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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160013
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】鋳造装置の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/06 20060101AFI20231026BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B22C9/06 B
B22C9/06 C
B22D17/22 D
B22D17/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070012
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳志
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NB05
4E093NB07
(57)【要約】
【課題】金型を安定して保持しつつ金型に供給される冷却水の漏えいを防止できる鋳造装置の冷却構造を提供する。
【解決手段】保持部材と金型とを連結するとともに保持部材を連結位置と退避位置との間でスライド移動させるスライド部材と、保持部材と金型との間に介在して金型の第1通路と保持部材の第2通路とを連通するジョイント部材とを設け、ジョイント部材のキャビティ側または反キャビティ側の端面である基端面と、基端面と対向する対向底面とを、ジョイント部材の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状にするとともに、基端面と対向底面の間にシール部材を設ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が流通する第1通路が形成され且つ内側にキャビティを画成する金型と、冷却水が流通する第2通路が形成されるとともに前記金型を用いた物品の鋳造時に当該金型を保持する保持部材とを備えた鋳造装置の冷却構造であって、
前記保持部材と前記金型とを連結可能で、且つ、前記保持部材を前記金型に連結される連結位置と当該連結位置から反キャビティ側に離れた退避位置との間でスライド移動可能なスライド部材と、
前記連結位置にある前記保持部材と前記金型との間に介在して前記第1通路と前記第2通路とを連通するジョイント部材とを備え、
前記金型は、前記保持部材との対向面に、キャビティ側に向かって凹み且つ前記ジョイント部材のキャビティ側の部分を収容する第1収容部を備え、
前記保持部材は、前記金型との対向面に、反キャビティ側に向かって凹み且つ前記ジョイント部材の反キャビティ側の部分を収容する第2収容部を備え、
前記ジョイント部材のキャビティ側または反キャビティ側の端面である基端面と、前記第1収容部の底面と前記第2収容部の底面のうち前記基端面と対向する対向底面とは、前記ジョイント部材の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状を有し、前記基端面と前記対向底面の間にはシール部材が設けられている、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記基端面および前記対向底面は球面に沿う形状を有する、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項3】
請求項1に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記シール部材はOリングである、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項4】
請求項1に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記ジョイント部材の反キャビティ側の端面が前記基端面であり、
前記第2収容部の底面が前記対向底面であり、
前記ジョイント部材は、その反キャビティ側の端部に径方向外側に突出する鍔部を有し、
前記第2収容部には、前記鍔部のキャビティ側の側面と対向する規制面を有してキャビティ側から当該鍔部に当接することで前記ジョイント部材を前記第2収容部内に保持する規制部材が収容されており、
前記鍔部の反キャビティ側の側面と前記規制面とは、前記基端面が沿う円弧と平行な円弧に沿って延びている、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項5】
請求項1に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記ジョイント部材の反キャビティ側の端面が前記基端面であり、
前記第2収容部の底面が前記対向底面であり、
前記ジョイント部材は、前記第2収容部からキャビティ側に突出する筒状のスリーブと、前記第1収容部内に収容されて前記スリーブのキャビティ側の部分が挿入される筒状のブッシュとを備え、
前記ブッシュの内周面には、前記スリーブの外周面との間の隙間を塞ぐ第2シール部材が配設されている、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項6】
請求項1に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記ジョイント部材のキャビティ側の端面が前記基端面であり、
前記第1収容部の底面が前記対向底面であり、
前記ジョイント部材は、前記第1収容部から反キャビティ側に突出する筒状のスリーブと、前記第2収容部内に収容されて前記スリーブの反キャビティ側の部分が挿入される筒状のブッシュと、を備え、
前記ブッシュの内周面には、前記スリーブの外周面との間の隙間を塞ぐ第2シール部材が配設されている、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の鋳造装置の冷却構造において、
前記スライド部材は、水平方向に沿って前記保持部材をスライド移動させる、ことを特徴とする鋳造装置の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造装置の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いて物品を鋳造する鋳造装置では、金型を冷却するために金型の内側に冷却水を流通させる場合がある。例えば、特許文献1には、当該構成として、外側面に開口する冷却孔が形成された金型と、冷却孔に挿入された冷却管とを備え、冷却管と冷却孔とを介して金型に冷却水が導入される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-221577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型を用いる鋳造装置において、金型を所定の保持部材に連結すれば金型を安定させることができる。これより、金型と保持部材とを連結するとともに保持部材と金型との間にジョイント部材を介在させて、保持部材に金型を保持させつつ、ジョイント部材を介して冷却水を金型と保持部材との間で受け渡すことが考えられる。しかしながら、この構成では、保持部材に対する金型の傾きがずれると、ジョイント部材の周囲に隙間が生じて水が漏えいするという問題がある。水が漏えいすると、金型あるいは保持部材に錆びが生じやすくなる。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、金型を安定して保持しつつ金型に供給される冷却水の漏えいを防止できる鋳造装置の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、冷却水が流通する第1通路が形成され且つ内側にキャビティを画成する金型と、冷却水が流通する第2通路が形成されるとともに前記金型を用いた物品の鋳造時に当該金型を保持する保持部材とを備えた鋳造装置の冷却構造であって、前記保持部材と前記金型とを連結可能で、且つ、前記保持部材を前記金型に連結される連結位置と当該連結位置から反キャビティ側に離れた退避位置との間でスライド移動可能なスライド部材と、前記連結位置にある前記保持部材と前記金型との間に介在して前記第1通路と前記第2通路とを連通するジョイント部材とを備え、前記金型は、前記保持部材との対向面に、キャビティ側に向かって凹み且つ前記ジョイント部材のキャビティ側の部分を収容する第1収容部を備え、前記保持部材は、前記金型との対向面に、反キャビティ側に向かって凹み且つ前記ジョイント部材の反キャビティ側の部分を収容する第2収容部を備え、前記ジョイント部材のキャビティ側または反キャビティ側の端面である基端面と、前記第1収容部の底面と前記第2収容部の底面のうち前記基端面と対向する対向底面とは、前記ジョイント部材の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状を有し、前記基端面と前記対向底面の間にはシール部材が設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、保持部材によって金型を安定できるとともに、ジョイント部材を介して保持部材の第2通路と金型の第1通路とを連通させることができ、保持部材を介して金型に冷却水を導入して金型を適切に冷却できる。また、スライド部材によって保持部材を金型から離間させることができるとともに、金型と保持部材との連結にスライド部材が用いられることでこれらを連結させるための部材を別途設ける必要がなく、構成を簡素化できる。
【0008】
しかも、この構成では、ジョイント部材のキャビティ側または反キャビティ側の端面である基端面と、金型または保持部材においてジョイント部材を収容する収容部の底面であって基端面と対向する対向底面とが、ジョイント部材の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状とされているとともに、基端面と対向底面の間にシール部材が設けられている。そのため、金型または保持部材の一方の収容部の底面と基端面とを水密状態に維持しつつ、他方の収容部とジョイント部材とを一体に揺動させることができる。従って、保持部材に対する金型の傾きがずれた場合であっても、ジョイント部材と一方の収容部との間の隙間から水が漏れるのを防止できるとともに、他方の収容部およびこれが形成された金型あるいは保持部材に対するジョイント部材の姿勢を適切な姿勢に維持して他方の収容部に収容されたジョイント部材の周囲から水が漏れるのも防止できる。
【0009】
前記構成において、好ましくは、前記基端面および前記対向底面は球面に沿う形状を有する(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、保持部材に対する金型の傾きがいずれの方向にずれた場合においても、他方の収容部が形成された金型あるいは保持部材に対するジョイント部材の姿勢を適切な姿勢に維持でき、収容部の外部への漏水をより確実に防止できる。
【0011】
前記構成において、前記シール部材としてはOリングが挙げられる(請求項3)。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記ジョイント部材の反キャビティ側の端面が前記基端面であり、前記第2収容部の底面が前記対向底面であり、前記ジョイント部材は、その反キャビティ側の端部に径方向外側に突出する鍔部を有し、前記第2収容部には、前記鍔部のキャビティ側の側面と対向する規制面を有してキャビティ側から当該鍔部に当接することで前記ジョイント部材を前記第2収容部内に保持する規制部材が収容されており、前記鍔部の反キャビティ側の側面と前記規制面とは、前記基端面が沿う円弧と平行な円弧に沿って延びている(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、ジョイント部材の円弧に沿う移動を許容しつつジョイント部材を第2収容部内に保持できる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、前記ジョイント部材の反キャビティ側の端面が前記基端面であり、前記第2収容部の底面が前記対向底面であり、前記ジョイント部材は、前記第2収容部からキャビティ側に突出する筒状のスリーブと、前記第1収容部内に収容されて前記スリーブのキャビティ側の部分が挿入される筒状のブッシュとを備え、前記ブッシュの内周面には、前記スリーブの外周面との間の隙間を塞ぐ第2シール部材が配設されている(請求項5)。
【0015】
この構成によれば、スリーブをブッシュの内側に挿入することで、保持部材と金型との間にジョイント部材を介在させることができる。また、ブッシュに配設された第2シール部材によってスリーブのキャビティ側の部分の外周面をつたって第1収容部の外部に水が漏えいするのを防止できる。また、スリーブとブッシュとを第1収容部および第1収容部を備える金型と一体に揺動させて、これらの金型に対する姿勢を適切な姿勢に維持できる。従って、金型側において水が漏えいして金型が錆びるのを効果的に防止できる。
【0016】
前記構成において、好ましくは、前記ジョイント部材のキャビティ側の端面が前記基端面であり、前記第1収容部の底面が前記対向底面であり、前記ジョイント部材は、前記第1収容部から反キャビティ側に突出する筒状のスリーブと、前記第2収容部内に収容されて前記スリーブの反キャビティ側の部分が挿入される筒状のブッシュと、を備え、前記ブッシュの内周面には、前記スリーブの外周面との間の隙間を塞ぐ第2シール部材が配設されている(請求項6)。
【0017】
この構成においても、上記の構成と同様に、スリーブをブッシュの内側に挿入することで、保持部材と金型との間にジョイント部材を介在させることができる。また、ブッシュに配設された第2シール部材によってスリーブのキャビティ側の部分の外周面をつたって第1収容部の外部に水が漏えいするのを防止できる。また、この構成においても、スリーブとブッシュとを第1収容部および第1収容部を備える金型と一体に揺動させて、これらの金型に対する姿勢を適切な姿勢に維持できる。従って、金型側において水が漏えいして金型が錆びるのを効果的に防止できる。
【0018】
前記構成において、好ましくは、前記スライド部材は、水平方向に沿って前記保持部材をスライド移動させる(請求項7)。
【0019】
保持部材が連結位置と退避位置との間で水平方向にスライド移動される構成では、保持部材と金型とが水平方向に並ぶ状態で連結されることになる。そのため、金型がその自重により傾きやすく、保持部材に対する金型の傾きがずれやすい。従って、保持部材のスライド移動方向が水平方向である構成に本発明が適用されれば効果的に水漏れを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の鋳造装置の冷却構造によれば、金型を安定して保持しつつ金型に供給される冷却水の漏えいを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】鋳造装置の主要部を示した概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係る鋳造装置の概略断面図である。
図3図2に示す鋳造装置の型締め時の概略断面図である。
図4図3のIV部分を拡大して示した図である。
図5図3のV部分を拡大して示した図である。
図6図4に対応する図であって金型が傾いたときのジョイント部材周辺の様子を示した図である。
図7】比較例に係るジョイント部材周辺を示した図であって金型が傾いたときのジョイント部材周辺の様子を示した図である。
図8】第2実施形態に係るジョイント部材を示した断面図である。
図9図8に対応する図であって金型が傾いたときのジョイント部材周辺の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)鋳造装置の全体構成
図1は、本発明の実施形態に係る冷却構造が適用された鋳造装置1の主要部を示した概略斜視図である。
【0023】
鋳造装置1は、内側にキャビティCが区画された鋳型10を備え、キャビティCに溶湯が導入されることによって物品を鋳造する。鋳型10は、互いに組み合わされて内側にキャビティCをそれぞれ画成する複数の金型11により構成されている。本実施形態では、鋳型10は、略直方体の外形を有し、鋳型10の6面をそれぞれ構成する6つの金型11(11A~11F)を有する。つまり、鋳型10は、上下方向に対向する金型11A,11Bと、上下方向と直交する左右方向に対向する金型11C,11Dと、上下方向および左右方向と直交する前後方向に対向する金型11E,11Fとを有する。
【0024】
以下では、図1に示すように、後述する保持部材40に囲まれた領域内に各金型11が配置され、且つ、各金型11が互いに組み合わされて鋳型10を形成する位置にあるときのことを、金型11が鋳造位置にあるときといい、このときの各金型11の位置を鋳造位置という。
【0025】
本実施形態では、左右方向に対向する金型11C,11Dに係る部分に本発明の特徴的な構成が適用されている。これより、以下では、前後方向に対向する金型11E,11Fに係る部分の説明は省略し、左右方向に対向する金型11C,11Dに係る部分と、上下方向に対応する金型11A,11Bに係る部分について説明を行う。また、以下では、適宜、左右方向に対向する金型11C,11Dおよび上下方向に対応する金型11A,11Bをまとめて金型11という。また、適宜、キャビティCと各金型11の並び方向をまとめて特定方向といい、特定方向についてキャビティC側をキャビティ側、反対側を反キャビティ側という。具体的に、鋳型10の上部を構成する金型11Aについては上下方向が特定方向となり、下側がキャビティ側となる。鋳型10の下部を構成する金型11Bについては上下方向が特定方向となり、上側がキャビティ側となる。鋳型10の左部を構成する金型11Cについては左右方向が特定方向となり、右側がキャビティ側となる。鋳型10の右側面を構成する金型11Dについては左右方向が特定方向となり、左側がキャビティ側となる。
【0026】
図2および図3は、前後方向と直交する面における鋳造装置1の概略断面図である。図2は、各金型11が鋳造位置にあり、且つ、各保持部材40が金型11から離れた位置にある状態の図、図3は、各金型11が鋳造位置にあり、且つ、各金型11に対応する保持部材40が連結された状態の図である。
【0027】
金型11(11A~11D)の反キャビティ側の側面つまり鋳型10の外側面を構成する面には、反キャビティ側に突出する突出部12がそれぞれ設けられている。突出部12の内側には、後述するスライド部材60の係止部61と係合する被係合孔13Aが形成されている。具体的に、突出部12の内側には、断面が略円形の被係合孔13Aと、被係合孔13Aと連通して突出部12の端面に開口する導入孔13Bとが形成されている。導入孔13Bは、長手方向の寸法が被係合孔13Aの孔径とほぼ同等に設定された略長方形の孔である。
【0028】
各金型11には、その内側に、冷却水が流通する第1通路14がそれぞれ形成されている。金型11の反キャビティ側の側面(保持部材40との対向面)には、第1通路14と連通してキャビティC側に凹む第1凹部20が形成されている。第1通路14は、第1凹部20を介して金型11の外部と連通している。金型11には、1つの第1通路14につき1対の第1凹部20であって第1通路14に冷却水を導入するための導入用の第1凹部20と第1通路14から冷却水を導出するための導出用の第1凹部20とが設けられている。本実施形態では、各金型11に複数の第1通路14が設けられており、導入用の第1凹部20と導出用の第1凹部20のセットが複数セット設けられている。なお、図には、導入用の第1凹部20と導出用の第1凹部20とをそれぞれ1つだけ示している。
【0029】
鋳造装置1は、鋳造時に各金型11をそれぞれ保持する保持部材40を備える。また、鋳造装置1は、各保持部材40と各金型11とそれぞれ連結するとともに、各保持部材40をそれぞれ特定方向に沿ってスライド移動させるスライド部材60を備える。鋳造装置1は、4つの金型11(11C~11F)に対応して、4つの保持部材40および4つのスライド部材60を備える。
【0030】
各保持部材40は、対応する金型11の反キャビティ側に配置されている。各保持部材40は、鋳造位置にある金型11に反キャビティ側から当接する状態で金型11に連結されることで金型11を鋳造位置に保持する。本実施形態では、保持部材40は、略直方体の外形を有する。
【0031】
各スライド部材60は、それぞれ円柱状を有し、油圧等によってその軸方向にスライド駆動される。各保持部材40は、対応するスライド部材60にこれと一体にスライド移動可能に固定されている。各保持部材40は、スライド部材60のスライド移動に伴って、図3に示す位置であって鋳造位置にある金型11に反キャビティ側から当接してこれと連結される第1の位置と、第1の位置から反キャビティ側に離れた第2の位置との間でスライド移動する。第1の位置は、請求項の「連結位置」に相当し、第2の位置は請求項の「退避位置」に相当する。
【0032】
各スライド部材60の先端には、それぞれ、その軸方向回りに回転駆動される係止部61が設けられている。係止部61は、スライド部材60の径方向に延びる板状部材であって、上記の導入孔13Bとほぼ同一の略長方形を呈する。係止部61は、金型11と保持部材40とが当接している状態で導入孔13Bを介して上記の被係合孔13Aに挿入された後に90度回転されることで被係合孔13Aに係止される。この係止部61と被係合孔13Aとの係合によってスライド部材60および保持部材40と金型11とは連結される。
【0033】
ここで、本実施形態では、スライド部材60は、係止部61が被係合孔13Aに係止された状態、つまり、保持部材40と金型11とが連結された状態でもスライド移動できるようになっている。つまり、スライド部材60は、保持部材40と金型11とを一体にスライド移動できるようになっている。
【0034】
各保持部材40には、その内側に、冷却水が流通する第2通路44がそれぞれ形成されている。各保持部材40のキャビティC側の側面(金型11との対向面)には、第2通路44と連通して反キャビティ側に凹む第2凹部50が形成されている。第2通路44は、第2凹部50を介して保持部材40の外部と連通している。保持部材40には、1つの第2通路44につき1対の第2凹部50であって第2通路44に冷却水を導入するための導入用の第2凹部50と第2通路44から冷却水を導出するための導出用の第2凹部50とが設けられている。本実施形態では、各保持部材40に複数の第2通路44が設けられており、導入用の第2凹部50と導出用の第2凹部50のセットが複数セット設けられている。なお、図には、導入用の第1凹部20と導出用の第2凹部50とをそれぞれ1つだけ示している。
【0035】
金型11の導入用の第1凹部20と、当該金型11に対応する保持部材40の導出用の第2凹部50とは特定方向に対向しており、金型11の導出用の第1凹部20と、当該金型11に対応する保持部材40の導入用の第2凹部50とは特定方向に対向している。
【0036】
鋳造装置1は、金型11と保持部材40とが連結されている状態で、互いに対向する第1凹部20および第2凹部50内に共通して収容されるジョイント部材70を備える。ジョイント部材70には、特定方向の両端に開口する通路が区画されている。金型11と保持部材40とが連結されている状態で、第1通路14と第2通路44とはジョイント部材70を介して互いに連通し、冷却水はジョイント部材70を介して金型11と保持部材40との間で受け渡しされる。
【0037】
上記のように構成された鋳造装置1では、まず、図2に示すように、各金型11が組み合わされてユニット化されたものが、第2の位置にある保持部材40に囲まれた領域にセットされる。つまり、各金型11が鋳造位置に配置される。次に、図3に示すように、スライド部材60により各保持部材40が第1の位置にスライド移動させられるとともに各金型11に連結され、これにより各金型11が鋳造位置に保持される。次に、各金型11により区画されたキャビティC内に溶湯が導入されるとともに、保持部材40を介して冷却水が各金型11に導入されて溶湯が冷却され、これにより物品が鋳造される。また、その後、スライド部材60によって各保持部材40が各金型11と連結されたまま第2の位置にスライド移動させられることで、物品から各金型11が分離されて、物品が取り出される。
【0038】
(2)第1実施形態に係るジョイント部材およびその周辺の構成
次に、第1実施形態に係るジョイント部材70およびその周辺の構成について説明する。本第1実施形態では、左右に対向する金型11C,11Dに対応するジョイント部材70と、上下に対向する金型11A,11Bに対応するジョイント部材70とは異なる構成を有している。以下では、左右に対向する金型11C,11Dに対応するジョイント部材70を第1ジョイント部材80といい、上下に対向する金型11A,11Bに対応するジョイント部材70を第2ジョイント部材90という。
【0039】
(第1ジョイント部材およびその周辺構成)
図4は、図3のIVで示す部分の拡大図である。以下では、図4を用いて、左部の金型11Cに対応する第1ジョイント部材80およびその周辺の構成について説明を行う。なお、左部の金型11Cに対応する第1ジョイント部材80およびその周辺の構成と、右部の金型11Dに対応する第1ジョイント部材80およびその周辺の構成とは左右対称であり、右部の金型11Dに対応するこれらの構成は、以下の説明において「右」を「左」、「左」を「右」に読み替えた構成となる。
【0040】
金型11に形成された第1凹部20は、左右方向と直交する断面が円形の凹部である。第1凹部20の左側部分には右側部分よりも径が大きい拡径部21が設けられている。本第1実施形態では、この第1凹部20が請求項の「第1収容部」に相当する。
【0041】
保持部材40に形成された第2凹部50は、左右方向と直交する断面は円形の凹部である。第2凹部50の右側部分には左側部分よりも径が大きい拡径部51が設けられている。第2凹部50の底部には、調整部材200が嵌め込まれている。調整部材200は、その表裏を左右方向に貫通する貫通孔201が中央に形成された略円板部材である。調整部材200は、その中心軸と第2凹部50の中心軸とが一致する姿勢で第2凹部50に嵌め込まれている。調整部材200の左側面には円環状の溝202が形成されている。この溝202にはOリング203が嵌合されている。調整部材200は、Oリング203を溝202の底面と第2凹部50の底面53との間に挟み込んだ状態で第2凹部50の底部に嵌め込まれている。調整部材200の厚み寸法(左右方向の寸法)は第2凹部50の深さ寸法(左右方向の寸法)よりも小さく、第2凹部50に調整部材200が嵌め込まれた状態で、第2凹部50のうち調整部材200から右方の領域には、保持部材40の右端面から左方に凹む第2収容部50Aが区画されている。
【0042】
調整部材200の右側面205つまり第2収容部50Aの底面205(以下、適宜、第2収容部底面205という)は、球面R1に沿う形状を有しており、第2収容部底面205は左右方向に沿ういずれの断面においても円弧に沿って延びている。本第1実施形態では、球面R1は、第2凹部50および調整部材200の中心軸X1上に中心を有する球面である。また、本第1実施形態では、球面R1の中心は、第2収容部底面205の右方に位置しており、第2収容部底面205は左方に膨出する形状を呈する。
【0043】
第1ジョイント部材80は、第1スリーブ110と、第1ブッシュ130とを有する。第1ジョイント部材80は、全体として略筒状を呈し、その軸方向が左右方向と一致する姿勢で第1凹部20および第2凹部50に収容されている。
【0044】
第1スリーブ110は、略筒状を呈し、その内側には冷却水が流通する冷却水通路118が形成されている。第1スリーブ110は、その中心軸X2が第2凹部50および調整部材200の中心軸X1と一致して、その軸方向が左右方向と一致する姿勢で保持部材40に保持されている。また、第1スリーブ110は、その左側部分が第2凹部50内に収容されて、その右側部分が第2収容部50Aから右方に突出する状態で保持部材40に保持されている。
【0045】
第1スリーブ110の左端つまり反キャビティ側の端部には径方向外側に突出する第1鍔部111が設けられている。第1鍔部111の左側面112つまり第1スリーブ110の左側の端面112(以下、適宜、第1スリーブ左端面112という)は、第1スリーブ110が保持部材40に保持されている状態で第2収容部底面205に沿って延びる形状を有している。上記のように、第2収容部底面205は上記の球面R1に沿って延びており、第1スリーブ左端面112もこの球面R1に沿って延びている。ここで、第1スリーブ左端面112は請求項の「基端面」に相当し、第2収容部底面205は、請求項の「対向底面」に相当する。また、第1鍔部111は、請求項の「鍔部」に相当する。
【0046】
第1スリーブ左端面112には環状の溝113が形成されている。この溝113にはOリング120が嵌合されている。第1スリーブ110は、その左側の端面である第1スリーブ左端面112と第2収容部底面205との間にOリング120を挟み込んだ状態で保持部材40に保持されている。このOリング120は、請求項の「シール部材」に相当する。
【0047】
第1スリーブ110は、第1スリーブ押さえ150によって保持部材40に保持されている。
【0048】
具体的に、第1スリーブ押さえ150は、その軸が左右方向に沿う略筒状部材である。第1スリーブ押さえ150の左側面の中央には、右方に凹む当接凹部151が形成されている。第1スリーブ押さえ150は、その内側に第1スリーブ110が挿通された状態で第2凹部50の拡径部51に収容されているとともに、ボルト等により保持部材40に固定されている。この固定状態において、当接凹部151の底面155は第1鍔部111の右側面115の右方においてこれと対向しており、当接凹部151の底面155が第1鍔部111の右側面に右方から当接することで第1スリーブ110の右方への移動ひいては第2収容部50Aからの離脱を規制している。ここで、上記の第1スリーブ押さえ150は請求項の「規制部材」に相当し、上記の当接凹部151の底面155は請求項の「規制面」に相当し、第1鍔部111の右側面115は請求項の「鍔部の反キャビティ側の側面」に相当する。
【0049】
互いに対向する第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155とは、ともに、第1スリーブ左端面112と平行な曲面形状を有している。つまり、これら第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155とは、それぞれ、上記の球面R1と同じ径を有するとともに、第2凹部50の中心軸X1上の点で且つ第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155よりも右方に位置する点を中心とする球面R2、R3に沿って延びている。
【0050】
ここで、拡径部51よりも左側の第2凹部50の内径および当接凹部151の内径は、略同一の寸法であって第1鍔部111の外径よりも大きい寸法に設定されている。また、当接凹部151よりも右側の第1スリーブ押さえ150の内径は、第1鍔部111よりも右側の第1スリーブ110の外径よりも大きい寸法に設定されている。これより、第1スリーブ110の外周面とこれを囲む面との間には隙間が区画されている。
【0051】
第1ブッシュ130は、略筒状を呈する。第1ブッシュ130は、その中心軸が第1凹部20の中心軸X2と一致してその軸方向が左右方向と一致する姿勢で第1凹部20内に収容されている。
【0052】
第1ブッシュ130の内周面には、円環状の溝131が形成されている。本実施形態では、2つの溝131が左右方向に互いに離間した位置に形成されている。これらの溝131にはそれぞれOリング132が嵌合されている。金型11Cと保持部材40とが互いに当接する位置に配置されると、第1スリーブ110の右側部分は第1ブッシュ130の内側に挿入され、第1ブッシュ130とともに第1スリーブ110の右側部分も第1凹部20内に収容される。この状態において、第1スリーブ110の外周面と第1ブッシュ130の内周面との隙間はOリング132により塞がれる。Oリング132は、請求項の「第2シール部材」に相当する。
【0053】
第1ブッシュ130は、第1ブッシュ押さえ160によって第1凹部20からの離脱が規制されており、第1凹部20に収容された状態で金型11Cに保持されている。
【0054】
第1ブッシュ押さえ160は、その軸が左右方向に沿う略筒状部材である。第1ブッシュ押さえ160は、その内側に第1スリーブ110を挿通可能な状態で第1凹部20の拡径部21に収容されているとともに、ボルト等により金型11Cに固定されている。この固定状態において、第1ブッシュ押さえ160の右側面は、第1ブッシュ130の左方においてこれと対向しており、第1ブッシュ押さえ160が第1ブッシュ130に左方から当接することで第1ブッシュ130の左方への移動ひいては第1凹部20からの離脱を規制してる。
【0055】
(第2ジョイント部材およびその周辺構成)
図5は、図3のVで示す部分の拡大図である。以下では、図5を用いて、上部の金型11Aに対応する第2ジョイント部材90およびその周辺の構成について説明を行う。なお、上部の金型11Aに対応する第2ジョイント部材90およびその周辺の構成と、下部の金型11Bに対応する第2ジョイント部材およびその周辺の構成とは上下対称であり、下部の金型11Bに対応するこれらの構成は、以下の説明において「上」を「下」、「下」を「上」に読み替えた構成となる。
【0056】
第2ジョイント部材90が収容される第1凹部20と第2凹部50の構造と、第1ジョイント部材80が収容される第1凹部20と第2凹部50の構造とは同一であり(90度回転させた構成となる)、第2ジョイント部材90が収容される第1凹部20と第2凹部50も、それぞれ拡径部21,51を有する。
【0057】
第2ジョイント部材90は、第1ジョイント部材80と同様に、上記の第1ブッシュ130を有する。一方、第2ジョイント部材90は、第1スリーブ110とは異なる構造を有する第2スリーブ310を有する。
【0058】
第2スリーブ310は、略筒状を呈し、その内側には冷却水が流通する冷却水通路318が形成されている。第1スリーブ110は、その中心軸X22が第2凹部50の中心軸X21と一致して、その軸方向が上下方向と一致する姿勢で保持部材40に保持されている。また、第1スリーブ110は、その上側部分が第2凹部50内に収容されて、その下側部分が第2凹部50から下方に突出する状態で保持部材40に保持されている。
【0059】
第2スリーブ310の上端には径方向外側に突出する第2鍔部311が設けられている。上記のように、第1スリーブ110では、その第1鍔部111の左側の端面112が球面R1に沿う形状を呈している。これに対して、第2スリーブ310の第2鍔部311の上側の端面312は、上下方向と直交する平面状を有している。また、第2スリーブ310が収容される第2凹部50には、上記の調整部材200は配設されていない。第2スリーブ310は、その第2鍔部311の上面が、第2凹部50の平面状の底面と当接する状態で保持部材40に保持されている。詳細には、第2スリーブ310は、第2凹部50との間に、Oリング320を挟み込んだ状態で第2凹部50内に収容されている。なお、Oリング320は、第2鍔部311の上面に形成された環状の溝313に嵌合されている。
【0060】
なお、第2ジョイント部材90の第1ブッシュ130は、第1ジョイント部材80と同様に第1凹部20内に収容されているとともに、第1ブッシュ押さえ160により金型11Aに保持されている。また、第2ジョイント部材90においても、第1ジョイント部材80と同様に、金型11Aと保持部材40とが互いに当接する位置に配置されると、第2スリーブ310の下側部分が第1ブッシュ130の内側に挿入され、第1ブッシュ130とともに第2スリーブ310の下側部分が第1凹部20内に収容される。また、この状態において、第2スリーブ310の外周面と第1ブッシュ130の内周面との隙間は、第1ブッシュ130の内周面に形成された溝131に嵌合されたOリング132により塞がれる。
【0061】
(3)作用等
以上のように、上記の第1実施形態に係る鋳造装置1では、スライド部材60によって、保持部材40を、鋳造位置にある金型11から反キャビティ側に離れた第2の位置と、金型11に当接してこれに連結される第1の位置とに移動させることができる。また、スライド部材60を用いて保持部材40と金型11とを連結することができる。これより、保持部材40を移動させる装置と、保持部材40と金型11とを連結する装置とを個別に設ける場合に比べて、部品点数を低減できる。また、上記の第1実施形態では、スライド部材60が、保持部材40を、金型11との連結を維持した状態でスライド移動させることが可能となっている。そのため、スライド部材60を用いて、鋳造された物品から金型11を離型することもでき、装置をより簡素化できる。
【0062】
また、第1実施形態に係る鋳造装置1では、保持部材40の第2通路44と金型11の第1通路14とがジョイント部材70を介して連通される。これより、保持部材40およびジョイント部材70を通して金型11に冷却水を導入でき、金型11を適切に冷却できる。
【0063】
ここで、左部および右部の金型11C,11Dと、これらに対応する保持部材40とは、左右方向つまり水平方向に並ぶ姿勢で連結される。そのため、金型11C,11Dの自重によって金型11C,11Dの保持部材40に対する傾きがずれるおそれがある。特に、上記第1実施形態では、スライド部材60によって保持部材40と金型11とが連結されるとともに保持部材40がスライド移動されるようになっており、スライド部材60の使用頻度が高い。そのため、スライド部材60が比較的摩耗しやすく、スライド部材60による金型11と保持部材40の締結力が低下して、金型11の保持部材40に対する傾きが比較的ずれやすい。これより、左部および右部の金型11C,11Dに対応するジョイント部材70およびその周辺構成として、仮に上部および下部の金型11A,11Bに対応するジョイント部材70およびその周辺構成を適用すると、ジョイント部材70の周囲から水が漏えいするおそれがある。これに対して、上記第1実施形態によれば、左部および右部の金型11C,11Dに対応するジョイント部材70およびその周辺構成として、上部および下部の金型11A,11Bに係る構成とは異なる上記の構成を適用していることで、ジョイント部材70の周囲から水が漏えいするのを防止できる。
【0064】
図6および図7を用いて具体的に説明する。図6および図7は、図4に対応する図であって保持部材40に対する左部の金型11の傾きがずれたときの概略断面図である。図6は上記第1実施形態に係る図である。図7は、比較例であって左部の金型11Cに対応するジョイント部材70およびその周辺構成として、上部の金型11Aに対応する構成を適用した比較例に係る図である。
【0065】
比較例では、図7に示すように、金型11Cが傾いてもジョイント部材70つまり第2ジョイント部材90の第2スリーブ310は金型11と一体に傾かない。そのため、第2スリーブ310の金型11Cおよび金型11Cに形成された第1凹部20に対する姿勢が、適切な姿勢からずれてしまう。これより、第2スリーブ310と第1凹部20の間に隙間が生じて、当該隙間から第1凹部20の外部に水が漏えいしてしまう。より詳細には、金型11Cに形成された第1凹部20に嵌合された第1ブッシュ130は金型11Cと一体に傾く一方で第2スリーブ310が金型11Cと一体に傾かないことで、第1ブッシュ130に取り付けられたOリング132の周方向の変形量が不均一となる。そのため、第1凹部20の外部への水の漏えいをOリング132によって十分に防止することができなくなる。第1凹部20から外部に水が漏えいすると、当該水が金型11の外表面および保持部材40の外表面を伝うことでこれらに錆が生じてしまう。
【0066】
これに対して、上記第1実施形態では、ジョイント部材70として第1ジョイント部材80が用いられて、その第1スリーブ110の左側の端面である第1スリーブ左端面112と、これと対向する第2収容部51Aの底面である第2収容部底面205とが、球面R1に沿う形状とされている。これより、図6に示すように、金型11Cが傾いたときに、第1スリーブ左端面112を第2収容部底面205に沿って揺動させることができる。そのため、第1スリーブ110と第1ジョイント部材80の姿勢を傾きがずれる前の適切な姿勢に維持できる。そして、第1ブッシュ130に設けられたOリング132の変形量を均一に維持できる。そのため、第1スリーブ110の周囲から第1凹部20の外部に水が漏えいするのを抑制できる。ここで、第1スリーブ左端面112と第2収容部底面205との相対位置は変化する。しかしながら、これらの間の隙間は継続してOリング120により塞がれるので、これらの隙間を通じて第2凹部50から外部に水が漏えいするのも防止できる。このように、上記第1実施形態によれば、第1ジョイント部材80の周囲から水が漏えいすること、および水の漏えいに伴う錆びの発生を防止できる。
【0067】
特に、上記第1実施形態では、第1スリーブ左端面112と第2収容部底面205とが、球面R1に沿って延びていることで、金型11Cの傾きが、図6に示すような左右方向にずれた場合に加えて前後方向にずれた場合等にも、つまり、いずれの方向にずれた場合にも、第1スリーブ110を金型11Cと一体に傾かせることたできる。従って、第1ジョイント部材80の周囲から水が漏えいするのを確実に防止できる。
【0068】
また、上記第1実施形態では、第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155とが、上記の球面R1と平行な球面R2、R3に沿って延びている。そのため、金型11Cの傾きがずれたときに、第1鍔部111の右側面115を当接凹部151の底面155に沿って移動させることができる。従って、金型11Cの傾きがずれたときでも、当接凹部151の底面155を第1鍔部111の右側面115により均等に当接させることができ、第1スリーブ110を安定して保持部材40に保持できる。
【0069】
(4)第2実施形態に係るジョイント部材およびその周辺構成
次に、第2実施形態に係る鋳型装置について説明する。第1実施形態と第2実施形態とは第1ジョイント部材およびその周辺構成においてのみ相違しており、以下では、第1ジョイント部材およびその周辺構成についてのみ説明する。また、以下では、左部の金型11Cに対応する第1ジョイント部材480およびその周辺構成について説明する。
【0070】
図8は、図4に対応する図であって、第2実施形態に係る鋳型装置の第1ジョイント部材480およびその周辺を示した断面図である。金型11Cには、その左側面から右方に凹む第1凹部420が形成されている。これに対応する保持部材40には、その右側面から左方に凹む第2凹部450が形成されている。また、これら第1凹部420と第2凹部450とに第1ジョイント部材480が収容されており、この第1ジョイント部材480を介して、金型11Cの第1通路14と、保持部材40の第2通路44とが連通されている。第2実施形態では、第1凹部420が請求項の「第1収容部」に相当し、第2凹部450が請求項の「第2収容部」に相当する。
【0071】
第1ジョイント部材480は、第1スリーブ510と、第1ブッシュ530とを有する。第1ジョイント部材580は、全体として略筒状を呈し、その軸方向が左右方向と一致する姿勢で第1凹部420および第2凹部450に収容されている。
【0072】
第1スリーブ510は、略筒状を呈し、その内側には冷却水が流通する冷却水通路518が形成されている。第1スリーブ510は、その中心軸X2が第2凹部450の中心軸X1と一致して、その軸方向が左右方向と一致する姿勢で金型11Cに保持されている。第1スリーブ510は、その右側部分が第1凹部420内に収容されて、その左側部分が第1凹部420から左方に突出する状態で金型11Cに保持されている。第1スリーブ510の右端には、径方向外側に突出する第1鍔部511が設けられている。金型11Cには、第1鍔部511の左側面に左方から当接可能な第1スリーブ押さえ560が固定されており、当該第1スリーブ押さえ560により第1スリーブ510の左方への移動は規制されている。
【0073】
第1スリーブ510の第1鍔部511の左右両側面は、ともに左右方向と直交する平面状を呈している。第1鍔部511の右側面512には、環状の溝513が形成されている。当該溝513にはOリング503が嵌め込まれており、第1スリーブ510は、第1鍔部511の右側面512と第1凹部420の底面421との間にOリング503を挟み込んだ状態で金型11Cに保持されている。
【0074】
第1ブッシュ530は、略筒状を呈する。第1ブッシュ530は、その中心軸が第2凹部450の中心軸X1と一致してその軸方向が左右方向と一致する姿勢で第2凹部450内に収容されている。
【0075】
第1ブッシュ530の内周面には、左右に並ぶ2本の円環状の溝531が形成されている。これらの溝531にはそれぞれOリング532が嵌合されている。金型11Cと保持部材40とが互いに当接する位置に配置されると、第1スリーブ510の左側部分は第1ブッシュ530の内側に挿入され、第1ブッシュ530とともに第1スリーブ510の左部分も第2凹部50内に収容される。この状態において、第1スリーブ510の外周面と第1ブッシュ530の内周面との隙間はOリング532により塞がれる。第2実施形態では、このOリング532は、請求項の「第2シール部材」に相当する。
【0076】
第1ブッシュ530は、第1ブッシュ押さえ550によって第2凹部450からの離脱が規制されており、第2凹部450に収容された状態で保持部材40に保持されている。
【0077】
第1ブッシュ押さえ550は、その軸が左右方向に沿う略筒状部材である。第1ブッシュ押さえ550は、その内側に第1スリーブ510が挿通された状態で、且つ、第2凹部450に収容された状態で、ボルト等により固定されている。第1ブッシュ530の左端つまり反キャビティ側の端部には、径方向外側に突出するブッシュ鍔部536が設けられている。第1ブッシュ押さえ550は、ブッシュ鍔部536の右方に位置してブッシュ鍔部536の右側面536Aと対向する対向面550Aを備えている。第1ブッシュ押さえ550は、その対向面550Aがブッシュ鍔部536の右側面536Aに右方から当接することで、第1ブッシュ530の右方への移動および第2凹部450からの離脱を規制している。ブッシュ鍔部536の左側面535つまり第1ブッシュ530の左側の端面535(以下、適宜、第1ブッシュ左端面535という)には環状の溝537が形成されている。この溝537にはOリング520が嵌め込まれており、第1ブッシュ押さえ550は、第1ブッシュ左端面535と第2凹部450の底面451との間にOリング520を挟み込んだ状態で第2凹部450内に保持されている。第2実施形態では、第2実施形態では、このOリング520が請求項の「シール部材」に相当する。また、上記のブッシュ鍔部536が請求項の「鍔部」に相当し、ブッシュ鍔部536の右側面536Aが請求項の「鍔部のキャビティ側の側面」に相当する。また、第1ブッシュ押さえ550が請求項の「規制部材」に相当し、上記の対向面550Aが請求項の「規制面」に相当する。
【0078】
第1ブッシュ530は、第1ブッシュ左端面535が第2凹部450の底面451(以下、適宜、第2凹部底面451という)に沿う状態で第2凹部450に収容されている。第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451とは、球面R10に沿う形状を有しており、これらは左右方向に沿ういずれの断面においても円弧に沿って延びている。本第2実施形態では、球面R10は、第2凹部450の中心軸X1上に中心を有する球面である。また、本第2実施形態では、球面R10の中心は、第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451の右方に位置しており、これらは左方に膨出する形状を呈している。
【0079】
また、ブッシュ鍔部536の右側面536Aと、これに対向する第1ブッシュ押さえ550の対向面550Aとは、第1ブッシュ左端面535および第2凹部底面451と平行な曲面形状を有している。つまり、ブッシュ鍔部536の右側面536Aと第1ブッシュ押さえ550の対向面550Aとは、それぞれ、上記の球面R10と同じ径を有するとともに、第2凹部50の中心軸X1上の点で且つブッシュ鍔部536の右側面536Aおよび第1ブッシュ押さえ550の対向面550Aよりも右方に位置する点を中心とする球面R20、R30に沿って延びている。
【0080】
以上のように構成された第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、金型11Cの傾きがずれた場合であっても、第1スリーブ510と第1ブッシュ530の姿勢つまり第1ジョイント部材480の姿勢は、ずれが生じる前後で同じ姿勢に維持される。従って、第2実施形態においても第1ジョイント部材480の周囲から外部に水が漏えいするのを防止できる。
【0081】
図9を用いて具体的に説明する。第2実施形態では、第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451とが球面R10に沿って延びていることから、第1ブッシュ530を第2凹部450に対して揺動させることができる。そのため、金型11Cが図8に示す状態から図9に示す状態に傾いたときでも、第1ブッシュ530を金型11Cと一体に傾かせることができる。従って、金型11Cに保持されている第1スリーブ510に加えて第1ブッシュ530を金型11Cと一体に傾かせることができ、第1ジョイント部材480を金型11Cと一体に傾かせることができる。従って、第2実施形態においても、金型11Cの傾きに関わらず、第1ジョイント部材480の姿勢を金型11Cに対して適切な姿勢に維持することができる。また、第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451の間にOリング520が設けられていることで、第1ブッシュ530が第2凹部450に対して傾いても、これらの間の隙間は継続してOリング520により塞がれる。従って、第1ジョイント部材480の周囲からの水の漏えいを防止できる。
【0082】
(5)変形例
上記の第1実施形態において調整部材200は省略してもよい。ただし、調整部材200を省略する場合は、第1スリーブ左端面112に合わせて第2凹部50の底面を球面沿う形状にする必要がある。なお、調整部材200を設ければ、上記のように、第1ジョイント部材80を収容する第2凹部50と第2ジョイント部材90を収容する第2凹部50の構成を同一にしつつ、第1スリーブ110が収容され、且つ、第1スリーブ左端面112に沿う球面状の底面を備える第2収容部50Aを容易に実現できる。
【0083】
また、上記第1実施形態では、第1スリーブ左端面112と第2収容部底面205とを球面R1に沿う形状とした場合を説明したが、これらは、対応する第1ジョイント部材80の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状とされていればよく、円筒面に沿う形状とされてもよい。同様に、第2実施形態に係る第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451も、第1ジョイント部材380の軸方向に沿う断面において円弧に沿う形状とされていればよく、円筒面に沿う形状とされてもよい。
【0084】
また、上記第1実施形態では、第1スリーブ左端面112と第2収容部底面205とが反キャビティ側に膨出する湾曲形状とされた場合を説明したが、これらはキャビティ側に膨出する形状とされてもよい。なお、この場合は、第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155も反キャビティ側に膨出する湾曲形状にする。同様に、上記第2実施形態においても、第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451はキャビティ側に膨出する形状とされてもよい。なお、この場合は、ブッシュ鍔部536の右側面536Aと第1ブッシュ押さえ550の対向面550Aも反キャビティ側に膨出する湾曲形状にする。
【0085】
また、上記第1実施形態において、第1鍔部111の右側面115と当接凹部151の底面155とは、第1スリーブ左端面112および第2収容部底面205と平行でなくてもよい。同様に、上記第2実施形態において、第1ブッシュ左端面535と第2凹部底面451とは、第1ブッシュ左端面535および第2凹部底面451と平行でなくてもよい。
【0086】
また、第1ジョイント部材80およびその周辺構造を上記第1実施形態の構成と左右対称な構成に代えて、第1ブッシュ130が第2凹部50に収容された状態で保持部材40に保持され、第1スリーブ110および調整部材200が第1凹部20に収容された状態で金型11Cに保持されるようにしてもよい。つまり、上記第1実施形態における「保持部材」を「金型」と読み替え、「金型」を「保持部材」と読み替えてもよい。同様に、第1ジョイント部材480およびその周辺構造を上記第2実施形態の構成と左右対称な構成に代えてもよい。ただし、上記第1実施形態のように構成すれば、第1ジョイント部材80の姿勢を金型11Cに対して適切な姿勢に維持できるので、金型11C側における水の漏えいを確実に防止して金型11Cの錆びを効果的に抑制できる。
【0087】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、左右方向に対向する金型11C,11Dとこれらに対応する保持部材40について、上記の第1ジョイント部材80,480およびその周辺構造を適用した場合について説明したが、この構造が適用される金型および保持部材はこれらに限られない。例えば、上下方向に対向する金型11A,11Bに上記の第1ジョイント部材80,480およびその周辺構造を適用してもよい。ただし、左右方向に対向する金型11C,11Dであって、保持部材40と左右方向に並ぶ金型11C,11Dでは、その自重によって保持部材40に対する傾きがずれやすいので、効果的に水の漏えいを防止できる。
【符号の説明】
【0088】
1 鋳型装置
11 金型
14 第1通路
20 第1凹部(第1収容部)
40 保持部材
44 第2通路
50 第2凹部
50A 第2収容部
80 第1ジョイント部材(ジョイント部材)
110 第1スリーブ(スリーブ)
112 第1ジョイント部材の左側面(基端面)
120 Oリング(シール部材)
130 第1ブッシュ(ブッシュ)
205 第2収容部の底面(規制面)
図1
図2
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図9