する形態をなし、開口の上下寸法は、インナーハウジング61の隔壁66の上下方向の厚さ寸法と同じか、これよりやや大きく設定されている。
【0069】
図15及び図18に示すように、リアホルダ62がインナーハウジング61に対して仮係止位置に保持された状態では、隔壁受け部74は、インナーハウジング61の隔壁66の後端縁よりも後方に位置している。図17及び図20に示すように、リアホルダ62がインナーハウジング61に対して本係止位置に保持された状態では、リアホルダ62の隔壁受け部74の開口に、インナーハウジング61の隔壁66が嵌まり込むようになっている。これにより、リアホルダ62がインナーハウジング61に対して上下方向に位置ずれすることが抑制されるようになっている。
【0070】
[第2芯線の第2スライド部への挿入]
図22に示すように、第2端子40が収容部63に収容された状態で、第2スライド部42の第2天壁部48の後端部は、前後方向について係止部73に臨むように配されている。また、第2端子40を収容する収容部63の後方に配されるリアホルダ62の挿通孔70を後方から見た場合、図14に示すように、第2天壁部48の後端部は挿通孔70の内部に配されていない。このため、第2芯線12Bを第2スライド部42の内部へ挿入する際、第2芯線12Bの前端部は第2天壁部48の後端部に当接しにくくなっている。よって、第2芯線12Bの第2スライド部42の内部への挿入が阻害されにくい。
【0071】
[第1芯線の第1スライド部への挿入]
図21に示すように、第1端子20が収容部63に収容された状態で、第1スライド部22の第1天壁部28の後端部は、前後方向について係止部73に臨むように配されている。このため、第1芯線12Aを第1スライド部22の内部へ挿入する際、第1芯線12Aの前端部は第1天壁部28の後端部に当接しにくくなっている。よって、第1芯線12Aの第1スライド部22の内部への挿入が阻害されにくい。
【0072】
第1端子20を収容する収容部63の後方に配されるリアホルダ62の挿通孔70を後方から見た場合、図13に示すように、ガイド部34が挿通孔70の内部に配されている。これは、第1スライド部22の上側押圧部32Aと下側押圧部32Bとの上下方向の間隔が、第2スライド部42の上側押圧部52Aと下側押圧部52Bとの上下方向の間隔より小さくなっているためである(図5参照)。第1スライド部22にガイド部34が設けられることにより、第1芯線12Aの前端部はガイド部34と摺接することで、第1スライド部22の内部へと進入しやすくなっている。
【0073】
[比較例にかかる第1芯線の第1スライド部への挿入]
ここで、本実施形態とは異なり、ガイド部34が設けられていない比較例について考える。図23に示すように、比較例にかかるコネクタ110の第3端子120は、ガイド部34を備えない第1スライド部122を備え、その他の構成は第1端子20と同様となっている。第3端子120が収容部63に収容された状態では、第1天壁部128(内壁部128A)の後端部が前後方向について挿通孔70に臨むように配される。したがって、第1天壁部128(内壁部128A)の後端部に第1芯線12Aの前端部が当接することで、第1芯線12Aの第1スライド部122の内部への挿入が阻害されることがありうる。
【0074】
上記のように、本実施形態では、第1スライド部22はガイド部34を備えるから、第1芯線12Aが第1天壁部28の後端部に当接しにくく、第1スライド部22の内部に進入しやすい構成となっている。
【0075】
[コネクタ10の製造方法]
以下、本実施形態にかかるコネクタ10の製造方法の一例を示す。
公知の手法により、第1端子本体21、第1スライド部22、第2端子本体41、及び第2スライド部42を形成する。第1端子本体21に対して、後方から第1スライド部22を組み付ける。第1端子本体21の係止突起24Aに後方から第1スライド部22の前端縁が当接し、第1スライド部22の側壁部29が拡開変形する。さらに第1スライド部22を前方に押し込むと、第1スライド部22の側壁部29が復帰変形し、第1端子本体21の係止突起24Aに、第1スライド部22の仮係止受け部33Aが係止する。これにより、第1端子本体21に対して第1スライド部22が離間位置に保持される。これにより第1端子20が得られる(図10参照)。第2端子40も同様にして得られる。
【0076】
合成樹脂を射出成形することにより、インナーハウジング61及びリアホルダ62を形成する。インナーハウジング61の収容部63内に、後方から第1端子20または第2端子40を挿入した後、インナーハウジング61の後端部に、後方からリアホルダ62を組み付ける。すると、リアホルダ62のロック受け部69が弾性変形しながら、インナーハウジング61の仮係止ロック部68Aに乗り上げる。さらにリアホルダ62を前方に押し込むと、ロック受け部69が復帰変形し、インナーハウジング61の仮係止ロック部68Aに、ロック受け部69が弾性的に係止する。これにより、リアホルダ62が、インナーハウジング61に対して仮係止位置に保持される(図15及び図18参照)。
【0077】
第1電線11Aの端部において、所定の長さ寸法の第1芯線12Aを露出させる。第1端子20を収容する収容部63の後方に配される挿通孔70の内部に、第1芯線12Aの前端部を後方から挿入する。第1芯線12Aは、リアホルダ62の案内部71や第1スライド部22のガイド部34及び誘い込み部36によって、第1スライド部22の内部へと案内される。
【0078】
さらに第1電線11Aを前方に押し込むと、第1芯線12Aは第1端子本体21の内部へと進入して前後方向における挟持部25の位置に配される。すなわち、第1芯線12Aは上側接続片25Aと下側接続片25Bとの間を通過した状態となる(図16参照)。
【0079】
次に、後方から図示しない治具を治具当接部38に押し当てて、第1スライド部22を第1端子本体21に対して前方に移動させる。このとき、第1端子本体21の係止突起24Aと、第1スライド部22の仮係止受け部33Aとの係止が外れ、第1スライド部22の側壁部29が係止突起24Aに乗り上げて拡開変形する。
【0080】
さらに治具で治具当接部38を前方に押圧すると、第1スライド部22の側壁部29が復帰変形して第1端子本体21の係止突起24Aと、第1スライド部22の本係止受け部33Bとが弾性的に係止する。これにより第1スライド部22が第1端子本体21に対して押圧位置に保持される。
【0081】
第1スライド部22が第1端子本体21に対して押圧位置に移動するとき、第1スライド部22の上側押圧部32Aが、第1端子本体21の上側接続片25Aを下方へと押圧する。また、第1スライド部22の下側押圧部32Bが、第1端子本体21の下側接続片25Bを上方へと押圧する。これにより、第1芯線12Aが、上側接続片25Aと下側接続片25Bに上下から挟持され、第1電線11Aと第1端子20とが電気的に接続される(図17参照)。
【0082】
第2端子40についても第1端子20と同様にして、第2芯線12Bの第2スライド部42内への挿入や、第2端子本体41に対する第2スライド部42の前方への移動等が行われる(図18から図20参照)。これにより、第2電線11Bと第2端子40とが電気的に接続される。
【0083】
次に、リアホルダ62を前方に押圧すると、リアホルダ62のロック受け部69がインナーハウジング61の本係止ロック部68Bに乗り上げて弾性変形する。さらにリアホルダ62を前方に押圧すると、本係止ロック部68Bと、ロック受け部69とが係止する。これにより、リアホルダ62がインナーハウジング61に対して本係止位置に保持される(図2参照)。以上により、コネクタ10の製造が完了する。
【0084】
[実施形態の作用効果]
実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
実施形態にかかるコネクタ10は、第1芯線12Aを有し、前後方向にのびる第1電線11Aに接続されるコネクタ10であって、第1芯線12Aに接続される第1端子20と、第1端子20を収容するとともに、第1電線11Aが挿通されるコネクタハウジング60と、を備え、第1端子20は、第1端子本体21と、第1端子本体21に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第1スライド部22と、を備え、第1端子本体21は、第1芯線12Aを挟持する挟持部25を備え、第1スライド部22は、第1芯線12Aが後方から挿入される芯線挿入口31と、芯線挿入口31から挿入された第1芯線12Aに対して挟持部25を押圧する押圧部32と、第1スライド部22の後端部に配されて前方に向かうほど第1スライド部22の内方へと傾斜するガイド部34と、押圧部32とガイド部34とを前後方向に連続的につなぐ連結部35と、を有し、ガイド部34は押圧部32よりも第1スライド部22の外方に配されている。
【0085】
第1芯線12Aの直径が小さくなると、第1芯線12Aを挟持部25に押圧する押圧部32を備える第1スライド部22が前後方向に直交する方向に小さくなりやすい。よって、第1スライド部22の内部に第1芯線12Aを挿入することが困難になる場合がありうる。
【0086】
実施形態の構成によると、連結部35を介して押圧部32の後方にガイド部34が設けられる。このガイド部34は前方に向かうほど第1スライド部22の内方へと傾斜している。したがって、第1芯線12Aの第1スライド部22の内部への挿入が案内される。また、ガイド部34は押圧部32よりも第1スライド部22の外方に配されている。これにより、芯線挿入口31を前後方向に直交する方向に大きくしやすいから、第1芯線12Aを第1スライド部22内へと挿入しやすくなる。
【0087】
実施形態のコネクタ10は、第2芯線12Bを有し、前後方向にのびる第2電線11Bに接続されるコネクタ10であって、第2芯線12Bに接続される第2端子40を備え、第2芯線12Bの直径は第1芯線12Aの直径より大きく、第2端子40はコネクタハウジング60に収容され、第2電線11Bはコネクタハウジング60に挿通され、第2端子40は、第2端子本体41と、第2端子本体41に外側から嵌合した状態で前後方向にスライド移動可能とされる第2スライド部42と、を備え、第2端子本体41は、第2芯線12Bを挟持する挟持部25を備え、第2スライド部42は、第2芯線12Bが後方から挿入される芯線挿入口51と、芯線挿入口51から挿入されて前後方向における挟持部25の位置に配された第2芯線12Bを挟持部25に押圧する押圧部52と、を備える。
【0088】
このような構成によると、第2芯線12Bの直径が第1芯線12Aの直径よりも大きい場合でも、コネクタハウジング60を変更することなく、第1芯線12Aを有する第1電線11A、及び第2芯線12Bを有する第2電線11Bの双方に接続されたコネクタ10を構成することができる。
【0089】
実施形態では、第2端子本体41は第1端子本体21である。
【0090】
このような構成によると、第2端子本体41として第1端子本体21を使用することができるから、第2端子本体41を新たに製造しなくてよい。よって、コネクタ10の製造コストを低減することができる。
【0091】
実施形態では、第1スライド部22は、ガイド部34よりも第1スライド部22の外方に配されるとともに、前後方向に延びる外壁部28Bを備え、ガイド部34の後端部と外壁部28Bの後端部とは接触しており、コネクタハウジング60は、外壁部28Bの後端部と前後方向に対向する係止部73を備える。
【0092】
このような構成によると、外壁部28Bを設けることで、第1スライド部22の後端部とコネクタハウジング60との係止代を大きくすることができる。また、ガイド部34の後端部と外壁部28Bの後端部とが接触しているから、外力等によるガイド部34の変形を抑制することができる。
【0093】
実施形態では、第1スライド部22は、外壁部28Bと連結部35とによって挟まれる中間壁部28Cと、外壁部28Bと中間壁部28Cとを連続的に接続するとともに、U字状に折り曲げられた折り曲げ部28Dと、を備え、中間壁部28Cは外壁部28Bに対して折り重ねられている。
【0094】
このような構成によると、中間壁部28Cを設けることにより、第1スライド部22を前後方向に直交する方向に大きくすることができる。これにより、第1芯線12Aの直径が小さい場合でも、第1端子20を収容するコネクタハウジング60の収容部63の大きさに合わせて第1スライド部22を構成しやすい。よって、収容部63における第1端子20のガタつきを抑制することができる。
【0095】
実施形態では、第1スライド部22は、押圧部32の前側に連続的に形成される傾斜部37を備え、傾斜部37は、前方に向かうほど第1スライド部22の外方へと傾斜し、押圧部32よりも第1スライド部22の外方に配されている。
【0096】
このような構成によると、第1端子本体21に対して第1スライド部22を前方にスライドさせる際、挟持部25が傾斜部37に摺接することにより、押圧部32に対して挟持部25を第1スライド部22の内方へと導きやすい。よって、押圧部32によって第1芯線12Aを挟持部25に押圧しやすくなる。
【0097】
実施形態では、コネクタハウジング60は、第1端子20を収容するインナーハウジング61と、インナーハウジング61の後側部分に組み付けられるとともに、第1電線11Aが挿通されるリアホルダ62と、を備え、リアホルダ62は、仮係止位置と、仮係止位置よりも前方に配される本係止位置と、のいずれかの位置でインナーハウジング61に係止されるようになっており、押圧部32が第1芯線12Aを挟持部25に押圧している状態では、リアホルダ62は本係止位置に係止可能とされている。
【0098】
このような構成によると、押圧部32が第1芯線12Aを挟持部25に押圧している状態で、コネクタ10を前後方向に小さくすることができる。
【0099】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、コネクタ10は第1電線11Aが接続される第1端子20と、第2電線11Bに接続される第2端子40と、を備えていたが、これに限られることはなく、コネクタは第2電線に接続される第2端子を備えない構成であってもよい(図17参照)。
(2)上記実施形態では、第2端子本体41は第1端子本体21であったが、これに限られることはなく、第2端子本体は第1端子本体とは異なっていてもよい。
(3)上記実施形態では、第1スライド部22は誘い込み部36を備えていたが、これに限られることはなく、第1スライド部は誘い込み部を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10: コネクタ
11A: 第1電線
11B: 第2電線
12A: 第1芯線
12B: 第2芯線
13A: 第1絶縁被覆
13B: 第2絶縁被覆
20: 第1端子
21: 第1端子本体
22: 第1スライド部
22A: 前側筒部
22B: 後側筒部
23: 接続筒部
23A: ランス
23B: 弾性接触片
24: 基部
24A: 係止突起
25: 挟持部
25A: 上側接続片
25B: 下側接続片
26A: 上側保持突部
26B: 下側保持突部
27: 底壁部
28: 第1天壁部
28A: 内壁部
28B: 外壁部
28C: 中間壁部
28D: 折り曲げ部
29: 側壁部
29A: 第1側壁部
29B: 第2側壁部
30A: 係止凸部
30B: 係止凹部
30C: 屈曲部
31: 芯線挿入口
32: 押圧部
32A: 上側押圧部
32B: 下側押圧部
33A: 仮係止受け部
33B: 本係止受け部
34: ガイド部
35: 連結部
36: 誘い込み部
37: 傾斜部
38: 治具当接部
40: 第2端子
41: 第2端子本体
42: 第2スライド部
42A: 前側筒部
42B: 後側筒部
47: 底壁部
48: 第2天壁部
48A: 内壁部
48B: 外壁部
49: 側壁部
49A: 第1側壁部
49B: 第2側壁部
50A: 係止凸部
50B: 係止凹部
50C: 屈曲部
51: 芯線挿入口
52: 押圧部
52A: 上側押圧部
52B: 下側押圧部
53A: 仮係止受け部
53B: 本係止受け部
57: 傾斜部
58: 治具当接部
60: コネクタハウジング
61: インナーハウジング
62: リアホルダ
63: 収容部
64: ランス受け部
65: 前止め部
66: 隔壁
67: 仕切り壁
68A: 仮係止ロック部
68B: 本係止ロック部
69: ロック受け部
70: 挿通孔
71: 案内部
72: フード部
73: 係止部
74: 隔壁受け部
110: 比較例にかかるコネクタ
120: 第3端子
122: 第1スライド部
128: 第1天壁部
128A: 内壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図23