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特開2023-160011線状体を備えた面状ユニット及びその応用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160011
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】線状体を備えた面状ユニット及びその応用品
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20231026BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20231026BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05B3/20 341
B62D1/06
H05B3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070005
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩也
(72)【発明者】
【氏名】森下 典栄
【テーマコード(参考)】
3D030
3K034
【Fターム(参考)】
3D030CA03
3D030DA25
3D030DA27
3D030DA35
3D030DA44
3D030DA47
3D030DB02
3D030DB13
3K034AA02
3K034AA06
3K034AA12
3K034AA15
3K034BA08
3K034BB08
3K034BC10
3K034BC12
3K034HA04
3K034HA07
3K034JA09
(57)【要約】
【課題】使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、且つ、生産性に優れる面状ユニットとステアリングホイールを提供すること。
【解決手段】基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、該線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットであって、上記線状体の最外層に熱融着部が形成されており、上記線状体と上記基材とを連結する縫糸を有し上記線状体の熱融着部に上記縫糸が食い込んでいるか、又は、上記線状体と上記基材とを連結する縫糸が溶融してなる縫糸痕を有し上記線状体の熱融着部と上記縫糸痕とが平坦化されている面状ユニット。上記ホイール芯材と上記被覆材の間に上記面状ユニットが設置されるステアリングホイール。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、該線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットであって、
上記線状体の最外層に熱融着部が形成されており、
上記線状体と上記基材とを連結する縫糸を有し、
上記線状体の熱融着部に、上記縫糸が食い込んでいる面状ユニット。
【請求項2】
上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さが、該線状体の形状に沿うように薄くなっているとともに、上記線状体の熱融着部に上記縫糸が食い込んでおり、概ね平坦な形状となっている請求項1記載の面状ユニット。
【請求項3】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、該線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットであって、
上記線状体の最外層に熱融着部が形成されており、
上記線状体と上記基材とを連結する縫糸が溶融してなる縫糸痕を有し、
上記線状体の熱融着部と上記縫糸痕とが平坦化されている面状ユニット。
【請求項4】
上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さが、該線状体の形状に沿うように薄くなっているとともに、上記線状体の熱融着部と上記縫糸痕が平坦化されており、概ね平坦な形状となっている請求項3記載の面状ユニット。
【請求項5】
請求項1~請求項4いずれか記載の面状ユニットと、ホイール芯材と、被覆材とからなり、上記ホイール芯材と上記被覆材の間に上記面状ユニットが設置されるステアリングホイール。
【請求項6】
最外層に熱融着部が形成された線状体を縫糸によって基材上に固定する工程と、上記基材及び上記線状体を加熱加圧して、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さを線状体の形状に沿うように薄くするとともに、上記線状体の熱融着部に上記縫糸を食い込ませ、概ね平坦な形状とし、且つ、上記熱融着部により上記基材と上記線状体とを固定する工程と、を有し、上記線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットの製造方法。
【請求項7】
最外層に熱融着部が形成された線状体を縫糸によって基材上に固定する工程と、上記基材及び上記線状体を加熱加圧して、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さを線状体の形状に沿うように薄くするとともに、上記縫糸と上記熱融着部と溶融させ、上記縫糸が溶融してなる縫糸痕と上記熱融着部とを平坦化して、概ね平坦な形状とし、且つ、上記熱融着部により上記基材と上記線状体とを固定する工程と、を有し、上記線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車、船舶などに使用されるステアリングホイールのホイール部を暖めるためのヒータユニットと、ステアリングホイールの温度検知や把持検知を行うためのセンサユニットを含む面状ユニットに係り、特に、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、且つ、生産性に優れるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、寒冷時に運転手の手を温めるために、ステアリングホイールのホイール部にヒータユニットを装着することが提案されている。ステアリングホイールは、ホイール部、スポーク部、ボス部からなり、ホイール部は、金属芯がウレタン樹脂等で覆われてなるホイール芯材と合成樹脂、繊維製品、皮革などからなる被覆材とから形成される。ヒータユニットは、このホイール芯材と被覆材の間に設置され、スポーク部及びボス部を通されたリード線に接続されて給電される。
【0003】
ステアリングホイールに設置されるヒータユニットとしては、例えば、特許文献1~4に示すような、基材上に所定のパターン形状でヒータ線を配設したものが知られている。ここで、基材としては、各種の発泡樹脂シート、発泡ゴムシート、ゴムシート、不織布、織布などが開示されている。また、関連する技術として、例えば、特許文献5等が挙げられる。
【0004】
センサユニットとしては、例えば、静電容量センサや温度センサとして機能するものが挙げられる。静電容量センサは、タッチパネルや着座検知器等に使用されており、特に、所謂2電極型静電容量センサは、優れた検出感度から、様々な用途で広く使用されている。これは、近接状態で絶縁された2つの電極に人体が近付くことにより、この2つの電極間の静電容量値が変化することから、この静電容量の変化を検出するものである。このような技術は、例えば、ステアリングホイールの把持検知として検討されている。線状の静電容量センサによるセンサユニットとしては、例えば、特許文献6等が挙げられる。温度センサは、電気カーペット、電気毛布などの採暖器具の温度検知手段として使用されるものが知られている。これは、中心の芯線上にセンサ線を巻回し、その外周にシースを被覆した構造となっており、センサ線の温度による抵抗値変化を検知することで、温度検知が行われる。このセンサ線は、例えば、ヒータ線などの発熱源の近傍に配設されてヒータ線の温度を検知する、蛇行形状に配設されて面として温度を検知する、といった使用がなされている。線状の温度センサによるセンサユニットとしては、例えば、特許文献7等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4202071号公報:クラベ
【特許文献2】国際公開WO2014/104000公報:豊田合成、クラベ
【特許文献3】特許第6468701号公報:クラベ
【特許文献4】特許第6760941号公報:クラベ
【特許文献5】特許第3991750号公報:松下電器産業
【特許文献6】特許第6851730号公報:クラベ
【特許文献7】特許第5562678号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、上記特許文献2~4に記載されたヒータユニットは、基材におけるヒータ線が配設される箇所の厚さが、ヒータ線の形状に沿うように薄くなっており、それによって平坦な形状となっている。このようなヒータユニットであれば、ステアリングホイールに組み込んだ際も、通常はヒータ線による凹凸が現れず、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることはない。しかしながら、昨今では、ヒータユニットをステアリングホイールに組み込む際に、ヒータユニットのシワを防止するため、ヒータユニットを強く引き伸ばしながら組み込むことが行われている。また、ヒータユニットの加熱効率を向上させるため、ヒータ線を配設した面をステアリングホイールの被覆材側にすることも求められている。更には、被覆材側に予めヒータユニットを貼付した後に被覆材とともにホイール芯材に組付けたり、ホイール芯材に予めヒータユニットを貼付した後に被覆材を被せたりするなど、様々な製造方法によりヒータユニットをステアリングホイールに組み込むことがある。このようなヒータユニットの組み付け方法の違いによっても、凹凸の現れ方は変わってくるものであり、どのような方法をとった場合でも、ヒータ線による凹凸が現れず、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることはないものが求められている。
【0007】
また、特許文献1~4に記載されたヒータユニットは、ヒータ線1が、基材に所定のパターン形状で配設して接着・固定された構成となっている。その製造方法については、以下の通りである。まず、上下移動が可能な複数個の係り止め部材を有する機構が設けられたホットプレス治具を使用し、これら複数個の係り止め部材にヒータ線を引っ掛けながら、ヒータ線1を所定のパターン形状にて配設する。次いで、このヒータ線の上に基材を配置する。そして、プレス熱板を降下させてヒータ線及び基材に、加熱加圧を施し、接着・固定する。このような製造方法は、パターン形状が細かくなると、係り止め部材の数量が非常に多くなる。例えば、ステアリングホイール用のヒータユニットなどのように高密度高出力が求められるパターン形状であると、1000個を超える係り止め部材が必要となる。基材の外形変更やヒータ線のパターン形状変更などの設計変更があるたびに、この1000個を超える係り止め部材の位置設計と配置をする必要があり、その手間を省くことが求められていた。
【0008】
一方、特許文献5に記載されたヒータユニットは、縫合用ミシンなどの機械を使用し、上糸と下糸からなる縫糸でヒータ線を基材に縫合するものである。このようなヒータユニットは、ヒータ線が縫糸のみで基材に固定されているものである。そのため、使用の際に繰り返し加えられる荷重によって次第に糸にほつれや切れが発生し、ヒータ線が移動してしまうという問題があった。ヒータ線が移動した場合には、座席シートを均一に加熱することができなくなるばかりでなく、局部的に異常発熱を起こす恐れもあった。また、縫糸の間からヒータ線が抜け出てしまう問題もあった。その場合、抜け出た部分でヒータ線が鋭角に折れ曲がり、断線が生じてしまう恐れもあった。また、縫糸とヒータ線が重なる部分において、縫糸分だけ厚みが加わることになる。上記のように、ステアリングホイールで使用されるヒータユニットは、表面に凹凸がなく平坦であることが非常に強く要求されることから、この縫糸の感触が問題とされることがあった。
【0009】
上記のような課題は、特許文献6,7に示すような線状のセンサ線を基材に配設した面状のセンサユニットにおいても同様のものとなっている。
【0010】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、且つ、生産性に優れる面状ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく、本発明による面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、該線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットであって、上記線状体の最外層に熱融着部が形成されており、上記線状体と上記基材とを連結する縫糸を有し、上記線状体の熱融着部に、上記縫糸が食い込んでいるものである。
また、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さが、該線状体の形状に沿うように薄くなっているとともに、上記線状体の熱融着部に上記縫糸が食い込んでおり、概ね平坦な形状となっていることが考えられる。
また、本発明の他の形態による面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、該線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニットであって、上記線状体の最外層に熱融着部が形成されており、
上記線状体と上記基材とを連結する縫糸が溶融してなる縫糸痕を有し、上記線状体の熱融着部と上記縫糸痕とが平坦化されているものである。
また、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さが、該線状体の形状に沿うように薄くなっているとともに、上記線状体の熱融着部と上記縫糸痕が平坦化されており、概ね平坦な形状となっていることが考えられる。
また、本発明によるステアリングホイールは、上記面状ユニットと、ホイール芯材と、被覆材とからなり、上記ホイール芯材と上記被覆材の間に上記面状ユニットが設置されるものである。
また、本発明による面状ユニットの製造方法は、最外層に熱融着部が形成された線状体を縫糸によって基材上に固定する工程と、上記基材及び上記線状体を加熱加圧して、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さを線状体の形状に沿うように薄くするとともに、上記線状体の熱融着部に上記縫糸を食い込ませ、概ね平坦な形状とし、且つ、上記熱融着部により上記基材と上記線状体とを固定する工程と、を有し、上記線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方であるものである。
また、本発明の他の形態による面状ユニットの製造方法は、最外層に熱融着部が形成された線状体を縫糸によって基材上に固定する工程と、上記基材及び上記線状体を加熱加圧して、上記基材における上記線状体が配設される箇所の厚さを線状体の形状に沿うように薄くするとともに、上記縫糸と上記熱融着部と溶融させ、上記縫糸が溶融してなる縫糸痕と上記熱融着部とを平坦化して、概ね平坦な形状とし、且つ、上記熱融着部により上記基材と上記線状体とを固定する工程と、を有し、上記線条体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方であるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒータ線等の線状体による凹凸だけでなく縫糸による凹凸も現れず、面状ユニットが平坦な形状となっているため、種々の方法によって面状ユニットをステアリングホイールに組み付けたとしても、線状体による凹凸が現れず、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることはない。
また、縫合用ミシンなどの機械によって線状体を縫合しながら基材に配置する製造方法とすることができるので、大量の係り止め部材は不要となる。そのため、設計変更の際の手間を大きく減少することができ、生産性を高めることができる。
また、縫糸によって線状体を基材に締め付けて固定した後に、基材と線状体を熱融着で固定することになるため、面状ユニットの平坦さを更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による面状ユニットの構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態1による面状ユニットの要部を拡大して模式的に示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態による面状ユニットにおいて、製造途中段階における要部を拡大して模式的に示す断面図である。
図4】本発明による実施の形態を示す図で、ホットプレス式ヒータ製造装置の構成を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1による面状ユニットの要部の断面写真である。
図6】本発明の実施の形態2による面状ユニットの要部の断面写真である。
図7】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図8】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図9】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図10】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図11】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図12】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図13】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図14】本発明で使用されるセンサ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図15】本発明で使用されるセンサ線の一例を示す一部切欠側面図である。
図16】本発明による面状ユニットをステアリングホイール内に埋め込んだ様子を示す一部切欠斜視図である。
図17】本発明による面状ユニットを車両用座席内に埋め込んだ様子を示す一部切欠斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、線状体としてヒータ線を使用し、本発明の面状ユニットを車両用ステアリングヒータに適用することを想定した例を示すものである。
【0015】
まず、図1図2を参照して実施の形態1を説明する。この実施の形態1におけるヒータ線1の構成から説明する。実施の形態1におけるヒータ線1は図7図8に示すような構成になっている。まず、芯線3は外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束で形成されている。該芯線3の外周に、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線である5本の導体素線5aを引き揃えて、ピッチ約1.0mmで、螺旋状に巻装されている。図7図8に示すように、導体素線5aの周囲には、絶縁被膜5bが形成されている。絶縁被膜5bは、ポリウレタン樹脂製の内層5cと、ポリアミドイミド樹脂製の外層5dとから形成されている。絶縁被膜5bの内層5cは、導体素線5aの周囲にポリウレタンワニスを塗布し乾燥させることで厚さ4μmの層となるように形成された。次に、外層5dは、この内層5cの外周にポリアミドイミドワニスを塗布し乾燥して厚さ4μmの層となるように形成された。導体素線5aを巻装した芯線3の外周には、絶縁体層が被覆されている。絶縁体層は、難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂を0.2mmの厚さとなるように押出被覆して形成されている。この実施の形態では、絶縁体層のポリエチレン樹脂は、熱融着部9として機能する。以上のヒータ線1の仕上外径は0.8mmである。芯線3は屈曲性や引張強度が高くなる点で有効である。芯線3を使用せずに、複数本の導体素線を引き揃えるか或いは撚り合わせたものとすることも可能である。
【0016】
次に、上記構成をなすコード状ヒータ1を接着・固定する基材11の構成について説明する。実施の形態1における基材11は、見かけ密度40kg/m、(JIS K7222準拠)、硬さ220N(JIS K6400準拠)、厚さ8mmの発泡ポリウレタン樹脂からなる。このような基材11は、型抜き等の公知の手法により所望の形状とされる。
【0017】
次に、上記ヒータ線1を基材11上に所定のパターン形状で配設する構成について説明する。基材11は可動台の上に配置され、ヒータ線1は縫合用ミシンに付随して設置されたヒータ線供給機に配置される。ヒータ線1は縫合用ミシンの針棒ユニットのすぐ前方に供給され、これと同期して、可動台が所定のパターンにて移動し、併せて、縫合用ミシンによって基材11にヒータ線1が縫合される。このようにして、ヒータ線1は基材11上に蛇行形状で配設される。図3は、基材11の表面にヒータ線1が縫合された状態の面状ユニット21の要部を拡大して示す断面図である。縫糸は、上糸23と下糸25とからなり、上糸23はヒータ線1をほぼ全周にわたって包み込み、裏側で下糸25と絡み基材11に縫合されている。上糸23は、165dtexのポリエステルフィラメント糸であり、下糸25は165dtexのポリエステルフィラメント糸である。縫合のピッチは、蛇行形状の直線部で2mm、蛇行形状の曲線部で1mmとなっている。
【0018】
次に、上記ヒータ線1を基材11上に所定のパターン形状で配設して接着・固定する構成について説明する。図4はコード状ヒータ10を基材11上に接着・固定させるためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ホットプレス治具15に、ヒータ線1が縫合された基材11が置かれる。その状態でプレス熱板17が降下して基材11をコード状ヒータ10に押し当てる。このとき、例えば、プレス熱板17は230℃/5秒間の加熱・加圧を基材11とコード状ヒータ10に施す。すると、コード状ヒータ10の熱融着部9と基材11の熱融着性繊維はともに加熱・加圧されて互いに融着する。その結果、コード状ヒータ10と基材11が接着されて固定される。この際、ホットプレス治具15の側を併せて加熱しても良い。
【0019】
上記作業を行うことにより、図1及び図2に示すような面状ユニット21を得ることができる。なお、図2図1の要部を拡大して示す断面図である。基材11は、プレス熱板17によって圧縮されることになるため、ヒータ線1が配設される箇所については、より強く加圧されることになる。これにより、基材11におけるヒータ線1が配設される箇所は、ヒータ線1の形状に沿うような形状で、他の箇所よりも高密度化され且つ薄くなる。これにより、面状ユニット21のヒータ線1が配設される面は、ヒータ線1が配設される箇所においても凹凸がなく、平坦な形状となる。また、このようにして得られた面状ユニット21は、基材11が圧縮され高密度になっているため、機械的強度を向上させることができる。
【0020】
また、上糸23は、プレス熱板17の加熱加圧により、ヒータ線1の熱融着部9に食い込むこととなる。これにより、縫糸(上糸23)による凸がなくなり、面状ユニット21のヒータ線1が配設される面は、平坦な形状となる。図5として、実施の形態1による面状ユニット21の断面写真を示す。図5の通り、ヒータ線1の熱融着部9に上糸23が食い込んでいることが確認できる。
【0021】
また、縫糸(上糸23と下糸25)によってヒータ線1を基材11に締め付けて固定した後に、基材11とヒータ線1を熱融着で固定することになるため、面状ユニット21の平坦さを更に高めることができる。
【0022】
実施の形態1によって得られた面状ユニット21の厚さは2.0mmであり、ヒータ線1が配設された箇所における基材11の厚さは1.4mmであり、ヒータ線1が配設されていない箇所における基材11の厚さは2.0mmであった。また、ヒータ線1が配設されていない箇所における基材11の見かけ密度は、160kg/m(JIS K7222準拠)、硬さASKER C 15(JIS K7312準拠)であった。
【0023】
なお、ヒータ線1の外周の熱融着部9は、加熱加圧により変形して流動し、その一部が基材11の空隙(気孔)間に侵入していた。また、ヒータ線1が配設される箇所において、周囲の厚さと比較しても凹凸がなく、概ね平坦であった。ここで、±10%程度の範囲内の厚さの変化は概ね平坦であるといえ、実質的にほぼ一定の厚さである。また、使用者が視認的にも感触的にも凹凸を感じない範囲の厚さの変化の程度であるなら概ね平坦ともいえる。
【0024】
上記のようにして得られた面状ユニット21について、ヒータ線1の両端は、引き出されてリード線27に接続され、このリード線27により、ヒータ線1、温度制御装置29、及び、コネクタ(図示しない)が接続されている。温度制御装置はヒータ線1上に配置され、ヒータ線1の発熱によって面状ユニットの温度制御を行うこととなる。そして、上記したコネクタを介して図示しない車両の電気系統に接続されることになる。
【0025】
上記構成をなす面状ユニット21は、図16に示すような状態で、ステアリングホイール71に設置される。このステアリングホイール71は、ホイール部72、スポーク部73及びボス部74からなり、面状ユニット21は、ホイール部72のホイール芯材77と被覆材78の間に設置されることになる。
【0026】
基材11には、面状ユニット21とステアリングホイールの被覆材78とを、または、面状ユニット21とステアリングホイールのホイール芯材77とを接着するための接着層(図示しない)が形成される。接着層の形成は、予め離型シート上に接着剤のみからなる接着層を形成し、該接着層を上記離型シートから上記基材11の表面に転写することが好ましい。これにより、接着剤は基材11の内部には侵入せず、基材11の表面のみに接着層が形成されることになる。
【0027】
面状ユニット21をステアリングホイールへ設置する際、以下の製法1~4何れかによる方法を用いた。
(製法1)
製法1においては、面状ユニット21と被覆材78とを接着し、その際、ヒータ線1が配設された面側と被覆材78とを接着するものとした。その後、面状ユニット21が接着された被覆材78をホイール芯材77に被覆した。
(製法2)
製法2においては、面状ユニット21と被覆材78とを接着し、その際、ヒータ線1が配設されなかった面側と被覆材78とを接着するものとした。その後、面状ユニット21が接着された被覆材78をホイール芯材77に被覆した。
(製法3)
製法3においては、面状ユニット21とホイール芯材77とを接着し、その際、ヒータ線1が配設された面側とホイール芯材77とを接着するものとした。その後、面状ユニット21が接着されたホイール芯材77に被覆材78を被覆した。
(製法4)
製法4においては、面状ユニット21とホイール芯材77とを接着し、その際、ヒータ線1が配設されなかった面側とホイール芯材77とを接着するものとした。その後、面状ユニット21が接着されたホイール芯材77に被覆材78を被覆した。
【0028】
(実施の形態2)
上記した実施の形態1において、縫糸として、上糸23を外径0.165mmのポリ乳酸繊維、下糸25を110dtexの低融点ポリエチレン糸とし、他の条件は実施の形態1と同様にして面状ユニット21を得た。
【0029】
実施の形態2においては、ホットプレス式ヒータ製造装置13による加熱加圧によって、上糸及び下糸は溶融し、面状ユニットのヒータ線近傍には、縫糸痕が形成された。この縫糸痕も加熱加圧によって平坦化されるので、面状ユニット21のヒータ線1が配設される面は、平坦な形状となる。図6として、実施の形態2による面状ユニット21の断面写真を示す。図6の通り、ヒータ線の熱融着部と縫糸痕とが平坦化されていることが確認できる。
【0030】
(実施の形態3)
上記した実施の形態1において、線状体として、センサ線とし、他の条件は実施の形態1と同様にして面状ユニット21を得た。実施の形態3におけるセンサ線31は図14図15に示すような構成になっている。まず、芯線33は外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束で形成されている。該芯線33の外周に、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線である2本の導体素線35aを引き揃えて、ピッチ約1.0mmで、螺旋状に巻装されている。図14図15に示すように、導体素線35aの周囲には、絶縁被膜35bが形成されている。絶縁被膜35bは、ポリウレタン樹脂製の内層35cと、ポリアミドイミド樹脂製の外層35dとから形成されている。絶縁被膜35bの内層35cは、導体素線35aの周囲にポリウレタンワニスを塗布し乾燥させることで厚さ4μmの層となるように形成された。次に、外層35dは、この内層35cの外周にポリアミドイミドワニスを塗布し乾燥して厚さ4μmの層となるように形成された。導体素線35aを巻装した芯線33の外周には、絶縁体層が被覆されている。絶縁体層は、難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂を0.2mmの厚さとなるように押出被覆して形成されている。この実施の形態では、絶縁体層のポリエチレン樹脂は、熱融着部39として機能する。以上のヒータ線31の仕上外径は0.8mmである。このセンサ線31は、2本の導体素線35a間の静電容量値を検知するものである。
【0031】
上記のようにして得られた実施の形態1~3による面状ユニット21について、製法1~4に示す方法で、それぞれ図16に示すようにステアリングホイール71に設置した。その状態で、実使用に供し、違和感の確認を行った。確認は、10人の使用者がステアリングホイールを握り、左右10回ずつ操舵作業を行って、凹凸を感じるかを聞き取り、違和感を覚えると回答した人数を調査した。
【0032】
実施の形態1~3の面状ユニットについては、何れの製法によってステアリングホイールに設置しても、違和感を覚えると回答した使用者は0人だった。
【0033】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。線状体としては、ヒータ線1でもよいし、センサ線31でもよい。ヒータ線1を使用すれば線条体ユニット31はヒータユニットとなり、センサ線31を使用すれば線条体ユニット31はセンサユニットとなる。センサ線31としては、静電容量センサの他、温度センサなど他のセンサとして使用することができる。温度センサの一種として、線状体をハンダ線とし、異常温度検知ユニットとすることもできる。電波を検知するという意味で、線状体をアンテナ線としてアンテナユニットとすることも考えられる。
【0034】
ヒータ線1としては、従来公知の種々のコード状ヒータを使用されることができ、例えば、以下の構成とすることができる。
1.図7に示す上記実施の形態のように、まず、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせ又は引き揃えて芯線3上に巻装し、さらに、その外周に熱融着部9を被覆して形成されるヒータ線1。
2.図9に示すように、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせて形成されるヒータ線1。
3.図10に示すように、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本引き揃えて形成されるヒータ線1。
4.図11に示すように、絶縁被膜5bによって被覆された導体素線5aと、絶縁被膜5bによって被覆されていない導体素線5aとを、交互に配置して形成されるヒータ線1。
5.図12に示すように、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aの本数を図11に示すものよりも増やした状態で、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを引き揃えて配置して形成されるヒータ線1。
6.図13に示すように、熱融着部9とは別の絶縁体層7を形成したヒータ線1。
ヒータ線1は、これら以外にも様々な構成のものが想定できる。また、芯線3と導体素線5aを撚り合せたものによってヒータ線1を構成することもできる。ヒータ線1でなく、センサ線31としたときも同様である。
【0035】
芯線3としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、スパン、或いはそれらの繊維材料、若しくは、それらの繊維材料を構成する有機高分子材料を芯材とし、その周上に熱可塑性の有機高分子材料が被覆された構成を有する繊維などが挙げられる。又、熱収縮性及び熱溶融性を有する芯線3を使用した場合、導体素線5aが断線して異常加熱すると、芯線3が溶融して切断されるとともに収縮する。芯線3が収縮すると、芯線3に巻装された導体素線5aは芯線3の動作に追従するため、断線した導体素線5aの端部同士が分離する。そのため、断線した導体素線5aのそれぞれの端部が、接したり離れたりすることを繰り返さなくなる。また、断線した導体素線5aのそれぞれの端部が点接触のようなわずかな接触面積で接することがなくなる。すると、異常発熱が防止される。又、導体素線5aが絶縁被膜5bにより絶縁されている場合、芯線3が絶縁材料で形成されている必要はない。例えば、芯線3として、ステンレス鋼線やチタン合金線等を使用できる。しかし、導体素線5aが断線する可能性があるので、芯線3は絶縁材料で形成される方が良い。
【0036】
導体素線5aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロム合金線、鉄-クロム合金線、などが挙げられ、銅合金線としては、例えば、錫-銅合金線、銅-ニッケル合金線、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などが挙げられる。このうち、コストと特性のバランスの点から、銅線又は銅合金線を使用することが好ましい。これら銅線又は銅合金線には軟質のものと硬質のものがあるが、耐屈曲性の観点から、軟質のものよりも硬質のものの方が特に好ましい。尚、硬質銅線や硬質銅合金線とは、線引き加工等の冷間加工によって個々の金属結晶粒が加工方向に長く引き伸ばされ繊維状組織となったものである。このような硬質銅線や硬質銅合金線は、再結晶温度以上で加熱すると、金属結晶内に生じた加工歪みが解消されるとともに、新たな金属結晶の基点となる結晶核が出現し始める。この結晶核が発達して、順次旧結晶粒と置換される再結晶が起き、更に結晶粒が成長した状態となる。軟質銅線や軟質銅合金線はこのような結晶粒が成長した状態のものである。この軟質銅線や軟質銅合金線は、硬質銅線や硬質銅合金線と比べて伸びや電気抵抗値は高いものの引張強さが低い性質となるため、耐屈曲性は硬質銅線や硬質銅合金線と比べて低くなる。このように、硬質銅線や硬質銅合金線は、熱処理によって耐屈曲性が低い軟質銅線や軟質銅合金線になるため、できるだけ熱履歴の少ない加工を行うことが好ましい。尚、硬質銅線はJIS-C3101(1994)、軟質銅線はJIS-C3102(1984)においても定義がなされており、外径0.10~0.26mmでは伸び15%以上、外径0.29~0.70mmでは伸び20%以上、外径0.80~1.8mmでは伸び25%以上、外径2.0~7.0mmでは伸び30%以上のものが軟質銅線とされる。また、銅線には錫メッキが施されているものも含まれる。錫メッキ硬質銅線はJIS-C3151(1994)、錫メッキ軟質銅線はJIS-C3152(1984)にて定義がなされている。又、導体素線5aの断面形状についても種々のものが使用でき、通常使用される断面円形のものに限られず、いわゆる平角線と称されるものを使用しても良い。
【0037】
線状体として、温度検知のセンサ線とする場合、導体線35aとしては、温度変化による抵抗値変化が大きい材料が好ましい。例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロム合金線、銅-ニッケル合金、鉄-クロム合金などの各種金属線、炭素繊維線、導電性樹脂線などが挙げられる。これらの中でも、正特性温度係数を有するものが好ましい。特に係数が大きいニッケル線、プラチナ線が好ましく使用できる。正特性温度係数を有するものであると、温度が上昇するに従い抵抗値が大きくなることになるため、抵抗値が大きくなると異常温度と判断され、通電を停止する制御の方式になる。従って、万が一、導体素線35aが断線したときには、抵抗値が∞になることから、異常温度が発生したときと同様、通電を停止することになる。これは、安全装置としてみたときに非常に信頼度の高い方式である。
【0038】
芯線3に導体素線5aを巻装する場合は、上記した導体素線5aの材料の中でも、巻付けたときのスプリングバックする量が小さいものが好ましい。例えば、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などは、抗張力性に優れ引張強度や屈曲強度には優れるものの、巻付けたときスプリングバックし易い。そのため、芯線3に巻装する際に、導体素線5aの浮きや、過度の巻付けテンションによる導体素線5aの破断が生じ易く、又加工後には撚り癖が生じ易いため好ましくない。特に、導体素線5aに絶縁被膜5bが被覆される形態とした場合は、この絶縁被膜5bによる復元力も加わることになる。そのため、導体素線5aの復元率が小さいものを選定し、絶縁被膜5bによる復元力をカバーすることが重要となる。
【0039】
導体素線5aに被覆される絶縁被膜5bは、上記実施の形態のように、内層5cと外層5dの2層によって形成されても良いし、3層以上の複数層によって形成されても良いし、単層であっても良い。複数層とする場合、内層を構成する材料の熱分解温度は、外層を構成する材料の融点または熱分解温度の内の低い方より低いことが好ましい。ここで、内層とは、導体素線5a上に形成される層である。また、外層とは、この内層より外側であればよいので、外層のさらに外側に他の外層を形成したり、内層と外層の間に他の中間層を形成したりすることも可能である。
【0040】
絶縁被膜5bの材料は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステルナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂など種々の材料が挙げられる。これらの材料は、複数種類を組み合わせて使用しても良いし、難燃剤や老化防止剤などの公知の添加剤を種々配合しても良い。これらの樹脂の中から材料を組み合わせて、内層を構成する材料の熱分解温度が、外層を構成する材料の融点または熱分解温度の内の低い方より、低くなる材料にする。内層の材料は、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール等を選択できる。特に、内層の材料が、熱硬化性樹脂であり、外層を構成する材料が、熱硬化性樹脂であることが好ましい。ここで熱硬化性樹脂には、架橋性材料も含まれる。コード状ヒータとしての発熱特性や、半田付け等の端末加工の容易さの観点から、内層の材料は、ポリウレタン樹脂またはポリエステル樹脂であり、外層の材料は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはシリコーン樹脂の何れかであることが好ましい。特に、内層の材料が、ポリウレタン樹脂であり、外層の材料が、ポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。このポリウレタン樹脂は、例えばイミド含有ポリウレタン等、種々の変性や配合をしているようなものであっても良い。
【0041】
また、絶縁被膜5bの厚さは、導体素線5aの直径の3~30%であることが好ましい。3%未満であると、十分な耐電圧特性が得られず、導体素線5aを個別に被覆する意味がなくなる可能性がある。また、30%を超えると、接続端子を圧着する際に絶縁被膜5bの除去が困難となるとともに、ヒータ線が無駄に太くなってしまうことになる。
【0042】
上記導体素線5aを引き揃え又は撚り合せて芯材3上に巻装する際には、撚り合せるよりも、引き揃えた方が好ましい。これは、ヒータ線の径が細くなるとともに、表面も平滑になるためである。又、引き揃え又は撚り合わせの他に、芯材3上に導体素線5aを編組することも考えられる。
【0043】
本発明によるヒータ線1として、導体素線5aの外周に絶縁被覆7が形成されているものも考えられる(例えば、図Ζ参照)。この絶縁被覆7により、万が一導体素線5aが断線した場合にも、他の部材への通電が絶縁されるとともに、スパークが発生した場合も高温の発熱を断熱することになる。絶縁被覆7を形成する場合は、押出成形等によって行っても良いし、予めチューブ状に成形した絶縁被覆7を被せても良く、形成の方法には特に限定はない。押出成形によって絶縁被覆7を形成すると、導体素線5aの位置が固定されるため、位置ズレによる導体素線5aの摩擦や屈曲を防止できることから、耐屈曲性が向上されるため好ましい。絶縁被覆7を構成する材料としても、ヒータ線の使用形態や使用環境などによって適宜設計すれば良く、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、脂肪族ポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ノリル樹脂(ポリフェニレンオキサイド樹脂)、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム、フッ素ゴム、エチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等、種々のものが挙げられる。特に、難燃性を有する高分子組成物が好ましく使用される。ここでの難燃性を有する高分子組成物とは、JIS-K7201(1999年)燃焼性試験における酸素指数が21以上のものを示す。酸素指数が26以上のものは特に好ましい。このような難燃性を得るため、上記した絶縁被覆7を構成する材料に適宜難燃材等を配合してもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物、酸化アンチモン、メラミン化合物、リン系化合物、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤には公知の方法で適宜表面処理を施しても良い。
【0044】
ヒータ線1の外周に熱融着部9を形成することにより、加熱加圧によりヒータ線1を基材11に熱融着することができる。絶縁被覆7を形成した場合、この絶縁被覆7の外周に熱融着部9が形成される。熱融着部9を構成する材料は、上記の絶縁被覆7を構成する材料と同様のものを使用することができる。これらの中でも、基材との接着性に優れるオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-不飽和エステル共重合体などが挙げられる。これらの中でも特に、エチレン-不飽和エステル共重合体が好ましい。エチレン-不飽和エステル共重合体は、分子内に酸素を有する分子構造であるため、ポリエチレンのような炭素と水素のみの分子構造をしている樹脂と比較して燃焼熱が小さくなり、その結果、燃焼の抑制につながることとなる。又、元々の接着性が高いため基材との接着性も良好である上、無機粉末等を配合した際の接着性の低下が少ないため、種々の難燃剤を配合するのに好適である。エチレン-不飽和エステル共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などが挙げられ、これらの単独又は2種以上の混合物であってもよい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を表すものである。これらの内から任意に選択すれば良いが、上記した絶縁被膜5bを構成する材料の分解開始温度以下又は融点以下の温度で溶融する材料である方が良い。又、基材11との接着性に優れる材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル-ポリエステル型、ポリエステル-ポリエーテル型のものがあるが、ポリエステル-ポリエーテル型の方が高い接着性を有するため好ましい。尚、ヒータ線1と基材11を熱融着する場合、ヒータ線1と基材11との接着強度は非常に重要なものである。この接着強度が充分でないと、使用していくうちに基材11からヒータ線1が離脱してしまい、それにより、ヒータ線11には予期せぬ屈曲が加わることになるため、導体素線5aが断線する可能性が高くなる。導体素線5aが断線すると、ヒータとしての役を果たさなくなるだけでなく、チャタリングによりスパークに至るおそれもある。
【0045】
絶縁被覆7を形成する場合、絶縁被覆7の融点は、熱融着部9の融点よりも高いことが求められる。これにより、加熱加圧等により熱融着部9を融着させる際にも、絶縁被覆7の形状が略変形せず、充分な絶縁性能を維持することができる。絶縁被覆7の融点としては、215℃~250℃であることが好ましく、熱融着部9の融点としては、100℃~185℃であることが好ましい。また、導体素線5aに絶縁被膜5bを形成する場合は、絶縁被覆7の融点は、絶縁被膜5bの融点よりも低いことが好ましい。
【0046】
また、絶縁被覆7を構成する材料と、熱融着部9を構成する材料は、同系の高分子材料であることが好ましい。ここで、同系の高分子材料とは、それぞれが、共通の主鎖構造を有している高分子材料、共通の官能基を有している高分子材料、分子量のみ異なる高分子材料、共通のモノマー単位を有している共重合体、共通の高分子材料を配合している混合物、などが該当する。このようなものであれば、絶縁被覆7と熱融着部9の相互が充分に接着するため、ヒータ線が基材から脱離することを防ぐことができる。
【0047】
導体素線5aの外周には、絶縁被覆7と熱融着部9の2層だけでなく、他の層を適宜形成してもよい。又、絶縁被覆7や熱融着部9は、長さ方向に連続して形成することに限定されず、例えば、ヒータ線1の長さ方向に沿って直線状やスパイラル線状に形成する、ドット模様に形成する、断続的に形成するなどの態様が考えられる。但し、接着強度の観点から、絶縁被覆7及び熱融着部9は、長さ方向に連続して形成することが好ましい。
【0048】
また、上記のようにして得られたヒータ線1は、自己径の6倍の曲率半径で90度ずつの屈曲を行う屈曲性試験において、導体素線が少なくとも1本切れるまでの屈曲回数が2万回以上であることが好ましい。
【0049】
基材11についても、発泡ポリウレタン樹脂に限定されるものではなく、例えば、他の材質からなる発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々の高分子発泡体が考えられる。特に空隙を有するもので、伸縮性に優れるものが好ましく、表面にヒータ線の凹凸が現れないように硬度を調節したものが好ましい。また、硬度を調節するには、発泡率を調整する、気泡の状態を独立気泡または連続気泡にする、目的に応じた硬度の材料を使用するなどの方法がある。材料としては、ポリウレタン樹脂、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、ジエン系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体など、種々の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択すれば良い。基材11としては、その他にも、例えば、不織布、織布、紙、アルミ箔、マイカ板、樹脂シート、延伸多孔質体等、種々のものが使用できる。基材11としては、難燃性のものが好ましく、難燃性繊維や難燃剤を適宜混合したものが好ましく使用される。また、複数の基材11を積層する等して使用することもでき、この場合は、それぞれの基材11で異なる材料や異なる気孔率等のものを使用しても良い。
【0050】
縫糸については、種々の公知の糸材料を使用することができる。例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ乳酸繊維、フッ素樹脂繊維等の有機繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、スパン、或いはそれらの繊維材料、若しくは、それらの繊維材料を構成する有機高分子材料を芯材とし、その周上に熱可塑性の有機高分子材料が被覆された構成を有する繊維などが挙げられる。加熱加圧による線状体の融着を行う際に、縫糸が併せて溶融して縫糸痕を形成するものでも良いし、縫糸が溶融せずに残存するものでもよい。縫糸が溶融する場合は、縫糸痕による線状体と基材との融着が期待でき、縫糸が残存する場合は、縫糸による線状体と基材との固定が期待できる。また、縫い方にも特に制限はない。縫合用ミシンによって縫製する場合、上糸23と下糸25で異なる材料としても良いし、同じ材料としても良い。例えば、加熱加圧による線状体の融着の際に上糸23のみが溶融するようにすることが考えられる。この場合、下糸25は残存することになるが、上糸23は溶融しているため、下糸25を除去することも可能である。縫糸による縫合ピッチについては、縫製の工程の後に加熱加圧による融着の工程があることから、仮固定程度の強度で固定がされていれば良いため、特に限定はない。縫合ピッチが小さくなるほど固定の強度は高くなるが、一方で、生産速度が低下するため、線状体のパターン形状が維持できる最低限の縫合ピッチで縫製すればよい。また、縫合ピッチは場所ごとに変化させても良い。線状体を蛇行形状等のパターン形状で配設する場合、蛇行形状がずれないように、蛇行の曲線部分のみを小さい縫合ピッチとすることも考えられる。
【0051】
また、ヒータ線1を基材11に配設する際、加熱加圧による融着によって接着・固定する態様でなく、他の態様によりヒータ線1を基材11に固定しても良い。例えば、通常の使用よりも高い温度になるよう、ヒータ線1に通電して加熱させ、その熱で熱融着部9を溶融させて基材11と接着・固定する態様、誘導加熱によって導体素線5を加熱させ、その熱で熱融着部9を溶融させて基材11と接着・固定する態様、温風により熱融着材からなる熱融着部9を溶融させて接着・固定する態様、加熱しながら一対の基材11で挟持固定する態様などが考えられる。また、基材11を加熱加圧する際には、プレス熱板17のみでなくホットプレス治具15についても加熱しても良い。この際、プレス熱板17とホットプレス治具15の温度を異なるものとして、基材11の圧縮率を変え、即ち気孔率を変化させることも考えられる。
【0052】
また、接着層としては、例えば、高分子アクリル系粘着剤からなりテープ基材を使用しない接着層や、ポリプロピレンフィルムの両面に接着剤を形成してなる接着層など種々のもの使用できる。それ単独でFMVSS No.302自動車内装材料の燃焼試験に合格するような難燃性を有するものであれば、面状ユニットの難燃性が向上し好ましい。また、面状ユニットの伸縮性を損なわないために、粘着剤のみからなる接着層であることが好ましい。
【0053】
本発明による面状ユニット21の用途として、上記図16で示したようなステアリングホイールの他にも種々の用途に使用することができる。例えば、上記構成をなす線条体ユニット21は、図17に示すような状態で、車両用座席81内に埋め込まれて配置されることが考えられる。図17における面状ユニット21は、表皮カバー83または座席パット85に貼り付けられ、表皮カバー83と座席パット85の間に配置されている。ここで、面状ユニット21は、線状体をヒータ線としたヒータユニットであり、座席の暖房装置として使用されることになる。また、線状体を静電容量センサ線としたセンサユニットとし、着座状態の検知をすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上詳述したように本発明によれば、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることのないようにすることができる。このような面状ユニットは、例えば、自動車、船舶、各種輸送用車両、各種農耕用車両、各種土木建設用重機などに使用されるステアリングホイールや座席に使用され、ステアリングホイール部や座席を暖めるためのヒータユニットとして、ステアリングホイールや座席の温度検知をするための温度センサユニットとして、或いは、ステアリングホイールの恥状態は座席の着座状態を検知するための静電容量センサユニットとして好適に使用することができる。また、本発明による面状ユニットは、線状体部分の凹凸がなく平坦なものであることを活かし、ステアリングホイールや座席のみでなく、他の用途に活用することができる。例えば、電気毛布、電気カーペット、暖房便座、防曇鏡用ヒータ、加熱調理器具、床暖房用ヒータ、被服用ヒータ、各種の平面状温度検知器、静電容量検知器等に応用することも考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 ヒータ線(線状体)
3 芯材
5a 導体素線
5b 絶縁被膜
9 熱融着部
11 基材
21 面状ユニット
23 上糸(縫糸)
25 下糸(縫糸)
31 ヒータ線(線状体)
33 芯材
35a 導体素線
35b 絶縁被膜
39 熱融着部
71 ステアリングホイール
77 ホイール芯材
78 被覆材
81 車両用座席
83 表皮カバー
85 座席パット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17