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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159997
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20231026BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20231026BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B60T8/172 Z
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069981
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 王彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彰
(72)【発明者】
【氏名】小柳 拓統
【テーマコード(参考)】
3D246
3F205
【Fターム(参考)】
3D246AA14
3D246BA03
3D246DA02
3D246EA07
3D246GB30
3D246GC16
3D246HB12A
3D246JB11
3D246KA01
3D246KA17
3F205AA06
(57)【要約】
【課題】設置スペースが少ない作業車両において、新たに部品を追加することなく、衝突被害軽減のための制動制御を行うことができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、衝突被害軽減のための距離測定装置23と、距離測定装置23の信号によりブレーキ34を作動させるブレーキ制御装置20と、手動スイッチ22による信号からブレーキ34を作動させる作業時用補助ブレーキバルブ26と、を備えている。そして、ブレーキ制御装置20は、距離測定装置23からの物体までの距離を示す信号を用いて、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させることにより、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させる制動制御を行う。この構成により、設置スペースの少ない作業車両において、新たに部品を追加することなく衝突被害軽減のための制動制御を行うことが可能となる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突被害軽減のための距離測定装置と、
該距離測定装置の信号によりブレーキを作動させるブレーキ制御装置と、
手動スイッチによる信号から前記ブレーキを作動させる作業時用補助ブレーキバルブと、を備え、
前記ブレーキ制御装置は、前記距離測定装置からの物体までの距離を示す信号を用いて、前記作業時用補助ブレーキバルブを動作させることにより、衝突被害軽減のために前記ブレーキを作動させる制動制御を行う、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ブレーキ制御装置は、
前記作業時用補助ブレーキバルブを作動させる前後の少なくともいずれかに、前記ブレーキを作動させる以外の補助制動制御を行うための信号を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ブレーキ制御装置は、
前記距離測定装置からの信号を、2以上の異なる方法でフィルタリングを行うフィルタに通した後、前記制動制御に用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業車両は、
走行を行うための走行車体と、該走行車体に搭載された作業部と、を備え、
前記作業時用補助ブレーキバルブは、前記走行車体に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記距離測定装置は、
音波探知器を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。さらに詳しくは、本発明は、衝突被害軽減のための制動制御を行うブレーキ制御装置を有する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年一般的な乗用車には、衝突被害軽減ブレーキの機能、すなわち衝突被害軽減制動制御装置による機能が搭載されている。この機能により、乗用車の運転手は、運転する乗用車が、意図せずに物体に接近した場合、自動的にブレーキが作動し、衝突自体を避けることができたり、衝突をした場合でもその被害を最小限にしたりすることができる。そしてこの衝突被害軽減の機能は、特許文献1で開示されているように、クレーン車のような作業車両にも一部搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-187636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝突被害軽減の機能を有するためには、ミリ波レーダ、赤外線レーザ、音波探知機(超音波センサ)またはカメラなどのセンシング装置の搭載が必要であるとともに、ブレーキを作動させるためのバルブが設けられる必要がある。
しかるに、衝突被害軽減の機能のための専用のバルブを設けると、そのためのコスト、設置作業、車両上のスペースが必要になるという問題がある。特に作業車両は、もともとクレーン等の作業部を駆動するためのバルブがすでに搭載されているため、設置スペースが少ないという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、設置スペースが少ない作業車両において、新たに部品を追加することなく、衝突被害軽減のための制動制御を行うことができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の作業車両は、衝突被害軽減のための距離測定装置と、該距離測定装置の信号によりブレーキを作動させるブレーキ制御装置と、手動スイッチによる信号から前記ブレーキを作動させる作業時用補助ブレーキバルブと、を備え、前記ブレーキ制御装置は、前記距離測定装置からの物体までの距離を示す信号を用いて、前記作業時用補助ブレーキバルブを動作させることにより、衝突被害軽減のために前記ブレーキを作動させる制動制御を行うことを特徴とする。
第2発明の作業車両は、第1発明において、前記ブレーキ制御装置は、前記作業時用補助ブレーキバルブを作動させる前後の少なくともいずれかに、前記ブレーキを作動させる以外の補助制動制御を行うための信号を送信することを特徴とする。
第3発明の作業車両は、第1発明において、前記ブレーキ制御装置は、前記距離測定装置からの信号を、2以上の異なる方法でフィルタリングを行うフィルタに通した後、前記制動制御に用いることを特徴とする。
第4発明の作業車両は、第1発明において、前記作業車両は、走行を行うための走行車体と、該走行車体に搭載された作業部と、を備え、前記作業時用補助ブレーキバルブは、前記走行車体に設けられていることを特徴とする。
第5発明の作業車両は、第1発明において、前記距離測定装置は、音波探知器を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1発明によれば、ブレーキ制御装置は、ON/OFFで作動させる安価な作業時用補助ブレーキバルブを動作させることで、衝突被害軽減のためにブレーキを作動させることにより、すでに作業車両に搭載されている作業時用補助ブレーキバルブを用いているので、設置スペースの少ない作業車両において、新たに部品を追加することなく衝突被害軽減のための制動制御を行うことが可能となる。
第2発明によれば、ブレーキ制御装置は、作業時用補助ブレーキバルブを作動させる前後の少なくともいずれかに、ブレーキを作動させる以外の補助制動制御を行うことにより、衝突被害軽減のための制動制御の際に作業車両の運転手に付加される、停止による衝撃の大きさを抑制できる。
第3発明によれば、ブレーキ制御装置は、距離測定装置からの信号を、2以上の異なる方法でフィルタリングを行うフィルタを通した後、制動制御に用いることにより、測定装置による誤検出を排除でき、不必要に制動制御が行われることを抑制できる。
第4発明によれば、作業時用補助ブレーキバルブが、走行車体に設けられていることにより、作業時用補助ブレーキバルブから空圧・油圧変換装置までの距離を短くでき、比較的応答性が低いエア配管の長さを短くできるので、制動制御の応答性を高くできる。
第5発明によれば、前記距離測定装置は、音波探知器を含むことにより、低速で作業車両が運転されているときは、音波探知機は近距離の物体を検出できるため、適切に衝突被害軽減を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業車両の制動制御の制御フロー図である。
図2図1の作業車両の側面図である。
図3図1の作業車両の平面図である。
図4図1の作業車両の正面図である。
図5図1の作業車両のブレーキシステムの構成図である。
図6図1の作業車両の制御ブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る作業車両の制動制御の制御フロー図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る作業車両の制動制御の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0009】
<第1実施形態>
(移動式クレーン10)
図2には本実施形態に係る作業車両の一つである移動式クレーン10の側面図を、図3にはその平面図を、図4にはその正面図を示す。移動式クレーン10は、公知の走行車体11に走行のための原動機および複数の車輪12が備えられる他、クレーン作業中の安定を確保するアウトリガ13が設けられている。走行車体11の上面には旋回台14が搭載され、旋回台14は、旋回モータにより水平面内で360°旋回できる。そして旋回台14には、移動式クレーン10の運転手が乗り込む運転室17が設けられている。なお本明細書においては、特記した場合を除き、図2から図4に示すような、移動式クレーン10のブーム15が、縮小され走行可能な状態において、運転室17に乗り込んだ運転手を基準として上下左右前後と称することがある。
【0010】
走行車体11と旋回台14との間にはスリップリングおよびスイベルジョイントが設けられ、このスリップリングにより電気の系統が接続され、このスイベルジョイントによりエア、油の各系統が接続されている。本明細書では、移動式クレーン10を、このスリップリングおよびスイベルジョイントを挟んで、走行車体11と、走行車体11に搭載された作業部と、に分ける。
【0011】
旋回台14にはブーム15が起伏自在に取り付けられている。ブーム15は、基端側の主ブームと、この主ブームにテレスコープ式に嵌挿した複数段の副ブームを含んで構成されている。各副ブームの伸縮動作は、このブーム15内に設けられたシリンダで行われる。
【0012】
ブーム15の基端部は旋回台14に枢支され、ブーム15と旋回台14との間には起伏シリンダが取付けられている。この起伏シリンダを伸長させるとブーム15が起立し、起伏シリンダを収縮させるとブーム15が倒伏する。
【0013】
ブーム15の先端に形成されているブームヘッドからは、フック16を備えたワイヤロープが吊り下げられ、そのワイヤロープはブーム15に沿ってブーム15の根本に導かれてウィンチに巻き取られている。ウィンチには、ホイストモータが設けられており、ホイストモータの駆動によりウィンチを回転させて、ワイヤロープの巻き取り、繰り出しを行うことで、フック16を昇降させることができる。このように、ブーム15の伸縮、起伏、フック16の昇降を組み合わせることにより、立体空間内での荷揚げと荷降ろしが可能となっている。
【0014】
(第1実施形態に係る作業車両のブレーキシステム)
図5には、本実施形態の作業車両のブレーキシステムの構成図を示す。本実施形態のブレーキシステムは、いわゆる空気油圧複合式ブレーキシステムである。ただし、本発明は、この空気油圧複合式ブレーキシステムに限定されることはない。例えば油圧のみのブレーキシステム、または空圧のみのブレーキシステムも含まれる。
【0015】
本実施形態のブレーキシステムの空圧部は、図5の紙面において、空圧・油圧変換装置33の左側の構成であり、その経路は細線で示している。油圧部は、図5の紙面において空圧・油圧変換装置33の右側の構成であり、その経路は太線で示している。本実施形態のブレーキシステムは、エアタンク31とエアコンプレッサ32を有する。このエアコンプレッサ32により高圧のエアがエアタンク31に供給され、蓄積される。
【0016】
また本実施形態に係るブレーキシステムは、ブレーキペダル21により操作されるブレーキペダル用バルブ25と、手動スイッチ22(図6参照)により操作される作業時用補助ブレーキバルブ26と、が設けられている。ブレーキペダル21を作業車両の運転手が踏み込んだ場合、エアタンク31に蓄えられている高圧のエアが、図5の紙面において空圧・油圧変換装置33の左側に供給される。加えて、作業車両の運転手が手動スイッチ22を切り替えると、エアタンク31に蓄えられている高圧のエアが、同様に空圧・油圧変換装置33の左側に供給される。図示していないが、作業時用補助ブレーキバルブ26に供給される高圧のエアは、例えば減圧弁等によりブレーキペダル用バルブ25に供給される高圧のエアの半分程度の圧力であることが好ましい。
【0017】
本実施形態のブレーキシステムは、例えば4輪ある車輪12のそれぞれに設けられたブレーキ34を含む。これらのブレーキ34は、例えばディスクブレーキであることが好ましい。ただし、これに限定されず、ドラムブレーキであっても問題ない。図5において空圧・油圧変換装置33の受圧室33aに、高圧のエアが供給されると、空圧・油圧変換装置33により空圧・油圧変換装置33の加圧室33bから高圧の作動油がそれぞれのブレーキ34に供給され、移動式クレーン10は制動制御される。
【0018】
(第1実施形態に係る作業車両の制御ブロック図)
図6には、本実施形態に係る作業車両の制御ブロック図を示す。本実施形態に係る作業車両は、距離測定装置23の信号によりブレーキ34を作動させるブレーキ制御装置20を有する。図6では、ブレーキ制御装置20に、主に信号を送信する機器をその左側に、ブレーキ制御装置20からの信号を、主に受ける機器をその右側に記載している。また、図6の矢印は主な信号の送受信の方向を示している。
【0019】
まず、ブレーキ制御装置20が用いられない状況での、ブレーキ34の作動させるシステムについて説明する。作業車両の運転手がブレーキペダル21を踏み込むと、ブレーキペダル用バルブ25が作動し、ブレーキ34が作動する。また、運転室17に設けられている手動スイッチ22を、作業車両の運転手が切り替えることにより、作業時用補助ブレーキバルブ26が作動し、ブレーキ34が作動する。この手動スイッチ22は、例えば作業車両を止めて、アウトリガ13を張り出す前に、走行車体11を動かないようにするために用いられる。手動スイッチ22は、例えば手で操作するセレクタスイッチなどが該当する。ただしこれに限定されることはなく、足で操作するスイッチも含まれる。この作業時用補助ブレーキバルブ26は、走行車体11に搭載された作業部に設けることも可能であり、走行車体11に設けることも可能である。
【0020】
次に、ブレーキ制御装置20によりブレーキ34を作動させるシステムについて説明する。本実施形態に係る作業車両は、衝突被害軽減のために、ブレーキ制御装置20へ信号を送信する距離測定装置23を有している。この距離測定装置23は、音波探知器を含んで構成されている。例えば距離測定装置23は、複数の検出器を含んで構成されている。そのうちのすべて、またはいくつかが音波探知器である場合がある。
【0021】
この複数の検出器は、例えばブーム15の先端の左右に設けられるとともに、走行車体11の前左に設けられている。本実施形態では、この距離測定装置23は、音波探知器を含んで構成しているが、これに限定されない。例えば検出器は、ミリ波レーダ、赤外線レーザ、カメラなどを含むことが可能である。
【0022】
本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、距離測定装置23からの信号を用いて、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させることにより、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させる。またブレーキ制御装置20は、解除スイッチ24からの信号を受信する。この解除スイッチ24からの信号を受信すると、ブレーキ制御装置20は、衝突被害軽減のためのブレーキ34の制動制御を解除する。この解除スイッチ24は、例えば線路内で立ち往生するなど、緊急に作業車両を走行させる必要がある場合に、衝突被害軽減のための制動制御を解除するためのスイッチである。
【0023】
本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、衝突被害軽減のための制動制御を行った場合に、警告用LED27に信号を送信し、作業車両の運転手に、衝突被害軽減のための制動制御が行われたことを知らせることができる。
【0024】
本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、衝突被害軽減のための制動制御が行われた際に、制御装置28へ衝突被害軽減のための制動制御が行われるという信号を送信することができる。この制御装置28は、アクセルペダル29からの信号を受け、ECU30に信号を送信し、ECU30によりエンジン回転数を上げるという制御することが可能であるとともに、衝突被害軽減のための制動制御が行われるとの信号を受信した際に、ECU30によりエンジン回転数を下げるという制御をすることが可能である。なお、本実施形態では、アクセルペダル29からの信号は、制御装置28だけでなく、ブレーキ制御装置20にも送信されているが、特にこれに限定されない。
【0025】
(第1実施形態に係る作業車両の衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー)
図1には、本実施形態に係る作業車両の、衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー図を示す。まずブレーキ制御装置20は、ステップ001(以下、S001のように記載する)において、距離測定装置23からの数値を取得する。
【0026】
次にブレーキ制御装置20は、S002において距離測定装置23からの信号を、フィルタリングを行う第1フィルタに通す。この第1フィルタは、例えば、距離測定装置23を構成する複数の検出器のうち、一つの検出器での信号について、あらかじめ定められた回数だけ連続してその距離が、あらかじめ定められた距離よりも小さい値になっていることで初めて実際に、その検出器で測定された距離を、真の距離と判定し、ブレーキ制御装置20は次のS003へ進む。逆にあらかじめ定められた回数だけ連続していない場合、その検出器における信号は誤検出であるとして、ブレーキ制御装置20は、S001に戻る。
【0027】
次にブレーキ制御装置20は、S003において、距離測定装置23からの信号を、第1フィルタとフィルタリングの方法が異なる第2フィルタに通す。この第2フィルタは、例えば距離測定装置23を構成する複数の検出器での信号を同時に判断し、その複数の検出器での信号がいずれもあらかじめ定められた距離よりも小さい値になっていることで始めて実際に、それらの検出器で測定された距離を、真の距離と判定し、ブレーキ制御装置20は次のS004へ進む。逆に複数の検出器での信号のいずれかが、あらかじめ定められた距離よりも大きくなっている場合、その検出器で検出された信号は誤検出であるとして、ブレーキ制御装置20は、S001に戻る。
【0028】
次にブレーキ制御装置20は、S004において、距離測定装置23からの信号を用いて、作業車両に対する障害物が、作業車両の車幅内に存在しているかどうかを判断する。車幅内に存在していると判断すると、ブレーキ制御装置20は、S005へ進む。車幅内に存在していないと判断すると、ブレーキ制御装置20は、衝突被害軽減のための制動制御をする必要がないので、S001に戻る。
【0029】
次にブレーキ制御装置20は、S005において、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させて、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させる。
【0030】
なお、制動制御の制御フローの一例について説明したが、制御フローはこれに限定されない。例えば、距離測定装置23からの信号のフィルタリングを、1種類のフィルタで行うことも可能である。
【0031】
また、作業車両として移動式クレーン10を用いて説明したが、作業車両はこれに限定されない。例えば、高所作業車も走行車体11のうえに作業部を有するので、作業車両の一例として挙げることができる。
【0032】
本実施形態に係る作業車両では、以下のような効果を奏する。
1)ブレーキ制御装置20は、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させることで、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させることにより、すでに作業車両に搭載されている作業時用補助ブレーキバルブ26を用いているので、設置スペースの少ない作業車両において、新たに部品を追加することなく衝突被害軽減のための制動制御を行うことが可能となる。
【0033】
2)ブレーキ制御装置20は、距離測定装置23からの信号を、2以上の異なる方法でフィルタリングを行うフィルタを通した後、制動制御に用いているので、距離測定装置23による誤検出を排除でき、不必要に制動制御が行われることを抑制できる。
【0034】
3)作業時用補助ブレーキバルブ26が、作業部ではなく走行車体11に設けられている場合、作業時用補助ブレーキバルブ26から空圧・油圧変換装置33までの距離を短くでき、比較的応答性が低いエア配管の長さを短くできるので、制動制御の応答性を高くできる。
【0035】
4)距離測定装置23は、音波探知器を含む場合、低速で作業車両が運転されているときは、音波探知機は近距離の物体を検出できるため、適切に衝突被害軽減を行うことができる。
【0036】
(第2実施形態に係る作業車両の衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー)
図7には、第2実施形態に係る作業車両の、衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー図を示す。第2実施形態に係る作業車両においても、第1実施形態に係る作業車両とハード構成は同じであるため、ハード構成に関する説明は省略する。第1実施形態に係る作業車両の制御フローとの相違点は、車幅内外の判定を行うステップと、作業時用補助ブレーキバルブ26を作動させるステップとの間に、補助制動制御を行うための信号を送信するS105が設けられている点である。
【0037】
S101からS104のステップは、S001からS004までのステップと同じであるので説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、車幅内外の判定を行ったS104の後に、ブレーキ制御装置20は、作業時用補助ブレーキバルブ26による制動制御を行うより前に行う第1補助制動制御のための信号を、制御装置28に送信する。この場合、第1補助制動制御としては、制御装置28は、エンジン回転数をアイドル状態まで下げる制御を行うことが該当する。
【0039】
次にブレーキ制御装置20は、S106において、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させて、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させる。
【0040】
(第3実施形態に係る作業車両の衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー)
図8には、第3実施形態に係る作業車両の、衝突被害軽減のための制動制御の制御フロー図を示す。第3実施形態に係る作業車両においても、第1実施形態に係る作業車両とハード構成は同じであるため、ハード構成に関する説明は省略する。第1実施形態に係る作業車両の制御フローとの相違点は、作業時用補助ブレーキバルブ26を作動させるステップの後に、第2補助制動制御を行うための信号を送信するS205が設けられている点である。
【0041】
S201からS204のステップは、S001からS004までのステップと同じであるので説明を省略する。
【0042】
次に本実施形態では、S205において、ブレーキ制御装置20は、作業時用補助ブレーキバルブ26を動作させて、衝突被害軽減のためにブレーキ34を作動させる。
【0043】
さらに本実施形態では、S206において、ブレーキ制御装置20は、作業時用補助ブレーキバルブ26による制動制御を行った後に行う第2補助制動制御のための信号を、制御装置28に送信する。この場合、第2補助制動制御としては、制御装置28は、エキゾーストブレーキを作動させる制御を行ったり、パーキングブレーキを作動させる制御を行ったりすることが該当する。
【0044】
本実施形態に係る作業車両では、以下のような効果を奏する。
ブレーキ制御装置20が、作業用補助ブレーキバルブ26を作動させる前後のすくなくともいずれかに、ブレーキ34を作動させる以外の第1補助制動制御または第2補助制動制御を行うための信号を送信する場合、衝突被害軽減のための制動制御の際に作業車両の運転手に付加される、停止による衝撃の大きさを抑制できる。
【0045】
また、上記では、第1補助制動制御と第2補助制動制御の2種類の補助制動制御について説明したが、これらを組み合わせて制動制御を行っても問題ない。また、第1補助制動制御としては、エンジン回転数をアイドル状態まで下げる制御を行うことと説明し、第2補助制動制御としては、エキゾーストブレーキを作動させる制御を行ったり、パーキングブレーキを作動させる制御を行ったりすることと説明したが、これに限定されない。第1補助制動制御がエキゾーストブレーキを作動させる制御であったり、パーキングブレーキを作動させる制御であったりすることもあるし、第2補助制動制御がエンジン回転数をアイドル状態まで下げる制御であることもある。
【符号の説明】
【0046】
10 移動式クレーン(作業車両の一例)
11 走行車体
20 ブレーキ制御装置
21 ブレーキペダル
23 距離測定装置
26 作業時用補助ブレーキバルブ
34 ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8