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特開2023-160006コイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160006
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】コイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/44 20220101AFI20231026BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20231026BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231026BHJP
   G06V 30/14 20220101ALI20231026BHJP
【FI】
G06V10/44
G06V10/82
G06T7/00 350C
G06V30/14 340A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069992
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】柄本 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】土谷 忠義
【テーマコード(参考)】
5B029
5L096
【Fターム(参考)】
5B029BB02
5B029CC04
5B029CC25
5L096BA03
5L096BA17
5L096DA02
5L096FA02
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイルに印字されたマーキング情報とマーキング指令実績の不一致以外の印字不良も判別できるコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置及び方法を提供する。
【解決手段】自動認識・照合装置1は、コイル20に印字されたマーキング情報22を自動で認識・照合する装置であって、マーキング情報を撮影するカメラ2と、コイル径に応じて撮影手段のズーム倍率を調整し、常に一定の画角でマーキング情報を撮影するように制御するカメラ制御部4と、カメラ2により撮影された画像及びバンドの条数情報から、印字領域とバンド領域をそれぞれ検出し、印字領域とバンド領域とのオーバーラップを判定する領域分割部6と、カメラ2で撮影した画像からマーキング情報の文字列を認識し、それに基づいて印字不良の有無を判定する画像認識部7と、認識された文字列とマーキング指令とを比較してマーキング情報が正しいか否かを判定する照合部8と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに印字されたマーキング情報を自動で認識・照合する装置であって、
前記マーキング情報を撮影する撮影手段と、
コイル径に応じて前記撮影手段のズーム倍率を調整し、常に一定の画角でマーキング情報を撮影するように制御する撮影制御手段と、
前記撮影手段により撮影された画像および前記コイルを結束するバンドの条数情報から、前記画像中の文字列が印字されている印字領域と、前記バンドが掛けられているバンド領域をそれぞれ検出し、前記印字領域と前記バンド領域とのオーバーラップを判定する領域分割手段と、
前記撮影手段で撮影した前記画像から前記マーキング情報の文字列および一つ一つの文字を認識し、前記文字列の認識結果に基づいて印字不良の有無を判定する画像認識手段と、
前記認識された文字列とマーキング指令とを比較してマーキング情報が正しいか否かを判定する照合手段と、
を有する、コイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【請求項2】
前記領域分割手段による前記印字領域と前記バンド領域の検出は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練画像を用いて、カメラ撮像画像を入力とし、バンド領域、印字領域を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、請求項1に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【請求項3】
前記画像認識手段による前記文字列の認識は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練データを用いて、前記印字領域を入力とし、文字列を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、請求項1に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【請求項4】
前記領域分割手段による前記オーバーラップの判定、前記画像認識手段による前記印字不良の判定、および前記照合手段によるマーキング情報の判定のいずれかが不適合の場合、コイルマーキング情報が不適合と判定される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【請求項5】
コイルに印字されたマーキング情報を自動で認識・照合する方法であって、
コイル径に応じて前記マーキング情報を撮影する撮影手段のズーム倍率を調整し、常に一定の画角でマーキング情報を撮影するステップと、
前記撮影手段により撮影された画像および前記コイルを結束するバンドの条数情報から、前記画像中の文字列が印字されている印字領域と、前記バンドが掛けられているバンド領域をそれぞれ検出し、前記印字領域と前記バンド領域とのオーバーラップを判定するステップと、
前記撮影手段で撮影した前記画像から前記マーキング情報の文字列を認識し、前記文字列の認識結果に基づいて印字不良の有無を判定するステップと、
前記認識された文字列とマーキング指令とを比較してマーキング情報が正しいか否かを判定するステップと、
を有する、コイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【請求項6】
前記印字領域と前記バンド領域の検出は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練画像を用いて、カメラ撮像画像を入力とし、バンド領域、印字領域を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、請求項5に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【請求項7】
前記文字列の認識は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練データを用いて、前記印字領域を入力とし、文字列を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、請求項5に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【請求項8】
前記オーバーラップの判定、前記印字不良の判定、および前記マーキング情報の判定のいずれかが不適合の場合、コイルマーキング情報が不適合と判定する、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板製造ラインにおいて、コイルに印字されたマーキング情報を自動で認識し、マーキング指令実績と照合を行う装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルに印字されたマーキング情報をマーキング指令実績と照合する技術として、鋼材の径の大きさに拘らず、文字の位置とカメラ及び照明装置との相対関係を常に一致させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、印字されたマーキング文字列を確実に検出するために、マーキング文字列を複数の異なる方向から順次に照明して撮影し、得られた画像信号の一つで文字認識を行い、文字認識ができないときは順次に他の画像信号で文字認識を行う方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1-52785号公報
【特許文献2】特開平5-290214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の、鋼材の径の大きさに拘らず、文字の位置とカメラおよび照明装置との相対関係を常に一致させる方法は、カメラと照明装置の位置を移動させる機構を必要とするため、装置構成が大きくなり、スペースが必要という問題がある。すなわち、これらの装置はマーキング済みのコイルを搬送するラインに設置されることとなるが、搬送ラインにはコイルを送り出すための搬送装置、コイルをバンドで結束するための結束装置、マーキング情報を印字するためのマーキング装置、およびこれらの制御装置が配置されるため十分なスペースがないことが多い。したがって、装置構成がコンパクトで、小さいスペースに設置できることが望まれる。
【0005】
また、後者の、マーキング文字を複数の異なる方向から順次に照明して撮影し、得られた画像信号の一つで文字認識を行い、文字認識ができないときは順次に他の画像信号で文字認識を行う方法は、良好な認識精度を得ようとするほど構成機器が増え、コストが大きくなる問題がある。すなわち、マーキング情報とマーキング指令実績の不一致は品質トラブルに直結するため、後者の方法では、このような不一致を確実に検出するために照明と画像を保存するメモリを増やすことで、試行回数を確保し検出精度を向上させているが、機器を増やすことなくコストを抑え、検出精度を高くすることが望ましい。
【0006】
さらに、後者の方法では、文字認識の際にカメラで撮影した画像を2値画像として処理するため、印字されたマーキング情報とマーキング指令実績の不一致以外の印字不良は判別できない問題も挙げられる。すなわち、マーキング情報を印字する際にコイルを結束するバンドの上に印字することや、インクのかすれ、たれ等の印字不良が発生するおそれがあるが、これらの印字不良は判別できない。バンドの上にマーキング情報を印字した場合、バンドを外した際に正しいマーキング情報は失われてしまう。また、インクのかすれ、たれが起きた場合、印字直後は正しくマーキング情報が読み取れたとしても、時間が経過するとかすれ、たれが悪化し、マーキング情報が読めなくなる可能性がある。したがって、これらの印字不良もマーキング情報とマーキング指令実績の不一致と同様に不適合と判定できることが望ましい。
【0007】
したがって、本発明は、コンパクトで設置スペースが小さい装置構成で、かつ機器数を増設する必要がなく低コストであり、しかも印字されたマーキング情報とマーキング指令実績の不一致以外の印字不良も判別することができる、コイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
【0009】
[1]コイルに印字されたマーキング情報を自動で認識・照合する装置であって、
前記マーキング情報を撮影する撮影手段と、
コイル径に応じて前記撮影手段のズーム倍率を調整し、常に一定の画角でマーキング情報を撮影するように制御する撮影制御手段と、
前記撮影手段により撮影された画像および前記コイルを結束するバンドの条数情報から、前記画像中の文字列が印字されている印字領域と、前記バンドが掛けられているバンド領域をそれぞれ検出し、前記印字領域と前記バンド領域とのオーバーラップを判定する領域分割手段と、
前記撮影手段で撮影した前記画像から前記マーキング情報の文字列を認識し、前記文字列の認識結果に基づいて印字不良の有無を判定する画像認識手段と、
前記認識された文字列とマーキング指令とを比較してマーキング情報が正しいか否かを判定する照合手段と、
を有する、コイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【0010】
[2]前記領域分割手段による前記印字領域と前記バンド領域の検出は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練画像を用いて、カメラ撮像画像を入力とし、バンド領域、印字領域を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、[1]に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【0011】
[3]前記画像認識手段による前記文字列の認識は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練データを用いて、前記印字領域を入力とし、文字列を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、[1]に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【0012】
[4]前記領域分割手段による前記オーバーラップの判定、前記画像認識手段による前記印字不良の判定、および前記照合手段によるマーキング情報の判定のいずれかが不適合の場合、コイルマーキング情報が不適合と判定される、[1]から[3]のいずれかに記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する装置。
【0013】
[5]コイルに印字されたマーキング情報を自動で認識・照合する方法であって、
コイル径に応じて前記マーキング情報を撮影する撮影手段のズーム倍率を調整し、常に一定の画角でマーキング情報を撮影するステップと、
前記撮影手段により撮影された画像および前記コイルを結束するバンドの条数情報から、前記画像中の文字列が印字されている印字領域と、前記バンドが掛けられているバンド領域をそれぞれ検出し、前記印字領域と前記バンド領域とのオーバーラップを判定するステップと、
前記撮影手段で撮影した前記画像から前記マーキング情報の文字列を認識し、前記文字列の認識結果に基づいて印字不良の有無を判定するステップと、
前記認識された文字列とマーキング指令とを比較してマーキング情報が正しいか否かを判定するステップと、
を有する、コイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【0014】
[6]前記印字領域と前記バンド領域の検出は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練画像を用いて、カメラ撮像画像を入力とし、バンド領域、印字領域を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、[5]に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【0015】
[7]前記文字列の認識は、画像認識モデルとして、事前にいくつかの訓練データを用いて、前記印字領域を入力とし、文字列を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いて行われる、[5]に記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【0016】
[8]前記オーバーラップの判定、前記印字不良の判定、および前記マーキング情報の判定のいずれかが不適合の場合、コイルマーキング情報が不適合と判定する、[5]から[7]のいずれかに記載のコイルマーキング情報を自動で認識・照合する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コイル径情報からズーム倍率を調整することで、一定の画角でマーキング情報の画像を撮影するので、撮影手段を移動させる機構を用いることなく、コイル径にかかわらず印字面を撮影でき、コンパクトで設置スペースが小さい装置構成を実現することができる。また、撮影画像に基づいて、領域分割手段、画像認識手段、および照合手段により、マーキング情報を認識・照合できるので、従来よりも機器数を少なくして、機器コストを抑えることができる。また、故障リスクが低くなることから保守性が高いという効果もある。さらに、従来の方法では検出不可能であった、バンド領域と印字領域(マーキング文字列)のオーバーラップや、インクのたれ、かすれといった印字不良を検出し、不適合とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るコイルマーキング情報の自動認識・照合装置の一例を示すブロック図である。
図2】異なる径のコイルに対して一定の画角で撮影するためのカメラ位置とズーム制御を示す図である。
図3】異なる条数のバンドで結束されたコイルの印字領域とバンド領域の一例を示す図である。
図4】バンドに重なって印字を行う不具合の一例を示す図である。
図5】正常印字と印字不良であるインクのたれ、かすれの一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る自動認識・照合装置によりコイルマーキング情報を自動で認識・照合する際の動作フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコイルマーキング情報の自動認識・照合装置の一例を示すブロック図である。図1に示すように、自動認識・照合装置1は、画像撮影手段であるカメラ2と計算機3とを有している。
【0020】
カメラ2は、搬送ラインによって搬送されてくるコイル20のバンド21およびマーキング情報22の画像を撮影する。
【0021】
計算機3は、外部のライン制御装置10と接続されている。ライン制御装置10は、コイル20に関して、コイル径情報、バンド条数情報、印字指令実績、搬送指令タイミングといったデータを格納したデータベース11と、計算機3からの出力に基づいて制御を行う制御部12とを有する。そして、計算機3は、データベース11に格納したデータを受け取って処理を行い、処理結果を制御部12に出力する。
【0022】
この計算機3は、カメラ制御部4と、画像認識モデル5と、領域分割部6と、画像認識部7と、照合部8と、を有する。
【0023】
カメラ制御部4はカメラ2を制御するものであり、コイル径に応じて、カメラ2のズームインとズームアウトを制御して、ズーム倍率を調整し、カメラ2が常に一定の画角でマーキング情報を撮影するように制御する。カメラ制御部4は、画像撮影時には、ライン制御装置10のコイル径情報によってコイル径に合わせてズーム機能を制御し、搬送指令タイミングによって、コイルが所定の位置に搬送されたタイミングでカメラ2による撮影が行われるように制御する。
【0024】
図2は、あらゆるコイル径に対して、一定の画角でマーキング情報を撮影するための、カメラの配置とズーム機能の制御の手法を示す図である。まず、カメラ2の配置について、(a)に示すように、最下点を一致させた複数の径のコイル(本例ではコイル20A、20B、20C)の印字面23と最下点を結んだ直線上にカメラ2を配置することで、コイル径によらず、画面内に印字面23を捉えることができる。次に、ズーム機能の制御について、(b)に示すように最大コイル径のコイル20Aの焦点距離24Aを基準に各コイル径の設定すべき焦点距離を算出することができる。例えば、最大コイル径d1のコイル20Aの焦点距離24Aの値がL1だった場合、次にコイル径が大きいコイル20Bのコイル径d2の焦点距離24Bの値L2はL1と定数αを用いて、L2=L1+α×(d1-d2)と表せる。最小コイル径d3のコイル20Cの焦点距離24Cの値L3も同様にL3=L1+α×(d1-d3)となり、最大コイル径とその焦点距離を与えることであらゆるコイル径の設定すべき焦点距離を導ける。
【0025】
カメラ2のズームは、撮影対象の画像に対し、ピントを保って(オートフォーカス:自動焦点)拡大縮小することにより、任意の視野サイズを確保するものであり、光学ズームとデジタルズームがある。光学ズームの場合は、レンズ機構にレンズの中心点からイメージセンサーまでの焦点距離を制御できる機能を持っているが、若干装置が大きくなり、また故障の可能性も上がる。デジタルズームの場合は、解像度の高いイメージセンサーを用いて、画像の一部をソフトウェアで拡大縮小するため、光学ズームと比して画像劣化はあるが、故障のリスクは少なく、装置もコンパクトとなる。
【0026】
画像認識モデル5は、以下に説明する領域分割部6における処理、画像認識部7における処理に対応して、事前にいくつかの訓練画像によって学習することにより複数準備される。
【0027】
領域分割部6は、撮影された画像とライン制御装置10からのバンドの条数情報から、画像認識モデル5を用い、画像中の文字列が印字されている領域(印字領域(座標))と、コイルを結束するバンドが掛けられている領域(バンド領域(座標))をそれぞれ検出し、これらを区別する。そして、領域分割部6は、印字領域とバンド領域を比較し、コイル20の印字領域とバンド領域とがオーバーラップすることを検出した場合は、バンド21の上に印字されているとして、不適合と判定する。
【0028】
領域分割部6に用いる画像認識モデル5としては、バンド条数毎に訓練したものを複数準備する。そして、バンド条数に応じて画像認識モデルを切り替えてバンド領域を検出する。具体的には、画像認識モデル5として、バンドなし画像で訓練したモデル、バンド1本画像で訓練したモデル、バンド2本画像で訓練したモデルを用意して、ライン制御装置10から受け取るバンド条数の情報に応じて使用するモデルを選択する。このように、バンド条数毎に訓練した画像認識モデルを切り替えてバンド領域を検出することにより、領域分割機能の精度を向上させることができる。
【0029】
領域分割部6で用いられる画像認識モデル5としては、事前にいくつかの訓練画像を用いて、カメラ撮像画像を入力とし、バンド領域(座標)、印字領域(座標)を出力として深層学習により学習した学習済モデルが用いることができる。この時用いられる深層学習による画像認識モデルは特に限定されないが、例えばYOLO、Fast、R-CNNのような既存のものを用いることができる。
【0030】
図3はバンド条数が0条、1条、2条の場合の印字領域とバンド領域の一例を示した図である。0条バンドのコイル20Dの場合、(a)に示すように、バンド領域は存在せず、ただ1個の印字領域25が検出される。1条バンドのコイル20Eの場合、(b)に示すように、1個のバンド領域26と、バンド領域26によって分割された2個の印字領域25Aおよび25Bが検出される。2条バンドのコイル20Fの場合、(c)に示すように、2個のバンド領域26Aおよび26Bと、バンド領域26Aおよび26Bによって分割された3個の印字領域25C、25D、および25Eが検出される。
【0031】
上述したような、印字領域とバンド領域とがオーバーラップする例について図4に示す。図4はコイル20のバンド21にマーキング情報22を印字してしまい、印字領域とバンド領域とがオーバーラップした例である。コイルにマーキングを施すマーキング装置や、バンドで結束するバンディング装置の精度によって、稀に、このようなバンドに重ねてマーキング情報を印字してしまう場合がある。このような場合、バンドを外した際にマーキング情報が失われてしまうため、画像分割部6でこのような不具合を検出し、不適合と判定する。
【0032】
画像認識部7は、カメラ画像から領域分割部6で検出された印字領域を入力とし、画像認識モデル5を用いて、文字認識により撮影画像上のマーキング情報22を文字列データに変換し、文字列を認識する(読み取る)。そして文字列の認識結果に基づいて印字不良の有無を判定する。具体的には、画像認識部7は、画像認識モデル5として、インクのかすれ、たれ等の印字不良をNG、正常な印字をOKとラベル付けした訓練データで事前に学習したものを用い、撮影画像に印字不良が含まれていた場合は不適合と判定する。
【0033】
画像認識部7で用いられる画像認識モデル5としては、事前にいくつかの訓練データを用いて、カメラ画像から領域分割部6で検出された印字領域(座標)を入力とし、文字列(文字一つ一つに対するOK/NGの属性を含む)を出力として深層学習により学習した学習済モデルを用いることができる。この時用いられる深層学習による画像認識モデルは特に限定されないが、例えばCNNのような既存のものを用いることができる。
【0034】
図5は正常な印字とマーキング装置の不具合により発生する印字不良の一例を示した図である。(a)の正常に印字された正常印字31は文字の形は明瞭であり、文字の最初から最後まで一定の濃度で印字される。(b)のインクのたれが発生した状態で印字された、たれ発生印字32は、文字の形状が崩れている。(c)のインクのかすれが発生した状態で印字された、かすれ発生印字33は、文字の途中でインクの濃度が薄くなっている。これらの印字不良は時間が経過したときにたれやかすれが悪化し、マーキング情報が失われる恐れがあるため、照合部8で印字不良と判定された場合、不適合とする。
【0035】
照合部8は、画像認識部7により画像認識モデル5を用いて認識された文字列データと、ライン制御装置10から送られてくるマーキング指令の実績とを比較して、マーキング情報が正しいか否かを判定する。
【0036】
以上のような領域分割部6、画像認識部7、照合部8の判定結果はライン制御装置10の制御部12に送られる。ライン制御装置10の制御部12では、上記判定のいずれか一つでも不適合の場合は、コイルマーキング情報が不適合と判定され、警報を発報する等、その旨をラインオペレータに通知し、コイルマーキング情報の訂正を促す。一方、全てが適合の場合は、正しいマーキング情報が印字されたとして、対象のコイルを次工程へと搬送する。
【0037】
次に、以上のように構成される自動認識・照合装置1によりコイルマーキング情報を自動で認識・照合する際の動作フローについて説明する。図6はその動作フローを示すフローチャート図である。
【0038】
自動認識・照合装置1においては、まず、ライン制御装置10より印字指令実績を取得し(ST1)、コイル径情報を取得し(ST2)、バンド条数情報を取得し(ST3)、搬送指令タイミング(ST4)を取得する。
【0039】
次に、受信したコイル径情報を用いて、カメラ制御部4によりカメラ2のズームイン・ズームアウトで画角を調整する(ST5)。画角の調整完了後、カメラ2によりマーキング情報を撮影する(ST6)。
【0040】
次に、領域分割部6により、受信したバンド条数からバンド条数に応じたバンド領域の画像認識モデル5を呼び出し、撮影画像よりバンド領域を検出するとともに、撮影画像から印字領域を検出する(ST7)。
【0041】
次に、画像認識部7により印字領域からマーキング文字列を認識する(ST8)。
【0042】
次に、領域分割部6により、バンド領域と印字領域を比較して、バンド領域にマーキング印字があるか否か、すなわち印字領域とバンド領域とがオーバーラップしているか否かを判定する(ST9)。そして、バンド領域にマーキング印字がある場合、ライン制御装置10に不適合判定を返す(ST13)。バンド領域にマーキング印字がない場合、次の判定に進む。
【0043】
次の判定においては、画像認識部7により、ST8の文字列の認識結果に基づいて、たれやかすれなどの印字不良の有無を判定する(ST10)。印字不良ありと判定された場合、ライン制御装置10に不適合判定を返す(ST13)。印字不良がない場合、次の判定に進む。
【0044】
次の判定においては、照合部8により、画像認識部7で認識された(読み取られた)文字列データ(マーキング印字)とST1で取得した印字指令実績を照合し、印字と実績とが一致しているか否かを判定する(ST11)。印字と実績とが一致している場合、ライン制御装置10に適合判定を返す(ST12)。一方、印字と実績とが不一致の場合、ライン制御装置10に不適合判定を返す(ST13)。
【0045】
ライン制御装置10においては、ST13の不適合判定が返された場合、警報を発報する等、その旨をラインオペレータに通知し、コイルマーキング情報の訂正を促す。一方、ST12の適合判定がかえされた場合、正しいマーキング情報が印字されたとして、対象のコイルを次工程へ搬送する指令を発する。
【0046】
本実施形態によれば、コイル径に応じてカメラ2のズーム倍率を調整する(ズームインとズームアウトを制御する)ことで、常に一定の画角でコイル20に印字されたマーキング情報を撮影する。これにより、カメラを移動させる機構を用いることなく、あらゆるコイル径のコイル20の印字面を捉えることができ、コンパクトな装置構成を実現することができる。具体的には、カメラ2をコイル20の印字面とコイル20の最下点を結んだ直線上に配置してズーム倍率を調整することで、カメラを移動させることなくコイル径によらず、印字面を捉えることができる。また、コイル20の径が小さいほど撮影対象である印字面はカメラ2から遠くなり、コイルの径が大きいほど印字面はカメラ2に近くなることから、最大コイル径の焦点距離を基準値として与えることで各コイル径の焦点距離を算出することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、撮影画像に基づく画像認識モデル5を用いて、領域分割部6により印字領域とバンド領域を検出することによってバンド領域と印字領域のオーバーラップを検出でき、画像認識部7により文字列を認識することによって印字不良の有無を判定でき、照合部8により文字列データとマーキング指令を比較することによってマーキング情報が正しいか否かを判定できる。このため、従来手法のように機器を増設することなく文字認識精度を確保でき、機器コストの低減と保守性の向上を実現できるとともに、従来の方法では検出不可能であった、バンド領域と印字領域(マーキング文字列)のオーバーラップや、インクのたれ、かすれといった印字不良を検出し、不適合とすることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 自動認識・照合装置
2 カメラ(撮影手段)
3 計算機
4 カメラ制御部(撮影制御手段)
5 画像認識モデル
6 領域分割部(領域分割手段)
7 画像認識部(画像認識手段)
8 照合部(照合手段)
10 ライン制御装置
11 データベース
12 制御部
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F コイル
21 バンド
22 マーキング情報
23 印字面
24A、24B、24C 焦点距離
25、25A、25B、25C、25D、25E 印字領域
26、26A、26B バンド領域
31 正常印字
32 たれ発生印字
33 かすれ発生印字
図1
図2
図3
図4
図5
図6